特許第6442828号(P6442828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6442828熱収縮性フィルム、並びに該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、および該成形品、または該ラベルを装着した容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442828
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】熱収縮性フィルム、並びに該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、および該成形品、または該ラベルを装着した容器
(51)【国際特許分類】
   B29C 61/06 20060101AFI20181217BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20181217BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20181217BHJP
   G09F 3/04 20060101ALI20181217BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20181217BHJP
   B65D 65/20 20060101ALI20181217BHJP
   B65D 23/08 20060101ALI20181217BHJP
   B65D 23/00 20060101ALI20181217BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20181217BHJP
   B29K 105/02 20060101ALN20181217BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20181217BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20181217BHJP
【FI】
   B29C61/06
   B32B27/36
   G09F3/00 Q
   G09F3/04 C
   C08J5/18CER
   C08J5/18CEZ
   B65D65/20
   B65D23/08 Z
   B65D23/00 H
   B29K67:00
   B29K105:02
   B29L7:00
   B29L9:00
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-7720(P2014-7720)
(22)【出願日】2014年1月20日
(65)【公開番号】特開2015-136797(P2015-136797A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】久保川 佳佑
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−328271(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/084212(WO,A1)
【文献】 特開2000−094513(JP,A)
【文献】 特開2009−023100(JP,A)
【文献】 特開2011−094148(JP,A)
【文献】 特開2009−102529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 61/06
B32B 7/02
B65D 65/00−65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方向に延伸されてなるポリエステル系樹脂を主成分とする層を表裏層に有する熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、かつ着色剤を含有する紫外線吸収剤非含有の層を中間層に少なくとも1層有し、前記中間層は、0.25〜1.25%のアゾ−ニッケル錯体顔料と0.25%未満のカーボンブラックを含み、前記フィルムは、波長200〜500nmにおいて光線透過率が5%以下となる波長領域の割合0%以上であり、かつ波長200〜500nmにおいて光線反射率が30%以下であり、かつ表面粗さが60nm以下であり、かつ80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が20%〜80%であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
前記着色剤を含有する層の厚みが、フィルム全体厚みに対して30〜98%である請求項1に記載のポリエステル系熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
前記ポリエステル系樹脂が、下記(A)または/および(B)を含有する混合物である請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
(A)ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分がエチレングリコールを主成分とし、さらに1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコールのうちいずれか1種以上を含むポリエステル系樹脂
(B)ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分として、エチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリトリメチレングリコールから選ばれる少なくとも1種以上を含むポリエステル系樹脂
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを基材として有する成形品。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを基材として有する熱収縮性ラベル。
【請求項6】
請求項4に記載の成形品を用いた、または請求項5に記載の熱収縮性ラベルを装着した、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性フィルム、並びに該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、および該成形品、または該ラベルを装着した容器に関する。詳しくは、美麗性、鮮明性や光沢などのフィルム外観に優れ、かつ高いレベルの遮光性を備え、容器への収縮仕上がりも良好な熱収縮性フィルム、並びに該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、および該成形品、または該ラベルを装着した容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光によって変質しやすい飲料等の容器として、遮光性を付与するために着色されたガラスやプラスチックの容器が広く用いられてきた。しかしながら、これら容器は着色剤を含むことが使用済容器の回収・再利用の際に大きな障害となるため、透明容器に遮光性を付与したフィルムを装着することで遮光性を付与する技術が検討されている。
包装用熱収縮性ラベル用途などの場合、遮光性に加えて、デザインの鮮明性や光沢度などに代表されるラベルの外観も重要となる。また、飲料包装用熱収縮性ラベル用途の場合、特にビール、清酒、ワイン等のアルコール飲料や、緑茶、ビタミン入り飲料など、特定波長領域の光によって変色や変質が起こりやすい飲料包装用ラベルに用いられる場合は、デザインの鮮明性や光沢等のラベルの外観とともに、高いレベルの遮光性能が要求され、異物混入等の改竄を防ぐ目的で内容物の状態、液面が確認できることと遮光性能の両立が求められる。
【0003】
このような用途に用いるフィルムとして、特許文献1には、二酸化チタン等を含有する白色フィルムを用いた熱収縮性ラベルが開示されている。当該白色フィルムを用いた熱収縮性ラベルでは遮光性は確保できるが、裏印刷を施した場合にその色が表に透けないほどの可視光の遮光性が有るため、容器の内容物の状態や液面を確認すること極めて困難であり、改竄防止の観点からは好ましくない。
【0004】
また、特許文献2には、白色熱収縮性フィルムに黒色印刷を施したシュリンクラベルが開示されている。このようなフィルム構成の場合、ボトルに接する側である内面が黒色になるため、ボトルの口から内容物の飲料を見たとき飲料が黒っぽく見えてしまう問題がある。また、このような着色印刷の場合、遮光性を向上させるためには印刷回数を増やすか、高濃度の印刷層を付与する必要がある。しかし、それによるコストの増大、フィルム表面の劣化などのデメリットが発生し、効果的な加工方法とは言い難い。
【0005】
また、特許文献3には、透明層の両側に着色剤を含有する層で構成されたフィルムに、印刷層が設けられた着色透明シュリンクラベルが開示されている。しかしながら、このようなフィルムは、フィルムの表面粗さが大きくなり、鮮明性や光沢を得ることが難しい。
【0006】
また、ラベルの装着方法としては、PETボトル等の対象容器全体をラベルで覆うことが遮光性に効果的であることが知られている。しかしながら、近年のPETボトルは、外形形状が複雑になり、また胴体部と口栓部の外周差が大きい形状も散見され、従来検討されてきた上記フィルム等は、印刷を重ねることにより収縮率が低下したり、ボトルの外形形状にきれいに追従せず、収縮斑やシワが発生するなど、収縮後の良好な仕上がり外観を得ることが困難であった。
【0007】
このように、飲料用容器等に使用されるラベルは、機能性はもとより、その見た目、外観の美しさ、高級感等も重要であり、消費者の購買意欲を掻き立てるようなデザイン性が求められる。例えば、ガラス瓶のような光沢感や高級感、手に取った時の馴染みやすさを表現したいという要求がある。しかしながら、上記のような従来の白色フィルムや印刷フィルムでは、高度なデザイン性を満足するものは得られておらず、またラベルとしての機能性を両立することも困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−285020号公報
【特許文献2】特開2003− 26252号公報
【特許文献3】特開2003−271062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、このような従来の問題点を解消し、安価に提供することが可能で、美麗性や鮮明性、光沢感などのフィルム外観に優れ、かつ高いレベルの遮光性を備え、収縮後の仕上がり性にも優れた熱収縮性フィルムを提供することにある。
【0010】
本発明のもう一つの課題は、熱収縮ラベル等の用途に適した前記熱収縮性フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、及び前記成形品を用いた、又は熱収縮性ラベルを装着した容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を鑑み鋭意検討した結果、光線透過率と光線反射率を特定範囲とし、かつ、光沢度と表面粗さを特定範囲とした熱収縮性フィルムにより、上記目的を達成することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明の要旨は下記[1]〜[9]に存する。
[1]少なくとも一方向に延伸されてなる熱収縮性フィルムであって、前記フィルムは、波長200〜500nmにおいて光線透過率が5%以下となる波長領域の割合が50%以上であり、かつ波長200〜500nmにおいて光線反射率が30%以下であり、光沢度が90%以上であり、かつ表面粗さが60nm以下であることを特徴とする熱収縮性フィルム。
【0013】
[2]着色剤を含有する層を少なくとも1層有する前記[1]に記載の熱収縮性フィルム。
[3]前記着色剤を含有する層の厚みが、フィルム全体厚みに対して30〜98%である前記[1]または[2]に記載の熱収縮性フィルム。
[4]80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が20%〜80%である前記[1]から[3]のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
[5]ポリエステル系樹脂を主成分とする層を少なくとも1層有する前記[1]から[4]のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
[6]前記ポリエステル系樹脂が、下記(A)または/および(B)を含有する混合物である前記[5]に記載の熱収縮性フィルム。
(A)ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分がエチレングリコールを主成分とし、さらに1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコールのうちいずれか1種以上を含むポリエステル系樹脂
(B)ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分として、エチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリトリメチレングリコールから選ばれる少なくとも1種以上を含むポリエステル系樹脂
[7]前記[1]から[6]のいずれかに記載の熱収縮性フィルムを基材として有する成形品。
[8]前記[1]から[6]のいずれかに記載の熱収縮性フィルムを基材として有する熱収縮性ラベル。
[9]前記[7]に記載の成形品を用いた、または前記[8]に記載の熱収縮性ラベルを装着した、容器。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、美麗性、鮮明性や光沢感などのフィルム外観に優れ、かつ高いレベルの遮光性を備え、収縮後の仕上がり性などの収縮特性も良好な、熱収縮性フィルムを提供することができる。
【0015】
さらに本発明によれば、美麗性、鮮明性、光沢感、遮光性、収縮後の仕上がり性に優れた前記熱収縮性フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、及び前記成形品、または前記熱収縮性ラベルを装着した容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の熱収縮性フィルム、成形品、熱収縮性ラベル、及び容器(以下、それぞれ、「本発明のフィルム」、「本発明の成形品」、「本発明のラベル」、「本発明の容器」という)について、詳細に説明する。
【0017】
[本発明のフィルム]
本発明のフィルムは、少なくとも一方向に延伸されてなる熱収縮性フィルムであって、前記フィルムは、波長200〜500nmにおいて光線透過率が5%以下となる波長領域の割合が50%以上であり、かつ波長200〜500nmにおいて光線反射率が30%以下であり、光沢度が90%以上であり、かつ表面粗さが60nm以下であることを特徴とするものである。
【0018】
<光線透過率>
本発明のフィルムは、波長200〜500nmにおいて光線透過率が5%以下となる波長領域が50%以上であることが重要である。上記5%以下となる波長領域は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
また、本発明のフィルムは、波長200〜500nmにおいて光線透過率が20%以下となる波長領域が60%以上であることが好ましく、20%以下となる波長領域は、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
光線透過率を上記範囲とすることにより、飲料用ラベル用途、特には、ビール、清酒、ワイン等のアルコール飲料や、緑茶、ビタミン入り飲料など、特定波長領域の光によって変色や変質が起こりやすい飲料等の包装用としても使用可能な、十分な遮光性能を得ることができ、同時に、飲料用ラベルに求められる美麗性、鮮明性、光沢感を得ることができ、遮光性とラベルとしての外観の両立が可能となる。なおこの光線透過率の範囲は、着色剤の種類や含有割合、着色剤を含む層の厚み等により調整することができる。
【0019】
<光線反射率>
本発明のフィルムは、波長200〜500nmにおいて光線反射率が30%以下であることが重要である。光線反射率が30%以下の範囲は、200〜550nmが好ましく、200〜600nmがより好ましい。光線反射率を上記範囲とすることにより、容器内の内容物の状態や液面を確認することが可能となり、改竄防止の観点から好ましい。この光線反射率の範囲は、着色剤の種類や含有割合、着色剤を含む層の厚み等により調整することができる。
【0020】
本発明のフィルムは、少なくとも1層が着色剤を含有する層であることが好ましい。着色剤を含有する層は、後述する本発明のフィルムの主成分となる樹脂を主成分とし、かつ着色剤を含有するものである。
<着色剤>
本発明のフィルムに用いる着色剤は、フィルムを着色できるものであれば特に制限はなく、顔料であっても染料であっても構わないが、好ましくは顔料系着色剤であり、無機顔料,有機顔料を単独,または組み合わせて使用して、所望の色調と遮光性を付与する。具体的には、多様な色調を表現する為に赤系顔料、黄系顔料、青系顔料、緑系顔料、茶系顔料などを用いることができる。また、隠蔽性や遮光性を上げるために白系顔料、黒系顔料を用いることができる。
赤系顔料としては、例えば、カドミウムレッド、カドモポンレッド、クロムレッド、バーミリオン、ベンガラなどの無機顔料;アゾ系顔料、アリザリンレーキ、キナクリドン、コチニールレーキペリレンなどの有機顔料が挙げられる。黄系顔料としては、例えば、イエローオーカー、オーレオリン、カドミウムイエロー、カドミウムオレンジ、クロムイエロー、ジンクイエロー、ネイプルスイエロー、ニッケルイエローなどの無機顔料;アゾ系顔料、グリニッシュイエローなどの有機顔料が例示される。青系顔料としては、例えば、ウルトラマリン、岩群青、コバルトなどの無機顔料;フタロシアニン、アントラキノン、インジコイドなどの有機顔料が挙げられる。緑系顔料としては、例えば、シナバーグリーン、カドミウムグリーン、クロムグリーンなどの無機顔料;フタロシアニン、アゾメチン、ペリレンなどの有機顔料が挙げられる。茶系顔料としては、例えば、アンバー、ローアンバー、バーントアンバー、イエローオーカー、ヴァンダイクブラウン、シェンナ、ローシェンナ、バーントシェンナ、ベンガラなどの無機顔料;セピアなどの有機顔料が例示される。白系顔料としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛,リトポンなどがの無機顔料が挙げられる。黒系顔料としては、代表例としてカーボンブラックが挙げられる。
これらの中でも遮光性能と美麗性と鮮明性の観点から、有色系顔料を用いることが好ましく、中でも茶系顔料、緑系顔料がより好ましく、茶系顔料であることがさらに好ましい。
なお、これら着色剤は単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。またこれら着色剤にはさらに、金属微粒子が添加されていてもよい。また着色剤は、種々公知の方法によって各種の分散処理が施されたものであってもよい。
【0021】
本発明のフィルムの、着色剤を含有する層における着色剤の含有量は、フィルムの遮光性やコスト等を考慮して適宜選択できるが、下限は好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、上限は好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。着色剤の含有量が前記範囲内であれば、本発明のフィルムの遮光性能は十分なものとなり、コストとのバランスも取れるために好ましい。
【0022】
<光沢度>
本発明のフィルムは、光沢度の値が90%以上であることが重要である。光沢度が90%以上であれば、フィルムの鮮明性や光沢感が失われず、収縮後のフィルム外観にも優れ、商品の高級感が損なわれることがないため好ましい。光沢度は、層構成,着色剤の添加量,樹脂の構成により調整できる。
【0023】
<表面粗さ>
本発明のフィルムは、表面粗さが60nm以下であることが重要である。表面粗さは、50nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましい。表面粗さが上記範囲内であれば、フィルムが曇ることもなく、鮮明性や光沢感に優れた良好なフィルム外観を得ることができ好ましい。表面粗さは、層構成,着色剤の添加量,樹脂の構成により調整できる。
【0024】
<色差(L*値、a*値、b*値)>
本発明のフィルムは、L*値が10以上であることが好ましく、30以上がより好ましく、50以上がさらに好ましい。また、b*値が0以上であることが好ましく、20以上がより好ましく、40以上がさらに好ましい。a*値については特に制限されない。色差が上記範囲内であれば、遮光性に優れたフィルムを得ることができるため好ましい。なおこの色差は、着色剤の種類や含有割合等により調整することができる。
【0025】
<本発明のフィルムの積層構成>
本発明のフィルムを少なくとも1層が着色剤を含有する層である熱収縮性フィルムとする場合、着色剤を含有する層の片側、または両側に着色剤を含まない層を積層することが好ましい。また必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲でさらに別の層を追加することもできる。
本発明のフィルムの、着色剤を含有する層の全体の厚みに対する厚み比は、下限は30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましく、また上限は、98%以下が好ましく、95%以下がより好ましく、90%以下がさらに好ましい。着色剤を含有する層の厚み比が前記範囲内であれば、本発明のフィルムの鮮明性と光沢度と遮光性能とのバランスを好適なものとすることができ好ましい。
【0026】
本発明のフィルムの全体厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で特に制限はないが、好ましくは10〜200μm、より好ましくは12〜150μm、更に好ましくは15〜120μmとすることができる。
【0027】
<熱収縮率>
熱収縮率とは、後述するように、縦方向あるいは横方向について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表したものである。これは、ペットボトルの収縮ラベル用途等の比較的短時間(数秒〜十数秒程度)での収縮加工工程への適応性を判断する指標となる。なお、「主収縮方向」とは、縦方向と横方向のうち延伸倍率の大きい方を意味し、例えば、ボトルに装着する場合にはその外周方向に相当する方向である。
本発明のフィルムは、80℃の温水中に10秒間浸漬させたときの主収縮方向の熱収縮率が20%〜80%であることが好ましい。80℃の温水中に10秒間浸漬させたときの主収縮方向の熱収縮率の下限は、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上であり、上限は、より好ましくは75%以下、さらに好ましくは70%以下である。
なお、本発明のフィルムをフルシュリンクラベル等の用途に用いる場合は、80℃の温水中に10秒間浸漬させたときの主収縮方向の熱収縮率は40%以上とすることが好ましい。40%以上であれば、ペットボトル全体を覆っても蓋上部まで皺などがなく外観に優れた良好な収縮仕上がり性を得ることができるため好ましい。
本発明のフィルムの80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率は、フィルム製造時における延伸温度および延伸倍率を適宜調整することにより所望の熱収縮率とすることができる。
【0028】
現在、ペットボトルのラベル装着用途に工業的に最も多く用いられている収縮加工機としては、収縮加工を行う加熱媒体として水蒸気を用いる蒸気シュリンカーと一般に呼ばれているものである。さらに熱収縮性フィルムは被覆対象物への熱の影響などの点からできるだけ低い温度で十分熱収縮することが必要である。しかしながら、温度依存性が高く、温度によって極端に収縮率が異なるフィルムの場合、蒸気シュリンカー内の温度斑に対して収縮挙動の異なる部位が発生し易いため、皺、斑、アバタなどが発生し収縮仕上がり外観が悪くなる傾向にある。これら工業生産性も含めた観点から、80℃の温水中に10秒間浸漬させたときの主収縮方向の熱収縮率が20%以上であれば、収縮加工時間内に十分に被覆対象物に密着でき、かつ皺、斑、アバタなどが発生せず良好な収縮仕上がり外観を得ることができるため好ましい。
【0029】
さらに、主収縮方向と直交する方向の収縮率を低く抑えることによって、より優れた収縮仕上がり性を得ることができる。本発明のフィルムを、熱収縮性ラベルとして用いる場合は、80℃の温水中で10秒間浸漬したときの主収縮方向と直交する方向の熱収縮率は10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、6%以下であることがさらに好ましい。
80℃の温水中で10秒間浸漬したときの主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10%以下であれば、収縮後の主収縮方向と直交する方向の寸法自体が短くなり難く、収縮後の印刷柄や文字の歪み等も生じ難いため好ましい。また、例えば被装着物が角型ボトル等の場合に発生し易い、縦ひけ等のトラブルも発生し難いため好ましい。主収縮方向と直交する方向の熱収縮率もまた、前記主収縮方向の熱収縮率と同様に調整しうる。
【0030】
本発明のフィルムの主成分となる樹脂は、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂など、特に限定されないが、フィルムの鮮明性、光沢感等の観点から、ポリエステル系樹脂を主成分として用いることが好ましい。
【0031】
<ポリエステル系樹脂>
本発明のフィルムに用いるポリエステル系樹脂は、具体的には、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合させることにより得られる、いわゆる芳香族ポリエステル、あるいは、脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
【0032】
芳香族ポリエステルを構成するジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、アゼライン酸、デカン酸、ダイマー酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、5−スルホン酸塩イソフタル酸や長鎖脂肪族ジカルボン酸のドデカンジオン酸、エイコ酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸等を挙げることができる。中でも、工業的に安価で入手が容易な、テレフタル酸が好適に用いられ、ジカルボン酸成分100モル%に対して、テレフタル酸を好ましくは50モル%以上、より好ましくは55モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上含有するものを用いることができる。
【0033】
芳香族ポリエステルを構成するジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、ダイマージオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール等を挙げることができる。これらジオール成分は、2種以上用いてもよい。これらジオール成分の中でも、エチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール,1,4−ブタンジオールを用いることが本発明において好適である。
【0034】
脂肪族ポリエステルとしては、ヒドロキシカルボン酸を重合して得られる脂肪族ポリエステルや、ジオールとジカルボン酸を重合して得られる脂肪族ポリエステルが挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸を重合して得られる脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸エステル)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシプロピオネート)等が挙げられる。またこれらは、共重合可能なその他のモノマーとの共重合体であってもよい。
ジオールとジカルボン酸を重合して得られる脂肪族ポリエステルとしては、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ブチレンサクシネート−ブチレンアジペート共重合体、ブチレンサクシネート−ブチレンテレフタレート共重合体、ブチレンアジペート−ブチレンテレフタレート共重合体、エチレンサクシネート−エチレンテレフタレート共重合体等が挙げられる。
また、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルの共重合体、いわゆる脂肪族芳香族ポリエステルを用いることもできる。脂肪族芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリブチレンサクシネート・テレフタレート、ポリブチレンアジペート・テレフタレート、などを挙げることができる。
【0035】
本発明において、ポリエステル系樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。ポリエステル系樹脂として特に好適に用いられるのは、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分がエチレングリコールを主成分とするポリエステル系樹脂である。中でも、(A)ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分がエチレングリコールを主成分とし、さらに1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコールのうちいずれか1種以上を含むポリエステル系樹脂、または、(B)ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分として、エチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール,1,4−ブタンジオール、およびポリテトラメチレンエーテルグリコールから選ばれる少なくとも1種以上を含むポリエステル系樹脂、もしくは、(A)および(B)を含有する混合物であることが好ましい。
なお、上記主成分とは、全ポリエステル系樹脂成分中におけるジカルボン酸成分、ジオール成分を各々100モル%(合計200モル%)としたとき、各成分においてモル比率が最も高いものを主成分という。同様に2番目に高いものを第2成分といい、第2成分以降を含有しても構わない。第2成分の含有量は、全ジオール成分100モル%中、好ましくは10モル%以上45モル%以下であり、より好ましくは20モル%以上40モル%以下である。
【0036】
本発明に用いるポリエステル系樹脂は、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比=1/1)の混合溶媒中で30℃で測定した固有粘度が、下限としては、0.4dl/g以上が好ましく、0.5dl/g以上がより好ましく、0.6dl/g以上がさらに好ましく、上限としては、1.5dl/g以下が好ましく、1.2dl/g以下がより好ましく、1.0dl/gがさらに好ましい。ポリエステル系樹脂の固有粘度が上記範囲であれば、本発明のフィルムの機械的強度も十分となり、また成形性が悪化することもなく好ましい。
【0037】
なお、本発明のフィルムは、必要に応じて添加剤等を含んでいてもよい。添加剤の具体例としては、有機滑剤ならびに無機滑剤等のアンチブロッキング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤などが挙げられる。
また、本発明のフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で本発明のフィルムを構成する層の主成分となる樹脂とは異なる他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。具体的には、ポリエステル系エラストマー、コア−シェル型、グラフト型又は線状のランダム及びブロック共重合体のようなゴム状改質剤などが挙げられる。
【0038】
アンチブロッキング剤の具体例としては、シリカ、タルク、炭酸カルシウムなどの無機粒子、無機酸化物、炭酸塩や、架橋アクリル系、架橋ポリエステル系、架橋ポリスチレン系、シリコーン系等の各有機粒子などが挙げられる。また、多段階で重合せしめた多層構造を形成した有機粒子も用いることができる。これらの中でも、シリカや有機粒子が好ましく用いられる。
【0039】
アンチブロッキング剤の添加量は、層を構成する樹脂組成物全体の質量を基準(100質量%)として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.015質量%以上、さらに好ましくは0.02質量%以上、かつ、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。上記下限以上であれば、滑り性や耐ブロッキング性を満足でき好ましい。また上記上限以下であれば、表面荒れによる透明性の阻害や、過剰な滑り性の付与によるフィルムロールの巻きズレなども起こらず好ましい。
【0040】
アンチブロッキング剤の形状は、特に限定されるものではないが、凝集抑制、均一分散の観点、透過する光の乱反射抑制、及びフィルム表面に形成される凹凸の観点から球状のものが好ましく用いられる。また、アンチブロッキング剤の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であり、かつ、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下である。アンチブロッキング剤の平均粒径が上記下限以上であれば、滑り性や耐ブロッキング性を発現するに十分な凹凸を付与することができる。また上記上限以下であれば、フィルムに印刷を施し意匠性を高める場合等において、インキ抜けなどが生じることがなく、印刷図柄の外観を損ねることもなく好ましい。なお、アンチブロッキング剤の粒径分布は、特に制限されるものではないが、一般的に粒径分布は狭いものが好ましく用いられる。粒径分布が広い場合、前述した好ましい粒径の範囲を逸脱するものが含まれる可能性があるためである。
【0041】
さらに本発明のフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲でインラインコーティング,オフラインコーティング等の各種コーティングを施して、更なる機能性付与を行ってもよい。機能性付与の例として、易接着性,UVカット性,酸素バリア性,耐傷性,易滑性,耐熱性,帯電防止性,耐溶剤性付与が挙げられる。各種コーティングを施すことにより、遮光性、美麗性、鮮明性、光沢感と各種機能性を併せ持つ熱収縮性フィルムを得ることも可能である。
【0042】
<本発明のフィルムの製造方法>
本発明のフィルムは、公知の方法によって製造することができる。フィルムの形態としては平面状、チューブ状の何れであってもよいが、生産性(フィルムの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という点から平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、複数の原料を計量、混合し、1台または複数台の押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイから押出し、チルドロールで冷却固化し、縦方向にはロール延伸をし、横方向にはテンター延伸をし、アニールし、冷却し、巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が例示できる。
縦方向の延伸と横方向の延伸の順序、並びに回数に特に制限は無く、縦延伸/横延伸、縦延伸/横延伸/縦延伸、横延伸/縦延伸、縦延伸/横延伸/横延伸などの組み合わせが挙げられる。延伸方向、延伸倍率を適宜調整することで、主たる延伸方向を横方向とし、主たる収縮方向が横方向のフィルム、または主たる延伸方向を縦方向とし、主たる収縮方向が縦方向のフィルムのいずれの延伸方法、フィルムも選択することができる。
また、チューブラー法により製造したフィルムを切り開いて平面状とする方法も適用できる。
押出条件は用いる樹脂に応じて調整が必要であり、押出の温度やせん断の状態を最適化することにより着色剤を含む各種原材料の分散状態を制御することも、フィルムの種々の特性を所望の値にするのに有効である。
【0043】
延伸倍率はオーバーラップ用等、二方向に収縮させる用途では、好ましくは、縦方向が2倍〜10倍、横方向が2〜10倍、より好ましくは縦方向が3〜6倍、横方向が3〜6倍程度である。一方、熱収縮性ラベル用等、主として一方向に収縮させる用途では、主収縮方向に相当する方向が、好ましくは2〜10倍、より好ましくは3〜8倍、それと直交する方向が、好ましくは1〜2倍、より好ましくは1.01〜1.5倍の、実質的には一軸延伸の範疇にある倍率比を選定することが望ましい。なお、1倍とは、延伸していな場合を指す。
前記一軸延伸の範疇にある範囲内の延伸倍率で延伸した延伸フィルムは、主たる収縮方向と直交する方向の熱収縮率が大きくなりすぎることはなく、例えば、熱収縮ラベルとして用いる場合、容器に装着するとき容器の高さ方向にもフィルムが熱収縮する、いわゆる縦引け現象を抑えることができるため好ましい。
【0044】
本発明のフィルムの製造方法においては、主たる収縮方向に相当する方向として、横方向に4倍以上延伸することが好ましい。4倍以上延伸すれば、収縮率を十分付与することができて対象容器の主要部分を覆うラベルとしては勿論、対象容器全体を覆うフルシュリンクラベルとして使用した場合にも、収縮不足などによる収縮ムラや皺などが発生せず好ましい。なお、上記の各延伸工程に加えて、更に延伸工程を追加することもできる。
【0045】
延伸温度は、用いる樹脂のガラス転移温度(Tg)や熱収縮性フィルムに要求される特性によって適宜選択できるが、Tg〜(Tg+20)℃、好ましくはTg〜(Tg+10℃)の範囲で調整される。延伸温度がTg以上であれば、延伸時のフィルムの破断や、フィルムの白化などの問題を抑えることができるため好ましい。また、延伸温度が(Tg+20)℃以下であれば、収縮率が低減し、対象容器全体を覆うことが困難になるなどの問題が起こらず、また均一に延伸することも可能となるため好ましい。
【0046】
本発明のフィルムの製造方法においては、自然収縮率の低減や熱収縮特性の改良等を目的として、熱処理を行うことができる。熱処理温度は、(延伸温度−40℃)〜(延伸温度+30℃)、好ましくは(延伸温度−30℃)〜(延伸温度+20℃)とすることができる。熱処理温度が(延伸温度−40℃)以上であれば、十分な熱処理効果を得ることができ好ましい。また(延伸温度+30℃)以下であれば、必要な収縮率を得ることができ好ましい。また熱処理時間は0〜120秒であり、好ましくは0秒〜60秒、より好ましくは0秒〜30秒、さらに好ましくは0秒〜15秒である。熱処理時間が120秒以下であれば、収縮率の低下を抑制することができ、生産性の低下も抑えることができる。熱処理は、ロール、テンター等公知の熱処理機を用いて行うことができる。延伸されたフィルムを急冷することなく熱処理を行うことにより、加熱収縮時の急激な収縮を防ぐことが可能となる。
【0047】
本発明のフィルムは、延伸前、延伸工程中、又は延伸後にフィルムの片面または両面にコーティングを行い、更なる機能性付与を行ってもよい。機能性付与の例として、易接着性,UVカット性,酸素バリア性,耐傷性,易滑性,耐熱性,帯電防止性,耐溶剤性付与が挙げられる。
また、本発明のフィルムは、必要に応じて帯電防止処理、コロナ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面処理や表面加工、さらには、各種溶剤やヒートシールによる製袋加工やミシン目加工などを施すことができる。
【0048】
<本発明の成形品、本発明の熱収縮性ラベル、及び本発明の容器>
本発明のフィルムは、遮光性能に優れ、鮮明性や光沢度、収縮後の仕上がり外観にも優れたものであるため、その用途が特に制限されるものではないが、必要に応じて印刷層、蒸着層その他機能層を形成することにより、各種樹脂のボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の様々な成形品の基材として用いることができる。そして、得られる本発明の成形品は、容器等として使用できる。また、本発明のフィルムは、食品容器(例えば清涼飲料水用又は食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用の熱収縮性ラベルの基材として用いることができる。本発明の熱収縮性ラベルは、遮光性能に優れ、鮮明性や光沢度に優れる上、収縮特性にも優れるので、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱など)であっても該形状に密着可能であり、皺やアバタ等のない美麗に装着されたラベルとなる。そして、そのラベルを装置した本発明の容器は、各種用途用容器として使用することができる。
【0049】
なお、本発明のフィルムを、PETボトルやガラス瓶等の容器用の熱収縮性ラベルとして使用する場合、特に、容器の底部周辺からキャップ部分上部までを覆うフルシュリンクラベルとして使用することが好ましい。フルシュリンクラベルとすることにより、容器の遮光性能が高まる上に、容器全体を統一感のあるデザインで包装することが可能となり、優れた外観を得ることが可能となる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により限定されるものではない。
【0051】
(1)収縮率
フィルムの主収縮方向および直交方向の収縮率の測定は下記の方法により行った。収縮率の測定方向に120mm、測定方向と直角する方向に10mmの大きさに切り出したサンプルを作製し、測定方向に100mm間隔の標線を付して、80℃の温水中に10秒間浸漬し、下記の式により収縮率を用いた。
収縮率={(100−L)/100}×100(%)
L(単位mm)は収縮後の標線間隔
【0052】
(2)光線透過率
近赤外、紫外、可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製 商品名「U―3900H」)を用いて、波長200〜800nmの範囲における光線透過率を測定し、以下の基準で評価した。
◎:200−500nmにおいて光線透過率が5%以下となる波長領域が80%以上
○:200−500nmにおいて光線透過率が5%以下となる波長領域が50%以上
×:200−500nmにおいて光線透過率が5%以下となる波長領域が50%未満
【0053】
(3)光線反射率
近赤外、紫外、可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製 商品名「U―3900H」)を用いて、波長200〜800nmの範囲における光線反射率を測定し、以下の基準で評価した。
○:200−500nmにおいて光線反射率が30%を超える波長領域なし
×:200−500nmにおいて光線反射率が30%を超える波長領域あり
【0054】
(4)光沢度
JIS K7105に準拠して、光沢度を測定し、以下の基準で評価した。
○:90%以上 ×:90%未満
【0055】
(5)表面粗さ
表面粗さ計測装置(電子線三次元粗さ解析装置:(株)エリオニクス製、表面形態解析ソフトウェア:菱化システム(株)製「VertScan2.0」)を用いて、倍率50倍にて、表面粗さを測定し、面粗さSaを以下の基準で評価した。
○:60nm以下 ×:60nmを超える
【0056】
(6)収縮仕上がり性
フィルムを、下記の350ml用ボトルを用いる場合は主収縮方向に205mm、下記の500ml用ボトルを用いる場合は主収縮方向に235mmで切り出し、主収縮方向に10mm分重なるように折り、重なった部分をヒートシールし、円筒状とする。次いで、この円筒状のフィルムを下記の350ml、並びに500mlの多面体ボトルにボトルの下面までかぶせて収縮仕上り評価用サンプルを作製した。評価用サンプルは蒸気加熱方式の長さ3m(3ゾーン構成)の収縮トンネル中を回転させずに、トンネル内の各ゾーンの温度を以下の温度条件として5秒間で通過させ、ボトルに収縮したフィルムのシワ、ムラがないか、収縮不足ではないかの確認を行い評価した。評価は各サンプルN=10で行った。シュリンカー内の温度条件は以下のように設定した。
温度条件:
1ゾーン/80〜85℃、2ゾーン/85〜95℃、3 ゾーン/95 〜100℃
蒸気を噴射するトンネル内のノズル位置:
1 ゾーン/ フィルム下部、2 ゾーン前半/ フィルム中央部、2 ゾーン後半/
フィルム全体、3 ゾーン/ フィルム全体
温度調整:
ノズルに通じる蒸気配管のバルブ開閉により蒸気量を調整して行う。
フィルムの主収縮方向と直交する方向の長さ(PETボトルの高さ方向)は、ボトル形状に応じてPETボトルのキャップ上部まで被覆する場合とPETボトルの胴部全体を被覆する場合で適宜調整した。
使用したPETボトル:
350ml用(高さ208mm、胴径60mm、口径26mm)
500ml用(高さ200mm、胴径66mm、口径26.5mm)
評価基準:
◎:PETボトルのキャップ上部まで被覆可能で、シワ、ムラ、収縮不足なし
○:PETボトルの胴部全体を被覆可能で、シワ、ムラ、収縮不足なし
△:PETボトルの胴部にて収縮不足、シワ、ムラのいずれかあり
【0057】
(7)色差
測色計((株)スガ試験機製 型式「SC−T」)を用いて、透過方式にてJIS Z8729に基づき、L*値、a*値、b*値を測定した。
【0058】
各実施例、比較例に用いた原材料は、以下の通りである。
(ポリエステル系樹脂)
Pes1:ジカルボン酸残基がテレフタル酸残基100モル%、グリコール残基がエチレングリコール残基65モル%、ジエチレングリコール残基3モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール残基32モル%で構成される共重合ポリエステル
Pes2:ジカルボン酸残基がテレフタル酸残基90モル%、イソフタル酸残基10モル%、グリコール残基が1,4−ブタンジオール残基100モル%で構成される共重合ポリエステル
Pes3:ジカルボン酸基がテレフタル酸残基70モル%、イソフタル酸残基30モル%、グリコール残基がエチレングリコール残基100モル%で構成される共重合ポリエステル
(着色剤)
赤色マスターバッチ:前記Pes1に対し、C.I. Pigment Red 177 を10〜15%含有。
青色マスターバッチ:前記Pes1に対し、C.I. Pigment Blue 15:3を1〜5%含有。
緑色マスターバッチ:前記Pes1に対し、C.I. Pigment Green 7 を1〜5%、カ−ボンブラックを1%未満、アゾ−ニッケル錯体顔料を5〜15%含有。
茶色マスターバッチ:前記Pes1に対し、C.I. Pigment Red 101 を5〜10%、カーボンブラックを1%未満、アゾ−ニッケル錯体化顔料を1〜5%含有。
白色マスターバッチ:前期Pes1に対し、酸化チタンを60%含有。
(その他)
シリカマスターバッチ1:前記Pes1を90質量%、球状シリカ(平均粒径3.0μm)を10質量%含有。
【0059】
(実施例1)
着色剤として、茶色マスターバッチを25質量%配合し、Pes1を60質量%、Pes2を14質量%、シリカマスターバッチを1質量%の割合でドライブレンドしたものを中心層組成物A1とした。
Pes1を85質量%、Pes2を14質量%、シリカマスターバッチを1質量%の割合でドライブレンドしたものを表裏層組成物B1とした。
中心層組成物A1と表裏層組成物B1を別々の押出機で押出し、多層成型用のTダイを用い延伸後の膜厚比率がB/A/B=1/7/1となるように270℃の溶融状態で積層させた後、ダイ温度270℃、ダイ幅240mm、リップギャップ1mmとなるTダイから押出し、キャスト温度65℃の設定でキャスティングし、幅=220mm、平均厚み=200μmのシートを得た。
次に、得られた原反シートの端部をテンタークリップで保持し、テンターオーブン内で、横方向に延伸温度83℃、延伸倍率6倍で延伸を行い、L*値=35、a*値=10、b*値=50となる平均厚み39μmの積層フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例2)
中心層組成物A1を、Pes1を35質量%、Pes2を15質量%、Pes3を25質量%に変更し、表裏層組成物B1を、Pes1を60質量%、Pes2を15質量%、Pes3を25質量%に変更した以外は、実施例1と同様に、L*値=30、a*値=11、b*値=43となる平均厚み40μmの積層フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
比較例9
着色剤を緑色に変更し、膜厚比を表裏層/中間層/表裏層=1/6/1に変更した以外は、実施例1と同様に、L*値=52、a*値=−30、b*値=63となる平均厚み41μmの積層フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
比較例10
着色剤を緑色に変更し、膜厚比を表裏層/中間層/表裏層=1/6/1に変更した以外は、実施例1と同様に、L*値=52、a*値=−30、b*値=63となる平均厚み41μmの積層フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
比較例11
中心層組成物A1の着色剤を赤色に変更し、マスターバッチの添加量を15質量%に変更
し、Pes1を70質量%に変更し、膜厚比を表裏層/中心層/表裏層=1/6/1に変
更した以外は実施例1と同様に、L*値=19、a*値=34、b*値=11となる平均厚
み40μmの積層フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
比較例7
中心層組成物の着色剤を青色に変更した以外は、実施例5と同様に、L*値=25、a*値=7、b*値=−30となる平均厚み41μmの積層フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表1示す。
【0065】
(実施例7)
膜厚比を表裏層/中心層/表裏層=1/2/1とした以外は、実施例1と同様に、L*値=50、a*値=8、b*値=60となる平均厚み39μmの積層フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表1示す。
【0066】
(実施例8)
膜厚比を1/10/1とした以外は、実施例1と同様に、L*値=29、a*値=20、b*値=38となる平均厚み40μmの積層フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表1示す。
【0067】
(実施例9)
フィルムの主収縮方向の収縮率を25%となるよう調整した以外は、実施例1と同様に、L*値=34、a*値=10、b*値=49となる平均厚み39μmの積層フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0068】
比較例8
フィルムの主収縮方向の収縮率を18%となるよう調整した以外は、実施例1と同様に、L*値=34、a*値=11、b*値=50となる平均厚み39μmの積層フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0069】
(比較例1)
着色剤として赤色マスターバッチを15質量%配合し、Pesを70質量%、Pes2を14質量%、シリカマスターバッチを1質量%の割合で配合し、設定温度250℃〜260℃に設定した同方向二軸押出機(東芝機械株式会社製、口径=25mmφ、L/D=40)に投入して溶融混練し、ダイ温度260℃、ダイ幅300mm、リップギャップ1mmとなるTダイから押出し、キャスト温度60℃の設定でキャスティングし、幅=280mm、平均厚み=200μmのシートを得た。
次に、得られた原反シートの端部をテンタークリップで保持し、テンターオーブン内で、横方向に延伸温度83℃、延伸倍率6倍で延伸を行い、L*値=3、a*値=14、b*値=8となる厚み平均39μmの単層フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0070】
(比較例2)
着色剤を青色に変更した以外は、比較例1と同様に、L*値=6、a*値=7、b*値=−21となる厚み平均39μmの単層フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0071】
(比較例3)
上記着色剤を使用せず、Pes1を85質量%、Pes2を14質量%、シリカマスターバッチを1質量%の割合で配合し、比較例1と同様にして厚み平均42μmの単層フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0072】
(比較例4)
着色剤として、白色マスターバッチを35質量%配合し、Pes1を50質量%とした以外は、実施例1と同様にして平均厚み39μmの積層フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0073】
(比較例5)
着色剤を使用せず、Pes1を60質量%、Pes2を15質量%、Pes3を25重量%の割合で配合し、平均46μmの単層フィルムを得た。これに実施例4と類似の色調になるように印刷を行い、L*値=55、a*値=−33、b*値=59となるフィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0074】
(比較例6)
着色剤を使用せず、Pes1を60質量%、Pes2を15質量%、Pes3を25重量%の割合で配合し、平均51μmの単層フィルムを得た。これに実施例6と類似の色調になるように印刷を行い、L*値=28、a*値=5、b*値=−27となるフィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
実施例で得られたフィルムは、優れた遮光性を備えつつ、フィルム表面の荒れも少なく、フィルムの光沢度や鮮明性にも優れており、従来のフィルムでは成し得なかった、デザイン性と優れた遮光性を両立させることができる。また、PETボトルに装着した場合も、ボトルの胴体部分、またはキャップ上部まで完全に覆うことができ、外観のきれいな仕上がりを得ることができる。
【0078】
一方、比較例1、2のフィルムは、遮光性はあるものの、フィルム表面の粗さが大きく、フィルム表面に光沢もなく、デザイン性を満足できるものは得られなかった。比較例4は、美麗性、鮮明性に乏しく、ラベルのデザイン性と遮光性を両立できるものは得られなかった。比較例5、6のフィルムのように、一般的な印刷の範囲では十分な遮光性を有するものは得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のフィルムは、優れた遮光性能を備え、かつ鮮明性、光沢度などのフィルム外観に優れ、また収縮後の仕上がり性にも優れるため、特に、ビール、清酒、ワイン等のアルコール飲料や、緑茶、ビタミン入り飲料など、特定波長領域の光によって変色や変質が起こりやすい飲料包装用熱収縮性ラベル等に好適に用いることができる。