特許第6443732号(P6443732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6443732導電性粒子、導電性粉体、導電性高分子組成物および異方性導電シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443732
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】導電性粒子、導電性粉体、導電性高分子組成物および異方性導電シート
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20060101AFI20181217BHJP
   C22C 19/03 20060101ALI20181217BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20181217BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20181217BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20181217BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20181217BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B22F1/00 M
   C22C19/03 M
   B22F1/02 A
   H01B1/00 C
   H01B1/22 A
   H01B5/16
   H01B5/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-217570(P2014-217570)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2016-84504(P2016-84504A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 英人
(72)【発明者】
【氏名】野坂 勉
【審査官】 中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−073681(JP,A)
【文献】 特開2009−197317(JP,A)
【文献】 特開2001−279306(JP,A)
【文献】 特開2006−131978(JP,A)
【文献】 特開2009−221360(JP,A)
【文献】 特開2009−019974(JP,A)
【文献】 特開2010−278026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F1/00−1/02
B22F9/00―9/24
C22C19/00−19/03
H01B1/00−1/24
H01B5/00−5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5質量%以上15質量%以下のPを含む球状のNiコアと、前記Niコアの表面を覆う第1めっき層とを有し、前記第1めっき層は純Niめっき層または4.0質量%以下のPを含むNiめっき層であり、前記第1めっき層の厚さは0.9μm以上10μm以下である、導電性粒子。
【請求項2】
前記Niコアの直径は1μm以上100μm以下である、請求項に記載の導電性粒子。
【請求項3】
前記第1めっき層の表面を覆う第2めっき層を有し、前記第2めっき層は厚さが5nm以上200nm以下のAuめっき層である、請求項1または2に記載の導電性粒子。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の導電性粒子を含む粉体であって、積算体積分布曲線におけるメジアン径d50が3μm以上100μm以下であり、かつ、(d90−d10)/d50≦0.8である、導電性粉体。
【請求項5】
請求項に記載の導電性粉体と、高分子とを含み、前記高分子は、ゴム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または光硬化性樹脂である、導電性高分子組成物。
【請求項6】
請求項に記載の導電性高分子組成物から形成され、前記導電性粒子が厚さ方向に配列された、異方性導電シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子、導電性粉体、導電性高分子組成物および異方性導電シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Pなどの半金属を含む球状のNi合金粒子をコアとする導電性粒子、その導電性粒子の集合体である導電性粉体、その導電性粉体を用いた導電性高分子組成物、およびその導電性高分子組成物を用いた導電シート(導電フィルム)は、電子部品間の電気的な接続を行う用途などに広く用いられている。特に、小型の電気機器(例えば携帯電話など)では、厚さ方向に特段の導電性を有する異方性導電シートや異方性導電フィルムが広く利用されている。
【0003】
上述したNi合金粒子は、自らも導電性粒子であるが、導電性に優れるとともに金属特性的に安定なAuめっき層を表面に設けることが一般的に行われている。例えば、特許文献1には、半金属(C、B、P、Si、As、Te、Ge、Sbなど)を含む結晶質のNi合金粒子(コア)と、そのコアの表面に1μm以下の厚さのAuめっき層を有する構成の導電性粒子が記載されている。特許文献2には、Niを主体にPを含み、NiP金属間化合物が分散した表層部を有する球状NiP微小粒子(コア)と、そのコアの表面にAuめっき層を有する構成の導電性粒子が記載されている。特許文献3には、Ni、P、およびCuを含み、さらにSnを含むことができる還元析出型球状NiP微小粒子(コア)と、その製造方法、および、そのコアの表面にAuを有する構成の導電性粒子が記載されている。
【0004】
また、特許文献4、5には、導電性微粒子の最表面にPd層を有する構成の導電性粒子が記載されている。特許文献4には、例えば樹脂微粒子(コア)の表面にNiおよび7質量%以上のPを含む厚さが例えば40nm〜150nmのめっき層を有し、さらに最表面に厚さが例えば10nm〜50nmのPd層を有する構成の導電性粒子が記載されている。特許文献5には、材質が限定されない芯材粒子(コア)の表面にNiおよび1質量%以上10質量%未満のPを含む結晶構造の下地皮膜を有し、その下地皮膜の表面にNi、P、およびM(W、Pd、Pt、およびMoのうちの1種以上)を含む結晶構造の上層皮膜を有し、さらにAuまたはPdからなる最外層皮膜を有する構成の導電性粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−363603号公報
【特許文献2】特開2006−131978号公報
【特許文献3】特開2009−197317号公報
【特許文献4】特開2011−175951号公報
【特許文献5】特開2014−13660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に記載の導電性粒子は、NiおよびPなどを含むNi粒子(以下、「NiP粒子」という。)がコアとして使用されている。NiP粒子は、自らも導電性粒子であり、例えば還元剤に次亜リン酸を用いる湿式無電解還元反応によって製造されている。しかし、Pなどを含むNiP粒子は、Pなどを含まない高純度のNi粒子(以下、「純Ni粒子」という。)よりも体積抵抗値が大きく導電性が低い。純Ni粒子は、例えば還元剤にヒドラジンを用いる湿式無電解還元反応によって製造することができるが、製造可能な最大粒子径は例えば5μmである。このため、例えば20μm〜50μmの粒子径が求められる場合、NiP粒子が使用されていた。また、特許文献4、5に記載の導電性粒子は、コアとして非金属粒子も使用できる。しかし、非金属粒子の体積抵抗率はNiP粒子よりも格段に大きく導電性が低い。
【0007】
上述したようにコアの体積抵抗率が大きく導電性が低い場合、そのコア自体の体積抵抗率に着目されることなく特許文献1〜5のいずれにも記載されているように、コアとなるNiP粒子や非金属粒子の表面に導電性の良いAuめっき層を設けることにより、粒子全体の体積抵抗率を小さくして導電性を高めることが専らであった。しかし、Auめっき層は、導電性の経年変化がほとんどなく多用されているが、高価である。Auに替えて、例えばAg、Cu、Alなどの適用も考えられる。しかし、AgはAuよりも導電性が良いが、マイグレーション、硫化、酸化などの問題がある。CuやAlは導電性が良いが、酸化などの問題がある。さらにAlは、水溶性めっきができないためAl層の形成が高コストになる問題がある。なお、従来から使用されているPdめっき層は、同じ厚さのAuめっき層よりも導電性が低いため、厚さを十分に大きくする必要があった。
【0008】
本発明の目的は、最表面にAuめっき層を有さないNiP粒子からなる導電性粒子を対象としたときに、従来よりも体積抵抗率が特段に小さい導電性粒子を提供することである。
また、最表面にAuめっき層を有するNiP粒子からなる導電性粒子を対象としたときに、従来よりも体積抵抗率が小さい導電性粒子を提供し、求められる導電性能によっては、従来よりもAuめっき層の厚さが小さい安価な導電性粒子を提供することである。
また、NiP粒子からなる従来よりも体積抵抗率が小さい導電性粒子を適用し、その導電性粒子の集合体である導電性粉体、その導電性粉体を用いた導電性高分子組成物、およびその導電性高分子組成物を用いた異方性導電シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、NiP粒子に含まれるP量とNiP粒子の体積抵抗率との関係を見出すとともに、従来の還元剤に次亜リン酸を用いる湿式無電解還元反応によって製造されたNiP粒子にも適用することができる導電性粒子の新規な構成を見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち本発明の実施形態の導電性粒子は、5質量%以上15質量%以下のPを含む球状のNiコアと、前記Niコアの表面を覆う第1めっき層とを有し、前記第1めっき層は純Niめっき層または4.0質量%以下のPを含むNiめっき層であり、前記第1めっき層の厚さは0.9μm以上10μm以下である。
【0011】
ある実施形態において、前記Niコアの直径は1μm以上100μm以下である。
ある実施形態において、前記第1めっき層の表面を覆う第2めっき層を有し、前記第2めっき層は厚さが5nm以上200nm以下のAuめっき層である。
【0012】
本発明の実施形態による導電性粉体は、上記のいずれかの導電性粒子を含む粉体であって、積算体積分布曲線におけるメジアン径d50が3μm以上100μm以下であり、かつ、(d90−d10)/d50≦0.8である。
【0013】
本発明の実施形態による導電性高分子組成物は、上記の導電性粉体と、高分子とを含み、前記高分子は、例えば、ゴム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または光硬化性樹脂である。
【0014】
本発明の実施形態による異方性導電シートは、上記の導電性高分子組成物から形成され、前記導電性粒子が厚さ方向に配列されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、最表面にAuめっき層を有さないNiP粒子からなる導電性粒子の体積抵抗率を、従来よりも特段に小さくすることができる。また、最表面にAuめっき層を有するNiP粒子からなる導電性粒子の体積抵抗率を、従来よりも小さくすることができる。また、この構成において、求められる導電性能によっては、従来よりもAuめっき層の厚さが小さい安価な導電性粒子を提供することができる。よって、本発明の実施形態である導電性粒子の適用により、従来よりも体積抵抗率が小さい導電性粒子すなわち導電性の良い導電性粒子の集合体である導電性粉体が得られ、その導電性粉体を用いた導電性の良い導電性高分子組成物および異方性導電シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態による導電性粒子の断面イメージを示す図である。
図2】本発明の別の実施形態による導電性粒子の断面イメージを示す図である。
図3】実施例2の導電性粒子10aの断面SEM像を示す図(写真)である。
図4】導電性粒子の体積抵抗率の測定に用いた装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における重要な特徴は、Pを含む球状のNiコア(NiP粒子)の表面に、純Niめっき層または少量のPを含むNiめっき層を有する構成にある。
本発明の実施形態の導電性粒子は、5質量%以上15質量%以下のPを含む球状のNiコアと、前記Niコアの表面を覆う第1めっき層とを有し、前記第1めっき層は純Niめっき層または4.0質量%以下のPを含むNiめっき層である。上述したように還元剤に次亜リン酸を用いることが一般的である従来のNiP粒子には、Pが5質量%以上含まれる。よって、本発明に係る前記第1めっき層は、前記NiコアにおけるPの含有比率よりも確実に小さくなるようにPの含有比率のバラツキを考慮し、4.0質量%以下のPを含むNiめっき層とする。なお、前記Niめっき層におけるPが0.1質量%未満であれば、前記第1めっき層は実質的にPを含まない純Niめっき層に相当する。この構成により、本発明に係る導電性粒子は、従来のNiP粒子よりも特段に小さい体積抵抗率を有することができる。
【0018】
以下、適宜図面を参照し、本発明の実施形態による導電性粒子、導電性粉体、導電性高分子組成物および異方性導電シートについて説明する。
図1に、本発明の実施形態による導電性粒子10の断面イメージを示す。導電性粒子10は、NiおよびPを含む球状のNiコア11(NiP粒子)と、Niコア11の表面を覆う第1めっき層12とを有する。本発明でいう球状は、例えば異方性導電シートに用いる場合は扁平な形状でないことが求められることから、0.80以上の真球度を有する真球またはそれに近い形状を想定しているが、これに限定しなくてもよい。また、真球度とは、真球からのずれを表し、複数個の各粒子の直径を長径で割った際に算出される算術平均値であり、値が上限である1.00に近いほど真球に近いことを表す。
また、図2に、本発明の別の実施形態による導電性粒子10aの断面イメージを示す。導電性粒子20は、NiおよびPを含む球状のNiコア11(NiP粒子)と、Niコア11の表面を覆う第1めっき層12と、第1めっき層12の表面を覆うAuめっき層13とを有する。なお、説明を簡便にするために、図1図2とで符号を共用している。
【0019】
導電性粒子10、10aに用いるNiコア11の直径(粒径)は、例えば1μm以上100μm以下であることが好ましい。Niコア11の直径が1μm未満であると、Niコア11の凝集が激しくなるので、Niコア11を集合体(粉体)として取扱うことが容易でなくなる。Niコア11の直径が100μmを超えると、導電経路からはみ出して、例えば、隣接配線間のショートを引き起こす可能性が高まる。また、Niコア11の直径は、3μm以上であることが好ましく、30μm以下であることが好ましい。Niコア11の直径が3μm以上であると、第1めっき層を形成する際のめっき処理においてNiコア11の凝集が緩和されるので、実用的である。Niコア11の直径が30μm以下であると、導電経路からのはみ出しがなくなるか、あるいは低減される。
【0020】
Niコア11を用いた導電性粒子10、10aの集合体としての導電性粉体(以下、「Ni粉体」という。)は、積算体積分布曲線におけるメジアン径d50が3μm以上100μm以下であり、かつ、(d90−d10)/d50≦0.8であることが好ましい。メジアン径d50はNi粉体の平均粒径の目安にすることができる。また、(d90−d10)/d50が0.8を超えると粒径のバラツキが大きく、導電経路において配線または電極に接触しない小粒径の導電性粒子が存在することになるので、接続信頼性が低下する可能性がある。d10およびd90は、それぞれ、積算体積分率が10%および90%となる粒径を表す。なお、本明細書における粒度分布は、特に説明しない限り、レーザー回折散乱法によって求められるものを指す。
【0021】
導電性粒子10、10aのNiコア11として、例えば、特許文献2または3に記載の導電性粒子を好適に用いることができる。特許文献3に記載の製造方法によって製造された導電性粉体であるNi粉体は、単分散で、かつ、粒度分布が狭いので、(d90−d10)/d50≦0.8の関係を満足するNi粉体を容易に製造できるという利点を有している。
【0022】
Niコア11は、Ni(ニッケル)を主成分とし、P(燐)を含む。Pは、Niコア11の造球過程において、Niの還元析出によるコアの成長を促進する目的で、反応処理液中の出発成分として添加することができる。PがNiコア11に含まれる量は、Niコア11自体の体積抵抗率を低くするとの理由から少量であるほど好ましい。具体的に、Niコア11が本発明の作用効果を奏するためには、Pの含有量が15質量%超にであるとNiコア11の体積抵抗率の上昇が著しいので、全体に対して5〜15質量%のPを含むものを使用し、好ましくは10質量%以下のものを使用する。
【0023】
また、Niコア11は、上述したPの他、全体に対して0.01質量%〜18質量%のCu(銅)を含む場合がある。Cuは、コアの成長や凝集を抑制する目的で、反応処理液中の出発成分として添加することができる。CuがNiコア11に含まれる量は、Niコア11自体の体積抵抗率を低くするとの理由から少量であるほど好ましい。Cu含有量が18質量%超になると、Niコア11と第1めっき層12との密着性が低下する可能性もある。
【0024】
また、Niコア11は、上述したPおよびCuの他、全体に対して0.05質量%〜10質量%のSn(錫)を含む場合がある。Snは、Cuと同様に、コアの成長や凝集を抑制する目的で、反応処理液中の出発成分として添加することができる。SnがNiコア11に含まれる量は、Niコア11自体の体積抵抗率を低くするとの理由から少量であるほど好ましい。Snの含有量が10質量%超になると、Niコア11と第1めっき層12との密着性が低下する可能性もある。
上述したCuおよびSnは、Niコア11に用いられる粉体を製造する際に、核生成反応の触媒毒として作用するため単分散で粒度分布の狭い粉体を容易に製造することが可能になる。またCuおよびSnはNiP導電性粒子の成長過程において共析する。
【0025】
Niコア11の表面に設ける第1めっき層12は、純Niめっき層または4.0質量%以下のPを含むNiめっき層(以下、「低P−Niめっき層」という。)とする。純Niめっき層は、無電解めっき法や電解めっき法によって形成することができる。低P−Niめっき層は、一般的に無電解還元めっき法によって形成される。
【0026】
第1めっき層12の厚さは0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。第1めっき層12の厚さが0.1μm未満では、Niコア11の表面に第1めっき層12を有する粒子(導電性粒子10)の体積抵抗率が十分に小さくならない可能性がある。また、Niコア11の表面に第1めっき層12を有する粒子(導電性粒子10)の体積抵抗率は、第1めっき層12の厚さを10μmを超えて大きくしても、その厚さの増分に見合うだけの特段の変化がないので、コスト的に無駄であり実用的でない。
【0027】
Niコア11の表面に第1めっき層12を設け、その第1めっき層12の表面にさらにAuめっき層13を設けた粒子(導電性粒子10a)に形成することは好ましい。最表面にAuめっき層13を有する導電性粒子10aは、Niコア11の表面に第1めっき層12を有する粒子(導電性粒子10)よりも体積抵抗率を小さくすることができる。Auめっき層13は、一般的に無電解めっき法によって形成されるが、無電解還元めっき法によるよりも無電解置換めっき法によることが好ましい。無電解置換めっき法によって形成されたAuめっき層13(無電解置換Auめっき層)は、無電解還元Auめっき層よりも、第1めっき層12(純Niめっき層または低P−Niめっき層)との密着性が良い。
【0028】
Auめっき層13の厚さは5nm以上200nm以下であることが好ましい。Auめっき層13の厚さが5nm未満では、導電性粒子10aの体積抵抗率がNiコア11の表面に第1めっき層12を有する粒子(導電性粒子10)よりも十分に小さくならない可能性がある。また、導電性粒子10aの体積抵抗率は、Auめっき層13の厚さを200nmを超えて大きくしても、その厚さの増分に見合うだけの特段の変化がないので、コスト的に無駄であり実用的でない。こうした体積抵抗率の低減効果およびコスト的な観点から、Auめっき層13のより好ましい厚さは10nm以上100nm以下である。厚さの大きい例えば50nm以上200nm以下のAuめっき層を形成する場合、無電解置換Auめっきおよび無電解還元Auめっきを一つのめっき処理中に行う無電解置換・還元めっき法によるか、あるいは、無電解置換めっき法によって厚さが例えば50nmのAuめっき層を形成した後に、無電解還元めっき法によってAuめっき層の厚さを例えば150nmまで大きくするめっき処理によればよい。
【0029】
本発明の実施形態による導電性粒子10は、Niコア11と、Niコア11の表面を覆う第1めっき層12(純Niめっき層または低P−Niめっき層)とを有するので、従来のNiP粒子(導電性粒子)に比べ、体積抵抗率を特段に小さくすることができる。よって、本発明の実施形態である導電性粒子10の適用により、従来のNiP粒子を用いるよりも体積抵抗率が小さく導電性の良いNi粉体(導電性粉体)を得ることができる。また、そのNi粉体を用いた導電性の良い導電性高分子組成物および異方性導電シートを得ることができる。
【0030】
また、本発明の別の実施形態による導電性粒子10aは、第1めっき層12(純Niめっき層または低P−Niめっき層)よりも導電性の良いAuめっき層13が導電性粒子10の表面を覆っているので、導電性粒子10よりもさらに体積抵抗率を小さくすることができる。よって、本発明の別の実施形態である導電性粒子10aの適用により、従来のNiP粒子の表面にAuめっき層を有する導電性粒子を用いるよりも体積抵抗率が小さく導電性の良いNi粉体(導電性粉体)を得ることができる。また、そのNi粉体を用いた導電性の良い導電性高分子組成物および異方性導電シートを得ることができる。
【0031】
本発明による実施形態の導電性粒子10、10aは、例えば、以下の方法で製造することができる。
まず、Pを含む球状のNiコア11の集合体であるNi粉体を準備する。この場合、特許文献3に記載された方法で製造されたNi粉体が好ましい。
具体的には、硫酸ニッケル六水和物と硫酸銅五水和物と錫酸ナトリウム三水和物とを、NiとCuとSnのモル比が0.29:0.01:0.05となるよう調製して、純水に溶解し、金属塩水溶液を15(dm)作製した。なお、硫酸銅五水和物や、さらに錫酸ナトリウム三水和物を配合することにより、上述したようにCuや、さらにSnを含むNiP粒子が作製されるが、NiP粒子径(粒径)が揃いやすい、容易かつ安定な粒子の大径化が可能になるなどの作用効果を奏する。次に、酢酸ナトリウムを純水に溶解して、1.0(kmol/m)の濃度とし、更に水酸化ナトリウムを加えてpH調製水溶液を15(dm)作製した。そして、上記の金属塩水溶液とpH調製水溶液を撹拌混合し、30(dm)の混合水溶液とし、pHを測定すると8.1の値を示した。そして、上記の混合水溶液をNガスでバブリングしながら外部ヒーターにより343(K)に加熱保持し、撹拌を続けた。次に、純水に1.8(kmol/m)の濃度でホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)を溶解した還元剤水溶液を15(dm)作製し、こちらも外部ヒーターによって343(K)に加熱した。そして、上記、30(dm)の混合水溶液と15(dm)の還元剤水溶液を、温度が343±1(K)となるように調製した後に混合した。
【0032】
このようにして準備した無電解還元めっき液を用いて、無電解還元めっき法によってNi粉体を得た。製造されたNi粉体を構成するNiコア11は、Pが7.4質量%、Cuが3.9質量%、Snが0.3質量%含まれ、残部がNiである成分組成を有していた。なお、無電解還元めっき液中にCu源である硫酸銅五水和物やSn源である錫酸ナトリウム三水和物を配合しなくても、上述した方法と同様にしてNiP粒子を作製することができる。この場合、NiP粒子にはCuやSnは含まれない。
以下、実施例1〜7及び比較例1、2では、Niコアに用いるNi粉体は、メジアン径d50が20μmで、(d90−d10)/d50が0.7のものを用いた。また、比較例3では、Niコアに用いるNi粉体は、メジアン径d50が6μmで、(d90−d10)/d50が0.7のものを用いた。
【0033】
(実施例1)
上述した方法で製造したNiコア11を用いて、Niコア11の表面に低P−Niめっき層(第1めっき層12)を形成した。具体的には、所定の成分組成を有する無電解還元Niめっき液(以下、「Niめっき液」という。)を準備し、外部ヒーターを用いて加熱してNiめっき液の温度を所定に調整した。続いて、Niめっき液を攪拌しながら液中のNi濃度を所定に調整した。その後、そのNiめっき液中に、酸処理を行って表面の酸化膜を除去した後に水洗したNiコア11を投入した。そして、無電解還元めっき法により、Niコア11の表面に、厚さが約1.3μmの低P−Niめっき層(第1めっき層12)を有する導電性粒子10を得た。この低P−Niめっき層を、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)によって定性分析した結果、Pを1.4質量%含み、残部がNiであった。
【0034】
(実施例2)
実施例1で得られた導電性粒子10の表面に、すなわち低P−Niめっき層(第1めっき層12)の表面に、さらにAuめっき層13(第2めっき層)を形成した。具体的には、無電解置換Auめっき液(以下、「置換型Auめっき液」という。)を準備し、外部ヒーターを用いて加熱して置換型Auめっき液の温度を所定に調整した。続いて、置換型Auめっき液を攪拌しながら液中のシアン化Auカリウム濃度を調整することによってAu濃度を所定に調整した。その後、置換型Auめっき液中に、酸処理および水洗を行った導電性粒子10を投入した。そして、無電解置換めっき法により、低P−Niめっき層の表面に、厚さが約20nmの無電解Auめっき層(第2めっき層)を有する導電性粒子10aを得た。
【0035】
(実施例3)
上述した実施例1と同様に、Niめっき液中のNi濃度を変えた無電解還元めっき法により、Niコア11の表面に、厚さが約2.6μmの低P−Niめっき層(第1めっき層12)を有する導電性粒子10を得た。この低P−Niめっき層を、EDXによって定性分析した結果、Pを1.3質量%含み、残部がNiであった。
【0036】
(実施例4)
また、上述した実施例2と同様に、無電解置換めっき法により、実施例3で得られた導電性粒子10の低P−Niめっき層(第1めっき層12)の表面に、厚さが約20nmの無電解Auめっき層(第2めっき層)を有する導電性粒子10aを得た。
【0037】
図3に、実施例4で得られた、Niコア11と、低P−Niめっき層と、Auめっき層13とを有する導電性粒子10aについて、その断面の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)による観察像(断面SEM像)を示す。NiPコア11の周囲を低P−Niめっき層12が覆っている様子が確認される。なお、図3に示す断面SEM像において、約20nmの厚さのAuめっき層13の存在を確認することは難しい。
【0038】
(実施例5)
上述した実施例3で得られた、Niコア11の表面に厚さが約2.6μmの低P−Niめっき層(第1めっき層12)を有する導電性粒子10を用いて、その表面に厚さが約100nmのAuめっき層13(第2めっき層)を有する導電性粒子10aを得た。具体的には、一つのめっき処理において、無電解置換Auめっき処理と無電解還元Auめっき処理とを実質的に同時に行うことができる汎用の無電解Auめっき液を準備し、外部ヒーターを用いて加熱して無電解Auめっき液の温度を所定に調整した。続いて、無電解Auめっき液を攪拌しながら液中のシアン化Auカリウム濃度を調整することによってAu濃度を所定に調整した。その後、無電解Auめっき液中に、酸処理および水洗を行った導電性粒子10を投入した。そして、無電解置換Auめっき法および無電解還元Auめっき法により、低P−Niめっき層(第1めっき層12)の表面に、厚さが約100nmの無電解Auめっき層(第2めっき層)を有する導電性粒子10aを得た。
【0039】
(実施例6)
上述した方法で製造したNiコア11を用いて、Niコア11の表面にPなどの半金属が実質的に含まれない高純度の純Niめっき層(第1めっき層12)を形成した。具体的には、めっき層中にPなどのNi以外の元素が含まれ難い所定の成分組成を有する無電解還元Niめっき液(以下、「純Niめっき液」という。)を準備し、外部ヒーターを用いて加熱して純Niめっき液の温度を所定に調整した。続いて、純Niめっき液を攪拌しながら液中のNi濃度を所定に調整した。その後、その純Niめっき液中に、酸処理を行って表面の酸化膜を除去した後に水洗したNiコア11を投入した。そして、無電解還元めっき法により、Niコア11の表面に、厚さが約0.9μmでPが0.1質量%未満の純Niめっき層(第1めっき層12)を有する導電性粒子10を得た。
【0040】
(実施例7)
また、上述した実施例1と同様に、無電解置換めっき法により、実施例6で得られた導電性粒子10の純Niめっき層(第1めっき層12)の表面に、厚さが約20nmの無電解Auめっき層(第2めっき層)を有する導電性粒子10aを得た。
【0041】
(比較例1)
上述した方法で製造したNiコア11を比較例1とする。つまり、Niコア11は、第1めっき層12(純Niめっき層または低P−Niめっき層)や第2めっき層(Auめっき層13)を有さないため、実質的に従来のNiP粒子と同等の導電性粒子と考えてよい。
【0042】
(比較例2)
上述した方法で製造したNiコア11を用いて、Niコア11の表面にAuめっき層を形成した。具体的には、上述した実施例1と同様に、無電解置換めっき法により、Niコア11の表面に、厚さが約20nmの無電解Auめっき層を有する導電性粒子(以下、「NiコアAuめっき粒子」という。)を得た。
【0043】
(比較例3)
上述したNiコア11と同様な方法により、Pが7.9質量%、Cuが3.3質量%、Snが0.4質量%含まれ、残部がNiである成分組成を有する、粒子の直径(粒径)が6μmのNiコア11(以下、実施例1〜4および比較例1、2におけるNiコア11と区別するために「Niコア11a」という。)を得た。続いて、得られたNiコア11aの表面にPd(パラジウム)からなるPdめっき層を形成した。具体的には、所定の成分組成を有する無電解還元Pdめっき液(以下、「Pdめっき液」という。)を準備し、外部ヒーターを用いて加熱してPdめっき液の温度を所定に調整した。続いて、Pdめっき液を攪拌しながら液中のPd濃度を所定に調整した。その後、そのPdめっき液中に、酸処理を行って表面の酸化膜を除去した後に水洗したNiコア11aを投入した。そして、無電解還元めっき法により、Niコア11aの表面に、厚さが約30nmの無電解Pdめっき層を有する導電性粒子(以下、「NiコアPdめっき粒子」という。)を得た。
【0044】
上述のようにして得られた実施例1〜7および比較例1〜3のそれぞれの導電性粒子について、表1に、Niコアの直径(粒径)、第1めっき層および第2めっき層の種類と厚さ、および体積抵抗率を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
導電性粒子の体積抵抗率Rcは、その導電性粒子の集合体である導電性粉体を試料粉体とし、図4に示す構成の測定装置を用いて測定した。具体的には、底部に銅製治具22を設けた内径Dのシリンダ21内に1.15gの試料粉体20を収め、銅製ピストン23によってシリンダ21の開口側から矢印24の方向に約22MPaの荷重を加えた状態で銅製治具22と銅製ピストン23との間隔Lを一定に保持した。なお、銅製治具22と銅製ピストン23は、互いの抵抗値がほぼ同等になるように作製した。続いて、銅製治具22と銅製ピストン23との間で通電し、市販の抵抗計(日置電機製抵抗計3541)によって抵抗値Rmを測定した。こうして測定した全体の抵抗値Rm(Ω)と、銅製治具22および銅製ピストン23の抵抗値Rj(Ω)と、前記内径D(m)および前記間隔L(m)とにより、Rc=(Rm−Rj)×π×(D/2)/Lの式を用いて導電性粒子の体積抵抗率Rc(Ωm)を求めた。
【0047】
純Niめっき層および低P−Niめっき層の厚さは、導電性粒子の断面SEM像において観察された当該めっき層の複数の箇所で厚さを計測して算術的平均によって求めた。また、第1めっき層を有する場合のAuめっき層およびPdめっき層の厚さは、導電性粒子の化学成分および質量と、Niコアの密度と粒径(メジアン径)および総表面積と、めっき層を構成するAu、Pdなどの元素の理論密度を用いて、めっき層の厚さ(μm)=(めっき層の質量%/100)×(1/めっき層を構成する元素の密度(g/cm))×(1/第1めっき層を有するNiコアの総表面積(cm))×10000の式を用いて求めたが、第1めっき層を有さない場合は前記総表面積をNiコアの総表面積(cm)とした。導電性粒子の化学成分は、一定量の導電性粒子を例えば王水に溶解し、純水で希釈した後、ICP発光分析装置を用いて分析することができる。なお、Niの溶解には硝酸系溶液を使用することもできる。また、Auの密度は19.32g/cm、Pdの密度は11.99g/cm、Niコアの密度は7.8g/cmである。また、第1めっき層を有するNiコアの総表面積は、1つの第1めっき層を有するNiコアの表面積(メジアン径d50の球の表面積)と、試料粉体に含まれる第1めっき層を有するNiコアの総数との積とした。
【0048】
(導電性粒子10の体積抵抗率)
表1に示す体積抵抗率において、本発明に係るNiコア11の表面に第1めっき層12(低P−Niめっき層または純Niめっき層)を有する導電性粒子10(実施例1、3、6)の場合、従来のNiP粒子(比較例1)の約0.03倍(実施例6)から約0.05倍(実施例1)であった。従って、本発明に係る導電性粒子10は、従来の導電性粒子(NiP粒子)よりも特段に小さい体積抵抗率を有していることが確認された。
【0049】
(導電性粒子10aの体積抵抗率)
表1に示す体積抵抗率において、本発明に係る第1めっき層12の表面にAuめっき層13を有する導電性粒子10a(実施例2、4、5)の場合、従来のAuめっき層またはPdめっき層を有する導電性粒子(比較例2、3)の約0.29倍(実施例5)から約0.57倍(実施例2)であった。従って、本発明に係る導電性粒子10aは、従来の導電性粒子(NiコアAuめっき粒子またはNiコアPdめっき粒子)よりも小さい体積抵抗率を有していることが確認された。
【0050】
(第1めっき層の厚さ)
低P−Niめっき層の実施例1と実施例3とを比べると、めっき層の厚さが実施例1の2倍である実施例3は、体積抵抗率が実施例1の約0.76倍であった。また、さらにAuめっき層を厚さを同じにして設けた低P−Niめっき層(実施例4)と純Niめっき層(実施例7)とを比べると、両者の体積抵抗率は同等であった。従って、図1に示す導電性粒子10の第1めっき層12に低P−Niめっき層を選定する場合、低P−Niめっき層の厚さを大きくすることは好ましく、導電性粒子10の体積抵抗率をより小さくすることができることが分った。この点は、図1に示す導電性粒子10の第1めっき層12に純Niめっき層を選定する場合も同傾向であると考えられ、純Niめっき層の厚さが大きくなれば体積抵抗率が小さくなると考えられる。
【0051】
(第1めっき層の種類)
低P−Niめっき層(実施例3)と純Niめっき層(実施例6)とを比べると、めっき層の厚さが低P−Niめっき層(実施例3)の約0.35倍である純Niめっき層(実施例6)は、体積抵抗率が実施例3の約0.62倍であった。従って、図1に示す導電性粒子10の第1めっき層12の種類を選定する場合、好ましくは純Niめっき層であることが分った。なお、低P−Niめっき層は、純Niめっき層に比べ、めっき層の形成速度が大きいためめっき処理時間が短い、めっき液が安価であるなど、実用上の利点がある。
【0052】
(Auめっき層の厚さ)
Niコア11および低P−Niめっき層の構成が同じ導電性粒子10の表面に、厚さが異なるAuめっき層13を設けた実施例4と実施例5とを比べると、Auめっき層の厚さが実施例4の5倍(80nm大きい)である実施例5は、体積抵抗率が実施例4の約0.67倍(0.1×10−5Ωm小さい)であった。従って、Auめっき層をより厚くすることも好ましいが、低コスト化の観点から、第1めっき層に純Niめっき層を選定し、純Niめっき層の厚さを大きくすることが好ましいと考えられる。
【0053】
以上述べたように、本発明の実施形態によれば、最表面にAuめっき層を有さないNiP粒子からなる導電性粒子の体積抵抗率を、従来よりも特段に小さくできることが確認できた。また、最表面に同じ厚さのAuめっき層を有するNiP粒子からなる導電性粒子の場合、その体積抵抗率を従来よりも小さくできることが確認できた。従って、本発明によれば、求められる導電性能によっては、従来よりもAuめっき層の厚さを小さくして低コスト化できると考えられる。具体的には、例えば0.7×10−5Ωm程度の体積抵抗率の導電性粒子(比較例2相当)が求められる場合、体積抵抗率が0.4×10−5Ωmの導電性粒子(実施例2)のAuめっき層の厚さが20nmであることを参酌すれば、この導電性粒子のAuめっき層の厚さを10nm程度に小さくしても0.7×10−5Ωm程度の体積抵抗率を得ることができると考えられる。
【0054】
本発明の実施形態による導電性粉体は、積算体積分布曲線におけるメジアン径d50が3μm以上100μm以下であり、かつ、(d90−d10)/d50≦0.8であるように選別された、上述した従来よりも体積抵抗率が小さく導電性の良い本発明に係る導電性粒子の集合体である。このような導電性粉体は、本発明に係る導電性粒子の集合体を準備し、前記d50が3μm以上100μm以下の範囲である導電性粒子を例えば篩分け法などによって選別し、さらに(d90−d10)/d50≦0.8である導電性粒子を同様に選別することによって得ることができる。実際には、例えば、上述したd50が20μmで、(d90−d10)/d50が0.7である導電性粉体を得ることができた。従って、本発明に係る導電性粉体は、従来よりも体積抵抗率が小さく、粒度分布が急峻でばらつきが小さい導電性の良い導電性粉体となる。
【0055】
本発明の実施形態による導電性高分子組成物は、上述した従来よりも体積抵抗率が小さく導電性の良い本発明に係る導電性粒子の集合体である導電性粉体と、高分子とを含む。従って、本発明に係る導電性高分子組成物は、従来よりも体積抵抗率が小さく導電性の良い導電性高分子組成物となる。なお、特に説明しない限り、高分子は電気絶縁性である。高分子としては、用途に応じて種々の公知の高分子材料を用いることができる。高分子材料は、例えば、ゴム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂である。本発明の実施形態による導電性高分子組成物は、異方性導電性シート(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)などに広く用いられ得る。導電性粒子の含有率は、用途に応じて適宜設定されるが、体積分率で、概ね3%以上50%以下であり、好ましくは5%以上30%以下である。
【0056】
上述した導電性粉体を構成する導電性粒子10および導電性粒子10aは、従来よりも体積抵抗率が小さく導電性の良い本発明に係る導電性粒子であって、Niを主体とするNiコア11を有しているので、強磁性を示す。従って、本発明による実施形態の高分子組成物の適用により、磁場によって導電性粒子10または導電性粒子10aが厚さ方向にほぼ等間隔で連続的に配列された異方性導電シートを形成することができる。従って、本発明に係る異方性導電シートは、厚さ方向は従来よりも体積抵抗率が小さいために導電性が良く、厚さ方向と直交するシート面方向は相対的に従来よりも導電性が抑制されるために異方性が強まった異方性導電シートとなる。ここで、高分子として、ゴム(またはエラストマー)を用いると、感圧型異方性導電シートを得ることができる。感圧型異方性導電シートは、シートの厚さ方向に加圧(圧縮)した時にだけ導電性を示し、加圧を止めると絶縁性に戻る性質を有している。感圧型異方性導電シートは、配線基板や半導体装置などの検査等において、一時的に電気的な接続を形成する用途に好適に用いられる。ゴムとしては、公知の種々のゴム(エラストマーを含む)を用いることができる。加工性、耐熱性等の観点から、硬化型のシリコーンゴムが好ましい。
【0057】
ACFやACPは、液晶表示装置、タブレットPC、携帯電話など電気機器内における電気的な接続を形成するためにも用いられる。これらに用途においては、高分子は、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が用いられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、種々のエポキシ樹脂が用いられ、光硬化性樹脂としてはアクリル樹脂が用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、導電性粒子、導電性粉体、導電性高分子組成物および異方性導電シートに適用できる。
【符号の説明】
【0059】
10.導電性粒子、10a.導電性粒子、11.Niコア(NiP粒子)、12.第1めっき層、13.Auめっき層、20.試料粉体、21.シリンダ、22.銅製治具、23.銅製ピストン、24.矢印
図1
図2
図3
図4