特許第6441490号(P6441490)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441490
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】オレフィンオリゴマー化方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 2/32 20060101AFI20181210BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20181210BHJP
   C07C 2/30 20060101ALI20181210BHJP
   B01J 31/26 20060101ALI20181210BHJP
   C07F 9/28 20060101ALN20181210BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20181210BHJP
【FI】
   C07C2/32
   C07C11/02
   C07C2/30
   B01J31/26 Z
   !C07F9/28
   !C07B61/00 300
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-538239(P2017-538239)
(86)(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公表番号】特表2018-505872(P2018-505872A)
(43)【公表日】2018年3月1日
(86)【国際出願番号】KR2016001325
(87)【国際公開番号】WO2016129901
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2017年7月19日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0021784
(32)【優先日】2015年2月12日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0176277
(32)【優先日】2015年12月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ユン−キ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン−ホ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ウン−チ
(72)【発明者】
【氏名】イ、キ−ス
(72)【発明者】
【氏名】パク、チン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】サ、ソク−ピル
(72)【発明者】
【氏名】イム、スル−キ
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/168102(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0031914(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/094114(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0142989(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0257350(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/28
B01J 31/26
C07C 2/30
C07C 2/32
C07C 11/02
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)連続撹拌タンク反応器(CSTR)にオレフィン単量体と溶媒を共に投入する段階;
ii)前記連続撹拌タンク反応器にリガンド化合物、遷移金属化合物及び助触媒を含むオリゴマー化触媒系を投入する段階;及び
iii)オレフィン単量体を多量化反応させる段階
を含むオレフィンオリゴマー化方法であって、
前記オレフィン単量体と溶媒の流量比は1:1から2:1であ
前記リガンド化合物は、下記化学式(2)で表されるジホスフィンモイアティーを2以上含み、
前記2以上のジホスフィンモイアティーの間を連結する連結基は、ヒドロカルビル基としてジホスフィンモイアティー間の最短距離の炭素数が2から30個であるオレフィンオリゴマー化方法
【化1】
前記化学式(2)で、前記AはN、AsまたはSbであり、前記R1からR4は、それぞれ独立して炭素数1から20のヒドロカルビル基、ヘテロヒドロカルビル基またはヒドロカルビルヘテリル基で、前記*は2以上のジホスフィンモイアティーを連結する連結基である。
【請求項2】
前記連続撹拌タンク反応器でのオレフィンの多量化反応は、30barから150barの圧力下で行われる、請求項1に記載のオレフィンオリゴマー化方法。
【請求項3】
前記連続撹拌タンク反応器でのオレフィンの多量化反応は、30℃から150℃の温度条件で行われる、請求項1に記載のオレフィンオリゴマー化方法。
【請求項4】
前記段階ii)で投入されるオリゴマー化触媒系の前記リガンド化合物の濃度は3μMから15μMである、請求項1に記載のオレフィンオリゴマー化方法。
【請求項5】
前記段階ii)で投入されるオリゴマー化触媒系の助触媒は、前記遷移金属化合物が含む遷移金属の当量に対して300当量から3,000当量である、請求項1に記載のオレフィンオリゴマー化方法。
【請求項6】
前記段階iii)を介してオリゴマー化された生成物と溶媒が生成物/溶媒(w/w)>1.0以上を満たす請求項1に記載のオレフィンオリゴマー化方法。
【請求項7】
前記オリゴマー化触媒系は、リガンド化合物及び遷移金属化合物を混合して触媒組成物を製造する段階;及び
助触媒と前記触媒組成物が温度-40℃から80℃で混合して活性化される段階を含む方法によって製造される請求項1に記載のオレフィンオリゴマー化方法。
【請求項8】
前記遷移金属化合物は有機クロム化合物を含み、前記有機クロム化合物は、クロム(III)アセチルアセトネート、三塩化クロムトリステトラヒドロフラン、クロム(III)-2-エチルヘキサノエート、クロム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプテインジオネート)、クロム(III)ベンゾイルアセトネート、クロム(III)ヘキサフルオロ-2,4-ペンテインジオネート及びクロム(III)アセテートヒドロキシドからなる群より選択される1種以上である請求項1から7のいずれか1項に記載のオレフィンオリゴマー化方法。
【請求項9】
前記助触媒は、下記化学式(4)から(6)で表される化合物からなる群より選択される1種以上である請求項1から8のいずれか1項に記載のオレフィンオリゴマー化方法:
[化学式(4)]
-[Al(R5)-O]c-
前記化学式(4)で、
R5は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してハロゲンラジカル、炭素数1から20のヒドロカルビルラジカル、またはハロゲンで置換された炭素数1から20のヒドロカルビルラジカルであり、cは2以上の整数であり、
[化学式(5)]
D(R63
前記化学式(5)で、
Dはアルミニウムまたはボロンであり、R6は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立して水素またはハロゲン、炭素数1から20のヒドロカルビルまたはハロゲンで置換された炭素数1から20のヒドロカルビルであり、
[化学式(6)]
[L-H]+[Q(E)4-
前記化学式(6)で、
Lは中性ルイス塩基であり、[L-H]+はブレンステッド酸で、Qは+3形式酸化状態のボロンまたはアルミニウムであり、Eは、それぞれ独立して1以上の水素原子がハロゲン、炭素数1から20のヒドロカルビル、アルコキシ作用基またはフェノキシ作用基で置換または非置換された炭素数6から20のアリール基または炭素数1から20のアルキル基である。
【請求項10】
前記オレフィン単量体はエチレンを含む請求項1から9のいずれか1項に記載のオレフィンオリゴマー化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2015年2月12日付韓国特許出願第10-2015-0021784号及び2015年12月10日付韓国特許出願第10-2015-0176277号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
技術分野
本発明は、低い溶媒の使用量にも高い線形アルファ-オレフィン選択度及びC2転換率を維持することができるオレフィンオリゴマー化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線形アルファ-オレフィン(Linear alpha-olefin)は、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに用いられる重要な物質として商業的に広く用いられ、特に1-ヘキセンと1-オクテンは、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時にポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く用いられる。
【0003】
従来のLLDPE(Linear Low-Density Polyethylene、線形低密度ポリエチレン)の製造過程には、エチレンとともにポリマー骨格(polymer backbone)に分枝(branch)を形成して密度(density)を調節するため、アルファ-オレフィン、例えば、1-ヘキセン、1-オクテンのような共単量体との共重合が行われるようにした。
【0004】
したがって、共単量体の含量の高いLLDPEの製造のためには、共単量体の価格が製造費用の大きい部分を占めるという問題点があった。このような問題点を解決するための多様な方法の試みがあった。
【0005】
さらに、アルファ-オレフィンは種類に従って応用分野や市場の規模が異なるため、特定のオレフィンを選択的に生産することができる技術は商業的に非常に重要であり、最近選択的なエチレンオリゴマー化(ethylene oligomerization)を介して1-ヘキセンまたは1-オクテンを高い選択度で製造するクロム触媒技術に対する研究が多く行われている。
【0006】
1-ヘキセンまたは1-オクテンを製造する既存の商業的製造方法には、シェルケミカル(Shell Chemical)のSHOPプロセス(SHOP process)、シェブロンフィリップス(Chevron Philips)のZieglerプロセス(Ziegler Process)などがあり、これを利用すれば、炭素数C4〜C20の広い分布のアルファ-オレフィンを生成することができる。
【0007】
エチレンの三量体化触媒として一般式(R1)(R2)X-Y-X(R3)(R4)のリガンドを用いたクロム系触媒が提示された。前記式で、Xはリン、ヒ素またはアンチモンであり、Yは-N(R5)-のような連結グループであり、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも一つが極性または電子授与置換体を有する。
【0008】
さらに、触媒条件の下で1-ヘキセンに対し触媒活性を呈しないリガンドとして、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも一つに極性置換体を有しない化合物である(o-エチルフェニル)2PN(Me)P(o-エチルフェニル)2に対する研究があってきた(Chem.Commun.、2002、858)。
【0009】
しかし、前述した従来の技術のヘテロ原子を含むリガンドは、1-オクテンまたは1-ヘキセンの製造反応の際、反応中に一貫して持続する多量化反応活性と高い選択性に対する要求が相変らず持続している実情である。
【0010】
一方、既存のエチレンオリゴマー化は溶媒が過量で用いられており、よって、高い触媒活性を発揮し、高い選択度を具現することができる反面、設備が肥大になり、溶媒から製品を分離するための多い費用と努力が必要となっている。よって、溶媒の使用量を低めるとともに、触媒活性を発揮して高い選択度を具現することにより、溶媒の過量の使用による問題点を解決することができる技術の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、連続撹拌タンク反応器を用いた連続反応を利用したオレフィンの多量化反応時の反応条件を調節することにより、低い溶媒の使用量にも高い線形アルファ-オレフィン選択度を表すことができるオレフィンオリゴマー化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、
i)連続撹拌タンク反応器(CSTR)にオレフィン単量体と溶媒を共に投入する段階;
ii)前記連続撹拌タンク反応器にリガンド化合物、遷移金属化合物及び助触媒を含むオリゴマー化触媒系を投入する段階;及び
iii)オレフィンを多量化反応させる段階
を含むオレフィンオリゴマー化方法であって、
前記オレフィン単量体と溶媒の流量比は1:1から2:1である、オレフィンオリゴマー化方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るオレフィンオリゴマー化方法は、連続撹拌タンク反応器を用いた連続反応を利用したオレフィンの多量化反応時の反応条件を調節することにより、低い溶媒の使用量にも高い線形アルファ-オレフィン選択度を表すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に対する理解を助けるため、本発明をさらに詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0015】
本明細書で用いられる用語は、単に例示的な実施形態を説明するために用いられたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに別の意味を有しない限り、複数の表現を含む。
【0016】
本明細書で、『含む』、『備える』または『有する』などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0017】
本明細書の全体で「触媒系」、「触媒組成物」または「触媒システム」というのは、遷移金属ソース、リガンド化合物及び助触媒を含む3成分、または代案として、遷移金属化合物及び助触媒の2成分が同時にまたは任意の順に添加されて活性のある触媒組成物として収得され得る状態のものを意味する。前記触媒システムの3成分または2成分は、溶媒及び単量体の存在または不在の下で添加されてよく、前記三つの用語は混用されてよい。
【0018】
本明細書で用いる用語「オリゴマー化」とは、オレフィンがオリゴマー化されることを意味する。重合されるオレフィンの個数に従って三量化(trimerization)、四量化(tetramerization)と呼ばれ、これを総称して多量化(multimerization)という。特に本明細書では、オレフィン単量体からLLDPEの主な共単量体である1-ヘキセン及び1-オクテンを選択的に製造することを意味する。
【0019】
本明細書におけるヒドロカルビル基は、炭素と水素だけからなる全ての化合物を意味し、例えば、アルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基などがあり、このようなヒドロカルビル基を意味する用語の使用において特別な言及がない限り、直鎖と分枝鎖の全部を意味することができ、非置換型及び置換型の全部を意味することができる。例えば、炭素数1から20のアルキル基であるグループというのは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などを意味することができ、炭素数6から20のアリール基というのは、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などがあるが、これに限定されるものではない。
【0020】
本明細書におけるアルキルアリール基は、1以上のアルキル基を置換基として有するアリール基を意味し、アリールアルキル基は1以上のアリール基を置換基として有するアルキル基を意味する。
【0021】
本明細書におけるヘテロ元素はN、O、S、Pを意味し、ヘテロヒドロカルビル基はヘテロ原子が1以上含まれているヒドロカルビル基を意味することができる。つまり、ヘテロアルキル基は、アルキル基の構成炭素のうちいずれか一つの炭素がヘテロ原子で置換されるか、置換基としてヘテロ原子を含むことを意味することができ、ヘテロアリール基は、ピリジル基のように芳香族環の炭素のうちいずれか一つがヘテロ原子で置換されたものを意味することができる。その他、ヘテロアリールアルキル基、ヘテロアルキルアリール基、ヘテロアルケニルアリール基などの場合も同様であり得る。
【0022】
前記ヘテロヒドロカルビル基の場合は、作用基化される連結点が炭素であるが、「ヒドロカルボヘテリル基」、「オルガノヘテリル基」、「これらのヘテリル基」などの「ヘテリル基」というのは、作用基化される連結点がヘテロ原子の場合を意味することができる。
【0023】
オレフィンオリゴマー化方法
本発明に係るオレフィンオリゴマー化方法は、i)連続撹拌タンク反応器(CSTR)にオレフィン単量体と溶媒を共に投入する段階;ii)前記連続撹拌タンク反応器にリガンド化合物、遷移金属化合物及び助触媒を含むオリゴマー化触媒系を投入する段階;及びiii)オレフィンを多量化反応させる段階を含み、このとき、前記オレフィン単量体と溶媒の流量比は1:1から2:1である。
【0024】
本発明に係るオレフィンオリゴマー化方法は、連続撹拌タンク反応器(continuous stirred tank reactor、CSTR)を利用して行われる連続溶液重合方法であり、先ず、段階i)で前記連続撹拌タンク反応器(CSTR)にオレフィン単量体と溶媒を共に投入して前記溶媒に前記オレフィン単量体が溶解され得るようにする。
【0025】
その次には、段階ii)として、前記連続撹拌タンク反応器にリガンド化合物、遷移金属化合物及び助触媒を含むオリゴマー化触媒系を投入することになり、これによって前記連続撹拌タンク反応器にオレフィン単量体、溶媒及びオリゴマー化触媒系を含む反応物の投入が行われると、段階iii)としてオレフィンを多量化反応させる段階が行われる。
【0026】
前記連続撹拌タンク反応器には、本発明の属する技術分野で通常のものを利用することができ、その構成は特に制限されない。
【0027】
前記連続撹拌タンク反応器を用いた連続溶液重合方法を利用し、低い溶媒の使用量にも高い線形アルファ-オレフィン選択度及びC2転換率を維持することができるよう、一定の反応条件、即ち、温度、圧力、オレフィン単量体及び溶媒の供給量を満たす必要がある。
【0028】
本発明に係るオレフィンオリゴマー化方法において、前記連続撹拌タンク反応器に投入されるオレフィン単量体と溶媒の流量比は1:1から2:1であり、具体的に1.1:1から1.8:1であってよい。
【0029】
前記連続撹拌タンク反応器に投入されるオレフィン単量体と溶媒の流量比が1:1から2:1を満たす場合、高いオレフィン単量体の転換率を達成するとともにオリゴマー化された生成物に対する溶媒の割合を低めることができる。
【0030】
前記連続撹拌タンク反応器でのオレフィンの多量化反応は、30barから150barの圧力、具体的に40barから100barの圧力、さらに具体的に40barから80barの圧力下で行われてよい。
【0031】
また、前記連続撹拌タンク反応器でのオレフィンの多量化反応は、30℃から150℃の温度、具体的に40℃から120℃の温度、さらに具体的に50℃から70℃の温度条件下で行われてよい。前記温度が30℃以上の場合、反応器内部で反応が十分進められ、120℃以下の場合、必要以上に温度を高めることに伴う工程効率の低下を防ぐことができる。
【0032】
前記連続撹拌タンク反応器に投入されるリガンド化合物、遷移金属化合物及び助触媒を含むオリゴマー化触媒系の量は、前記オレフィン単量体の投入量に対して一定の割合に定められてよい。
【0033】
前記段階ii)で投入されるオリゴマー化触媒系の前記リガンド化合物の濃度は3μMから15μMであってよく、具体的に4μMから12μMであってよく、さらに具体的に5μMから7μMであってよい。
【0034】
前記段階ii)で投入されるオリゴマー化触媒系の前記遷移金属化合物の濃度は3μMから15μMであってよく、具体的に4μMから12μMであってよく、さらに具体的に5μMから7μMであってよい。
【0035】
前記段階ii)で投入されるオリゴマー化触媒系の助触媒は、前記遷移金属化合物が含む遷移金属の当量に対して300当量から3,000当量であってよく、具体的に400当量から2,000当量であってよく、さらに具体的に600当量から1,800当量であってよい。
【0036】
本発明の一例において、前記段階iii)を介してオリゴマー化された生成物と溶媒は、生成物/溶媒(w/w)>1.0以上を満たすことができる。前記連続撹拌タンク反応器を利用した連続溶液重合方法によるオレフィンオリゴマー化において、前記溶媒に対する生成物の割合を増加させるためには一定の反応条件下で反応が行われる必要があり、このため、温度、圧力、オレフィン単量体及び溶媒の供給量を満たす必要があり、よって、前述した温度、圧力、オレフィン単量体及び溶媒の供給量の条件を満たす場合、前記段階iii)を介してオリゴマー化された生成物と溶媒は、生成物/溶媒(w/w)>1.0以上を満たすことができる。
【0037】
本発明に係るオレフィンオリゴマー化方法によって前記オレフィン単量体を多量化反応させたとき、前記オレフィン単量体の生成物への転換率は60%以上であってよく、具体的に60%から90%であってよく、さらに具体的に65%から80%であってよい。
【0038】
前記オレフィン単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-アイトセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、フェニルノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ブタジエン、1-5-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、スチレン、アルファ-メチルスチレン、ジビニルベンゼン及び3-クロロメチルスチレンからなる群より選択される1種以上であってよく、具体的にエチレンを含むものであってよい。
【0039】
オリゴマー化触媒系
【0040】
リガンド化合物
前記オリゴマー化触媒系が含む前記リガンド化合物は、下記化学式(1)で表されるジホスフィンモイアティー(moiety)を含むことができる。
【0041】
【化1】
【0042】
前記化学式(1)で、前記AはN、AsまたはSbであり、前記R1からR4は、それぞれ独立して炭素数1から20のヒドロカルビル基、ヘテロヒドロカルビル基またはヒドロカルビルヘテリル基である。
【0043】
さらに、前記化学式(1)で表されるジホスフィンモイアティーを含有するリガンド化合物は、下記化学式(2)で表されるジホスフィンモイアティーを2以上含むものであってよい。
【0044】
【化2】
【0045】
前記化学式(2)で、前記A、R1からR4は前記化学式(1)と同様であり、前記*は2以上のジホスフィンモイアティーを連結する連結基である。
【0046】
さらに、前記化学式(2)で表されるジホスフィンモイアティーが2個であり、前記Aが窒素(N)の場合であれば、前記リガンド化合物は下記化学式(2a)で表される化合物を含むことができる。
【0047】
【化3】
【0048】
前記化学式(2a)で、R1からR4とR1'からR4'は、それぞれ前記化学式(1)または(2)のR1からR4と同一のグループから選択されてよく、前記Lは、二つのジホスフィンモイアティーを連結する連結基であってよい。
【0049】
前記化学式(1)、(2)及び(2a)でのR1からR4と、前記化学式(2a)での R1’からR4’を特に制限するものではないが、例えば、炭素数6から20のアリール基、ヘテロアリール基またはアリールヘテリル基;または炭素数7から20のアルキルアリール基、ヘテロアルキルアリール基、アルキルヘテロアリール基、またはアルキルアリールヘテリル基であってよく、このような置換基が選択される場合は、触媒の活性や線形アルファオレフィンの選択度に肯定的な影響を与えることができる。
【0050】
前記連結基(L)は、2以上のジホスフィンモイアティーの間を連結する連結基は多様な構造のヒドロカルビル基であってよく、ジホスフィンモイアティー間の最短距離の炭素原子の数は2から30個であってよい。つまり、前記ジホスフィンモイアティーの2個または3個以上の間にこれらを連結するヒドロカルビル基が存在するものであり、前記ヒドロカルビル基内でジホスフィンモイアティーの間に最短距離で連結される炭素原子の数は2から10個の範囲であってよい。
【0051】
具体的に、前記連結基は、炭素数2から20の脂肪族グループ、炭素数2から20のヘテロ脂肪族グループ、炭素数3から20の脂環族グループ、炭素数3から20のヘテロ脂環族グループ、炭素数6から20の芳香族グループ、及び炭素数6から20のヘテロ芳香族グループからなる群より選択される1種以上のグループが結合されたものであってよく、これを満たすものであればその構造は特に制限されない。
【0052】
さらに、前記グループ等の中から選択されるいずれか一つのグループ、もしくはグループ等の中から選択される2以上が結合されたグループが決定されると、前記連結基の主鎖は多様な構造の置換基を有することができる。
【0053】
具体的に、例えば、前記連結基の置換基は、炭素数1から20の脂肪族グループ、炭素数2から20のヘテロ脂肪族グループ、炭素数3から20の脂環族グループ、炭素数3から20のヘテロ脂環族グループ、炭素数6から20の芳香族グループ、及び炭素数6から20のヘテロ芳香族グループからなる群より選択される1種以上のグループであってよく、これらの置換基は前記主鎖に1個または2個以上が結合されてよく、その位置に対しては、連結基の柔軟性の側面でジホスフィンモイアティーから遠い方が有利であり得るが、置換基の結合位置に対しては特に制限されるところはない。
【0054】
非制限的な例として、前記連結基(L)は、前記化学式(1)で表される二以上のグループの間をそれぞれ2から30個の炭素原子で連結する炭素数2から20の脂肪族グループ(例えば、アルキレングループ、アルケニレングループ、アルキニレングループ、または前記脂肪族グループにヘテロ原子が含まれているヘテロ脂肪族グループ)、炭素数2から20の脂環族グループ(例えば、シクロアルキレングループ、シクロアルケニレングループ、シクロアルキニレングループ、または前記脂環族グループにヘテロ原子が含まれているヘテロ脂環族グループ)、または前記脂肪族(またはヘテロ脂肪族)グループと脂環族(またはヘテロ脂環族)グループが結合されたグループを有する化合物であってよい。
【0055】
本発明に係る他の一実施形態によれば、前記リガンド化合物は下記化学式(3)で表される化合物を含むこともできる。
【0056】
【化4】
【0057】
前記化学式(3)で、前記R1からR4は、それぞれ独立して炭素数6から20のアリール基または炭素数7から20のアルキルアリール基であり、前記R5は炭素数1から20のアルキル基であってよい。
【0058】
前記R5がメチル基の場合、前記R6は、炭素数2または3のアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基またはこれらのヘテリル基である直鎖グループ;炭素数4から20のアルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアリールアルキル基、ヘテロアリールアルケニル基またはこれらのヘテリル基;炭素数3から20のシクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリールシクロアルキル基、アリールシクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、ヘテロアリールシクロアルキル基、ヘテロアリールシクロアルケニル基またはこれらのヘテリル基;炭素数6から20のアリール基、ヘテロアリール基またはこれらのヘテリル基;あるいは、炭素数7から20のアルキルアリール基、ヘテロアルキルアリール基またはこれらのヘテリル基であってよい。
【0059】
また、前記R5がメチル基の場合、好ましく前記R6は、炭素数2から20のヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアリールアルキル基、ヘテロアリールアルケニル基またはこれらのヘテリル基;炭素数3から20のヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、ヘテロアリールシクロアルキル基、ヘテロアリールシクロアルケニル基またはこれらのヘテリル基;炭素数6から20のアリール基、ヘテロアリール基またはこれらのヘテリル基;あるいは、炭素数7から20のアルキルアリール基、ヘテロアルキルアリール基またはこれらのヘテリル基であってよい。
【0060】
前記R5が炭素数2から20のアルキル基の場合、前記R6は、炭素数2から20のアルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアリールアルキル基、ヘテロアリールアルケニル基またはこれらのヘテリル基;炭素数3から20のシクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリールシクロアルキル基、アリールシクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、ヘテロアリールシクロアルキル基、ヘテロアリールシクロアルケニル基またはこれらのヘテリル基;炭素数6から20のアリール基またはヘテロアリール基またはこれらのヘテリル基;あるいは、炭素数7から20のアルキルアリール基、ヘテロアルキルアリール基またはこれらのヘテリル基であってよい。
【0061】
前記R7からR9は、それぞれ独立して、水素;炭素数1から20のアルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基またはアリールアルケニル基;炭素数3から20のシクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリールシクロアルキル基またはアリールシクロアルケニル基;炭素数6から20のアリール基;あるいは、炭素数7から20のアルキルアリール基であってよい。
【0062】
前述したところのように、前記化学式(3)で表されるリガンド化合物は、一例として、アニリン化合物の2番及び6番炭素が前記R5及びR6で置換された化合物であってよく、2番と6番炭素で置換されるグループに応じてリガンド化合物及びこれを含むオリゴマー化触媒系の特性が変わり得る。
【0063】
前記2番炭素位置にメチル基が置換される場合、非対称構造をなすことができるよう、6番炭素位置には2番炭素位置に置換されたグループとは異なるグループが置換されてよい。
【0064】
非制限的な例として、炭素数2または3のアルキル基、アルケニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基またはこれらのヘテリル基である直鎖グループが置換されてよく;炭素数4から20のアルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアリールアルキル基、ヘテロアリールアルケニル基またはこれらのヘテリル基が置換されてよい。
【0065】
さらに、炭素数3から20のシクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリールシクロアルキル基、アリールシクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、ヘテロアリールシクロアルキル基、ヘテロアリールシクロアルケニル基またはこれらのヘテリル基が置換されてよく;炭素数6から20のアリール基、ヘテロアリール基またはこれらのヘテリル基が置換されてよく;炭素数7から20のアルキルアリール基、ヘテロアルキルアリール基またはこれらのヘテリル基が置換されてよい。
【0066】
さらに、2番炭素位置に炭素数が2から20のアルキル基が置換される場合、6番炭素位置には2番炭素位置に置換された置換基と同一であるか異なるグループが置換されてよい。
【0067】
非制限的な例として、炭素数2から20のアルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアリールアルキル基、ヘテロアリールアルケニル基またはこれらのヘテリル基が置換されてよく;炭素数3から20のシクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリールシクロアルキル基、アリールシクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、ヘテロアリールシクロアルキル基、ヘテロアリールシクロアルケニル基またはこれらのヘテリル基が置換されてよく;炭素数6から20のアリール基またはヘテロアリール基またはこれらのヘテリル基が置換されてよく;あるいは、炭素数7から20のアルキルアリール基、ヘテロアルキルアリール基またはこれらのヘテリル基が置換されてよい。
【0068】
前記のようなアニリン基の置換グループ等の構造的な特徴により、前記リガンド化合物を含む触媒系は、遷移金属周辺の電子的、立体的環境などの多様な条件によってPNP-Crが容易に互いに作用し、高いオリゴマー化反応活性を呈することができるとともに、特に1-ヘキセン、1-オクテンなどに対する高い選択度を表すことができ、付随的には、1-ヘキセンの増加及び1-ヘキセン異性質体の減少に伴って分離が不要になり得ることによるエネルギー節減の効果ももたらすことができる。
【0069】
前記リガンド化合物は、下記反応式1のような方法で合成することができるが、これに限定されるものではない。
【0070】
【化5】
【0071】
前記反応式1で、G1は、前記化学式(3)のR5からR9を有するフェニル基であってよく、G2及びG3は、それぞれ前記化学式(3)のR1からR4であってよく、Xはハロゲン基であってよい。
【0072】
前記反応式1は、前記化学式(3)で表されるリガンド化合物を合成する一般的な反応式であって、アミンとホスフィンが反応してジホスフィノアミンを生成する反応であってよい。つまり、アミンが親核体としてフォスフィンのXで表される離脱基を離脱させて置換される反応であってよく、前記Xは、離脱されたあと安定して離脱されやすい作用基であれば特に制限はなく、代表的にはハロゲン基としてCl、BrまたはIがあり得る。
【0073】
遷移金属化合物
このような選択的なオレフィンオリゴマー化反応は、用いる触媒システムと密接な係わりがある。オレフィンオリゴマー化反応の際に用いられる触媒系は、主触媒の役割を担う遷移金属化合物と助触媒を含むところ、このとき、リガンドの化学構造に応じて活性触媒の構造を変化させることができ、これに伴うオレフィン選択度や、活性または副産物の生成量などが別に表れ得る。
【0074】
前記本発明の他の一実施形態に係るオリゴマー化触媒系の遷移金属化合物は、主触媒の役割を担うものであって、前述したところのようなリガンド化合物と配位結合された状態であってよい。
【0075】
具体的に、遷移金属化合物と前記化学式(2)で表されるジホスフィンモイアティーを2以上含むリガンド化合物は、下記化学式(2-1)で表されるところのように配位結合することができる。
【0076】
【化6】
【0077】
前記化学式(2-1)で、R1からR4は前記化学式(1)と同一で、*は前記化学式(2)と同一であり、前記Mは遷移金属であってよく、好ましくCrであってよく、前記XnはH、F、Cl、Br、I、または、炭素数1から6のアルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基またはヘテロアリールアルキル基、またはハロゲン基であってよく、あるいはアセテート基またはアセチルアセトネート基であってよく、前記mはMの酸化数として自然数であってよい。
【0078】
さらに、遷移金属化合物と前記化学式(2a)で表されるリガンド化合物は、下記化学式(2a-1)で表されるところのように配位結合することができる。
【0079】
【化7】
【0080】
前記化学式(2a-1)で、R1からR4、Xn、m及びMは前記化学式(2-1)で定義したところと同一であり、R1’からR4’及びXn’もR1からR4と同一である。
【0081】
また、遷移金属化合物と前記化学式(3)で表されるリガンド化合物は、下記化学式(3-1)で表されるところのように配位結合することができる。
【0082】
【化8】
【0083】
前記化学式(3-1)で、Xn、m及びMは前記化学式(2-1)で定義したところと同一であり、R1からR9は前記化学式(3)で定義したところと同一である。
【0084】
具体的に、前記遷移金属化合物は、有機クロム化合物を含むことができ、前記有機クロム化合物は、例えば、クロム(III)アセチルアセトネート、三塩化クロムトリステトラヒドロフラン、クロム(III)-2-エチルヘキサノエート、クロム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプテインジオネート)、クロム(III)ベンゾイルアセトネート、クロム(III)ヘキサフルオロ-2,4-ペンテインジオネート及びクロム(III)アセテートヒドロキシドからなる群より選択される1種以上であってよい。
【0085】
助触媒
前記助触媒は、13族金属を含む有機金属化合物であって、一般に遷移金属化合物触媒の下でオレフィンを多量化するときに用いられ得るものであれば特に限定されるものではない。 具体的に、前記助触媒は、下記化学式(4)から(6)で表される化合物からなる群より選択される1種以上のものを用いることができる。
【0086】
[化学式(4)]
-[Al(R5)-O]c-
前記化学式(4)で、R5は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してハロゲンラジカル、炭素数1から20のヒドロカルビルラジカル、またはハロゲンで置換された炭素数1から20のヒドロカルビルラジカルであり、cは2以上の整数であり、
【0087】
[化学式(5)]
D(R63
前記化学式(5)で、
Dはアルミニウムまたはボロンであり、R6は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立して水素またはハロゲン、炭素数1から20のヒドロカルビルまたはハロゲンで置換された炭素数1から20のヒドロカルビルであり、
【0088】
[化学式(6)]
[L-H]+[Q(E)4-
前記化学式(6)で、
Lは中性ルイス塩基であり、[L-H]+はブレンステッド酸で、Qは+3形式酸化状態のボロンまたはアルミニウムであり、Eは、それぞれ独立して1以上の水素原子がハロゲン、炭素数1から20のヒドロカルビル、アルコキシ作用基またはフェノキシ作用基で置換または非置換された炭素数6から20のアリール基または炭素数1から20のアルキル基である。
【0089】
前記化学式(4)で表される化合物には、例えば、修飾メチルアルミノキサン(MMAO)、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどがあり得る。
【0090】
前記化学式(5)で表されるアルキル金属化合物には、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、ジメチルイソブチルアルミニウム、ジメチルエチルアルミニウム、ジエチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、トリブチルボロンなどであってよい。
【0091】
前記化学式(6)で表される化合物には、例えば、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルカルボニウムテトラフェニルボロン、トリフェニルカルボニウムテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボロンなどであってよい。
【0092】
前記一実施形態のオリゴマー化触媒系の助触媒として、好ましくはアルミノキサンを用いることができ、さらに好ましくはメチルアルミノキサン(MAO)または修飾メチルアルミノキサン(MMAO)を用いることができる。
【0093】
オリゴマー化触媒系の製造方法
前記オリゴマー化触媒系の製造方法をこれによって特に制限するものではないが、非制限的な例として、前記オリゴマー化触媒系の製造方法は、前述したリガンド化合物及び遷移金属化合物を混合して触媒組成物を製造する段階;及び助触媒と前記触媒組成物が温度-40から80℃で混合されて活性化される段階を含むことができる。
【0094】
前記触媒組成物はリガンド化合物及び遷移金属化合物を含み、本発明に係るオリゴマー化触媒系の製造方法は、リガンド化合物と遷移金属化合物を先ず混合して二つの化合物の間の金属化反応(metalation)を誘導することができる。
【0095】
前記金属化反応は、リガンド化合物に遷移金属化合物が配位結合される反応であってよく、リガンド化合物と遷移金属化合物の配位形態、リガンド化合物の活性点などに関する説明は後述する。
【0096】
前記リガンド化合物と遷移金属化合物の金属化反応が十分進められて触媒組成物が製造されると、前記触媒組成物と助触媒を混合して活性化される段階が進められ得る。前記活性化というのは、触媒組成物と助触媒の接触及びエージングを介し、オリゴマー化触媒系として活性化されることを意味することができる。
【0097】
前記触媒組成物と助触媒の活性化は、有機溶媒と混合されて溶液相に存在する助触媒と触媒組成物が接触し、一定時間の間エージングされるものであってよく、前記活性化は撹拌、単純混合など、その形態において特別な制限がなく、触媒組成物と助触媒が接触してオリゴマー化触媒系として活性が発生できる形態であればいずれも適用することができる。
【0098】
前記有機溶媒としては、例えば、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、1-ヘキセン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、メタノール、アセトンなどが含まれ、これに制限されない。
【0099】
前記触媒組成物と助触媒の活性化は、-40から80℃の温度で行われ得る。好ましくは20から80℃、または25から60℃の温度で行われ得る。前記活性化のための触媒組成物と助触媒の接触及びエージングが80℃を超過する高温で行われる場合、助触媒として用いられ得る金属アルキルによって、触媒組成物のリガンドと遷移金属が過度に活性化され、オリゴマー化の反応時に過度な活性によって副反応が発生するか、早期に活性が低下し得る。
【0100】
さらに、前記活性化のための触媒組成物と助触媒の接触及びエージングが-40℃未満の極低温で行われるのであれば、触媒が活性化されるために必要なエネルギーが供給され得ないので、触媒を活性化させることができない。
【0101】
前記触媒組成物と助触媒の活性化は、有機溶媒と混合されて溶液相に存在する助触媒と触媒組成物が接触し、一定時間の間エージングされるものであってよく、前記活性化は撹拌、単純混合など、その形態において特別な制限がなく、触媒組成物と助触媒が接触してオリゴマー化触媒系として活性が発生できる形態であればいずれも適用することができる。
【0102】
前記助触媒と触媒組成物は、別途の独立的なラインで反応器に流入されてよく、反応物も別途のラインで反応器に直接流入されてよい。これにより、反応物と接触する時間が短くなるに伴って高温でも活性を維持することが可能である。
【実施例】
【0103】
以下、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の実施形態に対して詳しく説明する。しかし、本発明は、いくつか異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0104】
<リガンド化合物の合成>
全ての反応は、シュレンクテクニック(Schlenk technique)やグローブボックス(glove box)を用いてアルゴン下で進められた。合成されたリガンドは、Varian 500MHz spectrometerを利用して1H(500MHz)と31P(202MHz)NMR spectraを撮って分析した。Shiftは、residual solvent peakをreferenceとし、TMSからdownfieldでppmで表した。Phosphorous probeは、aqueous H3PO4でcalibrationした。
【0105】
製造例
アルゴン下で、3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサンアミン(3-(aminomethyl)-3,5,5-trimethylcyclohexanamine)(5mmol)とトリエチルアミン(3〜10 equiv. to amine)をジクロロメタン(80mL)に溶かした。フラスコを水槽に浸漬した状態で、クロロジトリルホスフィン(chloroditolylphosphine)(20mmol, 2 equiv. to amine)を徐々に入れて、一晩中撹拌した。真空を取って溶媒を揮発させた後、THFを入れて十分撹拌し、air-free glass filterで塩化トリエチルアンモニウム塩(triethylammonium chloride salt)を除去した。濾過液から溶媒を除去して製品を得た。
【0106】
<アルファ-オレフィンオリゴマーの製造>
実施例1
アルゴンガス下で前記製造例によって製造されたリガンド化合物とCr(acac)3(17.5mg、0.014mmol)を、リガンド:クロムが0.55:1のモル比になるようにフラスコに入れて100mlのメチルシクロヘキサン(MCH)を添加し、撹拌して0.5mM(Cr基準)溶液を製造した。
【0107】
窒素雰囲気下の2L CSTR反応器にメチルシクロヘキサンとエチレンをそれぞれ1.0kg/hr及び1.5kg/hrの流量で連続的に投入し、圧力が60barに維持されるようにした。10L圧力容器に前記で製造した0.5mM(Cr基準)溶液を投入したあと、シクロヘキサンに適宜希釈した触媒溶液を3mL/minの速度で反応器に投入すると同時に、助触媒修飾メチルアルミノキサン(MMAO)をシクロヘキサンに希釈した溶液を、Al:Crが1800:1のモル比になるように触媒溶液の投入量に合わせて連続的に投入(5.4mL/min)した。反応温度は、反応器ジャケットに常温の水を連続的に投入して60℃になるように調節した。2時間の間反応が安定的に進められる状況下で排出される反応物を1時間の間捕集し、50mLを取って水でクェンチ(quench)し、有機層をPTFEシリンジフィルターでフィルターしてGC分析を行った。
【0108】
残留反応液にエタノール/HCl(10vol%)400mlを入れて撹拌し、フィルタリングして重合体を得た。収得した重合体を60真空(vacuum)オーブンで一晩中乾燥して重量を測定した。
【0109】
実施例2から6、及び比較例1
前記実施例1の段階2で、メチルシクロヘキサンとエチレンの流量、及び触媒溶液及び助触媒の投入速度を下記表1のように異にしたことを除き、実施例1と同様の方法でアルファ-オレフィンオリゴマーを製造した。
【0110】
【表1】
【0111】
実験例1:触媒系活性
前記表1に示す通り、本発明のオレフィンオリゴマー化方法の一例による実施例等は非常に高い多量化反応活性を表したことを確認することができる。
【0112】
実験例2:オレフィン単量体、溶媒及びオリゴマー化触媒系の投入速度に応じたオリゴマー化反応
前記実施例1から6の結果を下記表2にそれぞれ示した。
【0113】
【表2】
【0114】
前記表1及び表2に示す通り、本発明の実施例1から6に係るオレフィンオリゴマー化方法は、連続撹拌タンク反応器(CSTR)にオレフィン単量体と溶媒を共に投入し、オリゴマー触媒系を投入してオレフィン単量体を多量化反応させるとき、オレフィン単量体と溶媒の流量比が1:1から2:1の範囲を満たすので、オリゴマー化された生成物と溶媒が生成物/溶媒(w/w)>1.0以上を満たすことができるので、低い溶媒の使用量にも高い収率でオリゴマー化されたオレフィンを収得することができ、高い線形アルファ-オレフィン選択度を維持することができた。
【0115】
一方、比較例1に係るオレフィンオリゴマー化方法はオレフィン単量体に比べて溶媒の流量が多いため、オレフィン単量体と溶媒の流量比が1:1から2:1の範囲を満たすことができないので(1:1.2)、生成物/溶媒(w/w)=0.64であり、オリゴマー化された生成物に比べて溶媒の量が多いことが分かった。
【0116】
以上で本発明の好ましい実施形態に対して詳しく説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の幾多の変形及び改良の形態もまた、本発明の権利範囲に属するものである。