(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シート状被覆体を厚み方向から見た場合に、前記感温部の輪郭線の少なくとも一部は、前記透明部の輪郭線の一部又は全部と共通することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載のシート状被覆体。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る医療用のシート状被覆体の1つの実施形態について、
図1〜
図16を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0025】
<第1の実施形態>
図1、2は、本発明に係る医療用のシート状被覆体としての第1の実施形態であるシート状被覆体1を示すものである。具体的に、
図1は、シート状被覆体1が生体の体内にある脈管の一部を覆うように体表面に取り付けられた状態を示す断面図である。また、
図2は、体表面に取り付け可能な状態にあるシート状被覆体1を、シート状被覆体1の厚み方向Aから見た図である。ここで、シート状被覆体1が体表面に取り付け可能な状態とは、例えば、後述する剥離層61(
図14参照)等が取り除かれている状態であって、体表面に取り付けられて使用される状態と同じ状態を意味する。なお、
図1における「BS」は体表面を表し、「VE」は脈管を表している。
【0026】
図1に示すように、シート状被覆体1は、例えば抗癌剤などの薬液や、栄養剤を体内の脈管内に投与する際に生体の体表面から体内に挿入された、管状部材100の遠位端101を体内に留置した状態で、体表面における管状部材100の挿入口102を覆うように、体表面に取り付けられるものである。シート状被覆体1が挿入口102を覆うように取り付けられることにより、細菌等が挿入口102を通じて体外から体内へと入り込むことを抑制することができる。
【0027】
なお、「脈管」とは、生体の体内にあって体液を通す管であり、例えば血管やリンパ管が挙げられる。上述の抗癌剤や栄養剤の投与には、脈管として、腕の静脈血管が通常は利用される。また、「管状部材」とは、中空部を区画する管状の部材であって、例えば内筒と外筒とを備える留置針や、翼状針や、これらの針を一部として含む、薬液等を投与するためのチューブなどが挙げられる。更に、体表面上における管状部材の挿入口とは、体表面に管状部材が穿刺されることによって体表面上に形成された開口を意味するものである。
【0028】
図2に示すように、シート状被覆体1は、透明部2と、シート状被覆体1の延在方向B(シート状被覆体1を厚さ方向Aから見た場合のシート平面)において透明部2の近傍に位置する感温部3と、透明部2及び感温部3以外の延在部4と、を備える。
【0029】
図1に示すように、シート状被覆体1は、透明部2が体表面上における管状部材100の挿入口102を少なくとも覆うように、体表面上に取り付けられる。シート状被覆体1が体内にある脈管の一部を覆うように体表面に取り付けられた状態において、感温部3は、透明部2の少なくとも一部に対して、脈管の延在方向と略平行な方向Cに位置し、体表面と接触している。
【0030】
感温部3は、温度に応じて色を変化させる部分であって、体表面の温度変化に応じて色を変化させる。そのため、感温部3は、抗癌剤などの薬液や、栄養剤などが体内に投与されることによって生じる体表面の温度変化を、色の変化として可視化することができる。
【0031】
以下、シート状被覆体1の各部の構成及びその他の特徴的な構成について、詳細に説明する。
【0032】
[透明部2]
透明部2とは、体表面に取り付け可能な状態のシート状被覆体1を厚み方向Aから見た場合に、厚み方向Aにおいて透明な領域である。より具体的には、同状態のシート状被覆体1を同方向Aから見た場合に、厚み方向Aにおいて光透過性を有する部材により構成される領域である。そして透明部2は、体表面に対して管状部材100の挿入口102を覆うように取り付けられることから、透明部2は、挿入口102を覆い保護すると共に、医療従事者などのユーザーが挿入口102を外部から視認することを可能にする。
【0033】
図3は、シート状被覆体1の厚み方向Aにおける積層構造の詳細を示す、
図2のおけるI―I断面図である。なお、
図1では、説明の便宜上、透明部2、感温部3、及び延在部4それぞれの厚み方向Aにおける積層構造を省略しているが、実際の構成は
図3に示す積層構造を有している。また、
図3は、各部位での積層関係を示すものであり、各部位の各層の実際の厚みを表すものではなく、各層の実際の厚みについては、目的や用途等に応じて適宜設定することが可能である。
【0034】
図3に示すように、本実施形態における透明部2は、シート状の透明な樹脂層2aで構成されている。本実施形態では、樹脂層2aの材料としてポリウレタンを使用しているが、この材料に限られるものではなく、例えば、アクリル重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテルポリエステル、ポリアミド誘導体などを使用することができる。特に、アクリル重合体、ポリウレタン、ポリエーテルポリエステル、及びポリアミド誘導体は、水蒸気透過性に優れているとともに高い透明性を有するため、樹脂層2aの材料として好適である。なお、本実施形態における透明部2は、樹脂層2aの単層構造としているが、例えば
図4に示すように、樹脂層2aと、樹脂層2aのうち体表面側となる面に積層される透明接着部9としての接着層2bと、を備える、複数層の透明部2´としてもよい。
【0035】
接着層2bを有する構成とすれば、接着層2bが、挿入口102の周辺で体表面と接触し、透明部2と体表面とを接着するため、管状部材100のうち、挿入口102付近で体外に延在する部分が動いてしまうことが抑制される。更に、細菌等が体外から挿入口102を通じて体内に入り込むことを、接着層2bを備えない構成と比較して、一層抑制することができる。なお、接着層2bは、樹脂層2aの一面の一部に設けられていてもよい。ここで用いられる透明接着剤としては、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、シリコン系接着剤等が使用可能であるが、透明性が高いアクリル系接着剤を用いることが好ましい。
【0036】
なお、本実施形態における透明部2の樹脂層2aは、接続体8の一部である。接続体8についての詳細は後述する。
【0037】
また、本実施形態における透明部2は、無色透明な構成であるが、有色であってもよい。すなわち、一部の可視光のみを吸収し、他の光を透過する有色の透明部2としてもよい。
【0038】
更に、本実施形態における透明部2は、
図2に示すように、シート状被覆体1の一面を厚み方向Aから見た場合には四角形状をしているが、この形状に限られるものではなく、三角形状などの多角形状や、円形状や、楕円形状など、各種平面形状とすることが可能である。
【0039】
本実施形態における透明部2の厚みは、挿入口102付近における生体の体表面の凹凸や、管状部材100のうち体外に延在する部分の形状への追従性を考慮して、5μm〜150μmの範囲としているが、管状部材100の材質や長さ等、実際の使用条件に応じて任意の厚みを採用することが可能である。
【0040】
なお、本実施形態における透明部2は、後述する感温部3とは異なり、温度に応じて色を変化させる感温性能を有さない。従って、感温部3が温度に応じて色を変化させる所定温度領域において、本実施形態における透明部2は無色透明のままである。感温部3の感温性能については後述する。
【0041】
[感温部3]
感温部3は、体表面に取り付け可能な状態のシート状被覆体1を厚み方向Aから見た場合に、所定温度領域内で温度に応じて色を変化させる領域である。具体的に、感温部3は、体表面と接触する接触面5と、接触面5とは反対側の表示面6と、を有し、接触面5が体表面と接触した状態で、表示面6が接触面5から感知される体表面の温度に応じた色を表示する。従って、医療従事者などのユーザーは、外部から体表面の温度変化を、感温部3の表示面6を通じて観察することができる。
【0042】
図5は
図1と同じ断面を示す図であって、管状部材100の遠位端101の位置が
図1に示したものとは異なる。例えば、
図5に示すように、管状部材100の遠位端101が完全には脈管内に位置しておらず、管状部材100から脈管内に投与されるべき抗癌剤などの薬液等が、脈管から漏出している場合には、漏出している薬液等(
図5において「LM」で示す)によって管状部材100の遠位端付近の体表面の温度が変化するため、感温部3の接触面5によってその温度変化が感知され、表示面6によってその温度変化を色の変化として表示する。従って、例えば医療従事者などのユーザーは、脈管から薬液等が漏出しているか否かを感温部3により早期に確認することができる。ここで、「色の変化」とは、ある有色から別の有色への変化(変色)の他に、無色から有色への発色や、有色から無色への色の消失をも含む概念である。
【0043】
なお、薬液等の投与速度にもよるが、例えば投与速度が比較的速い場合には、薬液等が脈管内に正常に投与できている場合、脈管の延在方向に沿って体表面の温度変化が生じるため、薬液等が脈管外に漏出している場合の他に、感温部3によって脈管内に正常に投与できていることを確認することも可能である。
【0044】
次に、感温部3の厚み方向Aにおける積層構造について説明する。
図3に示すように、本実施形態における感温部3は、厚み方向Aにおいて複数の層が積層されることにより構成されている。
【0045】
図3に示すように、本実施形態における感温部3は、厚み方向Aにおいて、基材層3aと、感温材料としてのコレステリック液晶を含む、基材層3aの一面に積層される感温層3bと、この感温層3bを挟み基材層3aとは反対側に積層される暗色層としての黒色層3cと、基材層3aを挟んで感温層3b及び黒色層3cとは反対側に積層される表面層3eと、を備えている。本実施形態では、接触面5から表示面6に向かって、黒色層3c、感温層3b、基材層3a、表面層3eの順に積層されている。なお、「暗色」とは明るさの度合いが低い色であって、例えば黒色、深緑色、紺色、茶色などの色を意味するものである。
【0046】
本実施形態における基材層3aは、薄肉の透明なシート状のポリエステルにより構成されている。但し、基材層3aの材料は、本実施形態で用いるポリエステルに限られるものではなく、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、フッ素樹脂などであってもよい。
【0047】
基材層3aの厚みは、感温部3が体表面の凹凸や形状に追従可能な可撓性を有するように、5μm〜200μmの範囲としている。
【0048】
感温層3bは、感温材料としてコレステリック液晶を含むものである。コレステリック液晶は、螺旋状の構造を有しており、温度によって螺旋ピッチが変化するため、強く反射する光の波長も変化する。従って、可視光の波長領域においては、温度に応じて強く反射する可視光の波長が変化するため、視覚を通じて知覚される色も温度に応じて可逆的に変化する。
【0049】
感温層3bは、マイクロカプセル化された上述のコレステリック液晶を、適当なバインダー中に分散させることにより形成されたインクによって構成されている。すなわち、感温層3bは、このインクを基材層3aの一面に塗布することにより成形されている。ここで、インクが塗布される基材層3aの一面とは、基材層3aのうち、接触面5側の面である。
【0050】
なお、本実施形態における感温層3bの厚みは、体表面に凹凸や形状に追従することが可能な可撓性を考慮して、5μm〜100μmの範囲とされている。
【0051】
黒色層3cは、感温層3bにおいて選択反射される光による干渉色を強調し、表示面6において観察される色及び色の変化を鮮明にするものである。本実施形態では、黒色の塗料やインクを感温層3bに塗布又は印刷して積層することにより黒色層3cを形成しているが、例えば、黒色の樹脂シートを感温層3bに積層することにより黒色層3cを形成してもよい。黒色層3cの厚みは、体表面に凹凸や形状に追従することが可能な可撓性を考慮して3μm〜100μmとすることが好ましい。なお、本実施形態における感温部3は、この不透明な黒色層3cを備えるため、色の変化が観察可能な所定温度領域の内外を問わず常に不透明な構成である。
【0052】
表面層3eは、厚さが5μm〜50μm程度の透明な樹脂層である。表面層3eの材料としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂などが使用可能である。本実施形態では、表面層3eの材料としてポリウレタンを用いており、この表面層3eの一面が、感温部3の表示面6を構成する。
【0053】
なお、本実施形態の表面層3eは、上述した透明部2の樹脂層2aと同様、接続体8の一部である。接続体8の詳細については後述する。
【0054】
本実施形態における感温部3は、上述した4層構造であって、黒色層3cの一面が接触面5を構成し、表面層3eの一面が表示面6を構成しているが、上記構成に限らず、例えば
図6(a)に示すように、黒色層3cを挟んで感温層3b及び基材層3aとは反対側に、接着部7としての接着層3dを更に積層させる構成としてもよい。このような構成とした場合には、接着層3dが体表面と直接接触し、シート状被覆体1の体表面上での固定が容易となる。また、この構成の場合には、接着層3dの一面が感温部3の接触面5を構成する。接着層3dは接着剤により構成され、例えば、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、シリコン系接着剤等の接着剤が使用可能である。なお、
図6(a)では、接着部7としての接着層3dが、体表面と接触する接触面5の全域に設けられているが、接触面5の一部に設ける構成であってもよい。
【0055】
また更に、本実施形態の感温部3は、接触面5から表示面6に向かって、黒色層3c、感温層3b、基材層3a、表面層3eの順に積層される構成であるが、この構成に限らず、例えば、
図6(b)に示すように、接触面5から表示面6に向かって、接着部7としての接着層3d´、基材層3a´、感温層3b´、仕上層としての表面層3e´(接続体8の一部)の順に積層させた感温部3´としてもよい。このような構成とした場合には、基材層3a´は、体表面の温度を感温層3b´に速やかに伝えることができるように、5μm〜100μmの厚さとすることが好ましい。更に、感温層3b´により選択反射される光の干渉を強めるために、基材層3a´を黒色などの暗色の樹脂材料で構成することが好ましい。基材層3a´自体を暗色の樹脂材料で形成すれば、別途、黒色層を設ける必要がないため感温部3´の構成を簡素化できると共に、薄肉化により可撓性及び熱伝導性を良くすることができる。接着層3d´及び表面層3e´は、上述した接着層3d及び表面層3eと同様である。
【0056】
ここで、本実施形態では感温材料としてコレステリック液晶を用いているが、例えば、無機系としてAg
2HgI
4、Cu
2HgI
4、又はHgI
2などの金属錯塩類や、有機系としてスピロピラン類等の縮合芳香環化合物、アントロン類等の置換エチレン誘導体、及びクリスタルバイオレットラクトン等のラクトン環化合物などを感温材料として用いることも可能である。
【0057】
基材層3aの一面に感温材料を含む感温層3bを設ける加工方法についても、本実施形態における上述の方法の他に、例えば感温材料をそのまま基材層3aの一面に塗布する方法や、適切なバインダーを使用し感温材料をインク化して基材層3a上に印刷する方法などがあり、これらの方法を用いることも可能である。
【0058】
また、本実施形態で示す基材層3a、3a´と感温層3b、3b´とを積層させる感温部3、3´の構成の他に、
図7に示すような、感温材料を含む基材層3a´´と、当該基材層3a´´の一面に積層される表面層3e´´と、基材層3a´´を挟んで表面層3e´´と反対側に積層される黒色層3c´´と、を有する感温部3´´とすることも可能である。これらの層は、接触面5側から表示面6に向かって、黒色層3c´´、基材層3a´´、表面層3e´´の順に積層されている。基材層3a´´とは、高分子材料のマトリックス中にコレステリック液晶などの感温材料を保持させたものである。なお、感温部3´´の表面層3e´´や黒色層3c´´の構成は本実施形態における感温部3の表面層3eや黒色層3cと同様であり、表面層3e´´が、後述する接続体8の一部となる。また、感温部3´´の黒色層3c´´に、接着層を積層させることも可能である。
【0059】
次に、本実施形態における感温部3が色を変化させる所定の温度領域について説明する。本実施形態における感温部3は、所定温度領域として摂氏28℃〜摂氏38℃の範囲で色が変化するように構成されている。具体的に、厚み方向Aから感温部3の表示面6を見た場合に、表示面6において観察される感温部3の色は、感温層3bが感知する温度が摂氏28℃未満の場合に黒色を呈し、感温層3bが感知する温度が摂氏28℃から摂氏38℃に上昇するにつれて、赤色、橙色、黄色、緑色、青色の順で色が変化する。そして、感温層3bが感知する温度が摂氏38℃を超えた場合には青色を呈した状態のままとなる。なお、感温部3の色は、可逆的に変化するものであり、感温層3bが感知する温度が摂氏38℃から低下していく場合には、青色、緑色、黄色、橙色、赤色、黒色の順で再び変化することになる。
【0060】
上述の所定温度領域は、複数種のコレステリック液晶を混合することにより適宜設定することが可能である。そのため、薬液や栄養剤が脈管外に漏出することにより発生する体表面の温度変化を、色の変化として表示面6に高い精度で表すことを考慮すると、所定温度領域を摂氏31℃〜摂氏35℃とすることが特に好ましい。所定温度領域を上記範囲とすれば、前腕の皮膚表面温度(摂氏33℃程度)はこの範囲内になり、それよりも低い温度(室温)で投与された薬液等の漏出による体表面の温度変化を色の変化としてより高精度に表示することができる。
【0061】
なお、感温部3が色を変化させる所定温度領域は、上述の範囲に限られず、目的や用途に応じて適宜設定することが可能である。季節や薬液等が投与される環境、投与部位、冷え性など患者の持つ病態によって皮膚表面温度が異なるためである。また、本実施形態では、所定温度領域未満では黒色を呈し、所定温度領域より高い温度では青色を呈する感温部としているが、感温材料の種類や、感温部の形成手法を変更することにより、所定温度領域外で無色であって所定温度領域内で発色する感温部とすることも可能である。更に、複数の異なる温度領域で色の変化を確認したい場合には、色を変化させる所定温度領域が互いに異なる複数の感温材料を混合することにより感温部を形成するようにすればよい。
【0062】
このように、感温部3は、既存の各種方法により実現可能なものであり、本実施形態で記載する構成に限られるものではない。
【0063】
また、本実施形態における感温部3は、厚さ方向Aから見た場合には四角形状をしているが、後述するように、透明部2との位置関係によって様々な形状とすることが可能である(
図8参照)。
【0064】
[延在部4]
延在部4は、シート状被覆体1を厚み方向Aから見た場合の、透明部2及び感温部3以外の領域である。
図3に示すように、本実施形態における延在部4は、透明な樹脂層4aと、樹脂層4aに積層される接着層4bと、を備えている。シート状被覆体1を体表面に取り付ける際に体表面側となる面から、接着層4b、樹脂層4aの順に積層されている。
【0065】
透明の樹脂層4aは、上述の透明部2で用いられる材料と同様の材料を用いることが可能であり、本実施形態ではポリウレタン樹脂を使用している。また、本実施形態の接着層4bは、不織布で構成される不透明な布テープとしている。なお、本実施形態の延在部4は、接着層4bとして上述の不透明な布テープを使用しているため、透明部2の一部を構成しない。
【0066】
また、透明な樹脂層4aは、上述した透明部2の樹脂層2a及び感温部3の表面層3eと同様、後述する接続体8の一部である。接続体8の詳細については後述する。
【0067】
[接続体8]
次に、透明部2と感温部3とを接続する構成について、
図3を参照して説明する。シート状被覆体1は、透明部2及び感温部3を接続する接続体8を備えており、本実施形態における接続体8は、透明な樹脂シートである。
図3に示すように、接続体8は、透明部2、感温部3、及び延在部4の厚み方向Aにおける1つの層を構成している。具体的に、本実施形態では、透明部2は透明な樹脂層2aの単層構造であり、この樹脂層2aは接続体8の一部である。また感温部3については、表面層3eが接続体8の一部である。更に、延在部4については、樹脂層4aが接続体8の一部である。このように、本実施形態における透明部2、感温部3、及び延在部4はいずれも、厚み方向Aにおいて共通の接続体8(2a、3e及び4a)を1つの層として備えており、一体化されている。
【0068】
本実施形態における接続体8としての透明な薄肉の樹脂シートは、例えば、ポリウレタンにより構成されており、その厚さは5μm〜150μmの範囲内とされている。但し、接続体8の材料は、ポリウレタンに限らず、例えば、アクリル重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテルポリエステル、ポリアミド誘導体などを使用することができる。
【0069】
なお、接続体8(2a、3e及び4a)と他の層とは、例えば接着剤等による接着や、融着などにより接続される。
【0070】
また、本実施形態における接続体8は、透明部2、感温部3、及び延在部4それぞれの一面の全領域に広がっているが、例えば、延在方向Bにおける各部の一部の領域に積層されている構成であってもよい。更に、本実施形態では、接続体8は、透明部2の樹脂層2a、感温部3の表面層3e、及び延在部4の樹脂層4aを構成しているが、これらの層に限られるものではなく、例えば、感温部3の表面層3eの代わりに、基材層3aを構成するようにすることも可能である。
【0071】
また、本実施形態では、単層の接続体8が、透明部2の樹脂層2a、感温部3の表面層3e、及び延在部4の樹脂層4a全てを構成しているが、複数の接続体を用いて、これら複数の接続体同士を接続する複合的な接続体としてもよい。複合的な接続体48についての詳細は第5の実施形態として後述する(
図15及び
図16(a)、(b)参照)。
【0072】
[透明部2と感温部3との位置関係]
ここまでは、シート状被覆体1の各部の構成について説明してきた。次に、シート状被覆体1の1つの特徴として、シート状被覆体1を厚さ方向Aから見た場合の透明部2と感温部3との位置関係について説明する。
【0073】
透明部2と感温部3とは、シート状被覆体1の延在方向Bにおいて近傍に位置する。このような配置とすることにより、透明部2で覆われた挿入口102から挿入された、管状部材100の遠位端101の付近の体表面に、感温部3を接触させることが可能となるためである。
【0074】
本実施形態では、
図2に示すように、透明部2と感温部3との最短距離Lminを、管状部材100の挿入口102から体内に延在している部分(
図1、
図5参照)の長さを考慮して5mmとしている。管状部材100のうち挿入口102から体内に延在する部分の長さは、例えば薬液としての抗癌剤を、脈管としての腕の静脈血管から投与する場合、通常、20mm〜30mm程度であるため、透明部2と感温部3との間の最短距離Lminを20mm以下としておけば、医療従事者は、抗癌剤が静脈血管から漏出しているか否かを、感温部3を通じて観察することができる。具体的に、透明部2と感温部3とを腕の静脈血管の延在方向に沿うように体表面に取り付け、透明部2のうち感温部3に近い位置で挿入口102を覆うようにすれば、管状部材100の遠位端101が感温部3の付近まで到達するため、感温部3により抗癌剤の漏出を感知することが可能となる。
【0075】
なお、管状部材100のうち挿入口102から体内に延在する部分の長さは、管状部材の種類や、管状部材が挿入される体表面の位置等によっても異なるため、感温部3において薬液等による体表面の温度変化が感知できる範囲において、最短距離Lminを20mmより大きくすることも可能であるが、様々な使用条件を考慮すると、最短距離Lminは20mm以下としておくことが好ましい。
【0076】
但し、透明部2のうち挿入口102を実際に覆う位置は、シート状被覆体1を扱うユーザーによっても異なり、この位置に応じて透明部2に対する管状部材100の遠位端101の位置が変わるため、最短距離Lminを0mmとして、透明部2と感温部3とを隣り合わせて配置することが最も好ましい。透明部2と感温部3とを隣り合わせて配置する構成の詳細については後述する(
図10等参照)。
【0077】
更に本実施形態では、
図1に示すように、シート状被覆体1が生体の体内にある脈管の一部を覆うように体表面に取り付けられた状態において、感温部3は、透明部2のうち挿入口を覆う部分に対して、シート状被覆体1の延在方向Bのうち、脈管の延在方向と略平行な方向Cに位置する。すなわち、シート状被覆体1を厚み方向Aから見た場合に、脈管の延在方向に沿って、透明部2の少なくとも一部と、感温部3の少なくとも一部とが並んでいる構成となっている。
【0078】
透明部2は、体表面上における挿入口102を少なくとも覆っており、管状部材100のうち、挿入口102から体内に延在する部分は、脈管の延在方向に沿って延在することになる。従って、管状部材100の遠位端101は、透明部2のうち挿入口102を覆う部分に対して、脈管の延在方向と略平行な方向に位置することになる。そのため、感温部3を、透明部2のうち挿入口102を覆っている部分に対して、脈管の延在方向と平行な方向Cに少なくとも位置するようにすれば、たとえ、管状部材100の遠位端101が脈管外にあったとしても、管状部材100の遠位端101の付近に感温部3を位置させる可能性が高まるため、このような配置とすることが好ましい。
【0079】
なお、本実施形態では、シート状被覆体1を厚さ方向Aから見た場合に、透明部2及び感温部3は共に四角形状をしているが、透明部2及び感温部3の形状は四角形状に限られるものではなく、感温部3が、透明部2のうち挿入口102を覆う部分に対して、脈管の延在方向と平行な方向Cに少なくとも位置するように、体表面に取り付けることができるのであれば、透明部2及び感温部3の厚み方向Aから見た形状は、どのような形状であってもよい。例えば、
図8(a)に示すように、透明部2が台形状であって、感温部3が長方形状の構成であってもよく、
図8(b)に示すように、透明部2が平行方向Cにおける一端に曲線状の輪郭線を有する略長方形状であって、感温部3が楕円形状の構成であってもよい。また、
図8(c)に示すように、透明部2が環状の形状であって、円形状の感温部3が透明部2に周囲を囲まれる構成であってもよい。なお、透明部2及び感温部3の、シート状被覆体1の全域に対する位置は、透明部2及び感温部3が上述の位置関係、すなわち、感温部3が、透明部2のうち挿入口102を覆っている部分に対して、脈管の延在方向と平行な方向Cに少なくとも位置する位置関係さえ満たしていればよく、使用する目的や用途に応じて適宜配置することが可能である。従って、
図8(b)に示すように、透明部2及び感温部3が共に線対称となるような共通の対称軸が存在しないような、透明部2及び感温部3の配置であってもよい。
【0080】
また、本実施形態では、
図2に示すように、シート状被覆体1を厚み方向Aから見た場合のシート状被覆体1の形状(本実施形態では延在部4の外縁の輪郭線と同じ)を四角形状としているが、これに限られるものではなく、例えば
図8(a)に示すような、各頂点部が曲線状の略四角形状や、
図8(b)に示すような六角形状や、
図8(c)に示すような楕円形状とすることも可能である。
【0081】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態としてのシート状被覆体11について説明する。
図9は、体内の脈管の一部を覆うように体表面に取り付けられたシート状被覆体11を、シート状被覆体11の厚み方向Aから見た図である。シート状被覆体11は、上述の第1の実施形態としてのシート状被覆体1と同様、透明部12と、シート状被覆体11の延在方向Bにおいて透明部12の近傍に位置する感温部13と、を備える。なお、
図9における破線は、体内にある脈管VEを表すものであり、より具体的には腕の静脈血管を表している。
【0082】
本実施形態では、シート状被覆体11が体内の脈管の一部を覆うように体表面に取り付けられた状態において、感温部13が、透明部12のうち挿入口102を覆う部分に対して、シート状被覆体11の延在方向Bにおいて脈管の延在方向と直交する方向D(以下、単に「直交方向D」と記載する)に少なくとも位置している。本実施形態としてのシート状被覆体11と、第1の実施形態としてのシート状被覆体1とを比較すると、体表面に取り付けられた状態での透明部及び感温部の脈管の延在方向に対する位置関係が相違している。その他の構成は第1の実施形態としてのシート状被覆体1と同様であるため、ここでは説明は省略する。
【0083】
透明部12は、挿入口102を少なくとも覆う部分であるが、透明部12のうちどこの位置で挿入口102を覆うかは、ユーザーにより適宜決定され、実行されるものである。例えば、本実施形態における、一端が曲線状に形成された略長方形の形状を有する透明部12を、この略長方形の透明部12の長辺方向が脈管の延在方向と略平行になるように体表面に取り付ける場合、透明部12のうち挿入口102を実際に覆う位置は、ユーザーによって曲線状の一端に近い位置とされることもあるが、
図9に示すように曲線状の一端と離れた位置とされることもある。
【0084】
つまり、体表面上の挿入口102を、透明部12のうち曲線状の一端と離れた位置で覆うようにすると、管状部材100のうち体内に延在する部分は、挿入口102から曲線状の一端側に向かって延在はするが、
図9示すように、その遠位端101は透明部12に覆われた領域内に位置することになる。すなわち、管状部材100の遠位端101の近傍となる体表面の位置についても、透明部12に覆われた位置となる。そのため、本実施形態では、薬液等の脈管外への漏出を感温部13により感知することができるように、感温部13を、透明部12に対して、直交方向Dにおける近傍に設けている。このような構成とすれば、管状部材100の遠位端101の近傍となる体表面の位置が透明部12に覆われた領域内に位置した場合であっても、脈管外への薬液等の漏出を感温部13により感知できる可能性を高めることができる。
【0085】
なお、管状部材100の遠位端101が、たとえ脈管外に位置していたとしても、脈管の近傍に位置するため、透明部12と感温部13との直交方向Dにおける最短距離は、小さければ小さいほどよく、10mm以下とすることが好ましい。特に、透明部12の直交方向Dにおける幅や、透明部12全体に対しての挿入口102を覆う部分の直交方向Dにおける位置等によっても、管状部材100の遠位端101の近傍となる体表面の部分と、感温部13との直交方向Dにおける最短距離は変化するため、シート状被覆体11の延在方向Bでの直交方向Dにおける透明部12と感温部13との最短距離を0mmとして、透明部12と感温部13とを隣り合わせて配置することが最も好ましい。透明部12と感温部13とを直交方向Dにおいて隣り合わせて配置する構成の詳細については後述する(
図10等参照)。
【0086】
なお、本実施形態における透明部12の直交方向Dにおける幅は、挿入口102の視認性を十分に確保すると共にユーザーがシート状被覆体11を取り付ける際の操作性を維持する観点から10mm以上とし、脈管の近傍に位置する、管状部材100の遠位端101からの脈管外への薬液漏れを、感温部13が容易に感知できるように、透明部12の直交方向Dにおける幅を、30mm以下とすることが好ましい。
【0087】
更に本実施形態では、直交方向Dにおいて、透明部12の両側に感温部13としての第1感温部130及び第2感温部131を設けているが、透明部12に対して一方向側にのみ感温部13を設ける構成であってもよい。但し、本実施形態のように、直交方向Dにおいて透明部12の両側に感温部13を設ける構成とすれば、管状部材100の遠位端101が直交方向Dにおいて脈管から多少離れている場合であっても、第1感温部130及び第2感温部131のうち、少なくとも管状部材100の遠位端101との距離が近いいずれか一方において薬液等の漏出を感知することができるため、一方向側のみに感温部13を設ける構成に比べて、より確実に遠位端101からの薬液等の漏出を感知することが可能となる。
【0088】
更に、本実施形態では、感温部13の脈管の延在方向に略平行な方向の長さ(
図9の感温部13の場合には、第1及び第2感温部13の長辺の長さ)を、透明部12の同方向の長さより長くし、感温部13が、透明部12における任意の位置に対して、直行方向Dに位置するように、透明部12及び感温部13が配置されている。このような配置とすれば、透明部12のうち挿入口102を覆う部分が、ユーザーによって異なっていたとしても、挿入口102を覆う部分に対して直交方向Dに感温部13が常に位置するため、薬液等の脈管外への漏出を感温部13で感知できる可能性が一層向上する。
【0089】
ここで、本実施形態では、厚み方向Aから見た場合の透明部12の形状を略長方形状とし、感温部13の形状を長方形状としているが、透明部12と感温部13との上述の位置関係を満たす限りにおいて、他の形状を採用することも可能である。例えば、透明部12及び感温部13をそれぞれ、楕円形状や、四角形以外の略多角形状などにしてもよい。また、本実施形態では、厚み方向Aから見た場合のシート状被覆体11自体の形状を略四角形状としているが、これに限られるものではなく、例えば、円形状、楕円形状、四角形以外の多角形状にしてもよい。
【0090】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態としてのシート状被覆体21について、
図10を用いて説明する。
図10は、体表面に取り付け可能な状態にあるシート状被覆体21を、シート状被覆体21の厚み方向Aから見た図である。シート状被覆体21は、第1及び第2の実施形態としてのシート状被覆体1と比較して、感温部23がシート状被覆体21の延在方向Bにおいて透明部22の少なくとも一部の周囲に位置している点、透明部22と感温部23とがシート状被覆体21の延在方向Bにおいて隣り合って配置されている点、及び厚み方向Aから見た場合に延在部が存在しない点で、構成が相違している。その他の構成については、第1の実施形態の説明において既に言及した構成と同様の構成を用いているため、ここでは説明を省略する。
【0091】
ここで「感温部がシート状被覆体の延在方向において透明部の少なくとも一部の周囲に位置する」とは、シート状被覆体を厚み方向Aから見た場合に、透明部を通過するような直線を、連続する1つの感温部における2点で形成することができるような透明部及び感温部の位置関係を意味する。例えば、
図10において破線で示す直線は、連続する1つの感温部23における点Xと点Yとを結んで形成される仮想線であり、この直線は、透明部22を通過している。つまり、本実施形態におけるシート状被覆体21は、シート状被覆体を厚み方向Aから見た平面に、このような直線を感温部における2点を用いて作成することが可能であるため、本実施形態におけるシート状被覆体21は、「感温部23がシート状被覆体21の延在方向Bにおいて透明部22の少なくとも一部の周囲に位置する」構成となる。
【0092】
図11は、
図10に示すシート状被覆体21が体内の脈管の一部を覆うように体表面に取り付けられた状態を示す図である。なお、
図11における破線は、体内の脈管VEを示しており、より具体的には腕の静脈血管を示している。
図11では、管状部材100の遠位端101の一部が脈管の外壁よりも外側に位置し、遠位端101から薬液が脈管外へと漏出している状態を示している。本実施形態では、シート状被覆体21が体内の脈管の一部を覆うように体表面に取り付けられた状態において、感温部23が、シート状被覆体21の延在方向Bのうち、透明部22の少なくとも一部に対して、脈管の延在方向と平行な方向Cにおける位置から、この方向Cに直交する直交方向Dに亘って連続して設けられている。そのため、管状部材100の遠位端101の位置によって感温部23において薬液等の漏出を感知することができないという可能性を低減することができる。
【0093】
なお、
図11における領域Sは、薬液等が脈管VEの外側に漏出することにより発生した体表面の温度変化によって色を変化させた感温部23の表示面6の一部を示している。このように、体表面に温度変化があると、感温部23のうち体表面と接触している接触面5(
図3等参照)とは反対側の面である表示面6に色の変化が表れるため、医療従事者は、脈管外に薬液等が漏出していることを、感温部23の色の変化として外部から確認することができる。
【0094】
更に、本実施形態では、
図10及び
図11に示すように、透明部22と感温部23とがシート状被覆体21の延在方向Bにおいて隣り合って配置されている。つまり、厚み方向Aからシート状被覆体21を見た場合に、感温部23の輪郭線27の一部が透明部22の輪郭線28の一部と共通している。
【0095】
より具体的には、
図10において、透明部22の輪郭線28のうち下方側の一辺以外は全て、感温部23の輪郭線27の一部と共通している。このような構成とすれば、シート状被覆体の延在方向Bにおいて透明部と感温部との間に隔たりがある構成(シート状被覆体の延在方向Bにおける最短距離が0mmより大きい場合)と比較して、透明部22の輪郭線27付近で発生する、脈管VE外に薬液等が漏出することによる体表面の温度変化を、感温部23によって感知できる可能性を一層高くすることができる。更に、脈管外への薬液等の漏出は、例えば管状部材100の挿入と抜去とが繰り返されて行われた場合などに、遠位端101が脈管内に留置されていたとしても、既に形成された挿入口102近傍の脈管外壁の孔から発生することも考えられる。本実施形態では、感温部23が透明部22の少なくとも一部の周囲に隣り合って配置されているため、このような薬液等の漏出が発生した場合であっても、感温部13によって薬液等の漏出による体表面の温度変化を感知できる可能性が高くなる。
【0096】
ここで、本実施形態における感温部23は、厚み方向Aから見た場合に、透明部22の周りを全て取り囲む構成ではないが、
図12に示すように、透明部22の周りを全て取り囲むような構成としてもよい。
【0097】
本実施形態におけるシート状被覆体21は、厚み方向Aから見た場合に、延在部24が存在せず、透明部22と感温部23とにより構成されている。このような構成とすれば、シート状被覆体の構成を簡易化することができる。但し、
図12で示すように、延在部24を更に設けて、延在部24において体表面と接着するように構成してもよい。
【0098】
更に、厚み方向Aから見た場合の透明部22及び感温部23の形状についても、本実施形態で示す略長方形状(具体的には長方形状の1つの短辺が外方に突出する円弧状に形成された形状)に限られるものではなく、両者が上述の位置関係、すなわち、感温部23がシート状被覆体21の延在方向Bにおいて透明部22の少なくとも一部の周囲に位置している位置関係にさえあれば、各種形状を採用することが可能である。
【0099】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態としてのシート状被覆体31について、
図13を参照して説明する。
図13は、シート状被覆体31が体内にある脈管の一部を覆うように体表面に取り付けられた状態を、シート状被覆体31の厚み方向Aから見た図である。また、
図14は、体表面に取り付け可能な状態の前の状態、すなわち、体表面に取り付ける際に剥離される剥離層などが一面に設けられている状態(以下、単に「使用前の状態」と記載する)でのシート状被覆体31の、厚さ方向Aにおける積層構造を示す図である。なお、
図13における破線は、脈管VEを表す。また、
図14は、
図13のII―II断面でのシート状被覆体31の使用前の状態を示している。
【0100】
図13に示すように、本実施形態におけるシート状被覆体31は、透明部32と、感温部33と、延在部34と、を備える構成である。体表面に取り付け可能な状態のシート状被覆体31は、第1の実施形態としてのシート状被覆体1と比較して、シート状被覆体31の一端部35としての延在部34の一端部に、切欠部60が設けられている点、感温部33がシート状被覆体31の延在方向Bにおいて透明部32の周囲に位置している点、及び透明部32と感温部33とがシート状被覆体31の延在方向Bにおいて隣り合って配置されている点で、構成が相違している。シート状被覆体31のその他の構成については、第1の実施形態の説明において既に言及した構成を用いているため、ここでは詳細な説明を省略する。更に、感温部33がシート状被覆体31の延在方向Bにおいて透明部32の周囲に位置している点、及び透明部32と感温部33とがシート状被覆体31の延在方向Bにおいて隣り合って配置されている点については、第3の実施形態と同様の構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0101】
図13に示すように、本実施形態における延在部34の一端部には、管状部材100のうち体外に延在する部分の一部を収容可能な切欠部60が設けられている。このような構成とすれば、
図14に示すように延在部34は接着層34bを有するため、管状部材100の体外に延在する部分の体表面に対する移動が、延在部34のうち切欠部60の周囲の部分によって規制され、その結果、管状部材100の遠位端101が脈管外へ抜けにくくなる。
【0102】
また、透明部32、感温部33、及び延在部34の切欠部60は、脈管の延在方向に沿って並ぶように体表面上に取り付けられることから、シート状被覆体31では、延在方向Bにおいて、透明部32、感温部33、及び切欠部60を略直線状に配置している。ここで、「シート状被覆体の延在方向において、透明部、感温部、及び切欠部を略直線状に配置する」とは、シート状被覆体を厚み方向から見た場合に、透明部、感温部、及び切欠部の全てを通過する仮想直線が存在することを意味している。例えば、
図13で示す直線は、透明部32における点Oと、感温部33における点Pと、切欠部60における点Qとを結んだ直線であり、
図13に示すシート状被覆体31は、このような点O、P、Qが存在するため、シート状被覆体31の延在方向Bにおいて、透明部32、感温部33、及び切欠部60が略直線状に配置されている構成となる。
【0103】
本実施形態の切欠部60は、厚み方向Aから見た場合に、管状部材100の一部を収容可能なように、細長い略長方形の形状としているが、この形状に限られるものではなく、例えば、略三角形状とすることも可能である。なお、
図13で示す管状部材100は、留置針103と、体外に延在するチューブ104と、留置針103が区画する中空部及びチューブ104が区画する中空部が連通するように留置針103の一端部及びチューブ104の一端部を接続するコネクタ105と、を備える構成であり、本実施形態ではコネクタ105が切欠部60に収容されている。なお、チューブ104のうちコネクタ105と接続されている一端と反対の他端(近位端)は、投与する薬液や栄養剤のバックに接続されている。
【0104】
また、本実施形態の切欠部60は、延在部34の一端部に設けられているが、例えば、透明部32がシート状被覆体31の一端部35まで延在する構成とし、透明部32の一端部に切欠部60を設ける構成としてもよい。
【0105】
次に、
図14を参照して、シート状被覆体31の使用前の状態について説明する。なお、
図14は、使用前の状態にあるシート状被覆体31の各層の積層関係を示すものであって、実際の各層の厚みを表すものではない。実際の各層の厚みは、使用する目的や用途等に応じて適宜設定されるものである。
【0106】
図14に示すように、透明部32は、樹脂層32aと、接着層32bとを備える。また、感温部33は、接着層33dと、黒色層33cと、感温層33bと、基材層33aと、表面層33eとを備える。更に、延在部34は、樹脂層34aと、接着層34bとを備える。そして、透明な樹脂シートである接続体38は、透明部32の樹脂層32a、感温部33の表面層33e、及び延在部34の樹脂層34aを構成している。これら各部、各層の具体的な構成は、第1の実施形態で言及した構成と同様である。
【0107】
使用前の状態のシート状被覆体31は、厚み方向Aにおける体表面に取り付けられる面側に剥離層61を備える。剥離層61は、例えば、透明部32の接着層32bや、感温部33の接着層33dや、延在部34の接着層34bを覆っており、シート状被覆体31を実際に使用する際に、ユーザーにより剥離されることにより取り除かれる。剥離層61が取り除かれることによって、透明部32の接着層32bや、感温部33の接着層33dや、延在部34の接着層34bなどが外部に露出し、シート状被覆体31は体表面と接着可能な状態となる。なお、剥離層61は、樹脂製のシートであって、透明であっても不透明であってもかまわない。
【0108】
なお、剥離層61と反対側の面に、少なくとも感温部33の表示面6を覆う別の剥離層(第2剥離層)を備える構成としてもよい。このような構成とすれば、使用前に感温部33の表面に傷がつくことを抑制することができる。
【0109】
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態としてのシート状被覆体41について説明する。シート状被覆体41は、透明部42、感温部43、及び延在部44を備える。シート状被覆体41は、第1の実施形態としてのシート状被覆体1と比較して、接続体の構成が相違している。その他の構成については、既に上述の実施形態の説明において言及されているものであるため、ここでは説明を省略する。
【0110】
図15は、体表面に取り付け可能な状態のシート状被覆体41を、厚み方向Aから見た図であり、
図16(a)及び(b)は、
図15に示すシート状被覆体41のIII―III断面図及びIV−IV断面図をそれぞれ示すものである。
【0111】
図15に示すように、本実施形態における延在部44は、透明部42の周囲に位置する第1延在部440と、感温部43の周囲に位置する第2延在部441と、を有し、第1の延在部440の一面に接続されるとともに、第2の延在部441の一面に接続されることにより、第1の延在部440と第2の延在部441とを接続する接続体803を備える。なお、第1の延在部440及び第2の延在部441とは、接続体803が存在しない場合には、互いに繋がっていない2つの別体の延在部を意味するものである。
【0112】
ここで
図16(a)、(b)に示すように、透明部42と第1の延在部440とは、共通の第1の接続体801により接続され、感温部43と第2の延在部441とは、共通の第2の接続体802により接続されている。ここで、第1の接続体801は、透明部42及び第1の延在部440それぞれの1つの層を構成している。また、第2の接続体802は、感温部43及び第2の延在部441それぞれの1つの層を構成している。なお、
図16における付番44bは、延在部44の接着層であり、付番43b及び43cは、感温部43の感温層及び黒色層を表す。これらの具体的な構成は第1の実施形態における延在部4の接着層4b、感温部3の感温層3b、及び感温部3の黒色層3cと同様である。
【0113】
つまり、接続体803は、第1の延在部440の一部において第1の接続体801上に積層されるとともに、第2の延在部441の一部において第2の接続体802上に積層されることによって、第1の接続体801と第2の接続体802とを接続する、第3の接続体803である。
【0114】
このように、本実施形態では、第1の接続体801、第2の接続体802、及び第3の接続体803によって、複合的な接続体48を構成しており、接続体48が全体として透明部42と感温部43とを接続している。なお、第1〜第3の接続体801〜803は、いずれも透明な樹脂シートである。
【0115】
また、接続体48は上述のような構成に限られるものではなく、例えば、第3の接続体803が透明な樹脂シートであることから、第3の接続体803を、透明部42及び/又は感温部43上に積層し、透明部42及び/又は感温部43の1つの層を構成するようにしてもよい。
【0116】
<第6の実施形態>
次に、第6の実施形態としてのシート状被覆体51について説明する。シート状被覆体51は、透明部52、感温部53、及び延在部54を備える。シート状被覆体51は、第1の実施形態としてのシート状被覆体1と比較して、主に、感温部の層構成及び接続体の構成が相違している。その他の構成については、既に上述の実施形態の説明において言及されているものであるため、ここでは説明を省略する。
【0117】
図17は、体内の脈管の一部を覆うように体表面に取り付けられた状態のシート状被覆体51を、厚み方向Aから見た図であり、
図18は、
図17に示すシート状被覆体51のV−V断面図である。なお、
図18は、各部位での積層関係を示すものであり、各部位の各層の実際の厚みを表すものではなく、各層の実際の厚みについては、目的や用途等に応じて適宜設定することが可能である。
【0118】
図18に示すように、シート状被覆体51において、透明部52と感温部53とを接続する接続体58は、透明な樹脂シートであり、この接続体58としての樹脂シートは、
図17、
図18に示すように、感温部53及び透明部52それぞれのシート状被覆体51の厚み方向Aにおける1つの層を構成している。
【0119】
ここで、感温部53は、接続体58としての透明な樹脂シートと、この樹脂シートに対して、感温部53における体表面と接触する接触面5とは反対側の表示面6側に積層された、温度に応じて色を変化させる感温シート70と、を備えている。
【0120】
より具体的に、本実施形態の感温部53は、表示面6側から、表面層53e、基材層53a、感温層53b、黒色層53c、第1接着層53f、樹脂層53g、第2接着層53dの順に積層されており、表面層53e、基材層53a、感温層53b、黒色層53c及び第1接着層53fは、感温シート70により構成され、樹脂層53gは、透明な樹脂シートにより構成されている。なお、第1接着層53fは、一部材である樹脂シートと直接接触して接着することにより、一体化された一部材としての感温シート70を樹脂シートに接着する層である。また、第2接着層53dは、透明であって、体表面と直接接触して接着することにより、感温シート70及び樹脂シートを含むシート状被覆体51全体を体表面に接着する層である。
【0121】
このように、感温シート70は、接続体58としての樹脂シート側の面に、この樹脂シートに対して接着する接着部としての第1接着層53fを備えている。また、接続体58としての樹脂シートの体表面側となる面には、体表面に対して接着可能な接着部としての第2接着層53dが設けられている。以下、説明の便宜上、感温シート70の第1接着層53fで構成される接着部を「第1接着部」、接続体58としての樹脂シートに積層された第2接着層53dで構成される接着部を「第2接着部」と記載する。
【0122】
なお、透明部52は、樹脂層52aと、接着層52bとを備えており、樹脂層52aは、上述した接続体58としての透明な樹脂シートにより構成されている。また、本実施形態の接着層52bは、感温部53の第2接着層53dと一体であるが、別々の接着層とすることも可能である。
【0123】
ここで、本実施形態では、第1接着部としての第1接着層53fの樹脂シートに対する接着力は、第2接着部としての第2接着層53dの体表面に対する接着力よりも小さい。そのため、第2接着部を介してシート状被覆体51を体表面に取り付けた状態で、感温シート70を接続体58としての樹脂シートから容易に剥離することができる。このような接着力の大小関係とすることにより、必要に応じて感温シート70を樹脂シートから剥離することで、厚み方向Aから見た場合の透明な領域(透明部52)が拡がるため、管状部材100の体表面の挿入口102の位置を視認し易くすることができる。このような接着力の大小関係は、例えば、使用する接着剤の種類を異ならせることにより実現することが可能である。
【0124】
なお、本実施形態において、第1接着部としての第1接着層53fは、感温シート70を接続体58としての樹脂シートに対して少なくとも複数回の接着及び離間が可能(貼り剥がし可能)な粘性を有する粘着層としている。このような構成とすれば、感温シート70を樹脂シートから剥離して、管状部材100の挿入口102や管状部材100の遠位端101の位置を確認した後に、再度適切な位置に感温シート70を接着することができる。なお、「粘着」とは接着の一態様である。
【0125】
また、本実施形態では、第2接着部としての第2接着層53dについても、シート状被覆体51を体表面に対して少なくとも複数回接着及び離間が可能な粘性を有する粘着層としている。第1接着層53f及び第2接着層53dとしての粘着層については、例えば、シリコンゲル接着剤などのシリコン系接着剤、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤等により構成することができる。
【0126】
更に、本実施形態では、感温シート70の一部のみが、接続体58としての樹脂シートに対して複数回の接着及び離間が可能な構成としている。具体的に、
図17、
図18に示すように、感温シート70は、樹脂シートに対して圧着、熱溶着等により、樹脂シートに対して固定された帯状の固定部71を有しており、感温シート70は、この固定部71以外の部分で、樹脂シートに対して貼り剥がしが可能である。感温シート70が固定部71を有することにより、厚み方向Aから見た場合の樹脂シートに対する感温シート70の位置が、感温シート70を樹脂シートに接着させる度に変動してしまうことを抑制することができ、ユーザーによる感温シート70の貼り剥がし作業の煩雑性を軽減することができる。なお、
図18に示すように、感温シート70の固定部71は、樹脂シートに固定するため、樹脂シート側に押圧されて厚み方向Aに圧縮された状態となっているが、固定手法によっては、圧縮された状態とせずに固定部を形成することも可能である。
【0127】
また、
図17に示すように、本実施形態の固定部71は、シート状被覆体51を厚み方向Aから見た場合に、感温部53を2つの領域に分割する、温度に応じて色の変化を呈しない帯状の形状を有しており、その一方の領域F1に対応する感温シート70の一部のみが、樹脂シートに対して接着及び離間可能に構成され、他方の領域F2に対応する感温シート70の一部は、樹脂シートに対して常時接着した状態となっている。このように、感温シート70に、樹脂シートに対して常時接着した状態となる部分を設ければ、この部分を色の指標として利用することができ、接着及び離間の繰り返しによる第1接着層53fの粘着力の低下や離間後の再接着に際して生じ得る感温シート70と樹脂シートとの間の空隙の発生等に基づく感温度合いの変動を、感温シート70の常時接着した状態にある色指標部分の色と比較することにより、容易に判断することが可能となる。
【0128】
なお、本実施形態の固定部71は、厚み方向Aから見た場合に感温部53を複数の領域に分割する直線状の帯形状であるが、直線状の帯形状に限られるものではなく、例えば、曲線状の帯形状であってもよい。また、固定部によって分割される感温部の領域についても、2つに限られるものではなく、3つ以上の領域に分割することもできる。更に、本実施形態の固定部71は、体表面に取り付けられた状態で厚み方向Aから見た場合(
図17参照)に、脈管の延在方向と略平行な方向Cと直交する方向Dに延在しており、感温部53を脈管の延在方向と略平行な方向Cにおいて2つの領域に分割する帯形状であるが、例えば、脈管の延在方向と略平行する方向Cに沿って延在する帯形状とし、脈管の延在方向と略平行な方向Cと直交する方向Dにおいて感温部を2つに分割する帯形状としてもよい。
【0129】
また更に、本実施形態の固定部71は、シート状被覆体51の厚み方向Aから見た場合に、温度に応じて色の変化を呈しない延在部54を構成するものであるが、色の変化を呈する感温部の一部とすることも可能である。かかる場合に固定部は、樹脂シートに対して常時接着した状態となるため、上述したような色指標部分として利用することができる。
【0130】
また、本実施形態では、感温シート70の樹脂シート側の面のほぼ全面(後述する把持部72の樹脂シート側の面を除く全面)に、第1接着部としての第1接着層53fが設けられているが、感温シート70の樹脂シート側の面のより小さい領域である一部のみに第1接着部を設ける構成としてもよい。かかる場合には、使用する接着剤を第1接着部と第2接着部とで異ならせることに加えて又は代えて、シート状被覆体51を厚み方向から見た場合の単位面積あたりの第1接着部の面積を、第2接着部の面積よりも小さくすることにより、第1接着部の樹脂シートに対する接着力を第2接着部の体表面に対する接着力よりも小さくするようにすることが好ましい。
【0131】
ここで、
図17、
図18に示すように、本実施形態の感温シート70は、第1接着部としての第1接着層53fを、接続体58としての樹脂シートから剥離して離間する際に把持することが可能な把持部72を備えている。より具体的に、本実施形態の感温シート70における把持部72は、第1接着層53fが設けられていない、シート状被覆体51の延在方向Bにおける一端部により構成されている。このような把持部72を設けることにより、感温シート70を樹脂シートから離間させる際の操作性を向上させることができる。なお、本実施形態の把持部72は、
図17に示すように、感温部53のうち脈管の延在方向と略平行する方向C側の一端部に形成されているが、例えば、脈管の延在方向と略平行する方向Cと直交する方向D側の別の端部に形成してもよい。
【0132】
なお、
図17に示すように、本実施形態の感温部53の一端部には、ユーザーが、管状部材100の体表面における挿入口102に対して、シート状被覆体51を適切に位置決めするための目印となる切欠き部73が形成されている。
【0133】
以上のように、本発明としてのシート状被覆体は、様々な具体的構成により実現することが可能であり、上述した実施形態で示した構成に限られるものではない。特に、各実施形態において言及された構成を各種組み合わせて、新たなシート状被覆体を構成することは本発明の技術的範囲に属するものである。例えば、第1の実施形態において説明した、シート状被覆体1の厚み方向Aにおける各種積層構造を、第2〜第4の実施形態としてのシート状被覆体11、21及び31で用いられている積層構造に置き換えて適用することや、第4の実施形態で説明した切欠部60を、第1〜第3におけるシート状被覆体1、11、21に適用することなど、本発明の技術的範囲に属するものである。
【0134】
なお、上述の実施形態の説明において、隣り合う層同士の接続については、特段に言及した場合を除き、例えば透明な接着剤の層等を別途設けて接着する方法や、層同士を融着する方法など、各種方法により接続することが可能である。