(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444172
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】動的オルソスコピックセンシング
(51)【国際特許分類】
A61B 17/56 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
A61B17/56
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-531883(P2014-531883)
(86)(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公表番号】特表2015-500668(P2015-500668A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】US2012055427
(87)【国際公開番号】WO2013043492
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2015年9月9日
【審判番号】不服2017-6095(P2017-6095/J1)
【審判請求日】2017年4月27日
(31)【優先権主張番号】13/242,336
(32)【優先日】2011年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502032219
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トッド・イー・スミス
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ロバート・デュアメル
【合議体】
【審判長】
林 茂樹
【審判官】
高木 彰
【審判官】
熊倉 強
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0116673(US,A1)
【文献】
特開2004−298559(JP,A)
【文献】
特表2002−527186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感知された回転パラメータを送るために、統合微小機械デバイスからコントローラまでの無線接続を確立するステップと、
前記統合微小機械デバイスを、手術野内に配置される、中空コアを備えた外科用ブレードに固着するステップであって、前記外科用ブレードは回転ハブによって駆動され、前記回転ハブが、外科的物質を切断しおよび抽出するために前記外科用ブレードを回転させるため、駆動源に応答し、前記回転ハブが回転による物理的接続を制限する、ステップと、
前記ハブの回転に基づいて、前記統合微小機械デバイスに働く遠心力によって引き起こされる前記回転パラメータを感知するステップと、
外科的パラメータを導出するために、感知された前記回転パラメータをコントローラに送るステップであって、前記コントローラが、ポンプに連結されるとともに、導出された前記外科的パラメータに応答して、前記中空コアを通じて前記外科的物質を吸引するための前記ポンプを制御するように構成される、ステップと、
を含む、外科用抽出デバイスを制御する方法。
【請求項2】
前記導出された外科的パラメータに応答して、前記ポンプが働かせる圧力を変動させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
感知範囲を外科用デバイス上で特定するステップであって、前記感知範囲が、手術野内において作動する統合微小機械デバイスを受け入れるように適合されるとともに、外科的処置中に感知された電気機械的刺激に応答し、前記外科用デバイスが、外科的操作を行うために駆動源に連結される、ステップと、
前記外科的処置中に外科的パラメータを動的に検出するため、前記統合微小機械デバイスを前記感知範囲内に固着するステップと、
前記外科用デバイスの制御のためのコントローラとの無線通信を維持するステップであって、前記コントローラが、外科的処置中に検出された前記外科的パラメータを前記統合微小機械デバイスから動的に受信するため、前記統合微小機械デバイスに応答し、前記外科的パラメータが、前記統合微小機械デバイスを前記感知範囲に目立たないように配置することにより、前記統合微小機械デバイスの存在による影響を受けない、ステップと、
を含む、外科用デバイス環境において外科用器械を制御する方法。
【請求項4】
前記感知範囲が前記外科用デバイスの回転部分上にあり、前記統合微小機械デバイスを前記回転部分上に配設するステップと、
前記感知範囲が前記統合微小機械デバイスによって検出可能な力を受けるようにして、前記回転部分を前記駆動源によって回転させるステップと、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
配設するステップが、外科用ブレードを前記駆動源に連結するとともに、前記回転に応答して前記外科用ブレードに切断力を働かせるように適合されたトラック上に、前記統合微小機械デバイスを配設するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記外科用ブレードが切断先端に連結された中空軸を含み、前記切断先端が、前記中空軸の軸線に平行な刃先を有し、前記回転に応答して前記ブレードの前記刃先に垂直な切断力を働かせる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記統合微小機械デバイスが、外科的パラメータを記録するための記録デバイスに対する無線接続を用いている、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記感知範囲の動的移動によって、外科的パラメータを記録するための記録デバイスに対する物理的接続が阻害される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
固着するステップが、前記外科用デバイスのコントローラに対する無線連結を用いるとともに、回転または前記デバイスを介した外科的物質のフローに影響しない、目立たない配置を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記感知範囲が、前記駆動源に応答する前記外科用デバイスの回転により、物理的接続を制限する、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記外科用デバイスの速度、回転、またはトルクのうち少なくとも1つを感知するために、前記統合微小機械デバイスを構成するステップをさらに含み、前記統合微小機械デバイスが、歪みゲージ、小型ジャイロ、または圧力センサ/トランスデューサのうち少なくとも1つを備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
外科用デバイス上の感知範囲であって、前記感知範囲が、手術野内において作動する統合微小機械デバイスを受け入れるように適合されるとともに、外科的処置中に感知された電気機械的刺激に応答し、前記外科用デバイスが、外科的操作を行うために駆動源に連結される、感知範囲と、
前記外科的処置中に外科的パラメータを動的に検出するため、前記統合微小機械デバイスを前記感知範囲に固着するための取付けメカニズムと、
前記外科的処置中に前記統合微小機械デバイスから検出された前記外科的パラメータを動的に受信するためのコントローラとの無線通信を維持するための無線送信機であって、前記外科的パラメータが、前記統合微小機械デバイスを前記感知範囲に目立たないように配置することにより、前記統合微小機械デバイスの存在による影響を受けない、無線送信機と、を備える、外科用器械。
【請求項13】
前記感知範囲が、前記外科用デバイスの回転部分上にあり、該外科用デバイスは前記統合微小機械デバイスを前記回転部分上に受け入れるように適合されるとともに、前記感知範囲が前記統合微小機械デバイスによって検出可能な力を受けるようにして、前記駆動源による回転に応答して前記回転部分を駆動源により回転させる、請求項12に記載の外科用器械。
【請求項14】
前記統合微小機械デバイスが、外科用ブレードを前記駆動源に連結するとともに、前記回転に応答して前記外科用ブレードに切断力を働かせるように適合されたトラック上に配設される、請求項13に記載の外科用器械。
【請求項15】
前記外科用ブレードが切断先端に連結された中空軸を含み、前記切断先端が、前記中空軸の軸線に平行な刃先を有し、前記回転に応答して前記ブレードの前記刃先に垂直な切断力を働かせる、請求項14に記載の外科用器械。
【請求項16】
前記統合微小機械デバイスが、外科的パラメータを記録するための記録デバイスに対する物理的接続を有さない、請求項12に記載の外科用器械。
【請求項17】
前記感知範囲の動的移動によって、外科的パラメータを記録するための記録デバイスに対する物理的接続が阻害される、請求項16に記載の外科用器械。
【請求項18】
固着が、前記外科用デバイスのコントローラに対する無線連結を用いるとともに、回転または前記デバイスを介した外科的物質のフローに影響しない、目立たない配置を含み、前記感知範囲が、前記駆動源に応答する前記外科用デバイスの回転により、物理的接続を制限する、請求項17に記載の外科用器械。
【請求項19】
前記統合微小機械デバイスが、前記外科用デバイスの速度、回転、またはトルクのうち少なくとも1つを感知するための構造を含む、請求項18に記載の外科用器械。
【請求項20】
歪みゲージ、小型ジャイロ、または圧力センサ/トランスデューサのうち少なくとも1つをさらに備える、請求項18に記載の外科用器械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動的センシング方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクスの設計および開発は、1965年にインテル(登録商標)社(Intel corporation)の共同創設者であるゴードン・ムーア(Gordon Moore)が、「ムーアの法則」として広く知られるようになったやや予言的な主張の中で、所与のチップ面積のトランジスタ密度(したがって計算機能力)は約24か月毎に二倍になると示唆して以来、確実にダウンサイジングの一途をたどってきた。医療用デバイスおよび装置は、エレクトロニクスの小型化の傾向の例外ではない。マイクロエレクトロニクスは、脈拍、酸素飽和度、体温、および出産中の胎児の生命兆候を感知するなど、定期的な患者の状態に対する診断のフィードバックを提供するためのセンサとして用いられる場合が多い。
【0003】
外科的処置中、センシングは、オルソスコピックシェーバーまたはカッターシステムなどの外科用器具用の駆動メカニズムにまで及ぶ場合が多い。オルソスコピック外科用デバイス(および他の内視鏡デバイス)は、手術野全体に沿った切開を要する従来の観血的手術とは対照的に、手術野へのアクセスを提供するアパーチャ(穴)を通して低侵襲性処置を行う。したがって、オルソスコピック処置は、オルソスコピック外科用器具の細長いプローブを使用して、患者の腹腔内部の限定空間で行われる場合が多い。これらの器具は、手術野の狭い隙間を進むために精密な操作を要する場合が多い。したがって、オルソスコピック外科用デバイスおよび器具は、外科医の精密な操作を妨げることがある、かさばる、かつ/または扱いにくい設計を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0078484号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0167672号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0131390号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述の先行技術における欠点を解消した動的センシング方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
動的センシング方法および装置は、外科用デバイスの速度、回転、トルク、および他の特性など、外科用デバイスの駆動メカニズムに関連する外科的パラメータを収集し報告するための、微小電子機械システム(MEMS)およびナノ電子機械システム(NEMS)の外科用センサを用いる。微小機械デバイスは、従来のエレクトロニクスとは対照的に、計算機による実行に加えて、レバー、ギア、およびトランスデューサの移動などの物理的遷移に適合された小型機械である。外科用デバイスは、外科的処置中に電気機械的特性を検出するため、外科用デバイス上もしくはその周りで外科用センサを用いるか、またはそこに外科用センサを固着する。外科的処置は、外科的処置によって画成される手術野に挿入されたシェーバーまたは他の内視鏡器具の駆動メカニズムに応答して、医療用デバイスを手術野内に配設する。
【0007】
オルソスコピック処置に対する診断のフィードバックを提供する従来のセンサは、手術野を狭くする傾向があり、器具に対する追加の係留(有線接続)を要する。外科用センサのサイズの縮小によって、外科的パラメータを測定する対象である外科用デバイスの駆動動作にセンサが干渉せず、または悪影響を及ぼさないようにして、手術野における非侵入性の配置が可能になる。サイズの縮小はまた、一人の患者に対して使用した後に処分される、単回使用向けの使い捨て器具の製造コストおよび廃棄物にとって有益である。
【0008】
以下に開示する構成では、外科用デバイスの駆動装置は、MEMSまたはNEMS外科用センサを用いて、例えば、手術野を瀉出させるポンプに比例してシェーバーの速度および回転を変動させる、フィードバックまたは制御パラメータとして使用される性能データおよび統計を駆動メカニズムに提供する。外科用センサは、シェーバーの「トラック」もしくは回転ハブ上に固着されるか、または別の方法で配設される。切刃は、切刃の反対側の端部にある刃先に回転運動を伝達するため、トラックから軸線方向に延在する。トラックは、一定したまたは振動する形で回転して切断力を刃先に伝達することによって、シェーバーに切断力および/または抽出力を提供するため、駆動メカニズムに応答して回転する。外科用センサは、切開速度を示す速度を検出するため、かつトラックとブレードのアセンブリの構造的安定性の上限を示すことがあるトルクを検出するため、シェーバーの回転、速度、およびトルクを検出する。
【0009】
本明細書の構成は、部分的には、従来の方策が、外科的処置中に追跡するために外科用ツールおよび機器にRFID(無線認証)タグを用いるという観察に基づく。RFIDは、小型かつ受動的である(即ち、トリガ信号によって外部から動力供給される)ように作製することができるが、計算および実行の能力は制限される。したがって、残念ながら、パラメータセンシングに対する従来の方策は、応答が一般的に、RFIDが固着されたデバイスまたは器具の識別に限定され、RFID上に符号化されていることがある計算能力が限定されるため、識別情報以外の情報が利用不能であるという欠点がある。
【0010】
したがって、本明細書の構成は、駆動メカニズムに応答して、速度、回転、およびトルクなどの動的属性を感知し、感知された属性を応答制御のために無線インターフェースを介して駆動源に伝達する、外科用デバイス上に配設される目立たないセンサを提供することによって、上述の欠点を実質的に克服する。無線インターフェースによって、外科用デバイスの回転または移動する構成要素に外科用センサを固着することが可能になり、微小機械の性質によって、外科用デバイスの動作に悪影響を及ぼさない非干渉的な位置に配置することが可能になる。
【0011】
さらに詳細には、方法は、感知範囲(sensory area)が、統合微小機械デバイス(integrated micromechanical device)を受け入れるように適合されるとともに、外科的処置中に感知された電気機械的刺激に応答するようにして、外科用デバイス上の感知範囲を特定することによって、外科的または治療的処置中に動的外科的フィードバックを提供する。外科用デバイスは、外科的操作を行うために駆動源に連結され、統合微小機械デバイスは、外科的処置中に外科的パラメータを動的に検出するために感知範囲に固着される。統合微小機械デバイス(微小機械デバイス)は、外科的処置中に検出された外科的パラメータを統合微小機械デバイスから動的に受信するため、統合微小機械デバイスに応答するコントローラとの無線通信を維持するが、非干渉的な感知範囲に配置することで、感知される外科的パラメータは、統合微小機械デバイスを感知範囲に目立たないように配置することにより、微小機械デバイスの存在による影響を受けない。
【0012】
特定の構成では、請求される方策は、本明細書において例示の用途として考察される、膝関節手術などの内視鏡的処置における特定の有用性を有する。医療用デバイス環境において、方法は、回転を感知するように構成された統合微小機械デバイスを含む、シェーバーなどの外科用抽出デバイスを制御し、感知された回転パラメータを送るため、微小機械デバイスからコントローラまでの無線接続を確立する。取付けメカニズムは、統合微小機械デバイスを、外科用ブレードを駆動するための回転ハブに固着し、回転ハブは駆動源に応答して、手術対象物(surgical matter)の切断および抽出のために外科用ブレードを回転させる。回転ハブは移動(回転)により物理的接続を制限するので、無線接続は、物理的に係留された接続の必要性を緩和する。外科医は、外科用ブレードの回転による治療的操作を行うため、外科用ブレードを手術野に配設し、微小機械デバイスは、ハブの回転に基づいて、微小機械デバイスに働く遠心力によってもたらされる回転パラメータを感知する。微小機械デバイスは、外科的パラメータを導出するため、感知された回転パラメータをコントローラに送り、コントローラは、ポンプに連結されるとともに、導出された外科的パラメータに応答してポンプを制御するように構成され、したがって、シェーバーの活動に応答してポンプの比例制御が提供される。
【0013】
本発明の代替の構成は、本発明の実施形態として本明細書に開示される方法動作のいずれかまたは全てを処理するため、ソフトウェアおよび/または回路構成(例えば、上記に概説したようなプロセッサ)を備えて構成された、マルチプロセッサ、コントローラ、または専用コンピュータデバイスなど、多重プログラミングまたは多重プロセシングコンピュータ化デバイスを含む。本発明のさらに他の実施形態は、上記に概説した、かつ以下に詳細に開示する方法の実施形態のステップおよび動作を行うため、単独で、または互いに多重プロセシングコンピュータ化デバイスと併せて動作することができる、Javaバーチャルマシンおよび/またはオペレーティングシステムなどのソフトウェアプログラムを含む。かかる1つの実施形態は、メモリおよびプロセッサの結合を有する多重プロセシングコンピュータ化デバイスで実行したとき、本発明の実施形態として本明細書に開示される動作を行ってデータアクセス要求を実施するようにプロセッサをプログラムする、命令として符号化されたコンピュータプログラム論理を含む持続性コンピュータ可読記憶媒体を有する、コンピュータプログラム製品を備える。本発明のかかる構成は、一般的に、光学媒体(例えば、CD-ROM)、フロッピーもしくはハードディスク、または1つもしくは複数のROM、RAM、もしくはPROMチップ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のファームウェアもしくはマイクロコードなどの他の媒体など、コンピュータ可読媒体上に配置または符号化された、ソフトウェア、コード、および/または他のデータ(例えば、データ構造)として、あるいは特定用途向け集積回路(ASIC)として提供される。ソフトウェアまたはファームウェアまたは他のかかる構成は、コンピュータ化デバイス上に(例えば、オペレーティングシステムの実行中もしくは環境のインストール中に)インストールして、本発明の実施形態として本明細書に説明される技術をコンピュータ化デバイスに実行させることができる。
【0014】
本発明の上述および他の目的、特徴、ならびに利点は、添付図面に例証されるような、本発明の特定の実施形態の以下の説明から明白になるであろう。様々な図面全体を通して、同様の参照符号は同じ部品を指す。図面は必ずしも縮尺通りではなく、その代わりに、本発明の原理を例証するにあたって強調が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本明細書に開示される構成とともに使用するのに適した医療用デバイス環境を示すコンテキスト図である。
【
図2】本明細書に開示されるような動的パラメータセンシングのフローチャートである。
【
図4】外科的処置中の内視鏡センサ配置のフローチャートである。
【
図5】外科的処置中の内視鏡センサ配置のフローチャートである。
【
図6】外科的処置中の内視鏡センサ配置のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
微小機械外科用センサを介して動的フィードバックを用いる医療用デバイス環境の構成例を以下に示す。図示された例では、外科用デバイスは、骨および組織などの外科的物質(surgical material)を切除し、手術野から除去するため、回転移動を提供するための駆動源に応答する外科用シェーバーである。外科用センサは、駆動源に応答する、いわゆるトラック、つまり回転ハブに固着される。切刃の端部にある刃先が回転または振動して外科的物質を抽出し、管状ブレードの中空内部によって、やはり駆動源によって制御されるポンプによる瀉出が可能になる。
【0017】
図1は、本明細書に開示される構成とともに使用するのに適した医療用デバイス環境100のコンテキスト図である。
図1を参照すると、医療用デバイス環境100は、110-1として示されたシェーバー130内などの外科的環境内に配置される、または110-2(全体的に110)として示された患者132の手術野154に配置される、統合微小機械デバイス(微小機械デバイス)110を用いる。微小機械デバイス110は、特定の構成では、MEMSまたはNEMSデバイスであり、無線アンテナ124への信号122(122-1)またはアンテナからの信号(122-2)に応答する、駆動コントローラ120または他の集中コントローラに対する無線接続112を維持する。微小機械デバイス110は、外科的パラメータの感知を要求するためのアンテナ124からの信号122-2に応答する受信機115と、感知された外科的パラメータを信号122-1によってコントローラ120に返信するように構成された送信機113と、を含み、他の感知、計算、および電力供給構成要素117を含んでもよい。微小機械デバイス110は、信号122-2がデバイス110に電力も供給するように、受動的であってもよく、また、受信した信号122-2によって、感知されたパラメータ122-1の動作および送信が可能になるように十分に小さく、微小機械デバイス110は、信号122-2に応答する、他の感知範囲、処理機能、または機械的特徴を有してもよい。
【0018】
微小機械デバイス110の配置は、速度、回転、およびトルクなどの外科的パラメータを直接感知するような配置であり、微小機械デバイス110-1として示される、外科用シェーバー130の内部に対する固着を含んでもよく、または手術部位154内で直接動作してもよい。微小機械デバイス110は、一旦配設されると、コントローラ120からの信号122-2によって活性化し、感知、計算、および感知した外科的パラメータ122-1を戻す送信のタスクを行う。シェーバー130の構成は、微小機械デバイス110-1をトラックまたはハブ180に固着し、それが次に、
図3を参照してさらに後述する、外科的切断および瀉出のために手術部位に挿入される。
【0019】
図2は、本明細書に開示されるような動的パラメータセンシングのフローチャートである。外科用デバイス環境100において、外科用器械を制御するための開示された方法は、ステップ200で、感知範囲131が外科的処置中の感知された電気機械的刺激に応答するように、外科用デバイス130上の感知範囲131を特定することを含む。外科用デバイス130は、穿孔または給送などの外科的操作を行うため、駆動源120に連結する。例示のシェーバー130などの回転デバイスでは、例えば、感知範囲131は、動作中に駆動源120からの遠心力を受ける回転部品上にあってもよい。数例を挙げると、可変抵抗、圧力センシング、ジャイロおよび歪みゲージセンシングなど、様々な感知能力が、微小機械デバイス110-1に用いられてもよい。
【0020】
ステップ201で示されるように、取付けメカニズムは、外科的処置中に外科的パラメータを動的に検出するため、統合微小機械デバイス110-1を感知範囲131に固着する。取付けメカニズムは、ピン、接着剤、溶剤溶接など、任意の適切な固着であってもよく、または、例えば鋳造中に形成されるキャビティもしくはポケットなど、外科用器具作製の特徴であってもよい。
【0021】
ステップ202で示されるように、微小機械デバイス110は、外科的処置中に統合微小機械デバイス110から信号122-1として検出された外科的パラメータを動的に受信するための駆動コントローラ120との無線通信を維持する。デバイス110の位置およびサイズは、統合微小機械デバイスを感知範囲131に目立たないよう配置することにより、外科的パラメータが統合微小機械デバイスの存在による影響を受けないような、位置およびサイズである。
【0022】
図3は、
図1の環境におけるセンサ配備の図である。
図1および
図3を参照すると、内視鏡的膝処置における微小機械デバイス110の配備の配置例が示される。外科医は、患者の膝152にある内視鏡アパーチャ150を通してシェーバー130を配設する。シェーバー130は、皮膚および軟組織を通して、大腿骨156と脛骨158との間の外科的空隙154内まで延在する。シェーバー130は、駆動ケーブル182を介してコントローラ120の駆動ポート162に連結するため、駆動接続160を含む。駆動接続160は、ハブ180および取り付けられた外科用ブレード162および刃先164に動力供給するための、電気、空圧、水圧、または他の適切な駆動媒体を受け入れてもよい。シェーバー130はまた、チューブセット174を介して瀉出ポート172に連結するための吸引ポート170を含む。駆動コントローラ120は、外科用ブレード162の中空コア176を介してシェーバーから外科的物質を瀉出するため、(一般的には外科用ポンプを介して)吸引を適用する。あるいは、シェーバー130に動力供給する駆動コントローラ120とは異なる、別個のポンプが用いられてもよい。処置はまた、カニューレ送達チューブ160を通して給送される食塩水の圧力、フロー、および温度を感知するため、また、手術部位を付加的に洗浄または瀉出(吸引)するため、カニューレ140の送達チューブ160の内部に固着された微小機械デバイス110-3を有する1つまたは複数のカニューレ140を含んでもよい。
【0023】
図4〜
図6は、外科的処置中の内視鏡的感知構成のフローチャートである。
図1および
図3〜
図6を参照すると、シェーバー130などの外科的抽出デバイスを制御する方法は、ステップ300で示されるように、回転センシング用に統合微小機械デバイス110-1を構成することを含む。例示の配置では、これは、外科用デバイスの速度、回転、またはトルクのうち少なくとも1つを感知するために、微小機械デバイス110-1を構成することを含み、統合微小機械デバイスは、ステップ301で開示されるように、歪みゲージ、小型ジャイロ、または圧力センサ/トランスデューサのうち少なくとも1つを備える。様々な感知および計算能力が、微小機械デバイス110上に構成または作製されてもよい。特に、遠心力による回転の感知、または重力場を介した交互配向の検出は、回転を示してもよい。微小機械デバイス110はまた、ステップ302で示されるように、感知された回転パラメータを送るため、統合微小機械デバイス110-1からコントローラ120までの無線接続122-1の確立のために備えられる。
【0024】
MEMSを装備したシェーバー130は、ステップ303で開示されるように、統合微小機械デバイス110を、外科用ブレードを駆動するための回転ハブ180などの感知範囲131に固着し、回転ハブ180は、外科的物質を切断し抽出するために外科用ブレード162を回転させるため、駆動源またはコントローラ120に応答する。無線能力は、回転ハブ180が移動(回転)により物理的接続を制限するにもかかわらず、外科的パラメータの収集を行う。図示されるシェーバー130の例では、ステップ304で示されるように、感知範囲131は外科用デバイスの回転部分(シェーバー130のハブ)上にあり、固着によって、統合微小機械デバイス110が回転部分180上に配設される。
【0025】
ステップ305で開示されるように、ハブ180から延在する外科用ブレード162は、切断先端164に連結された中空軸またはボア176を含み、それによって、切断先端164は、中空軸の軸線に平行な刃先を有し、回転に応答してブレード162の刃先に垂直な切断力を働かせる。したがって、微小機械デバイス110は、ステップ306で示されるように、ハブ180の回転により外科的パラメータを記録するための記録デバイスに対する物理的接続を用いないが、それは、ステップ307で示されるように、感知範囲131の動的移動によって、外科的パラメータを記録するための記録デバイスに対する物理的接続が阻害されるためである。それよりもむしろ、外科的パラメータの収集は、ステップ308で開示されるように、回転またはデバイス130を介した外科的物質のフローに影響しない、外科用デバイス130のコントローラに対する無線連結(即ち、送信機113)を目立たないように配置することによって容易にされる。
【0026】
外科的または治療的処置の過程で、外科医は、ステップ309で示されるように、外科用ブレード162の回転による治療的操作を行うため、外科用ブレード162を手術野154内に配設する。これは、ステップ310で示されるように、外科用ブレード162を駆動源120に連結するとともに、回転に応答して外科用ブレード162を介して刃先164に切断力を働かせるように適合されたトラック180上に、微小機械デバイス110を配設することを含む。ステップ311で開示されるように、駆動源120は、駆動コントローラ120から駆動ケーブル182を介して回転部分180を回転させ、それによって、感知範囲131は、微小機械デバイス110-1によって検出可能な力を受ける。
【0027】
ステップ312で示されるように、微小機械デバイス110は、ハブ180の回転に基づいて、微小機械デバイス110-1に働く遠心力によって引き起こされる回転パラメータを感知する。ステップ313で示されるように、感知範囲131は、ハブ180または他の駆動メカニズムの回転など、駆動源120に応答する外科用デバイス130の移動により、物理的接続を制限する。代替の構成は、微小機械デバイス110上に様々な感知能力を配備させてもよい。歪みゲージは、ハブ180を破断する恐れがある過度な損傷力を感知するため、ハブ180上の表面の変動を感知することによってトルクを検出するのに用いられてもよい。遠心力または重力の変動は、例えば、感圧性抵抗器またはジャイロスコープによって感知されてもよい。図示される特定のシェーバー配置では、微小機械デバイス110-1は、ステップ314で示されるように、外科用パラメータを導出するため、感知された回転パラメータまたは他の感知されたパラメータをコントローラ120に送るが、その際、コントローラ120はポンプに連結されるとともに、導出された外科的パラメータに応答してポンプを制御するように構成される。かかる構成では、駆動コントローラ120は、ステップ315で開示されるように、導出された外科的パラメータに応答してポンプが働かせる圧力を変動させて、外科用ブレード162の速度および切断力によって得られる外科的物質の瀉出に比例した吸引圧力のレベルを提供する。
【0028】
従来の方策が、ハンドルとハンドルに動作可能に接続されるとともにハンドルによって作動する2つの顎部とを備える外科用把持具を開示している、Talaricoらの特許文献1(Talaricoの484号)によって示されている。パラグラフ[0006]を参照すると、把持具によって加えられる圧力または力の量を直接測定するため、センサが、一方または両方の顎部の内表面上に配置される。Talaricoの484号は、パラグラフ[0047]〜[0048]でMEMSベースのセンサを提案しているが、センサは、顎部間の圧力または力を検出するためのものである。本提案の方策とは対照的に、トルク、速度、もしくは回転など、回転に基づくパラメータは、図示、教示、または開示されていない。さらに、かかる回転パラメータは、顎部表面の閉止に関連する線形的な力には適用不能であろう。
【0029】
別の出願であるGiordanoによる特許文献2(Giordanoの672号)は、内視鏡的または腹腔鏡的外科用器具など、少なくとも1つのセンサトランスポンダを備える外科用器具について教示している。Giordanoの672号は、[0033]で考察されているように、自在回転継手など、器具の何らかの特徴によって、センサ(1つもしくは複数)に対する有線接続の使用を防止または別の形で阻害する、外科用器具を対象としている。Giordanoの672号はMEMS技術について言及しているが、672号公報は単に、パラグラフ[0057]で開示されているように、エンドエフェクタ12の関節接合された顎部にセンサを用いており、シャフトドライブのような継続的回転については何ら提案していない。したがって、Giordanoの672号は、本提案の方策とは対照的に、回転構成で配設されるMEMSセンサについて、あるいは回転移動に関する動作パラメータを感知し送信するための連結については、図示、教示、または開示していない。
【0030】
特許文献3(390号)は、ステープルカートリッジアセンブリを含むエンドエフェクタと、ステープルカートリッジと動作可能に関連付けられたアンビルと、を備え、それによってステープルカートリッジおよびアンビルが互いに移動可能に接続されて、一方が他方に対して並置される、外科用ステープラーについて教示している。ステープルカートリッジおよびアンビルはそれぞれ組織接触面を画成し、MEMSデバイスは、ステープルカートリッジの組織接触面およびアンビルの組織接触面に動作可能に接続される。パラグラフ[0014]で考察されるように、複数のMEMSデバイスが外科用器具に接続され、MEMSデバイスは、ステープルカートリッジアセンブリの組織接触面とアンビルの組織接触面との間の距離を測定するように構成され適合される。
【0031】
390号出願に開示されているMEMSデバイスは、[0015]で考察される、組織に加えられる圧力量、およびステープルカートリッジの組織接触面とアンビルの組織接触面との間で掴持される組織の厚さのうち少なくとも一方を測定するように構成され適合される。しかし、本提案の方策とは対照的に、回転移動に適用されるセンサ、または回転運動に関する動作データもしくはパラメータの関連するフィードバックについては、何ら開示がないものと思われる。
【0032】
当業者であれば、本明細書で定義されるような外科的パラメータを測定するためのプログラムおよび方法は、a)ROMデバイスなどの書込み不能な記憶媒体に恒久的に格納される情報、b)フロッピーディスク、磁気テープ、CD、RAMデバイス、ならびに他の磁気および光学媒体などの書込み可能な持続性記憶媒体に変更可能に格納される情報、あるいはc)インターネットまたは電話モデム回線などの電子ネットワークのように、通信媒体を通してコンピュータに伝達される情報を含むがそれらに限定されない多くの形態で、ユーザ処理およびレンダリングデバイスに送達可能であることを、容易に理解するはずである。動作および方法は、命令に応答するプロセッサによる実行のため、ソフトウェア実行可能なオブジェクトの形で、または符号化された一連の命令として実施されてもよい。あるいは、本明細書に開示する動作および方法は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、状態マシン、コントローラ、または他のハードウェア構成要素もしくはデバイス、あるいはハードウェア構成要素、ソフトウェア構成要素、およびファームウェア構成要素の組み合わせなど、ハードウェア構成要素を使用して全体的にまたは部分的に具体化されてもよい。
【0033】
外科的パラメータを測定するシステムおよび方法について、その実施形態を参照して詳しく図示し記載してきたが、添付の請求項に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更がなされてもよいことが、当業者には理解されるであろう。
【符号の説明】
【0034】
100 医療用デバイス環境
110、110-1、110-2、110-3 微小機械デバイス
112 無線接続
113 送信機
115 受信機
117 構成要素
120 コントローラ
124 アンテナ
122-1、122-2 信号
130 シェーバー
131 感知範囲
132 患者
140 カニューレ
150 内視鏡アパーチャ
152 膝
154 手術野
156 大腿骨
158 脛骨
160 駆動接続
162 外科用ブレード
164 刃先
170 吸引ポート
172 瀉出ポート
174 チューブセット
176 中空コア
180 トラック
182 駆動ケーブル