(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基体部、前記基体部に対して回転可能に取り付けられる回転体、前記回転体を回転させる回転機構、および、前記回転体において保持部によって保持された基板の被研削面と対向する面に取り付けられる研削部材を備えた研削部を、移動機構によって前記基板へ向かう所定方向へ移動させる移動工程と、
前記研削部が移動させられている状態において、前記移動機構上に位置される基準位置から、前記回転体において前記研削部材が取り付けられる面とは反対側の面までの前記所定方向における距離を測定する測定工程と、
前記測定工程の測定結果に基づき、前記基板の前記被研削面と接触し研削加工を開始する前記研削部材の研削開始位置を検知する検知工程と
を含むことを特徴とする基板処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板処理装置および基板処理方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
<1.基板処理システムの構成>
図1は、第1の実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0012】
図1に示す本実施形態に係る基板処理システム1は、基板を薄型化するシステムである。
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、X軸正方向に沿って、搬入出ステーション2および処理ステーション3の順番で並べて配置される。
【0013】
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚の基板W(以下「ウェハW」という場合がある)を水平状態で収容するキャリアCが載置される。
【0014】
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置される。かかる搬送領域20には、Y軸方向に延在する搬送路21と、搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とが設けられる。搬送装置22は、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能であり、載置板11に載置されたキャリアCと、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、ウェハWの搬送を行う。
【0015】
なお、載置板11に載置されるキャリアCの個数は、図示のものに限定されない。また、載置板11には、キャリアC以外に、不具合が生じた基板を回収するためのキャリア等が載置されてもよい。
【0016】
処理ステーション3には、各種装置を備えた複数たとえば3つの処理ブロックG1,G2,G3が設けられる。たとえば処理ステーション3の背面側(
図1のY軸正方向側)には、第1処理ブロックG1が設けられ、処理ステーション3の正面側(
図1のY軸負方向側)には、第2処理ブロックG2が設けられる。また、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(
図1のX軸負方向側)には、第3処理ブロックG3が設けられる。
【0017】
第1処理ブロックG1には、粗研削装置31と、仕上げ研削装置32とが配置される。なお、粗研削装置31と仕上げ研削装置32とは、基板処理装置の一例である。
【0018】
粗研削装置31は、ウェハWに対して粗研削処理を行う。粗研削装置31は、たとえばウェハWを保持する保持部61(後述する
図2参照)を内部に備え、保持部61に保持されたウェハWの被研削面W1を、たとえば研削砥石などの研削部材77(
図2参照)で粗研削する。なお、粗研削装置31の構成については、
図2以降を参照して後述する。
【0019】
仕上げ研削装置32は、ウェハWに対して仕上げ研削処理を行う。具体的な仕上げ研削装置32の構成は、粗研削装置31の構成とほぼ同様である。但し、仕上げ研削装置32における研削砥石(図示せず)の粒度は、粗研削装置31の研削砥石の粒度より小さく設定されることが好ましい。上記のように構成された仕上げ研削装置32は、図示しない保持部に保持されたウェハWの被研削面W1を粒度の小さい研削砥石で仕上げ研削する。
【0020】
なお、
図1で示した粗研削装置31や仕上げ研削装置32の配置位置は、例示であって限定されるものではない。すなわち、たとえば第2処理ブロックG2や第3処理ブロックG3に粗研削装置31等を配置してもよい。さらには、たとえば処理ステーション3のX軸正方向側の位置や、搬入出ステーション2と処理ステーション3との間に新たなステーションを設け、その新たなステーションに粗研削装置31等を配置するようにしてもよい。
【0021】
また、上記では、粗研削処理と仕上げ研削処理とが別々の装置内で行われるようにしたが、これに限られず、一つの装置内で行われるようにしてもよい。また、粗研削処理および仕上げ研削処理のいずれか一方を省略するようにしてもよい。また、研削処理は、粗研削処理、仕上げ研削処理の2種類に限定されるものではなく、3種類以上であってもよい。
【0022】
第2処理ブロックG2には、ダメージ層除去装置33と、洗浄装置34とが配置される。ダメージ層除去装置33には、研削されたウェハWが搬入され、研削によってウェハWの被研削面W1に形成されたダメージ層を除去する。具体的には、たとえば、ダメージ層除去装置33は、ウェハWを保持する保持部(図示せず)を内部に備え、保持部およびウェハWを回転させながら、ウェハWに対して処理液を供給してウェットエッチング処理を行い、ダメージ層を除去する。
【0023】
洗浄装置34は、たとえばウェハWを保持する保持部(図示せず)を内部に備え、保持部およびウェハWを回転させながら、たとえばDIW(純水)などの洗浄液をウェハWの被研削面W1や裏面へ供給する。これにより、ウェハWの被研削面W1等が洗浄される。なお、ダメージ層除去装置33および洗浄装置34は、上記した構成に限定されるものではない。
【0024】
第3処理ブロックG3には、ウェハWのトランジション装置35が設けられる。上記のように構成された第1処理ブロックG1〜第3処理ブロックG3に囲まれた領域には、搬送領域40が形成される。搬送領域40には、搬送装置41が配置される。
【0025】
搬送装置41は、たとえば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。かかる搬送装置41は、搬送領域40内を移動し、搬送領域40に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3内の所定の装置にウェハWを搬送する。
【0026】
また、基板処理システム1は、制御装置100を備える。制御装置100は、たとえばコンピュータであり、制御部101と記憶部102とを備える。記憶部102には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部101は、記憶部102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0027】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置100の記憶部102にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0028】
<2.粗研削装置の構成>
次に、粗研削装置31の構成について
図2を参照して説明する。
図2は、粗研削装置31の構成例を示す模式側面図である。なお、上記したように、仕上げ研削装置32は、粗研削装置31の構成とほぼ同様であるため、以下の説明は仕上げ研削装置32にも妥当する。
【0029】
図2に示すように、粗研削装置31は、チャンバ50と、基板保持機構60と、研削機構70と、研削液供給部80と、回収カップ90とを備える。
【0030】
チャンバ50は、基板保持機構60と研削機構70と研削液供給部80と回収カップ90とを収容する。チャンバ50の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)51が設けられる。FFU51には、バルブ52を介して不活性ガス供給源53が接続される。そして、FFU51は、不活性ガス供給源53から供給されるN2ガス等の不活性ガスをチャンバ50内に吐出してダウンフローを形成する。
【0031】
基板保持機構60は、保持部61と、支柱部62と、駆動部63とを備える。保持部61は、たとえばバキュームチャックであり、ウェハWの裏面を吸着し、ウェハWを水平に保持する。支柱部62は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が駆動部63によって回転可能に支持され、先端部において保持部61を水平に支持する。
【0032】
駆動部63は、保持部61および支柱部62を鉛直軸まわりに回転させる。したがって、基板保持機構60は、駆動部63を用いて支柱部62を回転させることによって支柱部62に支持された保持部61を回転させ、これにより、保持部61に保持されたウェハWを回転させる。なお、駆動部63としては、たとえば電動モータを用いることができる。また、ウェハWは、被研削面W1を上方に向けた状態で保持部61に保持される。
【0033】
研削機構70は、研削部71と、研削部71を水平に支持するアーム72と、アーム72を旋回および昇降させる旋回昇降機構73とを備える。
図3Aは、研削部71付近を拡大して示す模式側面図である。
【0034】
図3Aに示すように、研削部71は、基体部74と、回転体75と、駆動部76と、研削部材77とを備える。基体部74は、上端側がアーム72に接続される。また、基体部74には、駆動部76が収容される。駆動部76としては、たとえば電動モータを用いることができる。
【0035】
具体的には、駆動部76は、スピンドル76aを備え、かかるスピンドル76aの先端側が基体部74の下端側からZ軸負方向へ向けて突出するようにして基体部74に収容される。駆動部76のスピンドル76aの先端側には、上記した回転体75が取り付けられる。回転体75は、たとえば、円盤状または略円盤状に形成されるが、形状はこれに限られない。
【0036】
このように、回転体75は、駆動部76のスピンドル76aを介して、基体部74に対して回転可能に取り付けられる。そして、回転体75は、駆動部76によって鉛直軸まわりに回転させられる。なお、駆動部76は、回転機構の一例である。
【0037】
研削部材77は、回転体75において保持部61によって保持されたウェハWの被研削面W1と対向する面75aに取り付けられる。なお、以下では、回転体75の面75aを「下面75a」、下面75aの反対側に位置する面75bを「上面75b」と記載する場合がある。
【0038】
研削部材77としては、たとえば、研削砥石を用いることができるが、これに限定されるものではない。すなわち、研削部材77は、たとえば、不織布に砥粒を含有させた部材などその他の種類の部材であってもよい。
【0039】
また、研削部材77は、回転体75の外周縁75cに沿って取り付けられ、リング状とされる。なお、研削部材77の形状は、上記に限定されるものではなく、たとえば、回転体75の下面75aの全面に取り付けられる円盤状などであってもよい。
【0040】
上記のように構成された研削部71は、アーム72が旋回昇降機構73(
図2参照)によって昇降されることにより、Z軸方向に沿って移動させられる。したがって、たとえば、旋回昇降機構73がアーム72を下降させると、研削部71はZ軸負方向へ移動させられる、言い換えると、研削部71はウェハWへ向かう所定方向(ここでは、Z軸方向)へ移動させられる。なお、旋回昇降機構73は、移動機構の一例である。
【0041】
図3Bは、Z軸負方向、すなわち、下方へ移動した研削部71を示す模式側面図である。
図3Bに示すように、研削部71が下方へ移動すると、研削部材77がウェハWの被研削面W1と接触し研削加工を開始する。なお、本明細書では、
図3Bに示すように、ウェハWの被研削面W1と接触し研削加工を開始する研削部材77の位置を「研削開始位置」という。
【0042】
研削加工では、具体的には、保持部61に保持されたウェハWの被研削面W1に、研削部材77を接触させた状態で、保持部61と研削部材77とをそれぞれ回転させることで、ウェハWの被研削面W1が研削される。
【0043】
ところで、粗研削装置31においては、ウェハWの生産性を向上させるため、研削部材77の研削開始位置を、簡易な構成で検知できることが望ましい。これについて、
図4を参照しつつ説明する。
図4は、研削部材77の動作説明図である。
【0044】
粗研削装置31において研削部材77の研削開始位置を検知することができれば、たとえば、検知した研削開始位置を示す情報を記憶部102(
図1参照)に記憶させることができる。
【0045】
そして、たとえば、粗研削装置31においては、研削開始位置を検知したウェハWの次に搬入されたウェハWnに対して研削加工を施す際、まず研削部71の研削部材77をウェハWnの上方に位置させる(
図4の左図参照)。
【0046】
次いで、粗研削装置31においては、研削部材77を下降させる際、検知した研削開始位置よりも僅かに上方の位置まで研削部材77を比較的高速で移動させる(
図4の中央図参照)。すなわち、粗研削装置31は、検知した研削開始位置を示す情報が予め記憶されているため、研削開始位置に到達する直前までは、研削部材77を高速で移動させることができ、そのように高速で移動させた場合であってもウェハWnと接触することはない。
【0047】
その後、粗研削装置31においては、研削部材77をウェハWnの被研削面W1と接触するまで比較的低速で移動させ、接触したところでウェハWnに対して研削加工を施す(
図4右図参照)。これにより、粗研削装置31にあっては、研削部材77をウェハWnの被研削面W1まで早期に移動させることが可能となるため、研削処理に要する時間を短縮でき、結果としてウェハWn(W)の生産性を向上させることができる。
【0048】
そこで、本実施形態に係る粗研削装置31にあっては、
図3Aなどに示すように、基体部74に測定部78を設け、基体部74の基準位置から回転体75までの所定方向における距離Aを測定するようにした。なお、所定方向は、ここではZ軸方向である。そして、本実施形態では、測定部78の測定結果に基づき、研削部材77の研削開始位置を検知するようにした。これにより、簡易な構成でありながら、研削部材77の研削開始位置を検知することができる。
【0049】
以下詳しく説明すると、測定部78は、
図3Aに示すように、支持部78aを介して基体部74に取り付けられる。支持部78aは、基体部74の側面から水平方向(
図3Aの例ではX軸正方向)に向けて延設される。したがって、基体部74と測定部78とは、水平方向に並列に配置される。
【0050】
また、測定部78が基体部74に取り付けられることから、研削処理の際に、基体部74が移動機構たる旋回昇降機構73によってZ軸方向に移動させられると、測定部78もZ軸方向に移動させられる。
【0051】
また、測定部78は、回転体75の上面75bの上方で、かつ、外周縁75c付近の上方に位置される。したがって、測定部78は、基体部74の基準位置から回転体75まで、詳しくは、回転体75の上面75bの外周縁75c付近までのZ軸方向における距離Aを測定する。
【0052】
なお、測定部78としては、たとえばレーザ変位計や静電容量センサなどの距離測定装置を用いることができるが、これに限定されるものではない。また、測定部78は、測定された距離Aを示す情報を制御部101へ出力する。
【0053】
ここで、測定部78の測定対象である回転体75は、上記したように、駆動部76のスピンドル76aに取り付けられるが、その際に取り付け誤差が生じることがある。
図3Aに示す例では、回転体75が、取り付け誤差によってスピンドル76aに対して傾いて取り付けられた状態を示している。なお、
図3Aでは、理解の便宜のため、回転体75の傾きを誇張して示している。
【0054】
また、回転体75は、図示しない加工装置によって上面75bが適宜に加工されて製品化されるが、加工精度によっては上面75bに凹凸が形成されることがある。このように、回転体75の上面75bは、必ずしも水平面と平行ではないことから、回転体75が回転すると、上面75bは、矢印Dで示すように、上下に振動しながら回転することとなる。
【0055】
図5は、測定部78によって測定された距離Aの一例を示すグラフである。
図5に示すように、測定部78は、上下に振動する回転体75の上面75bまでの距離Aを測定している。
【0056】
そして、制御部101は、かかる測定部78の測定結果に基づき、研削部材77の研削開始位置を検知する。なお、制御部101は検知部の一例である。
【0057】
制御部101による研削開始位置の検知について、
図3Bを参照して説明する。
図3Bに示すように、研削部71が下方へ移動し、研削部材77がウェハWの被研削面W1と接触すると、研削部材77にはウェハWの被研削面W1からの反力Fが作用する。
【0058】
かかる反力Fにより、研削部材77および回転体75は、上方へ変位することとなる。したがって、接触後の測定部78においては、接触前に測定された距離Aよりも小さい値の距離A1が測定されることとなる。
【0059】
制御部101は、このような距離Aの変化を検出し、変化が検出されたときの研削部材77の位置を、研削部材77の研削開始位置として検知するようにした。具体的には、
図5に示すように、制御部101は、測定部78によって測定された距離Aが時刻T1で所定距離未満になった場合、時刻T1における研削部材77の位置を、研削開始位置として検知する。なお、上記した所定距離は、予め実験などを通じて適宜な値に設定される。
【0060】
制御部101は、検知した研削部材77の研削開始位置を示す情報を記憶部102(
図1参照)に記憶させるようにしてもよい。これにより、研削部材77をウェハWnの被研削面W1まで早期に移動させることが可能となって、研削処理に要する時間を短縮でき、結果としてウェハWn(W)の生産性を向上させることができることは、
図4を参照して既に述べた。
【0061】
ここで、基準位置について説明する。上記したように、研削開始位置の検知に用いられる距離Aは、基準位置から回転体75までの距離である。したがって、基準位置としては、たとえば、研削部材77とウェハWとの接触によってウェハWからの反力Fが作用した場合であっても、影響を受けにくい位置、詳しくは、Z軸方向に変位しにくい位置が好ましい。そこで、本実施形態では、基体部74に測定部78を取り付け、基体部74の基準位置から回転体75までの距離Aを測定するようにした。
【0062】
なお、上記した測定部78が取り付けられる位置は、あくまでも例示であって限定されるものではない。すなわち、たとえば、測定部78をアーム72に取り付け、アーム72の基準位置から回転体75までの距離を測定するようにしてもよい。
【0063】
図2の説明に戻ると、研削液供給部80は、ノズル81と、ノズル81を水平に支持するアーム82と、アーム82を旋回および昇降させる旋回昇降機構83とを備える。
【0064】
研削液供給部80は、ウェハWに対し、研削処理に用いられる研削液(ここではDIW)をノズル81から供給する。具体的には、ノズル81には、バルブ84を介してDIW供給源85が接続される。
【0065】
回収カップ90は、保持部61を取り囲むように配置され、保持部61の回転によってウェハWから飛散する研削液を捕集する。回収カップ90の底部には、排液口91が形成されており、回収カップ90によって捕集された研削液は、かかる排液口91から粗研削装置31の外部へ排出される。また、回収カップ90の底部には、FFU51から供給される気体を粗研削装置31の外部へ排出する排気口92が形成される。
【0066】
<3.基板処理システムの具体的動作>
次に、上記した基板処理システム1において実行される研削開始位置を検知する処理について説明する。ここで、研削開始位置検知処理の説明に入る前に、本実施形態に係る基板処理システム1において実行される一連の基板処理について説明しておく。
【0067】
図6は、基板処理システム1において実行される基板処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図6に示す一連の基板処理は、たとえば、制御装置100の制御部101によって実行されるものとする。
【0068】
まず、制御部101は、基板処理に先立って、搬入出ステーション2の搬送装置22(
図1参照)により、キャリアC内の薄型化される前のウェハWを取り出し、処理ステーション3の第3処理ブロックG3のトランジション装置35(
図1参照)へ搬送する。次に、制御部101は、トランジション装置35のウェハWを、搬送装置41(
図1参照)によって第1処理ブロックG1の粗研削装置31へ搬送する。
【0069】
つづいて、制御部101は、粗研削装置31内でウェハWの被研削面W1に対して研削液を供給しながら、粗研削処理を行う(ステップS101)。次に、制御部101は、粗研削されたウェハWを搬送装置41によって仕上げ研削装置32へ搬送し、ウェハWに対して研削液を供給しながら、仕上げ研削処理を行う(ステップS102)。
【0070】
次に、制御部101は、仕上げ研削装置32によって仕上げ研削されたウェハWを搬送装置41によりダメージ層除去装置33へ搬送する。制御部101は、ダメージ層除去装置33内で、ウェハWに対して処理液を供給してウェットエッチング処理を行い、ウェハWのダメージ層を除去する処理を実行する(ステップS103)。
【0071】
つづいて、制御部101は、ダメージ層除去装置33によってダメージ層が除去されたウェハWを搬送装置41により洗浄装置34へ搬送し、ウェハWの被研削面W1や裏面を洗浄する処理を行う(ステップS104)。
【0072】
つづいて、制御部101は、洗浄されたウェハWを搬送装置41によって洗浄装置34から搬出し、トランジション装置35へ搬送する。そして、制御部101は、トランジション装置35にある処理済のウェハWを、搬送装置22によって載置板11のキャリアCへ戻し、一連の基板処理が終了する。
【0073】
次に、粗研削装置31において実行される研削開始位置を検知する処理について、
図7を参照して説明する。
図7は、粗研削装置31において実行される研削開始位置を検知する処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0074】
図7に示すように、制御部101は、旋回昇降機構73によって研削部71を下方へ移動させる(ステップS201)。次いで、測定部78は、研削部71が旋回昇降機構73によって下方へ移動させられている状態において、基体部74の基準位置から回転体75までのZ軸方向における距離Aを測定する(ステップS202)。
【0075】
次いで、制御部101は、測定された距離Aが所定距離未満であるか否かを判定する(ステップS203)、すなわち、研削部材77および回転体75がウェハWとの接触によって上方へ変位したか否かを判定する。
【0076】
制御部101は、距離Aが所定距離以上である場合(ステップS203,No)、そのまま処理を終了する。他方、制御部101は、距離Aが所定距離未満である場合(ステップS203,Yes)、距離Aが所定距離未満となったときの研削部材77の位置を、研削開始位置として検知する(ステップS204)。そして、図示は省略するが、制御部101は、研削部材77がウェハWの被研削面W1に接触した後、所定時間粗研削を行って処理を終了する。
【0077】
上述してきたように、本実施形態に係る粗研削装置31は、保持部61と、研削部71と、旋回昇降機構(移動機構)73と、測定部78と、制御部(検知部)101とを備える。保持部61は、ウェハWを保持する。研削部71は、基体部74、基体部74に対して回転可能に取り付けられる回転体75、回転体75を回転させる駆動部(回転機構)76、および、回転体75において被研削面W1と対向する下面75aに取り付けられる研削部材77を備える。旋回昇降機構73は、研削部71をウェハWへ向かう所定方向へ移動させる。測定部78は、研削部71が旋回昇降機構73によって移動させられている状態において、基準位置から回転体75までの所定方向における距離Aを測定する。制御部101は、測定部78の測定結果に基づき、研削部材77の研削開始位置を検知する。これにより、簡易な構成でありながら、研削部材77の研削開始位置を検知することができる。
【0078】
また、本実施形態では、研削部材77を、ウェハWnと接触する研削開始位置の直前から比較的低速で移動させるようにしたことから(
図4右図参照)、研削部材77がウェハWnに接触したときにウェハWへ与えるダメージを抑制することができる。
【0079】
また、粗研削装置31においては、所定の枚数を研削処理するごとに、上記した研削開始位置を検知するように構成してもよい。これにより、たとえば、研削開始位置が変化した場合、かかる変化を解析することで、所定の枚数を研削処理することによって生じた研削部材77の摩耗量や、ウェハWの実研削量などを検出することが可能になる。
【0080】
(第2の実施形態)
次いで、第2の実施形態に係る基板処理システム1について説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0081】
第2の実施形態における基板処理システム1の粗研削装置31では、測定部78の測定結果から回転体75の振動の振幅を求め、かかる振幅に基づいて研削開始位置を検知するようにした。
【0082】
これについて、
図8を参照して詳しく説明する。
図8は、第2の実施形態に係る粗研削装置31において実行される研削開始位置を検知する処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0083】
図8に示すように、制御部101は、研削部71を下方へ移動させ(ステップS301)、つづいて測定部78は、基体部74の基準位置から回転体75までのZ軸方向における距離Aを測定する(ステップS302)。次いで、制御部101は、測定された距離Aに基づき、回転によって生じる回転体75の振動の振幅を算出する(ステップS303)。
【0084】
図9は、算出された回転体75の振動の振幅の一例を示すグラフである。なお、
図9では、時刻T2で研削部材77がウェハWの被研削面W1に接触する例を示している。
【0085】
図9に示すように、研削部材77がウェハWの被研削面W1に接触すると、回転体75の振幅は、ウェハWの振動の振幅の影響を受けて変化する。そこで、第2の実施形態では、回転体75の振幅が予め設定された所定振幅範囲から外れた場合に、ウェハWの振動の振幅の影響を受けた、すなわち、研削部材77がウェハWの被研削面W1に接触したと推定するようにした。
【0086】
図8の説明に戻ると、制御部101は、回転体75の振幅が所定振幅範囲外か否かを判定する(ステップS304)。なお、上記した所定振幅範囲は、予め実験などを通じて適宜な値に設定される。
【0087】
次いで、制御部101は、振幅が所定振幅範囲外ではない場合(ステップS304,No)、すなわち、振幅が所定振幅範囲内である場合、そのまま処理を終了する。
【0088】
一方、制御部101は、回転体75の振幅が所定振幅範囲外である場合(ステップS304,Yes)、振幅が所定振幅範囲外となったときの研削部材77の位置を、研削開始位置として検知する(ステップS305)。具体的に
図9に示す例では、制御部101は、振幅が時刻T2で所定振幅範囲外になった場合、時刻T2における研削部材77の位置を、研削開始位置として検知する。
【0089】
上述したように、第2の実施形態においては、測定部78の測定結果から回転体75の振動の振幅を求め、かかる振幅の変化に基づいて研削部材77の研削開始位置を検知する。これにより、簡易な構成でありながら、研削部材77の研削開始位置を検知することができる。
【0090】
また、回転体75の外周縁75c(
図3A参照)付近は、スピンドル76aから離れているため、上下の振動が顕著に表れやすい。上記したように、測定部78は、外周縁75c付近の上方に位置されるようにしたので、回転体75の振動による上下方向の振れが出やすい部位までの距離Aが測定部78で測定されることとなる。これにより、測定される距離Aの振れ幅が比較的大きくなり、制御部101では振動の振幅を容易に算出することができる。
【0091】
(第3の実施形態)
次いで、第3の実施形態に係る基板処理システム1について説明する。第3の実施形態における基板処理システム1の粗研削装置31では、測定部78の測定結果から回転体75の振動の周波数を求め、かかる周波数に基づいて研削開始位置を検知するようにした。
【0092】
図10は、第3の実施形態に係る粗研削装置31において実行される研削開始位置を検知する処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10に示すように、制御部101は、研削部71を下方へ移動させ(ステップS401)、つづいて測定部78は、基体部74の基準位置から回転体75までのZ軸方向における距離Aを測定する(ステップS402)。
【0093】
次いで、制御部101は、測定された距離Aに基づき、回転によって生じる回転体75の振動の周波数を算出する(ステップS403)。
図11は、算出された回転体75の振動の周波数の一例を示すグラフである。なお、
図11では、時刻T3で研削部材77がウェハWの被研削面W1に接触する例を示している。
【0094】
図11に示すように、研削部材77がウェハWの被研削面W1に接触すると、回転体75は、ウェハWとの接触の影響を受けて減速する。かかる回転体75の減速に伴い、回転体75の振動における周期は増加し、周波数は減少する。そこで、第3の実施形態では、回転体75の周波数が予め設定された所定周波数範囲から外れた場合に、ウェハWとの接触の影響を受けた、すなわち、研削部材77がウェハWの被研削面W1に接触したと推定するようにした。
【0095】
図10の説明に戻ると、制御部101は、回転体75の振動の周波数が所定周波数範囲外か否かを判定する(ステップS404)。なお、上記した所定周波数範囲は、予め実験などを通じて適宜な値に設定される。
【0096】
次いで、制御部101は、周波数が所定周波数範囲外ではない場合(ステップS404,No)、すなわち、周波数が所定周波数範囲内である場合、そのまま処理を終了する。
【0097】
他方、制御部101は、回転体75の周波数が所定周波数範囲外である場合(ステップS404,Yes)、周波数が所定周波数範囲外となったときの研削部材77の位置を、研削開始位置として検知する(ステップS405)。具体的に
図11に示す例では、制御部101は、周波数が時刻T3で所定周波数範囲外になった場合、時刻T3における研削部材77の位置を、研削開始位置として検知する。
【0098】
上述したように、第3の実施形態においては、測定部78の測定結果から回転体75の振動の周波数を求め、かかる周波数の変化に基づいて研削部材77の研削開始位置を検知する。これにより、簡易な構成でありながら、研削部材77の研削開始位置を検知することができる。
【0099】
なお、第3の実施形態においては、回転体75の振動の周波数を算出するようにしたが、回転体75の振動の周期を算出し、周期に変化が生じた場合に研削部材77の研削開始位置を検知するようにしてもよい。
【0100】
(変形例)
次に、変形例に係る粗研削装置31について説明する。
図12は、変形例に係る粗研削装置31の研削部71付近を拡大して示す模式側面図である。
図12に示すように、変形例では、保持部61を傾斜させるようにし、研削部材77をウェハWの被研削面W1に部分的に接触させるようにした。すなわち、研削部材77を片当てでウェハWに接触させて研削加工を行うようにした。
【0101】
なお、上記では、保持部61を傾斜させるようにしたが、これに限られず、研削部材77を傾斜させることによって、研削部材77をウェハWの被研削面W1に部分的に接触させるようにしてもよい。
【0102】
このように、変形例では、保持部61と研削部材77とを相対的に傾斜させることによって、研削部材77をウェハWの被研削面W1に部分的に接触させるようにした。これにより、保持部61や研削部材77を傾斜させない場合に比べて、ウェハWからの反力F1が、被研削面W1と接触している研削部材77部分に集中して作用することとなる。これにより、測定部78によって測定される距離Aにおいて、研削部材77との接触による振動の変化が表れ易くなり、結果として研削開始位置をより正確に検知することが可能となる。
【0103】
なお、上記した実施形態では、距離Aが所定距離未満の場合、回転体75の振動の振幅が所定振幅範囲外の場合、回転体75の振動の周波数が所定周波数範囲外の場合に、距離Aや振幅、周波数が変化したと判定するようにしたが、これに限定されるものではない。
【0104】
すなわち、たとえば距離Aや振幅、周波数の変化量や変化率などを算出し、それら変化量や変化率などが予め設定された所定値以上の場合に、距離Aや振幅、周波数が変化したと判定するようにしてもよい。すなわち、距離Aや振幅、周波数の変化した時点を検出できれば、どのような手法を用いてもよい。
【0105】
また、上記した第1〜第3の実施形態を組み合わせるように構成してもよい。なお、たとえば第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせた場合、測定部78の測定結果によっては、時刻T1と時刻T2とが異なることもあり得る。かかる場合、早い方の時刻における研削部材77の位置を、研削開始位置として検知することが好ましい。すなわち、より安全側にある研削部材77の位置を研削開始位置として検知することが好ましい。
【0106】
これにより、たとえば次回以降の研削処理において、研削部材77を研削開始位置に到達する直前まで高速移動させる際、研削部材77がウェハWnに接触することを確実に回避することができる。
【0107】
また、上記した基板処理システム1において、粗研削装置31、仕上げ研削装置32、ダメージ層除去装置33および洗浄装置34の数や配置位置は、
図1に示す例に限られず、任意に設定してもよい。
【0108】
また、
図1に示す例では、粗研削装置31、仕上げ研削装置32、ダメージ層除去装置33および洗浄装置34を別々の装置としたが、これに限定されるものではなく、たとえば1つあるいは2つ以上の装置にまとめてもよい。
【0109】
また、粗研削装置31および仕上げ研削装置32の構成は、上記に限定されるものではなく、たとえばCMP(Chemical Mechanical Polishing)などその他の方法でウェハWを研削する構成であってもよい。また、
図5、
図9および
図11に示すグラフは、あくまでも例示であって限定されるものではない。
【0110】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。