(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液滴を吐出する液体吐出ヘッドと、該液体吐出ヘッドから離間して配置される、前記液滴によって画像が形成された記録媒体を乾燥する乾燥手段を含む画像形成装置の制御方法であって、
画質を均一にするための、前記液滴の温度と前記乾燥手段の設定値との関係を示す相関テーブルを予め記憶しておく工程と、
前記液滴の温度を検出する工程と、
前記検出する工程によって検出された前記液滴の温度に基づいて、前記相関テーブルを参照して、前記乾燥手段を制御する工程と、を含み、
前記乾燥手段を制御する工程では、前記液滴の温度を検出する工程によって検出された前記液滴の温度が高くなった場合は、前記乾燥手段の設定値を上げるように制御する
ことを特徴とする画像形成装置の制御方法。
液滴を吐出する液体吐出ヘッドと、該液体吐出ヘッドから離間して配置される、前記液滴によって画像が形成された記録媒体を乾燥する乾燥手段を含む画像形成装置のコンピュータに、
画質を均一にするための、前記液滴の温度と前記乾燥手段の設定値との関係を示す相関テーブルを予め記憶しておく処理と、
前記液滴の温度を検出する処理と、
前記検出する処理によって検出された前記液滴の温度に基づいて、前記相関テーブルを参照して、前記乾燥手段を制御する処理と、を実現させるためのプログラムであって、
前記乾燥手段を制御する処理では、前記液滴の温度を検出する処理によって検出された前記液滴の温度が高くなった場合は、前記乾燥手段の設定値を上げるように制御する
ことを特徴とするプログラム。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタ、ファクシミリ、コピー、プロッタ、又はこれ等の内の複数の機能を複合した画像形成装置として、例えば、記録液(液体)の液滴を吐出する液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッドを含む液体吐出装置を用いて、媒体(以下、「用紙」ともいう。ただし、材質を限定するものではなく、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙等も同義で使用する。)を搬送しながら、液体としての記録液(以下、インクともいう。)を用紙に付着させて画像形成(記録、印刷、印写、印字ともいう。)を行うものがある。
【0003】
なお、画像形成装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、画像形成とは、文字や図形等の意味を有する画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を有さない画像を媒体に付与することをも意味する。また、液体とは、記録液、インクに限るものではなく、吐出されるときに流体となるものであれば特に限定されるものではない。また、液体吐出装置とは、液体吐出ヘッドから液体を吐出する装置を意味し、画像形成を行うものに限定されない。
【0004】
また、液体吐出ヘッドを備える画像形成装置として、ヘッドをキャリッジに搭載して用紙の送り方向と直交する主走査方向に移動させることにより記録を行うシリアル型画像記録装置と、記録領域の略全幅にわたって液滴を吐出する複数の吐出口(ノズル)を列設したライン型ヘッドを用いるライン型画像記録装置とがある。さらに、液体吐出ヘッドは、インク滴(記録液体)を吐出させるためのアクチュエータ手段の種類により、幾つかの種類に大別される。
【0005】
例えば、液室の壁の一部を薄い振動板とし、これに対応して電気機械変換素子としての圧電素子を配置し、電圧印加に伴って発生する圧電素子の変形により振動板を変形させることで加圧液室内の圧力を変化させ、インク滴を吐出させるピエゾ方式のものが一般に良く知られている。また、液室内部に発熱体素子を配置し、通電による発熱体の加熱によって気泡を発生させ、気泡の圧力によってインク滴を吐出させるバブルジェット(登録商標)方式のものも一般に良く知られている。さらに、液室の壁面を形成する振動板と、この振動板に対向して配置された液室外の個別電極とを備え、振動板と電極との間に電界を印加することで発生する静電力により振動板を変形させて、液室内の圧力/体積を変化させることによりノズルからインク滴を吐出させる静電型のものも提案されている。
【0006】
ところで、近年では、サイングラフィックス市場において使用される非浸透メディアへの印字が可能なインクジェットプリンタが開発されてきている。その作像技術としては、加熱及び乾燥方式のものが採用されている。このような方式において、従来の加熱及び乾燥の設定温度は、各種メディア・作像モード毎にそれぞれ対応した標準の温度プロファイルとして備えていることが多い。
【0007】
特許文献1には、用紙を温めるときに皺のより難い用紙加熱装置を提供することを目的とし、用紙付近の温度又は湿度を検知し、予め記憶してあるデータと照合して温度を制御する用紙加熱装置が開示されている。すなわち、用紙付近の温度をフィードバックして加熱及び乾燥の設定温度を制御することが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、加熱手段又は乾燥手段を備えた画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラムに関し、検知されたインク温度に基づいて加熱手段又は乾燥手段を制御することが特徴になっている。
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化乃至省略する。
【0016】
まず、本実施形態に係るインクジェットヘッドの基本構成について
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の一例であるインクジェットプリンタのインクジェットヘッドの液室長手方向に沿った断面図である。
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例であるインクジェットプリンタのインクジェットヘッドの液室短手方向に沿った断面図である。
【0017】
このインクジェットヘッドは、図示しないインク供給口と共通液室1−2となる彫り込みを形成したフレーム1を備えている。また、流体抵抗部2−1、加圧液室2−2となる彫り込みとノズル3−1に連通する連通口(液体導入部)2−3を形成した流路板2を備えている。
【0018】
さらに、ノズル3−1を形成するノズル板と、島状凸部6−1、ダイアフラム部6−2及びインク流入口6−3を有する振動板6と、を備えている。そして、振動板6に接着層を介して接合された積層型圧電素子5と、積層型圧電素子5を固定しているベース4と、を備えている。
【0019】
ベース4はチタン酸バリウム系セラミックからなり、積層型圧電素子5を2列配置して接合している。積層型圧電素子5は、厚さ10から50μm/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層5−1と、厚さ数μm/1層の銀・パラジューム(AgPd)からなる内部電極層5−2とを交互に積層している。
【0020】
内部電極層5−2は、両端で個別電極5−3に接続する。積層型圧電素子5はハーフカットのダイシング加工により櫛歯状に分割され、1つおきに駆動部5−5と支持部5−6(非駆動部)として使用する。積層型圧電素子5は、厚さ10から50μm/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層5−1と、厚さ数μm/1層の銀・パラジューム(AgPd)からなる内部電極層5−2とを交互に積層したものである。そして、内部電極層5−2を交互に端面の端面電極(外部電極)にある個別電極5−3、共通電極5−4に電気的に接続したものである。
【0021】
また、本実施形態のインクジェットヘッドは、厚み方向変位であるd33方式での積層型圧電素子5を使用する構成とし、積層型圧電素子5の伸縮により加圧液室2−2を収縮、膨張させるようになっている。積層型圧電素子5に駆動信号が印加され充電が行われると伸長し、また積層型圧電素子5に充電された電荷が放電すると反対方向に収縮するようになっている。
【0022】
駆動部の個別電極5−3にはFPC(Flexible Printed Circuits)7が半田接合されている。また、共通電極5−4は、積層型圧電素子5の端部に電極層を設けて回し込んでFPC7のグラウンド電極に接合している。FPC7には図示しないドライバIC(Integrated Circuit)が実装されており、これにより駆動部5−5への駆動電圧印加を制御している。
【0023】
振動板6は、薄膜のダイアフラム部6−2と、このダイアフラム部6−2の中央部に形成した駆動部5−5となる積層型圧電素子5と接合する島状凸部(アイランド部)6−1と、を形成している。また、振動板6は、支持部に接合する梁を含む厚膜部と、インク流入口6−3となる開口を電鋳工法によるNiメッキ膜を2層重ねて形成している。
【0024】
流路板2はシリコン単結晶基板を用いて、流体抵抗部2−1、加圧液室2−2、液体導入部2−3となる彫り込み、及びノズル3−1に対する位置に連通口2−4となる貫通口をエッチング工法でパターニングした。エッチングで残された部分が加圧液室2−2の隔壁となる。
【0025】
ノズルプレート3は金属材料、例えば電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成したもので、インク滴を飛翔させるための微細な吐出口であるノズル3−1を多数形成している。このノズル3−1の内部形状(内側形状)は、ホーン形状(略円柱形状又は略円錘台形状でも良い。)に形成している。
【0026】
このノズルプレート3のインク吐出面(ノズル表面側)は、図示しない撥水性の表面処理を施した撥水処理層を設けている。撥水処理層は、インク物性に応じて選定した撥水処理膜を設けて、インクの滴形状、飛翔特性を安定化し、高品位の画像品質を得られるようにしている。例えば、PTFE−Ni共析メッキやフッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えばフッ化ピッチ等)を蒸着コートしたもの、シリコン系樹脂・フッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼き付け等である。
【0027】
インク供給口と共通液室1−2となる彫り込みを形成するフレーム1は樹脂成形で作製している。このように構成したインクジェットヘッドにおいては、記録信号に応じて駆動部5−5に駆動波形(10から50Vのパルス電圧)を印加することによって、駆動部5−5に積層方向の変位が生起する。そして、振動板6を介して加圧液室2−2が加圧されて圧力が上昇し、ノズル3−1からインク滴が吐出される。
【0028】
その後、インク滴吐出の終了に伴い、加圧液室2−2内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動パルスの放電過程によって加圧液室2−2内に負圧が発生してインク充填工程へ移行する。このとき、インクタンクから供給されたインクは共通液室1−2に流入し、共通液室1−2からインク流入口6−3を経て液体導入部2−3、流体抵抗部2−1を通り、加圧液室2−2内に充填される。
【0029】
流体抵抗部2−1は、吐出後の残留圧力振動の減衰に効果が有る反面、表面張力による最充填(リフィル)に対して抵抗になる。流体抵抗部2−1を適宜に選択することで、残留圧力の減衰とリフィル時間のバランスが取れ、次のインク滴吐出動作に移行するまでの時間(駆動周期)を短くできる。
【0030】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の制御部の要部について説明する。
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の制御部の要部について説明する概略ブロック図である。
【0031】
この制御部500は、この装置全体の制御を司っている。制御部500は、本実施形態に係る空吐出動作の制御を行う手段を兼ねるCPU(Central Processing Unit)501を備えている。また、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM(Read Only Memory)502と、画像データ等を一時格納するRAM(Random Access Memory)503と、を備えている。さらに、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ(NVRAM:Non Volatile RAM)504を備えている。そして、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC(Application Specific Integrated Circuit)505を備えている。
【0032】
また、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508を備えている。さらに、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554と、を備えている。また、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555と、維持回復機構の維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510と、を備えている。そして、帯電ローラ56にAC(Alternating Current)バイアスを供給するACバイアス供給部511等を備えている。
【0033】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0034】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのホストI/F(Interface)506を有している。パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナ等の画像読み取り装置、デジタルカメラ等の撮像装置等のホスト600側から、ケーブル又はネットワークを介してホストI/F506で受信する。
【0035】
そして、制御部500のCPU501は、ホストI/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析を行う。そして、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。
なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は、ホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
【0036】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送すると共に、この画像データの転送及び転送の確定等に必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号等をヘッドドライバ509に出力する。これ以外にも、ROM502に格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A(Digital/Analog)変換するD/A変換器、及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含んでいる。そして、1の駆動パルス、又は複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0037】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを、駆動素子(例えば、圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド34を駆動する。駆動素子は、選択的に記録ヘッド34の液滴を吐出させるエネルギーを発生する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴等、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0038】
I/O(Input/Output)部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508、モータ駆動部510、及びACバイアス供給部511の制御に使用する。
【0039】
センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、装置内の温度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチ等がある。そして、I/O部513は様々なセンサ情報を処理することができる。
【0040】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の制御部の要部のうち、印刷制御部及びヘッドドライバの一例について説明する。
図4は、本実施形態に係る画像形成装置の制御部の要部のうち、印刷制御部及びヘッドドライバの一例について説明する図である。
【0041】
印刷制御部508は、上述したように、駆動波形生成部701と、データ転送部702とを備えている。駆動波形生成部701は、画像形成時に1印刷周期内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する。そして、空吐出動作時に1空吐出周期内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する。データ転送部702は、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0からM3を出力する。
【0042】
なお、滴制御信号は、ヘッドドライバ509の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ715の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号である。滴制御信号は、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき波形でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態に遷移する。
【0043】
ヘッドドライバ509は、データ転送部702からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/1チャンネル(1ノズル))を入力するシフトレジスタ711を備えている。また、シフトレジスタ711の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路712と、階調データと滴制御信号M0からM3をデコードして結果を出力するデコーダ713と、を備えている。さらに、デコーダ713のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ715が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ714を備えている。そして、レベルシフタ714を介して与えられるデコーダ713の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ715を備えている。
【0044】
このアナログスイッチ715は、各圧電素子121の選択電極(個別電極)5−3に接続され、駆動波形生成部701からの共通駆動波形が入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と滴制御信号M0からM3をデコーダ713でデコードした結果に応じてアナログスイッチ715がオンする。これにより、共通駆動波形を構成する所要の駆動信号が通過して(選択されて)圧電素子121に印加される。
【0045】
次に、本実施形態に係る液体吐出ヘッドを備える画像形成装置の構成について説明する。
図5は、本実施形態に係る画像形成装置の液体吐出ヘッドの短手方向から見た主要図である。
図6は、本実施形態に係る画像形成装置の液体吐出ヘッドの長手方向から見た主要図である。
【0046】
はじめに、
図5について説明する。まず、記録媒体の構成として本図ではロールタイプのものとしている。ロール紙50から記録媒体52は
図5の矢印に示した搬送方向に沿って送られて行く。なお、ロール紙50に限定すされることなく、一般的なシリアル機のようなカット紙を用いても構わない。
【0047】
記録媒体52の下には加熱ヒータ53を、印字前部分・印字領域部分・印字後部分の三箇所に分けて配置している。本実施形態は、サイングラフィックス市場での使用用途となる画像形成装置を想定している。したがって、記録媒体52には非浸透メディアが用いられるので、加熱ヒータ53のような加熱手段が必要である。
【0048】
これら加熱ヒータ53は、
図5では3つに分割しているが、必ずしも分割しなければならないわけではない。しかしながら、複数に分割していればそれぞれにおいて温度を制御することができるため、印字方式によって最適な温度制御プロファイルを設定できるメリットがある。
【0049】
また、印字後部分には記録媒体52の下からの加熱に加えて乾燥ファンヒータ54を備えた構成としている。乾燥ファンヒータ54から温風を当てることで、印刷物を確実に乾燥させることができるのである。印字領域部分にはインクジェットヘッド57を搭載したキャリッジ55がある。
【0050】
次に、
図6について説明する。
図5で図示できなかった部分は記録媒体52の右側に位置する維持回復機構61である。この維持回復機構61は、インクジェットヘッド57のノズルを維持及び回復するためのもので、印字しない時にはノズルキャップ62でそれぞれのインクジェットヘッド57をキャッピングする。
【0051】
また、ノズル詰まり等の不具合が発生した時には、ノズルを回復させるため、空吐出受け63で空吐出をしたり、ノズルメンテナンスのため、インクで溢れたノズル面をワイパ64でワイピングしたりする。また、
図5では説明していなかったが、キャリッジ55は用紙搬送方向に対して直交した方向に往復移動する構成としている。
【0052】
次に、本実施形態に係る画像形成装置のインク温度の検知方法について
図7及び
図8を参照して説明する。
図7は、本実施形態に係る画像形成装置の液体吐出ヘッド内にインク温度検知手段が存在する場合について説明する図である。
図8は、本実施形態に係る画像形成装置の液体吐出ヘッド外にインク温度検知手段が存在する場合について説明する図である。
【0053】
図7に液体吐出ヘッドの一部を示す。インク温度検知手段7−1は、液体吐出ヘッドのハウジング7−2の内部(筐体内)に配置した構成となっている。インク温度検知手段7−1は、吐出時における温度変化に追従できるような高精度な温度センサが望ましいが、コスト面を考慮するならば、汎用的なものでも良い。また、温度を検知する方式は如何なる方式であっても良い。
【0054】
インク温度検知位置7−3は、各ノズルの個別液室に繋がっている共通液室1−2(
図1)の温度を検知できるような位置にあるものとする。
図7では、液体吐出ヘッドのハウジング7−2の長手方向・短手方向共に中央に配置している。ここで、インク温度検知手段7−1が、共通液室1−2の温度をどのようにして検知するかについて説明する。
図9は、本実施形態に係る画像形成装置の共通液室とインク温度検知手段との配置例を説明する図である。
【0055】
図9に示すように、共通液室1−2が2つある場合、その間の中央の位置にインク温度検知手段7−1を配置するような構成にする。このように、共通液室1−2近傍に配置することにより、インク温度を間接的に検知することが可能となる。また、個別液室又は個別ノズルにインクを供給するための供給源となる共通液室1−2近傍のインク温度を検知することにより、印刷時にインク温度が変わった場合でも安定した画像を出力することができるのである。
【0056】
図8に、液体吐出ヘッドのハウジング8−1とインク温度検知手段(赤外線放射温度計)8−3との位置関係を示している。
図7で示した実施形態と異なるのは、インク温度検知手段(赤外線放射温度計)8−3を液体吐出ヘッドのハウジング8−1の外(筐体外)に配置している点である。このように配置することで、インク温度を直接測定するのではなく、ノズル板8−2の表面の温度を測定することによりインク温度を把握するのである。
【0057】
実際、インク滴は液体吐出ヘッドの最終到達地点において吐出されるため、ノズル板8−2の表面の温度を測定することにより、吐出時のインク温度を測定できることになるので、より精度の高い制御が可能となる。ノズル板8−2の表面の温度測定手段は非接触式としている。非接触式の温度測定は、赤外線放射温度計8−3で測定することが一般的であり、
図8に図示した通りである。
【0058】
ノズル板8−2の表面から放出される赤外線放射エネルギーを、赤外線センサ8−4を用いて計測する。この赤外線放射温度計8−3は、
図6で説明した維持回復機構61の近くに配置することが望ましい。印刷時の空吐出動作時やメンテナンス動作時といったタイミングで温度測定を行うことにより、印刷時に支障を来たすことなく、定期的に温度測定を行うことができるため、インク温度に基づいた加熱手段又は乾燥手段の制御がし易くなる。
【0059】
次に、本実施形態に係る画像形成装置のインク温度を検知して加熱手段又は乾燥手段の温度を制御する仕組みについて説明する。
図10は、本実施形態に係る画像形成装置において、インク温度を検知して加熱又は乾燥の温度を制御するまでのフローを説明する図である。
【0060】
図10に示す印刷ジョブスタートから印刷完了までのフローにおいて、まず、(1)印刷ジョブを受けスタートした後、(2)
図7から
図9で説明したような方法を用いて印刷前のインク温度を検知する。その後、(3)加熱手段又は乾燥手段の温度設定データ(テーブル)を参照し、(4)加熱手段又は乾燥手段の温度を決定する。この加熱手段又は乾燥手段の温度設定データはテーブルのようなものを予め用意しておき、画像形成装置に内蔵しておいても良い。
【0061】
ここで、本実施形態に係る画像形成装置において、インク温度に対するヒータの温度設定テーブルについて説明する。
図11は、本実施形態に係る画像形成装置において、インク温度に対するヒータ設定温度のテーブルについて説明する図である。
【0062】
図11に示すように、それぞれのインク温度に対応して画質が均一となる加熱手段又は乾燥手段のヒータ温度の設定値が予め対応付けられたテーブルを用意しておく。これにより、インク温度が変わった場合であっても、このテーブルを参照し、適切なヒータ温度の設定値となるよう制御すれば良い。なお、
図11のテーブルはインク温度を5℃間隔で刻んでいるが、より精密なヒータ温度の制御を行う場合は、インク温度を1℃間隔で刻むといった、細かく設定しておくのが好ましい。
【0063】
図10に戻り、これらの各ステップを経て印刷条件が確定し、(5)本印刷が開始される。(6)印刷中は一定間隔でインク温度を検出し、加熱手段又は乾燥手段のヒータ温度の設定データ(テーブル)を参照して、加熱手段又は乾燥手段の少なくとも一方の温度を随時最良の設定値に変更しながら印刷を進めていく。すなわち、(3)から(6)の各ステップを印刷中は繰り返し実行していくイメージである。このように印刷を実行することにより、インク温度に応じて加熱手段又は乾燥手段の温度を設定することになるため、印刷開始時から印刷終了時まで安定した作像ができ、品質の良好な画像を提供することができる。
【0064】
次に、本実施形態に係る画像形成装置のインク温度、ヒータ温度、画質の関係について、
図12を参照して説明する。
図12は、本実施形態に係る画像形成装置において、インク温度が異なる場合のヒータ温度と画質との関係について説明する図である。
【0065】
図12のグラフにおいて、インク温度は25℃、35℃、45℃の3種類の場合について示しているが、この温度に限定されることはない。今までの評価結果から、インクは温度によって画像品質の最良値を有しており、その時の加熱温度又は乾燥温度も異なることが分かっている。この特性が事前に分かっていれば、画質を一定に維持するためのインク温度に対する加熱温度又は乾燥温度の関係が把握できるため、上記
図11で説明したように、画像形成装置の中にデータ又はテーブルとして内蔵しておけば良い。
【0066】
なお、本実施形態では、インクの温度を検知し、当該検知された温度において最適な画像品質が得られるよう加熱手段又は乾燥手段を制御することとしている。したがって、インク自体の温度制御は行っていない。しかしながら、何らかの要因で加熱手段又は乾燥手段の設定温度が変化した場合、最適な画像品質が得られるようインク自体の温度を制御するようにしても良い。
【0067】
この場合、
図11で説明したインク温度と最適な画像品質を得るための加熱手段又は乾燥手段の設定温度との関係を示すテーブルや、
図12で説明したインク温度が異なる場合のヒータ温度と画質との関係に基づいて、安定した画像品質を得ることが可能である。
【0068】
上記したように特許文献1に記載された技術では、用紙付近の温度及び湿度を検知し、予め記憶してあるデータと照合して温度を制御することにより、用紙を温めるときに皺のより難い用紙加熱装置を提供していた。これに対し、本実施形態では、インク温度に着目している。これまでの評価結果から、インク温度が異なる場合、最良な画像濃度が出る加熱装置又は乾燥装置の温度が変化することが分かっている。その結果を
図13及び
図14に示す。
図13は、画像形成装置において、インク温度、メディア温度、及び画像濃度との関係を説明する図である。
図14は、画像形成装置において、ヘッドの加熱の有無、ヒータ温度、及びドット径との関係について説明する図である。
【0069】
このような関係性を予め画像形成装置内に蓄積しておき、検知したインク温度を入力データとして、画像形成装置に蓄積された情報(テーブル、計算式等)に基づいて、加熱装置又は乾燥装置を制御するイメージである。これにより、安定的に、高品質の画像形成を行うことができる。
【0070】
なお、
図9に示した本実施形態に係るインクジェットプリンタを構成する各機能ブロックの各動作は、コンピュータ上のプログラムに実行させることもできる。すなわち、制御部500内のCPU501が、ROM502等の記憶媒体に格納されたプログラムをロードする。そして、プログラムの各処理ステップが順次実行されることによって実現される。
【0071】
以上説明したように、本発明では、検知されたインク温度に基づいて、媒体の加熱装置又は乾燥装置の少なくとも一方の制御を行う。これにより、如何なる状況でも均一な画質を提供することが可能な画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラムが得られるのである。
【0072】
以上、本発明の好適な実施形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範囲な趣旨及び範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正及び変更が可能である。