特許第6443220号(P6443220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443220
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】スパッタリング用合金ターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20181217BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20181217BHJP
   C22C 9/06 20060101ALI20181217BHJP
   C22C 19/03 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   G06F3/041 660
   G06F3/041 495
   C22C9/06
   C22C19/03 G
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-105763(P2015-105763)
(22)【出願日】2015年5月25日
(65)【公開番号】特開2016-216797(P2016-216797A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高塚 裕二
(72)【発明者】
【氏名】富樫 亮
(72)【発明者】
【氏名】山岸 浩一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恵理子
【審査官】 宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−079941(JP,A)
【文献】 特開2016−178286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
C22C 9/06
C22C 19/03
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒化層を備えるタッチパネル用導電性基板の作製に用いるスパッタリング用合金ターゲットであって、
モリブデンを2原子%以上26原子%未満、かつニッケルを20原子%以上80原子%未満の割合で含有し、残部が銅で構成され、モリブデンがニッケルに固溶している銅―ニッケル−モリブデン熔解合金であるスパッタリング用合金ターゲット。
【請求項2】
モリブデンとニッケルの物質量比が2:98以上26:74以下である請求項1に記載のスパッタリング用合金ターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング用合金ターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
高分子フィルム上に透明導電膜としてITO(酸化インジウム−スズ)膜を形成したタッチパネル用の透明導電性フィルムが従来から用いられている。(特許文献1参照)
【0003】
ところで、近年タッチパネルを備えたディスプレイの大画面化が進んでおり、これに対応してタッチパネル用の透明導電性フィルム等の導電性基板についても大面積化が求められている。しかし、ITOは電気抵抗値が高いため、導電性基板の大面積化に対応できないという問題があった。
【0004】
このため、例えば特許文献2、3に開示されているようにITO膜にかえて導電性が優れている銅等の金属箔を用いることが検討されている。しかし、例えば配線層に銅を用いた場合、銅は金属光沢を有しているため、反射によりディスプレイの視認性が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、上記の導電性と視認性の両特性の改善を実現するために、銅等の金属箔により構成される配線層と共に、黒色の材料により構成される黒化層を形成した導電性基板が検討されている。
【0006】
しかしながら、配線パターンを有する導電性基板とするためには、配線層と黒化層とを形成した後に、配線層と黒化層とをエッチングして所望のパターンを形成する必要があるが、エッチング液に対する反応性が配線層と黒化層とで大きく異なるという問題があった。すなわち、配線層と黒化層とを同時にエッチングしようとすると、いずれかの層が目的の形状にエッチングできないという問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−151358号公報
【特許文献2】特開2011−018194号公報
【特許文献3】特開2013−069261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術の種々の問題に鑑み、本発明の一側面では銅層と同時にエッチング処理を行うことができる黒化層を形成するためのスパッタリング用合金ターゲットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明の一側面では、
黒化層を備えるタッチパネル用導電性基板の作製に用いるスパッタリング用合金ターゲットであって、
モリブデンを2原子%以上26原子%未満、かつニッケルを20原子%以上80原子%未満の割合で含有し、残部が銅で構成され、モリブデンがニッケルに固溶している銅―ニッケル−モリブデン熔解合金であるスパッタリング用合金ターゲットを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面によれば、銅層と同時にエッチング処理を行うことができる黒化層を形成するためのスパッタリング用合金ターゲットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る導電性基板の断面図。
図2】本発明の実施形態に係る導電性基板の断面図。
図3】本発明の実施形態に係るメッシュ状の配線を備えた導電性基板の上面図。
図4図3のA−A´線における断面図。
図5】実施例で作製したスパッタリング用合金ターゲットの構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(スパッタリング用合金ターゲット)
以下、本発明のスパッタリング用合金ターゲットの一構成例について説明する。
【0013】
本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットは、黒化層を備えるタッチパネル用導電性基板の作製に用いる、スパッタリング用合金ターゲットに関する。そして、本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットは、モリブデンを2原子%以上26原子%未満、かつニッケルを20原子%以上80原子%未満の割合で含有し、残部を銅で構成することができ、熔解法により作製することができる。
【0014】
配線層として用いる銅層表面での光の反射を抑制するために設けられた黒化層であって、銅層と同時にエッチングできる黒化層について本発明の発明者らは鋭意検討を行った。その結果、銅層と同時にエッチングできる黒化層として、銅、ニッケル、及びモリブデンを同時に含有する酸化膜や酸窒化膜を用いることができることを見出した。そして、係る銅、ニッケル、及びモリブデンを同時に含有する酸化膜や、酸窒化膜はスパッタリング法で作製できる。
【0015】
スパッタリング法で使用されるターゲットとしては、主として熔解合金または焼結体が使われる。特に熔解合金は密度が高く均一であるため、スパッタリング用ターゲットとして有用である。
【0016】
ところが銅とモリブデンは固溶しないため、上記黒化層を形成するのに適した合金組成を有し、熔解法により作製した銅、ニッケル、及びモリブデンを含有するスパッタリング用合金ターゲットは知られていなかった。そこで、本発明の発明者らはさらに検討を行い、本発明を完成させた。
【0017】
ここでまず、本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットとする、銅−ニッケル−モリブデン熔解合金の組成について説明する。
【0018】
銅−ニッケル−モリブデン熔解合金のモリブデンの含有割合は2原子%以上26原子%未満とすることが好ましく、2.5原子%以上16原子%未満とすることがより好ましい。
【0019】
これは、モリブデンの含有割合が2原子%未満ではタッチパネル用導電性基板を構成する黒化層として要求される光学特性を制御することが困難な場合があり、好ましくないからである。
【0020】
また、モリブデンの含有割合が26原子%以上の場合、銅−ニッケル−モリブデン熔解合金の作製のため金属原料を熔解した後、冷却中に目的としない金属間化合物が析出したり、熔融した液相がMoリッチ相と銅リッチ相に分離し、組成が不均一な合金となる場合がある。組成が不均一な合金をターゲットとして用いて黒化層をスパッタ成膜した場合、黒化層は均一な組成の膜とならず、タッチパネル用の黒化層として優れた光学特性とならないため好ましくない。
【0021】
なお、モリブデンの含有割合を16原子%未満とすることで、銅−ニッケル−モリブデン熔解合金の組成がより安定し、例えば1000℃程度で熱間圧延を行っても化合物層が析出しないためより好ましい。
【0022】
次に、銅−ニッケル−モリブデン熔解合金のニッケルの含有割合は20原子%以上80原子%未満が好ましい。
【0023】
これは、ニッケルの含有割合が20原子%未満の場合、これを使用してスパッタ成膜して得られる黒化層の耐湿性が悪くなる場合があり好ましくないからである。
【0024】
また、ニッケルの含有割合を80原子%以上とするとエッチング性が悪くなるので好ましくない。
【0025】
銅−ニッケル−モリブデン熔解合金のモリブデン、ニッケル以外の残部は銅で構成することができる。
【0026】
本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットとする、銅−ニッケル−モリブデン熔解合金に含まれるモリブデンと、ニッケルとの物質量比は特に限定されるものではないが、モリブデンとニッケルの物質量比は2:98以上26:74以下であることが好ましい。
【0027】
すなわち、本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットとする、銅−ニッケル−モリブデン熔解合金に含まれるモリブデンと、ニッケルとのうち、モリブデンの割合は、2原子%以上26原子%以下であることが好ましい。
【0028】
これは、銅−ニッケル−モリブデン熔解合金に含まれるモリブデンと、ニッケルとのうち、モリブデンの割合が2原子%未満の場合、タッチパネル用導電性基板を構成する黒化層として要求される光学特性を制御することが困難な場合があるからである。また、銅−ニッケル−モリブデン熔解合金に含まれるモリブデンと、ニッケルとのうち、モリブデンの割合が26原子%を超えると、銅−ニッケル−モリブデン熔解合金の組成が不均一になる場合があるためである。
【0029】
本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットは熔解法により作製することができる。熔解法とは、スパッタリング用合金ターゲットを構成する、銅、ニッケル、及びモリブデンを熔解させ、合金とする方法である。
【0030】
ただし、既述の様に銅とモリブデンとは熔解することが難しく固溶しない。このため、本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットは、ニッケルにモリブデンを固溶させた合金を作製し、その合金と銅とを熔解させることで作製することが好ましい。
【0031】
このため、本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットにおいては、モリブデンがニッケルに固溶していることが好ましい。
(スパッタリング用合金ターゲットの製造方法)
次に、本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットの製造方法の一構成例について説明する。
【0032】
なお、銅とモリブデンとは熔解することが難しく固溶しない。このため、本発明の発明者らが検討したところによると、ニッケルにモリブデンを固溶させた合金を作製し、その合金と銅とを熔解させることで銅−ニッケル−モリブデン熔解合金を作製することが好ましい。具体的には例えば以下の手順により作製することができる。
【0033】
まず、出発原料を準備する原料準備工程を実施できる。
【0034】
出発原料として、構成成分である銅、ニッケル、モリブデンを準備し、スパッタリング用合金ターゲットの目的組成にあわせてそれぞれを秤量することができる。
【0035】
例えば、46Cu−46Ni−8Moの熔解合金ターゲットを作製する場合には、まずニッケルを46原子%(42.3質量%)、銅を46原子%(45.7質量%)、モリブデンを8原子%(12.0質量%)になるように秤量する。
【0036】
次に、ニッケルとモリブデンとを真空雰囲気下、熔解させ、ニッケル−モリブデン合金を形成する、ニッケル−モリブデン合金形成工程を実施できる。
【0037】
ニッケル−モリブデン合金形成工程では、原料準備工程で秤量したニッケルとモリブデンとを坩堝、例えばアルミナ坩堝に入れて真空雰囲気下、加熱して熔解し、ニッケル−モリブデン合金を形成できる。
【0038】
ニッケル−モリブデン合金形成工程では、例えば真空熔解炉を用いて加熱することができる。
【0039】
ニッケル−モリブデン合金形成工程で加熱する温度は特に限定されるものではなく、形成するニッケル−モリブデン合金の組成に応じて、モリブデンがニッケルに固溶できるように温度を選択することが好ましい。例えば46Cu−46Ni−8Moの熔解合金を形成するためのニッケル−モリブデン合金を形成する場合には、1550℃以上に加熱することが好ましい。
【0040】
なお、モリブデンとニッケルとの相図から、1315℃ではモリブデンをニッケルに26原子%まで固溶させることが可能である。また、NiとMoとの金属間化合物であるNiMoが析出する875℃ではモリブデンが16原子%まで、室温ではモリブデンが13原子%までニッケルにモリブデンを固溶させることが可能であることが分かる。このように相図と、形成する合金の組成に基づいてニッケル−モリブデン合金形成工程の加熱温度を選択することが好ましい。
【0041】
次に、ニッケル−モリブデン合金形成工程で形成した熔解した状態のニッケル−モリブデン合金に銅を添加し、銅−ニッケル−モリブデン熔解合金を形成する銅−ニッケル−モリブデン合金形成工程を実施できる。
【0042】
ニッケル−モリブデン合金形成工程でニッケル−モリブデン合金を熔解した状態で形成した後、そのまま温度を一定時間、例えば5分以上20分以下保持して完全に溶解したことを確認してから、銅−ニッケル−モリブデン合金形成工程を開始することが好ましい。
【0043】
銅−ニッケル−モリブデン合金形成工程ではまず、ニッケル−モリブデン合金形成工程でニッケル−モリブデン合金を熔解させ、真空雰囲気に保たれた炉内に、不活性ガスを入れて真空度が50Pa以上1000Pa以下になるように調整することが好ましい。この際用いる不活性ガスとしては特に限定されるものではないが、例えばアルゴンガスや、ヘリウムガス等を用いることができる。
【0044】
炉内に不活性ガスを導入後、原料準備工程で準備した銅を、熔解したニッケル−モリブデン合金が入った坩堝に数回に分けて投入して、銅を熔解させることで、所望の合金組成の銅−ニッケル−モリブデン熔解合金を作製することができる。なお、ニッケル−モリブデン合金形成工程での温度が銅の融点に満たない場合には、銅の融点以上まで加熱してから銅の投入を実施することが好ましい。
【0045】
次に、真空下で加熱する真空加熱工程を実施することができる。
【0046】
銅−ニッケル−モリブデン合金形成工程で銅を添加し、銅が熔解した後、真空加熱工程を実施することができる。真空加熱工程では、再び炉内の真空引きを行って合金融体の脱ガスを行い、脱ガス後、再度真空中で加熱して、均一な銅−ニッケル−モリブデン熔解合金を得ることができる。脱ガス後の加熱条件は特に限定されるものではないが、例えば1550℃以上の温度で、10分間以上加熱、保持することが好ましい。
【0047】
次にインゴット形成工程と、ターゲット加工工程を実施できる。
【0048】
真空加熱工程後、熔解した状態の銅−ニッケル−モリブデン合金を鋳型に流し込んでインゴットとするインゴット形成工程を実施できる。鋳型としては特に限定されるものではなく、銅−ニッケル−モリブデン合金と反応せず、熔解した状態の銅−ニッケル−モリブデン合金の温度に対して耐熱性を有する材料により構成されていれば良い。例えばカーボン製の鋳型を用いることができる。
【0049】
インゴット形成工程は、銅−ニッケル−モリブデン合金の酸化を抑制するため、不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。
【0050】
インゴット形成工程後、室温まで冷却し、ターゲット加工するターゲット加工工程を実施することで本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットを得ることができる。
【0051】
以上に説明したスパッタリング用合金ターゲット、スパッタリング合金用ターゲットの製造方法により得られるスパッタリング用合金ターゲットを用いることで、銅層と同時にエッチング処理を行うことができる黒化層を形成することができる。
(導電性基板)
本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットを使用して製造することのできる導電性基板の一構成例について説明する。
【0052】
本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットを用いることで、同時にエッチング処理を行うことができる銅層と、黒化層と、を備えたタッチパネル用導電性基板を好適に作製することができる。
【0053】
本実施形態のタッチパネル用導電性基板は、透明基材と、透明基材の少なくとも一方の面側に形成された銅層と、透明基材の少なくとも一方の面側に形成され、酸素、銅、ニッケル及びモリブデンを含有し、酸素を5原子%以上60原子%以下含有する黒化層(以下、単に「黒化層」とも記載する)とを備えた構成とすることができる。
【0054】
これまで、タッチパネル用導電性基板として、種々の構成の導電性基板が検討されてきた。その中で、導電性基板の配線層として銅層を用いることも検討されているが、銅層は金属光沢を有するため、透明基材上に銅層をエッチングした配線を形成したのみでは銅層が光を反射する。このため、例えばタッチパネル用の導電性基板として用いた場合、ディスプレイの視認性が低下するという問題があった。
【0055】
このため、黒化層を設ける方法が検討されてきたが、黒化層がエッチング液に対する反応性を十分に有していない場合があり、銅層と黒化層とを同時に所望の形状にエッチングすることは困難であった。
【0056】
そこで、本発明の発明者らが検討を行ったところ、酸素、銅、ニッケル及びモリブデンを含有する層は黒色であるため黒化層として使用でき、さらに、エッチング液に対して十分な反応性を示すため、銅層と同時にエッチング処理を行えることを見出した。
【0057】
そして、既述の本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットを使用することで、配線層の銅層と同時にエッチングでき、安価にパターニングできる酸素、銅、ニッケル及びモリブデンを含有する黒化層を成膜できることを見出した。さらに、本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットを用いて黒化層を成膜した場合、タッチパネル用として要求される良好な光学特性(例えば反射率、明度(L)、色度(a、b))を有する黒化層が得られることも見出した。
【0058】
以下に、本実施形態の導電性基板に含まれる各層について説明する。
【0059】
透明基材としては特に限定されるものではなく、可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板等を好ましく用いることができる。
【0060】
可視光を透過する絶縁体フィルムとしては例えば、ポリアミド系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、シクロオレフィン系フィルム等の樹脂フィルム、ポリカーボネート系フィルム等を好ましく用いることができる。
【0061】
透明基材の厚さについては特に限定されず、導電性基板とした場合に要求される強度や静電容量、光の透過率等に応じて任意に選択することができる。
【0062】
次に銅層について説明する。
【0063】
銅層についても特に限定されないが、光の透過率を低減させないため、銅層と透明基材との間、または、黒化層との間に接着剤を配置しないことが好ましい。すなわち銅層は、他の部材の上面に直接形成されていることが好ましい。
【0064】
他の部材の上面に銅層を直接形成するため、銅層は銅薄膜層を有することが好ましい。また、銅層は銅薄膜層と銅めっき層とを有していてもよい。
【0065】
例えば透明基材または黒化層上に、乾式めっき法により銅薄膜層を形成し該銅薄膜層を銅層とすることができる。これにより、透明基材または黒化層上に接着剤を介さずに直接銅層を形成できる。
【0066】
銅薄膜層の形成に用いる乾式めっき法としては、特に限定されるものではなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、又はイオンプレーティング法等を用いることができる。特に、銅薄膜層の形成に用いる乾式めっき法としては、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。
【0067】
また、銅層の膜厚が厚い場合には、該銅薄膜層を給電層として、湿式めっき法により銅めっき層を形成することにより、銅薄膜層と銅めっき層とを有する銅層とすることもできる。銅層が銅薄膜層と銅めっき層とを有することにより、この場合も透明基材または黒化層上に接着剤を介さずに直接銅層を形成できる。
【0068】
銅層の厚さは特に限定されるものではなく、銅層を配線として用いた場合に、該配線に供給する電流の大きさや配線幅等に応じて任意に選択することができる。特に十分に電流を供給できるように銅層は厚さが100nm以上であることが好ましく、150nm以上とすることがより好ましい。銅層の厚さの上限値は特に限定されないが、銅層が厚くなると、配線を形成するためにエッチングを行う際にエッチングに時間を要するためサイドエッチが生じ、エッチングの途中でレジストが剥離する等の問題を生じ易くなる。このため、銅層の厚さは3μm以下であることが好ましく、700nm以下であることがより好ましい。
【0069】
なお、銅層が上述のように銅薄膜層と、銅めっき層を有する場合には、銅薄膜層の厚さと、銅めっき層の厚さとの合計が上記範囲であることが好ましい。
【0070】
次に黒化層について説明する。
【0071】
黒化層は本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットを用い、チャンバー内に反応性ガスとして酸素を供給しながらスパッタリング法により成膜することができる。また、反応性ガスとして酸素と窒素との混合ガスを用いることもでき、この場合は、チャンバー内に酸素と、窒素とを供給しながらスパッタリング法により成膜することができる。
【0072】
スパッタリング時にチャンバー内に供給するガス中の酸素の含有割合は特に限定されないが、酸素の含有割合が5体積%以上45体積%以下であるガスをチャンバーに供給しながら、黒化層を成膜することが好ましい。
【0073】
これは、チャンバー内へ供給するガス中の酸素の含有割合を45体積%以下とすることにより、黒化層のエッチング液に対する反応性を特に高めることができるからである。このため、銅層と共に黒化層のエッチングを行う際、銅層と、黒化層とを容易に所望のパターンとすることができ好ましい。さらに、光学特性の反射率、明度(L)、色度(a、b)のいずれも黒化層として良好となり好ましい。
【0074】
特に色度(a、b)を黒化層として特に良好とする観点からは、チャンバー内へ供給するガス中の酸素の供給割合は42体積%以下とすることがより好ましい。
【0075】
また、スパッタリング時にチャンバー内へ供給するガス中の酸素の含有割合を5体積%以上とすることにより、成膜した黒化層の色を、銅層表面での光の反射を抑制するのに特に適した色とすることができ、好ましい。
【0076】
上述の様に反応性ガスとして、酸素と窒素との混合ガスを用いることもできる。反応性ガスとして酸素と窒素との混合ガスを用いることで、黒化層のエッチング性を特に高めることができる。反応性ガスとして、酸素と窒素との混合ガスを用いる場合、酸素と窒素の比は体積比で1:4以上5:5以下が望ましい。すなわち、酸素と窒素との混合ガス中の酸素の割合が20体積%以上50体積%以下であることが好ましい。
【0077】
なお、スパッタリングを行う際、チャンバー内に供給するガスは、酸素、または酸素と窒素との混合ガス以外の残部については不活性ガスとすることが好ましい。酸素、または酸素と窒素との混合ガス以外の残部については例えばアルゴン、キセノン、ネオン、ヘリウムから選択された1種類以上のガスを用いることが好ましい。
【0078】
成膜した黒化層は、酸素、銅、ニッケル、及びモリブデンを含有することができる。黒化層に含まれる銅とニッケルとモリブデンとの含有量の合計、すなわち金属元素の含有量の合計を100原子%とした場合に、モリブデンの含有量が2原子%以上70%原子以下であることが好ましい。
【0079】
これは、黒化層に含まれる金属元素中のモリブデンの含有量を2原子%以上とすることで、黒化層表面での光の反射率を特に低下させることができるためである。そして、黒化層に含まれる金属元素中のモリブデンの含有量を70原子%以下とすることで、黒化層が高いエッチング性を示し、所望のパターンを有する導電性基板を容易に作製することができるためである。
【0080】
なお、既述の本実施形態のスパッタリング用合金ターゲットを用いて黒化層を成膜することで、黒化層に含まれる金属元素中のモリブデンの含有量を容易に上記範囲とすることができる。
【0081】
また、黒化層中に含まれる酸素は、黒化層に含まれる成分のうち、5原子%以上60原子%以下であることが好ましく、20原子%以上55原子%以下であることがより好ましい。
【0082】
これは、黒化層中に酸素が5原子%以上含まれていることにより黒化層が半透明になることで光の干渉効果により十分な黒色とすることができ、光の反射を特に抑制できるためである。また黒化層中の酸素の含有量が60原子%より多くなると黒化層のエッチング性が低下する場合があり、また黒化層のシート抵抗が高くなるため、60原子%以下であることが好ましい。
【0083】
黒化層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば20nm以上であることが好ましく、25nm以上とすることがより好ましい。黒化層は、上述のように黒色をしており、銅層による光の反射を抑制する黒化層として機能するが、黒化層の厚さが薄い場合には、十分な黒色が得られず銅層による光の反射を十分に抑制することができない場合がある。これに対して、黒化層の厚さを上記範囲とすることにより、銅層の反射をより抑制できるため好ましい。
【0084】
黒化層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、黒化層の厚さを厚くすると、光学特性の反射率、明度(L)、色度(a、b)が黒化層としては劣る特性となる場合があり、好ましくない。このため、黒化層の厚さは45nm以下とすることが好ましく、40nm以下とすることがより好ましい。
【0085】
次に、本実施形態の導電性基板の構成例について説明する。
【0086】
上述のように、本実施形態の導電性基板は透明基材と、銅層と、黒化層と、を備えている。この際、銅層と、黒化層と、を透明基材上に配置する際の積層の順番は特に限定されるものではない。また、銅層と、黒化層と、はそれぞれ複数層形成することもできる。なお、銅層表面での光の反射の抑制のため、銅層の表面のうち光の反射を特に抑制したい面に黒化層が配置されていることが好ましい。また、銅層は黒化層に挟まれた構造を有していることがより好ましい。
【0087】
具体的な構成例について、図1図2を用いて以下に説明する。図1図2は、本実施形態の導電性基板の、透明基材、銅層、黒化層の積層方向と平行な面における断面図の例を示している。
【0088】
例えば、図1(a)に示した導電性基板10Aのように、透明基材11の一方の面11a側に銅層12と、黒化層13と、を一層ずつその順に積層することができる。また、図1(b)に示した導電性基板10Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ銅層12A、12Bと、黒化層13A、13Bと、を一層ずつその順に積層することができる。なお、銅層12(12A、12B)、及び、黒化層13(13A、13B)を積層する順は、図1(a)、(b)の例に限定されず、透明基材11側から黒化層13(13A、13B)、銅層12(12A、12B)の順に積層することもできる。
【0089】
また、例えば黒化層を透明基材11の一方の面11a側に複数層設けた構成とすることもできる。例えば図2(a)に示した導電性基板20Aのように、透明基材11の一方の面11a側に、第1の黒化層131と、銅層12と、第2の黒化層132と、をその順に積層することができる。
【0090】
この場合も透明基材11の両面に銅層、第1の黒化層、第2の黒化層を積層した構成とすることができる。具体的には図2(b)に示した導電性基板20Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ第1の黒化層131A、131Bと、銅層12A、12Bと、第2の黒化層132A、132Bと、をその順に積層できる。
【0091】
なお、図1(b)、図2(b)において、透明基材の両面に銅層と、黒化層と、を積層した場合において、透明基材11を対称面として透明基材11の上下に積層した層が対称になるように配置した例を示したが、係る形態に限定されるものではない。例えば、図2(b)において、透明基材11の一方の面11a側の構成を図1(a)の構成と同様に、銅層12と、黒化層13と、をその順に積層した形態とし、透明基材11の上下に積層した層を非対称な構成としてもよい。
【0092】
ここまで、本実施形態の導電性基板について説明してきたが、本実施形態の導電性基板においては、透明基材上に銅層と、黒化層と、を設けているため、銅層による光の反射を抑制することができる。
【0093】
本実施形態の導電性基板の光の反射の程度については特に限定されないが、例えば本実施形態の導電性基板は、波長550nmの光に対する反射率は30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが特に好ましい。
【0094】
また波長350nm以上780nm以下の範囲の光に対する反射率の平均値である可視光平均反射率は30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが特に好ましい。
【0095】
これは波長550nmの光に対する反射率、および可視光平均反射率の少なくとも一方が30%以下の場合、例えばタッチパネル用の導電性基板として用いた場合でもディスプレイの視認性の低下をほとんど引き起こさないためである。ディスプレイの視認性の低下を特に抑制する観点から、波長550nmの光に対する反射率、及び可視光平均反射率は、共に30%以下であることがより好ましい。
【0096】
反射率の測定は、黒化層に光を照射するようにして行うことができる。すなわち、導電性基板に含まれる銅層及び黒化層のうち、黒化層側から測定を行うことができる。
【0097】
具体的には例えば図1(a)のように透明基材11の一方の面11aに銅層12、黒化層13の順に積層した場合、黒化層13に光を照射できるように、図中の表面Aに対して光を照射するようにして測定できる。
【0098】
また、図1(a)の場合と銅層12と黒化層13との配置を換え、透明基材11の一方の面11aに黒化層13、銅層12の順に積層した場合、透明基材11を除いて黒化層13が最表面に位置する側である、透明基材11の面11b側から光を照射して反射率を測定できる。
【0099】
なお、後述のように導電性基板は銅層及び黒化層をエッチングすることにより配線を形成できるが、上記反射率は導電性基板のうち透明基材を除いた場合に最表面に配置されている黒化層の、光が入射する側の表面における反射率を示している。このため、エッチング処理前、または、エッチング処理を行った後であれば、銅層及び黒化層が残存している部分での測定値が上記範囲を満たしていることが好ましい。
【0100】
また、測定した反射率から、明度(L)、色度(a、b)を算出することができる。明度(L)、及び色度(a、b)については特に限定されないが、明度(L)は60以下であることが好ましく、55以下であることがより好ましい。また、色度(a、b)は少なくとも一方が0未満、すなわち負であることが好ましく、a、b共に0未満であることがより好ましい。
【0101】
これは明度(L)が60以下の場合暗い色調となるために、光の反射を特に抑制できるからである。また、色度(a、b)の少なくとも一方が0未満の場合に、黒化層は光の反射を抑制するのに特に適した色となるためである。
【0102】
本実施形態の導電性基板は上述のように例えばタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。この場合導電性基板はメッシュ状の配線を備えた構成とすることができる。
【0103】
メッシュ状の配線を備えた導電性基板は、ここまで説明した本実施形態の導電性基板の銅層及び黒化層をエッチングすることにより得ることができる。
【0104】
例えば、二層の配線によりメッシュ状の配線とすることができる。具体的な構成例を図3に示す。図3はメッシュ状の配線を備えた導電性基板30を銅層、黒化層の積層方向の上面側から見た図を示している。図3に示した導電性基板30は、透明基材11と、図中Y軸方向に平行な複数の配線31AとX軸方向に平行な配線31Bとを有している。なお、配線31A、31Bは銅層をエッチングして形成されており、該配線31A、31Bの上面および/または下面には図示しない黒化層が形成されている。また、黒化層は配線31A、31Bと同じ形状にエッチングされている。
【0105】
透明基材11と配線31A、31Bとの配置は特に限定されない。透明基材11と配線との配置の構成例を図4(a)、(b)に示す。図4(a)、(b)は図3のA−A´線での断面図に当たる。
【0106】
まず、図4(a)に示したように、透明基材11の上下面にそれぞれ配線31A、31Bが配置されていてもよい。なお、この場合、配線31Aの上面、及び配線31Bの下面にはそれぞれ、配線と同じ形状にエッチングされた黒化層32A、32Bが配置されている。
【0107】
また、図4(b)に示したように、1組の透明基材11A、11Bを用い、一方の透明基材11Aを挟んで上下面に配線31A、31Bを配置し、かつ、一方の配線31Bは透明基材11Aと透明基材11Bとの間に配置されてもよい。この場合も、配線31A、31Bの上面には配線と同じ形状にエッチングされた黒化層32A、32Bが配置されている。なお、既述のように、黒化層と、銅層との配置は限定されるものではない。このため、図4(a)、(b)いずれの場合でも黒化層32A、32Bと配線31A、31Bの配置は上下を逆にすることもできる。また、例えば黒化層を複数層設けることもできる。
【0108】
ただし、黒化層は銅層表面のうち光の反射を特に抑制したい面に配置されていることが好ましい。このため、図4(b)に示した導電性基板において、例えば、図中下面側からの光の反射を抑制する必要がある場合には、黒化層32A、32Bの位置と、配線31A、31Bの位置とをそれぞれ逆にすることが好ましい。また、黒化層32A、32Bに加えて、配線31Aと透明基材11Aとの間、および/または配線31Bと透明基材11Bとの間に黒化層をさらに設けてもよい。
【0109】
図3及び図4(a)に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は例えば、図1(b)、図2(b)のように透明基材11の両面に銅層12A、12Bと、黒化層13A、13B(131A、132A、131B、132B)と、を備えた導電性基板から形成できる。
【0110】
図1(b)の導電性基板を用いて形成した場合を例に説明すると、まず、透明基材11の一方の面11a側の銅層12A及び黒化層13Aを、図1(b)中Y軸方向に平行な複数の線状のパターンが、X軸方向に沿って所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。図1(b)中のX軸方向とは、図1(b)中の各層の幅方向と平行な方向を意味している。また、図1(b)中のY軸方向とは、紙面と垂直な方向を意味している。
【0111】
そして、透明基材11のもう一方の面11b側の銅層12B及び黒化層13Bを図1(b)中X軸方向と平行な複数の線状のパターンが、Y軸方向に沿って所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。
【0112】
以上の操作により図3図4(a)に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板を形成することができる。なお、透明基材11の両面のエッチングは同時に行うこともできる。すなわち、銅層12A、12B、黒化層13A、13Bのエッチングは同時に行ってもよい。
【0113】
なお、銅層、及び黒化層を所望の形状にエッチングする方法は特に限定されない。例えば以下の手順によりエッチングを行うことができる。まず、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストを、導電性基板の最表面に形成する。図1(b)に示した導電性基板の場合、導電性基板に配置した黒化層13A、13Bの露出した面A、面B上にレジストを形成することができる。なお、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストの形成方法は特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィー法により形成することができる。
【0114】
次いで、レジスト上面からエッチング液を供給することにより、銅層12A、12B、黒化層13A、13Bのエッチングを実施することができる。
【0115】
黒化層は銅層とほぼ同様のエッチング液への反応性を示すことから、エッチングを行う際に用いるエッチング液は特に限定されるものではなく、一般的に銅層のエッチングに用いられるエッチング液を好ましく用いることができる。エッチング液としては例えば、塩化第二鉄と、塩酸と、の混合水溶液をより好ましく用いることができる。エッチング液中の塩化第二鉄と、塩酸との含有量は特に限定されるものではないが例えば、塩化第二鉄を5質量%以上50質量%以下の割合で含むことが好ましく、10質量%以上30質量%以下の割合で含むことがより好ましい。また、エッチング液は例えば、塩酸を1質量%以上50質量%以下の割合で含むことが好ましく、1質量%以上20質量%以下の割合で含むことがより好ましい。なお、残部については水とすることができる。
【0116】
エッチング液は室温で用いることもできるが、反応性を高めるため加温していることが好ましく、例えば40℃以上50℃以下に加熱して用いることが好ましい。
【0117】
図3に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は、図1(a)または図2(a)に示した導電性基板を2枚用いることにより形成することもできる。図1(a)の導電性基板を用いた場合を例に説明すると、図1(a)に示した導電性基板2枚についてそれぞれ、銅層12及び黒化層13を、X軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。そして、上記エッチング処理により各導電性基板に形成した線状のパターンが互いに交差するように向きをあわせて2枚の導電性基板を貼り合せることによりメッシュ状の配線を備えた導電性基板とすることができる。2枚の導電性基板を貼り合せる際に貼り合せる面は特に限定されるものではなく、図4(b)のように銅層12等が積層された図1(a)における面Aと、銅層12等が積層されていない図1(a)における面11bとを貼り合せてもよい。
【0118】
なお、黒化層は銅層表面のうち光の反射を特に抑制したい面に配置されていることが好ましい。このため、図4(b)に示した導電性基板において、図中下面側からの光の反射を抑制する必要がある場合には、黒化層32A、32Bの位置と、配線31A、31Bの位置とをそれぞれ逆に配置することが好ましい。また、黒化層32A、32Bに加えて、配線31Aと透明基材11Aとの間、および/または配線31Bと透明基材11Bとの間に黒化層をさらに設けてもよい。
【0119】
また、例えば透明基材11の銅層12等が積層されていない図1(a)における面11b同士を貼り合せて断面が図4(a)に示した構造となるように貼り合せてもよい。
【0120】
なお、図3図4に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板における配線の幅や、配線間の距離は特に限定されるものではなく、例えば、配線に流す電流量等に応じて選択することができる。
【0121】
また、図3図4においては、直線形状の配線を組み合わせてメッシュ状の配線(配線パターン)を形成した例を示しているが、係る形態に限定されるものではなく、配線パターンを構成する配線は任意の形状とすることができる。例えばディスプレイの画像との間でモアレ(干渉縞)が発生しないようメッシュ状の配線パターンを構成する配線の形状をそれぞれ、ぎざぎざに屈曲した線(ジグザグ直線)等の各種形状にすることもできる。
【0122】
このように2層の配線から構成されるメッシュ状の配線を有する導電性基板は、例えば投影型静電容量方式のタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。
【0123】
本実施形態の導電性基板においては、本実施形態のスパッタリング用ターゲットを用いて黒化層を形成することができる。このため、銅層と黒化層とがエッチング液に対してほぼ同じ反応性を示すことから、同時にエッチング処理を行うことができ、容易に所望の配線を形成することができる。また、黒化層は黒色であるため、銅層による光の反射を抑制することができ、例えばタッチパネル用の導電性基板とした場合に、視認性の低下を抑制することができる。
【実施例】
【0124】
以下に具体的な実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、以下の手順により合金の組成が46Cu−46Ni−8Moであるスパッタリング用合金ターゲットを熔解法により作製した。
【0125】
原料準備工程として、出発原料である構成成分の銅、ニッケル、モリブデンを準備した。
【0126】
まず、金属ニッケルを46原子%(5070g、42.3質量%)、金属銅を46原子%(5490g、45.7質量%)と金属モリブデンを8原子%(1441g、12質量%)になるように秤量した。なお、金属ニッケル、金属銅、金属モリブデンはいずれもボタン状鋳塊および板を用いた。
【0127】
次いで、ニッケル−モリブデン合金形成工程を実施した。
【0128】
原料準備工程で準備した金属ニッケルと金属モリブデンとをアルミナ坩堝に充填し、真空熔解炉(富士電波工業製)に設置した。そして、真空熔解炉内を真空にして1550℃まで加熱した。なお、加熱温度である1550℃は、目的とするニッケル−モリブデン合金の組成を確実に形成できるよう、相図から予め求めておいた。
【0129】
次に、銅−ニッケル−モリブデン合金形成工程を実施した。
【0130】
銅−ニッケル−モリブデン合金形成工程は、ニッケル−モリブデン合金形成工程で1550℃に到達後、1550℃で10分間保持して完全に溶解したことを確認した後に実施した。
【0131】
銅−ニッケル−モリブデン合金形成工程を開始するに当たってまず、ニッケル−モリブデン合金形成工程でニッケル−モリブデン合金を熔解させ、真空雰囲気に保たれた真空熔解炉内にArガスを入れて真空度が500Paになるように調整した。
【0132】
そして、その後、坩堝内に原料準備工程で用意した金属銅5490gを、熔解したニッケル−モリブデン合金が入った坩堝に4回に分けて投入した。
【0133】
次に、真空加熱工程を実施した。
【0134】
真空加熱工程ではまず、銅−ニッケル−モリブデン合金形成工程で、坩堝内に金属銅を投入して、銅が熔解した後、真空熔解炉内の真空引きを行って合金融体の脱ガスを行った。そして、脱ガス後、真空中で再度加熱して1550℃以上1650℃以下で10分間保持した。
【0135】
真空加熱工程の後、インゴット形成工程を実施した。
【0136】
インゴット形成工程では、カーボン製の鋳型(150×50×150mm)に、真空加熱工程を実施した、熔解した状態の銅−ニッケル−モリブデン合金を、アルゴンガス雰囲気中で流し込んでインゴット(150×50×110mm)を作製した。
【0137】
インゴット形成工程後、得られた銅−ニッケル−モリブデン合金のインゴットを室温まで冷却し、インゴットの表面をマイクロビッカース(松澤製機製 型式:DMH−1)で硬さを測定した。インゴットの表面の任意の5点測定し平均硬さは170Hvであることが確認できた。
【0138】
また、得られたインゴットについて、SEM-EDS(SEM:日本電子株式会社製 型式:JSM−7001F、EDS:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製 型式:検出器 UltraDry 解析システム NORAN System 7)の分析を行ったところ、モリブデンはニッケル中に固溶していることが確認できた。
【0139】
次に、得られたインゴットを用いてスパッタリング用合金ターゲットに加工する、ターゲット加工工程を実施した。
【0140】
得られたインゴットから110×60×50mmの板を切り出して、熱間(1000℃)で圧延を行って110×150×22mmに圧延した板を作製した。圧延パスは5回、加熱を繰り返して行った。
【0141】
圧延した板から直径75mm厚み6mmの円盤を切り出した。そして、円盤の表面を研削して平面を出してスパッタリング用合金ターゲットを得た。
【0142】
得られたスパッタリング用合金ターゲットは、スパッタリング装置に装着できるように銅製のバッキングプレートにIn(インジウム)の蝋剤を用いてボンディングしてターゲットとした。
【0143】
従って、図5に示した構造のターゲットが得られた。図5(a)は、作製したスパッタリング用合金ターゲットの、スパッタリング用合金ターゲット側の面から見た上面図を示している。図5(b)はA−A線での断面図を示している。
【0144】
図5(a)に示した様に、バッキングプレート51上にスパッタリング用合金ターゲット52が略同心円状に配置されている。そして、図5(b)に示すようにバッキングプレート51と、スパッタリング用合金ターゲット52との間にはインジウムの蝋剤によるボンディング層53が設けられている。
(導電性基板の作製)
作製したスパッタリング用合金ターゲットの性能を評価するため、黒化層を含む導電性基板を作製した。PET基板(ポリエチレンテレフタレート基板)上に、銅層と、酸素、銅、ニッケル及びモリブデンを含有する黒化層とを形成した導電性基板の試料を作製した。すなわち、図1(a)に示した導電性基板と同様の断面構造を有する導電性基板を作製した。
【0145】
まず、縦6cm、横6cm、厚さ0.05mmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET、商品名「ルミラーU48」、東レ株式会社製)製の透明基材11を準備した。
【0146】
次に、直流スパッタリング法により透明基材11の一方の面上に銅薄膜層である銅層12を膜厚が250nmとなるように成膜した。
【0147】
次に銅層12の透明基材11と対向する面とは反対側の面に黒化層13を成膜した。黒化層13の成膜はスパッタリング装置(アルバック株式会社製 型式:SIH−450)を用いて行った。
【0148】
スパッタリングの具体的な条件について以下に説明する。
【0149】
ターゲットとして、本実施例で作製したニッケルを46原子%と、銅を46原子%と、モリブデンを8原子%とを含有するスパッタリング用合金ターゲットを含むターゲットを用いた。
【0150】
スパッタリングを実施する前にチャンバー内を真空にし、その後、チャンバー内には酸素ガスとアルゴンガスとを供給しながらスパッタリングを行った。
【0151】
チャンバー内を真空とした時のチャンバー内の到達真空度は1.5×10−4Paとした。
【0152】
また、真空到達後、酸素ガスと、アルゴンガスとを供給する際の、酸素ガスと、アルゴンガスとの供給流量は、それぞれ6sccmと14sccmとし、合計で20sccmになるように供給しながらスパッタリングを行った。すなわち、チャンバー内に供給するガス中の酸素の含有割合は30体積%とした。
【0153】
そして、スパッタリングに印可するDCパワー200Wとし、膜厚が30nmとなるように黒化層を成膜し、導電性基板を作製した(試料1)。
【0154】
また、銅層まで同様にして作製した後、膜厚が35nmとなるようにスパッタ時間を変更した点以外は、試料1と同様にして導電性基板を作製した(試料2)。
(導電性基板の評価)
(1)黒化層の評価
得られた導電性基板の黒化層の光学特性を評価した。
【0155】
反射率の測定は、紫外可視分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 型式:U−4000)に反射率測定ユニットを設置して行った。
【0156】
測定に供した導電性基板は既述の様に断面形状が図1(a)と同様の構造を有している。そこで、作製した導電性基板の銅層及び黒化層を形成した側の図1(a)における表面Aに対して、入射角12°、受光角12°として、波長350nm以上780nm以下の範囲の光を照射した際の反射率を測定した。なお、測定に際しては波長350nm以上780nm以上の範囲で、波長を1nmごとに変化させた光を照射し、各波長についての反射率を測定した。
【0157】
そして、波長が350nm以上780nm以下の範囲の光に対する反射率の平均値を可視光平均反射率とした。また、波長が550nmの光に対する反射率の測定値を波長550nmの光に対する反射率とした。
【0158】
なお、測定の際にはPETフィルムの反りを矯正するためガラス基板上に試料を載置しクランプで固定して、黒化層側から光を照射して測定した。
【0159】
測定した反射率から、JIS Z8781−4:2013に準拠した色彩計算プログラムを用いて、光源A、視野2度の条件でCIE 1976(L,a,b)色空間上の座標を計算した。
【0160】
測定結果を表1に示す。表1から試料1、試料2の黒化層は共に、明度(L)は40以下と低いことが確認できた。また、試料1、試料2の黒化層は共に色度(a*、b*)の値が負となっており、黒化層は青黒い膜であることも確認できた。これらの結果から、試料1、試料2で形成した黒化層は、タッチパネル用の黒化層として十分使用可能であることが確認できた。
【0161】
【表1】
(2)溶解性試験
次いで、黒化層の溶解性試験を行った。
【0162】
溶解性試験の実施に当たっては、溶解性試験用の試料を準備した。
【0163】
導電性基板を作製した時と同じPETフィルム上に、銅層を設けずに、黒化層のみを形成した点、及び黒化層の膜厚を変えた点以外は導電性基板の試料1の場合と同様にして、溶解性試験用の試料を作製した。
【0164】
なお、溶解性試験用の試料において、黒化層は膜厚を300nmとしており、導電性基板の試料1を作製した場合と、膜厚以外は同じスパッタリング条件としている。
【0165】
溶解性試験は、エッチング液に、上記溶解性試験用試料を浸漬し、黒化層が完全に熔解するまでの時間により評価した。エッチング液としては、塩化第二鉄10重量%と、塩酸10重量%と、残部が水からなり、液温が20℃の水溶液を用いた。
【0166】
なお、溶解性試験の評価を規定するため、溶解性試験用試料を作製した時と同じPETフィルムの一方の面上の全面に、厚さ300nmの銅層を形成した試料を同じエッチング液に浸漬する予備実験を行った。この場合、銅層は10秒以内に溶解することが確認できた。このため、黒化層が1分以内に溶解した場合には、黒化層が、銅層と同等のエッチング性を有しているといえ、銅層と同時にエッチング処理を行うことができる黒化層を形成できているといえる。
【0167】
そして、上記溶解性試験用試料について、溶解性試験を行った結果、黒化層は1分以内に全量溶解し、良好なエッチング性を有していることが確認できた。
【0168】
以上の結果から、本実施例で作製したスパッタリング用合金ターゲットを用いて成膜した黒化層は、エッチング液に対して十分な反応性を示すことが確認できた。このため導電性基板として、銅層と黒化層とを積層して成膜した場合に、銅層と黒化層とを同時にエッチング処理できることが確認できた。
【符号の説明】
【0169】
52 スパッタリング用合金ターゲット
図1
図2
図3
図4
図5