特許第6444256号(P6444256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444256
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】塗布処理装置および塗布処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20181217BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20181217BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20181217BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20181217BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   B05C5/02
   B05C13/02
   B05D3/00 C
   B05D1/26 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-95455(P2015-95455)
(22)【出願日】2015年5月8日
(65)【公開番号】特開2016-213313(P2016-213313A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】木村 義雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 貴浩
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−175644(JP,A)
【文献】 特開平11−044957(JP,A)
【文献】 特開2009−148784(JP,A)
【文献】 特開2003−243332(JP,A)
【文献】 特開2001−269610(JP,A)
【文献】 特開2014−113555(JP,A)
【文献】 特開2007−000865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B05C 5/02
B05C 13/02
B05D 1/26
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のフレームの内側に基板を配置し、粘着性のテープを前記フレームおよび前記基板に貼りつけて前記フレームの内側に保持された前記基板に処理液を塗布する塗布処理装置であって、
前記テープに貼り付けられた前記基板を保持する基板保持手段と、
前記テープに貼り付けられた前記フレームを保持するフレーム保持手段と、
直線状に前記処理液を供給する処理液供給手段と、
前記処理液供給手段と前記基板とを相対的に移動させる移動手段と、
前記処理液供給手段および前記移動手段の動作を制御する制御手段と
を有し、
前記基板保持手段は、前記基板よりも大きく前記フレームよりも小さい形状とし、前記基板を前記テープとともに支持することで、前記基板の周囲に前記テープの環状の平坦面を形成可能とし、
前記制御手段は、前記処理液供給手段の吐出口に連通する液貯留部の圧力を調整して、前記吐出口に前記基板の厚み以上の前記処理液の液溜まりを形成させ、前記基板上の塗布膜よりも厚くなる塗布膜の端部が前記基板の外側に位置するように、前記基板保持手段で支持された前記テープの環状の平坦面及び前記基板の表面に前記処理液を塗布することで、前記基板を含む前記基板よりも広い領域に前記処理液を塗布するように、前記処理液供給手段および前記移動手段の動作を制御することを特徴とする塗布処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記処理液供給手段を前記基板上の塗布膜よりも厚くなる塗布膜の端部が前記基板の外側に位置するように、前記基板の一端の外側に配置し、
その後、前記処理液供給手段の吐出口に連通する液貯留部の圧力を調整して、前記吐出口に前記基板の厚み以上の前記処理液の液溜まりを形成させ、前記処理液供給手段から供給された直線状の前記処理液を前記基板の一端の外側に位置する前記テープの環状の平坦面に接触させ、
その後、直線状の前記処理液を前記テープの環状の平坦面及び前記基板の表面に接触させながら前記処理液供給手段を前記基板の他端の外側まで移動させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の塗布処理装置。
【請求項3】
環状のフレームの内側に基板を配置し、粘着性のテープを前記フレームおよび前記基板に貼りつけて前記フレームの内側に保持された前記基板に処理液を塗布する塗布処理方法であって、
前記基板よりも大きく前記フレームよりも小さい形状のステージで前記基板を前記テープとともに支持することで、前記基板の周囲に前記テープの環状の平坦面を形成する設定工程と、
直線状に前記処理液を供給するノズルを、前記基板上の塗布膜よりも厚くなる塗布膜の端部が前記基板の外側に位置するように、前記基板の一端の外側の側方に配置する配置工程と、
その後、前記ノズルの吐出口に連通する液貯留部の圧力を調整して、前記吐出口に前記基板の厚み以上の前記処理液の液溜まりを形成させ、前記ノズルから供給された直線状の前記処理液を前記基板の一端の外側に位置する前記テープの環状の平坦面に接触させる接触工程と、
その後前記直線状の処理液を前記ステージで支持された前記テープの環状の平坦面及び前記基板の表面に接触させながら前記ノズルを前記基板の他端の外側まで相対的に移動させて前記基板を含む前記基板よりも広い領域に前記処理液を塗布する塗布工程と、
を有する塗布処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状のフレームの内側に基板を配置し、粘着性のテープでフレームに貼り付けられた基板の表面に処理液を塗布する塗布処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば半導体デバイスの製造プロセスにおいて、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」とする)の大口径化が進んでいる。また、実装などの特定の工程において、ウェハの薄型化が求められている。例えば大口径で薄いウェハを、そのまま搬送すると、ウェハに反りや割れが生じる恐れがある。このため、環状のフレームの内側にウェハを配置し、フレームおよびウェハの裏面にテープを貼り付けて薄型化されたウェハを補強した状態で搬送していた(特許文献1参照)。
【0003】
また、上記の補強されたウェハの表面に処理液、例えば高粘度材料を塗布して塗布膜を形成し、その後塗布膜を乾燥させて、例えば乾燥後に厚み10μm〜2mmの厚膜をウェハの表面に形成せねばならない場合も考えられる。一般的に、厚膜形成のための塗布処理は、長尺状のノズルから処理液を帯状に吐出させつつ長尺状のノズルを移動させて、塗布膜を形成する(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−016579号公報
【特許文献2】特開2013−098371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、乾燥後の塗布膜の膜厚が10μm〜2mmの厚膜を形成するためには、乾燥前の(塗布処理時の)塗布膜は、その数倍の厚みで塗布する必要がある。従来、上記のような厚膜の塗布膜をウェハの表面にのみ形成すると、ウェハ周縁の膜厚が他の領域と比較して厚くなる傾向があり、ウェハ表面の膜厚の均一性が悪化していた。
【0006】
本発明は、従来技術の問題点を解決するものであり、フレームで補強されたウェハの表面に、均一な膜厚の塗布膜を形成するための塗布処理装置及び塗布処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る塗布処理装置は、環状のフレームの内側に基板を配置し、粘着性のテープを前記フレームおよび前記基板に貼りつけて前記フレームの内側に保持された前記基板に処理液を塗布する塗布処理装置であって、前記テープに貼り付けられた前記基板を保持する基板保持手段と、前記テープに貼り付けられた前記フレームを保持するフレーム保持手段と、直線状に前記処理液を供給する処理液供給手段と、前記処理液供給手段と前記基板とを相対的に移動させる移動手段と、前記処理液供給手段および前記移動手段の動作を制御する制御手段と、を有し、前記基板保持手段は、前記基板よりも大きく前記フレームよりも小さい形状とし、前記基板を前記テープとともに支持することで、前記基板の周囲に前記テープの環状の平坦面を形成可能とし、前記制御手段は、前記処理液供給手段の吐出口に連通する液貯留部の圧力を調整して、前記吐出口に前記基板の厚み以上の前記処理液の液溜まりを形成させ、前記基板上の塗布膜よりも厚くなる塗布膜の端部が前記基板の外側に位置するように、前記基板保持手段で支持された前記テープの環状の平坦面及び前記基板の表面に前記処理液を塗布することで、前記基板を含む前記基板よりも広い領域に前記処理液を塗布するように、前記処理液供給手段および前記移動手段の動作を制御することを特徴とする。
【0008】
また実施形態の一態様に係る塗布処理方法は、環状のフレームの内側に基板を配置し、粘着性のテープを前記フレームおよび前記基板に貼りつけて前記フレームの内側に保持された前記基板に処理液を塗布する塗布処理方法であって、前記基板よりも大きく前記フレームよりも小さい形状のステージで前記基板を前記テープとともに支持することで、前記基板の周囲に前記テープの環状の平坦面を形成する設定工程と、直線状に前記処理液を供給するノズルを、前記基板上の塗布膜よりも厚くなる塗布膜の端部が前記基板の外側に位置するように、前記基板の一端の外側の側方に配置する配置工程と、その後、前記ノズルの吐出口に連通する液貯留部の圧力を調整して、前記吐出口に前記基板の厚み以上の前記処理液の液溜まりを形成させ、前記ノズルから供給された直線状の前記処理液を前記基板の一端の外側に位置する前記テープの環状の平坦面に接触させる接触工程と、その後前記直線状の処理液を前記ステージで支持された前記テープの環状の平坦面及び前記基板の表面に接触させながら前記ノズルを前記基板の他端の外側まで相対的に移動させて前記基板を含む前記基板よりも広い領域に前記処理液を塗布する塗布工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗布処理装置及び塗布処理方法を用いて塗布処理を行うことにより、ウェハの表面に均一な膜厚の塗布膜を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】フレームとテープに保持されたウェハの平面図である。
図2】フレームとテープに保持されたウェハの縦断面図である。
図3】塗布処理装置の構成の概略を示す平面図である。
図4】塗布処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図5】ノズルの縦断面図である。
図6】塗布処理時(配置工程)の様子を示す説明図である。
図7】塗布処理時(設定工程)の様子を示す説明図である。
図8】塗布処理時(接触工程及び塗布工程)の様子を示す説明図である。
図9】本実施の形態で形成された塗布膜の平面図である。
図10】本実施の形態で形成された塗布膜の縦断面図である。
図11】本実施の形態の比較例として形成された塗布膜の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0012】
被処理基板例えばウェハWは、フレームFを用いて補強された状態で搬送や所定の処理が行われる。フレームFを用いて補強されることにより、ウェハWは反りや割れが防止される。
【0013】
図1は、フレームFとテープTに保持されたウェハWの平面図であり、図2は、フレームFとテープTに保持されたウェハWの縦断面図である。
【0014】
円環状のフレームFの内側にウェハWは配置される。フレームFとウェハWの裏面には粘着性を有するテープTが貼り付けられ、テープTによりフレームFの内側にウェハWが保持される。フレームFは、金属例えばアルミニウム等で形成される。フレームFの厚みはウェハWと同等〜2倍程度である。そして円環状のフレームFによりウェハWは補強され、ウェハWの反りや割れが防止される。
【0015】
図3は塗布処理装置1の構成の概略を示す平面図であり、図4は塗布処理装置1の構成の概略を示す縦断面図である。
【0016】
塗布処理装置1は、テープTに貼り付けられたウェハWを保持する基板保持手段例えばステージ11と、テープTに貼り付けられたフレームFを保持するフレーム保持手段例えばフレーム保持部12と、ウェハWに直線状に処理液例えば高粘度材料を供給する処理液供給手段例えば長尺状のノズル14と、処理液供給手段を移動させる移動手段例えばノズル移動手段22と、塗布処理装置1の動作を制御する制御手段例えば制御部24と、を有する。
【0017】
図3に示すように、ステージ11はウェハWの外形と相似形であり、かつウェハWの周縁から例えば約20〜100mmほど大きい。ステージ11は、その上面に載置されたウェハWを吸着保持できる構成となっている。なお、ステージ11は、ウエハWの外周端縁よりも大きく、かつ、フレームFの内周端縁よりも小さい形状として、フレームFの内側においてテープTの裏面をウェハWの裏面とともに吸着保持できるようにしている。またフレーム保持部12は、図3に示すようにステージ11の周囲に位置する。塗布処理装置1は、ノズル14が待機するノズル待機部15を有する。ノズル待機部15は、ステージ11の側方に配置される。
【0018】
ノズル移動手段22は、レール16と、駆動部21とで構成される。レール16は、ステージ11とノズル待機部15の側方に配置される。ノズル14は、駆動部21の動作によりレール16に沿って案内され、ステージ11の上方とノズル待機部15との間を移動可能である。また駆動部21の動作により、ノズル14は昇降可能である。図4に示すように、ノズル14は、昇降動作を行うことでノズル待機部15に対して高さ方向に接離自在であり、またステージ11に対しても高さ方向に接離自在である。ノズル移動手段22は、ノズル14とステージ11上に保持されたウェハWとを相対的に移動させる移動手段として機能する。
【0019】
ステージ11は、多孔質材で形成されている。図4に示すように、ステージ11には開閉弁23が接続され、開閉弁23は、用力である真空源25に接続される。開閉弁23を開閉させることにより、テープTに貼り付けられたウェハWをステージ11上に吸着保持または吸着解除できる。
【0020】
フレーム保持部12は、フレーム保持部12上に載置されたフレームFを固定保持するフレーム固定手段を有する。フレーム固定手段は、フレーム保持部12の表面に形成された複数の吸引孔20(図3)と、吸引孔20に接続される開閉弁19(図4)とで構成される。開閉弁19は、真空源25に接続される。開閉弁19を開閉させることにより、テープTに貼り付けられたフレームFをフレーム保持部12上に吸着保持または解除できる。
【0021】
図4に示すように、塗布処理装置1はフレーム保持部12を昇降させるフレーム昇降手段13を有する。フレーム昇降手段13は、ステージ11とフレーム保持部12との相対的な高さ位置を調整する高さ調整手段として機能する。
【0022】
また図4に示すように、ノズル14にはポンプ17が接続され、ポンプ17には処理液タンク18が接続される。処理液タンク18には、処理液が貯留されており、ポンプ17を駆動させて処理液タンク18からノズル14に処理液を供給する。
【0023】
図5は、ノズル14の縦断面図である。ノズル14は、液貯留部31と、スリット32と、吐出口33とを有する。液貯留部31はノズル14の内側に位置し、処理液タンク18から供給された処理液を液貯留部31に貯留する。スリット32は一端が液貯留部31に接続され、他端がノズル14の下面に位置し、スリット32は処理液の流路である。スリット32の下端に吐出口33が形成される。吐出口33は、ウェハWの直径よりも大きな(長い)直線状の形状である。液貯留部31に処理液Lを供給し、液貯留部31内の圧力を調整することにより、処理液の直線状の液溜りで断面形状が下に凸形状の凸部Nが吐出口33に形成される。凸部Nは、処理液Lの表面張力により吐出口33から落下せずに保持される。
【0024】
塗布処理装置1は、塗布処理装置1の動作を制御する制御手段例えば制御部24を有する。制御部24は、図3に示す駆動部21、図4に示す開閉弁19、開閉弁23、フレーム昇降手段13、ポンプ17等の動作を制御し、塗布処理装置1に所定の動作を行わせることが可能である。
【0025】
次に、塗布処理装置1で行われる塗布処理について説明する。図6図8は、塗布処理時の様子を示す説明図である。
【0026】
まず、塗布処理装置1にフレームFを用いて補強されたウェハWが搬入される。裏面にテープTが貼られたウェハWはステージ11上に、裏面にテープTが貼られたフレームFはフレーム保持部12上に載置される。このとき、フレーム昇降手段13を動作させ、ステージ11の表面高さとフレーム保持部12の表面高さとを、ほぼ同じ高さにする。
【0027】
次に、開閉弁19と開閉弁23とを開とし、裏面にテープTが貼られたウェハWをステージ11に、裏面にテープTが貼られたフレームFをフレーム保持部12に、それぞれ吸着保持させる。
【0028】
次に、図7に示すように、フレーム昇降手段13を動作させフレーム保持部12を下降させる。このとき、テープTが塑性変形しない程度(〜約3mm)下降させる。しかも、フレームFの表面高さがウェハWの表面高さより相対的に低く位置するように、フレーム保持部12を下降させるのがよい(設定工程)(例えばフレーム保持部12の表面高さがステージ11の表面高さより2mm低くなるように設定する。)。ここで、ステージ11の表面がウェハWよりも広くなっているために、ウェハWよりも外側においてテープTがウェハWとともにステージ11の表面で支持されることになり、フレーム保持部12を下降させることで、ウェハWの周囲に位置するテープTが環状の平坦面となり、さらにその外側に位置するテープTが外側下方へ向かう傾斜面となる。
【0029】
次に、ノズル移動手段22を動作させ、図8に示すようにノズル14をノズル待機部15から上昇、左へ水平移動、下降させ、ノズル14をウェハWの一端より外側の側方に配置させる(配置工程)(例えばノズル14をウェハWの一端より5mm外側の側方に位置させる。)。
【0030】
次に、液貯留部31内の圧力を調整すると液貯留部31の処理液はスリット32を通って吐出口33に到達し、処理液の液溜りである凸部Nが吐出口33に形成される。そして凸部Nが吐出口33から落下せずに吐出口33に保持されるように、液貯留部31内の圧力が維持される。このときに、凸部Nの高さ(吐出口33から凸部Nの下端までの長さ)をウェハWの厚み以上となるようにするのが好ましい。その後、ノズル14を下降させ、凸部Nの下端がテープTの表面に接触した時点(着液)でノズル14の下降を停止する(接触工程)。
【0031】
次に、液貯留部31内の圧力を調整しつつノズル14を図8に示すようにウェハWの他端に向けて左方向に水平移動させる。このときに凸部Nの下端をテープT及びウェハWに接触させながら水平移動させる(ウェハWの一端より外側では凸部Nの下端をテープTに接触させたまま水平移動させ、ウェハWの一端から他端までの間では凸部Nの下端をテープT及びウェハWに接触させたまま水平移動させ、ウェハWの他端より外側では凸部Nの下端をテープTに接触させたまま水平移動させる。)。凸部Nの処理液は吐出口33から落下することなくテープTおよびウェハWの表面に表面張力により吸い寄せられて、処理液の塗布膜がテープT及びウェハWの表面に形成される(塗布工程)。このときにウェハWの周囲に位置するテープTがウェハWとともにステージ11で支持されて環状の平坦面となっているために、処理液の凸部NがウェハWの表面だけでなくテープTの表面(環状の平坦面)にも塗布される。またこのときにフレームFの表面高さ位置をウェハWの表面高さ位置より低く設定しているので、塗布処理時にノズル14の下端がフレームFに接触してノズル14を破損する虞がない。その後、ノズル14をウェハWの他端の外側まで移動させて、ウェハWの他端の外側まで塗布膜を形成する。これにより、ウェハWの表面だけでなく、ウェハWの外周端縁よりも外側のテープTの表面(環状の平坦面)にも塗布膜を形成することができ、ウェハWを含むウェハWよりも広い領域に塗布膜を形成することができる。
【0032】
上記のように、ウェハWを含むウェハWよりも広い領域に塗布膜を形成した後に、ノズル14を上昇、水平移動、下降させてノズル14をノズル待機部15に移動させノズル14をノズル待機部15で待機させる。次に、ステージ11とフレーム保持部12の吸着動作を解除し、フレームFで補強されたウェハWを塗布処理装置1から搬出する。
【0033】
ここで、本実施形態であるウェハWを含みウェハWより広い領域に塗布膜を形成した場合と、ウェハWの表面にのみ塗布膜を形成した場合とを比較しながら説明する。
【0034】
まず、上記で説明したように処理液の塗布膜を形成し、その後、形成された塗布膜を乾燥させて所望の膜厚の乾燥膜を得る。そして、所望の膜厚の乾燥膜を得るために、塗布時の塗布膜の膜厚は、乾燥膜の膜厚の数倍の厚みで形成しておく必要がある。ここで、乾燥膜の膜厚を厚膜例えば10μm〜2mmで形成する場合も、塗布時の塗布膜の膜厚はその数倍の厚みが必要となる。このような厚膜を塗布した場合、塗布直後は均一な膜厚であったとしても、塗布から時間が経過すると(例えば10秒経過した後)塗布膜の端部付近の膜厚が他の領域の膜厚より一般的に厚くなる。これは物理的な現象であり、塗布液が表面張力などによって移動することで発生すると考えられている。
【0035】
図9は、本実施形態で形成された塗布膜の平面図であり、図10は本実施形態で形成された塗布膜の縦断面図である。本実施形態における塗布処理では、図9図10に示すように、ウェハWを含みウェハWより広い領域で塗布膜Mを形成する。しかも一般的に厚くなる傾向にある塗布膜Mの端部が図10に示すようにウェハWの外側に位置するように塗布膜Mを形成し、ウェハW上の塗布膜Mの膜厚が均一となるようにしている。この状態から塗布膜Mを乾燥させると、ウェハW上には均一な膜厚の乾燥膜が形成される。
【0036】
本実施形態との比較例として、ウェハWの表面にのみ塗布膜を形成した場合の縦断面図を図11に示す。ここで図11における塗布処理手順を説明する。ノズル14をノズル待機部15から上昇、左へ水平移動、下降させ、吐出口33がウェハWの一端上に位置するようにノズル14をウェハWの一端上に配置する。次に、液貯留部31内の圧力を調整し、凸部Nが吐出口33に形成される。次に、ノズル14を下降させ、凸部Nの下端がウェハWの一端に接触した時点(着液)でノズル14の下降を停止する。その後、液貯留部31内の圧力を調整しつつノズル14をウェハWの他端に向けて水平に移動させる。凸部NがウェハWの他端に達したら、ノズル14の水平移動を停止させる。すると処理液の塗布膜がウェハWの表面にのみ形成される。その後、ノズル14をノズル待機部15まで移動させ、ノズル14をノズル待機部15で待機させる。
【0037】
ここで図11に示すように、ウェハWの表面にのみ塗布膜Mを形成した場合、塗布から時間が経過するとウェハWの端部の膜厚が他の領域と比較して厚くなる。図11の状態から塗布膜Mを乾燥させると、乾燥後の乾燥膜の断面形状は図11と相似な形状のままであり、比較例では乾燥膜の膜厚はウェハWの面内で均一にならない。
【0038】
本実施形態による塗布処理では、ウェハWを含みウェハWより広い領域に塗布膜を形成することにより、フレームFで補強されたウェハW上に均一な厚みの膜(塗布膜及び塗布膜を乾燥させた乾燥膜)を形成することができる。
【0039】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、ステージ11やフレーム保持部12におけるウェハWやフレームFの保持の方法は、真空吸着に限らず、静電吸着や他の手法を用いて保持、固定してもよい。また、ステージ11やフレーム保持部12の形状も本実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0040】
また、塗布膜形成手段の構成も本実施形態に限定されるものではなく、例えば特開2013−098371号公報に記載された塗布膜形成手段の構成を用いてもよい。
【符号の説明】
【0041】
W ウェハ
F フレーム
T テープ
1 塗布処理装置
11 ステージ(基板保持手段)
12 フレーム保持部(フレーム保持手段)
13 フレーム昇降手段(高さ調整手段)
14 ノズル(処理液供給手段)
22 ノズル移動手段(移動手段)
24 制御部(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11