(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の電子製品において益々高まっている高性能化、小型化、軽量化の要望に応えるため、回路基板における導体パターンの小型化、電気部品の高密度化及び高集積化が進んでいる。従って、小さい面積の基板に高密度の導体パターンが配置されるようになってきており、それに応じて、基板を検査するためのテストポイントも小さくなり、その密度も高くなりつつある。従って、基板検査治具についても高い寸法精度が要求されており、これに応えるために、従来の基板検査治具は、基板の設計データに忠実に従って設計され、製造されてきた。
【0006】
一方、検査対象である基板の製造には露光、現像、乾燥等の工程が必要になり、このときに基板材料に加わる化学的負荷、熱的負荷等により、基板材料が膨張又は収縮することがある。この結果、実際に製造された基板と、基板の設計データと、の間にやや大きな寸法誤差が生じて、基板のテストポイントの位置と、そのテストポイントに対応する基板検査治具の接触子の配置位置と、の間でズレが生じてしまうことがあった。この位置ズレは、当該治具の接触子とテストポイントとの接触を不安定にして検査精度や検査効率に良くない影響を及ぼすので、改善が望まれていた。
【0007】
この点、上記特許文献1の構成は、検査対象である基板の検査点表面の酸化膜による検査誤差を予防することを開示しているが、基板の製造過程で生じる寸法誤差による基板のテストポイントと基板検査治具の接触子との位置ズレについて開示するものではない。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、基板のテストポイントと基板検査治具の接触子との間で生じる、基板の製造プロセスでの伸縮に起因する位置ズレを補償できる検査治具設計方法を提供することにある。
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、以下の基板検査治具設計方法が提供される。即ち、この基板検査治具設計方法は、検査対象の基板のテストポイントに導通接触可能な接触子を有する基板検査治具を設計するためのものである。当該基板検査治具設計方法は、第1設計工程と、伸縮率取得工程と、第2設計工程と、を含む。前記第1設計工程では、検査対象である前記基板の設計データに基づいて、基板検査治具を仮設計した仮設計データを作成する。前記伸縮率取得工程では、前記基板の製造条件
(検査時の環境条件を除く)に基づいて、当該基板の縦方向と横方向との伸縮率のそれぞれを個別に求める。前記第2設計工程では、前記仮設計データを、前記縦方向と前記横方向とにおいて、それぞれの前記伸縮率で個別にスケーリングすることにより、実際に製造する基板検査治具の設計データを得る。
【0011】
本発明の第2の観点によれば、以下の基板検査治具設計方法が提供される。即ち、この基板検査治具設計方法は、検査対象の基板のテストポイントに導通接触可能な接触子を有する基板検査治具を設計するためのものである。当該基板検査治具設計方法は、伸縮率取得工程と、基板スケーリング工程と、設計工程と、を含む。前記伸縮率取得工程では、検査対象である前記基板の製造条件
(検査時の環境条件を除く)に基づいて、当該基板の縦方向と横方向との伸縮率のそれぞれを個別に求める。前記基板スケーリング工程では、前記基板の設計データを、前記縦方向と前記横方向とにおいて、それぞれの前記伸縮率で個別にスケーリングする。前記設計工程では、スケーリング後の前記基板の設計データに基づき、実際に製造する基板検査治具を設計する。
【0012】
なお、本発明における「スケーリング」としては、縦横比を保持してスケーリングする場合と、縦横比を保持せずに(異方的に)スケーリングする場合と、の両方が考えられる。
【0013】
即ち、基板設計データに忠実に従って設計された従来の基板検査治具で上記基板を検査するとき、実際に製造された基板と基板設計データとの寸法誤差による、基板検査治具と基板との接触不良を誘発し、良品の基板を不良品として判定する可能性がある。この点、本発明の基板の検査治具設計方法は、その基板製造上の寸法誤差を基板検査治具の設計段階で考慮して、その誤差を基板検査治具の設計により補償することができる。これにより、実際の良品基板を不良品と検出したり、導通不良のエラーが発生したりするのを回避できるので、検査精度や検査効率を効果的に向上させることができる。
【0014】
前記の基板検査治具設計方法においては、前記伸縮率取得工程において、前記基板の伸縮率は少なくとも、当該基板の製造条件と、
前記基板の材料及び厚みと、に基づいて求められることが好ましい。
【0015】
これにより、基板製造時の伸縮だけでなく、基板を検査するときの環境に基づく当該基板の伸縮についても、基板検査治具の設計段階で考慮することができる。このため、検査精度や検査効率を一層向上させることができる。
【0016】
前記の基板検査治具設計方法においては、前記伸縮率取得工程で、前記基板の伸縮率は、少なくとも当該基板の乾燥工程の条件を考慮して求められることが好ましい。
【0017】
このように、基板が伸縮し易い乾燥工程の条件を考慮して伸縮率が求められるので、基板製造上の寸法変化をより高い精度で補償した基板検査治具を設計することができる。
【0018】
前記の基板検査治具設計方法においては、検査対象である前記基板がフレキシブル基板であることが好ましい。
【0019】
即ち、本発明の基板検査治具設計方法は、熱等の影響で伸縮し易いフレキシブル基板を検査対象とする基板検査治具を設計する場合に特に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の設計方法が対象とする検査治具(基板検査治具)23,24を備える基板検査装置1の模式的な正面図である。
【0025】
基板検査装置1は、基板10に断線や短絡などの不良があるかどうかを電気的に検査するための装置である。
図1に示すように、基板検査装置1はフレーム2を有している。フレーム2の内部空間には、基板固定装置20と、第1検査部21と、第2検査部22と、が主に設けられている。
【0026】
基板検査装置1(検査治具23,24)の検査対象である基板10は、リジッド基板であっても良いし、可撓性を有するフレキシブル基板であっても良い。また、基板検査装置1は、プリント基板に限らず、例えば、液晶パネル及びプラズマディスプレイパネルに配線パターンが形成された回路配線基板や、タッチパネルディスプレイ用の電極基板や、半導体ウエハ等の基板を広く検査対象とすることができる。
【0027】
基板固定装置20は、例えば公知のクランプ機構を備えており、検査対象である基板10を所定の位置に固定するように構成されている。
【0028】
第1検査部21は、基板10の厚み方向の一側に配置され、第2検査部22は、基板10の厚み方向他側に配置されている。第1検査部21と第2検査部22とは、互いに向かい合うようにして配置されている。
【0029】
第1検査部21の第2検査部22側へ向く面に第1検査治具23が設けられ、第2検査部22の第1検査部21側へ向く面に第2検査治具24が設けられている。第1検査治具23及び第2検査治具24は、互いに向かい合うようにして配置される。第1検査部21及び第2検査部22は、例えばネジ送り機構等からなる移動機構を備えている。これにより、第1検査部21及び第2検査部22は、それぞれが有する検査治具23,24を基板10に接触/離間させることができる。
【0030】
第1検査治具23及び第2検査治具24には、基板10(言い換えれば、他側の検査治具)を向く面に、何れも、導電性を有する針状の接触子30が複数設けられている。第1検査治具23の接触子30は、基板10の厚み方向一側の面(第1面)に設定された所定のテストポイント10a(
図3(a))に導通接触することができる。
図3(a)には第1検査治具23だけしか示していないが、第2検査治具24の接触子30は、基板10の厚み方向他側の面(第2面)に設定された所定のテストポイントに導通接触することができる。
【0031】
当該複数の接触子30は、検査対象である基板10に設けられたテストポイント10aの1つにつき1つ又は複数設けられており、基板10のテストポイント10aに接触できるように、第1検査治具23及び第2検査治具24に配置されている。
【0032】
上記接触子30は、基板検査装置1が備える図略の信号供給部及び信号測定部に電気的に接続されている。信号供給部は、第1検査治具23及び第2検査治具24の複数の接触子30を介して、検査対象の基板10に信号を印加する。信号測定部は、信号供給部によって印加された信号に応じて基板10に流れた信号を検出する。以上により、基板10の電気的検査を行うことができる。
【0033】
第1検査治具23は第1検査部21に対して交換可能に取り付けられ、同様に、第2検査治具24は第2検査部22に対して交換可能に取り付けられる。これにより、検査したい基板10が変更されるのに応じて検査治具23,24を交換できるので、基板検査装置1の汎用性を高めることができる。
【0034】
上記の検査治具23,24は、検査装置メーカーにおいて設計及び製造され、実際に検査を行うユーザ(基板製造メーカーや検査業者等)へ出荷される。具体的に説明すると、ユーザは、基板検査装置1により検査したい基板10の設計データを、基板検査装置1を製造した検査装置メーカーに支給する。検査装置メーカーは、この設計データに基づいて検査治具23,24を設計及び製造し、ユーザへ納品する。ユーザは、基板検査装置1及び検査治具23,24を用いて、基板10の検査を行う。
【0035】
次に、検査対象である基板10の製造プロセスの概略を説明する。なお、上述したとおり検査対象の基板10は様々に考えられるが、ここでは、導電体箔としての銅箔による導体パターンを形成したプリント基板を例にして説明する。
図2に示すように、基板10の製造工程は、主に、基板材料の切断工程11と、パターン形成工程12と、保護材の塗布や印字などの後工程13と、を含む。
【0036】
基板材料の切断工程11においては、基板材料が、基板10の設計データに基づいて、適宜の大きさで切断される。
【0037】
パターン形成工程12は、露光工程12aと、現像工程12bと、腐食工程(エッチング工程)12cと、乾燥工程12dと、を含む。
【0038】
露光工程12aでは、最初に、基板材料に形成されている銅箔に、感光剤が塗布される。続いて、基板10の設計データに基づいて作成されたマスクを用いて、基板材料に塗布された感光剤を、例えば紫外光等により選択的に感光させる。
【0039】
現像工程12bでは、感光された基板材料を現像液に浸して、感光された部分(又は、感光されない部分)の感光剤を除去することにより、当該部分の銅箔を露出させる。
【0040】
腐食工程(エッチング工程)12cでは、現像された基板材料をエッチング液に浸して、露出された銅箔を除去する。
【0041】
パターン形成工程12において上記のような工程が行われることにより、基板設計データに基づいた導体パターン(配線パターン)が基板材料表面に形成される。
【0042】
乾燥工程12dでは、現像液及びエッチング液に浸した基板10を乾燥器などで乾燥する。なお、基板10の乾燥工程12dは、
図2に示すように腐食工程12cの後で行われるだけではなく、必要に応じて、他のそれぞれの工程後に行われることが一般的である。
【0043】
後工程13は、必要に応じて、基板10のパターン及び基板材料の保護用レジストを塗布する工程、基板10に実装する電子部品等の記号を印刷する印字工程、基板10に孔を開ける工程、銅等の導電体を孔にメッキする工程、基板10の表面処理工程、基板10の外形を形成する工程等を含む。以上により基板10の製造は完了し、その後の検査工程14では、当該基板10に対し、上述の基板検査装置1により、検査治具23,24を用いた電気的な検査が行われる。
【0044】
この基板10の材料としては、基板10の種類や用途に応じて様々なものが採用される。例えば、紙にフェノール樹脂を含浸したものである紙フェノール材や、ガラス繊維製のクロスを重ねたものにエポキシ樹脂を含浸したものであるガラスエポキシ材や、薄いポリイミド材や、半導体素子を製造する材料であるシリコンウエハなどを挙げることができる。
【0045】
上述したように、基板10の製造においては、その製造工程に応じて、基板材料を加熱したり、冷却したり、薬液などに浸したり、乾燥したりする必要がある。このときの熱や薬液等の影響で基板材料が膨張/収縮して、実際に完成した基板10と基板設計データとの間に寸法誤差が発生してしまい、検査治具23,24による検査精度又は検査効率に良くない影響を及ぼすことがある。また、上記の基板材料の膨張/収縮は、基板10の製造工程だけでなく、基板10の検査工程においても起こり得る。
【0046】
以下、
図3(a)及び
図3(b)を参照して詳細に説明する。
図3(a)は、検査治具23が備える接触子30と基板10のテストポイント10aとの接触について、理想的な場合を示す図である。
図3(b)は、従来技術において発生していた位置ズレを示す図である。なお、
図3(a)においては位置関係の説明を簡単にするために、検査治具23に接触子30が1つしか描かれず、基板10にはテストポイント10aが1つしか描かれていないが、実際は上述したとおり、検査治具23は複数の接触子30を有し、基板10には複数のテストポイント10aが設定されている。
【0047】
検査治具23は、
図3(a)に示すように、その接触子30の先端と、検査対象である基板10のテストポイント10aの中心位置と、が一致するように接触できることが理想である(検査治具24も同様である)。
【0048】
しかし、実際には、上記したような基板製造時又は基板検査時における基板材料の伸縮の影響により、実際に製造され検査される基板10と、元の設計データと、の間にやや大きな寸法誤差が発生してしまう。一方、検査治具23は、基板10の設計データに忠実に従って設計及び製造され、また、製造にあたって上記のパターン形成工程のような薬品処理や乾燥等を行うことが殆どない。従って、検査治具23に寸法誤差が発生するにしても、基板10の設計データとの乖離は相対的に小さい。
【0049】
従って、従来のように基板10の設計データに基づいて検査治具23を製造して検査する場合、
図3(b)に示すように、当該検査治具23の接触子30の位置が、実際に検査される基板10のテストポイント10aの中心位置からズレてしまうことがある。この位置ズレは、接触子30と基板10のテストポイント10aとの間で接触不良が発生する原因となる。特に、導体パターンをμm単位で形成する場合、僅かなズレでも、検査治具23の接触子30と基板10のテストポイント10aとの接触不良が発生する可能性が高くなる。このような接触不良は、検査治具23の検査精度や検査効率を低下させる。
【0050】
この点、本実施形態の検査治具23は、その設計段階において、上記のような基板10の寸法変化を見込んだものとなっている。以下、
図4を参照して、本実施形態の検査治具設計方法について説明する。
図4は、本発明の治具設計方法を示す工程フロー図である。
【0051】
本実施形態において、検査治具23,24の設計は、上述したとおり検査装置メーカー側で行われる。この治具設計方法は、
図4に示すように、第1設計工程と、伸縮率取得工程と、第2設計工程と、を含む。
【0052】
第1設計工程では、ユーザから支給された基板10の設計データに基づいて、検査治具23,24を仮に設計し、仮設計データを作成する。なお、この第1設計工程は従来の設計工程と実質的に同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0053】
伸縮率取得工程では、基板10の各製造工程の製造条件、及び検査工程で想定される環境条件に応じて定められた基板10の伸縮率に基づいて、完成後に検査される基板10の寸法と基板設計データの寸法との倍率(伸縮率)を計算により求める。
【0054】
第2設計工程では、伸縮率取得工程で得られた伸縮率に基づいて、第1設計工程で設計された検査治具の仮設計データをスケーリングして、実際の検査治具23,24の設計データを完成させる。
【0055】
なお、基板10が異方性を有しているために、上記の伸縮率が必ずしも基板10の縦と横で同じとは限らない場合がある。この点を考慮し、本実施形態では、伸縮率取得工程では伸縮率を基板10の縦方向と横方向とで個別に計算し、スケーリング工程では仮設計データを縦方向と横方向とで個別にスケーリングを行うこととしている。
【0056】
次に、
図4を参照して、各工程を詳細に説明する。
【0057】
最初に、検査治具23,24の設計を行うCADソフトウェアに、検査対象である基板10の設計データを読み込ませる(ステップS101)。このCADソフトウェアは適宜のものを用いることができ、2次元CADでも3次元CADでも良い。次に、読み込んだ設計データに基づいて、CADソフトウェア上で検査治具の仮設計を行う(ステップS102)。この仮設計作業には、基板設計データのテストポイントの位置に対応するように、検査治具23,24の接触子30を配置する作業が含まれる。
【0058】
検査治具23,24の仮設計が完了したら、次に、基板10の各製造工程の製造条件、基板10の検査時に想定される環境条件、及び基板材料の特性に基づいて、完成して検査される基板10の設計データに対する伸縮率を計算する(ステップS103)。
【0059】
この計算方法は種々考えられるが、例えば
図2に示すように、基板材料の露光工程12aでの伸縮率をαとし、現像工程12bでの伸縮率をβとし、腐食工程12cでの伸縮率をγとし、乾燥工程12dでの伸縮率をδとし、検査工程14での環境による伸縮率をθとする基板10の伸縮モデルを考えることができる。
【0060】
伸縮率取得工程(ステップS103)では、先ず、基板製造メーカーから支給された製造工程及び条件のデータ、並びに検査時の環境条件のデータに基づき、上記基板材料の各工程の伸縮率α,β,γ,δ,θを求める。この伸縮率α,β,γ,δ,θは、理論的に計算しても良いし、様々な製造工程、製造条件、及び検査環境の条件で予め経験的に求めておいた実験結果テーブルを参照することにより取得しても良い。
【0061】
この伸縮率α,β,γ,δ,θに影響を与える因子としては、各工程に共通なものとして、基板10の材料や厚みを挙げることができる。また、それぞれの製造工程の具体的な条件及び検査時の環境条件も、対応する伸縮率α,β,γ,δ,θに影響を及ぼすと考えられる。例えば、基板10を露光する工程であれば露光時間等、基板10を薬液に浸漬する工程であれば薬液の種類、濃度、温度、浸漬時間等、基板10の乾燥工程であれば乾燥温度、乾燥時間等、基板10を検査するときはその周囲環境(例えば温度や湿度)等、様々なものを、上記の伸縮率α,β,γ,δ,θに影響を与える因子として指摘することができる。
【0062】
伸縮率α,β,γ,δ,θの値は、製造工程、製造条件及び検査時の環境条件に関連付けた形で、CADソフトウェアがインストールされているコンピュータ、あるいは他のコンピュータに、例えばデータベース(伸縮率記憶部)の形で記憶される。そして、各伸縮率α,β,γ,δ,θを考慮して、最終的に完成して検査される基板10が元の設計データからどれだけ伸縮しているか、を示す伸縮率をシミュレーション計算する。
【0063】
この工程で計算される伸縮率は、最終的に完成して検査される基板10と、その元となる設計データと、の間で発生する寸法誤差の傾向を良好に表している。即ち、基板製造等の際の基板材料の伸縮に起因する、完成した基板10のテストポイント10aの位置と設計データのテストポイントの位置ズレ(
図3(b)に示す位置ズレε)を、当該伸縮率取得工程で計算された伸縮率に基づいた計算により、良好に推測することができる。
【0064】
続いて、伸縮率取得工程で計算された伸縮率に基づいて、第1設計工程で設計された仮設計データを、CADソフトウェア上で拡大又は縮小(スケーリング)する(ステップS104)。このスケーリングは、CADソフトウェアが通常備えている、縦横の比率を個別に指定してスケーリングする機能を利用して行えば良い。
【0065】
このスケーリングにより、検査治具23,24の接触子30の配置位置が調整される。即ち、
図3(c)に示すように、基板10のテストポイント10aと設計データとの上記位置ズレεを、検査治具23,24の接触子の配置位置の調整で補償することができる。以上により、検査治具23,24の最終的な設計データが完成し(ステップS105)、この設計データに基づいて検査治具23,24が実際に製造される。
【0066】
以上に示す治具設計方法で設計した検査治具23,24の接触子30は、
図3(c)に示すように、実際に製造された基板10を検査するとき、そのテストポイント10aと適切に接触できることが期待される。これにより、検査治具23,24と基板10の導通不良が回避されるので、検査精度及び検査効率を大幅に高めることができる。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態の検査治具23,24は、検査対象の基板10のテストポイント10aに導通接触可能な接触子30を有する。そして、この検査治具23,24は、第1設計工程と、伸縮率取得工程と、第2設計工程と、を含む設計方法によって設計される。第1設計工程では、検査対象である基板10の設計データに基づいて、検査治具23,24を仮設計した仮設計データを作成する。伸縮率取得工程では、基板10の製造条件(及び検査時の環境条件)に基づいて、当該基板10の伸縮率を求める。第2設計工程では、仮設計データを前記伸縮率でスケーリングすることにより、実際に製造する検査治具23,24の設計データを得る。
【0068】
この方法により設計された検査治具23,24は、検査対象である基板10の製造上の誤差(及び検査時の環境に基づく誤差)を当該検査治具23,24の設計段階で考慮して、その誤差を補償したものとなっている。これにより、実際の良品基板を不良品と検出したり、導通不良のエラーが発生したりするのを回避できるので、検査精度や検査効率を効果的に向上させることができる。
【0069】
また、上記の設計方法において、基板10の伸縮率は、当該基板10の製造条件と、基板10の検査時に想定される環境条件と、に基づいて求められる。
【0070】
これにより、基板10の製造時の伸縮だけでなく、基板10を検査するときの環境に基づく当該基板10の伸縮についても、検査治具23,24の設計段階で考慮することができる。このため、検査治具23,24を用いた場合の検査精度や検査効率を一層向上させることができる。
【0071】
また、上記の設計方法において、基板10の伸縮率は、当該基板10の乾燥工程12dの条件を考慮して求められる。
【0072】
このように、基板10が伸縮し易い乾燥工程12dの条件を考慮して伸縮率を求めることで、基板10の製造過程での寸法変化をより高い精度で補償した検査治具23,24を設計することができる。
【0073】
なお、基板10がフレキシブル基板である場合、本実施形態の設計方法を採用することがより好ましい。この理由は、フレキシブル基板は、いわゆるリジッド基板と比較して熱等の影響で伸縮し易いため、その影響を補償することがより効果的だからである。
【0074】
また、
図4の実施形態では、最初に基板10の設計データに基づいて検査治具23,24の仮設計を行ってから、その仮設計データをスケーリングしている。しかしながらこれに代えて、基板10の設計データを前記伸縮率でスケーリングしてから(基板スケーリング工程)、スケーリング後の基板データに基づいて検査治具23,24を設計する(設計工程)、という手順で設計を行っても良い。この場合でも、
図4で説明した設計方法と同様の効果を得ることができる。
【0075】
以上に本発明の好適な実施形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0076】
図4における伸縮率の計算(伸縮率取得工程)が、検査治具23,24の仮設計作業(第1設計工程)の前に行われても良い。
【0077】
上述した仮設計データや基板データのスケーリングは、CADソフトウェア上で行うことに限らず、例えば、適宜の座標変換ソフトウェアを用いて設計データの座標を適宜変換することで実現することができる。
【0078】
例えば基板検査時の環境が未定である場合等には、伸縮率を求める際に、検査時の環境条件を考慮しないようにすることもできる。
【0079】
本発明の設計方法で設計される検査治具は、
図1の構成の基板検査装置1に限らず、様々な検査装置に適用することができる。例えば、2つの検査治具23,24を有する場合に限らず、検査部及び検査治具を1つだけ備え、基板10の片面だけを検査する検査装置に適用することもできる。