特許第6443657号(P6443657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

特許6443657熱硬化性絶縁樹脂組成物、並びにこれを用いた支持体付絶縁フィルム、プリプレグ、積層板及び多層プリント配線板
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443657
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】熱硬化性絶縁樹脂組成物、並びにこれを用いた支持体付絶縁フィルム、プリプレグ、積層板及び多層プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20181217BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20181217BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20181217BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20181217BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20181217BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20181217BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20181217BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   C08G59/40
   C08L63/00 C
   C08K5/3415
   C08J5/24
   C08K3/00
   H05K1/03 610T
   H05K3/46 T
   B32B15/08 105A
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-138623(P2014-138623)
(22)【出願日】2014年7月4日
(65)【公開番号】特開2016-17091(P2016-17091A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福井 将人
(72)【発明者】
【氏名】秋山 雅則
(72)【発明者】
【氏名】外崎 志真
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−052184(JP,A)
【文献】 特開2010−235690(JP,A)
【文献】 特開2014−111696(JP,A)
【文献】 特開2014−040584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/40
B32B 15/08
C08J 5/24
C08K 3/00
C08K 5/3415
C08L 63/00
H05K 1/03
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)、(b)及び(c)を反応させて得られる、酸性置換基及びN−置換マレイミド基を有する硬化剤(A)、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)及びエポキシ樹脂の硬化剤として芳香族ビニル化合物と無水マレイン酸を構成成分とする無水マレイン酸共重合体(C)を含有することを特徴とする熱硬化性絶縁樹脂組成物。
(a)一般式(I)に示す1分子主鎖中に少なくとも2個のベンゼン環を有するジアミン化合物、
【化1】
〔一般式(I)中、Aは2価の炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、エーテル結合又はチオエーテル結合、R及びRは各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を示し、x、yは各々独立に0〜4の整数である。〕
(b)分子構造中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物、
(c)モノアミン化合物
【請求項2】
さらに、硬化促進剤(D)を含有する請求項1に記載の熱硬化性絶縁樹脂組成物。
【請求項3】
固形分換算の(A)〜(C)成分の合計量100質量部に対し、10〜80質量部の無機充填材(F)を含有する請求項1または請求項2に記載の熱硬化性絶縁樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性絶縁樹脂組成物の半硬化状態のフィルムが支持体表面に形成されていることを特徴とする支持体付絶縁フィルム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性絶縁樹脂組成物を繊維シート状補強基材に形成されたプリプレグ。
【請求項6】
熱硬化性絶縁樹脂層が、(1)請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性絶縁樹脂組成物、(2)請求項4に記載の支持体付絶縁フィルム、(3)請求項5に記載のプリプレグの何れかを用いて形成された積層板。
【請求項7】
請求項6に記載の積層板を用いて形成された多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品等に好適に用いられる熱硬化性絶縁樹脂組成物に関し、詳しくはハロゲンフリーであり、ガラス転移温度が高く耐熱性でありかつ比誘電率および誘電正接の小さい熱硬化性樹脂絶縁組成物並びにこれを用いたプリプレグ、積層板及び多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、大量のデータを高速で処理するために、コンピュータや情報機器端末等で、信号の高周波化が進んでいる。用いる周波数が高くなるにつれて、電気信号の転送損失が大きくなる。そこで,これらの機器に搭載されるプリント配線板には信号の高周波数化対応が必要であり、基板材料には伝播遅延時間の短縮、伝送損失の低減に有効な誘電特性(低誘電率、低誘電正接)が求められている。
【0003】
また、環境意識の高まりから燃焼時に有害な物質を発生する可能性がある材料は電子部品も含めて規制する動きが活発になっている。従来の多層プリント配線板には、難燃化のためにブロム化合物が使用されてきたが、燃焼時に有害な物質を発生する可能性があるので、近い将来にこのブロム化合物は使用できなくなるものと予想される。
電子部品を多層プリント配線板に接続するために一般的に用いられるはんだも鉛を有さない鉛フリーはんだが実用化されつつある。この鉛フリーはんだは、従来の共晶はんだよりも使用温度が約20〜30℃高くなることから従来にも増して材料には高い耐熱性が必要になっている。
【0004】
前述の情報の大容量化に伴い、基板の高密度化・高多層化が進行しており、サーバーやルーターなど社会インフラに関係する用途であることから高い信頼性が要求される分野である。特に銅張積層板や層間絶縁材料においては、近年の高密度化への要求から、微細配線形成のための高い銅箔接着性やドリル又は打ち抜きにより穴あけ等の加工をする際の加工性も必要とされている。また高周波化対応プリント配線板の使用環境も多岐にわたり,熱サイクルや吸湿などの過酷な状況下でも優れた信頼性が要求される。
【0005】
これまで比誘電率および誘電正接の小さい熱硬化性樹脂組成物を達成するためには、比誘電率の小さいエポキシ樹脂を使用する、シアネート基の導入、ポリフェニルエーテルの導入の方法が用いられてきた。しかしこれらの方法では、比誘電率の低下は実現できるものの、高い耐熱性と高いガラス転移温度、ハロゲンフリーを両立させることはできない。例えば、エポキシ樹脂を併用した樹脂組成物(特許文献1参照)、ビスマレイミドを併用した樹脂組成物(特許文献2参照)、シアネートエステルを併用した樹脂組成物(特許文献3参照)、スチレン−ブタジエン共重合体又はポリスチレンと、トリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレートを併用した樹脂組成物(特許文献4〜5参照)、ポリブタジエンを併用した樹脂組成物(特許文献6及び特許文献7参照)、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基等の官能基を有する変性ポリブタジエンとビスマレイミド及び/又はシアネートエステルを予備反応させた樹脂組成物(特許文献8参照)、不飽和二重結合基を有する化合物を付与又はグラフトさせたポリフェニレンエーテルにトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートやポリブタジエン等を併用した樹脂組成物(特許文献9及び特許文献10参照)、あるいはポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸又は不飽和酸無水物との反応生成物とビスマレイミド等を併用した樹脂組成物(特許文献11参照)等が提案されている。
【0006】
絶縁樹脂層において熱膨脹率を小さくするには、一般に熱膨脹率の小さい無機フィラーを多量に充填し、絶縁層全体の熱膨張率を低下させる方法が用いられてきた(特許文献12参照)。しかし、このような方法では、流動性の低下や、絶縁信頼性の低下など、多くの問題が発生し易い。
【0007】
さらに、耐熱性、低熱膨張に有用であると考えられるイミド骨格の導入も試みられており、例えば、イミド基を有する芳香族ジアミンとエポキシ樹脂を用いたビルトアップ用熱硬化性組成物が提案されている(特許文献13参照)。しかし、低分子ポリイミド化合物をエポキシ樹脂の硬化剤として用いた場合、その殆どがエポキシ樹脂の特性と変わらない場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−69046号公報
【特許文献2】特開昭56−133355号公報
【特許文献3】特公昭61−18937号公報
【特許文献4】特開昭61−286130号公報
【特許文献5】特開平3−275760号公報
【特許文献6】特開昭62−148512号公報
【特許文献7】特開昭59−193929号公報
【特許文献8】特開昭58−164638号公報
【特許文献9】特開平2−208355号公報
【特許文献10】特開平6−184213号公報
【特許文献11】特開平6−179734号公報
【特許文献12】特開2004−182851号公報
【特許文献13】特開2000−17148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、以上のような状況から、電子部品等に好適に用いられる熱硬化性樹脂組成物に関し、詳しくはハロゲンフリーであり、ガラス転移温度が高く耐熱性でありかつ比誘電率および誘電正接の小さい熱硬化性絶縁樹脂組成物並びにこれを用いたプリプレグ、積層板及び多層プリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、熱硬化性絶縁樹脂組成物として、分子主鎖中に特定のジアミン化合物とマレイミド化合物及びモノアミン化合物を有機溶媒中で反応させて得られた酸性置換基及びN−置換マレイミド基を有する硬化剤と、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の硬化剤を含有する樹脂組成物を使用することにより、ガラス転移温度が高く耐熱性に優れ、比誘電率および誘電正接の小さい熱硬化性絶縁樹脂組成物が得られ、多層プリント配線板などに好適に使用できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、[1] 下記の(a)、(b)及び(c)を反応させて得られる、酸性置換基及びN−置換マレイミド基を有する硬化剤(A)、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)及びエポキシ樹脂の硬化剤として芳香族ビニル化合物と無水マレイン酸を構成成分とする無水マレイン酸共重合体(C)を含有することを特徴とする熱硬化性絶縁樹脂組成物である。
(a)一般式(I)に示す1分子主鎖中に少なくとも2個のベンゼン環を有するジアミン化合物、
【0011】
【化1】
〔一般式(I)中、Aは2価の炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、エーテル結合又はチオエーテル結合、R及びRは各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を示し、x、yは各々独立に0〜4の整数である。〕
(b)分子構造中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物、
(c)モノアミン化合物
また、本発明は、[2] さらに、硬化促進剤(D)を含有する上記[1]に記載の熱硬化性絶縁樹脂組成物である。
また、本発明は、[3] 固形分換算の(A)〜(C)成分の合計量100質量部に対し、10〜80質量部の無機充填材(F)を含有する上記[1]または[2]に記載の熱硬化性絶縁樹脂組成物である。
また、本発明は、[4] 上記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱硬化性絶縁樹脂組成物の半硬化状態のフィルムが支持体表面に形成されていることを特徴とする支持体付絶縁フィルムである。
また、本発明は、[5] 上記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱硬化性絶縁樹脂組成物を繊維シート状補強基材に形成されたプリプレグである。
また、本発明は、[6] 熱硬化性絶縁樹脂層が、(1)上記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱硬化性絶縁樹脂組成物、(2)上記[4]に記載の支持体付絶縁フィルム、(3)[5]に記載のプリプレグの何れかを用いて形成された積層板である。
さらに、本発明は、[7] 上記[6]に記載の積層板を用いて形成された多層プリント配線板である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱硬化性絶縁樹脂組成物は、上記のように、1分子主鎖中に少なくとも2個のベンゼン環を有するジアミン化合物を用いて製造され、酸性置換基及び不飽和N−置換マレイミド基を有する硬化剤(A)、エポキシ樹脂(B)、及びエポキシ樹脂の硬化剤として芳香族ビニル化合物と無水マレイン酸を構成成分とする無水マレイン酸共重合体(C)を含有することにより、特に低誘電率、低誘電正接特性を有し、且つガラス転移温度(Tg)が高く、耐熱性に優れ、優れた銅箔ピール強度を示す絶縁樹脂層を形成することができ、該熱硬化性絶縁樹脂組成物及びこれを用いた支持体付絶縁フィルム、プリプレグより製造される積層板及び多層プリント配線板は、はんだ耐熱性、電気特性、耐湿性及び難燃性の全てにバランスが取れて高信頼性を有し、電子部品等に好適な製品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、下記の(a)、(b)及び(c)を反応させて得られる、酸性置換基及びN−置換マレイミド基を有する硬化剤(A)、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)及びエポキシ樹脂の硬化剤(C)を含有することを特徴とする熱硬化性絶縁樹脂組成物である。
そして、熱硬化性絶縁樹脂組成物には、硬化促進剤(D)、無機充填材(F)を含有することができ、含有させることが好ましい。
(a)一般式(I)に示す1分子主鎖中に少なくとも2個のベンゼン環を有するジアミン化合物、
【0014】
【化2】
〔一般式(I)中、Aは2価の炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基又はエーテル結合、R及びRは各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を示し、x、yは各々独立に0〜4の整数である。〕
(b)分子構造中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物、
(c)モノアミン化合物
【0015】
先ず、本発明における硬化剤(A)には、下記の(a)、(b)、及び(c)の化合物を必要により有機溶媒中で加熱・保温しながら攪拌し、反応させて得られ、酸性置換基及びN−置換マレイミド基を有する化合物が使用される。
【0016】
(a)一般式(I)に示す1分子主鎖中に少なくとも2個のベンゼン環を有するジアミン化合物、
【0017】
【化3】
〔一般式(I)中、Aは2価の炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、エーテル結合又はチオエーテル結合、R及びRは各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を示し、x、yは各々独立に0〜4の整数である。〕
【0018】
上記の一般式(I)に示す(a)成分の1分子主鎖中に少なくとも2個のベンゼン環を有するジアミン化合物としては、例えば、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルエタン、4,4´−ジアミノジフェニルプロパン、2,2´−ビス[4,4´−ジアミノジフェニル]プロパン、3,3´−ジメチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´−ジエチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´−ジメチル−4,4´−ジアミノジフェニルエタン、3,3´−ジエチル−4,4´−ジアミノジフェニルエタン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3´−ジヒドロキシ−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、2,2´,6,6´−テトラメチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´−ジクロロ−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´−ジブロモ−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、2,2´,6,6´−テトラメチルクロロ−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、2,2´,6,6´−テトラブロモ−4,4´−ジアミノジフェニルメタンが挙げられ、これらのマレイミド化合物は、単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。安価である点から4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´−ジエチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタンがより好ましく、溶剤への溶解性の点から、4,4´−ジアミノジフェニルメタンが特に好ましい。
【0019】
本発明に使用される(b)の化合物である、分子構造中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物は、例えば、N,N´−エチレンビスマレイミド、N,N´−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N´−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N´−[1,3−(2−メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N´−[1,3−(4−メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N´−(1,4−フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4−マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4−ビス(4−マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、2,2´−ビス(4−マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミドが挙げられ、これらのマレイミド化合物は、単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの中で、反応率が高く、より高耐熱性化できるビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ジスルフィド、N,N´−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンが好ましく、安価である点からビス(4−マレイミドフェニル)メタン、N,N´−(1,3−フェニレン)ビスマレイミドがより好ましく、溶剤への溶解性の点から、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンがさらに好ましい。
【0020】
本発明に使用される(c)の化合物である、モノアミン化合物としては、前記(a)または(b)成分が分子構造中に酸性置換基を有しない場合は、酸性置換基(フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等)を有するモノアミン化合物とする。このようなモノアミン化合物としては、例えば、(o-,m-,p-)(この表記はo-、m-またはp−を表す。)アミノフェノール、(o-,m-,p-)アミノ安息香酸、(o-,m-,p-)アミノベンゼンスルホン酸、3,5−ジヒドロキシアニリン、3,5−ジカルボキシアニリンなどが挙げられるが、低熱膨張性や溶解性の点から、(o-,m-,p-)アミノフェノールがより好ましい。
一方、前記(a)または(b)の化合物が分子構造中に酸性置換基を有する場合は、モノアミン化合物としては、特に酸性置換基を有していても、有していなくても良く、たとえば、アニリン、(o-,m-,p-)メチルアニリン、(o-,m-,p-)エチルアニリン、(o-,m-,p-)ビニルアニリン、(o-,m-,p-)アリルアニリンなどのモノアミン化合物を使用することもできる。
【0021】
以上の(a)、(b)、及び(c)の化合物を有機溶媒中で反応させる際、反応温度は70〜200℃であることが好ましく、70〜160℃であることがより好ましい。
反応時間は0.1〜10時間であることが好ましく、1〜6時間であることがより好ましい。
ここで、(a)の芳香族ジアミン化合物と(c)の酸性置換基を有する場合のモノアミン化合物の使用量は、−NH2基当量の総和と、(b)のマレイミド化合物のC=C基当量との関係が、 0.1≦〔C=C基当量〕/〔−NH2基当量の総和〕≦10.0に示す範囲になることが好ましい。より好ましくは、この関係が、 1.0≦〔C=C基当量〕/〔−NH2基当量の総和〕≦9.0、さらに好ましくは、 2.0≦〔C=C基当量〕/〔−NH2基当量の総和〕≦8.0の範囲とする。
該当量比を0.1以上とすることによりゲル化及び耐熱性が低下することがなく、又、10.0以下とすることにより有機溶剤への溶解性、接着性、及び耐熱性が低下することがない。
【0022】
この反応で使用される有機溶媒は特に制限されないが、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチルエステルやγ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。これらの中で、溶解性の点からシクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、γ−ブチロラクトン、ジメチルアセトアミドが好ましく、低毒性であることや揮発性が高くプリプレグの製造時に残溶媒として残りにくい点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミドがより好ましい。
【0023】
有機溶媒の使用量は、(a)、(b)及び(c)成分の総和100質量部当たり、25〜1000質量部とすることが好ましく、40〜700質量部とすることがより好ましい。
有機溶媒の配合量を25質量部以上とすることにより充分な溶解性が得られ、また1000質量部以下とすることにより合成に長時間を要することがない。
【0024】
また、この反応には任意に反応触媒を使用することができる。このような反応触媒としては、特に限定されないが、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒などがあげられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
触媒の添加量は、(b)のビスマレイミド化合物と(c)のアミン化合物との合計質量に対して、0.001〜5質量%が好ましい。
【0025】
(a)、(b)及び(c)を有機溶媒中で反応させて得られる、酸性置換基及びN−置換マレイミド基を有する硬化剤(A)の質量平均分子量は、溶解性や機械強度の観点から400〜3500であるのが好ましい。なお本発明における質量平均分子量は、溶離液としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。
【0026】
次に、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されず、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ビフェニル系、ノボラック系、多官能フェノール系、ナフタレン系、脂環式系及びアルコール系等のグリシジルエーテル、グリシジルアミン系並びにグリシジルエステル系等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用することができる。具体的には、誘電特性、耐熱性、耐湿性及び銅箔接着性の点からビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が好ましく、良好な低熱膨張性や高いガラス転移温度を有する点から、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0027】
エポキシ樹脂の硬化剤(C)としては、エポキシ樹脂の硬化作用があれば特に限定されるものではないが、無水マレイン酸、無水マレイン酸共重合体等の酸無水物、ジシアンジアミド等のアミン化合物、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、アミノトリアジンノボラック樹脂等のフェノール化合物等が挙げられる。これらの中で、硬化性と誘電特性の観点から無水マレイン酸共重合体、ジシアンジアミド等のアミン化合物が好ましい。上記のエポキシ樹脂の硬化剤は1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0028】
無水マレイン酸共重合体としては、芳香族ビニル化合物と無水マレイン酸を構成成分として含むことが好ましく、下記一般式(a)に示す芳香族ビニル化合物に由来する構成成分をm、無水マレイン酸に由来する構成成分をnとした場合の構成モル比がm:n=1:12〜1:1である構造を有する共重合樹脂である。
【0029】
【化4】
(一般式(a)中、Rは水素原子、又は炭素数1〜5個の炭化水素基であり、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜5個の脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基であり、xは0〜3の整数であり好ましくは0であり、mは芳香族ビニル化合物に由来する構成成分のモル数、nは無水マレイン酸に由来する構成成分のモル数で、m:n=1:12〜1:1である)。
一般式(a)に示す芳香族ビニル化合物に由来する構成成分となるモノマーとしては、スチレン、1−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン等が挙げられ、1種又は2種以上を混合した化合物から得ることが出来る。
更に、上記のモノマーである芳香族ビニル化合物と無水マレイン酸以外にも、各種の重合可能な成分と共重合させてもよく、これらの成分として例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、アクリロニトリル等のビニル化合物、メチルメタクリレートのようなメタクリレート及びメチルアクリレートのようなアクリレート等のメタクリロイル基又はアクリロイル基を有する化合物が挙げられる。
ここで任意にモノマーにフリーデル・クラフツ反応やリチウム等の金属系触媒を用いた反応を通じて、アリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基及びヒドロキシル基等の置換基を導入する事ができる。
低誘電特性及び耐熱性等を確保するために、芳香族ビニル化合物と無水マレイン酸を構成成分として含む共重合樹脂は、(B)成分のエポキシ樹脂との相溶性確保という観点からスチレンと無水マレイン酸からなることが好ましく、スチレンのモル比をm、無水マレイン酸のモル比をnとした場合、m/n=0.08〜1である。
m/nが0.08未満の場合、誘電特性の改善効果が十分でなく、1を超えると相溶性が悪化する等の問題が発生する。
【0030】
また、硬化促進剤(D)としては、イミダゾール類及びその誘導体、第三級アミン類及び第四級アンモニウム塩、シクロアミジン化合物、ホスフィン等が挙げられる。
硬化促進剤は、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾール類があり、イミダゾールのイミノ基のマスク化剤として、アクリロニトリル、フェニレンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート、メラミンアクリレート等を用いてマスクしたイミダゾール類、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン等のシクロアミジン化合物、その誘導体、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類、又はこれら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体等が挙げられる。
本発明では、硬化促進剤(D)として促進効果、保存安定性からイミダゾール類をイソシアネートでマスクしたイソシアネートマスクイミダゾールを用いるのが好ましい。
【0031】
本発明では、難燃性を確保するため、リン化合物(E)を含有することが好ましい。
リン化合物として、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、含窒素リン化合物、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフエニルホスフェート、トリフェニルフォスファイトなどの各種有機リン化合物が挙げられる。リン化合物としては、例えば、1,3−ビス−(2´,6´−ジメチルフェニル)フォスホイルベンゼン、1,3−ビス−(2´,6´−ジエチルフェニル)フォスホイルベンゼン等があり、市販品としては、PX−200(大八化学工業株式会社製、商品名)等がある。また、(B)成分のエポキシ樹脂にリンを含有させたリン含有エポキシ樹脂、(C)成分のエポキシ樹脂の硬化剤にリンを含有させたリン含有フェノール樹脂などを用いることができる。
【0032】
本発明の熱硬化性絶縁樹脂組成物は、固形分換算の(A)〜(D)成分の合計量を100質量部として、次のようにすることが好ましい。
(A)成分は20〜95質量部とすることが好ましく、40〜90質量部とすることがより好ましい。(B)成分は5〜80質量部とすることが好ましく、5〜60質量部とすることがより好ましい。(D)成分は0〜50質量部とすることが好ましく、0〜30質量部とすることがより好ましい。
【0033】
本発明の熱硬化性絶縁樹脂組成物における(C)成分は、(A)〜(D)成分の合計量100質量部当り、15〜40質量部とすることが好ましい。15質量部未満であると低誘電率化の効果が十分ではなく、40質量部を超えると、(C)成分の未反応成分が残ることにより、耐熱性、ピール強度が著しく低下する。
【0034】
本発明の熱硬化性絶縁樹脂組成物では、熱硬化性絶縁樹脂層の熱膨張率を低下させるために無機充填材(F)を含有させることが好ましい。無機充填材(F)としては、シリカ、マイカ、タルク、ガラス短繊維、ガラス微粉末、中空ガラス、三酸化アンチモン、炭酸カルシウム、石英粉末、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられ、これらの中で誘電特性、耐熱性、難燃性の点からシリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく、低熱膨張性であることからシリカ、水酸化アルミニウムがより好ましい。また、配線層を埋めこむために、多層プリント配線板用の絶縁フィルムには、高い流動性が求められる。よって、無機充填材は球状であることが、流動性の観点から望ましい。
【0035】
無機充填材(F)の含有量は、固形分換算の(A)〜(C)成分の合計量100質量部当たり、10〜80質量部であることが好ましく、より好ましくは、25〜45質量部である。また、配合量が80質量部以下、好ましくは50質量部以下とすることにより、絶縁樹脂層がもろくなり、温度サイクル試験などでクラックが発生することがない。
これらの無機充填材は、分散性を高める目的で、カップリング剤で処理することができ、ニーダー、ボールミル、ビーズミル、3本ロール等既知の混練方法により無機充填材を分散できる。
無機充填材の平均粒径は、配線の微細化が進むことを考慮すると、1μm以下が望ましく、0.5μm以下がより好ましい。1μm以上の無機充填材は、後述するデスミア工程後の表面凹凸を大きくするために、エッチング残りが発生し、絶縁性を不十分にするおそれがある。
【0036】
さらに、本発明の熱硬化性絶縁樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意に公知の熱可塑性樹脂、エラストマー、難燃剤、有機充填剤等の併用ができる。
熱可塑性樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
エラストマーとしては、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、エポキシ変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、フェノール変性ポリブタジエン及びカルボキシ変性ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
難燃剤としては、臭素や塩素を含有する含ハロゲン系難燃剤、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の無機物の難燃剤等が挙げられるが、ハロゲンフリーを実現するため、含ハロゲン系難燃剤を有しないことが望ましい。
有機充填剤としては、シリコーンパウダー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、並びにポリフェニレンエーテル等の有機物粉末等が挙げられる。
【0037】
本発明の熱硬化性絶縁樹脂組成物に対して、任意に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤及び密着性向上剤等の添加も可能であり、特に限定されない。これらの例としては、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系やスチレン化フェノール等の酸化防止剤、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系等の光重合開始剤、スチルベン誘導体等の蛍光増白剤、尿素シラン等の尿素化合物やシランカップリング剤等の密着性向上剤等が挙げられる。
【0038】
なお、本発明の支持体付絶縁フィルム及びプリプレグに用いられる熱硬化性絶縁樹脂組成物には、希釈溶剤として有機溶剤を任意に使用することができる。該有機溶剤は特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メチルセロソルブ等のアルコール系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0039】
本発明の熱硬化性絶縁樹脂組成物は、多層プリント配線板の製造において、絶縁樹脂層を形成するために好適に使用することができる。本発明の熱硬化性絶縁樹脂組成物は、ワニス状態で回路基板に塗布して絶縁樹脂層を形成することもできるが、工業的には一般に、支持体付絶縁フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料の形態で用いるのが好ましい。
【0040】
本発明の支持体付絶縁フィルムは、(A)、(B)及び(C)成分を配合した熱硬化性絶縁樹脂組成物、又は更に(D)、(E)、(F)成分を配合した該熱硬化性絶縁樹脂組成物を、支持体フィルムに塗布し、乾燥によってワニス中の溶剤を揮発させ、半硬化(Bステージ化)させて絶縁樹脂組成物層を形成したものである。ただし、この半硬化状態は、絶縁樹脂組成物を硬化する際に、絶縁樹脂層とそれを形成する回路パターン基板の接着力が確保される範囲で、また、回路パターン基板の埋めこみ性(流動性)が確保される範囲であることが望ましい。塗工方法(塗工機)としては、ダイコーター、コンマコータ、バーコータ、キスコータ、ロールコーター等が利用でき、絶縁樹脂層の厚みによって適宜使用される。乾燥方法としては、加熱、あるいは熱風吹きつけなどを用いることができる。
【0041】
乾燥条件は特に限定されないが、該熱硬化性絶縁樹脂組成物層への有機溶剤の含有量が通常の10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。ワニス中の有機溶剤量、有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることにより、絶縁樹脂組成物層の半硬化状態のフィルムが形成される。乾燥条件は、予め簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することが好ましい。
【0042】
支持体付絶縁フィルムにおいて形成される絶縁樹脂組成物層の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは5〜70μmであることが好ましく、プリント配線板の軽薄短小化のために、5〜50μmであることがより好ましく、5〜30μmであることが最も好ましい。
【0043】
支持体付絶縁フィルムにおける支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどからなるフィルム、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持体及び後述する保護フィルムには、マッド処理、コロナ処理の他、離型処理が施してもよい。
【0044】
支持体の厚さは特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、より好ましくは25〜50μmである。熱硬化性絶縁樹脂組成物層の支持体が密着していない面には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば1〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、異物混入を防止することができる。
支持体付絶縁フィルムは、ロール状に巻き取って貯蔵することもできる。
【0045】
本発明の支持体付絶縁フィルムを用いて積層板を形成し、多層プリント配線板を製造する方法の形態としては、例えば、支持体付絶縁フィルムを、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする。回路基板に用いられる基板としては、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる積層板及び該積層板から製造される多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっているものも、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0046】
上記ラミネートにおいて、支持体付絶縁フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて支持体付絶縁フィルム及び回路基板をプレヒートし、絶縁フィルムを加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。本発明の支持体付絶縁フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネート条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは0.1〜1.1MPaとし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。
【0047】
支持体付絶縁フィルムを回路基板にラミネートした後、室温(25℃)付近に冷却してから、支持体を剥離する場合は剥離し、熱硬化することにより回路基板に絶縁樹脂層を形成することができる。熱硬化の条件は、熱硬化性絶縁樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150〜220℃で20〜180分、より好ましくは160〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。
【0048】
熱硬化性絶縁樹脂層を形成した後、硬化前に支持体を剥離しなかった場合は、ここで剥離する。次いで必要により、回路基板上に形成された絶縁層に穴開けを行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけは、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけが最も一般的な方法である。
【0049】
次いで、乾式メッキ又は湿式メッキにより絶縁樹脂層上に導体層を形成する。乾式メッキとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。湿式メッキの場合は、まず、硬化した絶縁樹脂組成物層の表面を、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤で粗化処理し、凸凹のアンカーを形成する。酸化剤としては、特に過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等の水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性過マンガン酸水溶液)が好ましく用いられる。次いで、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。その後のパターン形成の方法として、例えば、公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0050】
本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性絶縁樹脂組成物が繊維シート状補強基材に含浸されているものであり、本発明の熱硬化性絶縁樹脂組成物を繊維シート状補強基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸した後、加熱してBステージ化することによる製造される。
【0051】
繊維シート状補強基材としては、例えば、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質の例としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス及びQガラス等の無機物繊維、ポリイミド、ポリエステル及びポリテトラフルオロエチレン等の有機繊維、並びにそれらの混合物等が挙げられる。これらの基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット及びサーフェシングマット等の形状を有するが、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され、必要により、単独又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせることができる。基材の厚さは、特に制限されず、例えば、約0.03〜0.5mmを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。
【0052】
上記のホットメルト法は、樹脂を有機溶剤に溶解することなく、該樹脂との剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状補強基材にラミネートする、あるいは樹脂を、有機溶剤に溶解することなく、ダイコーターによりシート状補強基材に直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、支持体付絶縁フィルムと同様にして樹脂を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、このワニスにシート状補強基材を浸漬し、樹脂ワニスをシート状補強基材に含浸させ、その後乾燥(加熱)させる方法である。
【0053】
次に、上記のようにして製造したプリプレグを用いて多層プリント配線板を製造する方法として、例えば、回路基板に本発明のプリプレグを1枚あるいは必要により数枚重ね、離型フィルムを介して金属プレートで挟み、加圧・加熱条件下でプレス積層する。加圧・加熱条件は、好ましくは、圧力が0.5〜4MPa、温度が120〜200℃で20〜100分である。また支持体付絶縁フィルムと同様に、プリプレグを真空ラミネート法により回路基板にラミネートした後、加熱硬化することも可能である。得られた積層板は、その後、上記で記載した方法と同様にして、硬化したプリプレグ表面を粗化した後、導体層をメッキにより形成して多層プリント配線板を製造することができる。
【実施例】
【0054】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
なお、各実施例及び比較例で得られた支持体付絶縁フィルムの絶縁樹脂層と銅張積層板は、以下の方法により性能を測定・評価した。
【0055】
ガラス転移温度(Tg)
支持体付絶縁フィルムの絶縁樹脂層を、銅箔〔YGP−18、商品名、日本電解株式会社製〕に向かい合わせてラミネートし、PETフィルムを剥離し、180℃で90分間硬化した。その後、銅箔を全面エッチングして、硬化後の絶縁樹脂層の熱膨張係数を評価する試料を作製した。
得られたシート状の硬化物を、長さ20mm、幅3mmに切断し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用いて、昇温速度10℃/分、測定長15mm、加重5g、引張加重法で連続して2回測定した。2回目の測定におけるチャートの変曲点からガラス転移温度(Tg)を算出した。
【0056】
銅箔接着性(銅箔ピール強度)
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板〔日立化成株式会社製、商品名:MCL−E−679F、銅箔厚さ:12μm〕の両面をメック株式会社製「CZ8100」(商品名)を用いて粗化処理を行った。
支持体付絶縁フィルムを、上記で粗化処理を行った回路基板の両面にラミネートした。
ラミネートは30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、圧力0.5MPaでプレスすることにより行った。
ラミネートされた支持体付絶縁フィルムからPETフィルムを剥離し、180℃、60分の硬化条件で絶縁樹脂組成物層を硬化して、絶縁樹脂層を形成した。
次いで、積層板をデスミア処理液に浸漬することによって、絶縁樹脂層表面に微細な凹凸を形成した。セミアディティブ工法による銅メッキを行い、積層板を銅エッチング液に浸漬することにより3mm幅のメッキ銅箔を形成して評価基板を作製し、オートグラフ(株式会社島津製作所製AG−100C)を用いてピール強度を測定した。
【0057】
はんだ耐熱性
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5cm角の評価基板を作製し、株式会社平山製作所製プレッシャー・クッカー試験装置を用いて、121℃、0.2MPa(2atm)の条件で4時間までプレッシャー・クッカー処理を行った後、温度288℃のはんだ浴に、評価基板を20秒間浸漬した後、外観を観察することによりはんだ耐熱性を評価した。
【0058】
難燃性の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板から、長さ127mm、幅12.7mmに切り出した試験片を作製し、UL94の試験法(V法)に準じて評価した。
【0059】
比誘電率及び誘電正接の測定
ヒューレットパッカード社製ネットワークアナライザ(8722C)を用い、トリプレート構造直線線路共振器法により1〜10GHzにおける銅張積層板の比誘電率及び誘電正接の測定を実施した。試験片サイズは200mm×50mm×厚さ0.8mmで、1枚の銅張積層板の片面の中心にエッチングにより幅1.0mmの直線線路(ライン長さ200mm)を形成し、裏面は全面に銅を残しグランド層とした。もう1枚は片面を全面エッチングし、裏面はグランド層とした。ついで2枚のMCLグランド層を外側にして重ね合わせストリップ線路とした。測定は25℃で行った。
【0060】
製造例1:硬化剤(A−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積1リットルの反応容器に(a)のジアミン化合物として4,4´−ジアミノジフェニルメタン:19.2.gと、(b)のマレイミド化合物としてビス(4−マレイミドフェニル)メタン:174.0gと、(c)のモノアミン化合物としてp−アミノフェノール:6.6g、及びジメチルアセトアミド:330.0gを入れ、100℃で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和N−置換マレイミド基を有する硬化剤(A−1)の溶液を得た。
【0061】
製造例2:硬化剤(A−2)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、4,4´−ジアミノジフェニルエタン:20.3gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:173.1gと、p−アミノフェノール:6.6g、及びジメチルアセトアミド:330.00gを入れ、100℃で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和N−置換マレイミド基を有する硬化剤(A−2)の溶液を得た。
【0062】
製造例3:硬化剤(A−3)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、4,4´−ジアミノジフェニルプロパン:21.4gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:172.0gと、p−アミノフェノール:6.6g、及びジメチルアセトアミド:330.0gを入れ、100℃で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和N−置換マレイミド基を有する硬化剤(A−3)の溶液を得た。
【0063】
製造例4:硬化剤(A−4)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、2,2´−ビス[4,4´−ジアミノジフェニル]プロパン:21.6gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:172.4gと、p−アミノフェノール:6.6g、及びジメチルアセトアミド:330.0gを入れ、100℃で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和N−置換マレイミド基を有する硬化剤(A−4)の溶液を得た。
【0064】
製造例5:硬化剤(A−5)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、3,3´−ジメチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン:21.4gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:172.0gと、p−アミノフェノール:6.6g、及びジメチルアセトアミド:330.0gを入れ、130℃で3時間反応させて、酸性置換基と不飽和N−置換マレイミド基を有する硬化剤(A−5)の溶液を得た。
【0065】
製造例6:硬化剤(A−6)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、3,3´−ジエチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン:22.7gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:170.8gと、p−アミノフェノール:6.6g、及びジメチルアセトアミド:330.0gを入れ、130℃で3時間反応させて、酸性置換基と不飽和N−置換マレイミド基を有する硬化剤(A−6)の溶液を得た。
【0066】
製造例7:硬化剤の製造(A−7)
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル:19.3gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:170.8gと、p−アミノフェノール:6.6g、及びジメチルアセトアミド:330.0gを入れ、100℃で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和N−置換マレイミド基を有する硬化剤(A−7)の溶液を得た。
【0067】
比較製造例8:硬化剤の製造(A−8)
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、アニリン:9.0gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:184.0gと、p−アミノフェノール:6.6g、及びジメチルアセトアミド:330.0gを入れ、100℃で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和N−置換マレイミド基を有する硬化剤(A−8)の溶液を得た。
【0068】
比較製造例9:硬化剤の製造(A−9)
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、4−アミノアニリン:10.3gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:182.7gと、p−アミノフェノール:6.6g、及びジメチルアセトアミド:330.0gを入れ、100℃で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和N−置換マレイミド基を有する硬化剤(A−9)の溶液を得た。
【0069】
比較製造例10:硬化剤の製造(A−10)
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、4,4´−ジアミノビフェニル:18.0gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:175.3gと、p−アミノフェノール:6.6g、及びジメチルアセトアミド:330.0gを入れ、100℃で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和N−置換マレイミド基を有する硬化剤(A−10)の溶液を得た。
【0070】
実施例1〜7、比較例1〜3
希釈溶剤にメチルエチルケトンを使用して、下記成分を表1〜表2に示した配合割合(質量部)で混合して樹脂分65質量%の均一な熱硬化性絶縁樹脂組成物ワニスを作製した。
すなわち、(1)酸性置換基とN−置換マレイミド基を有する硬化剤(A)として、実施例1〜7では製造例1〜7で得られた硬化剤を用い、比較例1〜3では比較製造例8〜10で得られた硬化剤を用いた。
(2)次に、熱硬化性絶縁樹脂組成物ワニスをポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm、以下PETフィルムと称す)上に、乾燥後の熱硬化性絶縁樹脂組成物層の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、110℃で6分間乾燥した。次いで、絶縁樹脂組成物層の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。得られたロール状のフィルムを幅507mmにスリット(slit)し、507×336mmサイズのシート状の支持体付絶縁フィルムを製造した。
また、熱硬化性絶縁樹脂組成物ワニスを厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、160℃で10分加熱乾燥して樹脂含有量50質量%のプリプレグを得た。次に、このプリプレグを4枚重ね、18μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力2.5MPa、温度185℃で90分間プレスを行って、銅張積層板を得た。
このようにして作製した支持体付絶縁フィルムの絶縁樹脂層及び銅張積層板について、前記の方法によりにより性能を測定・評価した。結果を表1〜表2に示した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
表1、2中で用いた材料は、
(B):1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂
N−695:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、エポキシ当量213g/eq、軟化点95℃)
(C):エポキシ樹脂の硬化剤
SMA−EF−40:スチレン/無水マレイン酸コポリマー(4/1、質量比、Mw11000)(川原油化株式会社製))
(D):硬化促進剤
G8009L:イソシアネートマスクイミダゾール(第一工業製薬株式会社製)
(F):無機充填材
SC−2050KC:溶融球状シリカ(アドマテック株式会社製、商品名:平均粒子径0.5μm)
【0074】
表1から明らかなように、本発明に係る実施例の絶縁樹脂組成物から得られる銅張積層板は、はんだ耐熱性、難燃性、誘電率が3.8以下、誘電正接が0.007以下であり、低誘電率、低誘電正接であり、信頼性が高い。
一方、表2から明らかなように、酸性置換基及びN−置換マレイミド基を有する硬化剤(A)を合成する際に用いる(a)成分の1分子主鎖中に少なくとも2個のベンゼン環を有するジアミン化合物を用いない比較例1〜3の絶縁樹脂組成物から得られる銅張積層板は、はんだ耐熱性、難燃性、誘電率が4.0以上、誘電正接が0.009以上である誘電特性のいずれかの特性に劣っており信頼性が低く実施例と比較し差異がある。