(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
担持型水素添加触媒が、ニッケル、銅、白金、コバルト、パラジウム、及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有する触媒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の担持型水素添加触媒の取り出し方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の担持型水添触媒は、長期間使用すると徐々に活性が低下するため、所定のタイミングでこれを抜き出して、新しい触媒又は賦活した触媒と交換する必要がある。しかしながら、該触媒は、活性が低下したとは言え、有機物が共存する状態で酸素に触れると着火する可能性が非常に高い。
このような触媒を水素添加反応器(以下「水添反応器」と略記する)から安全に抜き出すためには、水添触媒の不活性化処理とともに、反応停止時に水添反応器や水添触媒中に残留していた有機物を安全に処理する方法が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定の手順に従うことにより、安全に水添反応器から水添触媒を取り出すことができることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[4]に存する。
[1] 担持型水素添加触媒を器内に有する水素添加反応器から、以下の工程により該水素添加触媒を取り出す担持型水素添加触媒の取り出し方法。
(1)水素添加反応器への水素供給を停止し、反応器内圧力を常圧付近まで降圧した後、該水素添加反応器に不活性ガスを加圧下に流通供給する、
(2)流通供給した排出ガス流を気液分離装置に導く、
(3)気液分離された気体成分を可燃性ガス処理設備に導くとともに、液体成分を廃油処理設備に導く、
(4)排出ガス流中の液状成分に油分が含まれなくなり、かつ気体成分の可燃性ガス濃度が爆発下限値未満となったことが確認できたら、不活性ガスの供給を停止し、水素添加反応器に酸素含有ガスの供給を開始する、
(5)酸素含有ガスにより水素添加触媒が失活し、供給する酸素含有ガスの酸素濃度と排出ガス流中の酸素濃度との差がなくなったら、反応器を冷却し、酸素含有ガスの供給を停止する、
(6)水素添加反応器から失活済みの担持型水素添加触媒を取り出す。
[2] 用いる不活性ガスが窒素又は水蒸気である上記[1]に記載の担持型水素添加触
媒の取り出し方法。
[3] 担持型水素添加触媒の担体が多孔質担体である上記[1]又は[2]に記載の担持型水素添加触媒の取り出し方法。
[4] 担持型水素添加触媒が、ニッケル、銅、白金、コバルト、パラジウム、及びモリブデンから選ばれる少なくとも一種の元素を含有する触媒である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の担持型水素添加触媒の取り出し方法。
[5] 酸素含有ガスによる水素添加触媒の失活操作に際して、該酸素含有ガスを断続的に供給する上記[1]〜[4]のいずれかに記載の担持型水素添加触媒の取り出し方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明方法によれば、着火等の恐れが著しく低減された、安全性が高い水添反応器からの水添触媒の取り出し方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下の説明は具体的な例示をすることが目的であり、本発明は以下の説明によって限定されるものではない。
【0008】
1.発明の概要
本発明は、担持型水素添加触媒を器内に有する水素添加反応器から、水素添加触媒を安全にかつ効率的に取り出すための方法に関するものである。
本発明の対象となる水添反応は特に限定されるものではないが、例えば、アルデヒド類を水素添加して対応するアルコールを製造する水添反応に対して好ましく適用される。
このような水添反応としては、プロピレン等のオレフィン類のヒドロホルミル化反応(オキソ反応)することにより、ブチルアルデヒド等の炭素数が1増加したアルデヒド類を製造し、これを水素添加することにより、アルデヒド中のカルボニル基が水素化されたアルコール類を製造したり、ブチルアルデヒド等のアルデヒド類を縮合(アルドール縮合)して、炭素数が2倍のアルデヒド類を得た上で、そのアルデヒド基のカルボニル基を水素添加することで、対応するアルコール類を製造したりする方法が例示できる。
以下、本発明について、このアルデヒドの水添反応用の触媒を例に挙げて具体的な説明を行うが、本発明の要旨を逸脱しない限り、その具体的用法等は適宜調整して使用することができ、そのような態様も本発明の範囲に包含されるものである。
【0009】
2.担持型水添触媒
上記のような水添反応に用いられる担持型水添触媒としては、例えば触媒の活性成分としては、ニッケル、銅、白金、コバルト、パラジウム、モリブデン等が好ましく用いられ、またこれらを担持する担体としては、ケイ藻土、アルミナ、シリカゲル、シリカ−アルミナ等のゼオライト類、活性炭などの多孔質固体が好ましく使用される。
【0010】
本発明の対象となる担持型水添触媒は、上記の触媒活性成分またはその塩を水等の溶媒に溶解した溶液を、例えば金属濃度を100〜200g/Lの濃度として上記担体に含浸させた後、乾燥・焼成して製造することができる。
上記のようにして得られた担持型水添触媒は、使用前に水素雰囲気下で加熱することにより還元し、その後必要に応じて安定化処理等を行って賦活した上で反応に供される。
【0011】
3.水添反応
上記の水添反応は原料アルデヒドを気化させて反応させる気相法でも、また液体のまま反応器に供給する液相法でも行うことができる。中でも偏流によるホットスポット形成を防止する観点からは、液相法が好ましい。
水添反応に用いる反応器としては、通常上記の固体状の担持型水添触媒を内部に充填した固定床反応器が用いられ、反応器の形式としては、単層又は多層に充填した水添触媒に
上部から原料アルデヒドと水素とを並流で供給するトリクルベッド式反応器や、シェル−チューブ型の多管式容器のチューブ側に触媒を充填した多管式反応器などが用いられる。
【0012】
水添反応の反応温度は通常40〜300℃であり、水素圧は常圧〜15MPa程度で行われる。
反応は断熱反応、等温反応のいずれでも可能であり、断熱反応の場合は、反応の進行に伴って反応器の入口側から出口側に向かって徐々に温度が上昇する。等温反応の場合は冷媒による除熱や、ガス循環による除熱を行うことができる。反応の制御性からは等温反応が好ましい。
【0013】
4.触媒の取り出し
(4−1)従来技術
上記のようにして使用した担持型水添触媒は、使用時間(反応時間)とともに徐々に活性(転化率、選択率)が低下する傾向がある。
これは、例えば触媒活性成分の飛散、劣化、担持触媒へのタール等の付着による劣化、担持触媒の相互固着(シンタリング)などが理由と考えられるが、このような状態になった場合は、反応を停止して、触媒を反応器から取り出して、触媒の交換や触媒の再活性化を行うことが必要となる。
【0014】
しかしながら担持型水添触媒を水添反応器から取り出す際には、
(a)活性が残った状態の触媒を酸素と接触させると着火する可能性がある。
(b)触媒や反応器内壁に、可燃性有機物が付着しており、これに着火すると火災・爆発が発生する恐れがある。
(c)付着した可燃性有機物が触媒により分解して低級炭化水素等の揮発性・可燃性が高い化合物を生成する恐れがある。
(d)担体には水素が吸着・吸蔵されており、これが着火する恐れがある。
(e)着火した担持触媒は、熱によって劣化が進むため、再生使用が困難となる。
等の危険性や問題点があるため、多くの時間と手間を掛ける必要があり、水添触媒の交換や水添反応器の修理・点検等を行うためには煩雑な準備作業が必要であった。
【0015】
(4−2)本発明方法
本発明方法に基づいて、所定の手順に従って水添触媒を水添反応器から取り出す方法を用いることにより、発熱や着火を回避しつつ、再賦活が容易な状態で、使用済みの水添触媒を回収することが可能となった。
以下、反応停止から触媒取り出しまでの各工程について説明する。
【0016】
(1)水素添加反応器に不活性ガスを加圧下に流通供給する工程
水素添加反応器への水素供給ラインを閉止して水添反応を停止した後、反応器内圧力を常圧付近まで降圧して、該水素添加反応器へ不活性ガスを加圧下に流通供給する。
この工程は、反応器中に残留した水素を加圧した不活性ガスにより系外へ排出することを目的としている。
【0017】
加圧した不活性ガスを供給することで、担体の細孔中に吸着・吸蔵された水素や、担体表面に付着した油分、あるいやその油分に溶存する水素を、気体として放出させることができる。
ここで用いる不活性ガスとしては、窒素や水蒸気が例示できるが、水蒸気が油分除去の効率が高く好ましい。
【0018】
また不活性ガスの供給時の温度は通常50〜300℃、好ましくは150〜250℃であり、圧力は、特に高い圧力は必要なく、通常0.1MPa(ゲージ圧)以上であり、0
.3MPa以上が好ましく、0.5MPa以上がより好ましい。圧力の上限は、関連する設備機器の耐圧を考慮して定めればよいが、過度に高い圧力とする必要はなく、通常3MPa以下、好ましくは2MPa以下、より好ましくは1MPa以下である。また、温度が50℃未満では油分の揮発性・流動性が劣るため油分除去の効率が低く、300℃を超えるような高温では、不活性ガスの圧力が高くなって設備の耐圧・耐熱強度が問題になったり、油分が変質して装置内に固着したりする恐れがあり、いずれも好ましくない。
【0019】
(2)水添反応器からの排出ガス流を気液分離する工程
水添反応器から排出される不活性ガスは、反応器中に残留していた水素ガス以外に、触媒担体や反応器壁等に付着していた油分などを含んでいるため、効率的な処理のために気液分離装置に導いて、常温・常圧でガス状の成分(水素、窒素等)と液状の成分(油分等)とに分離することが好ましい。
【0020】
このような気液分離装置としては、特に限定されることなく、例えば一般的なドラム、内部にコアレッサーやデミスターを装着したドラム、遠心分離機、表面張力式分離器等の設備、装置を用いることができる。
これによって、可燃性ガスを含む気体成分と、炭化水素やその誘導体を含む液状成分(油分)とを分離して、効率的に処理することが可能となる。
【0021】
(3)気液分離された気体成分を可燃性ガス処理設備に導くとともに、液体成分を廃油処理設備に導く工程
気液分離装置により分離された気体成分中には、上述の通り水素等の可燃性ガスが含まれている可能性がある。従って、上記気体成分は可燃性ガス処理設備に導いて処理することで、火災・爆発等の危険性を著しく低減することができる。
【0022】
可燃性ガス処理設備としては、例えば液中燃焼装置やフレアスタック等が例示できる。特に処理設備としてフレアスタックを用いると、可燃性ガスが完全燃焼されて水蒸気と二酸化炭素になり、無害化できるためより好ましい。
また気液分離装置により分離された液体成分は油分を含むとともに、不活性ガスとして水蒸気を使用した場合は凝縮水も含まれることとなる。この場合は、必要に応じて油水分離を行った上で、油状成分は、更に有価物を回収したり、燃料として再利用するか焼却処理したりする等の処理を行うことが好ましい。
【0023】
油水分離を行った後の分離水は、必要な処理を行った上、冷却水等に再利用するか、排水とすればよい。
上記の排出ガス流中の液体成分に油分が含まれなくなり、かつ気体成分の可燃性ガス濃度が爆発下限値未満となったことが確認されたら、不活性ガスの供給を停止し、水添反応器に酸素含有ガスを供給し、水添反応器中の水添触媒を失活・安定化する工程に移る。
【0024】
排出ガス流中の液体成分に含まれる油分については、JIS等を参照して、例えば赤外分光光度計を用いた油分測定装置を用いて測定することができる。
また、気体成分中の可燃性ガス濃度の測定器としては、例えば接触燃焼式、気体熱伝導式、熱線型半導体式、オルガスタ式、等の可燃性ガス検知器が用いられ、これらは定置型やポータブル型のものが市販されている。
【0025】
例えば、定置型可燃性ガス検知器としては、(株)ジコー製「ガスポイントGP−WD」等が、ポータブル型の可燃性ガス検知器としては、例えば理研計器(株)製「可燃性ガス検知器GP−88A」や新コスモス電機(株)製「可燃性ガス検知器XP−3110」等が挙げられる。
また、可燃性ガス濃度の爆発下限値については、その組成に基づいて例えば下記の文献
を参照することにより計算することができ、本発明方法では、通常不活性ガスの供給停止をこの爆発下限値未満となったことで判断する。この判断基準は「爆発下限値の80%未満」とすることがより安全であり好ましい。
【0026】
1)久保田「可燃性気体の爆発限界」Netsu Bussei(熱物性)、Vol.8(2)、p83−90(1994)
2)阿部、巽、水野「爆発範囲の測定装置」大陽日酸技報、No28、p30−31(2009)
なお、気体成分の組成分析はガスクロマトグラフィー等の分析手段を用いて行うことができる。
【0027】
(4)水添反応器中の水添触媒を失活・安定化する工程
不活性ガスの供給を停止したら、次に水添触媒を酸化して不活性化するために、水添反応器に酸素含有ガスを供給する。酸素含有ガスとしては入手の容易さから空気を用いることが好ましい。なお、使用する空気はフィルター等で脱塵したものが好ましい。
酸素含有ガスを供給すると、酸化反応による発熱が起こるので、酸素含有ガスは断続的に供給して、反応器の温度が過度に高くならないようにすることが好ましい。このように酸素含有ガスを断続的に供給することで、僅かに付着・残留する可能性がある油分の酸化による反応器の異常発熱を回避して、設備を保護できるとともに、より安全に触媒の不活性化処理を行うことができる。
【0028】
なお、上記断続的な酸素含有ガスの供給に際しては、その供給速度や酸素含有ガスの供給を停止する時間等を、通常最初は、供給速度を低く、供給停止時間を長く取り、不活性化の進行に応じて、速度を速く、停止時間を短くして、最終的には連続的に酸素含有ガスを供給するようにすることが好ましい。
また、酸素含有ガスの供給を停止している間に、窒素等の不活性ガスを供給することにより、系内を冷却し、発熱反応の進行を制御することもできる。
【0029】
上記水添触媒の失活・安定化工程の完了は、供給する酸素含有ガス中の酸素濃度と、排出されるガス流中の酸素濃度とを対比することで判定できる。即ち、両者の差がなくなったことは、触媒の酸化によって消費される酸素がなくなったことを意味するので、水添触媒が失活したものと判定される。
なお、酸素濃度の測定はガルバニ電池式、隔膜ガルバニ電池式、磁気式等の方法で行うことができ、酸素濃度測定器としては、例えば、(株)ジコー製「酸素濃度計JKO−25verII(ポータブル式)」や新コスモス電機(株)製「酸素濃度計XO−2200」、「同XO−326II」、「同XP−3180」等が挙げられる。
【0030】
(5)水添反応器の冷却工程
上記工程(4)の触媒の失活操作が終了したら、反応器を冷却する。この冷却は反応器に設けられたジャケット等の温度調節装置を用いて積極的に冷却してもよく、また放置冷却(放冷)することでも問題ない。特に処理完了を急ぐ必要がない場合は、放冷すればよい。
【0031】
(6)失活済み担持型水素添加触媒の取り出し工程
上記(1)〜(5)の各工程の処理が完了したら、担持型水素添加触媒は十分安定化されており、着火等の恐れは無くなっていると考えられる。
このような触媒を反応器から取り出すためには、例えば反応器底部を開放して自然落下させる方法や反応器上部〜中部等に設けられた開口部を経由して、真空吸引等によって触媒を取り出す方法等を適宜用いることができ、特に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
(1)反応器及び触媒
水添反応器としては、塔径2.4m、塔高17.84mのステンレス(SUS304)製の固定床反応器を使用した。
また担持型水素添加触媒としては、特開2005−279587号公報に記載されているような、ペレット状の多孔質担体(ケイ藻土)にニッケル及びクロムを担持させた触媒を使用した。
【0033】
(2)水添反応
上記の水素添加反応器に、上記の担持型水添触媒31,500kgを4層に別けて各層7,875kgを均一に充填し、プロピレンのヒドロホルミル化反応で生成したn−/i−ブチルアルデヒド混合物を分離・精製して得られたn−ブチルアルデヒド(以下「NBD]と略記する)9,300kg/h及び溶剤としてのn−ブタノール49,200kg/hとを供給し(以下、上記NBDとn−ブタノールとの混合液を「供給液」と記す)、反応器内の圧力が4.9MPa(ゲージ圧、以下同じ)に保たれるように水素を供給しながら、NBDの水添反応を行った。
【0034】
反応器は4層の触媒層を持つトリクルベッド式反応器で、反応器上部から原料である上記供給液を供給し、各触媒層の上部と下部とに設置された計8本の温度計により温度を検知した。
反応器への供給液温度を60℃としたところ、反応器内の各層の温度は以下のようになった。
1層上: 62℃ 1層下: 75℃
2層上: 89℃ 2層下:103℃
3層上:115℃ 3層下:118℃
4層上:118℃ 4層下:118℃
【0035】
(3)水添反応の停止
所定時間反応を継続した後、水添反応を以下のようにして停止した。
上記(2)の定常反応の状態から、200kg/hのペースでNBDの供給を減少させることにより、約30時間かけてNBDの供給量を4,000kg/hまで低下させた。
その後供給液中のNBDのみ供給を停止し、溶剤のn−ブタノールと水素とを継続して供給した。反応器内に残留するNBDを完全にn−ブタノールに転化させるため、反応器内の温度を100℃以上に保った状態でn−ブタノールと水素の供給を1時間継続した後、加熱を停止し、反応器内の各触媒層の温度が50℃以下となるまで冷却した。
【0036】
上記反応器温度が50℃以下となった後、n−ブタノールと水素の供給を順次停止した。
反応器内に残留する気体成分を可燃性ガス処理設備に導き、反応器の内圧を降圧した後、反応器内の液状成分を抜き出し、廃油処理設備に導いた。
次に水添反応器及び接続機器に窒素を供給し、排出されるガス中の可燃性ガス及び酸素がいずれも検出されなくなったことを確認の上、水添反応器の内圧が0.5MPaとなるように窒素を供給し、次いで0.02MPaまで放圧し、再度排ガス中の可燃性ガス及び酸素の濃度を測定し、可燃性ガス及び酸素が検出されなくなるまで、上記操作を合計8回反復した上で、水添反応器に窒素を封入した。
【0037】
(4)油状成分の排出
1.3MPa圧力の水蒸気(不活性ガス)を500kg/hで反応器の上部から3時間継続的に供給した。その後、上記供給量を毎時500kgずつ増加させ、8時間かけて蒸
気供給量を4,500kg/hとした。
反応器から排出される気液混合流は気液分離器を用いて分離し、気体成分を可燃性ガス処理設備に導き、液状成分は廃油として抜き出した。
この操作を約60時間継続し、抜き出される液状成分に油分が含まれなくなったことを目視及び油分測定により確認できたところで、この工程を終了した。
なお、油分の測定は上記液状成分を、燃焼酸化−赤外線式TOC分析法(JIS K 0102(2013)22.1に記載された方法)に従って行った。
【0038】
(5)水添触媒の失活処理
油状成分の排出が完了したら、上記水蒸気の供給量を3,000kg/hまで減らした後、系内に窒素を供給し、系内の酸素濃度が0%(検出限界未満)であることを確認した上で、触媒の失活操作を行った。
失活操作に用いる酸素含有ガスとしてフィルターを介して除塵した空気を使用し、これを反応器に断続的に供給することによって触媒の失活処理を行った。
【0039】
空気の断続的供給は、最初空気供給量を絞り(50Nm
3/h)、かつ供給停止の時間を長く(10分間)する条件から開始し、徐々に空気供給量を増加させ、供給停止時間を短くするようにして、最終的に空気を供給量100Nm
3/hで120分間供給した後、10分間供給を停止したら、以後120Nm
3/hの供給量で連続的に空気を供給した。
反応器からの排ガス中の酸素濃度が、供給空気中の酸素濃度と同じになったら反応器を放冷し、内温が40℃以下になったところで空気の供給を停止した。
【0040】
(6)水添触媒の取り出し
上記手順によって失活処理を行った水添触媒は、必要に応じて破砕処理を行った後、反応器上部のマンホール経由で真空吸引することにより排出した。