【文献】
Yuki Arikawa, et al.,"Practical Resource Scheduling in Massive-cell Deployment for 5G Mobile Communications Systems",2015 International Symposium on Intelligent Signal Processing and Communication Systems (ISPACS),2015年11月12日,pp.456-461
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無線ネットワークシステムを構成する複数の送信ポイント(TP)と、これら送信ポイントとの間で無線通信を行うユーザ端末(UE)との組み合わせを示すリソース割り当てパターンを複数生成し、これらリソース割り当てパターンの評価値に基づいて、送信ポイントとユーザ端末との最適な組み合わせを示す最適リソース割り当てパターンを選択するスケジューリング装置であって、
前記送信ポイントごとに、送信先となるユーザ端末または、送信停止を示す動作内容を指定するためのリソース割り当てパターンを順次作成するパターン生成部と、
前記リソース割り当てパターンの生成ごとに、当該リソース割り当てパターンに基づく無線リソースの割り当て時における前記ユーザ端末での評価を示すUE別メトリックを、互いに並列動作する複数のパイプライン処理系でそれぞれ計算して合計することにより、当該リソース割り当てパターンのパターン評価値を計算するパターン評価部と、
前記パターン評価値が最も良好な前記リソース割り当てパターンを前記最適リソース割り当てパターンとして選択する最適解保持部とを備え、
前記パターン評価部は、
前記パイプライン処理系ごとに設けられて、前記UE別メトリックの計算段階における計算処理をそれぞれ行う複数のステージ計算部と、
前記パターン生成部で前記リソース割り当てパターンが生成されるごとに、前記計算段階での計算処理に必要となるパラメタと対応するエントリ番号を、前記計算段階での処理タイミングに合わせて遅延させて出力する遅延制御部と、
前記計算段階ごとに設けられて、当該計算段階での計算処理に用いるパラメタをエントリごとに予め記憶し、前記エントリ番号の入力に応じて対応するエントリから前記パラメタを読み出して、前記パイプライン処理系のそれぞれに設けられた当該計算段階に対応する前記ステージ計算部へ分配するパラメタテーブルと、
前記パイプライン処理系のそれぞれで計算された前記UE別メトリックの合計を、前記リソース割り当てパターンのパターン評価値として出力するメトリック合計部とを有する
ことを特徴とするスケジューリング装置。
無線ネットワークシステムを構成する複数の送信ポイント(TP)と、これら送信ポイントとの間で無線通信を行うユーザ端末(UE)との組み合わせを示すリソース割り当てパターンを複数生成し、これらリソース割り当てパターンの評価値に基づいて、送信ポイントとユーザ端末との最適な組み合わせを示す最適リソース割り当てパターンを選択するスケジューリング方法であって、
前記送信ポイントごとに、送信先となるユーザ端末または、送信停止を示す動作内容を指定するためのリソース割り当てパターンを順次作成するパターン生成ステップと、
前記リソース割り当てパターンの生成ごとに、当該リソース割り当てパターンに基づく無線リソースの割り当て時における前記ユーザ端末での評価を示すUE別メトリックを、互いに並列動作する複数のパイプライン処理系でそれぞれ計算して合計することにより、当該リソース割り当てパターンのパターン評価値を計算するパターン評価ステップと、
前記パターン評価値が最も良好な前記リソース割り当てパターンを前記最適リソース割り当てパターンとして選択する最適解保持ステップとを備え、
前記パターン評価ステップは、
前記パイプライン処理系ごとに設けられて、前記UE別メトリックの計算段階における計算処理をそれぞれ行う複数のステージ計算ステップと、
前記パターン生成ステップで前記リソース割り当てパターンが生成されるごとに、前記計算段階での計算処理に必要となるパラメタと対応するエントリ番号を、前記計算段階での処理タイミングに合わせて遅延させて出力する遅延制御ステップと、
前記計算段階ごとに設けられて、当該計算段階での計算処理に用いるパラメタをエントリごとに予め記憶し、前記エントリ番号の入力に応じて対応するエントリから前記パラメタを読み出して、前記パイプライン処理系のそれぞれに設けられた当該計算段階に対応する前記ステージ計算ステップへ分配するパラメタ分配ステップと、
前記パイプライン処理系のそれぞれで計算された前記UE別メトリックの合計を、前記リソース割り当てパターンのパターン評価値として出力するメトリック合計ステップとを有する
ことを特徴とするスケジューリング方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるスケジューリング装置10について説明する。
図1は、第1の実施の形態にかかるスケジューリング装置の構成を示すブロック図である。
【0023】
このスケジューリング装置10は、全体としてサーバー装置などの情報処理装置からなり、無線ネットワークシステムに設けられている、制御の対象とするN(Nは、2以上の整数)個の各送信ポイント(TP:基地局)に対して、送信先となるユーザ端末(UE:ユーザ無線端末)や送信停止などの動作内容(送信状態)を指定することにより、無線ネットワークが有する無線リソースの割り当てに用いる最適リソース割り当てパターンを選択する機能を有している。
【0024】
図1に示すように、スケジューリング装置10には、主な機能部として、パターン生成部11、パターン評価部12、および最適解保持部13が設けられている。
【0025】
パターン生成部11は、送信ポイントごとに、送信先となるユーザ端末または、送信停止を示す動作内容を指定するためのリソース割り当てパターンを順次作成する機能を有している。
パターン評価部12は、リソース割り当てパターンごとに、当該リソース割り当てパターンに基づく無線リソースの割り当て時におけるユーザ端末での評価を示すUE別メトリックを計算して合計することにより、リソース割り当てパターンのパターン評価値を計算する機能を有している。
最適解保持部13は、リソース割り当てパターンのうち、パターン評価値が最も良好な前記リソース割り当てパターンを最適リソース割り当てパターンとして選択する機能を有している。
【0026】
本実施の形態は、このような構成において、後述の
図4に示すように、パターン評価部12に、互いに並列動作する複数のパイプライン処理系P#1…P#Ncを設け、これらパイプライン処理系P#t(t=1…Nc)で、個々のユーザ端末#tに関するUE別メトリック[t]を並列的に計算することにより、パターン評価値の計算に要する計算時間を短縮するようにしたものである。
【0027】
次に、
図1および
図2を参照して、第1の実施の形態にかかるスケジューリング装置10の各構成について詳細に説明する。
【0028】
[パターン生成部]
パターン生成部11は、外部から入力されたリソース割り当てパターン範囲設定(パターン範囲情報)に基づき、スケジューリング装置10が制御の対象とする各送信ポイントTP#i(i=1…Ntp;Ntpは、システム内のTP数)について、その送信状態、すなわち、送信先のユーザ機器UEの番号(1…Nue;Nueは、スケジューリング装置10が扱うことが可能なUE数の最大値)あるいは、TPの送信停止に対応する値0を表す、リソース割り当てパターンT[i](i=1…Ntp)を生成する。リソース割り当てパターン範囲設定は、リソース割り当てパターンを生成するときの制約であり、各TP#iについて送信停止の選択可否や送信先となり得るUE、つまりTP毎の選択肢の設定である。
【0029】
リソース割り当てパターン範囲設定の例は、TP毎に送信先として選択可能なUEの番号のリストという形式であり、各TP#i(i=1…Ntp)の設定として、Ns個の選択肢[i,k](k=1…Ns;Nsは、各TPに設定可能な選択肢の最大個数)と、これらのうち有効な選択肢の個数s[i](s[i]≦Ns)という構成をとる。
なお、パターン生成部11は、リソース割り当てパターン範囲設定として指定されたTP毎の送信先となり得るUEに加えて、TP毎に送信停止の選択を可能とする。さらに、各TPにおける送信停止の選択は、リソース割り当てパターン範囲設定に含まれるUEの選択よりも先んじて選択されることとする。
【0030】
パターン生成部11は、複数個のリソース割り当てパターンを時間の経過に伴って次々と生成するが、これら生成において、直前に生成したリソース割り当てパターンと、1個のTPについて選択を変更する。なお、リソース割り当てパターン範囲設定内の全てのリソース割り当てパターンを生成した時点で、パターン生成部11は、生成を終了する。
【0031】
このように、本実施の形態にかかるスケジューリング装置10のパターン生成部11は、各TP#i(i=1…Ntp)からシステム内の全UEを送信対象としてリソース割り当てパターンを生成するのでは、なく、外部から入力されたリソース割り当てパターン範囲設定内のリソース割り当てパターンを生成することによって、最適解とならないか可能性が低いパターンを予め除外しておくことが可能であり、リソース割り当てパターンの生成および評価値の算出の回数の削減によって、高速化できる。なお、高速化の程度は、リソース割り当てパターン範囲設定に応じて変わる。例えば、各TPの選択肢を1/2に制限した場合は、2のTP数乗倍に高速化できる。
【0032】
パターン生成部11は、リソース割り当てパターンを生成する毎に、これらパターンと、パターン生成の直前に生成したリソース割り当てパターンとを、比較したときに、送信先が異なる(直前のパターンから送信先のUEが変わった)TPの番号である差分TP番号(1…Ntp)と、当該TPの送信先となったUEの番号である差分UE番号(1…Nue)を、差分情報として、パターン評価部12に向けて出力する。なお、パターン生成部11が差分TP番号と差分UE番号をパターン評価部12に向けて出力するのでは、なく、生成したリソース割り当てパターンT[i](i=1…Ntp)をパターン評価部12に向けて出力し、パターン評価部12が、直前に入力したリソース割り当てパターンと今回入力したパターンとを比較することによって、パターン評価部12内で差分TP番号と差分UE番号を生成する構成も可能である。
【0033】
また、パターン生成部11は、リソース割り当てパターンを生成する毎に、パターン評価部12に対して出力した差分TP番号と差分UE番号(差分情報)を、最適解保持部13にも出力する。これは、リソース割り当てパターンに対する評価値をパターン評価部12が最適解保持部13に向けて出力し、最適解保持部13がこの評価値を最良と判断した場合に、最適解保持部13が対応する差分TP番号と差分UE番号を用いてリソース割り当てパターンを再生し、これを最適解として保持するためである。なお、パターン生成部11が差分TP番号と差分UE番号を最適解保持部13に向けて出力するのでは、なく、生成したリソース割り当てパターンT[i](i=1…Ntp)を最適解保持部13に向けて出力する構成も可能である。
【0034】
[パターン生成処理]
次に、
図2を参照して、パターン生成部11でのパターン生成処理について説明する。
図2は、第1の実施の形態にかかるパターン生成処理を示すフローチャートである。
【0035】
パターン生成部11は、リソース割り当てパターン範囲設定として、各TP#i(i=1…Ntp)の選択肢の個数を保持するs[i](s[i]≦Ns)と、各TP#iでの選択可能な送信状態のリストである選択肢[i,k](k=1…s[i])とを使用する。また、パターン生成部11内において、各TP#iが現時点でどの選択肢を選択しているかを番号として表す選択肢番号[i](1…s[i])を使用する。
【0036】
さらに、各TP#i(i=1…Ntp)の選択を更新するときに選択肢番号[i]をインクリメント(+)するかデクリメント(−)するかを示す値として更新量[i](選択更新時に選択肢番号[i]に加算する値)を使用する。TP#iの選択更新において選択肢番号[i]をインクリメントする場合は、更新量[i]は、1であり、デクリメントする場合は、更新量[i]は、1である。なお、更新量[i]の代わりに更新方向[i]を用いてもよい。これにより、更新方向[i]が1の場合は、選択肢番号[i]をインクリメントし、更新方向[i]が0の場合は、選択肢番号[i]をデクリメントすると定義することで、各TP#iに対して1bit長の更新方向[i]を用いて表現することが可能である。
【0037】
さらに、前回生成したリソース割り当てパターンと次に生成するリソース割り当てパターンとの違いがあるTPの番号、つまり、差分TP番号を決めるために、TP番号を1からTP数であるNtpまで順に試行するための変数Itpを使用する。すなわち、Itpを差分TP番号の候補として使用する。ただし、パターン生成部11を回路として実装する場合は、TPの番号が1からNtpまでの試行を同時に行うことが可能であり、この場合は、変数Itpを使用せず、
図3に示したフローチャートの手順に従って動作しなくともよく、等価な動作が可能であれば良い。
【0038】
以下、
図2に示したフローチャートについて詳細に説明する。
まず、パターン生成部11は、その動作を開始した後、全TPについて各TPの選択肢のうち先頭を選択することにより、パターン生成部11の初期化を行う(ステップ100)。ここでは、各TP[i]に対応する選択肢番号[i]の値として1をセットする処理と、更新量[i]の値として1をセットする処理を行う。これにより、初期パターンが生成される。
【0039】
次に、パターン生成部11は、このようにして生成した初期パターンを差分情報によりパターン評価部12に出力するため、各TPについて、当該TPの番号を差分TP番号とし、当該TPの最初の選択肢を差分UE番号として、パターン評価部12に出力する(ステップ101)。すなわち、TP番号iを1…Ntpの順番で変えたときの各TP番号iについて、差分TP番号としてiを、差分UE番号として選択肢[i,1]を、パターン評価部12に出力する。これにより、パターン生成部11は、パターン評価部12に、最初に生成するリソース割り当てパターンを渡したことになる。
【0040】
この後、パターン生成部11は、次のパターンを生成するため、Itpに1をセットすることにより、Itpの初期化を行う(ステップ102)。Itpは、差分TP番号の候補である。
続いて、パターン生成部11は、Itpが差分TP番号となるか、すなわち、TP#Itpについて選択肢を変更できるかの判定を行う(ステップ103)。
【0041】
具体的には、選択肢番号[Itp]に更新量[Itp]を加算した値が、1以上かつs[Itp](選択肢の個数)以下である場合、つまり、更新した選択肢番号が正常な範囲内にある場合、TP#Itpについて選択肢を変更できると判定する。
なお、更新量では、なく更新方向の違いを表現する変数を用いる場合、この変数の値がインクリメントを表すならば選択肢番号[Itp]<s[Itp]を判定し、この変数の値がデクリメントを表すならば選択肢番号[Itp]>1を判定する。
【0042】
ここで、現在のItpは、差分TP番号では、ない場合(ステップ103:NO)、パターン生成部11は、Itpの更新(インクリメント)を行うことで差分TP番号の新たな候補を得るが、その前に、現在のTP#Itpについて最初の選択肢を選択している状態に戻しておく(ステップ104)。ただし、先頭の選択肢に戻す(選択肢番号[Itp]に1をセットする)のでは、なく、更新方向のみを逆にすることによって、現選択が最初の選択肢とする。つまり、更新量[Itp]を1から−1に、−1から1に変更する処理となる。これにより、リソース割り当てパターンに2箇所以上の差分が生じることを防ぐことができるので、リソース割り当てパターン1個の生成につき、差分TP番号を1個のみとすることができる。
【0043】
この後、パターン生成部11は、全パターンの生成を終えたか(動作終了)を判定するため、Itpが最後のTP番号か、つまり、Itp==Ntpであるかの判定を行う(ステップ105)。ここで、Itpが最後のTP番号である場合(ステップ105:YES)、パターン生成部11は、一連のパターン生成処理を終了する。
【0044】
また、Itpが最後のTP番号でない場合(ステップ105:NO)、パターン生成部11は、Itpをインクリメントする(Itpに1を加算する)ことによって、Itpの更新を行った後(ステップ106)、新たなItpが差分TP番号であるかを判定するため、ステップ103に戻る。
【0045】
一方、ステップ103において、現在のItpが差分TP番号である場合(ステップ103:YES)、パターン生成部11は、TP#Itpの現選択を次の選択肢に変更することにより、選択肢の更新を行う(ステップ107)。このステップは、選択肢番号[Itp]に更新量[Itp]を加算する処理となる。
なお、更新量では、なく更新方向の違いを表現する変数を用いる場合、この変数の値がインクリメントを表すならば選択肢番号[Itp]に1を加算する処理であり、この変数の値がデクリメントを表すならば選択肢番号[Itp]から1を減算する処理である。
【0046】
これにより、パターン生成部11は、次のパターンのための更新を完了し、更新に対応した差分TP番号や差分UE番号等を出力するため、Itpを差分TP番号とし、更新後の選択肢を差分UE番号として出力する(ステップ108)。具体的は、差分TP番号=Itp、差分UE番号=選択肢[Itp,選択肢番号[Itp]]とし、これらをパターン評価部12に向けて出力する。この後、次のリソース割り当てパターンを生成すべくステップ102に戻る。
【0047】
このように、パターン生成部11は、次の選択肢を選択可能なTPのうち、最も番号が小さいTP#Itpを見つけ、このItpを差分TP番号とし、TP#Itpの次の選択肢を差分UE番号とする。また、Itpよりも小さい番号のTPについては、その更新量の符号を反転させる(更新方向を逆転させる)。これにより、過去に生成したリソース割り当てパターンとは、少なくとも1個のTPについて選択肢が異なるリソース割り当てパターンを生成することができる。さらに、生成されたリソース割り当てパターンは、前回生成されたパターンと、1個のTP(差分TP番号が指すTP)についてのみ、その選択肢が異なることが保証され、リソース割り当てパターン1個の生成につき、各1個の差分TP番号と差分UE番号として出力することができる。
【0048】
図3は、第1の実施の形態にかかるリソース割り当てパターンの生成例であり、
図3(a)は、リソース割り当てパターン範囲設定の例、
図3(b)は、生成したリソース割り当てパターンの例、
図3(c)は、各リソース割り当てパターンの差分情報例である。
図3に示すように、リソース割り当てパターン1個の生成につき、各1個の差分TP番号と差分UE番号となっており、リソース割り当てパターン範囲設定と、その設定に基づいて生成した差分TP番号(1…Ntp)および差分UE番号(0…Nue、値0は、送信停止を表す)とが、生成順に示されている。
【0049】
すなわち、パターン生成部11は、直前に生成したリソース割り当てパターンと比較して、1個のUE(差分UE)が差分TP番号が指すTPの送信先として新たに加わる(差分UE番号>0の場合)か、あるいは、差分TP番号が指すTPが送信停止 (差分UE番号=0の場合) となるので新たなUEが加わらない、リソース割り当てパターンを生成する。
【0050】
[パターン評価部]
パターン評価部12は、各リソース割り当てパターンに対する評価値を計算し、得られた評価値を最適解保持部13に向けて出力する。この評価値は、リソース割り当てパターンを採用したスケジューリングの良さを表す指標であり、例えば、各UEのスループットを全UEについて合計した値を評価値とする方法や、UE別に過去の平均レートに対するスループットの比率を求め、この値を全UEについて合計した値を評価値とすることで、ユーザ間の公平性を考慮した方法(非特許文献2を参照)など、がある。
【0051】
この評価値の計算では、各UEのスループットを見積もる必要があり、まず、各UEの受信SINR(Signal-to-Interference plus Noise power Ratio:干渉電力および雑音電力の和に対する信号電力の比率)を見積もり、さらに、受信SINRに応じたスループットを求める(例えば受信SINRとスループットを対応付けるテーブルを引く)。受信SINRの計算では、UE毎の干渉電力や信号電力の値を必要とするので、これらの値を、各TPが送信した信号をUEが受信するときの受信電力を測定しておき、この測定値とリソース割り当てパターンから見積もる。なお、測定値として、UEが測定した受信電力値では、なく、UEが上りチャネルを通じて基地局に通知したCQI(Channel Quality Indicator)を受信電力値に換算した値や、UEが送信した上り信号を各TPが受信したときの受信電力値から推定した値を、使用することも可能である。
【0052】
このように、パターン評価部12は、UE毎にUE別評価値(スループットや平均レートに対するスループットの比率など)の計算を行い、各UE別評価値を合計するなどの方法によって評価値を計算する。また、UE別評価値の計算には、UE別評価パラメタ(各UEの平均レートや、各UEが受信可能な各TPの番号や、TPの信号を受信するときの受信電力の値など)が必要であり、基地局など外部より入力される。
【0053】
また、各UEのSINR計算には、SINR計算パラメタ(各UEが受信可能なTPのリストと各TPからの受信電力や干渉が最小化された条件で受信するときのSNR(Signal-to-Noise power Ratio:雑音電力の和に対する信号電力の比率)が必要であり、各UEのメトリック計算には、メトリック計算パラメタ(平均レート)が必要であり、これらは、基地局など外部より入力される。
【0054】
[パターン評価部の詳細]
次に、
図4を参照して、本実施形態にかかるパターン評価部12の詳細について説明する。
図4は、第1の実施の形態にかかるパターン評価部の構成を示すブロック図である。
【0055】
図4に示すように、パターン評価部12には、主な回路部として、パイプライン処理部20、遅延制御部21、メトリック合計部22、およびパターン再生部23が設けられている。また、パイプライン処理部20は、互いに並列動作する複数のパイプライン処理系P#1…P#Ncと、パラメタテーブルTBとから構成されており、各パイプライン処理系P#t(t=1…Nc)には、UE別メトリックの計算段階Sn(n=1…SNs)における計算処理をそれぞれ行う複数のステージ計算部3nが設けられている。
【0056】
図4の構成例では、パラメタテーブルTBとして、送信状態生成部30A、SINR計算パラメタ記憶部30B、およびメトリック計算パラメタ記憶部30Cからなる3つのパラメタテーブルが設けられている。また、各パイプライン処理系P#tには、ステージ計算部3nとして、SINR計算部31、スループット計算部32、およびメトリック計算部33からなる3つのパイプラインステージが設けられている。本実施の形態では、パイプライン処理部20が
図4に示したような上記構成からなる場合を例として説明するが、これに限定されるものでは、ない。
【0057】
次に、
図4を参照して、パラメタ評価部12を構成する各回路部について詳細に説明する。
【0058】
遅延制御部21は、パターン生成部11でリソース割り当てパターンが生成されるごとに、各計算段階Snでの計算処理に必要となるパラメタと対応するエントリ番号を、各計算段階Snでの処理タイミングに合わせて遅延させてパラメタテーブルTBへ出力する機能を有している。
【0059】
すなわち、遅延制御部21は、パターン生成部11から入力した差分TP番号Iと差分UE番号Iに対して、各SINR計算部#t(t=1…Nc)、各メトリック計算部#t(t=1…Nc)、SINR計算パラメタ記憶部30B、メトリック計算パラメタ記憶部30Cの各々について入力信号間の入力タイミングを調整するための遅延を付与する機能と、最適解保持部13に向けて出力する各信号間の出力タイミングを調整するための遅延を付与する機能とを有している。
【0060】
このうち、差分TP番号Iは、新たに生成したリソース割り当てパターンと直前のリソース割り当てパターンと比較したとき差分のうち、送信先のUEが変更されたTPを示す番号である。また、差分UE番号Jは、差分TP番号Iが示すTPの送信先となったUEの番号である。ただし、差分UE番号Jは、当該TPが送信停止の場合は、UE番号として使用されていない値0となる。
【0061】
送信状態生成部30Aは、遅延制御部21から差分TP番号Iと差分UE番号Jを入力する毎、つまり、パターン生成部11がリソース割り当てパターンを生成する毎に、各TPの送信の有無を表す送信フラグ[i](i=1…Ntp、値が1の場合は、TP#iが送信中であることを表すビット)を生成し、各SINR計算部#1…#Ncに分配する機能を有している。
【0062】
SINR計算パラメタ記憶部30Bは、各UE#j(j=1…Nue;Nueは、スケジューリング装置10が扱うことが可能なUE数の最大値)のSINRを計算するためのパラメタであるSINR計算パラメタ[i]をエントリごとに記憶する機能と、遅延制御部21から差分UE番号J(エントリ番号)を入力し、この差分UE番号Jに対応するエントリから差分UEのSINR計算パラメタ[J]を各SINR計算部#1…#Ncに分配する機能とを有している。
【0063】
メトリック計算パラメタ記憶部30Cは、各UE#j(j=1…Nue)のSINRに基づいてメトリックを計算するためのパラメタであるメトリック計算パラメタをエントリごとに記憶する機能と、遅延制御部21から差分UE番号J(エントリ番号)を入力し、この差分UE番号Jに対応するエントリから差分UEのメトリック計算パラメタ[J]を各メトリック計算部#1…#Ncに分配する機能とを有している。
【0064】
これらパラメタテーブルTBにおいて、入力した差分UE番号Jの値が無効(差分TPが送信停止に変更された場合の差分UE番号0)である場合、各SINR計算部#1…#Ncに分配するSINR計算パラメタ[J]や、各メトリック計算部#1…#Ncに分配するメトリック計算パラメタ[J]として、パラメタを用いたSINR計算やメトリック計算の結果であるSINRやメトリックの値が0となるようなパラメタを出力する。
【0065】
SINR計算部#t(t=1…Nc)は、送信状態生成部30Aからの送信フラグ[i]とSINR計算パラメタ記憶部30Bから分配されたSINR計算パラメタ[t]とに基づいて、TP#tの送信先であるUEのUE別SINR[t]を計算する機能を有している。
【0066】
スループット計算部#t(t=1…Nc)は、SINR計算部#tで計算されたUE別SINR[t]に基づいて、TP#tの送信先であるUEでのスループットを示すUE別スループット[t]を計算する機能を有している。
【0067】
メトリック計算部#t(t=1…Nc)は、スループット計算部#tで計算されたUE別スループット[t]とメトリック計算パラメタ記憶部30Cから分配されたメトリック計算パラメタ[t]とに基づいて、TP#tの送信先であるUE
のUE別メトリック[t]を計算する機能を有している。
【0068】
メトリック合計部22は、パイプライン処理系P#1…P#Ncのそれぞれで計算されたUE別メトリック[1]…[Nc]を合計することにより、リソース割り当てパターンに関するパターン評価値を計算し、最適解保持部13へ出力する機能を有している。
【0069】
パターン再生部23は、遅延制御部21から差分TP番号Iと差分UE番号Jを入力する毎、つまり、パターン生成部11がリソース割り当てパターンを生成する毎に、差分TP番号Iと差分UE番号Jに基づいてリソース割り当てパターンを再生し、最適解保持部13へ出力する機能を有している。
【0070】
前述したように、パターン生成部11は、新たなリソース割り当てパターンを生成する際、直前に生成したリソース割り当てパターンと比較して、いずれか1つの送信ポイントにおける動作内容だけが差分となるリソース割り当てパターンを順次作成する。したがって、前回のリソース割り当てパターンと今回のリソース割り当てパターンとの比較において、送信先が変更されるTPは、差分TPのみである。
【0071】
このため、SINR計算部#t(t=1…Nc)のうち、差分TPの送信先である差分UEのSINR計算を行うSINR計算部#I(Iは、差分TP番号)のみが、前回の計算で使用していたパラメタを差分UE用に変更する必要があり、SINR計算部#I以外のSINR計算部については、前回のパラメタをそのまま使用できる。
【0072】
同様に、各メトリック計算部#t(t=1…Nc)のうち、メトリック計算部#Iのみが、前回の計算で使用していたパラメタを差分UE用に変更する必要があり、メトリック計算部#I以外のメトリック計算部#tについては、前回のパラメタをそのまま使用できる。
【0073】
このため、SINR計算部#t(t=1…Nc)は、差分TP番号Iを入力し、t=IのSINR計算部#t、すなわち、差分TPの送信先である差分UEのSINRを計算するSINR計算部#Iは、SINR計算パラメタ記憶部30Bが出力した差分UEに対応するSINR計算パラメタ[J]を入力し、これを、SINR計算パラメタ#Iとして保持する。
【0074】
同様に、各メトリック計算部#t(t=1…Nc)は、差分TP番号Iを入力し、t=Iのメトリック計算部#t、すなわち、差分TPの送信先である差分UEのメトリックを計算するメトリック計算部#Iは、メトリック計算パラメタ記憶部30Cが出力した差分UEに対応するメトリック計算パラメタ[J]を入力し、これを、メトリック計算パラメタ#Iとして保持する。
【0075】
したがって、各パイプライン処理系P#tでは、次のような計算過程が並列して実行される。
まず、SINR計算部#t(t=1…Nc)は、SINR計算パラメタ#tと各TPの送信の有無を表す送信フラグ[i](i=1…Ntp、値が1の場合は、TP#iが送信中であることを表すビット)に基づいて、SINR[t]を計算してスループット計算部#tに出力する。
【0076】
次に、各スループット計算部#t(t=1…Nc)は、SINR[t]に基づいて、スループット[t]を計算してメトリック計算部#tに出力する。
続いて、各メトリック計算部#t(t=1…Nc)は、メトリック計算パラメタ#tとスループット[t]に基づいて、メトリック[t]を計算してメトリック合計部22に出力する。
【0077】
この後、メトリック合計部22は、メトリック[t](t=1…Nc)を合計し、評価値として最適解保持部13に向けて出力する。
また、パターン再生部23は、遅延制御部21から差分TP番号Iと差分UE番号Jを入力する毎、つまり、パターン生成部11がリソース割り当てパターンを生成する毎に、差分TP番号Iと差分UE番号Jに基づいてリソース割り当てパターンを再生し、最適解保持部13に向けて出力する。
【0078】
[効果1]
このように、各パイプライン処理系P#tのSINR計算部#t(t=1…Nc)、スループット計算部#t、メトリック計算部#tは、各リソース割り当てパターンに対するUE毎のSINR計算・スループット計算・メトリック計算をパイプライン処理する。すなわち、一定の周期Tでリソース割り当てパターンを生成し、そのリソース割り当てパターンに基づいて各UEのSINRの計算を開始する。各リソース割り当てパターンに対する各UEのメトリックは、リソース割り当てパターンが生成されてから一定の遅延D(パイプライン処理に要する時間)を経過した後に、同時にメトリック合計部22に入力されるが、周期T<遅延Dであり、あるリソース割り当てパターンに対する各UEのメトリック計算を完了する前に、次のリソース割り当てパターンに対する各UEのSINR計算を開始できる。
【0079】
したがって、多数のリソース割り当てパターンを次々と生成して各パターンに対するメトリック合計値を計算する場合に、1個のリソース割り当てパターンあたりに要するパターン評価値の計算時間を短縮できるので、1回のスケジューリングに許容される時間内に、多数のリソース割り当てパターンを評価して良好なリソース割り当てパターンを取得することができる、という効果がある。例えば、SINR計算、スループット計算、メトリック計算、を各1クロックでパイプパイン処理する回路の場合、パイプライン処理しない構成(3クロックで1個のパターンに対してSINR計算からメトリック計算までを行う構成)と比較して、3倍の処理性能を得ることができる。
【0080】
[効果2]
また、本実施の形態では、パイプライン処理系Pの数であるNcをTP数に一致させ(Nc=Ntp)、UE毎に各計算を行う回路を備えるのでは、なくTP数分のパイプライン処理系Pを備える。すなわち、SINR計算部#t、スループット計算部#t、メトリック計算部#tの各々は、TP#iが送信するUEについて、SINR、スループット、メトリックの各計算を行う。何れのTPからも信号を受信しないUEについては、対応する回路が用意されていないので、そのメトリックは、リソース割り当てパターンの評価値に寄与しないが、UEは、スループットが0となるためメトリックが0であり、対応する回路を用意したとしても、本実施の形態の構成によって得られる評価値と同じ値となる。
【0081】
通常は、無線ネットワークシステム内のTPの数よりも、無線ネットワークシステム内のUEの数のほうが多い。これは、一般的に1個のTPが同時に複数個のUEと接続できる(例えば各UEに異なる周波数帯を割り当てる周波数多重や、各UEへの送信時間を変える時間多重ができる)ためである。したがって、本実施の形態によれば、UE数分の回路を設けたスケジューリング装置10と比較して、回路の個数を削減できるので、スケジューリング装置10を低コスト化できる。
【0082】
[送信状態生成部]
送信状態生成部30Aは、遅延制御部21から差分TP番号Iと差分UE番号Jを入力する毎、つまり、パターン生成部11がリソース割り当てパターンを生成する毎に、各TPの送信の有無を表す送信フラグ[i](i=1…Ntp、値が1の場合TP#iが送信中であることを表すビット)を生成し、各SINR計算部#t(t=1…Nc)に向けて出力する。
【0083】
このため、送信状態生成部30Aは、各TPの送信フラグ[i](i=1…Ntp)を保持し、入力した差分TP番号が示すTPの送信フラグ[差分TP番号]の値を、差分UE番号に基づいて更新する。具体的には、差分UE番号が送信停止を表す値0の場合は、送信フラグ[差分TP番号]に送信中では、ないことを表す値0をセットし、送信停止以外の場合(差分UE番号が有効なUEの番号を表す場合)には、送信フラグ[差分TP番号]に送信中であることを表す値1をセットする。
【0084】
なお、差分TP番号以外の各TPの送信フラグ[i](i=1…Ntp、i≠差分TP番号)の値は、変更しないで、これまでの値を保持する。これらTPの送信フラグ[i](i=1…Ntp)は、各SINR計算部#t(t=1…Nc;Nc=Ntp)が、TPの送信先であるUEのSINRを計算するとき、TP#i以外で送信中の各TPからの受信電力を合計した干渉電力を計算するために使用される。
【0085】
[SINR計算パラメタ記憶部]
SINR計算パラメタ記憶部30Bは、各UE#j(j=1…Nue;Nueは、スケジューリング装置10が扱うことが可能なUE数の最大値)のSINR計算パラメタ[j](UE#jのSINRを計算するために必要となる数値の組)を記憶する。記憶する値は、外部よりのアクセスにより設定・更新が可能である。SINR計算パラメタ記憶部30Bは、有効なUEの番号である差分UE番号Jをパターン評価部12から入力し、記憶している差分UE番号Jが指すUE#JのSINR計算パラメタ[J]を、SINR計算部#t(t=1…Nc)に向けて出力する。
【0086】
SINR計算パラメタ記憶部30Bの回路実装において、SRAM(スタティックランダムアクセスメモリ)を用いることが可能である。SRAMのワード数をNue(スケジューリング装置10が扱うことが可能なUE数の最大値)とし、各ワードに各UEのSINR計算パラメタを格納し、入力した差分UE番号JからUE#JのSINR計算パラメタ[J]を格納したワードのアドレス(例えばアドレス=差分UE番号J−1)に変換して、SRAMのリードアクセスを行うことで、SRAMのリードデータがSINR計算パラメタ[J]となる。
【0087】
[効果3]
したがって、SINR計算パラメタ記憶部30Bは、SINR計算部31に向けて、同時に複数のUEのSINR計算パラメタを出力する必要がない。つまり、差分UE以外のUEについては、SINR計算部31が保持したSINR計算パラメタをそのまま利用できるので、SINR計算パラメタ記憶部30Bは、リソース割り当てパターン毎に、差分UEのSINR計算パラメタのみを出力すればよい。この特徴により、SRAMのように、同時に読み出すことができるワード数が限定される(別アドレスに格納されたワードを同時に読み出すことができない)一方で、1ビットあたりの面積が小さいメモリセルにより構成された、小面積で大容量のメモリを用いることが可能となる。
【0088】
すなわち、本実施の形態にかかるスケジューリング装置10は、SINRの計算に必要な各TPからの受信電力など(SINR計算パラメタ)を記憶する必要があるが、SINRの計算を行う回路毎に分散して記憶するのでは、なく、テーブル化して記憶するため、記憶に用いるメモリの回路面積を削減できる。したがって、本実施の形態にかかるスケジューリング装置10は、各UEのSINR計算パラメタをテーブル(同時に取得可能なパラメタが1個のUE分に限定されるメモリの構成)として備えることにより、SRAMのようにアクセス機構が複雑だが1ビットあたりの面積が小さい回路を効果的に使用できる。
【0089】
[メトリック計算パラメタ記憶部]
メトリック計算パラメタ記憶部30Cは、各UE#j(j=1…Nue;Nueは、スケジューリング装置10が扱うことが可能なUE数の最大値)のメトリック計算パラメタ[j](UE#jのメトリックを計算するために必要となる数値の組)を記憶する。記憶する値は、外部よりのアクセスにより設定・更新が可能である。メトリック計算パラメタ記憶部30Cは、遅延制御部21から有効なUEの番号である差分UE番号Jを入力し、記憶している差分UE番号Jが指すUE#Jのメトリック計算パラメタ[J]を、メトリック計算部#t(t=1…Nc)に向けて出力する。
【0090】
メトリック計算パラメタ記憶部30Cの回路実装において、SRAM(スタティックランダムアクセスメモリ)を用いることが可能である。SRAMのワード数をNueとし、各ワードに各UEのメトリック計算パラメタを格納し、入力した差分UE番号JからUE#Jのメトリック計算パラメタ[J]を格納したワードのアドレス(例えばアドレス=差分UE番号J−1)に変換して、SRAMのリードアクセスを行うことで、SRAMのリードデータがメトリック計算パラメタ[J]となる。
【0091】
[効果3]
したがって、メトリック計算パラメタ記憶部30Cは、メトリック計算部33に向けて、同時に複数のUEのメトリック計算パラメタを出力する必要がない。つまり、差分UE以外のUEについては、メトリック計算部33が保持したメトリック計算パラメタをそのまま利用できるので、メトリック計算パラメタ記憶部30Cは、リソース割り当てパターン毎に、差分UEのメトリック計算パラメタのみを出力すればよい。この特徴により、SRAMのように、同時に読み出すことができるワード数が限定される(別アドレスに格納されたワードを同時に読み出すことができない)一方で、1ビットあたりの面積が小さいメモリセルにより構成された、小面積で大容量のメモリを用いることが可能となる。
【0092】
すなわち、本実施の形態にかかるスケジューリング装置10は、メトリックの計算に必要な各UEの平均レートなど(メトリック計算パラメタ)を記憶する必要があるが、メトリックの計算を行う回路毎に分散して記憶するのでは、なく、テーブル化して記憶するため、記憶に用いるメモリの回路面積を削減できる。したがって、本実施の形態にかかるスケジューリング装置10は、各UEのメトリック計算パラメタをテーブル(同時に取得可能なパラメタが1個のUE分に限定されるメモリの構成)として備えることにより、SRAMのようにアクセス機構が複雑だが1ビットあたりの面積が小さい回路を効果的に使用できる。
【0093】
[SINR計算部]
SINR計算部#t(t=1…Nc)は、差分TP番号Iを入力する。ここで、t=IのSINR計算部#t、すなわち、差分TPの送信先である差分UEのSINRを計算するSINR計算部#tは、SINR計算パラメタ記憶部30Bが出力した差分UEに対応するSINR計算パラメタ[J]を入力し、これを、SINR計算パラメタ#tとして保持する。一方、t≠IのSINR計算部#tについては、前回から保持していたSINR計算パラメタ#tを保持しつづける。つぎに、SINR計算パラメタ#tと各TPの送信の有無を表す送信フラグ[i](i=1…Ntp、値が1の場合は、TP#iが送信中であることを表すビット)に基づいて、SINR[t]を計算してスループット計算部#tに出力する。
【0094】
SINR計算パラメタ#tは、TP#tの送信先となるUEにとって、有意な受信が可能なTP番号のリストと、リスト内の各TPからの送信を干渉が最小化された条件で受信するときの受信電力値(または、SNR)のリストとを含む。送信フラグ[t]がTP#tの送信有を示す場合(本例では、送信フラグ[t]の値が1の場合)は、TP#tからの受信電力値(または、SNR)を受信電力値(または、SNR)のリストから取得し、この値を信号電力Psとする。
【0095】
ただし、TP番号のリストに、tが含まれない場合(TP#tの送信先となるUEがTP#tから有意な受信が不可能な場合)は、信号電力Psを0とする。また、値がt以外のTP番号のリストに含まれる各TP番号t’については、送信フラグ[t’]がTP#t’の送信有を示す場合(本例では、送信フラグ[t’]の値が1の場合)に、TP#t’からの受信電力値(または、SNR)を受信電力値(または、SNR)のリストから取得して、各値を合計し、さらにノイズ電力(SNRの場合は、1)を加算して、干渉ノイズ電力Piとする。各SINR計算部#t(t=1…Nc)は、上記の信号電力値Psと干渉ノイズ電力値Piとの比であるPs/PiをSINRとして計算し、SINR[t]として出力する。
【0096】
[スループット計算部]
スループット計算部#t(t=1…Nc)は、SINR[t]を入力し、これをSINRでUEが受信した場合のスループット値に変換し、スループット[t]としてメトリック計算部#tに出力する。の処理は、例えば、SINR値の範囲と範囲におけるスループット値の対応を、複数のSINR値の範囲について用意しておき、入力したSINR[t]が含まれるSINRの範囲におけるスループット値を出力する。
【0097】
[メトリック計算部]
メトリック計算部#t(t=1…Nc)は、差分TP番号Iを入力する。ここで、t=Iのメトリック計算部#t、すなわち、差分TPの送信先である差分UEのメトリックを計算するメトリック計算部#tは、メトリック計算パラメタ記憶部30Cが出力した差分UEに対応するメトリック計算パラメタ[J]を入力し、これを、メトリック計算パラメタ#tとして保持する。一方、t≠Iのメトリック計算部#tについては、前回から保持していたメトリック計算パラメタ#tを保持しつづける。つぎに、メトリック計算パラメタ#tとTP#tが送信したUEのスループット[t]に基づいて、メトリック[t]を計算してメトリック合計部22に出力する。
【0098】
メトリック計算パラメタ#tは、例えば、UE間の公平性に考慮したスケジューリングのために、過去のUEの平均レートに対するスループットの比率をメトリックとして計算するためのパラメタ、つまり、過去のUEの平均レート、または、平均レートに対応する数値である。各メトリック計算部#t(t=1…Nc)は、入力したメトリック計算パラメタ#tである平均レートに対するスループット[t]の比率を計算し、メトリック[t]としてメトリック合計部22に出力する。
【0099】
[パターン再生部]
パターン再生部23は、差分TP番号と差分UE番号を入力し、差分TP番号と差分UE番号に基づいて、リソース割り当てパターンを再生し、最適解保持部13に向けて出力する。このため、パターン再生部23は、各TPの送信先UE番号[i](i=1…Ntp)を保持し、入力した差分TP番号が示すTPの送信先UE番号[差分TP番号]を、差分UE番号の値に更新する。なお、差分TP番号以外の各TPの送信先UE番号[i](i=1…Ntp、i≠差分TP番号)の値は、変更しないで、これまでの値を保持する。これらTPの送信先UE番号[i](i=1…Ntp)は、メトリック合計部22が出力する評価値とともに、評価値に対応するリソース割り当てパターンとして、最適解保持部13に向けて出力するために使用される。
【0100】
[遅延制御部]
遅延制御部21は、パターン生成部11から入力した差分TP番号Iに対して、固定遅延D1を付与して各SINR計算部#t(t=1…Nc)に分配する。さらに、パターン生成部11から入力した差分TP番号Iと差分UE番号Jに対して、固定遅延D2を付与して送信状態生成部30Aに出力する。さらに、パターン生成部11から入力した差分UE番号Jに対して、固定遅延D3を付与してSINR計算パラメタ記憶部30Bに出力する。
【0101】
さらに、パターン生成部11から入力した差分TP番号Iに対して、固定遅延D4を付与して各メトリック計算部#t(t=1…Nc)に分配する。さらに、パターン生成部11から入力した差分UE番号Jに対して、固定遅延D5を付与してメトリック計算パラメタ記憶部30Cに出力する。さらに、パターン生成部11から入力した差分TP番号Iと差分UE番号Jに対して、固定遅延D6を付与してパターン再生部23に出力する。
【0102】
これらの遅延によって、各SINR計算部#t(t=1…Nc)に入力される、差分TP番号I、送信フラグ[i](i=1…Ntp)、SINR計算パラメタ[J]の、各入力タイミングを調整する。さらに、各メトリック計算部#t(t=1…Nc)に入力される、差分TP番号I、スループット[t]、メトリック計算パラメタ[J]の各入力タイミングを調整する。さらに、メトリック合計部22が最適解保持部13に向けて出力する評価値と、パターン再生部23が最適解保持部13に向けて出力するリソース割り当てパターンの各出力タイミングを調整する。
【0103】
SINR計算部#t(t=1…Nc)に入力される、差分TP番号I、送信フラグ[i](i=1…Ntp)、SINR計算パラメタ[J]を同時に入力するときの、D1…D3の各固定遅延として付与すべき値は、D1=Dc、D2=Dc−Da、D3=Dc−Dbである。なお遅延値において、送信状態生成部30Aが差分TP番号Iと差分UE番号Jを入力してから送信フラグ[i](i=1…Ntp)を各SINR計算部#t(t=1…Nc)に向けて出力するまでの遅延をDa、SINR計算パラメタ記憶部30Bが差分UE番号Jを入力してからSINR計算パラメタ[J]を各SINR計算部#t(t=1…Nc)に向けて出力するまでの遅延をDb、DaとDbのうち値がより大きいほうの遅延値をDcとしている。
【0104】
メトリック計算部#t(t=1…Nc)に入力される、差分TP番号I、スループット[t](t=1…Nc)、メトリック計算パラメタ[J]を同時に入力するときの、D4…D5の各固定遅延として付与すべき値は、D4=Dg、D5=Dg−Dfである。なお遅延値において、各SINR計算部#t(t=1…Nc)が差分TP番号Iを入力してからSINR[t](t=1…Nc)を各スループット計算部#t(t=1…Nc)に向けて出力するまでの遅延をDd、各スループット計算部#t(t=1…Nc)がSINR[t]を入力してからスループット[t](t=1…Nc)を各メトリック計算部#t(t=1…Nc)に向けて出力するまでの遅延をDe、メトリック計算パラメタ記憶部30Cが差分UE番号Jを入力してからメトリック計算パラメタ[J]を各SINR計算部#t(t=1…Nc)に向けて出力するまでの遅延をDf、D1+Dd+DeとDfのうち値がより大きいほうの遅延値をDgとしている。
【0105】
メトリック合計部22が出力する評価値と、パターン再生部23が出力するリソース割り当てパターンとを同時に最適解保持部13に向けて出力するときの、D6として付与すべき値は、D6=Dk−Djである。なお遅延値において、各メトリック計算部#t(t=1…Nc)が差分TP番号Iを入力してからメトリック[t]をメトリック合計部22に向けて出力するまでの遅延をDh、メトリック合計部22が各メトリック[t] (t=1…Nc)を入力してから評価値を最適解保持部13に向けて出力するまでの遅延をDi、パターン再生部23が差分TP番号Iと差分UE番号を同時に入力してからリソース割り当てパターンを最適解保持部13に向けて出力するまでの遅延をDj、D4+Dh+DiとDjのうち、値がより大きい方の遅延値をDkとしている。
【0106】
上記遅延の付与にあたって、各部は、クロックに同期して動作する同期回路であり、クロック周期の整数倍の遅延が各部に生じることを前提としている。また、各部の遅延が1クロック周期または、全て同一クロック周期である必要は、ないが、パターン生成部11がリソース割り当てパターンを生成する周期Tは、クロック周期の整数倍であり、各部の遅延は、Tの整数倍である。なお、入力から出力までの遅延が1クロック周期より短い回路、つまり、入力から出力の間に同期式フリップフロップが挿入されていない回路は、遅延0とみなす。
【0107】
また、遅延がパターン生成部11がリソース割り当てパターンを生成する周期Tの2倍以上である回路については、回路が、ステージ1段あたりの遅延が周期Tとなるパイプライン構造を備える必要がある。例えば、各SINR計算部#t(t=1…Nc)が、差分TP番号I、送信フラグ[i](i=1…Ntp)、SINR計算パラメタ[J]を同時に入力してから信号電力値Psと干渉ノイズ電力値Piを計算するまでを1段めのステージとし、Ps/Piの計算を2段めのステージとなるパイプライン構造とすることである。
【0108】
このように、遅延制御部21は、SINR計算パラメタ記憶部30Bが差分UE番号を入力するタイミングとメトリック計算パラメタ記憶部30Cが差分UE番号を入力するタイミングとの差により、差分UEのSINRを計算する段階から差分UEのメトリックを計算する段階までの処理遅延に相当する、SINR計算パラメタ記憶部30Bが差分UEのSINR計算パラメタをSINR計算部31に出力してからメトリック計算パラメタ記憶部30Cが差分UEのメトリック計算パラメタをメトリック計算部33に出力するまでの遅延を付与できる。
【0109】
[効果4]
本発明の構成によれば、上記のように、遅延制御部21が、パターン生成部11から入力した差分TP番号と差分UE番号に対して固定遅延を付与し、各SINR計算部#t(t=1…Nc)、送信状態生成部30A、SINR計算パラメタ記憶部30B、各メトリック計算部#t(t=1…Nc)、メトリック計算パラメタ記憶部30C、パターン再生部23に入力する。これにより、各SINR計算部#t(t=1…Nc)、各メトリック計算部#t(t=1…Nc)、SINR計算パラメタ記憶部30B、メトリック計算パラメタ記憶部30C、の各々について入力信号間の入力タイミングを調整する。また、最適解保持部13に向けて出力する各信号間の出力タイミングを調整する。
【0110】
構成をとらなくとも、タイミングを調整すべき各入力信号や各出力信号に対して、直接遅延を付与する構成を採用することも可能である。
図5は、第1の実施の形態にかかるパターン評価部の他の構成を示すブロック図である。
図5に示した構成では、SINR計算パラメタ記憶部30Bとメトリック計算パラメタ記憶部30Cは、同時に差分UE番号Jを入力する(パターン生成部11から入力した差分UE番号Jに対して固定遅延D3を付与してSINR計算パラメタ記憶部30Bとメトリック計算パラメタ記憶部30Cの両方に入力する)。
【0111】
この構成では、差分UE番号Jに対して、(D5−D3)の遅延を与える必要は、ないが、メトリック計算パラメタ記憶部30Cが出力するメトリック計算パラメタ[J]に対して、(D5−D3)の遅延を付与する必要が生じる。
図5に示した構成は、
図4に示した構成と比較して、メトリック計算パラメタ記憶部30Cが出力するメトリック計算パラメタ[J]に対して(D5−D3)の遅延を付与するために、遅延制御部21Aが追加される。
【0112】
なお、
図5の遅延制御部21は、
図4の遅延制御部21と比較して、メトリック計算パラメタ記憶部30Cに入力する差分UE番号Jに対してD5よりも小さいD3の遅延を与えているが、両者とも、パターン再生部23に入力する差分UE番号Jに対してD6(D6>D5)の遅延を与えるために、差分UE番号JをD6だけ遅延させるためのメモリ量が必要となる。したがって、
図5の構成において遅延制御部21が使用するメモリ量は、
図4の構成において遅延制御部21が使用するメモリ量は、変わらない。
【0113】
図5に示した構成では、遅延制御部21Aが、メトリック計算パラメタ記憶部30Cが出力するメトリック計算パラメタ[J]に対して(D5−D3)の遅延を付与するために、メトリック計算パラメタのビット数*(D5−D3)/Tのメモリ量が増加する。したがって、
図5のように、メトリック計算パラメタ記憶部30Cからメトリック計算パラメタを読み出した後にパイプライン処理時間に応じて遅延させる構成と比較して、
図4のように、メトリック計算パラメタを記憶するメトリック計算パラメタ記憶部30Cから読み出すための信号である差分UE番号Jを遅延させる構成の方が、メトリック計算パラメタに対して遅延を与えるためメモリが不要となるので、スケジューリング装置10の低コスト化を実現することが可能となる。
【0114】
[本実施の形態のバリエーション]
本実施の形態において、最適解保持部13は、パターン生成部11が生成した複数個のリソース割り当てパターンのうち、リソース割り当てパターンに基づいてパターン評価部12が算出した評価値が最良となったときのリソース割り当てパターンを最適リソース割り当てパターンとして、外部に出力する。
【0115】
この際、リソース割り当てパターンを生成する毎に、当該リソース割り当てパターンに基づいてパターン評価部12が算出した評価値と、最適解保持部13が保持している評価値を比較し、前者の方が良いと判断される場合は、前者のリソース割り当てパターンを最適リソース割り当てパターンとして採用し、後者の方が良いと判断される場合は、最適リソース割り当てパターンの更新を行わないようにしてもよい。
【0116】
これにより、スケジューリング装置10は、リソース割り当てパターン範囲設定内の全リソース割り当てパターンに対して処理を終えた時点、または、スケジューリング周期時間を経過した時点で、最適解保持部13が保持する最適リソース割り当てパターンを出力する。なお、最適リソース割り当てパターンと併せて、最適解保持部13が保持する評価値を出力することも可能である。
【0117】
本実施の形態は、パターン評価部12内のUE別のメトリック計算におけるパイプライン処理の構成に関するものである。本実施の形態で示したパターン生成部11が採用するリソース割り当てパターンの生成手順に限らず、前回生成のリソース割り当てパターンとの差分が、最大1個の差分TP番号と最大1個の差分UE番号によって表されるような、リソース割り当てパターンの生成を行う手順を備えたパターン生成部11であれば、本実施の形態のパターン評価部12を適用できる。
【0118】
また、本実施の形態のパターン生成部11が採用するリソース割り当てパターンの生成手順のように、あらかじめ定められた順番に従って次々とリソース割り当てパターンを生成するのでは、なく、過去のリソース割り当てパターンに対する評価値に基づいて生成パターンを改善し、より少ないリソース割り当てパターンの生成回数で最適なリソース割り当てパターンを見つけ出す生成手法を採用した装置のパターン評価部12として、本実施の形態のパターン評価部12を適用できる。
【0119】
具体的には、リソース割り当てパターンに対して計算した評価値が、過去に計算した評価値と比較して良好であった場合に、その評価値を得たときのリソース割り当てパターンまたは、そのパターンの一部(比較した評価値に対するリソース割り当てパターンとの差分)をパターン生成部11にフィードバックする。このとき、フィードバック直後に生成されるリソース割り当てパターンと、フィードバック直前に生成された最後のリソース割り当てパターンとの差分が、最大1個の差分TP番号と最大1個の差分UE番号によって表されるようなリソース割り当てパターンの生成を行う手順であれば、本実施の形態のパターン評価部12を適用できる。
【0120】
また、本実施の形態では、NcをTP数に一致させた構成(Nc=Ntpの構成)により、TP数分の並列化された回路で各UE別のメトリック計算を同時に行っている。本実施の形態では、各並列化された各回路#t(SINR計算部#1…#Nc、スループット計算部#1…#Nc、メトリック計算部#1…#Nc)は、TP#tの送信先となったUEのSINR・スループット・メトリックを計算するための回路であるが、各回路とTPを固定的に割り当てるのでは、なく、リソース割り当てパターンに含まれる各UE(何れか1個以上のTPについて送信先となったUE)に対して、動的に各回路に割り当てる(前回のリソース割り当てパターンから消えたUEに割り当てていた回路を回収するとともに前回のリソース割り当てパターンから追加されたUEに回収された回路を割り当てる)装置にも、本実施の形態で採用したUE別のメトリック計算におけるパイプライン処理の構成を適用できる。
【0121】
上記の動的に各回路に割り当てる装置は、パターン生成部11が複数個のTPから1個のUEに宛てて送信するJoint Transmissionを行うリソース割り当てパターンを生成する場合に、パターンに対するUE別評価値の計算が可能であるため、Joint Transmissionによって評価値を改善できる場合に、Joint Transmissionの適用有無や、適用時のTPの組み合わせ方などJoint Transmissionを適用する場合の選択肢のなかから、最適にJoint Transmissionを取り入れたリソース割り当てパターンを得ることができる。
【0122】
[第2の実施の形態]
次に、
図6を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるスケジューリング装置10について説明する。
図6は、第2の実施の形態にかかるパターン評価部の構成を示すブロック図である。なお、スケジューリング装置10の全体構成は、前述した
図1と同じであるため、説明を省略する。
【0123】
本実施の形態において、パターン評価部12には、主な回路部として、パイプライン処理部20、遅延制御部21、メトリック合計部22、およびパターン再生部23が設けられている。また、パイプライン処理部20は、互いに並列動作する複数のパイプライン処理系P#1…P#Ncと、パラメタテーブルTBとから構成されており、各パイプライン処理系P#t(t=1…Nc)には、UE別メトリックの計算段階Sn(n=1…SNs)における計算処理をそれぞれ行う複数のステージ計算部3nが設けられている。
【0124】
図6の構成例では、パラメタテーブルTBとして、送信状態生成部40A、TPリスト記憶部40B、受信電力リスト記憶部40C、およびメトリック計算パラメタ記憶部40Dからなる4つのパラメタテーブルが設けられている。また、各パイプライン処理系P#tには、ステージ計算部4nとして、SI判定部41、SIN電力計算部42、SINR演算部43、スループット計算部44、およびメトリック計算部45からなる5つのパイプラインステージが設けられている。
【0125】
なお、本実施の形態にかかる送信状態生成部40A、スループット計算部44、メトリック計算部45、メトリック合計部22、メトリック計算パラメタ記憶部40D、パターン再生部23は、第1の実施の形態における送信状態生成部30A、スループット計算部32、メトリック計算部33、メトリック合計部22、メトリック計算パラメタ記憶部30C、パターン再生部23と同様であるため、説明を省略する。
【0126】
[TPリスト記憶部]
TPリスト記憶部40Bは、各UE#j(j=1…Nue;Nueは、スケジューリング装置10が扱うことが可能なUE数の最大値)の有意な受信が可能なTP番号のリスト(メジャメントセットに含まれる各TPのTP番号リスト)をTPリスト[j]として記憶し、差分UE番号Jを入力して差分UEに対応するTPリスト[J]を各SI判定部#1…#Ncに分配する。
【0127】
TPリスト記憶部40Bが記憶する値は、外部よりのアクセスにより設定・更新が可能である。TPリスト記憶部40Bの回路実装において、SRAM(スタティックランダムアクセスメモリ)を用いることが可能である。SRAMのワード数をNue(スケジューリング装置10が扱うことが可能なUE数の最大値)とし、各ワードに各UEのTPリストを格納し、入力した差分UE番号JからUE#JのTPリスト[J]を格納したワードのアドレス(例えばアドレス=差分UE番号J−1)に変換して、SRAMのリードアクセスを行うことで、SRAMのリードデータがTPリスト[J]となる。
【0128】
[受信電力リスト記憶部]
受信電力リスト記憶部40Cは、各UE#j(j=1…Nue)の有意な受信が可能な各TPからの送信を干渉が最小化された条件で受信するときの受信電力値または、SNR(Signal-to-Noise power Ratio:雑音電力の和に対する信号電力の比率)を、受信電力リスト[j]として記憶し、差分UE番号Jを入力して差分UEに対応する受信電力リスト[J]を各SIN電力計算部#1…#Ncに向けて出力する。
【0129】
受信電力リスト記憶部40Cが記憶する値は、外部よりのアクセスにより設定・更新が可能である。受信電力リスト記憶部40Cの回路実装において、SRAM(スタティックランダムアクセスメモリ)を用いることが可能である。SRAMのワード数をNueとし、各ワードに各UEの受信電力リストを格納し、入力した差分UE番号JからUE#Jの受信電力リスト[J]を格納したワードのアドレス(例えばアドレス=差分UE番号J−1)に変換して、SRAMのリードアクセスを行うことで、SRAMのリードデータが受信電力リスト[J]となる。
【0130】
なお、本実施の形態にかかるこれらTPリスト[j]と受信電力リスト[j]は、前述した第1の実施の形態に示した各UE#j(j=1…Nc)のSINR計算パラメタに対応する。
【0131】
[SI判定部]
SI判定部#t(t=1…Nc)は、遅延制御部21から差分TP番号Iを入力する。ここで、t=IのSI判定部#t、すなわち、差分TPの送信先である差分UEに対応するSI判定部#tは、TPリスト記憶部40BからTPリスト[J]を入力し、これを、TPリスト#tとして保持する。一方、t≠IのSI判定部#tについては、前回から保持していたTPリスト#tを保持し続ける。
【0132】
次に、SI判定部#tは、TPリスト#tと各TPの送信の有無を表す送信フラグ[i](i=1…Ntp、値が1の場合は、TP#iが送信中であることを表すビット)に基づいて、TPリスト#tに含まれる各TPが信号源であるか干渉源であるか送信停止であるかを判定し、SI判定結果[t]としてSIN電力計算部#tに出力する。
【0133】
[SIN電力計算部]
SIN電力計算部#t(t=1…Nc)は、遅延制御部21から差分TP番号Iを入力する。ここで、t=IのSIN電力計算部#t、すなわち、差分TPの送信先である差分UEに対応するSIN電力計算部#tは、受信電力リスト記憶部40Cから受信電力リスト[J]を入力し、これを受信電力リスト#tとして保持する。一方、t≠IのSIN電力計算部#tについては、前回から保持していた受信電力リスト#tを保持しつづける。
【0134】
次に、SIN電力計算部#tは、SI判定部#tから入力したSI判定結果[t]に含まれる各TPの信号源であるか干渉源であるか送信停止であるかの判定結果と、受信電力リスト#tに含まれるTPからの受信電力値(あるいは、SNR)に基づいて、信号電力や干渉電力の計算を行う。具体的には、TPが信号源である場合は、TPからの受信電力値(あるいは、SNR)を信号電力に加える。また、TPが干渉源である場合には、TPからの受信電力値(あるいは、SNR)を干渉電力に加える。さらに、処理に加えて、干渉電力にノイズ電力値(受信電力リストがSNRの場合は、1)を加算して干渉ノイズ電力とする。その後、の信号電力および干渉ノイズ電力を、SIN電力[t]としてSINR演算部#tに出力する。
【0135】
[SINR演算部]
SINR演算部#t(t=1…Nc)は、SIN電力計算部#tからSIN電力[t]を入力し、SIN電力[t]に含まれる信号電力と干渉ノイズ電力に基づいて、干渉ノイズ電力に対する信号電力の比を計算して、SINR[t]としてスループット計算部#tに出力する。
【0136】
[遅延制御部]
遅延制御部21は、パターン生成部11から入力した差分TP番号と差分UE番号に対して、各SI判定部#t(t=1…Nc)、各SIN電力計算部#t(t=1…Nc)、各メトリック計算部#t(t=1…Nc)、送信状態生成部40A、TPリスト記憶部40B、受信電力リスト記憶部40C、メトリック計算パラメタ記憶部40D、の各々について入力信号間の入力タイミングを調整するために、遅延を付与する。また、最適解保持部13に向けて出力する各信号間の出力タイミングを調整するために、遅延を付与する。
【0137】
これにより、遅延制御部21は、TPリスト記憶部40Bが差分UE番号を入力するタイミングと受信電力リスト記憶部40Cが差分UE番号を入力するタイミングとの差によって、差分UEのSI判定結果を取得する段階(メジャメントセット内の各TPが信号源/干渉源であるかの判定を行う段階)から差分UEのSIN計算結果を取得する段階(信号電力および干渉ノイズ電力を計算する段階)までの処理遅延に相当する、TPリスト記憶部40Bが差分UEのTPリストをSI判定部41に出力してから受信電力リスト記憶部40Cが差分UEの受信電力リストをSIN電力計算部42に出力するまでの遅延を与える。
【0138】
本実施の形態においても、第1の実施の形態において示した各効果[効果1]…[効果4]が得られる。特に、効果1については、例えば、SI判定、SIN電力計算、SINR演算、スループット計算、メトリック計算、を各1クロックでパイプパイン処理する回路の場合、パイプライン処理しない構成(5クロックで1個のパターンに対してSINR計算からメトリック計算までを行う構成)と比較して、5倍の処理性能を得ることができる。
【0139】
また、[効果4]については、本実施の形態によって、受信電力リストを記憶する受信電力リスト記憶部40Cから読み出すための信号である差分UE番号Jを遅延させる構成の方が、受信電力リスト記憶部40Cから読み出した受信電力リストに対して遅延を与える構成よりも、受信電力リストに対する遅延のためメモリが不要となるので、スケジューリング装置10の低コスト化を実現することが可能となる。
【0140】
[第3の実施の形態]
次に、
図7を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかるスケジューリング装置10について説明する。
図7は、第3の実施の形態にかかるスケジューリング装置の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、本実施の形態にかかるスケジューリング装置10には、主な機能部として、パターン生成部11、パターン評価部12、最適解保持部13に加えて、CQI変換部14が設けられている。パターン生成部11、パターン評価部12、および最適解保持部13については、第2の実施の形態と同じであり説明を省略する。
【0141】
[CQI変換部]
CQI変換部14は、UE#j(j=1…Nue)のCQI(Channel Quality Indicator)の値を設定・変更する際、新たなCQIを受信電力リストに含まれる受信電力値(あるいは、SNR)の数値に変換して、パターン評価部12内の受信電力リスト記憶部40Cの受信電力リスト[j]に設定・更新する機能を有している。
【0142】
上記CQIは、UEが各TPからの受信信号品質を測定して上りチャネルを通じて基地局に通知した情報であり、受信電力値(あるいは、SNR)の数値を表すための情報量(ビット数)よりも少ない情報量(ビット数)で表現された値である。CQIの値を受信電力値(あるいは、SNR)に変換するためには、CQIの各値と、そのCQIに対応する受信電力値(あるいは、SNR)の値のCQI対応表を用意しておき、外部から入力されたCQIから、CQI対応表を参照して、受信電力値(あるいは、SNR)に変換する。
【0143】
なお、CQI値は、受信電力値(あるいは、SNR)がデシベル換算された値に相当し、CQI値に固定係数を乗算することで受信電力値(あるいは、SNR)に変換できない。また、SIN電力計算部#t(t=1…Nc)は、UE#jのSINRを計算するために必要な受信電力(あるいは、SNR)を、受信電力リスト[j]から取得して、これらの値を加算することによって信号電力や干渉電力を計算するが、受信電力(あるいは、SNR)がデシベル換算されたCQI値を加算して干渉電力を計算することは、できない。
【0144】
このように、CQI変換部14は、UE#jのCQIを、パターン評価部12内で受信電力値(あるいは、SNR)の加算によって信号電力や干渉電力を取得するために必要な受信電力値(あるいは、SNR)の形式に変換する。
【0145】
したがって、本実施の形態の構成は、スケジューリング装置10の外部において、CQIから受信電力値(あるいは、SNR)の形式に変換した上で、パターン評価部12を設定・変更する構成と比較して、スケジューリング装置10内でCQIから受信電力値(あるいは、SNR)の形式に変換することになる。
これにより、受信電力値(あるいは、SNR)の表現に必要な情報量(ビット数)よりも少ない情報量(ビット数)で表現可能なCQIを外部から入力するので、外部からスケジューリングに必要なパラメタの設定・更新を行うときの、装置が入力する情報量を削減することができる、という効果が得られる。
【0146】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものでは、ない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。