特許第6443955号(P6443955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443955
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】半導体レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20060101AFI20181217BHJP
   H01S 5/12 20060101ALI20181217BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20181217BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20181217BHJP
   G02B 6/125 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   H01S5/022
   H01S5/12
   G02B6/12 301
   G02B6/42
   G02B6/125 301
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-542755(P2017-542755)
(86)(22)【出願日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】JP2016004396
(87)【国際公開番号】WO2017056499
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2017年11月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-192106(P2015-192106)
(32)【優先日】2015年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 啓之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 啓
(72)【発明者】
【氏名】井藤 幹隆
(72)【発明者】
【氏名】葛西 恵介
(72)【発明者】
【氏名】中沢 正隆
【審査官】 高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−46995(JP,A)
【文献】 特開2014−135351(JP,A)
【文献】 特開2011−198903(JP,A)
【文献】 特開平9−246642(JP,A)
【文献】 特開2007−94336(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0163821(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一モードで発振する半導体レーザが形成された第1の基板と、
前記半導体レーザからの出力光の一部を一定の光路長を伝搬させた後で、前記半導体レーザへ帰還するように構成された光波回路が形成された、Siからなる第2の基板と、
前記第1の基板および前記第2の基板を搭載した第3の基板と
を備え、
前記第1の基板の前記半導体レーザからの出力光と、前記第2の基板の前記光波回路の入力導波路とが光学的に結合していることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項2】
前記第2の基板上の前記光波回路は、前記伝搬させた光を反射する反射器を含み、前記反射器で反射された光が、前記半導体レーザへ帰還するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
前記第2の基板上の前記光波回路は、前記半導体レーザからの前記出力光を分岐して前記出力光の前記一部を生成する分岐手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記第1の基板は、前記半導体レーザからの前記出力光を2つに分岐して、一方の分岐光として前記第2の基板の前記出力光の前記一部を生成し、他方の分岐光として当該半導体レーザ装置の出力光を生成する分岐手段を有し、
前記分岐手段の前記一方の分岐光を増幅する第1の半導体光増幅器と、前記分岐手段の前記他方の分岐光を増幅する第2の半導体光増幅器とを有すること
を特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記第1の基板の前記半導体レーザからの前記出力光と、前記第2の基板の前記光波回路の前記入力導波路とが、前記第1の基板の端面および当該端面と対向する前記第2の基板の端面の間で結合していることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
前記半導体レーザは、回折格子による波長選択機能を備えた分布帰還型(DFB)レーザまたは分布反射型(DBR)レーザであることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の半導体レーザ装置。
【請求項7】
前記半導体レーザは、N個の分布帰還型(DFB)レーザアレイ、前記N個のDFBレーザアレイからの各出力光を合波するよう構成された光合波器および半導体光増幅器が集積され、波長可変レーザとして動作することを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の半導体レーザ装置。
【請求項8】
前記半導体レーザは、N個の分布反射型(DBR)レーザアレイ、前記N個のDBRレーザアレイからの各出力光を合波するよう構成された光合波器および半導体光増幅器が集積され、波長可変レーザとして動作することを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の半導体レーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ光源に関する、より詳細には、中長距離の光ファイバ通信やガスなどの光センシングで用いられる単一モードで動作する半導体レーザ光源、半導体レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信システムが大容量化するのに伴って、多値位相振幅変調を用いたデジタル・コヒーレント通信方式が普及し始めている。この通信方式は、光の位相情報を用いてデジタル信号を伝達する方式であるため、キャリア光を供給する光源には、位相雑音が少なく、スペクトル線幅が狭いレーザ光源が必要とされる。
【0003】
レーザ光源としては様々な種類のものがあるが、半導体レーザは、小型で低コストなため、光通信用の光源として広く普及している。特に中・長距離の光通信システムにおいては、単一モードで動作する分布帰還型(DFB:Distributed FeedBack)レーザなどが広く用いられている。また中・長距離の光通信システムでは、光ファイバ1本あたりの伝送容量を増大させるために、波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)技術が一般に用いられている。したがって、デジタル・コヒーレント通信のための光源に対しては、任意の波長チャネルを出力することができる波長可変特性も必要とされている。
【0004】
半導体レーザは、他の固体レーザやガス・レーザなどと比べると共振器サイズが小さいため、位相ノイズは相対的に大きい。例えば、通常の数百μmの共振器サイズを持つ半導体レーザの線幅はMHzオーダーとなっている。ここで、線幅はスペクトル線幅を意味しており、スペクトルの半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)で表される。現在、普及が進んでいる100Gbit/sのデジタル・コヒーレント通信システムにおいては、偏波多重四位相偏移(QPSK:Quadrature Phase Shift Keying)変調方式が用いられており、レーザ光源には数百kHzのスペクトル線幅が要求されている。このような用途には、共振器長を1mm程度まで長くしてスペクトルを狭線幅化した波長可変DFBレーザアレイや外部共振器型レーザなどが用いられている。多値度のより大きな変調方式を使用してより大容量の通信を実現するために、今後さらにスペクトル線幅の狭い光源の実現が期待されている。また、通信以外の光センシング応用などにおいても、狭い吸収線スペクトルを高感度に観測するために、光源のスペクトルの狭線幅化が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M. Finot, et al., “Thermally tuned external cavity laser with micromachined silicon etalons: design, process and reliability,” Electronic Components and Technology Conference 2004 Proceedings, Vol.1, pp.818-823, 2004
【非特許文献2】K. Petermann, “External optical feedback phenomena in semiconductor lasers,” IEEE J. Quantum Electron., vol.1, No.2, pp.480-489, 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体レーザにおいてスペクトル線幅を10kHz程度まで狭めることのできるものとして、半導体チップの外に光学共振器を構成する、いわゆる外部共振器型レーザがある。例えば非特許文献1では、半導体光増幅器、外部反射器、波長を選択するためのエタロン・フィルタ、およびレンズなどからなる外部共振器型レーザが開示されている。この構成によって、1550nmのC帯全域をカバーする波長可変特性および数10kHzの線幅特性が得られたことが報告されている。しかしながら、外部共振器型レーザは半導体チップ以外にも多数の部品を必要とし、さらにこれらを高精度に組み立てる必要があった。また、外部共振器型レーザでは、多数の共振モードの中から1つの波長を選択するために、少なくとも2個以上の波長フィルタを制御しなければならず、その制御回路が複雑になる問題があった。さらには半導体レーザ装置の製造工程において、波長特性の試験・検査が複雑となる問題もあった。
【0007】
スペクトル線幅を狭める他の構成として、DFBレーザをベースとした波長可変レーザも知られている。この構成では、原理的に同じ発振モードを保ったまま温度制御などを用いて波長を変えることができる。このため、波長可変のための制御は簡単となる。共振器長を1mm程度まで長くすることによって、DFBレーザベースの波長可変レーザでは100kHz程度までの線幅が得られている。しかしながら、共振器をさらに長くしようとすると、回折格子のピッチの均一性および共振器を構成する光導波路の等価屈折率の均一性を維持することが難しくなる。したがって長い共振器では、製造ゆらぎにより均一な共振器を形成することが難しくなり、DFBレーザベースの波長可変レーザにおいても、スペクトルの狭線幅化には限界があった。
【0008】
半導体レーザの発振光の一部を外部から帰還することによって、スペクトル狭線幅化の効果が得られることが知られている。例えば非特許文献2では、光ファイバを用いて半導体レーザに光を帰還する構成が示されている。非特許文献2の構成によれば、外部から一部の光を半導体レーザに帰還することによって、スペクトル線幅を2桁以上狭窄化することができる。しかしながら、光ファイバを用いる方法では、発振の安定性に難点があった。半導体レーザの発振状態は帰還光の位相に敏感であり、帰還光の位相状態が変化すると、外部共振モードによる波長跳びなどが生じていた。すなわち光ファイバを用いた帰還型の構成では、光ファイバの変位、応力、温度などの微小な変化に対して発振状態が不安定になってしまうため、実際の通信装置の環境において波長可変光源として使用することは困難であった。
【0009】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、半導体レーザで構成され、小型で制御性が良く、スペクトルを狭線幅化した光源を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、単一モードで発振する半導体レーザが形成された第1の基板と、前記半導体レーザからの出力光の一部を一定の光路長を伝搬させた後で、前記半導体レーザへ帰還するように構成された光波回路が形成された第2の基板と、前記第1の基板および前記第2の基板を搭載した第3の基板とを備え、前記第1の基板の前記半導体レーザからの出力光と、前記第2の基板の前記光波回路の入力導波路とが光学的に結合していることを特徴とする半導体レーザ装置である。
【0011】
好ましくは、前記第2の基板上の前記光波回路は、前記伝搬させた光を反射する反射器を含み、前記反射器で反射された光が、前記半導体レーザへ帰還するように構成されることができる。
【0012】
また、前記第2の基板上の前記光波回路は、前記半導体レーザからの前記出力光を分岐して前記出力光の前記一部を生成する分岐手段を有することができる。また、前記第1の基板は、前記半導体レーザからの前記出力光を2つに分岐して、一方の分岐光として前記第2の基板の前記出力光の前記一部を生成し、他方の分岐光として当該半導体レーザ装置の出力光を生成する分岐手段を有し、前記分岐手段の前記一方の分岐光を増幅する第1の半導体光増幅器と、前記分岐手段の前記他方の分岐光を増幅する第2の半導体光増幅器とを有することもできる。
【0013】
好ましくは、前記第1の基板の前記半導体レーザからの前記出力光と、前記第2の基板の前記光波回路の前記入力導波路とが、前記第1の基板の端面および当該端面と対向する前記第2の基板の端面の間で結合していることができる。
【0014】
前記半導体レーザは、回折格子による波長選択機能を備えた分布帰還型(DFB)レーザまたは分布反射型(DBR)レーザであり得る。また好ましくは、前記半導体レーザは、N個の分布帰還型(DFB)レーザアレイ、前記N個のDFBレーザアレイからの各出力光を合波するよう構成された光合波器および半導体光増幅器が集積され、波長可変レーザとして動作することができる。また、前記半導体レーザは、N個の分布反射型(DBR)レーザアレイ、前記N個のDBRレーザアレイからの各出力光を合波するよう構成された光合波器および半導体光増幅器が集積され、波長可変レーザとして動作することもできる。上述の光合波器は、N対1光合波器として構成することもできるし、N対2の光合分波器として構成することもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、半導体レーザの出力光の一部を光帰還用の光波回路を用いて半導体レーザに戻すことにより、スペクトルを狭線幅化した動作が可能となる。半導体レーザチップと光波回路チップの組み合わせで構成され、小型で制御性が良く、スペクトルを狭線幅化した光源を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施例1に係る半導体レーザ装置の概略を示す図である。
図2A図2Aは、本発明の半導体レーザ装置の波長可変半導体レーザチップのより詳細な構造を示す上面図である。
図2B図2Bは、本発明の半導体レーザ装置の波長可変半導体レーザチップの発振器長さ方向に沿った断面図である。
図2C図2Cは、本発明の半導体レーザ装置の波長可変半導体レーザチップの発振器長さ方向に垂直な断面図である。
図3図3は、本発明の半導体レーザ装置の光波回路チップのより詳細な構造を示す図である。
図4図4は、本発明の半導体レーザ装置のスペクトル線幅特性を説明する図である。
図5図5は、本発明の実施例2に係る半導体レーザ装置の概略を示す図である。
図6図6は、本発明の実施例3に係る半導体レーザ装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の半導体レーザ光源では、半導体レーザの出力光の一部を光帰還用の光波回路を用いて半導体レーザに戻すことにより、スペクトルを狭線幅化した動作が可能となる。前述のように、非特許文献2における、光ファイバを用いて半導体レーザに光を帰還する構成では、光ファイバの変位、応力、温度などの微小な変化に対して発振状態が不安定になり、実際の通信装置の環境で使用することは困難であった。
【0018】
これに対して本発明の半導体レーザ装置では、変形することのない光導波路によって光帰還用の光波回路を構成するとともに、光波回路を含む基板を、半導体レーザが保持される基板とともに、同一の基板上に配置している。このため、光帰還回路の動作環境の安定性を確保することが可能となる。また、本発明の半導体レーザ装置の光帰還の構成では、光波回路に波長選択フィルタの機能は含まれておらず、半導体レーザが持つ波長可変機能を用いる。このため、外部共振器レーザの構成のように、フィルタの波長を精密に調整する必要がない利点がある。このように、本発明の半導体レーザ装置の構成では、小型・安定で、波長制御性が良く、スペクトルの狭線幅化された光源を実現することができる。尚、以下の説明では、半導体レーザ光源および半導体レーザ装置は、同じ意味のものとして使用する。図面を参照しながら、本発明の様々な実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例1に係る半導体レーザ装置の概略を示す図である。本実施例の半導体レーザ装置100は、単一の基板101上に搭載された、波長可変半導体レーザチップ102および光帰還用の光波回路チップ103を備える。波長可変半導体レーザチップ102の出力端側には、出力光が光波回路チップ103の入力導波路に入射するように、レンズ104、105が配置される。基板101の材料としては、熱伝導性の良いタングステン銅合金(CuW)などの金属材料が用いられる。図1には描かれていないが、基板101の裏面には、TEC(Thermo-Electric Cooler)が配置され、基板101全体の温度を制御することができる。
【0020】
波長可変半導体レーザチップ102からの出力光は、まずレンズ104によりコリメート・ビームに変換され、レンズ105により光波回路チップの入力導波路に集光される。後述するように、波長可変半導体レーザチップ102の光出力の一部が光波回路103から反射されて戻るように構成されている。この反射光は、光波回路103への往路とは逆の光路を辿って、波長可変半導体レーザチップの出力導波路に帰還される。光波回路103内では、帰還光以外の光は出力光として出力導波路に導かれる。光波回路103からの出力光は、レンズ106によりコリメート・ビームに変換され、光アイソレータ107を通して、半導体レーザ装置の出力光として使用される。光アイソレータ107は、半導体レーザ装置の外部からの戻り光によって、レーザ発振が不安定になるのを防ぐために用いられる。光ファイバに光を導きたい場合は、アイソレータ通過後のコリメート・ビームを、集光レンズを用いて光ファイバに入力させれば良い。
【0021】
図2A図2Cは、本発明の半導体レーザ装置における波長可変半導体レーザチップのより詳細な構造を示す図である。図2Aは波長可変半導体レーザチップ102の基板面を見た上面図である。図2Bは、共振器の長さ方向に沿って、図2Aの上面図の線分IIB−IIBで基板面に垂直に切って見た断面図である。図2Cは、図2Aの上面図の線分IIC−IICで基板面に垂直にかつ共振器の長さ方向に垂直に切って見た断面図である。図2Aの波長可変半導体レーザチップは、4つのDFBレーザ201a〜201d、光合波器203および半導体光増幅器204の各部分がInP基板上に集積され、DFBレーザアレイ型の構成を持つ。各部分は、導波路202a、202bによって接続されている。図2Bのレーザ共振器に沿った断面図を参照すれば、1つのDFBレーザでは、電流を注入することにより増幅作用を持つ活性層212の直上に、回折格子214が形成されたガイド層213を備える。これらの層212、213、214は、n型InPクラッド層216およびp型InPクラッド層217によってさらに挟み込まれている。
【0022】
レーザ発振動作は、n側電極219を接地し、p側電極220に正の電圧を加えて、活性層212に電流を注入することによって生じる。このとき、回折格子214の周期で定まる波長のみが強く帰還されるため、この波長付近で単一モード発振する。図2Cのレーザ共振器の光進行方向を見た断面図に示すように、1つのDFBレーザは、活性層212およびガイド層213の周りがInPによって埋め込まれた、いわゆる埋め込み型の導波路構造を持つ。n型InP電流ブロック層221は、活性層212に効率良く電流を注入するために設けられている。
【0023】
光合波器203は、4入力1出力の多モード干渉型導波路により構成される。DFBレーザから連続して形成された導波路の透明コア層215(図2Aの導波路202aに対応)は、発振光に対して透明な組成のInGaAsP混晶により形成されている。半導体光増幅器204は、DFBレーザ201a〜201dの各々と同様に利得を持つ導波路212によって構成されているが、回折格子214は形成されておらず、いわゆるSOA(Semiconductor Optical Amplifier)を構成している。尚、上述のDFBレーザの各部の具体的な構造、材料、構成パラメータは例示的なものであって、多値位相振幅変調を用いたデジタル・コヒーレント通信方式に適用可能なレーザ光源として利用可能な半導体レーザであれば、上述の具体例だけには限定されない。
【0024】
波長可変半導体レーザチップ102では、チップ内の導波路から出射する光がチップ端面で反射するのを防ぐため、導波路がチップ端面に対して垂直ではなく、やや斜めになるように形成されている。さらに、チップの端面上には、反射防止膜211a、211bが形成されている。半導体光増幅器204に流す電流量を制御することにより、光出力レベルを調整することができる。DFBレーザアレイの各DFBレーザ201a〜201dに形成されている回折格子は、それぞれ異なるピッチで形成されているため、各々が対応する異なる波長で発振するように動作する。DFBレーザアレイの中から、電流を流して発振させるDFBレーザを1つ選択することによって、出力光の波長を変えることが可能となる。本実施例では、1550nm帯において、所定の温度で約4nmの波長間隔となるようにDFBレーザアレイ各々の発振波長が設定される。DFBレーザの発振波長は、チップ温度が1度変化すると、長波長側に約0.1nm変化する。したがって、レーザ温度を20℃から60℃の範囲で40度変化させれば、発振波長を4nm変化させることができる。所定の温度における4つのDFBレーザ201a〜201dの各発振波長の間で、任意の波長に連続的に変化さることができる。図2A図2Cの本実施例の構成の場合、4×4nm=16nmの波長範囲で、任意の波長で発振させることが可能となる。図2A図2Cでは、4つのDFBレーザを含むアレイ構成例を例示的に示したが、DFBレーザのアレイ数を増加すれば、アレイ数に応じて波長可変範囲をさらに広げることができる。
【0025】
図3は、本発明の半導体レーザ装置の光波回路チップのより詳細な構造を示す図である。光波回路103は、Si基板上にSiOガラス膜を堆積させることにより作製されている。光導波路301は、屈折率の高い矩形状のコア層のまわりを屈折率の低いクラッド層で埋め込んだ構造を持つ。本実施例では、コア層とクラッド層との間の屈折率差は、約2.5%とした。図2Aに示した波長可変半導体レーザチップ102からの発振光は、レンズ104、105を経て、光導波路301の光入力部302へ入射する。入射光は光導波路301を伝搬し、方向性結合器306によって、光出力部303へ伝搬する光と光反射器305へ伝搬する光とに分けられる。発振光の一部を光反射器305導く導波路は、その光路長を一定程度長くするように設定される。スペクトル線幅は、光路長の二乗に反比例して狭まることが知られており、レーザ出力部から光反射器305までの光路長を一定程度長くした方が、スペクトル線幅の狭窄効果が高いからである。スペクトル線幅を10kHz以下にするためには10cm以上が必要であって、安定動作のためには40〜50cm以下が好ましい。本実施例の光導波路301では、光入力部302から光反射器305までの光路長を約13cmと設定した。反射器305により反射した光は、光導波路を逆方向に伝搬し、光入力部302へ戻っていき、最終的には半導体レーザチップ103に帰還される。反射光の一部は方向性結合器306により、光モニタ出力部304へと伝搬する。
【0026】
光波回路103の光入力部302、光出力部303および光モニタ出力部304では、チップの端面で光が反射しないようにするために、光導波路の伝搬方向がチップ端面に対して斜めになるように構成される。特に光入力部302および光出力部303では、光の反射を低く抑えるために、反射防止用のAR膜307a、307bが端面上にそれぞれ形成されている。一方、光反射器305では、一定の光反射を得るために、光導波路はチップ端面に対して垂直となるように構成されており、反射器305の表面には高反射膜308がコーティングされている。
【0027】
図3の光波回路チップの構成例では、反射光を得るためにチップの1つの端部に反射器305を有する例を示したが、必ずしもこの構成だけに限定されない。例えば、光波回路上にスプリッターと導波路を組み合わせて構成されるループ型の反射器を形成し、そのループ型反射器で、波長可変半導体レーザチップ102からの発振光を反射させても良い。
【0028】
したがって、本発明の半導体レーザ装置は、単一モードで発振する半導体レーザ201a〜201dが形成された第1の基板102と、前記半導体レーザからの出力光の一部を一定の光路長を伝搬させた後で、前記半導体レーザへ帰還するように構成された光波回路が形成された第2の基板103と、前記第1の基板および前記第2の基板を搭載した第3の基板101とを備え、前記第1の基板の前記半導体レーザからの出力光と、前記第2の基板の前記光波回路の入力導波路とが光学的に結合していることを特徴とする半導体レーザ装置として実現できる。
【0029】
好ましくは、前記光波回路は、前記分岐光を反射する反射器305を含み、前記反射器で反射された光が、前記半導体レーザへ帰還するように構成することができる。さらに好ましくは、前記第2の基板上の前記光波回路は、前記半導体レーザからの前記出力光を分岐して前記出力光の前記一部を生成する分岐手段306を有することができる。
【0030】
図4は、本実施例の半導体レーザ装置のスペクトル線幅特性を説明する図である。図4では、DFBレーザアレイの中の1つのレーザに150mAの電流を注入し、半導体光増幅器(SOA)204に流す電流値を変化させたときのスペクトル線幅の変化を示している。このとき、半導体レーザ装置100の温度を25℃になるように制御した。スペクトル線幅は、遅延自己ヘテロダイン法によって測定した。SOA電流が低い場合は、DFBレーザへの光帰還量が少ないためスペクトル線幅は太いが、SOA電流値を60mA程度まで増加させると、10kHz以下までスペクトル線幅が狭窄化されている。DFBレーザアレイ単体のスペクトル線幅は、2〜3MHz程度であった。光帰還用の光波回路を備えた本発明の半導体レーザ装置の構成により、DFBレーザアレイ単体に対してスペクトル線幅が2桁以上狭窄化されていることを確認できた。図4に示したようにSOA電流値が180mA以上になると、光帰還量が多すぎることにより発振モードが不安定になり、スペクトル線幅はむしろ増大した。したがって、本実施例の構成の場合、SOA電流値を100mA前後で使用すれば、安定にスペクトル線幅を狭窄化した発振動作が可能となる。
【0031】
本実施例では、半導体レーザの構造として、利得を持つ導波路上に回折格子が形成されたDFB構造を例に説明をしたが、回折格子が利得を持たない導波路に形成されたDBR(Distributed Bragg Reflector)型の構造を利用しても良い。また、図2A図2Cに示したような複数のDFBレーザからなるレーザアレイではなく、単体のDFBレーザまたはDBRレーザにも本発明を適用可能である。また、レーザを構成する導波路の構造として、図2Cに示したように埋め込み型を例に説明したが、リッジ型の構造の導波路を持つレーザにも本発明を適用可能である。本発明の半導体レーザ装置は、変形することのない光導波路によって光帰還用の光波回路を構成するとともに、半導体レーザが構成される基板と同一(共通)の基板上に配置することで、光帰還回路の動作環境の安定性を確保することができる。したがって、光帰還回路が単一の基板上に構成されていれば、帰還回路の構成も図3のものだけに限定されない。
【0032】
また、図1の本発明の半導体レーザ装置の構成では、InP基板上に集積された半導体レーザチップ102を、共通の基板101上に直接搭載したものとして説明した。しかしながら、2つの基板が堅固に固定されていれば本発明の効果は同様に得られるので、2つの基板101、102の間の固定はどのような方法によっても良い。さらに、図1では半導体レーザチップ102を1つの基板として示したが、半導体レーザを含むチップおよび他の光学部品・電気部品を1つの別の基板に搭載し、その別の基板を共通基板101上に搭載しても良い。
【0033】
同様に、光波回路チップ103についても、2つの基板101、103の間の固定はどのような方法も可能であって、直接固定したり、何らかの基材を挟んで固定したりしても良い。さらに、光波回路を含むチップおよび他の光学部品を1つの別の基板に搭載し、その別の基板を共通基板101上に搭載しても良い。
【0034】
本実施例の半導体レーザ装置の構成では、光帰還用の光波回路を、変形することのない光導波路によって構成するとともに、半導体レーザが保持される基板と同一の基板上に配置している。これによって、光帰還回路の動作環境の安定性を確保することが可能となる。本発明の半導体レーザ装置の光帰還構成では、光波回路の中に波長選択フィルタの機能を持っておらず、半導体レーザが持つ波長可変機能を用いる。このため、外部共振器レーザの構成のように、フィルタの波長を精密に調整する必要もない。半導体レーザチップと光波回路チップの組み合わせによって構成され、小型で波長の制御性が良く、スペクトルを狭線幅化した光源を実現することができる。
【実施例2】
【0035】
図5は、本発明の実施例2に係る半導体レーザ装置の概略を示す図である。実施例1の半導体レーザ装置と比べると、半導体レーザチップ102および光波回路チップ103が接するように配置され、半導体レーザチップ102からの出力光が光波回路チップ103の光入力部に直接結合するようになっている点で相違する。その他の構成については、実施例1と同様である。光結合効率を高く保つため、半導体レーザチップ102の光出力部の光のスポットサイズ、および、光波回路チップ103の光入力部の光のスポットサイズがなるべく同一になるよう、チップ端部近傍の各々の導波路が最適に構成されている。例えば各チップの端部における導波路の傾斜角度は、光結合効率の低下なしにチップ端面同志を直接結合できるように設定される。
【0036】
したがって、本実施例の半導体レーザ装置は、第1の基板102の前記半導体レーザの出力光と、第2の基板103の前記光波回路の入力導波路301とが、対向する前記第1の基板の端面および前記第2の基板の端面で、結合しているものとして実施できる。本実施例の構成では、半導体レーザチップ102および光波回路チップ103を、サブミクロンの精度で基板101上に搭載する必要がある。しかしながら、実施例1で備えていた2つのレンズ104、105を用いずにチップ間の光結合を直接に行っているため、レンズを搭載するための領域が不要となり、半導体レーザ装置のよりいっそうの小型化が可能となる。
【0037】
本実施例の半導体レーザ装置でも、実施例1と同様に、SOAに適切な電流値を注入することにより、半導体レーザ単体の場合と比べて、スペクトル線幅を2桁〜3桁程度狭窄化することが可能となる。本実施例の半導体レーザ装置の構成でも、光帰還用の光波回路を、変形することのない光導波路によって構成するとともに、半導体レーザが構成・保持される基板と同一の基板上に配置している。これによって、光帰還回路の動作環境の安定性を確保できる。
【0038】
尚、光波回路チップ103およびレンズ106の間にSOAチップをさらに集積化する構成とすれば、SOAによって光を増幅して、光出力レベルをさらに高めることも可能である。
【実施例3】
【0039】
上述の実施例1および実施例2の半導体レーザ装置では、半導体レーザチップの発振光および光波回路チップからの帰還光が、いずれも共通の半導体光増幅器(SOA)204を経由して伝播する。また図4で説明したように、SOA電流を変化させることでスペクトル線幅を制御していた。このような構成では、スペクトル線幅のためにSOA電流を決定すると、これによって発振光の出力レベルも同時に変化するために、半導体レーザ装置からの光出力レベルを任意に設定することは難しい。そこで本実施例では、本発明の効果を維持したままで、光出力レベルおよびスペクトル線幅を独立して制御可能な別の構成例を提示する。
【0040】
図6は、本発明の実施例3に係る半導体レーザ装置の概略を示す図である。本実施例の半導体レーザ装置500も、単一の基板501上に半導体レーザチップ502および光波回路チップ510が構成され、2つのチップがレンズを介さずに直接光結合している点で、実施例2の構成と類似している。しかしながら、半導体レーザチップからの発振光の合波出力を、発振光の出力ルートおよび帰還光のルートの2つに分けていている点で実施例2の構成と相違する。
【0041】
具体的には、本実施例の半導体レーザチップ502は、例えば4つのDFBレーザ506a〜506dからの発振光を合波する光合波器として4入力2出力の光合分波器503を用いている。合分波器503によって、4つのDFBレーザからの出力光は、第1のSOA508を経由して半導体レーザ装置の出力光として外部に出力する第1のルートと、第2のSOA507を経由して光波回路チップ510に出力する第2のルートとに分岐している。このように本実施例では、光合分波器503によって出力光を2つのルートに分岐して、それぞれのルートに別個のSOAを設けている点で、実施例2の構成と相違している。光合分波器503は、スターカプラ、多モード干渉型光合波器などによって実現できる。光波回路チップ510は、光反射器511、AR膜509、所定の長さの光導波路512を備えており、実施例1および実施例2の構成と同様である。
【0042】
したがって、本発明は、単一モードで発振する半導体レーザが形成された第1の基板502と、前記半導体レーザからの出力光の一部を一定の光路長を伝搬させた後で、前記半導体レーザへ帰還するように構成された光波回路が形成された第2の基板510と、前記第1の基板および前記第2の基板を搭載した第3の基板501とを備え、前記第1の基板の前記半導体レーザからの出力光と、前記第2の基板の前記光波回路の入力導波路とが光学的に結合している半導体レーザ装置であって、前記第1の基板は、前記半導体レーザからの前記出力光を2つに分岐して、一方の分岐光として前記第2の基板の前記出力光の前記一部を生成し、他方の分岐光として当該半導体レーザ装置の出力光を生成する分岐手段503を有し、前記分岐手段の前記一方の分岐光を増幅する第1の半導体光増幅器508と、前記分岐手段の前記他方の分岐光を増幅する第2の半導体光増幅器507とを有するものとして、実施できる。
【0043】
図6に示した実施例3では、4つのDFBレーザが構成されているので、光合分波器503としては4入力2出力の光合分波器を利用しているが、この構成だけに限定されない。すなわち、DFBレーザの数Nに応じて、N入力2出力の光合分波器とすることができる。また、光出力レベルのモニタ用のために、3出力の光合分波器としても良い。本実施例の構成によって、光帰還用の第2のSOA507に流す電流をスペクル線幅が狭くなる最適な値にしながら、光出力用の第1のSOA508に流す電流を独立に制御することで、光出力レベルを自由に設定することが可能になる。実施例1および実施例2のように光波回路チップ側に分岐回路(方向性結合器)がある場合、半導体レーザ装置の出力光は、SOA204の出力の一部を方向性結合器306で分岐した出力であったので、光出力レベルはSOA204の出力より常に小さな値となる。本実施例の構成では、SOA508の出力をそのまま光源の光出力として使うことができる。通信用光源としては、光出力レベルを任意に設定できることは大きな利点である。光源としての光出力レベルが固定されてしまうと、応用範囲が狭まってしまう。本実施例のように、合波出力を2つのルートに分岐する構成を採ることで、スペクトル線幅と光出力レベルを柔軟に設定可能な光源を実現することができる。尚、実施例2においても述べたように、光波回路チップ103およびレンズ106の間にSOAチップをさらに集積化することによって、光出力レベルの調整が可能となる。しかしながら、この場合には半導体レーザ装置全体でチップが3つ必要となり、部材コストや組立コストの増加を招くため、半導体レーザからの出力光を発振光の出力ルートおよび帰還光のルートの2つに分けた本実施例の構成の方がより優れている。
【0044】
以上詳細に述べたように、本発明の半導体レーザ装置によれば、半導体レーザの出力光の一部を光帰還用の光波回路を用いて半導体レーザに戻すことにより、スペクトルの狭線幅動作が可能となる。半導体レーザチップと光波回路チップの組み合わせで構成され、小型で制御性が良く、スペクトルを狭線幅化した光源を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、一般的に光通信システムに利用することができる。特に、光通信システムの送信器に利用できる。また、光センシング・システムにも利用できる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6