特許第6442925号(P6442925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442925
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】水素化NBRの重合体溶液の濃縮方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/20 20060101AFI20181217BHJP
   C08F 236/00 20060101ALI20181217BHJP
   B01D 1/16 20060101ALN20181217BHJP
【FI】
   C08F6/20
   C08F236/00 510
   !B01D1/16
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-171252(P2014-171252)
(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公開番号】特開2016-44276(P2016-44276A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】平井 周
(72)【発明者】
【氏名】荒尾 大地
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−027009(JP,A)
【文献】 特開2001−040031(JP,A)
【文献】 特表2005−513223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F6/10
C08F6/20
B01D1/16−1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発缶内の水素化NBRの重合体溶液を濃縮する水素化NBRの重合体溶液の濃縮方法であって、
前記蒸発缶は、前記蒸発缶内を減圧するための減圧手段と、
前記水素化NBRの重合体溶液を前記蒸発缶内で噴霧体とする噴霧手段と、
前記水素化NBRの重合体溶液を前記噴霧手段へ供給するための循環手段と、
を備え、
前記噴霧体における液滴のザウター平均粒子径が900μm以上2000μm以下であり、前記噴霧体は、前記水素化NBRの重合体溶液の液面へ向けて、中空体状に噴霧されることを特徴とする、水素化NBRの重合体溶液の濃縮方法。
【請求項2】
前記重合体溶液の液面の中心を通る最短径の30%の長さを半径とする円の内部を前記重合体溶液の液面の中心部としたときに、
前記中心部での前記噴霧体の最大噴霧量が、前記重合体溶液の液面全体での前記噴霧体の最大噴霧量に対し、40質量%以下であることを特徴とする、請求項1記載の水素化NBRの重合体溶液の濃縮方法。
【請求項3】
前記中空体状が、中空錐体状であることを特徴とする、請求項1または2に記載の水素化NBRの重合体溶液の濃縮方法。
【請求項4】
前記蒸発缶は、攪拌翼を備え無いことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の水素化NBRの重合体溶液の濃縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体溶液の濃縮方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単量体の重合を行うことにより得られるラテックス等の重合体溶液は、取扱い操作や輸送上の観点から、通常、水分等の液体成分を一定量除去し濃縮した後に用いられる。重合体溶液の濃縮方法としては、蒸発法、限外濾過膜法等が知られているが、通常、蒸発法が用いられることが多い。蒸発法は重合体溶液を加熱し、減圧雰囲気下で水分を蒸発させる方法であり、蒸発法に用いる装置としては、薄膜式蒸発器またはタンク式蒸発器が用いられる。
【0003】
ここで、薄膜式蒸発器は一般に高価であり、しかも蒸発器内で凝集物が発生する場合があり、加熱温度を下げざるを得ない。そのため、必ずしも効率的ではなく、通常タンク式蒸発器が用いられている。タンク式蒸発器では蒸発缶に重合体溶液を入れ、蒸発缶と加熱のための外部熱交換器との間で重合体溶液を強制的に循環させながら加熱し、かつ、蒸発缶内を減圧に保持して、蒸発缶内で水分を蒸発させる(例えば、特許文献1参照)。しかし、特許文献1の方法では蒸発レートが低かった。
【0004】
また、特許文献2では、重合体溶液を循環させることに加え、蒸発缶内における攪拌翼による強制撹拌を行い、濃縮の効率を向上させている。しかし、攪拌による剪断力がかかるため、攪拌翼や蒸発缶の内壁へのスケールの付着やコアギュラム(凝固物、以下、「CG」ということがある。)の発生を防止することは困難であった。
【0005】
また、特許文献3では、攪拌翼を用いない方法として、重合体溶液を循環させ蒸発缶に戻す際に、気相から蒸発缶内の重合体溶液の液面の全体に向けて噴霧(フラッシュ)させることで濃縮している。しかし、発泡しやすい重合体溶液の場合には、液面へ重合体溶液をフラッシュすると、液落下により泡が発生し、泡が減圧ラインに飛沫同伴してしまい、減圧ラインを閉塞させる等の不具合が発生する虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−265521号公報
【特許文献2】特許第2666595号公報
【特許文献3】特開平11−100410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、濃縮時の減圧ラインへの飛沫の同伴を抑制し、かつ、蒸発レートの高い重合体溶液の濃縮方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、重合体溶液を所定の形状に噴霧することにより上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、
(1) 蒸発缶内の重合体溶液を濃縮する重合体溶液の濃縮方法であって、前記蒸発缶は、前記蒸発缶内を減圧するための減圧手段と、前記重合体溶液を前記蒸発缶内で噴霧体とする噴霧手段と、前記重合体溶液を前記噴霧手段へ供給するための循環手段と、を備え、前記噴霧体は、前記重合体溶液の液面へ向けて、中空体状に噴霧されることを特徴とする、重合体溶液の濃縮方法、
(2) 前記重合体溶液の液面の中心を通る最短径の30%の長さを半径とする円の内部を前記重合体溶液の液面の中心部としたときに、前記中心部での前記噴霧体の最大噴霧量が、前記重合体溶液の液面全体での前記噴霧体の最大噴霧量に対し、40質量%以下であることを特徴とする、(1)記載の重合体溶液の濃縮方法、
(3) 前記中空体状が、中空錐体状であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の重合体溶液の濃縮方法、
(4) 前記噴霧体における液滴のザウター平均粒子径が900μm以上2000μm以下であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の重合体溶液の濃縮方法、
(5) 前記蒸発缶は、攪拌翼を備え無いことを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の重合体溶液の濃縮方法
が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、濃縮時の減圧ラインへの飛沫の同伴を抑制し、かつ、蒸発レートの高い重合体溶液の濃縮方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る濃縮装置の構成を示す図である。
図2】比較例に用いた濃縮装置の構成を示す図である。
図3】比較例に用いた濃縮装置の構成を示す図である。
図4】蒸発缶内の重合体溶液の液面における噴霧体量の様子の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る重合体溶液の濃縮方法について説明する。本発明の重合体溶液の濃縮方法は、蒸発缶内の重合体溶液を濃縮する重合体溶液の濃縮方法であって、前記蒸発缶は、前記蒸発缶内を減圧するための減圧手段と、前記重合体溶液を前記蒸発缶内で噴霧体とする噴霧手段と、前記重合体溶液を前記噴霧手段へ供給するための循環手段と、を備え、前記噴霧体は、前記重合体溶液の液面へ向けて、中空体状に噴霧されることを特徴とする。
【0013】
図1は、実施の形態に係る濃縮装置の構成を示す図である。図1に示すように濃縮装置2は、重合体溶液の濃縮を行う蒸発缶4、蒸発缶4内の重合体溶液を循環ポンプ8に導入するポンプ導入ライン6、蒸発缶4内の重合体溶液を循環させる循環ポンプ8、循環ポンプ8から重合体溶液を外部加熱装置12に導入する加熱装置導入ライン10、加熱装置導入ライン10を介して導入された重合体溶液を加熱する外部加熱装置12、外部加熱装置12により加熱された重合体溶液を蒸発缶4に導入する重合体溶液フィードライン14を備え、さらに、蒸発缶4から発生した蒸気を凝縮器18に導入する蒸気導入ライン16、蒸発缶4から導入された蒸気を冷却し液化させる凝縮器18、凝縮器18により冷却された留出液を受器22に導入する留出ライン20、蒸発缶4の内部等を減圧とするコンプレッサー24を備えている。
【0014】
また、蒸発缶4は、重合体溶液フィードライン14を介して蒸発缶4に戻される重合体溶液を噴霧体として噴霧する噴霧器26を備えている。ここで、噴霧器26は、噴霧体を蒸発缶4内の気相から重合体溶液(液相)の液面に向けて中空体状に噴霧する。
【0015】
即ち、噴霧器26は、蒸発缶4内の重合体溶液の液面の中心を通る最短径に対して所定の割合の長さを半径とする円の内部を重合体溶液の液面の中心部としたときに、この中心部での噴霧体の最大噴霧量が、重合体溶液の液面全体での噴霧体の最大噴霧量よりも少なくなるように噴霧を行う。ここで、重合体溶液の液面の中心を通る最短径の30%の長さを半径とする円の内部を重合体溶液の液面の中心部としたときに、中心部での噴霧体の最大噴霧量が、重合体溶液の液面全体での噴霧体の最大噴霧量に対し、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。さらに、重合体溶液の液面の中心を通る最短径の10%の長さを半径とする円の内部を重合体溶液の液面の中心部としたときに、中心部での噴霧体の最大噴霧量は、重合体溶液の液面全体での噴霧体の最大噴霧量に対し、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
なお、図4に、重合体溶液の液面における噴霧体量の様子の一例を示す。
【0016】
ここで、噴霧体の最大噴霧量は、蒸発缶4内の重合体溶液の液面の中心を通る最短径上に設定される同一の面積を有する複数の領域のそれぞれに、所定時間に噴霧された噴霧体の量を求めることにより得られる。前記領域の大きさは特に制限されないが、例えば、100cm2の大きさとしうる。求めた噴霧体の量を用いて、上記中心部における噴霧体の最大噴霧量及び重合体溶液の液面全体での噴霧体の最大噴霧量を求めることができる。
【0017】
また、噴霧器26が噴霧体を中空体状に噴霧する際の中空体の形状は、特に限定されないが、中空錐体状、中空円柱状等とすることができ、中空錐体状とすることが好ましい。中空錐体状としては、中空円錐体状、中空円錐台状とすることができる。
【0018】
また、噴霧器26の噴霧角度は、蒸発缶の内径や、噴霧手段と重合溶液との距離などを考慮して適宜設定されるが、好ましくは70°〜160°である。
【0019】
また、噴霧器26により噴霧される噴霧体における液滴のザウター平均粒子径は、好ましくは900μm以上2000μm以下である。噴霧体における液滴のザウター平均粒子径が前記下限範囲以上であると、噴霧体とした際に、微細な飛沫が発生することを抑制し、減圧ラインの閉塞を防ぐことができる。また、噴霧体における液滴のザウター平均粒子径が前記上限範囲以下であると、蒸発レートをより高めることができる。
【0020】
なお、ザウター平均粒子径とは、下式のように計測した粒子の体積の総和と比表面積の総和の比で表され、位相ドップラー粒子分析計によって測定することができる。
ザウター平均粒子径=Σ(ni・di3)/Σ(ni・di2
(式中、diは成分iの粒子径、niは成分iの粒子数を示す。)。
【0021】
また、外部加熱装置12としては、循環させる重合体溶液を所定温度に加熱することができるものであれば特に制限されないが、外部熱交換器を用いることが好ましい。外部熱交換器としては、プレート式熱交換器、多管式熱交換器、スパイラル式熱交換器を用いることが好ましい。
【0022】
また、外部加熱装置12出口における重合体溶液の温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは85℃以上、特に好ましくは90℃以上であり、通常100℃以下である。この範囲にあると、蒸発レートをより高めることができる。また、蒸発缶4の内温は、好ましくは30〜55℃、より好ましくは30〜45℃となるようにする。この範囲にあると、重合体の熱劣化を抑制し、また、外部加熱装置12出口における重合体溶液を制御し易い。
【0023】
また、蒸発缶4、ポンプ導入ライン6、重合体溶液フィードライン14、噴霧器26、蒸気導入ライン16及び凝縮器18のプロセス液(蒸気)が通過する流路を含む系は、コンプレッサー24により減圧可能に構成されている。
【0024】
なお、本発明に用いる濃縮装置2は、蒸発缶4内に攪拌翼を備えない。そのため、蒸発缶4の内壁へのスケールの付着を防止することができる。また、攪拌翼を用いた場合には攪拌による剪断力がかかるため、スケール、CGが発生する。従って、攪拌翼を用いた場合には蒸発缶4等の濃縮装置2の各部のクリーニング頻度が上がったり、重合体溶液の濃縮後に濾過を行う場合には、CGの発生により詰まりが発生したり、製品中へのCGの混入の虞がある。
【0025】
次に、重合体溶液の濃縮操作について説明する。まず、重合体溶液を蒸発缶4に導入する。ここで、濃縮操作を開始する前の重合体溶液の固形分濃度は、好ましくは15〜30質量%である。重合体溶液の濃縮を行う際には、コンプレッサー24により減圧可能に構成されている前記系を、コンプレッサー24により所定の圧力まで減圧する。ここで、コンプレッサー24により減圧する際の前記系の圧力は、好ましくは−100〜−85kPaGである。また、減圧を行う際には、所望の圧力まで徐々に減圧してもよい。
【0026】
次に、循環ポンプ8を駆動させ、外部加熱装置12により蒸発缶4内の重合体溶液が所望の温度となるように加熱する。外部加熱装置12により加熱された重合体溶液は、重合体溶液フィードライン14を介して噴霧器26に導入され、噴霧器26から噴霧される。噴霧器26は、噴霧体を蒸発缶4内の重合体溶液の液面に向けて中空体状に噴霧するため、重合体液面の中心部と噴霧体との接触を抑制することができる。そのため、重合体溶液の発泡を抑制することができ、発泡物の減圧ラインへの同伴を抑制し、減圧ラインの閉塞を防ぐことができる。また、噴霧体は、中空錐体状に噴霧することが好ましく、仮に重合体溶液が発泡してしまった場合でも、噴霧体が泡を潰し、泡が減圧ラインへ同伴することを抑制することができる。
【0027】
蒸発缶4内の重合体溶液が所望の温度に加熱され、減圧された蒸発缶4内で蒸気が発生すると、発生した蒸気は蒸気導入ライン16を介して凝縮器18に導入され、凝縮器18により冷却される。ここで、蒸発缶4内の重合体溶液が水を分散媒または溶媒とする重合体水溶液である場合には、蒸発缶4内の重合体溶液から発生する蒸気の主成分は水であり、凝縮器18により冷却される液体の主成分は水である。
【0028】
凝縮器18により冷却された液体は、留出液として留出ライン20を介して受器22に導入される。従って、重合体溶液が重合体水溶液である場合には、受器22には、水を主成分とする液体が貯留される。
【0029】
このように濃縮操作を所定時間行うことにより、混合溶液中に含まれていた水が受器22に貯留され、蒸発缶4内の重合体溶液中の水分量が低減される。重合体溶液の濃縮操作は、受器22に貯留される液体が所定の量になった時点で停止される。
【0030】
重合体溶液の濃縮操作が終了した後の重合体溶液の固形分濃度は、好ましくは35〜50質量%である。
【0031】
本発明の重合体溶液の濃縮方法によれば、濃縮時の減圧ラインへの飛沫の同伴を抑制することができ、かつ、高い蒸発レートでの濃縮を行うことができる。
【0032】
(重合体溶液)
本発明において、濃縮を行う重合体溶液に含まれる重合体は特に限定されないが、例えば、重合体の種類としては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ニトリルゴム、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、本発明はニトリルゴムに好適に用いることができる。
【0033】
(ニトリルゴム)
ニトリルゴムとしては、特に限定されないが、たとえば、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体、および、必要に応じて用いられるこれらと共重合可能なその他の単量体を共重合することで得られる共重合体が挙げられる。
【0034】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば限定されず、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられ、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体として、単独で用いてもよく、これらの複数種を併用してもよい。
【0035】
本発明で用いるニトリルゴム中における、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、全単量体単位100質量%中に、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは15〜55質量%、特に好ましくは20〜50質量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると得られるゴム架橋物の耐油性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
【0036】
共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどの炭素数4〜6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエンおよびイソプレンがより好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。これらのなかでも、1,3−ブタジエンが好ましい。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0037】
ニトリルゴム中における、共役ジエン単量体単位の含有割合は、全単量体単位100質量%中に、好ましくは40〜90質量%、より好ましくは45〜85質量%、特に好ましくは50〜80質量%である。共役ジエン単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の弾性が低下するおそれがあり、多すぎると、ゴム架橋物の耐油性、耐熱老化性、耐化学的安定性などが損なわれる可能性がある。
【0038】
また、本発明で用いるニトリルゴムは、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、および共役ジエン単量体と、共重合可能なその他の単量体とを共重合したものであってもよい。このようなその他の単量体としては、エチレン、α−オレフィン単量体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物単量体、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが例示され、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体が好ましく用いられる。
【0039】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル、マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル、フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル、フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル、シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル、シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル、イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、などのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル;などが挙げられる。
【0040】
これらの共重合可能なその他の単量体として、単独で用いてもよく、複数種類を併用してもよい。本発明で用いるニトリルゴム中における、これらの他の単量体単位の含有量は、全単量体単位100質量%中に、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0041】
本発明で用いるニトリルゴムのムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、好ましくは5〜200、より好ましくは10〜100、さらに好ましくは30〜80である。ニトリルゴムのムーニー粘度は、連鎖移動剤の量、重合反応温度、重合開始剤濃度などの条件を適宜選定することにより調整することができる。
【0042】
ニトリルゴムの製造方法は、特に限定されず、たとえば、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体、および、必要に応じて加えられるこれらと共重合可能なその他の単量体を共重合する方法が便利で好ましい。重合法としては、公知の乳化重合法および溶液重合法のいずれをも用いることができるが、重合反応の制御が容易であることから乳化重合法が好ましい。乳化重合法によれば、ニトリルゴムを、水媒体中にニトリルゴムが分散してなるラテックスの形態で得ることができ、また、溶液重合法によれば、ニトリルゴムを、有機溶媒中にニトリルゴムが溶解してなるセメントの形態で得ることができる。
【0043】
そして、本実施形態においては、必要に応じて、ニトリルゴムのポリマー主鎖中の炭素−炭素二重結合のうち少なくとも一部を水素化させてもよい。水素化反応に用いる水素化触媒の種類と量、水素化温度などは、公知の方法に準じて決めればよい。なお、ニトリルゴムを水素化する場合には、得られる水素化ニトリルゴムのヨウ素価を、好ましくは120以下、より好ましくは80以下、さらに好ましくは50以下となるように、水素化を行ってもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り質量基準である。また、物性の測定は下記によった。
【0045】
(CG量の測定)
実施例及び比較例において得られた濃縮操作後の重合体溶液1,000gを、200メッシュ金網にて濾過し、金網上に残るCGの乾燥重量を測定し、試料の固形分全量に対する割合を求めた。
【0046】
(ザウター平均粒子径の測定)
噴霧体における液滴のザウター平均粒子径は、位相ドップラー粒子分析計(「PDI」、西華産業社製)を用いて測定した。
【0047】
(実施例1)
攪拌機付きタンクに、オレイン酸カリウム2部、イオン交換水180部、アクリロニトリル37部、t−ドデシルメルカプタン0.5部を順次仕込んだ。反応器内部を窒素で置換した後、ブタジエン63部を封入した。反応器を10℃に冷却して、クメンハイドロパーオキサイド0.01部、硫酸第一鉄0.01部を添加した。次に反応器を10℃に保ったまま16時間攪拌し、内容物をよく混合した。その後、反応器内へ10%のハイドロキノン水溶液を添加して重合停止させた。重合転化率は90%であった。その重合反応液から未反応単量体を除去し、水素化反応に供するアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)の重合体溶液を得た。
【0048】
酢酸パラジウム(その使用量は、Pd金属/前記NBRの比で800ppm)にパラジウムの5倍モル当量の硝酸を添加して得られたパラジウム酸性水溶液に、重量平均分子量5000のポリビニルピロリドンをパラジウムに対して5重量倍添加した。さらに水酸化カリウム水溶液を添加してpH9.0の触媒水溶液Aを調製した。
【0049】
前記NBRの重合体溶液と触媒水溶液Aの全量を、攪拌機付タンクに投入し、窒素ガスを10分間流してラテックス中の溶存酸素を除去した。系内を2回水素ガスで置換後、3MPaの水素を加圧した。内容物を50℃に加温して6時間反応させ、水素化NBRの重合体溶液を得た。この重合体溶液の固形分濃度は25%であった。
【0050】
次に、図1に示す濃縮装置2を用いて濃縮操作を行った。具体的には、蒸発缶4の上部の重合体溶液フィードライン14に噴霧器26として、中空円錐体状に噴霧することができ、噴射角度90°、液滴径1000μmで噴射可能なノズルを含む噴霧器を取り付け、前記水素化NBRの重合体水溶液の全量を蒸発缶4に仕込んだ。なお、濃縮開始時点での重合溶液の液面における噴霧量は表に示すとおりであった。
【0051】
そして、コンプレッサー24により、蒸発缶4、ポンプ導入ライン6、重合体溶液フィードライン14、噴霧器26、蒸気導入ライン16及び凝縮器18のプロセス液(蒸気)が通過する流路を含む系を−97kPaGに減圧した。なお、実施例1においては濃縮装置2の減圧ライン(蒸気導入ライン16等)に、内部を目視することができるミストセパレーターサイドグラスを備えるミストセパレーターを設置した。
【0052】
次に、循環ポンプ8を駆動させ、蒸発缶4内の重合体溶液の循環を開始させると共に、外部加熱装置12としての外部熱交換器により蒸発缶4内の重合体溶液の温度が40℃となるように加熱した。具体的には、循環速度は蒸発缶4内の重合体溶液が13分で1循環する循環速度とし、また、蒸発缶4内の重合体溶液の温度を40℃に維持するために、外部加熱装置12としての外部熱交換器の出口における重合体溶液の温度を80℃とした。
【0053】
濃縮時の発泡状況については、蒸発缶4上部に設置した泡検知器の動作状況、スプレーミストの発生状況は蒸発缶4上部に設けたサイドグラスからの目視、減圧ライン(蒸気導入ライン16)への飛沫同伴状況についてはミストセパレーターサイドグラスからの目視にて確認した。受器22に所定の留出量の液体が貯留された時点で、重合体溶液の循環を終了させ、重合体溶液の温度を40℃以下に冷却し、濃縮後の重合体溶液を得た。また、濃縮後の重合体溶液について固形分濃度とCG量の測定を行った。結果を表に示した。
【0054】
(実施例2)
噴霧器26として、中空円錐体状に噴霧することができ、噴射角度120°、液滴径1500μmで噴射可能なノズルを用い、また、コンプレッサー24により上記系を−90kPaGに減圧し、さらに、蒸発缶4内の重合体溶液の温度を40℃に維持するために、外部加熱装置12(外部熱交換器)の出口における重合体溶液の温度を90℃とした以外は、実施例1と同様に重合体溶液濃縮を行った。
【0055】
(比較例1)
噴霧器として、充円錐体状に噴霧することができ(即ち、蒸発缶4内の重合体溶液の液面の全体に噴霧することができ)、噴射角度45°、液滴径850μmで噴射可能なノノズルを備える噴霧器28が設けられた濃縮装置30を用い(図2参照)、また、コンプレッサー24により上記系を−95kPaGに減圧した以外は、実施例1と同様に重合体溶液の濃縮を行ったが、発泡が激しく途中で濃縮操作を停止した。
【0056】
(比較例2)
噴霧器として充円錐体状に噴霧することができ(即ち、蒸発缶4内の重合体溶液の液面の全体に噴霧することができ)、噴射角度120°、液滴径850μmで噴射可能なノズルを備える噴霧器28が設けられた濃縮装置30を用い(図2参照)、また、コンプレッサー24により上記系を−88kPaGに減圧した以外は、実施例1と同様に重合体溶液の濃縮を行ったが、発泡が激しく途中で濃縮操作を停止した。
【0057】
(比較例3)
濃縮装置として噴霧器26を備えず、外部加熱装置12(外部熱交換器)により加熱された重合体溶液を重合体溶液フィードライン14により蒸発缶4内の液相に戻す構成とした濃縮装置32を用い(図3参照)、また、コンプレッサー24により上記系を−90kPaGに減圧した以外は、実施例1と同様に重合体溶液の濃縮を行った。なお、発泡が激しく、濃縮操作の中断が多発した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示すように、蒸発缶内の重合体溶液を濃縮する重合体溶液の濃縮方法であって、前記蒸発缶は、前記蒸発缶内を減圧するための減圧手段と、前記重合体溶液を前記蒸発缶内で噴霧体とする噴霧手段と、前記重合体溶液を前記噴霧手段へ供給するための循環手段と、を備え、前記噴霧体は、前記重合体溶液の液面へ向けて、中空体状に噴霧される重合体溶液の濃縮方法を用いると、CG量は少なく、減圧ラインへの飛沫同伴も防ぐことができ、さらに蒸発レートは高かった(濃縮時間は短かった)。
【符号の説明】
【0060】
2…濃縮装置、4…蒸発缶、8…循環ポンプ、12…外部加熱装置、18…凝縮器、24…コンプレッサー、26…噴霧器
図1
図2
図3
図4