(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
[電子受容性物質前駆体]
本発明の電子受容性物質前駆体は、下記式(1)で表されるスルホン酸エステル化合物からなるものである。なお、本発明において、電子受容性物質とは、電子輸送能及び成膜均一性を向上させるために用いられるものであり、電子受容性ドーパントと同義である。
【化2】
【0015】
式(1)中、R
1〜R
4は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基を表し、R
5は、置換されていてもよい炭素数2〜20の1価炭化水素基を表す。
【0016】
前記直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
【0017】
前記炭素数2〜20の1価炭化水素基としては、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基等のアリール基等が挙げられる。
【0018】
R
1〜R
4のうち、R
1又はR
3が、炭素数1〜3の直鎖アルキル基であり、残りが、水素原子であることが好ましい。更に、R
1が、炭素数1〜3の直鎖アルキル基であり、R
2〜R
4が、水素原子であることが好ましい。前記炭素数1〜3の直鎖アルキル基としては、メチル基が好ましい。また、R
5としては、炭素数2〜4の直鎖アルキル基又はフェニル基が好ましい。
【0019】
式(1)中、A
1は、−O−又は−S−を表すが、−O−が好ましい。A
2は、ナフタレン又はアントラセンから誘導される(n+1)価の基を表すが、ナフタレンから誘導される基が好ましい。A
3は、パーフルオロビフェニルから誘導されるm価の基を表す。
【0020】
式(1)中、mは、2≦m≦4を満たす整数を表すが、2が好ましい。nは、1≦n≦4を満たす整数を表すが、2が好ましい。
【0021】
式(1)で表されるスルホン酸エステル化合物は低極性溶媒を含む広範囲の溶媒に対して高溶解性を示すため、多種多様な溶媒を使用して溶液の物性を調製することが可能であり、塗布特性が高い。そのため、スルホン酸エステルの状態で塗布し、塗膜の乾燥時又は焼成時にスルホン酸を発生させることが好ましい。スルホン酸エステルからスルホン酸が発生する温度は、室温で安定、かつ、焼成温度以下であることが好ましいため、40〜260℃がよい。更に、ワニス内での高い安定性と焼成時の脱離の容易性を考慮すると、80〜230℃が好ましく、120〜180℃がより好ましい。
【0022】
式(1)で表されるスルホン酸エステル化合物は、電荷輸送機構の本体である電荷輸送性物質と一緒に有機溶媒に溶解又は分散させることで、電荷輸送性ワニスとすることができる。
【0023】
式(1)で表されるスルホン酸エステル化合物は、例えば、下記スキームAに示すように、式(1'')で表されるスルホン酸塩化合物とハロゲン化剤とを反応させて、下記式(1')で表されるスルホニルハライド化合物を合成し(以下、工程1ともいう。)、該スルホニルハライド化合物と式(2)で表されるグリコールエーテル類とを反応させる(以下、工程2ともいう。)ことで合成することができる。
【化3】
(式中、A
1〜A
3、R
1〜R
5、m及びnは、前記と同じ。M
+は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ピリジニウムイオン、4級アンモニウムイオン等の1価のカチオンを表す。Halは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を表す。)
【0024】
式(1'')で表されるスルホン酸塩化合物は、公知の方法に従って合成することができる。
【0025】
工程1において使用するハロゲン化剤としては、塩化チオニル、塩化オキサリル、オキシ塩化リン、塩化リン(V)等のハロゲン化剤が挙げられるが、塩化チオニルが好適である。ハロゲン化剤の使用量は、スルホン酸塩化合物に対して1倍モル以上であれば限定されないが、スルホン酸塩化合物に対して質量比で2〜10倍量用いることが好ましい。
【0026】
工程1において使用される反応溶媒としては、ハロゲン化剤と反応しない溶媒が好ましく、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素、ヘキサン、ヘプタン等を挙げることができるが、無溶媒が好適である。なお、無溶媒で反応を行う場合、反応終了時には均一系溶液となる量以上でハロゲン化剤を用いることが好ましい。反応温度は0〜150℃程度とすることができるが、20〜100℃、かつ、使用するハロゲン化剤の沸点以下が好ましい。反応終了後、一般的には、減圧濃縮等により得た粗生成物を次工程に用いる。
【0027】
式(2)で表されるグリコールエーテル類としては、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル等が好ましい。
【0028】
工程2においては、塩基を併用してもよい。使用可能な塩基としては、水素化ナトリウム、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等が挙げられるが、水素化ナトリウム、ピリジン、トリエチルアミンが好適である。塩基の使用量は、スルホニルハライド化合物(1')に対して1倍モル〜溶媒量が好適である。
【0029】
工程2において使用される反応溶媒としては、各種有機溶媒を用いることができるが、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン、クロロホルム、ピリジンが好適である。反応温度は特に限定されないが、0〜80℃が好適である。反応終了後、減圧濃縮、分液抽出、水洗、再沈殿、再結晶、クロマトグラフィー等の常法を用いて後処理、精製し、純粋なスルホン酸エステル化合物を得ることができる。なお、得られた純粋なスルホン酸エステル化合物に熱処理等を施すことで、高純度のスルホン酸化合物に導くこともできる。
【0030】
また、式(1)で表されるスルホン酸エステル化合物は、下記スキームBに示すように、式(1''')で表されるスルホン酸化合物から合成することもできる。なお、下記スキームにおいて、1段目及び2段目の反応で使用するハロゲン化剤、式(2)で表されるグリコールエーテル類、反応溶媒、及びその他の成分は、スキームAにおける工程1及び2と同様のものを使用することができる。
【化4】
(式中、A
1〜A
3、R
1〜R
5、m、n及びHalは、前記と同じ。)
【0031】
式(1''')で表されるスルホン酸化合物は、例えば、国際公開第2006/025342号に記載された方法に従って合成することができる。
【0032】
[電荷輸送性ワニス]
本発明の電荷輸送性ワニスは、式(1)で表される化合物からなる電子受容性物質前駆体、電荷輸送性物質、及び有機溶媒を含む。なお、本発明において、電荷輸送性とは導電性と同義である。電荷輸送性ワニスとは、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、それにより得られる固形膜が電荷輸送性を有するものでもよい。
【0033】
[電荷輸送性物質]
前記電荷輸送性物質としては、従来有機ELの分野で使用されているものを用いることができ、具体的には、アニリン誘導体、チオフェン誘導体、ピロール誘導体等の電荷輸送性オリゴマーが挙げられる。前記電荷輸送性オリゴマーの分子量は、通常200〜8,000であるが、電荷輸送性の高い薄膜を与えるワニスを調製する観点から、好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より一層好ましくは500以上であり、平坦性の高い薄膜を与える均一なワニスを調製する観点から、好ましくは6,000以下であり、より好ましくは5,000以下であり、より一層好ましくは4,000以下であり、更に好ましくは3,000以下である。
【0034】
前記電荷輸送性オリゴマーのうち、有機溶媒への溶解性と得られる薄膜の電荷輸送性のバランスとを考慮すると、アニリン誘導体が好ましい。アニリン誘導体としては、特開2002−151272号公報に記載のオリゴアニリン誘導体、国際公開第2004/105446号に記載のオリゴアニリン化合物、国際公開第2008/032617号に記載のオリゴアニリン化合物、国際公開第2008/032616号に記載のオリゴアニリン化合物、国際公開第2013/042623号に記載のアリールジアミン化合物、国際公開第2015/050253号、国際公開第2016/190326号に記載のアニリン誘導体等が挙げられる。
【0035】
前記アニリン誘導体としては、例えば式(D1)又は(D2)で表される化合物を用いることができる。
【0037】
式(D2)中、R
1a及びR
2aは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、又はハロゲン原子で置換されてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
【0038】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0039】
炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等の炭素数3〜20の環状アルキル基等が挙げられる。
【0040】
炭素数2〜20のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エテニル基、n−1−プロペニル基、n−2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、n−1−ブテニル基、n−2−ブテニル基、n−3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−エチルエテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、n−1−ペンテニル基、n−1−デセニル基、n−1−エイコセニル基等が挙げられる。
【0041】
炭素数2〜20のアルキニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エチニル基、n−1−プロピニル基、n−2−プロピニル基、n−1−ブチニル基、n−2−ブチニル基、n−3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、n−1−ペンチニル基、n−2−ペンチニル基、n−3−ペンチニル基、n−4−ペンチニル基、1−メチル−n−ブチニル基、2−メチル−n−ブチニル基、3−メチル−n−ブチニル基、1,1−ジメチル−n−プロピニル基、n−1−ヘキシニル基、n−1−デシニル基、n−1−ペンタデシニル基、n−1−エイコシニル基等が挙げられる。
【0042】
炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基等が挙げられる。
【0043】
炭素数2〜20のヘテロアリール基の具体例としては、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フラニル基、3−フラニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、4−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、2−チアゾリル基、4−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、4−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基等が挙げられる。
【0044】
これらの中でも、R
1a及びR
2aは、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子、フッ素原子がより一層好ましく、水素原子が最適である。
【0045】
前記式(D1)及び(D2)におけるPh
1は、式(P1)で表される基を表す。
【0047】
ここで、R
3a〜R
6aは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、又はハロゲン原子で置換されてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、これらの具体例としては、前記R
1a及びR
2aで説明したものと同様のものが挙げられる。
特に、R
3a〜R
6aとしては、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子、フッ素原子がより一層好ましく、水素原子が最適である。
【0048】
以下、Ph
1として好適な基の具体例を挙げるが、これに限定されるわけではない。
【0050】
前記式(D1)におけるAr
1は、互いに独立して、式(B1)〜(B11)のいずれかで表される基を表すが、特に、式(B1′)〜(B11′)のいずれかで表される基が好ましい。
【0053】
上記式(D1)におけるAr
2は、互いに独立して、式(G1)〜(G18)のいずれかで表される基を表す。
【0055】
式中、R
155aとしては、水素原子、Z
1aで置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基、Z
1aで置換されていてもよい炭素数2〜14のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、Z
1aで置換されていてもよいフェニル基、Z
1aで置換されていてもよい1−ナフチル基、Z
1aで置換されていてもよい2−ナフチル基、Z
1aで置換されていてもよい2−ピリジル基、Z
1aで置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよい3−ピリジル基、Z
1で置換されていてもよい4−ピリジル基がより好ましく、Z
1aで置換されていてもよいフェニル基がさらに好ましく、フェニル基または(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル)基が最適である。
【0056】
また、R
156aおよびR
157aとしては、Z
1aで置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基、Z
1aで置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよい炭素数2〜14のヘテロアリール基が好ましく、Z
1aで置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基がより好ましく、Z
1aで置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよいフェニル基、Z
1aで置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよい1−ナフチル基、Z
1で置換されていてもよい2−ナフチル基がより一層好ましい。
【0057】
上記式(D2)におけるAr
3は、式(I1)〜(I8)のいずれかで表される基を表すが、特に(I1′)〜(I8′)のいずれかで表される基が好ましい。
【0060】
ここで、R
7a〜R
27a、R
30a〜R
51a及びR
53a〜R
154aは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、又はハロゲン原子で置換されてもよい、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、R
28a及びR
29aは、互いに独立して、Z
1aで置換されてもよい、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、R
52aは、水素原子、又はZ
1aで置換されてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、Z
1aは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、又はZ
2aで置換されてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基を表し、Z
2aは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、又はZ
3aで置換されてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、Z
3aは、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を表し、これらハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数2〜20のヘテロアリール基の具体例としては、前記R
1a及びR
2aで説明したものと同様のものが挙げられる。
【0061】
特に、R
7a〜R
27a、R
30a〜R
51a及びR
53a〜R
154aとしては、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいジフェニルアミノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子、フッ素原子がより一層好ましく、水素原子が最適である。
また、R
28a及びR
29aとしては、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基が好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいナフチル基がより好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより一層好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
そして、R
52aとしては、水素原子、Z
1aで置換されてもよい炭素数6〜20のアリール基が好ましく、水素原子、Z
1aで置換されてもよいフェニル基、Z
1aで置換されてもよいナフチル基がより好ましく、Z
1aで置換されてもよいフェニル基がより一層好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0062】
また、Ar
4は、互いに独立して、ジ(炭素数6〜20のアリール)アミノ基で置換されてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。
炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、R
1a及びR
2aで説明したものと同様のものが挙げられ、ジ(炭素数6〜20のアリール)アミノ基の具体例としては、ジフェニルアミノ基、1−ナフチルフェニルアミノ基、ジ(1−ナフチル)アミノ基、1−ナフチル−2−ナフチルアミノ基、ジ(2−ナフチル)アミノ基等が挙げられる。
Ar
4としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、p−(ジフェニルアミノ)フェニル基、p−(1−ナフチルフェニルアミノ)フェニル基、p−(ジ(1−ナフチル)アミノ)フェニル基、p−(1−ナフチル−2−ナフチルアミノ)フェニル基、p−(ジ(2−ナフチル)アミノ)フェニル基が好ましく、p−(ジフェニルアミノ)フェニル基がより好ましい。
【0063】
また、前記式(D1)におけるpは、1〜10の整数を表すが、有機溶媒に対する溶解性を高める観点から、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1又は2がより一層好ましく、1が最適である。
前記式(D2)におけるqは、1又は2を表す。
【0064】
更に、アニリン誘導体は、例えば下記式(D3)で表されるフッ素原子含有オリゴアニリン誘導体を用いることもできる。
【化13】
【0065】
式中、R
1bは、水素原子、又はZ
bで置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。Z
bは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基、カルボキシル基、Z
b'で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基又はZ
b'で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、Z
b'は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基又はカルボキシル基を表す。
【0066】
R
2b〜R
10bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
【0067】
ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数2〜20のヘテロアリール基の具体例としては、前記で例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0068】
これらのうち、R
1bとしては、オリゴアニリン誘導体の有機溶媒への溶解性を考慮すると、水素原子、又はZ
bで置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、水素原子、又はZ
bで置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子が最適である。なお、複数のR
1bは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0069】
R
1bが水素原子である場合、アリールスルホン酸、ヘテロポリ酸等のプロトン酸等のドーパントとともに用いた場合に、特に優れた電荷輸送性を実現できる。
【0070】
また、これらのうち、R
2b〜R
10bとしては、オリゴアニリン誘導体の有機溶媒への溶解性を考慮すると、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、オリゴアニリン誘導体の有機溶媒への溶解性と電荷輸送性とのバランスを考慮すると、水素原子が最適である。なお、複数のR
2b〜R
5bは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0071】
式(D3)中、A’は、シアノ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基若しくは炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよい、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数3〜20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4〜20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2〜20のフルオロアルケニル基若しくは炭素数2〜20のフルオロアルキニル基;シアノ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基若しくは炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよい、炭素数6〜20のフルオロアリール基;炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数3〜20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4〜20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2〜20のフルオロアルケニル基若しくは炭素数2〜20のフルオロアルキニル基で置換されるとともに、シアノ基、ハロゲン原子若しくは炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基;シアノ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数3〜20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4〜20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2〜20のフルオロアルケニル基若しくは炭素数2〜20のフルオロアルキニル基で置換されていてもよい、炭素数7〜20のフルオロアラルキル基;又は炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数3〜20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4〜20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2〜20のフルオロアルケニル基若しくは炭素数2〜20のフルオロアルキニル基で置換されるとともに、シアノ基、ハロゲン原子若しくは炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよい、炭素数7〜20のアラルキル基を表す。
【0072】
前記フルオロアルキル基は、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基であれば特に限定されないが、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1−フルオロエチル基、2−フルオロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、1,1,2−トリフルオロエチル基、1,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、1−フルオロプロピル基、2−フルオロプロピル基、3−フルオロプロピル基、1,1−ジフルオロプロピル基、1,2−ジフルオロプロピル基、1,3−ジフルオロプロピル基、2,2−ジフルオロプロピル基、2,3−ジフルオロプロピル基、3,3−ジフルオロプロピル基、1,1,2−トリフルオロプロピル基、1,1,3−トリフルオロプロピル基、1,2,3−トリフルオロプロピル基、1,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3−トリフルオロプロピル基、2,3,3−トリフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、1,1,2,2−テトラフルオロプロピル基、1,1,2,3−テトラフルオロプロピル基、1,2,2,3−テトラフルオロプロピル基、1,3,3,3−テトラフルオロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、2,3,3,3−テトラフルオロプロピル基、1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロピル基、1,2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0073】
前記フルオロシクロアルキル基は、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたシクロアルキル基であれば特に限定されないが、例えば、1−フルオロシクロプロピル基、2−フルオロシクロプロピル基、2,2−ジフルオロシクロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、ペンタフルオロシクロプロピル基、2,2−ジフルオロシクロブチル基、2,2,3,3−テトラフルオロシクロブチル基、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロシクロブチル基、ヘプタフルオロシクロブチル基、1−フルオロシクロペンチル基、3−フルオロシクロペンチル基、3,3−ジフルオロシクロペンチル基、3,3,4,4−テトラフルオロシクロペンチル基、ノナフルオロシクロペンチル基、1−フルオロシクロヘキシル基、2−フルオロシクロヘキシル基、4−フルオロシクロヘキシル基、4,4−ジフルオロシクロヘキシル基、2,2,3,3−テトラフルオロシクロヘキシル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロシクロヘキシル基、ウンデカフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0074】
前記フルオロビシクロアルキル基は、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたビシクロアルキル基であれば特に限定されないが、例えば、3−フルオロビシクロ[1.1.0]ブタン−1−イル基、2,2,4,4−テトラフルオロビシクロ[1.1.0]ブタン−1−イル基、ペンタフルオロビシクロ[1.1.0]ブタン−1−イル基、3−フルオロビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イル基、2,2,4,4,5−ペンタフルオロビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−イル基、2,2,4,4,5,5−ヘキサフルオロビシクロ[1.1.1]ぺンタン−1−イル基、5−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−イル基、6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−イル基、6,6−ジフルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−イル基、2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロビシクロ[2.2.0]ヘキサン−1−イル基、1−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、3−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、4−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−イル基、5−フルオロビシクロ[3.1.1]ヘプタン−1−イル基、1,3,3,4,5,5,6,6,7,7−デカフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、ウンデカフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、3−フルオロビシクロ[2.2.2]オクタン−1−イル基、4−フルオロビシクロ[2.2.2]オクタン−1−イル基等が挙げられる。
【0075】
前記フルオロアルケニル基は、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルケニル基であれば特に限定されないが、例えば、1−フルオロエテニル基、2−フルオロエテニル基、1,2−ジフルオロエテニル基、1,2,2−トリフルオロエテニル基、2,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル基、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル基、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペニル基、ペンタフルオロ−1−プロペニル基、1−フルオロ−2−プロペニル基、1,1−ジフルオロ−2−プロペニル基、2,3−ジフルオロ−2−プロペニル基、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル基、2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル基、1,2,3,3−テトラフルオロ−2−プロペニル基、ペンタフルオロ−2−プロペニル基等が挙げられる。
【0076】
前記フルオロアルキニル基は、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキニル基であれば特に限定されないが、例えば、フルオロエチニル基、3−フルオロ−1−プロピニル基、3,3−ジフルオロ−1−プロピニル基、3,3,3−トリフルオロ−1−プロピニル基、1−フルオロ−2−プロピニル基、1,1−ジフルオロ−2−プロピニル基等が挙げられる。
【0077】
前記フルオロアリール基は、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアリール基であれば特に限定されないが、例えば、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,3,4−トリフルオロフェニル基、2,3,5−トリフルオロフェニル基、2,3,6−トリフルオロフェニル基、2,4,5−トリフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基、2,3,4,5−テトラフルオロフェニル基、2,3,4,6−テトラフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−フルオロ−1−ナフチル基、3−フルオロ−1−ナフチル基、4−フルオロ−1−ナフチル基、6−フルオロ−1−ナフチル基、7−フルオロ−1−ナフチル基、8−フルオロ−1−ナフチル基、4,5−ジフルオロ−1−ナフチル基、5,7−ジフルオロ−1−ナフチル基、5,8−ジフルオロ−1−ナフチル基、5,6,7,8−テトラフルオロ−1−ナフチル基、ヘプタフルオロ−1−ナフチル基、1−フルオロ−2−ナフチル基、5−フルオロ−2−ナフチル基、6−フルオロ−2−ナフチル基、7−フルオロ−2−ナフチル基、5,7−ジフルオロ−2−ナフチル基、ヘプタフルオロ−2−ナフチル基等が挙げられる。
【0078】
前記フルオロアリール基としては、オリゴアニリン誘導体の有機溶媒への溶解性、オリゴアニリン誘導体の電荷輸送性、オリゴアニリン誘導体の原料の入手容易性等のバランスを考慮すると、シアノ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基若しくは炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよい、3以上のフッ素原子で置換されたフェニル基が好ましい。
【0079】
前記フルオロアルコキシ基としては、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルコキシ基であれば特に限定されないが、例えば、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、1−フルオロエトキシ基、2−フルオロエトキシ基、1,2−ジフルオロエトキシ基、1,1−ジフルオロエトキシ基、2,2−ジフルオロエトキシ基、1,1,2−トリフルオロエトキシ基、1,2,2−トリフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基、1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエトキシ基、1−フルオロプロポキシ基、2−フルオロプロポキシ基、3−フルオロプロポキシ基、1,1−ジフルオロプロポキシ基、1,2−ジフルオロプロポキシ基、1,3−ジフルオロプロポキシ基、2,2−ジフルオロプロポキシ基、2,3−ジフルオロプロポキシ基、3,3−ジフルオロプロポキシ基、1,1,2−トリフルオロプロポキシ基、1,1,3−トリフルオロプロポキシ基、1,2,3−トリフルオロプロポキシ基、1,3,3−トリフルオロプロポキシ基、2,2,3−トリフルオロプロポキシ基、2,3,3−トリフルオロプロポキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基、1,1,2,2−テトラフルオロプロポキシ基、1,1,2,3−テトラフルオロプロポキシ基、1,2,2,3−テトラフルオロプロポキシ基、1,3,3,3−テトラフルオロプロポキシ基、2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ基、2,3,3,3−テトラフルオロプロポキシ基、1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロポキシ基、1,2,2,3,3−ペンタフルオロプロポキシ基、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロポキシ基、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロポキシ基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロポキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基等が挙げられる。
【0080】
前記炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数3〜20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4〜20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2〜20のフルオロアルケニル基若しくは炭素数2〜20のフルオロアルキニル基で置換されるとともに、シアノ基、ハロゲン原子若しくは炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基(以下、便宜上、置換されたアリール基ともいう)としては、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数3〜20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4〜20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2〜20のフルオロアルケニル基又は炭素数2〜20のフルオロアルキニル基で置換されたアリール基である限り特に限定されないが、例えば、2−(トリフルオロメチル)フェニル基、3−(トリフルオロメチル)フェニル基、4−(トリフルオロメチル)フェニル基、4−エトキシ−3−(トリフルオロメチル)フェニル基、3−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル基、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル基、4−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)フェニル基、2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル基、3−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4,6−トリ(トリフルオロメチル)フェニル基、4−(ペンタフルオロエチル)フェニル基、4−(3,3,3−トリフルオロプロピル)フェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル基、4−(パーフルオロビニル)フェニル基、4−(パーフルオロプロペニル)フェニル基、4−(パーフルオロブテニル)フェニル基等が挙げられる。
【0081】
前記置換されたアリール基としては、オリゴアニリン誘導体の有機溶媒への溶解性、オリゴアニリン誘導体の電荷輸送性、オリゴアニリン誘導体の原料の入手容易性等のバランスを考慮すると、炭素数3〜20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4〜20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2〜20のフルオロアルケニル基若しくは炭素数2〜20のフルオロアルキニル基で置換されるとともに、シアノ基、ハロゲン原子若しくは炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基(以下、便宜上、置換されたフェニル基ともいう)が好ましく、1〜3個のトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基がより好ましく、p−トリフルオロメチルフェニル基がより一層好ましい。
【0082】
前記フルオロアラルキル基としては、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアラルキル基である限り特に限定されないが、例えば、2−フルオロベンジル基、3−フルオロベンジル基、4−フルオロベンジル基、2,3−ジフルオロベンジル基、2,4−ジフルオロベンジル基、2,5−ジフルオロベンジル基、2,6−ジフルオロベンジル基、3,4−ジフルオロベンジル基、3,5−ジフルオロベンジル基、2,3,4−トリフルオロベンジル基、2,3,5−トリフルオロベンジル基、2,3,6−トリフルオロベンジル基、2,4,5−トリフルオロベンジル基、2,4,6−トリフルオロベンジル基、2,3,4,5−テトラフルオロベンジル基、2,3,4,6−テトラフルオロベンジル基、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル基等が挙げられる。
【0083】
前記炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数3〜20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4〜20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2〜20のフルオロアルケニル基若しくは炭素数2〜20のフルオロアルキニル基で置換されるとともに、シアノ基、ハロゲン原子若しくは炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよい、炭素数7〜20のアラルキル基としては、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数3〜20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4〜20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2〜20のフルオロアルケニル基又は炭素数2〜20のフルオロアルキニル基で置換されたアラルキル基である限り特に限定されないが、2−トリフルオロメチルベンジル基、3−トリフルオロメチルベンジル基、4−トリフルオロメチルベンジル基、2,4−ジ(トリフルオロメチル)ベンジル基、2,5−ジ(トリフルオロメチル)ベンジル基、2,6−ジ(トリフルオロメチル)ベンジル基、3,5−ジ(トリフルオロメチル)ベンジル基、2,4,6−トリ(トリフルオロメチル)ベンジル基等が挙げられる。
【0084】
これらの中でも、A’は、前記置換されていてもよい炭素数1〜20のフルオロアルキル基、前記置換されていてもよい炭素数6〜20のフルオロアリール基又は前記置換されたアリール基が好ましく、前記置換されていてもよい炭素数6〜20のフルオロアリール基又は前記置換されたアリール基がより好ましく、前記置換されていてもよいフルオロフェニル基又は前記置換されたフェニル基がより一層好ましく、前記置換されていてもよいトリフルオロフェニル基、前記置換されていてもよいテトラフルオロフェニル基、前記置換されていてもよいペンタフルオロフェニル基又は1〜3個のトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基が更に好ましい。
【0085】
また、rは、1〜20の整数であるが、オリゴアニリン誘導体の溶媒に対する溶解性の観点から、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、5以下がより一層好ましく、4以下が更に好ましい。また、オリゴアニリン誘導体の電荷輸送性を高める観点から、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、溶解性と電荷輸送性のバランスを考慮すると、3が最適である。
【0086】
また、下記式(3)で表されるアニリン誘導体も好適に使用できる。
【化14】
【0087】
式(3)中、X
1は、−NY
1−、−O−、−S−、−(CR
107R
108)
L−又は単結合を表すが、k
1又はk
2が0であるときは、−NY
1−を表す。
【0088】
Y
1は、それぞれ独立に、水素原子、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基若しくは炭素数2〜20のアルキニル基、又はZ
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
【0089】
炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数2〜20のヘテロアリール基の具体例としては、前記で例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0090】
R
107及びR
108は、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基、カルボン酸基、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基若しくは炭素数2〜20のアルキニル基、Z
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリール基、又は−NHY
2、−NY
3Y
4、−C(O)Y
5、−OY
6、−SY
7、−SO
3Y
8、−C(O)OY
9、−OC(O)Y
10、−C(O)NHY
11若しくは−C(O)NY
12Y
13基を表す。
【0091】
Y
2〜Y
13は、それぞれ独立に、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基若しくは炭素数2〜20のアルキニル基、又はZ
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
【0092】
Z
1は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基、カルボン酸基、又はZ
3で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
【0093】
Z
2は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基、カルボン酸基、又はZ
3で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基若しくは炭素数2〜20のアルキニル基を表す。
【0094】
Z
3は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基、又はカルボン酸基を表す。
【0095】
R
107、R
108及びY
2〜Y
13のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びヘテロアリール基としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0096】
これらの中でも、R
107及びR
108としては、水素原子又はZ
1で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、水素原子又はZ
1で置換されていてもよいメチル基がより好ましく、ともに水素原子が最適である。
【0097】
Lは、−(CR
107R
108)−で表される2価の基の数を表し、1〜20の整数であるが、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜2がより一層好ましく、1が最適である。なお、Lが2以上である場合、複数のR
107は、互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR
108も、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0098】
とりわけ、X
1としては、−NY
1−又は単結合が好ましい。また、Y
1としては、水素原子又はZ
1で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、水素原子又はZ
1で置換されていてもよいメチル基がより好ましく、水素原子が最適である。
【0099】
式(3)中、R
101〜R
106は、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基、カルボン酸基、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基若しくは炭素数2〜20のアルキニル基、Z
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリール基、又は−NHY
2、−NY
3Y
4、−C(O)Y
5、−OY
6、−SY
7、−SO
3Y
8、−C(O)OY
9、−OC(O)Y
10、−C(O)NHY
11若しくは−C(O)NY
12Y
13を表す(Y
2〜Y
13は、前記と同じ意味を表す。)。これらアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びヘテロアリール基としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0100】
特に、式(3)において、R
101〜R
104としては、水素原子、ハロゲン原子、Z
1で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又はZ
2で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基が好ましく、水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、全て水素原子が最適である。
【0101】
また、R
105及びR
106としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、Z
1で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、Z
2で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基、又はZ
2で置換されていてもよいジフェニルアミノ基(Y
3及びY
4がZ
2で置換されていてもよいフェニル基である−NY
3Y
4基)が好ましく、水素原子、又はジフェニルアミノ基がより好ましく、同時に水素原子又はジフェニルアミノ基がより一層好ましい。
【0102】
これらの中でも、R
101〜R
104が水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、R
105及びR
106が水素原子又はジフェニルアミノ基、X
1が−NY
1−又は単結合、かつ、Y
1が水素原子又はメチル基の組み合わせが好ましく、R
101〜R
104が水素原子、R
105及びR
106が同時に水素原子又はジフェニルアミノ基、X
1が−NH−又は単結合の組み合わせがより好ましい。
【0103】
式(3)において、k
1及びk
2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表し、1≦k
1+k
2≦20を満たすが、得られる薄膜の電荷輸送性とアニリン誘導体の溶解性とのバランスを考慮すると、2≦k
1+k
2≦8を満たすことが好ましく、2≦k
1+k
2≦6を満たすことがより好ましく、2≦k
1+k
2≦4を満たすことがより一層好ましい。
【0104】
Y
1〜Y
13及びR
101〜R
108において、Z
1は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はZ
3で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基が好ましく、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はZ
3で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換であること)が最適である。
【0105】
Z
2は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はZ
3で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はZ
3で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換であること)が最適である。
【0106】
Z
3は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換であること)が最適である。
【0107】
Y
1〜Y
13及びR
101〜R
108においては、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基の炭素数は、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下であり、より一層好ましくは4以下である。また、アリール基及びヘテロアリール基の炭素数は、好ましくは14以下であり、より好ましくは10以下であり、より一層好ましくは6以下である。
【0108】
なお、前記アニリン誘導体の合成法としては、特に限定されないが、Bulletin of Chemical Society of Japan, 67, pp. 1749-1752 (1994)、Synthetic Metals, 84, pp. 119-120 (1997)、Thin Solid Films, 520(24), pp. 7157-7163 (2012)、国際公開第2008/032617号、国際公開第2008/032616号、国際公開第2008/129947号、国際公開第2013/084664号等に記載の方法が挙げられる。
【0109】
式(3)で表されるアニリン誘導体の具体例として、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、DPAはジフェニルアミノ基を表し、Phはフェニル基を表し、TPAはp−(ジフェニルアミノ)フェニル基を表す。
【0112】
[有機溶媒]
本発明の電荷輸送性ワニスを調製する際に用いられる有機溶媒としては、前記アニリン誘導体及び前記スルホン酸エステル化合物を良好に溶解し得る高溶解性溶媒を用いることができる。エステル化されていないスルホン酸化合物を溶解させるためには、少なくとも1種の高極性溶媒を含有させることが必要であるのに対し、前記スルホン酸エステル化合物は溶媒の極性を問わず、溶媒中に溶解することが可能である。本発明において、低極性溶媒とは周波数100kHzでの比誘電率が7未満のものを、高極性溶媒とは周波数100kHzでの比誘電率が7以上のものと定義する。
【0113】
低極性溶媒としては、
例えば、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系溶媒;
トルエン、キシレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、デシルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、
1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール等の脂肪族アルコール系溶媒;
テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、4−メトキシトルエン、3−フェノキシトルエン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;
安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸イソアミル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、マレイン酸ジブチル、しゅう酸ジブチル、酢酸ヘキシル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒
等が挙げられる。
また、高極性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系溶媒;
エチルメチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;
アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等のシアノ系溶媒;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール等の多価アルコール系溶媒;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、3−フェノキシベンジルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等の脂肪族アルコール以外の1価アルコール系溶媒;
ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒
が挙げられる。これらの溶媒は、用途に応じて、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0114】
なお、電荷輸送性物質は、いずれも前記溶媒に完全に溶解しているか、均一に分散している状態となっていることが好ましく、完全に溶解していることがより好ましい。
【0115】
本発明においては、電荷輸送性ワニスは、より平坦性の高い薄膜を再現性よく得る観点から、電荷輸送性物質を有機溶媒に溶解させた後、サブマイクロオーダーのフィルター等を用いてろ過することが望ましい。
【0116】
本発明のワニス中の固形分濃度は、電荷輸送性物質の析出を抑制しつつ十分な膜厚を確保する観点から、通常0.1〜20質量%程度、好ましくは0.5〜10質量%である。なお、ここでいう固形分とは、ワニスに含まれる成分から溶媒を除いて残る成分を意味する。本発明のワニスの粘度は、通常、25℃で1〜50mPa・sである。
【0117】
また、前記固形分中、電子受容性物質前駆体の含有量は、モル比で、電荷輸送性物質1に対して、好ましくは0.01〜20程度、より好ましくは0.05〜15程度である。
【0118】
[電荷輸送性薄膜]
本発明の電荷輸送性ワニスを基材上に塗布して乾燥させることで、基材上に電荷輸送性薄膜を形成させることができる。
【0119】
ワニスの塗布方法としては、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法、スリットコート法等が挙げられるが、これらに限定されない。塗布方法に応じて、ワニスの粘度及び表面張力を調節することが好ましい。
【0120】
また、本発明のワニスを用いる場合、液膜の乾燥条件も特に限定されないが、例えばホットプレートを用いた加熱焼成がある。通常100〜260℃程度の範囲内で1分間〜1時間程度の加熱焼成により、乾燥膜が得られる。なお、焼成雰囲気も特に限定されない。
【0121】
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子の機能層として用いる場合、5〜200nmが好ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の溶液量を変化させたりする等の方法がある。
【0122】
[有機EL素子]
本発明の有機EL素子は、一対の電極を有し、これら電極の間に、前述した本発明の電荷輸送性薄膜を備えるものである。
【0123】
有機EL素子の代表的な構成としては、下記(a)〜(f)が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記構成において、必要に応じて、発光層と陽極の間に電子ブロック層等を、発光層と陰極の間に正孔(ホール)ブロック層等を設けることもできる。また、正孔注入層、正孔輸送層あるいは正孔注入輸送層が電子ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよく、電子注入層、電子輸送層あるいは電子注入輸送層が正孔ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよい。
(a)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(b)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(c)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(d)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(f)陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極
【0124】
「正孔注入層」、「正孔輸送層」及び「正孔注入輸送層」とは、発光層と陽極との間に形成される層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有するものである。発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「正孔注入輸送層」であり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陽極に近い層が「正孔注入層」であり、それ以外の層が「正孔輸送層」である。特に、正孔注入層及び正孔注入輸送層は、陽極からの正孔受容性だけでなく、それぞれ正孔輸送層及び発光層への正孔注入性にも優れる薄膜が用いられる。
【0125】
「電子注入層」、「電子輸送層」及び「電子注入輸送層」とは、発光層と陰極との間に形成される層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有するものである。発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「電子注入輸送層」であり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陰極に近い層が「電子注入層」であり、それ以外の層が「電子輸送層」である。
【0126】
「発光層」とは、発光機能を有する有機層であって、ドーピングシステムを採用する場合、ホスト材料とドーパント材料とを含んでいる。このとき、ホスト材料は、主に電子と正孔の再結合を促し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有し、ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光させる機能を有する。燐光素子の場合、ホスト材料は主にドーパントで生成された励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
【0127】
本発明の電荷輸送性ワニスを用いて有機EL素子を作製する場合の使用材料や作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
使用する電極基板は、洗剤、アルコール、純水等による液体洗浄をあらかじめ行って浄化しておくことが好ましく、例えば、陽極基板では使用直前にUVオゾン処理、酸素−プラズマ処理等の表面処理を行うことが好ましい。ただし、陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理を行わなくともよい。
【0129】
本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜が正孔注入層である場合の、本発明の有機EL素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。
【0130】
前述の方法により、陽極基板上に本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して焼成し、電極上に正孔注入層を作製する。この正孔注入層の上に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極をこの順で設ける。正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層は、用いる材料の特性等に応じて、蒸着法又は塗布法(ウェットプロセス)のいずれかで形成すればよい。
【0131】
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極や、アルミニウムに代表される金属やこれらの合金等から構成される金属陽極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
【0132】
なお、金属陽極を構成するその他の金属としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、インジウム、スカンジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ハフニウム、タリウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、チタン、鉛、ビスマスやこれらの合金等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン(α−NPD)、N,N'−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−2,2'−ジメチルベンジジン、2,2',7,7'−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン、9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ビフェニル−4−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ナフタレン−2−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(N−ナフタレン−1−イル−N−フェニルアミノ)−フェニル]−9H−フルオレン、2,2',7,7'−テトラキス[N−ナフタレニル(フェニル)−アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、N,N'−ビス(フェナントレン−9−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン、2,2'−ビス[N,N−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、2,2'−ビス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン、ジ−[4−(N,N−ジ(p−トリル)アミノ)−フェニル]シクロヘキサン、2,2',7,7'−テトラ(N,N−ジ(p−トリル)アミノ)−9,9−スピロビフルオレン、N,N,N',N'−テトラ−ナフタレン−2−イル−ベンジジン、N,N,N',N'−テトラ−(3−メチルフェニル)−3,3'−ジメチルベンジジン、N,N'−ジ(ナフタレニル)−N,N'−ジ(ナフタレン−2−イル)−ベンジジン、N,N,N',N'−テトラ(ナフタレニル)−ベンジジン、N,N'−ジ(ナフタレン−2−イル)−N,N'−ジフェニルベンジジン−1,4−ジアミン、N
1,N
4−ジフェニル−N
1,N
4−ジ(m−トリル)ベンゼン−1,4−ジアミン、N
2,N
2,N
6,N
6−テトラフェニルナフタレン−2,6−ジアミン、トリス(4−(キノリン−8−イル)フェニル)アミン、2,2'−ビス(3−(N,N−ジ(p−トリル)アミノ)フェニル)ビフェニル、4,4',4''−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4',4''−トリス[1−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)等のトリアリールアミン類、5,5''−ビス−{4−[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−2,2':5',2''−ターチオフェン(BMA−3T)等のオリゴチオフェン類等の正孔輸送性低分子材料等が挙げられる。
【0134】
発光層を形成する材料としては、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq
3)、ビス(8−キノリノラート)亜鉛(II)(Znq
2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)−4−(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、4,4'−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2−tert−ブチル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2,7−ビス[9,9−ジ(4−メチルフェニル)−フルオレン−2−イル]−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン、2−メチル−9,10−ビス(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2−(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2,7−ビス(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2−[9,9−ジ(4−メチルフェニル)−フルオレン−2−イル]−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン、2,2'−ジピレニル−9,9−スピロビフルオレン、1,3,5−トリス(ピレン−1−イル)ベンゼン、9,9−ビス[4−(ピレニル)フェニル]−9H−フルオレン、2,2'−ビ(9,10−ジフェニルアントラセン)、2,7−ジピレニル−9,9−スピロビフルオレン、1,4−ジ(ピレン−1−イル)ベンゼン、1,3−ジ(ピレン−1−イル)ベンゼン、6,13−ジ(ビフェニル−4−イル)ペンタセン、3,9−ジ(ナフタレン−2−イル)ペリレン、3,10−ジ(ナフタレン−2−イル)ペリレン、トリス[4−(ピレニル)−フェニル]アミン、10,10'−ジ(ビフェニル−4−イル)−9,9'−ビアントラセン、N,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−[1,1':4',1'':4'',1'''−クォーターフェニル]−4,4'''−ジアミン、4,4'−ジ[10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル]ビフェニル、ジベンゾ{[f,f']−4,4',7,7'−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1',2',3'−lm]ペリレン、1−(7−(9,9'−ビアントラセン−10−イル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)ピレン、1−(7−(9,9'−ビアントラセン−10−イル)−9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン−2−イル)ピレン、1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン、1,3,5−トリス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン、4,4',4''−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン、4,4'−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、4,4'−ビス(カルバゾール−9−イル)−2,2'−ジメチルビフェニル、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジメチルフルオレン、2,2',7,7'−テトラキス(カルバゾール−9−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジ(p−トリル)フルオレン、9,9−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)−フェニル]フルオレン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−スピロビフルオレン、1,4−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、ビス(4−N,N−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−4−メチルフェニルメタン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン、4,4''−ジ(トリフェニルシリル)−p−ターフェニル、4,4'−ジ(トリフェニルシリル)ビフェニル、9−(4−tert−ブチルフェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)−9H−カルバゾール、9−(4−tert−ブチルフェニル)−3,6−ジトリチル−9H−カルバゾール、9−(4−tert−ブチルフェニル)−3,6−ビス(9−(4−メトキシフェニル)−9H−フルオレン−9−イル)−9H−カルバゾール、2,6−ビス(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ピリジン、トリフェニル(4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル)シラン、9,9−ジメチル−N,N−ジフェニル−7−(4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル)−9H−フルオレン−2−アミン、3,5−ビス(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ピリジン、9,9−スピロビフルオレン−2−イル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、9,9'−(5−(トリフェニルシリル)−1,3−フェニレン)ビス(9H−カルバゾール)、3−(2,7−ビス(ジフェニルホスホリル)−9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)−9−フェニル−9H−カルバゾール、4,4,8,8,12,12−ヘキサ(p−トリル)−4H−8H−12H−12C−アザジベンゾ[cd,mn]ピレン、4,7−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)−1,10−フェナントロリン、2,2'−ビス(4−(カルバゾール−9−イル)フェニル)ビフェニル、2,8−ビス(ジフェニルホスホリル)ジベンゾ[b,d]チオフェン、ビス(2−メチルフェニル)ジフェニルシラン、ビス[3,5−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジフェニルシラン、3,6−ビス(カルバゾール−9−イル)−9−(2−エチル−ヘキシル)−9H−カルバゾール、3−(ジフェニルホスホリル)−9−(4−(ジフェニルホスホリル)フェニル)−9H−カルバゾール、3,6−ビス[(3,5−ジフェニル)フェニル]−9−フェニルカルバゾール等が挙げられる。これらの材料と発光性ドーパントとを共蒸着することによって、発光層を形成してもよい。
【0135】
発光性ドーパントとしては、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−10−(2−ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1gh]クマリン、キナクリドン、N,N'−ジメチル−キナクリドン、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)
3)、ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(Ir(ppy)
2(acac))、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(III)(Ir(mppy)
3)、9,10−ビス[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]アントラセン、9,10−ビス[フェニル(m−トリル)アミノ]アントラセン、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(II)、N
10,N
10,N
10,N
10−テトラ(p−トリル)−9,9'−ビアントラセン−10,10'−ジアミン、N
10,N
10,N
10,N
10−テトラフェニル−9,9'−ビアントラセン−10,10'−ジアミン、N
10,N
10−ジフェニル−N
10,N
10−ジナフタレニル−9,9'−ビアントラセン−10,10'−ジアミン、4,4'−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1'−ビフェニル、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン、1,4−ビス[2−(3−N−エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン、4,4'−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]ビフェニル、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4'−[(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、ビス[3,5−ジフルオロ−2−(2−ピリジル)フェニル−(2−カルボキシピリジル)]イリジウム(III)、4,4'−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]ビフェニル、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジナト)テトラキス(1−ピラゾリル)ボレートイリジウム(III)、N,N'−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−トリス(9,9−ジメチルフルオレニレン)、2,7−ビス{2−[フェニル(m−トリル)アミノ]−9,9−ジメチル−フルオレン−7−イル}−9,9−ジメチル−フルオレン、N−(4−((E)−2−(6((E)−4−(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン−2−イル)ビニル)フェニル)−N−フェニルベンゼンアミン、fac−イリジウム(III)トリス(1−フェニル−3−メチルベンズイミダゾリン−2−イリデン−C,C
2)、mer−イリジウム(III)トリス(1−フェニル−3−メチルベンズイミダゾリン−2−イリデン−C,C
2)、2,7−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]−9,9−スピロビフルオレン、6−メチル−2−(4−(9−(4−(6−メチルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル)アントラセン−10−イル)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール、1,4−ジ[4−(N,N−ジフェニル)アミノ]スチリルベンゼン、1,4−ビス(4−(9H−カルバゾール−9−イル)スチリル)ベンゼン、(E)−6−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)−N,N−ジフェニルナフタレン−2−アミン、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジナト)(5−(ピリジン−2−イル)−1H−テトラゾレート)イリジウム(III)、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾール)((2,4−ジフルオロベンジル)ジフェニルホスフィネート)イリジウム(III)、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾレート)(ベンジルジフェニルホスフィネート)イリジウム(III)、ビス(1−(2,4−ジフルオロベンジル)−3−メチルベンズイミダゾリウム)(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)イリジウム(III)、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾレート)(4',6'−ジフルオロフェニルピリジネート)イリジウム(III)、ビス(4',6'−ジフルオロフェニルピリジナト)(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−2−(2'−ピリジル)ピロレート)イリジウム(III)、ビス(4',6'−ジフルオロフェニルピリジナト)(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)イリジウム(III)、(Z)−6−メシチル−N−(6−メシチルキノリン−2(1H)−イリデン)キノリン−2−アミン−BF
2、(E)−2−(2−(4−(ジメチルアミノ)スチリル)−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)マロノニトリル、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−ジュロリジル−9−エニル−4H−ピラン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン、4−(ジシアノメチレン)−2−tert−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−4−イル−ビニル)−4H−ピラン、トリス(ジベンゾイルメタン)フェナントロリンユーロピウム(III)、5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン、ビス(2−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−ピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)、ビス(1−フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス[1−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス[2−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[4,4'−ジ−tert−ブチル−(2,2')−ビピリジン]ルテニウム(III)・ビス(ヘキサフルオロホスフェート)、トリス(2−フェニルキノリン)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、2,8−ジ−tert−ブチル−5,11−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−6,12−ジフェニルテトラセン、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、5,10,15,20−テトラフェニルテトラベンゾポルフィリン白金、オスミウム(II)ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジン)−ピラゾレート)ジメチルフェニルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(4−tert−ブチルピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)ジフェニルメチルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾール)ジメチルフェニルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(4−tert−ブチルピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)ジメチルフェニルホスフィン、ビス[2−(4−n−ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[2−(4−n−ヘキシルフェニル)キノリン]イリジウム(III)、トリス[2−フェニル−4−メチルキノリン]イリジウム(III)、ビス(2−フェニルキノリン)(2−(3−メチルフェニル)ピリジネート)イリジウム(III)、ビス(2−(9,9−ジエチル−フルオレン−2−イル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルピリジン)(3−(ピリジン−2−イル)−2H−クロメン−2−オネート)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルキノリン)(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネート)イリジウム(III)、ビス(フェニルイソキノリン)(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネート)イリジウム(III)、イリジウム(III)ビス(4−フェニルチエノ[3,2−c]ピリジナト−N,C
2)アセチルアセトネート、(E)−2−(2−tert−ブチル−6−(2−(2,6,6−トリメチル−2,4,5,6−テトラヒドロ−1H−ピローロ[3,2,1−ij]キノリン−8−イル)ビニル)−4H−ピラン−4−イリデン)マロノニトリル、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(1−イソキノリル)ピラゾレート)(メチルジフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス[(4−n−ヘキシルフェニル)イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、白金(II)オクタエチルポルフィン、ビス(2−メチルジベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[(4−n−ヘキシルフェニル)キソキノリン]イリジウム(III)等が挙げられる。
【0136】
電子輸送層を形成する材料としては、8−ヒドロキシキノリノレート−リチウム、2,2',2''−(1,3,5−ベンジントリル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)、2−(4−ビフェニル)5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、1,3−ビス[2−(2,2'−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、6,6'−ビス[5−(ビフェニル−4−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−2−イル]−2,2'−ビピリジン、3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−tert−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール、4−(ナフタレン−1−イル)−3,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール、2,9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,7−ビス[2−(2,2'−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]−9,9−ジメチルフルオレン、1,3−ビス[2−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン、1−メチル−2−(4−(ナフタレン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾ[4,5f][1,10]フェナントロリン、2−(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、フェニル−ジピレニルホスフィンオキサイド、3,3',5,5'−テトラ[(m−ピリジル)−フェン−3−イル]ビフェニル、1,3,5−トリス[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン、4,4'−ビス(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)ビフェニル、1,3−ビス[3,5−ジ(ピリジン−3−イル)フェニル]ベンゼン、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ジフェニルビス(4−(ピリジン−3−イル)フェニル)シラン、3,5−ジ(ピレン−1−イル)ピリジン等が挙げられる。
【0137】
電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li
2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al
2O
3)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化マグネシウム(MgF
2)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化ストロンチウム(SrF
2)、三酸化モリブデン(MoO
3)、アルミニウム、リチウムアセチルアセトネート(Li(acac))、酢酸リチウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
【0138】
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。
【0139】
また、本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜が正孔注入層である場合の、本発明の有機EL素子の作製方法のその他の例は、以下のとおりである。
【0140】
前述した有機EL素子作製方法において、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の真空蒸着操作を行うかわりに、正孔輸送層、発光層を順次形成することによって本発明の電荷輸送性ワニスによって形成される電荷輸送性薄膜を有する有機EL素子を作製することができる。具体的には、陽極基板上に本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して前記の方法により正孔注入層を作製し、その上に正孔輸送層、発光層を順次形成し、更に陰極材料を蒸着して有機EL素子とする。
【0141】
使用する陰極及び陽極材料としては、前述のものと同様のものが使用でき、同様の洗浄処理、表面処理を行うことができる。
【0142】
正孔輸送層及び発光層の形成方法としては、正孔輸送性高分子材料若しくは発光性高分子材料、又はこれらにドーパントを加えた材料に溶媒を加えて溶解するか、均一に分散し、それぞれ正孔注入層又は正孔輸送層の上に塗布した後、焼成することで成膜する方法が挙げられる。
【0143】
正孔輸送性高分子材料としては、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N'−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N'−ビス{p−ブチルフェニル}−1,1'−ビフェニレン−4,4−ジアミン)]、ポリ[(9,9−ビス{1'−ペンテン−5'−イル}フルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N'−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[N,N'−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン]−エンドキャップド ウィズ ポリシルセスキオキサン、ポリ[(9,9−ジジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4'−(N−(p−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)等が挙げられる。
【0144】
発光性高分子材料としては、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2−メトキシ−5−(2'−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)等のポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
【0145】
溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロホルム等が挙げられる。溶解又は均一分散法としては、攪拌、加熱攪拌、超音波分散等の方法が挙げられる。
【0146】
塗布方法としては、特に限定されず、インクジェット法、スプレー法、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り等が挙げられる。なお、塗布は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。
【0147】
焼成方法としては、不活性ガス下又は真空中、オーブン又はホットプレートで加熱する方法が挙げられる。
【0148】
本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜が正孔注入輸送層である場合の、本発明の有機EL素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。
【0149】
陽極基板上に正孔注入輸送層を形成し、この正孔注入輸送層の上に、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極をこの順で設ける。発光層、電子輸送層及び電子注入層の形成方法及び具体例としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0150】
陽極材料、発光層、発光性ドーパント、電子輸送層及び電子ブロック層を形成する材料、陰極材料としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0151】
なお、電極及び前記各層の間の任意の間に、必要に応じてホールブロック層、電子ブロック層等を設けてもよい。例えば、電子ブロック層を形成する材料としては、トリス(フェニルピラゾール)イリジウム等が挙げられる。
【0152】
陽極と陰極及びこれらの間に形成される層を構成する材料は、ボトムエミッション構造、トップエミッション構造のいずれを備える素子を製造するかで異なるため、その点を考慮して、適宜材料を選択する。
【0153】
通常、ボトムエミッション構造の素子では、基板側に透明陽極が用いられ、基板側から光が取り出されるのに対し、トップエミッション構造の素子では、金属からなる反射陽極が用いられ、基板と反対方向にある透明電極(陰極)側から光が取り出される。そのため、例えば陽極材料について言えば、ボトムエミッション構造の素子を製造する際はITO等の透明陽極を、トップエミッション構造の素子を製造する際はAl/Nd等の反射陽極を、それぞれ用いる。
【0154】
本発明の有機EL素子は、特性悪化を防ぐため、定法に従い、必要に応じて捕水剤等と共に封止してもよい。
【実施例】
【0155】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置は、以下のとおりである。
(1)
1H-NMR測定:Bruker社製、Ascend 500
(2)LC/MS:Waters社製、ZQ 2000
(3)基板洗浄:長州産業(株)製、基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
(4)ワニスの塗布:ミカサ(株)製、スピンコーターMS-A100
(5)膜厚測定:(株)小坂研究所製、微細形状測定機サーフコーダET-4000
(6)有機EL素子の作製:長州産業(株)製、多機能蒸着装置システムC-E2L1G1-N
(7)有機EL素子の輝度等の測定:(有)テック・ワールド製、I-V-L測定システム
(8)溶媒の比誘電率測定:ソーラトロン社製 1260型周波数応答アナライザ、及び1296型誘電率測定インターフェイス
(9)ワニス導電率の測定:メトラー・トレド社製 導電率測定セブンゴーSG3
【0156】
[1]スルホン酸化合物の合成
[比較例1−1]NSO−2の合成
国際公開第2006/025342号に記載された方法に従って、下記式で表されるスルホン酸化合物NSO−2を合成した。
【化17】
【0157】
[比較例1−2]NSO−2−PGMEの合成
特許文献6に記載された方法に従って、下記式で表されるスルホン酸エステル化合物NSO−2−PGMEを合成した。
【化18】
【0158】
[実施例1−1]NSO−2−PGEEの合成
下記スキームに従って、スルホン酸エステル化合物NSO−2−PGEEを合成した。
【化19】
【0159】
1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸ナトリウム11g(31.59mmol)に、窒素雰囲気下で、パーフルオロビフェニル4.8g(14.36mol)、炭酸カリウム4.2g(30.15mol)、及びN,N−ジメチルホルムアミド100mLを順次加え、反応系を窒素置換した後、内温100℃で6時間攪拌した。室温まで放冷後、ろ過により炭酸カリウム残渣を除去し、減圧濃縮した。残存している不純物を除去するために、残渣にメタノール100mLを加え、室温で30分間攪拌した。その後、懸濁溶液をろ過し、スルホン酸ナトリウム塩A11.8gを得た(収率83%)。
【0160】
スルホン酸ナトリウム塩A2g(2mmol)に、塩化チオニル(8mL)及びDMF(0.1mL)を加え、1時間加熱還流した後、塩化チオニルを留去し、スルホン酸塩化物Aを含む固体を得た。本化合物はこれ以上精製することなく次工程に使用した。
【0161】
前記固体に、クロロホルム(12mL)及びピリジン(8mL)を加え、0℃にてプロピレングリコールモノエチルエーテル(純正化学(株)製)2.50g(24mmol)を加えた。室温まで昇温し、その後3時間攪拌した。溶媒を留去した後、水を加え、酢酸エチルにて抽出し、有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥させた。ろ過、濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、スルホン酸エステル化合物NSO−2−PGEE1.09gを白色固体として得た(収率44%(スルホン酸ナトリウム塩Aからの2段階収率))。
1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(500MHz, CDCl
3): δ 0.92-0.97(m, 12H), 1.34 and 1.40(a pair of d, J=6.5Hz, 12H), 3.32-3.52(m, 16H), 4.80-4.87(m, 4H), 7.37(s, 2H), 8.22(d, J=8.5Hz, 2H), 8.45(s, 2H), 8.61(d, J=8.5Hz, 2H) , 8.69(s, 2H).
LC/MS (ESI
+) m/z; 1264 [M+NH
4]
+【0162】
[実施例1−2]別法によるNSO−2−PGEEの合成
下記スキームに従ってスルホン酸エステル化合物NSO−2−PGEEを合成した。
【化20】
【0163】
比較例1−1で合成したNSO−2 2g(2.2mmol)に、塩化チオニル(8mL)及びDMF(85μL)を加え、1時間加熱還流した後、塩化チオニルを留去し、スルホン酸塩化物Aを含む固体を得た。本化合物はこれ以上精製することなく次工程に使用した。前記固体に、クロロホルム(12mL)及びピリジン(8mL)を加え、0℃にてプロピレングリコールモノエチルエーテル(純正化学(株)製)2.75g(26.4mmol)を加えた。室温まで昇温し、その後3時間攪拌した。溶媒を留去した後、水を加え、酢酸エチルにて抽出し、有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥させた。ろ過、濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、スルホン酸エステル化合物NSO−2−PGEE1.50gを白色固体として得た(収率54%(NSO−2からの2段階収率))。
【0164】
[実施例1−3]NSO−2−PGBEの合成
プロピレングリコールモノエチルエーテルのかわりにプロピレングリコールモノブチルエーテル3.17g(24mmol)を用いた以外は、実施例1−1と同様の方法で合成を行い、下記式で表されるスルホン酸エステル化合物NSO−2−PGBE0.25gを白色固体として得た(収率9%(スルホン酸ナトリウム塩Aからの2段階収率))。
1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(500MHz, CDCl
3): δ 0.75-0.82(m, 12H), 1.12-1.41(m, 28H),3.26-3.50(m, 16H),4.79-4.91(m, 4H), 7.36(s, 2H), 8.22(dd, J=1.5, 9.0Hz, 2H), 8.44(s, 2H), 8.61(d, J=9.0Hz, 2H) , 8.68(d, J=1.5Hz, 2H).
LC/MS (ESI
+) m/z; 1376 [M+NH
4]
+
【化21】
【0165】
[実施例1−4]NSO−2−POPの合成
プロピレングリコールモノエチルエーテルのかわりにプロピレングリコールモノフェニルエーテル3.65g(24mmol)を用いた以外は、実施例1−1と同様の方法で合成を行い、下記式で表されるスルホン酸エステル化合物NSO−2−POP0.54gを白色固体として得た(収率19%(スルホン酸ナトリウム塩Aからの2段階収率))。
1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(500MHz, CDCl
3): δ1.54-1.55(m, 12H), 3.94-3.96(m, 4H),4.01-4.09(m, 4H), 5.01-5.07(m, 4H), 6.53-6.58(m, 8H), 6.84-6.88(m, 4H), 7.09-7.15(m, 8H),7.35(s, 2H), 8.18(d, J=9.0Hz, 2H), 8.32(s, 2H), 8.54-8.56(m, 4H).
LC/MS (ESI
+) m/z; 1456 [M+NH
4]
+
【化22】
【0166】
[2]電荷輸送性ワニスの調製及び溶解性の評価
[実施例2−1]電荷輸送性ワニスA1の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−1で合成したNSO−2−PGEE(385mg)及びオリゴアニリン化合物1(141mg)を、3−フェノキシトルエン(5g、比誘電率:2.7)及びテトラリン(5g、比誘電率:2.2)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスA1を得た。なお、オリゴアニリン化合物1は、国際公開第2013/084664号記載の方法に従って合成した。
【化23】
【0167】
[実施例2−2]電荷輸送性ワニスA2の調製(固形分濃度2質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(149mg)及びオリゴアニリン化合物1(55mg)を用いた以外は実施例2−1と同様の方法で調製した。
【0168】
[実施例2−3]電荷輸送性ワニスA3の調製(固形分濃度5質量%)
NSO−2−PGBE(394mg)及びオリゴアニリン化合物1(132mg)を、3−フェノキシトルエン(5g)及びテトラリン(5g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGBEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスA3を得た。
【0169】
[実施例2−4]電荷輸送性ワニスA4の調製(固形分濃度5質量%)
NSO−2−POP(399mg)及びオリゴアニリン化合物1(127mg)を、3−フェノキシトルエン(5g)及びテトラリン(5g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−POPは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスA4を得た。
【0170】
[実施例2−5]電荷輸送性ワニスA5の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(385mg)、オリゴアニリン化合物1(85mg)及びオリゴアニリン化合物2(56mg)を、3−フェノキシトルエン(5g)及びテトラリン(5g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスA5を得た。なお、オリゴアニリン化合物2は、国際公開第2015/050253号の製造例24−2に記載の方法に従って合成した。
【化24】
【0171】
[実施例2−6]電荷輸送性ワニスA6の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(337mg)及びオリゴアニリン化合物3(190mg)を、3−フェノキシトルエン(5g)及びテトラリン(5g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスA6を得た。なお、オリゴアニリン化合物3は、国際公開第2015/050253号の合成例18に記載の方法に従って合成した。
【化25】
【0172】
[実施例2−7]電荷輸送性ワニスA7の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(329mg)、オリゴアニリン化合物2(149mg)及びオリゴアニリン化合物3(48mg)を、3−フェノキシトルエン(5g)及びテトラリン(5g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスA7を得た。
【0173】
[実施例2−8]電荷輸送性ワニスB1の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(385mg)及びオリゴアニリン化合物1(141mg)を、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(7g、比誘電率:4.6)及び安息香酸ブチル(3g、比誘電率:2.5)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスB1を得た。
【0174】
[実施例2−9]電荷輸送性ワニスB2の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(385mg)、オリゴアニリン化合物1(85mg)及びオリゴアニリン化合物2(56mg)を、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(7g)及び安息香酸ブチル(3g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスB2を得た。
【0175】
[実施例2−10]電荷輸送性ワニスB3の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(337mg)及びオリゴアニリン化合物3(190mg)を、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(7g)及び安息香酸ブチル(3g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスB3を得た。
【0176】
[実施例2−11]電荷輸送性ワニスB4の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(329mg)、オリゴアニリン化合物2(149mg)及びオリゴアニリン化合物3(48mg)を、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(7g)及び安息香酸ブチル(3g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスB4を得た。
【0177】
[実施例2−12]電荷輸送性ワニスC1の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(385mg)及びオリゴアニリン化合物1(141mg)を、4−メトキシトルエン(7g、比誘電率:2.9)及びシクロヘキシルベンゼン(3g、比誘電率:2.0)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスC1を得た。
【0178】
[実施例2−13]電荷輸送性ワニスC2の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(385mg)、オリゴアニリン化合物1(85mg)及びオリゴアニリン化合物2(56mg)を、4−メトキシトルエン(7g)及びシクロヘキシルベンゼン(3g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスC2を得た。
【0179】
[実施例2−14]電荷輸送性ワニスC3の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(337mg)及びオリゴアニリン化合物3(190mg)を、4−メトキシトルエン(7g)及びシクロヘキシルベンゼン(3g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスC3を得た。
【0180】
[実施例2−15]電荷輸送性ワニスC4の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(329mg)、オリゴアニリン化合物2(149mg)及びオリゴアニリン化合物3(48mg)を、4−メトキシトルエン(7g)及びシクロヘキシルベンゼン(3g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスC4を得た。
【0181】
[実施例2−16]電荷輸送性ワニスD1の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(385mg)及びオリゴアニリン化合物1(141mg)を、安息香酸エチル(7g、比誘電率:4.0)及びジベンジルエーテル(3g、比誘電率:3.3)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスD1を得た。
【0182】
[実施例2−17]電荷輸送性ワニスD2の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(385mg)、オリゴアニリン化合物1(85mg)及びオリゴアニリン化合物2(56mg)を、安息香酸エチル(7g)及びジベンジルエーテル(3g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスD2を得た。
【0183】
[実施例2−18]電荷輸送性ワニスD3の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(337mg)及びオリゴアニリン化合物3(190mg)を、安息香酸エチル(7g)及びジベンジルエーテル(3g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスD3を得た。
【0184】
[実施例2−19]電荷輸送性ワニスD4の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(352mg)、オリゴアニリン化合物3(159mg)及びオリゴアニリン化合物4(15mg)を、安息香酸エチル(7g)及びジベンジルエーテル(3g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスD4を得た。なお、オリゴアニリン化合物4は、国際公開第2016/190326号の合成例1に記載の方法に従って合成した。
【化26】
【0185】
[実施例2−20]電荷輸送性ワニスD5の調製(固形分濃度5質量%)
実施例1−2で合成したNSO−2−PGEE(329mg)、オリゴアニリン化合物2(149mg)及びオリゴアニリン化合物3(48mg)を、安息香酸エチル(7g)及びジベンジルエーテル(3g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2−PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスD5を得た。
【0186】
[比較例2−1]電荷輸送性ワニスEの調製(固形分濃度5質量%)
NSO−2−PGME(384mg)及びオリゴアニリン化合物1(142mg)を、3−フェノキシトルエン(5g)及びテトラリン(5g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、30分間加熱攪拌したが、溶け残りが生じた。70℃、400rpm、20分間加熱攪拌することで、NSO−2−PGMEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスEを得た。
【0187】
[比較例2−2]
NSO−2(349mg)及びオリゴアニリン化合物1(177mg)を、3−フェノキシトルエン(5g)及びテトラリン(5g)の混合溶媒に加え、90℃、400rpm、30分間加熱攪拌したが、NSO−2は全く溶解しなかった。
【0188】
[比較例2−3]電荷輸送性ワニスF1の調製(固形分濃度5質量%)
NSO−2(349mg)及びオリゴアニリン化合物1(177mg)を、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(3.3g、比誘電率:26.0)、2,3−ブタンジオール(4g、比誘電率:17.0)及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル(2.7g、比誘電率:7.9)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO−2は完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスF1を得た。
【0189】
[比較例2−4]電荷輸送性ワニスF2の調製(固形分濃度2質量%)
NSO−2(149mg)及びオリゴアニリン化合物1(55mg)を用いた以外は比較例2−3と同様の方法で調製した。
【0190】
[比較例2−5]電荷輸送性ワニスGの調製(固形分濃度5質量%)
NSO−2−PGME(331mg)及びオリゴアニリン化合物3(195mg)を、3−フェノキシトルエン(5g)及びテトラリン(5g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、30分間加熱攪拌したが、溶け残りが生じた。70℃、400rpm、20分間加熱攪拌することで、NSO−2−PGMEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスGを得た。
【0191】
NSO−2−PGEE、NSO−2−PGBE及びNSO−2−POPは、50℃、400rpm、5分間の加熱攪拌条件下で、低極性溶媒である3−フェノキシトルエン及びテトラリンの混合溶媒に完全に溶解したのに対し、NSO−2−PGMEは、前記混合溶媒に完全に溶解させるためには、70℃、400rpm、20分間の加熱攪拌条件を必要とし、また、NSO−2は、前記混合溶媒には溶解しなかった。すなわち、本発明のスルホン酸エステル化合物は、低極性溶媒に対する溶解性に優れていた。
【0192】
[3]電荷輸送性ワニスの保存安定性評価
[実施例3−1〜3−4、比較例3−1〜3−2]
電荷輸送性ワニスA1、A3、A4及びEを2℃で冷蔵保存し、保存開始後下記表1に示す時間が経過した時点における析出物の有無を観測した。結果を表1に示す。
【0193】
【表1】
【0194】
インク作製後、大気中に暴露して7ヶ月経過したワニスの水分値とワニス導電率の変化を表2に示す。比較例2−4で作製したワニスF2は経時により水分値が上昇し、それに伴いワニス導電率も増加している。一方、実施例2−2で作製したワニスA2は水分値・ワニス導電率ともに変化が無く、大気安定性に優れたワニスといえる。
【0195】
【表2】
【0196】
表1及び2に示すように、本発明のスルホン酸エステル化合物を含む電荷輸送性ワニスは、保存安定性に優れていた。
【0197】
[4]上層蒸着型ホールオンリー素子(HOD)の作製及び特性評価
以下の実施例及び比較例において、ITO基板としては、ITOが表面上に膜厚150nmでパターニングされた25mm×25mm×0.7tのガラス基板を用い、使用前にO
2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)によって表面上の不純物を除去したものを使用した。
【0198】
[実施例4−1]
電荷輸送性ワニスA1を、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気下で、120℃で1分間仮焼成をし、次いで200℃で30分間本焼成をし、ITO基板上に30nmの薄膜を形成した。
その上に、蒸着装置(真空度2.0×10
-5Pa)を用いてα−NPD及びアルミニウムの薄膜を順次積層し、HODを得た。蒸着は、蒸着レート0.2nm/秒の条件で行った。α−NPD及びアルミニウムの薄膜の膜厚は、それぞれ30nm及び80nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、HODは封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。
酸素濃度2ppm以下、露点−85℃以下の窒素雰囲気中で、HODを封止基板の間に収め、封止基板を接着材((株)MORESCO製モレスコモイスチャーカットWB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製HD-071010W-40)をHODと共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、UV光を照射(波長365nm、照射量6,000mJ/cm
2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着材を硬化させた。
【0199】
[実施例4−2]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスA3を用いた以外は、実施例4−1と同様の方法でHODを作製した。
【0200】
[実施例4−3]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスA4を用いた以外は、実施例4−1と同様の方法でHODを作製した。
【0201】
[比較例4−1]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスEを用いた以外は、実施例4−1と同様の方法でHODを作製した。
【0202】
[比較例4−2]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスF1を用い、仮焼成を80℃で1分間とし、本焼成を230℃で15分間とした以外は、実施例4−1と同様の方法でHODを作製した。
【0203】
前記実施例及び比較例で作製した各HODについて、駆動電圧3Vにおける電流密度を測定した。結果を表3に示す。
【0204】
【表3】
【0205】
表3に示したように、本発明のスルホン酸エステル化合物を含む電荷輸送性ワニスは、従来のものと比べて、同等ないしはそれ以上の正孔輸送性を示した。
【0206】
[5]上層塗布型ホールオンリー素子(HOD)の作製及び特性評価−2
以下の実施例及び比較例において、ITO基板としては、前記と同様のものを使用した。
【0207】
[実施例5−1]
電荷輸送性ワニスA1を、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気下で、120℃で1分間仮焼成をし、次いで230℃で15分間本焼成をし、ITO基板上に30nmの正孔注入層薄膜を形成した。
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内で、TFBポリマー(Luminescence Technology社製LT-N148)の0.6質量%キシレン溶液を正孔注入層上にスピンコートにより成膜し、130℃で10分間の加熱焼成を行い、40nmの正孔輸送層薄膜を形成した。
その上に、蒸着装置(真空度2.0×10
-5Pa)を用いてアルミニウムの薄膜を積層し、HODを得た。蒸着は、蒸着レート0.2nm/秒の条件で行った。アルミニウムの薄膜の膜厚は、80nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、HODは封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。
酸素濃度2ppm以下、露点−85℃以下の窒素雰囲気中で、HODを封止基板の間に収め、封止基板を接着材((株)MORESCO製モレスコモイスチャーカットWB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製HD-071010W-40)をHODと共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、UV光を照射(波長365nm、照射量6,000mJ/cm
2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着材を硬化させた。
【0208】
[実施例5−2〜5−4]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスA5〜A7を用いた以外は、実施例5−1と同様の方法でHODを作製した。
【0209】
[実施例5−5〜5−8]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスB1〜B4を用いた以外は、実施例5−1と同様の方法でHODを作製した。
【0210】
[実施例5−9〜5−12]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスC1〜C4を用いた以外は、実施例5−1と同様の方法でHODを作製した。
【0211】
[実施例5−13〜5−17]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスD1〜D5を用いた以外は、実施例5−1と同様の方法でHODを作製した。
【0212】
[比較例5−1]
正孔輸送層を形成しなかったこと以外は、実施例5−1と同様の方法でHODを作製した。
【0213】
[比較例5−2〜5−4]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスE、F1又はGを用いた以外は、実施例5−1と同様の方法でHODを作製した。
【0214】
前記実施例及び比較例で作製した各HODについて、駆動電圧5Vにおける電流密度を測定した。結果を表4に示す。
【0215】
【表4】
【0216】
表4に示したように、本発明のスルホン酸エステル化合物を含む電荷輸送性ワニスを正孔注入層に用いることで、正孔注入層を用いない場合(比較例5−1)に比べHODが向上するだけではなく、用いたオリゴアニリン化合物が同じ場合、従来のスルホン酸エステル化合物又はスルホン酸化合物を含む電荷輸送性ワニスを正孔注入層に用いた時に比べて、いずれも高いHOD電流を示した。
【0217】
[6]有機EL素子の製造及び特性評価
以下の実施例及び比較例において、ITO基板としては、ITOが表面上に膜厚150nmでパターニングされた25mm×25mm×0.7tのガラス基板を用い、使用前にO
2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)によって表面上の不純物を除去したものを使用した。
【0218】
[実施例6−1]
電荷輸送性ワニスA1を、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、120℃で1分間乾燥し、更に、大気雰囲気下、200℃で30分間焼成し、ITO基板上に30nmの均一な薄膜を形成した。
次いで、薄膜を形成したITO基板に対し、蒸着装置(真空度1.0×10
-5Pa)を用いてα−NPDを0.2nm/秒にて30nm成膜した。次に、CBPとIr(PPy)
3を共蒸着した。共蒸着はIr(PPy)
3の濃度が6%になるように蒸着レートをコントロールし、40nm積層させた。次いで、Alq
3、フッ化リチウム及びアルミニウムの薄膜を順次積層して有機EL素子を作製した。この際、蒸着レートは、Alq
3及びアルミニウムについては0.2nm/秒、フッ化リチウムについては0.02nm/秒の条件でそれぞれ行い、膜厚は、それぞれ20nm、0.5nm及び80nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、有機EL素子は封止
基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、前記と同様の方法で行った。
【0219】
[実施例6−2]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスA3を用いた以外は、実施例6−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0220】
[実施例6−3]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスA4を用いた以外は、実施例6−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0221】
[比較例6−1]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスEを用いた以外は、実施例6−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0222】
[比較例6−2]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスF1を用い、仮焼成を80℃で1分間とし、本焼成を230℃で15分間とした以外は、実施例6−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0223】
これらの素子について、輝度1,000cd/m
2における電圧及び電流効率を測定した。結果を表5に示す。なお、各素子の発光面サイズの面積は、2mm×2mmとした。
【0224】
【表5】
【0225】
表5に示したように、本発明のスルホン酸エステル化合物を含む電荷輸送性ワニスは、従来のものと比べて、同等の有機EL特性を示した。