(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接触圧力分布データ取得部が、前記テンプルの装着者頭部側面に貼付可能な圧電センサを備え、前記圧電センサを用いて前記面積および前記圧力に関するデータを取得する請求項1記載の装着性調整メガネシステム。
前記装着性調整部が、前記テンプルに、前記テンプルの長さ方向に沿って配置されたワイヤと、前記ワイヤの一方の先端に備えられ、前記ワイヤに張力を加えるアクチュエータとを備え、前記テンプル調整値を用いて前記テンプルの装着者頭部への密着性を調整するテンプル調整部を有する請求項1または2記載の装着性調整メガネシステム。
前記情報取得部の少なくとも一部および/または前記装着性調整部の少なくとも一部がモジュール化されており、前記メガネフレームに対して交換可能に構成される請求項1から3いずれか1項記載の装着性調整メガネシステム。
前記傾きデータ取得部が、前記メガネフレームのリムに配置された赤外線インカメラを備え、前記赤外線インカメラによる撮影情報から前記傾きに関するデータを取得する請求項9記載の装着性調整メガネシステム。
前記装着性調整部が、前記メガネフレームのフロントとテンプルとの接続部に、前記傾き調整値を用いて前記フロントの前記頭部水平に対する傾きを調整する傾き調整部を有する請求項9または10記載の装着性調整メガネシステム。
前記角膜頂点間距離データ取得部が、前記メガネフレームのリムに配置された赤外線インカメラを備え、前記赤外線インカメラによる撮影情報から前記角膜頂点間距離に関するデータを取得する請求項17記載の装着性調整メガネシステム。
前記装着性調整部が、前記メガネフレームに備えられた鼻パッドを前記メガネフレームのフロントに対して接近方向又は離間方向にスライドさせるスライド機構と、前記スライド機構を駆動するリニアサーボモータとを備え、前記角膜頂点間距離調整値に基づき前記リニアサーボモータを駆動することにより前記角膜頂点間距離を調整する頂点間距離調整部を有する請求項17または18記載の装着性調整メガネシステム。
前記瞳孔間距離データ取得部が、前記メガネフレームのリムに配置された赤外線インカメラを備え、前記赤外線インカメラによる撮影情報から前記瞳孔間距離に関するデータを取得する請求項20記載の装着性調整メガネシステム。
前記装着性調整部が、前記左右のリムの間隔を変化させるスライド機構と、前記スライド機構を駆動するリニアサーボモータとを備え、前記リム間隔調整値に基づき前記リニアサーボモータを駆動することにより前記左右のリムの間隔を調整するリム間調整部を有する請求項20または21記載の装着性調整メガネシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている顔面測定器は、店舗などにおいて用いられることを想定して提案されたものであり、個人的な使用には大掛かり過ぎる。
また、特許文献2及び3では、個人が装着感を増すための調整機構を有するが、装着性に関する情報を検出する機構やどこをどの程度調整すべきかを知る手段は備えられていない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、メガネの装着者自身によるメガネの調整を可能とする装着性調整メガネシステムを提供することを目的とする。また、本発明は、その装着性調整メガネシステムの全部、または一部を構成する、装着性調整メガネ、および装着性調整メガネシステムに用いられるプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の装着性調整メガネシステムは、メガネフレームと、
メガネフレームに備えられた、装着者に対するメガネフレームの装着性に関する装着性情報を取得する情報取得部と、
情報取得部により取得された装着性情報から、メガネフレームの装着性を調整するための調整値を算出する調整値算出部と、
メガネフレームに備えられた、調整値算出部により算出された調整値を用いて、装着者に対するメガネフレームの装着性を調整する装着性調整部とを有する。
【0010】
本発明の装着性調整メガネシステムにおいては、情報取得部が、装着性情報として、メガネフレームのテンプルが装着者の頭部に触れている面積および頭部に加えている圧力に関するデータを取得する接触圧力分布データ取得部を有し、調整値算出部が、その面積および圧力に関するデータから、調整値として、テンプルの密着性を調整するテンプル調整値を算出するものであってもよい。
【0011】
上記接触圧力分布データ取得部は、テンプルの装着者頭部側面に貼付可能な圧電センサを備え、圧電センサを用いて面積および圧力に関するデータを取得するものであってもよい。
【0012】
また、情報取得部が接触圧力分布データ取得部を備え、調整値算出部がテンプル調整値を算出するものであるとき、装着性調整部は、テンプルに、そのテンプルの長さ方向に沿って配置されたワイヤと、ワイヤの一方の先端に備えられたそのワイヤに張力を加えるアクチュエータとを備え、テンプル調整値を用いてテンプルの装着者頭部への密着性を調整するテンプル調整部を有することが好ましい。
【0013】
本発明の装着性調整メガネシステムにおいては、情報取得部が、装着性情報として、メガネフレームの、装着者の頭部水平からの傾きに関するデータを検出する傾きデータ取得部を有し、調整値算出部が、その傾きに関するデータから、調整値として、傾きを調整する傾き調整値を算出するものであってもよい。
【0014】
上記傾きデータ取得部は、メガネフレームのリムに配置された赤外線インカメラを備え、その赤外線インカメラによる撮影情報から傾きに関するデータを取得するものであってもよい。
【0015】
また、情報取得部が、傾きデータ取得部を備え、調整値算出部が傾き調整値を算出するものであるとき、装着性調整部は、メガネフレームのフロントとテンプルとの接続部に、傾き調整値を用いてフロントの頭部水平に対する傾きを調整する傾き調整部を有することが好ましい。
【0016】
本発明の装着性調整メガネシステムにおいては、メガネフレームに保持されたメガネレンズを有し、情報取得部が、装着性情報として、装着者とメガネレンズとの角膜頂点間距離に関するデータを取得する角膜頂点間距離データ取得部を有し、調整値算出部が、角膜頂点間距離に関するデータから、調整値として、角膜頂点間距離を調整する角膜頂点間距離調整値を算出するものであってもよい。
【0017】
上記角膜頂点間距離データ取得部は、メガネフレームのリムに配置された赤外線インカメラを備え、赤外線インカメラによる撮影情報から角膜頂点間距離に関するデータを取得するものであってもよい。
【0018】
また、情報取得部が角膜頂点間距離データ取得部を備え、調整値算出部が角膜頂点間距離調整値を算出するものであるとき、装着性調整部は、メガネフレームに備えられた鼻パッドをメガネフレームのフロントに対して接近方向又は離間方向にスライドさせるスライド機構と、そのスライド機構を駆動するリニアサーボモータとを備え、角膜頂点間距離調整値に基づきリニアサーボモータを駆動することにより角膜頂点間距離を調整する頂点間距離調整部を有することが好ましい。
【0019】
本発明の装着性調整メガネシステムにおいては、情報取得部が、装着性情報として、装着者の瞳孔間距離に関するデータを取得する瞳孔間距離データ取得部を有し、調整値算出部が、その瞳孔間距離に関するデータから、調整値として、メガネフレームの左右のリムの間隔を瞳孔間距離に応じて調整するリム間隔調整値を算出するものであってもよい。
【0020】
上記瞳孔間距離データ取得部が、メガネフレームのリムに配置された赤外線インカメラを備え、赤外線インカメラによる撮影情報から瞳孔間距離に関するデータを取得するものであってもよい。
【0021】
また、情報取得部が瞳孔間距離データ取得部を備え、調整値算出部がリム間隔調整値を算出するものであるとき、装着性調整部は、左右のリムの間隔を変化させるスライド機構と、そのスライド機構を駆動するリニアサーボモータとを備え、リム間隔調整値に基づきリニアサーボモータを駆動することにより左右のリムの間隔を調整するリム間調整部を有することが好ましい。
【0022】
本発明の装着性調整メガネシステムにおいては、情報取得部の少なくとも一部および/または装着性調整部の少なくとも一部がモジュール化されており、メガネフレームに対して交換可能に構成されていることが好ましい。
【0023】
本発明の装着性調整メガネシステムは、メガネフレームの装着者への装着および脱着を検出する装脱着検出部と、装脱着検出部が装着を検出した場合に、装着情報取得部による装着性情報の取得を開始し、脱着を検出した場合に、装着情報取得部による装着性情報の取得または調整部による装着性の調整を停止する制御部とを備えることが好ましい。
【0024】
本発明の第1の装着性調整メガネは、上記本発明の装着性調整メガネシステムを構成するものであって、情報取得部および装着性調整部を備えたメガネフレームに、さらに調整値算出部を備えてなることを特徴とする装着性調整メガネである。
【0025】
本発明の第2の装着性調整メガネは、上記本発明の装着性調整メガネシステムの一部を構成するものであって、情報取得部および装着性調整部を備えたメガネフレームに、その情報取得部により取得された装着性情報を調整値算出部に出力する情報出力部と、調整値算出部で算出された調整値を受信する調整値受信部とを備えてなることを特徴とする、調整値受信型の装着性調整メガネである。
【0026】
本発明のプログラムは、コンピュータを、上記本発明の装着性調整メガネシステムにおける上記調整値算出部として機能させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の装着性調整メガネシステムは、装着者によるメガネフレームの装着性情報を取得する情報取得部と、情報取得部により取得された装着性情報から、メガネフレームの装着性を調整するための調整値を算出する調整値算出部と、調整値算出部により算出された調整値を用いて、装着者に対するメガネフレームの装着性を調整する装着性調整部とを有し、少なくとも情報取得部および装着性調整部がメガネフレームに備えられているので、装着者がメガネフレームを装着した状態で、装着性情報を取得することができ、その装着性情報に基づいて、より好ましい装着性に調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の装着性調整メガネシステムの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
図1は、第1の実施形態にかかる装着性調整メガネシステム1を構成する装着性調整メガネ10の概略構成を示す斜視図であり、
図2は装着性調整メガネシステム1、すなわち装着性調整メガネ10の機能ブロック図である。なお、本明細書において、“前”、“後”、“左”、“右”、“上”、および“下”とは、メガネを装着者の頭部に装着した状態で、その装着者から見た場合の“前”、“後”、“左”、“右”、“上”、および“下の各方向を指すものとする。また、メガネフレームの「フロント」とは、左右のリム、ブリッジ、および智(closing blocks)を含んだメガネフレーム前面部の総称である。
【0031】
本実施形態の装着性調整メガネ10(以下において、単にメガネ10という。)は、装着者がそのメガネフレーム100(すなわちメガネ10)を装着した状態で、メガネフレーム100の装着性情報を取得して、その装着性情報に基づいて、よりよい装着状態に自動調整を行うものである。
【0032】
図2に示すように、本実施形態のメガネ10は、装着者によるメガネフレーム100の装着性に関する情報(装着性情報)を取得する情報取得部12と、情報取得部12により取得された装着性情報から、メガネフレーム100の装着性を調整するための調整値を算出する調整値算出部13と、調整値算出部13により算出された調整値を用いて、装着者に対するメガネフレーム100の装着性を調整する装着性調整部14を備える。また、メガネ10は、情報取得部12、調整値算出部13および装着性調整部14を制御する制御部16および各機能部に対して電力を供給する電源部17を備えている。
【0033】
図1に示すように、メガネフレーム100は、装着者の耳に掛けられるテンプル101と、ヒンジを介してテンプル101に接続されるレンズを保持するリム103と、鼻パッド104と、左右のリム103の間を接続するブリッジ106とから構成されている。
【0034】
また、メガネフレーム100の左右のリム103に対して着脱可能な、視力調整機能を有するメガネレンズ110が取り付けられている。なお、
図1では、左右のリム103に対して視力調整機能を有するメガネレンズ110を取り付けた例を示しているが、視力調整機能を有するメガネレンズ110に限らず、視力調整機能のないガラス部材またはプラスチック部材もリム103に対して取り付け可能であり、また、紫外線をカットするガラス部材やプラスチック部材も取り付け可能である。以降の説明において、特に断りが無い限り、メガネレンズとは、視力調整機能のないガラス部材及びプラスチック部材、並びに、紫外線をカットするガラス部材及びプラスチック部材も含む概念とする。また、本実施形態においては、リム103を装着者の眼の周りを一周するフルリムとしたが、これに限らず、たとえば上側だけのハーフリムまたは下側だけのアンダーリムとしてもよい。なお、メガネフレームとレンズとの組み合わせからなるメガネ本体は、一般の視力矯正用のものに限らず、メガネ型ウェアラブル端末などの電子式メガネ機能を備えたものであっても構わない。
【0035】
電源部17は、左右のテンプル101の先端(モダン:drop end)に着脱可能に取り付けられ、必要に応じて交換可能である。電源部17は、非充電式の電池が内蔵されたものでもよいし、充電式の電池が内蔵されたものでもよい。また、有線を介して外部電源から電力の供給を受けるものでもよいし、無線給電方式のものでもよい。電源部17の設置箇所はテンプル101の先端に限るものではないが、メガネの装着性を損なわないように、メガネ全体の重心を後部に持ってくるために、本形態のようにテンプル先端に備えることが好ましい。
【0036】
制御部16は、左右のテンプル101の基端に着脱可能に取り付けられるものである。制御部16は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリなどを備えたものであり、OS(Operating System)またはファームウェア上で動作する制御プログラムが組み込まれたものである。この制御プログラムにより各機能部を制御する。
【0037】
なお、ここでは、電源部17および制御部16は、装着者がメガネ10をかけたときの左右の重量バランスをとるために、それぞれ左右に備えた構成としたが、電源部17と制御部16との重さを調整し、電源部17を左右の一方に、制御部16を左右の他方に配置するなどの構成を取ることもできる。
【0038】
情報取得部12が取得する装着性情報としては、装着者がメガネ10を装着した際の耳や側頭部へのテンプル101の接触具合、瞳孔(黒目の中心)に対するメガネフレーム100のフロント部の位置、角膜頂点間距離、鼻パッド104の接触具合などが挙げられる。本実施形態においては、装着性情報として、1)装着者の頭部に触れている面積および頭部に加えている圧力に関するデータ、2)メガネフレームの、装着者の頭部水平からの傾きに関するデータ、3)装着者の角膜頂点間距離に関するデータ、および4)装着者の瞳孔間距離に関するデータを取得する。すなわち、本実施形態のメガネ10は装着情報として、上記1)〜4)の4つの調整パラメータに関するデータを取得するものである。
【0039】
上記の各調整パラメータについてのデータを取得するために、情報取得部12は、メガネフレーム100のテンプル101が装着者の頭部に触れている面積および頭部に加えている圧力に関するデータを取得する接触圧力分布データ取得部20、メガネフレーム100の、装着者の頭部水平からの傾きに関するデータを取得する傾きデータ取得部22、装着者の角膜頂点間距離に関するデータを取得する角膜頂点間距離データ取得部24、および、装着者の瞳孔間距離に関するデータを取得する瞳孔間距離データ取得部26を有する。
【0040】
なお、情報取得部12は、必ずしも上記4つのデータ取得部20、22、24及び26を全て備えていなくてもよく、いずれか1つ、2つ、あるいは3つのデータ取得部を備えるものであってもよい。また、データが取得される調整パラメータは、上記の4つに限らず、装着性に関するものであれば、特に制限はない。
【0041】
調整値算出部13は、情報取得部12により取得された装着性情報から、メガネフレーム100の装着性を調整するための調整値を算出する演算プログラムを備えた演算処理部により構成される。なお、本実施形態において、調整値算出部13は制御部16と一体的に構成されている。調整値算出部13は、項目毎の規定値を記憶するメモリを備えており、項目毎に規定値とデータ取得部で取得された測定値とを比較し、何をどの程度調整する必要があるか算出する機能を有する。なお、規定値を記憶するメモリを備えるのではなく、有線もしくは無線による通信手段により外部から規定値の最新データを取得してもよい。
【0042】
本実施形態において、調整値算出部13は、面積および圧力に関するデータからテンプル101の密着性を調整するテンプル調整値を算出し、傾きに関するデータからメガネフレームの傾きを調整する傾き調整値を算出し、角膜頂点間距離に関するデータから角膜頂点間距離を調整する角膜頂点間距離調整値を算出し、瞳孔間距離に関するデータからメガネフレーム100の左右のリム103の間隔を瞳孔間距離に応じて調整するリム間隔調整値を算出する。
【0043】
装着性調整部14は、上記各種調整値を用いて、装着者に対するメガネフレームの装着性を調整する各種機構を備えている。具体的には、本実施形態の装着性調整部14は、テンプル101の頭部への密着性を調整するためのテンプル調整部40、頭部水平に対するメガネフレームの傾きを調整する傾き調整部42、角膜頂点間距離を調整する角膜頂点間距離調整部44およびリム間隔を調整するリム間調整部46を備えている。
【0044】
情報取得部12、調整値算出部13および装着性調整部14の具体的な構成を説明する。
【0045】
接触圧力分布データ取得部20としては、テンプル101が装着者の頭部に触れている面積および頭部に加えている圧力に関するデータを取得できれば、特に制限はない。
図3Aは接触圧力分布データ取得部20の具体的構成例を示す模式図である。
【0046】
接触圧力分布データ取得部20は、
図3Aに示すように、テンプル101の装着者頭部側面101aに貼付可能な圧電センサ21から構成することができる。装着者の頭部と接触する可能性のある領域に、点状のセンサを複数配置する、もしくは面状のセンサを配置する。これらの二次元センサにより、頭部と触れた箇所の圧力分布を取得することができる。このとき、圧電センサ21からは接触圧力に応じた電気信号が取得され、圧電センサを備えた領域における接触面積および圧力分布を取得することができる。
【0047】
テンプルの装着者頭部への接触状態としては、密着面積を広く、接触圧力を適切な範囲にすることが好ましい。なお、接触圧力は小さくかつ均一にすることがより好ましい。また、接触圧力は、好ましい装着性を実現する範囲として0.5MPa〜15MPa程度の範囲が知られている。調整値算出部13は、基準値として、例えば、最低限接触すべき面積の大きさ、また、上記好ましい接触圧力値の範囲をメモリに保持しており、接触圧力分布データ取得部20により取得された圧力分布データと基準値を比較してテンプル調整値を算出する。例えば、取得された最大接触圧力が基準値の範囲を下回る(=圧力が弱い)場合はテンプルの密着性を上げるようにテンプル調整値を算出し、他方、最大接触圧力が基準値の範囲を上回る(=圧力が強い)場合は、テンプルの密着性を下げるようにテンプル調整値を算出する。
【0048】
テンプル調整部40は、例えば、
図3Bに示すように、テンプル101に、テンプル長さ方向に沿って配置されたワイヤ41aと、ワイヤ41aの一方の先端に備えられたワイヤ41aに張力を加えるアクチュエータ41bとを備え、テンプル調整値を用いてテンプル101の装着者頭部への密着性を調整する。初期状態において、ワイヤ41aは、アクチュエータ41bにより一定の張力で張られた状態としておく。これに対して、密着性を上げる場合には、アクチュエータ41bを駆動してワイヤ41aにかけられている張力を増加させることにより、テンプル101のモダンが頭部側に曲げられる。また、逆に密着性を低下させる場合には、アクチュエータ41bを駆動してワイヤ41aにかけられている張力を減少させ緩めることにより、テンプル101のモダンが頭部側から離れる方向に曲がられる。調整値算出部13においては、このアクチュエータ41bにより張力を増減させるための調整値を算出する。例えば、張力変化と曲げ変化量との関係を予め取得しておけば、調整値として張力変化量を算出することができる。
【0049】
傾きデータ取得部22としては、メガネフレーム100の、装着者の頭部水平からの傾きに関するデータを取得することができれば、特に制限はない。
図4Aは傾きデータ取得部22によるデータの取得方法を示す模式図である。
【0050】
傾きデータ取得部22は、
図4Aに示すように、メガネフレーム100のリム103に備えられた赤外線インカメラ25を備え、赤外線インカメラ25による撮影情報からメガネフレームの傾きに関するデータを取得する。赤外線インカメラ25は、左右のリム103の下側中央部分に備えられ、装着者の眼5をそれぞれ撮影可能に配置されている。なお、ここで「インカメラ」とは顔側に向けられているカメラを指す。装着者が正面を向いた状態の装着者の眼5を撮像して、メガネフレームの、装着者の頭部水平からの傾きに関するデータを得る。
【0051】
例えば、傾きデータ取得部22においては、赤外線インカメラ25の位置から本来、瞳の中心があるべき位置がデフォルト値として規定されている。左右のインカメラによって左右の眼をそれぞれ撮影し、画像上における実際の瞳の中心位置(実測値)を検出する。左右それぞれの画像上におけるデフォルト値と実測値の差異を算出する。左右の画像におけるデフォルト値を結ぶ直線と実測値を結ぶ直線とのなす角度を、メガネフレームの、装着者の頭部水平からの傾きとして算出することができる。
【0052】
ここで、「頭部水平」は、上記左右の実測値を結ぶ直線であり、装着者が正面を向いた状態における左右の黒目中心(瞳孔5aの中心)を結ぶ直線Aで定義される。左右の赤外線インカメラ25を結ぶ直線Bがメガネフレームの水平であり、これは、上記左右の画像におけるデフォルト値で結ぶ直線と平行である。
図4Aに示す、頭部水平(直線A)に対するメガネフレーム水平(直線B)の傾きθが、「メガネフレームの、装着者の頭部水平からの傾き」に相当する。
【0053】
なお、装着者の左右の眼を撮影することができ、瞳孔中心位置を特定できる構成であれば、赤外線インカメラ25の設置場所および数は本実施形態に限るものではない。
【0054】
装着状態としては、メガネフレーム100の水平と頭部水平とが一致することが好ましい。すなわち、調整値算出部13が有する傾き規定値は0°であり、上記のようにして取得された傾きθが、規定値0°となるように傾き調整値を算出する。
【0055】
傾き調整部42は、例えば、メガネフレーム100のフロントと左右のテンプル101との接続部にそれぞれ備えられ、傾き調整値を用いてフロントの頭部水平に対する傾きを調整する機構である。具体的には、
図4Bに示すように、傾き調整部42はテンプル101をリム103に対して上下方向にスライド可能としたスライド機構42aとスライド機構42aを駆動する、図示しないリニアサーボモータから構成することができる。このような傾き調整部42を備える場合、調整値算出部13においては、このリニアサーボモータにスライド機構42aのスライド量および方向を指定する調整値を算出する。
【0056】
また、傾き調整部42は、
図4Cに示すように、リム103に対するテンプル101の接続角度を変化させるためリム103に対してテンプル101を回動可能とした回動機構42bと、回動機構42bを駆動する、図示しない回転サーボモータから構成することもできる。このような傾き調整部42を備える場合、調整値算出部13においては、この回転サーボモータによる回動機構42bの回転量および回転方向を指定する調整値を算出する。
【0057】
角膜頂点間距離データ取得部24としては、角膜頂点間距離に関するデータを取得することができれば、特に制限はない。
図5Aおよび
図5Bは角膜頂点間距離の取得方法を示す模式図である。
【0058】
角膜頂点間距離データ取得部24は、
図5Aに示すように、メガネフレーム100のリム103に備えられた赤外線インカメラ25を備え、赤外線インカメラ25による撮影情報から角膜頂点間距離に関するデータを取得する。赤外線インカメラ25は、上記傾きデータ取得部22として用いられているものを兼用する。赤外線インカメラ25により、
図5Aに示すように、装着者が右を見た状態の眼5を撮像し、また、
図5Bに示すように、装着者が左を見た状態の眼5を撮像する。それぞれの撮像画像から瞳孔5aの形状を抽出することができ、瞳孔の形状から装着者の視線方向を計算し、三角法で角膜頂点間距離を計算することができる。
【0059】
角膜頂点間距離とは、
図5Cで示すように、メガネレンズ110の後側頂点110aと、角膜頂点5bとの距離Cであり、一般的な視力矯正用のメガネにおいては、この距離Cを12mmとして設計される。すなわち、調整値算出部13が有する角膜頂点間距離の規定値は12mmであり、角膜頂点間距離データ取得部24で取得された角膜頂点間距離に関するデータから規定値との差分を算出し、角膜頂点間距離調整値を算出する。
【0060】
角膜頂点間距離調整部44は、例えば、
図5Cに示すように、メガネフレーム100に備えられた鼻パッド104をフロントに対して接近方向又は離間方向にスライドさせるスライド機構45aと、スライド機構45aを駆動するリニアサーボモータ45bとを備え、角膜頂点間距離調整値に基づきリニアサーボモータを駆動することにより角膜頂点間距離Cを調整する。角膜頂点間距離Cを広げる場合には、角膜頂点間距離調整部44は、鼻パッド104を装着者の顔側に向けて伸びる方向にスライド機構45aをスライドさせ、角膜頂点間距離Cを縮める場合には、鼻パッド104を装着者の顔から離間する方向にスライド機構45aをスライドさせる。調整値算出部13においては、このリニアサーボモータ45bによりスライド機構45aをスライドさせる距離を調整するための調整値を算出する。
【0061】
瞳孔間距離データ取得部26としては、装着者の瞳孔間距離に関するデータを取得することができれば、特に制限はない。
図6Aは瞳孔間距離データ取得部26によるデータの取得方法を示す模式図である。
【0062】
瞳孔間距離データ取得部26は、
図6Aに示すように、メガネフレーム100のリム103に備えられた赤外線インカメラ25を備え、赤外線インカメラ25による撮影情報から瞳孔間距離に関するデータを取得する。赤外線インカメラ25は、上記傾きデータ取得部22および角膜頂点間距離データ取得部24を兼ねる。赤外線インカメラ25により、
図6Aに示すように、装着者が正面を向いた状態の装着者の眼5を撮像して、黒目の中心(瞳孔5a中心)間の距離を測定する。この瞳孔間距離データ取得部26は、傾きデータ取得部22と共通化することができる。
【0063】
瞳孔5a間の距離(
図6Bにおける距離D)と左右のレンズ中心間の距離とが一致していることが好ましい。すなわち、調整値算出部13は、左右のレンズ中心間距離を規定値として有しており、瞳孔5a間の距離と左右のレンズ中心間距離とが一致するように左右のリム103の間隔を調整するリム間隔調整値を算出する。左右のレンズ中心間距離の規定値の初期値は、例えば、一般的な瞳孔間距離、男性64mm、女性62mmとする。
【0064】
リム間調整部46は、メガネフレーム100のリム間の距離を瞳孔間距離調整値を用いて調整するものである。リム間調整部46は、例えば、
図6Bに示すように、メガネフレーム100の左右のリム103の間隔を変化させるスライド機構46aと、スライド機構46aを駆動する、図示しないリニアサーボモータとから構成することができる。
【0065】
スライド機構46aはブリッジ106を伸縮するものであり、既述の通り、初期状態において、一般的な瞳孔間距離、男性64mm、女性62mmにレンズ中心間距離が一致するようにリム間隔を設定してある。したがって、瞳孔間距離が初期レンズ中心間距離よりも大きく、リム間距離を広げる場合にはブリッジ106を伸ばす方向にスライド機構46aをスライドさせ、瞳孔間距離が初期レンズ中心間距離よりも小さく、リム間距離を狭める場合にはブリッジ106を縮む方向にスライド機構46aをスライドさせる。このようなリム間調整部46を備える場合、調整値算出部13においては、このリニアサーボモータにスライド機構46aのスライド量およびスライド方向を指定するための調整値を算出する。
【0066】
情報取得部12の少なくとも一部および/または装着性調整部14の少なくとも一部がモジュール化されており、メガネフレーム100に対して交換可能に構成されることが好ましい。例えば、接触圧力分布データ取得部20の圧電センサ21、テンプル調整部40のワイヤ41aおよびアクチュエータ41bがそれぞれモジュール化されていることが好ましい。同様に、赤外線インカメラ25、リニアサーボモータ、回転サーボモータなどもそれぞれモジュール化されて、交換可能であることが好ましい。また、電源部17についても交換可能であることが好ましい。
【0067】
メガネ10は、
図2に示すように、さらに、装脱着検出部15を備えていることが好ましい。装脱着検出部15は、メガネ10の装着者への装着あるいは脱着を検出するものである。ここで、脱着とは、装着の対義語として装着状態を解除することを意味する。装脱着検出部15は、たとえばテンプル101の開閉状態を開閉センサによって検出することによって、メガネ10の装着者への装着、および脱着を検出することができる。開閉センサとしては、たとえばテンプル101が閉じられた状態でオンとなり、テンプル101が開かれた状態でオフとなるリミットスイッチなどを用いることができる。
【0068】
また、メガネ10の装着者への装脱着を検出する方法としては、上記の方法に限らず、たとえばテンプル101の耳かけの部分またはメガネフレーム100の鼻パッド104に密着センサを設け、その密着センサによって肌への密着を検出することによってメガネ10の装着者への装着および脱着を検出するようにしてもよい。密着センサとしては、たとえば圧力に応じた信号を出力する圧力センサを用いることができる。
【0069】
また、装着者の眼球の動きを動きセンサ(動き検出部に相当する)によって検出することにより、メガネ10の装着者への装着および脱着を検出するようにしてもよい。動きセンサとしては、たとえばLED(Light Emitting Diode)などの発光素子と、PD(Photo Detector)などの受光素子とを備えたものを用いることができる。動きセンサは、たとえば黒目の動きに伴う受光素子での受光量の変化から、眼球(主に黒目)の動きを検出する。この動きセンサにより黒目を検出できるか否かによって装着、脱着を検出してもよい。黒目が検出されたるときに装着と判断し、一定時間以上黒目が検出されない場合には、脱着と判断するなどである。
【0070】
制御部16は、装脱着検出部15によってメガネ10が装着者に装着されたことが検出された場合には、情報取得部12による装着性情報の取得を開始し、メガネ10が装着者から脱着されたことが検出された場合には、情報取得部12による装着性情報の取得中であれば情報取得処理を停止し、装着性調整部14による装着性の調整中であれば装着性調整処理を停止する。
【0071】
なお、情報取得部12による装着情報の取得開始および停止、並びに装着性調整部14による装着調整処理の停止については、その他の条件に基づいて制御するようにしてもよい。具体的には、たとえば、装着者が予め設定された位置を予め設定された時間以上継続して見ている場合に、情報取得部12による装着情報の取得を開始するようにしてもよい。
【0072】
次に、本実施形態の装着性調整メガネシステム1(装着性調整メガネ10)による装着性調整の一連の動作について、
図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0073】
まず、装着者(ユーザ)がメガネ10を装着する。この装着動作が装脱着検出部15によって検出された場合には(S10,YES)、制御部16の制御によって情報取得部12の情報取得機能がオンとされ(S12)、各データ取得部20、22、24および26によるデータの取得が実施される(S14)。ここでは、接触圧力分布データ、傾きデータ、角膜頂点間距離データおよび瞳孔間距離データの取得が、同時もしくは随時に行われる。各データ取得部20、22、24および26によるデータ取得方法については既述の通りである。
【0074】
その後、各データ取得部20、22、24および26で取得されたデータは制御部16を介して調整値算出部13に送られ、調整値算出部13において、各種調整値が算出される(S16)。具体的には、接触圧力分布データからテンプル調整値が算出され、傾きデータから傾き調整値が算出され、角膜頂点間距離データから角膜頂点間距離算出値が算出され、瞳孔間距離データからリム間距離調整値が算出される。
【0075】
その後、制御部16において、調整値算出部13により算出された各種調整値から調整の要否が判断される(S18)。なお、この調整要否の判断は、調整値算出部13においてなされてもよい。調整が必要な場合には(S18,YES)、制御部16から装着性調整部14に対して調整指示がなされ、装着性調整部14の各調整部40、42、44および46による調整が行われる(S20)。各調整部による調整は同時もしくは順次になされる。一方、調整が不要である場合には(S18,NO)、一連の装着性調整処理を終了する。
【0076】
各調整値についての調整要否は、基本的には、各調整値に対して、調整が必要かどうかの閾値を予め設けておき、その閾値を超えていれば調整要と判断し、閾値以下であれば調整不要と判断することとする。一方で、メガネ全体として要調整か否かの判断基準は、任意である。例えば、全ての調整値がいずれも調整要で判断された場合、調整値のうちのいずれか一つでも調整要と判断された場合、もしくは重要度の高い調整パラメータが調整要と判断された場合、等に調整要と判断する。なお、重要度のレベルや重要度が高いと設定するパラメータの個数等の設定方法も任意である。
【0077】
装着性調整(S20)の後、再度、情報取得部12の情報取得機能がオンとされて、装着情報取得処理がなされ調整不要となるまで、工程S12〜S20の処理が繰り返される。
【0078】
上記においては、装脱着検出部15によるメガネの装着検出がなされた場合に装着性調整の一連の処理を開始するものとしたが、装着性調整処理開始用の外部ボタンを設けておき、装着者によりボタンが押下された場合に、機能をオンとして処理を開始するように構成されていてもよい。
【0079】
また、調整処理は、上記のように、調整不要と判断されるまで繰り返すことなく、1度の調整で終了することとしてもよい。また、予め繰り返し回数(例えば、3回など)に上限を定めておき、予め定められた調整回数が繰り返された後に調整処理を終了するように設定されていてもよい。
【0080】
また、全ての装着性データの取得および調整を毎回行う構成でなくてもよい。1箇所の調整を行うと、他の箇所の装着性に影響を与える場合も考えられるため、例えば、装着性のデータ取得により、最も調整が必要(規定値との差が最も大きかった調整値)と判断された部分の調整を優先して行い、その後、再度装着性のデータ取得を行い、この再度の装着性のデータ取得において最も調整が必要な部分を調整する、との工程を繰り返すことにより、徐々に装着性を向上させるようにしてもよい。
【0081】
また、装着性取得部に装着性に関する複数のデータ取得部を備えている場合、常に全ての装着性データを取得するものでなくてもよく、通常の調整処理工程においては、いずれか1つもしくは2つなど、装着性に最も寄与すると考えられるパラメータについてのみデータ取得をして調整するようにしてもよい。
【0082】
図8は、本発明の第2の実施形態にかかる装着性調整メガネシステム2の概略構成を示す斜視図である。本実施形態の装着性調整メガネシステム2は、
図8に示すように、調整値受信型装着性調整メガネ10A(以下において、メガネ10Aという)および電子端末10Bから構成されている。メガネ10Aと電子端末10Bとは、無線あるいは優先の通信手段によりデータの送受信が可能となっている。
【0083】
図9は、本実施形態の装着性調整メガネシステム2の機能ブロック図である。
メガネ10Aは、
図1および
図2に示した装着性調整メガネ10において、調整値算出部13を備えず、一方、電子端末10Bとの間でデータの送受信を行うデータ送受信部18を備えている。データ送受信部18は、情報取得部12により取得された装着性情報を、調整値算出部13を構成する電子端末10Bに出力する情報出力部と、調整値算出部13で算出された調整値を受信する調整値受信部を構成するものである。その他の構成要素はメガネ10と同様である。データ送受信部18は、有線もしくは無線の通信手段を用いて、電子端末10Bとの間で通信を行うものである。無線通信手段には、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)等、あるいはインターネット介した各種の公知の無線通信手段を用いることができる。通信手段をモジュール化し、テンプル101に対して着脱可能および交換可能に構成してもよい。
【0084】
電子端末10Bは、メガネ10における調整値算出部13を備え、メガネ10Aとの間でデータの送受信を行うデータ送受信部19を備えている。データ送受信部19は、メガネ10Aが出力する装着性情報を受信する装着性情報受信部であり、かつ、調整値算出部13において算出された調整値をメガネ10Aに送信する調整値出力部を構成する。電子端末10Bは、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット、携帯電話、または装着性調整メガネシステム専用のコントローラなどであり、これらに内蔵されているコンピュータを装着性調整メガネシステムにおける調整値算出部13として機能させるプログラムが組み込まれている。
【0085】
メガネ10Aの制御部16は、情報取得部12により取得された各種データを、電子端末10Bに出力し、電子端末10Bの調整値算出部13において算出された調整値を受信して、その調整値を用いて装着性調整部14による装着性の調整を実施させる。
【0086】
なお、メガネ10Aにおいては、装着性情報を電子端末10Bに出力する情報出力部と、調整値算出部13で算出された調整値を受信する調整値受信部を構成するデータ送受信部18を備えるものとしたが、調整値受信部として、手動で入力される調整値を受け付ける調整値入力部が備えられていてもよい。例えば、調整値入力部として、画像投影手段と、操作ボタンとをレンズフレームに備え、画像投影手段によりレンズに設定値の入力画面を表示し、操作ボタンを操作して、例えば、2つのボタンの一方を数値増加用、他方を数値減少用とし、2回連続で押すと確定など、調整値の上げ下げや確定を行うようにしてもよい。あるいは、調整値入力部として、メガネフレームに音声入力部を備え、調整値の入力を音声入力するようにしてもよい。なお、この場合、電子端末10Bは調整値出力部として、有線または無線の通信手段ではなく、表示画面上に調整値を表示する表示部として、あるいは、紙等の印字媒体に調整値を印刷する印刷部として構成すればよい。
【0087】
本実施形態の装着性調整メガネシステム2における装着性調整の一連の動作について、
図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。図中左側のフローはメガネ10Aにおける処理であり、右側のフローは電子端末10Bにおける処理である。
【0088】
まず、装着者(ユーザ)がメガネ10Aを装着する。この装着動作が装脱着検出部15によって検出された場合には(S30,YES)、制御部16の制御によって情報取得部12による情報取得部12の情報取得機能がオンとされる(S32)。そして、各データ取得部20、22、24および26によるデータの取得が実施される(S34)。ここでは、接触圧力分布データ、傾きデータ、角膜頂点間距離データおよび瞳孔間距離データの取得が、同時もしくは随時に行われる。各データ取得部20、22、24および26によるデータ取得方法については既述の通りである。
【0089】
その後、情報取得部12の各データ取得部20、22、24および26で取得されたデータは制御部16により、データ送受信部18を介して電子端末10Bに送信される(S36)。電子端末10B側では、装着に関する各種データを受信した場合(S50,YES)、調整値算出部13において各種データに基づいて調整値が算出され(S52)、調整値をメガネ10Aに出力する(S54)。調整値算出部13においては、具体的には、接触圧力分布データからテンプル調整値が算出され、傾きデータから傾き調整値が算出され、角膜頂点間距離データから角膜頂点間距離算出値が算出され、瞳孔間距離データからリム間距離調整値が算出される。
【0090】
メガネ10A側では、電子端末10Bからの調整値を受信した場合(S38,YES)、制御部16において調整の要否判断がなされる(S40)。そして、調整が必要であると判断された場合(S40,YES)、制御部16から装着性調整部14に対して調整指示がなされ、装着性調整部14の各調整部40、42、44および/または46による調整が行われる(S42)。各調整部による調整は同時もしくは順次になされる。一方、調整が不要である場合には(S44,NO)、一連の装着性調整処理を終了する。
【0091】
各調整値についての調整要否の判断およびメガネ全体としての要調整か否かの判断については、既述の第1の実施形態の調整メガネシステムと同様である。
【0092】
装着性調整(S42)の後、再度、情報取得部12の情報取得機能がオンとされて、装着情報取得処理がなされ調整不要となるまで、上記工程が繰り返される。
【0093】
第1の実施形態の装着性調整のフローの場合と同様に、装着性調整処理開始用の外部ボタンを設けておき、装着者によりボタンが押下された場合に、機能をオンとして処理を開始するように構成されていてもよい。
【0094】
また、調整処理は、上記のように、調整不要と判断されるまで繰り返すことなく、1度の調整で終了することとしてもよい。また、予め繰り返し回数(例えば、3回など)に上限を定めておき、予め定められた調整回数が繰り返された後に調整処理を終了するように設定されていてもよい。
【0095】
また、全ての装着性データの取得および調整を毎回行うフローには限らない。1箇所の調整を行うと、他の箇所の装着性に影響を与える場合も考えられるため、例えば、装着性のデータ取得により、最も調整が必要(規定値との差が最も大きかった調整値)と判断された部分の調整を優先して行い、その後、再度装着性のデータ取得を行い、この再度の装着性のデータ取得において最も調整が必要な部分を調整する、との工程を繰り返すことにより、徐々に装着性を向上させるようにしてもよい。
【0096】
また、装着性取得部に装着性に関する複数のデータ取得部を備えている場合、常に全ての装着性データを取得するものでなくてもよく、通常の調整処理工程においては、いずれか1つもしくは2つなど、装着性に最も寄与すると考えられるパラメータについてのみデータ取得をして調整するようにしてもよい。また、いずれのパラメータについてデータ取得をするか、あるはいずれのパラメータについて調整を行うかについて、装着者が選択できるように構成されていてもよい。この場合、例えば、第2の実施形態の場合には、電子端末側のアプリケーションにおいて、装着者がパラメータの選択及び設定を行うことができるように構成されていればよい。
【0097】
上記実施形態においては、一般の矯正用メガネにおいて、装着性情報検出部および装着性調整部を備えた装着性調整メガネについて説明したが、本発明におけるレンズフレームは、メガネ型の画像表示装置を担持するものであってもよい。この場合、複数人で1つのメガネを共有する場合があることから、特に個々の装着者に応じて装着性を調整することができるため、体型の異なる複数の人がそれぞれ適度な装着感を持って使用することが可能となる。