【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、薬物送達デバイスのための駆動機構が、薬剤の用量を投薬するために設けられている。駆動機構は、たとえば遠位方向に延びる、実質的に細長いハウジングを含む。ハウジングは、少なくともいくつかの部分では実質的にチューブ状または円筒形でよく、それにより、駆動機構または薬物送達デバイス全体をユーザが片手で把持および操作できるようになっている。ハウジングは、ユーザの手のひらに滑らかにフィットできる、たとえば近位端に隆起したほぼ円形のディスク様の部分を含むこともできる。
【0013】
駆動機構はさらに、駆動機構によって投薬される薬剤を含むカートリッジのピストンと動作可能に係合するピストンロッドを含む。カートリッジはピストンを含み、そのピストンは、遠位方向に変位することによって、ピストンの遠位の変位に相応するカートリッジからある量の薬剤を排出するように働く。ピストンは典型的には近位方向においてカートリッジを封止する。ピストンロッドは、カートリッジのピストンを遠位方向に変位させるように働く。したがって、ピストンロッドは、投薬されるそれぞれの薬剤量に対応する所定の距離だけ遠位方向にカートリッジのピストンを変位させるために、カートリッジのピストンに遠位方向の推力または圧力を加えるように動作可能である。したがって、その薬剤をカートリッジから排出させることができる。
【0014】
駆動機構はさらに、用量サイズ情報をその上に有する用量標示部材を含む。用量サイズ情報は、典型的には、たとえばインスリンの国際単位を表す連続の番号によって表される。用量標示部材は、ばね要素に連結され、ばね要素の作用に抗してハウジングに関して用量増分方向にさらに回転可能である。ばね要素の作用に抗して用量標示部材を回転させることによって、ばね要素を緊張させることができ、ばね要素にそれぞれの力学的エネルギーを蓄積することができる。典型的には、用量標示部材は、用量を設定するために、したがって用量設定手順中に、用量増分方向に回転可能である。
【0015】
駆動機構はさらに、用量投薬のために遠位方向にピストンロッドを変位させるようにピストンロッドと動作可能に係合する駆動輪を含む。典型的には、駆動輪とピストンロッドとは恒久的に機械的に係合する。駆動輪とピストンロッドとはねじ係合することができ、回転的にロックすることもできる。ピストンロッドは、典型的には、ハウジングによってそのハウジングの中にガイドすることができる。
【0016】
ピストンロッドはたとえばハウジングとねじ係合することができ、駆動スリーブはピストンロッドに回転的にロックすることができる。次いで、駆動輪の回転がピストンロッドのそれぞれの回転に同様に伝達することができ、それにより、ハウジングとのそのねじ係合によって遠位方向にピストンロッドを前進させる。
【0017】
他の実施形態では、ピストンロッドはハウジングに回転的にロックすることができ、したがって、ハウジングに関して並進方向にのみ変位可能にすることができる。ここで、駆動輪はピストンロッドとねじ係合することができ、そうすることで、ハウジングに対して遠位方向に関して固着および固定された駆動輪の回転が、ピストンロッドのそれぞれの遠位方向の並進運動であるが回転しない変位を誘起するように動作可能である。
【0018】
他の実装形態では、駆動輪とピストンロッドとの相互係合は、ラックアンドピニオンアセンブリを含むことができ、ここで、駆動輪はピストンロッドのラック部分と係合するピニオンまたはスプロケットを含む。このようにして、駆動輪の回転を直接、ピストンロッドの遠位方向の変位に伝達することができる。
【0019】
駆動輪とピストンロッドとの相互係合に関係なく、ばね要素と動作可能に連結された用量標示部材は、用量減分方向にばね要素を弛緩させることによって駆動されるときに、駆動輪に駆動力を伝達するように用量投薬中に駆動輪と係合可能である。具体的には用量標示部材自体が、ばね要素の弛緩力または弛緩作用を駆動トルクに伝達するように駆動部材として働き作用し、それにより、半自動の駆動機構は動作中に用量投薬中に遠位方向にピストンロッドを変位させるように設定することができる。
【0020】
このようにして、用量標示部材は、デバイスのユーザに用量サイズ関連の情報を表示するように働くだけでなく、駆動構成要素としても作用し、それにより、ばね要素に伝達され蓄積される力学的エネルギーは、用量投薬手順中にその様々な機能的構成要素を動作中に設定する駆動機構に伝達することができる。
【0021】
用量標示部材と駆動輪とは、典型的には、用量を設定および投薬するために選択的に係合可能である。用量設定手順中に、したがって用量設定モードでは、用量標示部材は、駆動輪から動作可能に連結解除される。このようにして、駆動輪およびピストンロッドに影響を与えることなしに様々な用量サイズを設定することができる。以前にばね要素に蓄積された力学的エネルギーを解放し用量標示部材に伝達でき、それにより、駆動輪に、したがってピストンロッドに、それぞれの駆動力を誘起するので、用量を設定した後で、さらにばね要素をそれぞれ緊張させるか張力をかけた後で、駆動機構は用量投薬モードに切り替えることができ、それにより、用量標示部材と駆動輪とを動作可能に係合させる。
【0022】
典型的には、駆動輪と用量標示部材とは用量投薬中に間接的に係合する。用量投薬中に用量標示部材の回転と駆動輪の回転との間の必要な伝達比をもたらすために、用量標示部材と駆動輪との間の力を伝達する通路に少なくとも1つもしくは一連の伝達歯車または他の機能的構成要素を設けることができる。
【0023】
典型的には、一種のクラッチアセンブリも設けられ、そのクラッチアセンブリによって、それぞれ必要な用量を設定および投薬するために、駆動機構は再度および逆に用量設定モードと用量投薬モードとの間で切り替えることができる。
【0024】
用量標示部材が二重の役割を提供するので、駆動機構が作られる構成要素の総数を減らすことができ、それにより、駆動機構および薬物送達デバイス全体のかなりコンパクトで機能効率のよい設計が可能になる。
【0025】
別の実施形態では、用量標示部材は平坦な形状の用量標示ディスクを含む。用量標示部材または用量標示ディスクは、典型的には、円形の形状を含み、ハウジングにその径方向の中央部分に対して回転的に支持することができる。用量標示部材の回転軸が、ピストンロッドの延長部に実質的に垂直に、したがって、投薬される薬剤を含むカートリッジの延長部に垂直に延びることができる。
【0026】
さらに、用量標示部材は、人間工学的にユーザの手のひらにフィットするように、ハウジングの対応する形状の隆起部分または円形部分に配置し、典型的にはその近位端に配置することができる。用量標示部材の回転軸が遠位方向に対して垂直にまたは所定の角度に向けられていると、用量標示部材は、したがって用量標示ディスクは、ハウジングの側壁部分に面し、たとえば、概して薬剤で充填されたチューブ状のカートリッジを受けそれを固定するように適用されハウジングの遠位に配置された、カートリッジホルダ部分の直径と比べて比較的大きいサイズを特徴とすることができる。
【0027】
ハウジングの隆起した側壁部分に向けてまたはその下に用量標示部材を配置することによって、用量標示部材の全体のサイズを大きくすることができ、それにより、比較的大きなスケールで用量サイズ情報を表すことが可能になる。このようにして、用量サイズ情報の読み易さを事実上向上させることができ、したがって、特に視覚に障害のある患者にとってデバイスの取り扱いが改善される。
【0028】
用量サイズ情報は、典型的には、用量標示ディスクの側面の径方向外側部分に設けられる。用量標示ディスクの径方向外側部分を用いることによって、数値目盛りとして用いられる空間全体を最大限に高めることができる。典型的には、用量標示部材は用量標示窓の下方に配置され、その用量標示窓は用量標示部材を事実上カバーするそれぞれのハウジング部分に設けることができる。
【0029】
用量標示窓のサイズは、典型的には、用量サイズ情報のサイズに、たとえば、用量標示部材上にある連続の番号のサイズに合っている。用量標示窓に関する用量標示部材の瞬間の配置または配向によれば、それぞれの数または用量サイズ情報は用量標示窓に視認可能に現れ、それにより、実際に設定された用量のサイズについてのサイズ情報がユーザに示される。
【0030】
用量標示部材によって設けられた用量標示機構はさらに、用量標示ディスクと動作可能に係合する、追加の、したがって第2の用量標示部材を含むことができる。第2の用量標示部材は用量標示リングまたはディスクを含むことができる。概して、それぞれの第1および第2の用量標示部材は、用量標示番号の様々な数字を示すように動作可能にすることができる。たとえば、第1の用量標示部材は前記用量の単回の単位を表すことができ、第2の用量標示ディスクは数十すなわち10、20、30、40など、10ずつ表すことができる。このようにして、100IUを超えてもよい比較的大きい用量サイズ情報のすべての数字を、ユーザまたは患者に正確に表示することができる。
【0031】
別の実施形態によれば、ばね要素は、ハウジングに動作可能に連結された第1の端部を有し用量標示部材に連結された第2の端部を有する、渦巻ばねを含む。渦巻ばねは実質的に平坦な形状である。ばね要素は共通平面内で延びることができ、その反対の径方向内側に配置された端部および径方向外側に配置された端部のみがそれぞれハウジングおよび用量標示部材と連結される。平坦な形状の実質的に平面のディスクの形態に用量標示部材を実装することによって、さらに平面の渦巻ばねを利用することによって、相互に係合する用量標示部材とばね要素とのかなり平坦であり重なる構成を実現することができる。
【0032】
ここでは、用量標示ディスクの全体の形状およびその周りのハウジング部分がこの文脈では軸方向を画成することに留意されたい。典型的には、軸方向は、さらに用いられるように、用量標示部材の回転軸に実質的に平行かまたはそれと重なるように延びる。ディスク形の用量標示部材は、径方向に延び、軸方向に相互連結された渦巻ばねと実質的に重なる。薬物送達デバイスの全体の形状に関しては、ピストンロッドは、したがってカートリッジは、用量標示部材および/またはそれぞれの円形のハウジング部分から径方向外側に延びる。したがって、遠位方向は軸方向に実質的に垂直に延びる。
【0033】
さらなる実施形態によれば、ハウジングによってまたはハウジングに回転的に支持され用量を設定するために用量標示部材と選択的に係合可能である、リング形の用量設定部材が設けられる。典型的には、用量設定部材は、駆動機構のハウジングの側壁部分に配置される。駆動機構のハウジングの側壁部分を形成することもできる。それに応じて、ハウジングの側壁部分はそれぞれの貫通口を含むことができ、その貫通口では、リング形の用量設定部材が回転的に支持される。
【0034】
典型的には、用量設定部材は、用量を設定する間に用量標示部材と動作可能に係合可能である。用量設定部材はさらに、用量投薬中に用量標示部材から動作可能に係合解除可能である。用量投薬モードでは、用量標示部材は、用量減分方向に駆動され、それにより、用量標示窓を通してそれぞれの用量サイズを示す数字を減分するようにして示す。
【0035】
したがって、用量投薬中に、用量標示機構は、典型的には再設定され、典型的には、用量投薬手順が終了したときにゼロ用量サイズを示すことができる。リング形の用量設定部材はさらに、その直観的かつ簡単に把持できるように軸方向に延びる突出部分を少なくとも1つまたはいくつか備えることができる。このようにして、ユーザが用量設定手順中にそれに用量設定トルクを誘起するために用量設定部材を簡単につかみ把持することができる。
【0036】
用量設定部材のそれぞれの軸方向外側に延びるグリップ部分は、円周方向および/または径方向に延びる構造を含むことができる。用量設定部材に配置された円周方向または接線方向に延びる構造は、たとえば、ユーザの親指および人差し指のための有効な把持手段を提供し、グリップ部分の径方向に延びる部分は、用量設定中にユーザによって及ぼされる接線方向または円周方向に向いたトルクを受けそれを伝達するように適用されている。
【0037】
用量設定部材は、駆動機構のハウジングに軸方向に配置される軸方向のインサートを形成することができ、それにより、その円形の側壁部分の少なくとも一部分が形成される。このようにして、用量設定部材は、駆動機構のハウジングの外観に見た目の面で一体にすることができる。
【0038】
さらなる実施形態では、駆動機構はハウジングに回転的に固定された用量投薬部材も含む。用量投薬部材は、典型的には投薬ばね要素と称されるばね要素の作用に抗して、典型的には軸方向に押し下げ可能である。前記投薬ばね要素は、軸方向に付勢され張力をかけられるようになっており、典型的には、駆動機構の用量設定モードに対応する初期の構成に用量投薬部材を維持し変位させるように働く。
【0039】
用量投薬部材は、典型的には、ハウジングに対してスプラインが付いており、すなわち、ハウジングに回転的にロックされるが、ハウジングに関して軸方向に変位可能とすることができる。たとえば、ハウジングの形状に対して下向きまたは内向きの方向に、用量投薬部材を押し下げることによって、駆動機構は投薬ばね要素の作用に抗して用量設定モードから用量投薬モードに切り替えることができる。次いで、用量投薬部材を解放すると、その初期の構成に即座に戻すことができる。同じようにして、駆動機構は投薬ばね要素の作用の下で用量投薬モードから用量設定モードに切り替えることができる。
【0040】
別の実施形態によれば、用量標示部材はまた用量投薬部材と軸方向で当接する。このようにして、たとえば、用量投薬部材の軸方向下向きの変位は用量標示部材に等価に伝達することができる。したがって、用量標示部材はまた、具体的には駆動機構を用量投薬モードと用量設定モードとの間で切り替えるためにハウジングに関して軸方向に変位可能である。
【0041】
投薬ばね要素は、用量投薬部材または用量標示部材と一体形成することができる。代替方法として、投薬ばね要素は、別個の部片として設けることもでき、駆動機構の別の機能的構成要素と一体にすることもできる。たとえば、ロッキング部材に一体にすることができ、それにより、駆動機構が用量投薬モードにあるときに用量設定部材の回転を遮断することができる。
【0042】
典型的には、用量標示部材は用量投薬部材の下に配置されている。次いで、投薬ばね要素が用量標示部材の下またはその下方に配置されるときはさらに有利なものになることがある。このようにして、用量投薬部材の軸方向下向きの変位は、用量標示部材のそれぞれの軸方向下向きの変位に等価に伝達することができ、それにより、投薬ばね要素が緊張する。
【0043】
次いで、用量投薬手順を中断するように早まってまたは用量投薬手順の終了時に用量投薬部材を解放すると、軸方向で当接した状態で用量標示部材と用量投薬部材の両方をそれぞれ上向きに変位させることができる。このようにして、用量標示部材と用量投薬部材の両方の軸方向の変位の組合せを、単一の投薬ばね要素によって提供することができる。
【0044】
別の実施形態によれば、用量投薬部材は用量標示窓として働く貫通口も含み、その貫通口を通して用量標示部材の用量サイズ情報の少なくとも一部分が視認可能に表示される。したがって、用量投薬部材は用量標示部材の上側に面する方の面を少なくとも部分的にカバーすることができる。用量投薬部材および用量標示部材が軸方向で当接するかまたは当接したままになっているので、用量を投薬するための用量投薬部材のそれぞれの軸方向の変位は、用量投薬部材の用量標示窓に現れる用量標示部材の用量サイズ情報の読み易さに実質的に影響を有しない。
【0045】
用量投薬部材内またはその上に用量標示窓を設けることによって、デバイスをかなり直観的かつ単純に取り扱うことができる。したがって、患者は駆動機構の構成要素を単に押し下げるだけでよく、これは同時にそれぞれの用量サイズ情報も表示する。典型的には、用量投薬部材自体は、駆動機構の一種のハウジング部分を提供する。駆動機構のハウジングに設けられたそれぞれの貫通口の閉止具として働くことができる。
【0046】
典型的には、押し下げ可能な用量ボタンとして実施される用量投薬部材は、情報を含む用量標示部材の側面を少なくとも部分的にカバーするためにかなりディスク様の形状のものである。さらに、ディスク形または円形の用量投薬部材を設けることによって、ユーザが用量投薬部材と相互作用できるその推力を受ける面が比較的大きくなるように設計することができる。本質的には、用量投薬部材の全体のサイズはかなり大きくすることができ、そうすることで、ユーザが非常に直観的かつ安全に、たとえば、用量投薬ディスクまたはボタンの形態の用量投薬部材を簡単に押し下げることができる。
【0047】
別の実施形態によれば、用量投薬部材は用量設定部材によって径方向に囲繞されている。したがって、駆動機構のハウジングの上面は、いくつかの部分でも、同心状の配置の用量設定部材および用量投薬部材から全体を構成することができる。典型的には、ディスク様の形状の用量投薬部材は、周りの用量設定部材の内部を完全に充填することができる。このようにして、駆動機構の完全な機能性はハウジングの片側に示すことができる。
【0048】
用量を設定するために、ユーザが径方向外側に配置された用量設定部材を把持することができ、次いで、駆動機構のそれぞれの用量投薬作用を開始するために、径方向内側に配置された用量投薬部材をハウジング中に押し下げることができる。これは、駆動機構のハウジングをかなり良い外観にするために用量投薬部材および用量設定部材の外面部分または上面部分が実質的に面一であるときに特に有益である。さらに、用量投薬部材は、たとえば用量投薬ボタンは、用量投薬部材を押し下げる場合に触覚に基づいてユーザに示すために、その中央領域の軸方向の隆起部分を特徴とすることができる。
【0049】
駆動機構のハウジングの円形部分に用量投薬部材および用量設定部材を同心状に交互配置することによって、ハウジング自体が駆動機構のためのカバーを設ける必要がない。その代わりに、ハウジング内に配置された駆動機構は、用量設定部材および用量投薬部材の配置によってカバーされ、それにより、ハウジングおよびそれぞれの薬物送達デバイスの材料および重量を低減する。
【0050】
さらなる実施形態では、用量標示部材は、単回用量制限部材と係合するように、その上面または下面に、渦巻状の溝または同等の渦巻形状の構造も含む。典型的には、渦巻状の溝は、用量サイズ情報から径方向外側に配置され、ディスク形の用量標示部材の同じ面または反対側の面に設けられている。典型的には、用量標示部材の用量増分回転の間には、単回用量制限部材は、その渦巻状の溝に沿って移動する。渦巻状の溝または駆動機構のいくつかの他の機能的な構成要素はさらに、止め具機能を提供し、最大用量サイズ構成に達したときに前記溝に関する単回用量制限部材のさらなる変位を遮断する。
【0051】
このようにして、単回用量制限部材は、用量標示部材の遮断を提供し、したがって、用量設定中に最大許容用量サイズを超えないように駆動機構全体の遮断を提供する。用量投薬中には、用量標示部材は、逆の、したがって、用量減分回転を受ける。それに応じて、単回用量制限部材は渦巻状の溝に沿って逆向きに変位する。
【0052】
別の実施形態によれば、単回用量制限部材は、渦巻状の溝に沿って用量投薬部材に関して径方向に変位可能であり、用量投薬部材に回転的に固定される。代替方法として、ハウジングに関して径方向に変位可能とすることもでき、ハウジングに回転的に固定することができる。用量投薬部材に対してその径方向の変位および回転可能な係合によって、単回用量制限部材は、用量設定中および/または用量投薬中に用量標示部材と一緒に回転することが事実上妨げられる。用量投薬部材および/またはハウジングに関するその回転可能なインターロックによって、用量標示部材が用量増分回転または用量減分回転すると、渦巻状の溝に沿って単回用量制限部材がそれぞれ変位する。
【0053】
渦巻状の溝自体、駆動機構のハウジングおよび/または用量投薬部材はさらに、単回用量制限部材のそれぞれの前縁または後縁と係合する径方向止め具を含むことができる。それぞれの止め具と当接させるときは、単回用量制限部材は渦巻状の溝に沿ってさらに移動することが妨げられる。回転的に固定された用量投薬部材またはハウジングへのその回転インターロックによって、用量増分方向の用量標示部材の、したがって、駆動機構全体の、さらなる回転変位を事実上遮断することができる。
【0054】
典型的には、用量標示部材または用量設定部材が、最大許容用量サイズに、たとえば120IUのインスリンに相当する所定の角度距離だけ回転すると、このような遮断構成に達する。
【0055】
単回用量制限部材は、用量投薬手順の終了時に用量標示部材の用量減分回転を遮断するために、最大リミッタを提供できるだけでなく、最小リミッタも提供することができる。それに応じて、用量制限部材は、用量標示部材上に、たとえば渦巻状の溝の反対側の端部に設けられた、それぞれの止め具、具体的には径方向に延びる止め具と等価に係合することができる。代替方法として、このようなゼロ用量止め具は、駆動機構のハウジングによってまたは用量投薬部材によって提供することもできる。
【0056】
単回用量制限部材と係合するゼロ用量止め具が、はっきりと画成された投薬する役割の端部を提供でき、そうすることで、用量標示部材がそのゼロ用量構成に達したとき、たとえばゼロ用量の数字「0」が用量標示窓に現れたときに用量投薬手順は終わる。したがって、この追加のゼロ用量止め具は、用量投薬手順の終了時および用量設定中にはっきりと画成された駆動機構の初期構成を提供する。
【0057】
さらに、駆動機構のゼロ用量止め具は、単回用量制限部材と音を伴って係合することができる。たとえば、単回用量制限部材は、たとえば渦巻状の溝のゼロ用量止め具の近くに設けられた、対応する形状のクリック部材と係合する弾性的に変形可能なクリック部材を特徴とすることができる。このようにして、投薬手順の終了時に可聴式クリック音を発生させることができ、それにより、ユーザまたは患者に用量投薬行為がちょうど終了したかまたは終了しそうなことが示される。
【0058】
さらなる実施形態によれば、用量投薬部材は、単回用量制限部材の切り欠きと係合する径方向外側に延びる付属部分を含む。単回用量制限部材の切り欠きは、典型的には、用量標示部材の渦巻状の溝と係合した状態の下面の反対にある単回用量制限部材の上面に設けられる。用量制限部材の切り欠きと係合する径方向外側に延びる付属部分によって、単回用量制限部材は、用量投薬部材に回転的に固定するかまたは径方向にスプラインを付けることができる。用量投薬部材もハウジングに回転的に固定されるので、単回用量制限部材も用量投薬部材を介してそれに回転的に固着される。
【0059】
さらなる実施形態では、用量設定部材は、ハウジング中に延びる円周方向の側壁部分を含む。典型的には、用量設定部材を受けるように適用されたハウジング部分は、用量設定部材の対応する形状の側壁部分を受ける円周方向にまたはほぼ円筒形に延びる側壁を含む。したがって、ハウジングおよび用量設定部材は、互いに対応するスリーブ様の形状の側壁部分を、用量設定部材がハウジング内またはハウジング上に組み付けられるときにその間に径方向の隙間を形成するように含むことができる。
【0060】
用量設定部材は、ハウジングに軸方向に固着することができ、ハウジングに関して自由に回転的に支持することができる。上記で言及した用量標示部材の軸方向の変位により、たとえば、用量標示部材の上側に向いた面およびリング形の用量設定部材の下向きに面した、したがって内側に面した部分に設けられた対応する形状のクラウン歯車によって、軸方向に固定される用量設定部材が用量標示部材と選択的に回転的に連結されることが可能になる。用量設定部材の円周方向の側壁部分は、対応する形状の円周方向のハウジング部分と比べるといくぶん直径が小さい。このようにして、用量設定部材は、摩擦なしに滑らかにハウジングに回転的に支持することができる。
【0061】
さらなる実施形態では、最終用量制限部材が、用量設定部材の側壁部分とハウジングとの間に径方向に挟まれている。最終用量制限部材は、用量設定部材の側壁部分の外側ねじ山またはハウジングのそれに応じたねじ山付きの内側部分とねじ係合することができる。用量設定部材とねじ係合すると、最終用量制限部材は典型的にはハウジングに回転的にロックされる。最終用量制限部材はハウジングに対して軸方向にスプラインが付けられてよく、すなわち、ハウジングに回転的にロックすることができるが、用量設定部材のリードおよび回転運動に応じてハウジングに関して軸方向に移動することができる。典型的には、最終用量設定部材は、ハウジングの軸方向に延び対応する形状の切り欠きまたは溝内をガイドされる、径方向外側に延びる突出部を含む。
【0062】
さらに、最大用量止め具または最終用量止め具が、典型的には、用量設定部材の側壁のねじ付部分の端部に設けられる。用量設定部材は、用量設定中はもっぱら回転可能であるが、駆動機構が用量注射モードにあるときはハウジングにロックすることができる。用量増分方向または用量減分方向に用量設定部材を回転させると最終用量制限部材はそれぞれの軸方向の変位を受けることになる。
【0063】
最大数の用量、したがって、最大量の薬剤が駆動機構によって排出または設定されたときに、最終用量制限部材は、典型的には、用量設定部材のねじ付部分の端部に設けられた、径方向外側に延びる止め具と当接する。この構成では、用量設定部材のさらなる用量増分する変位が事実上遮断される。
【0064】
代替の実施形態では、最終用量制限部材がハウジングの内側ねじ山とねじ係合され、用量設定部材を回転的にロックする径方向内側に延びる突出部または何らかの他の種類の確実にインターロックする機能を特徴とすることも考えられる。
【0065】
用量設定部材とハウジングとの間に最終用量制限部材を配置すると、最終用量構成または内容物の終了時の構成に達したときにかなり直接的な力のフィードバックがユーザに提供される。最終用量制限部材により、用量設定部材およびハウジングにそれぞれ直接係合した唯一の構成要素によって、ハウジングに関する用量設定部材の用量増分回転を事実上遮断することができる。このようにして、最終用量または内容物の終了時の構成に達したことをかなり直接的で即座のフィードバックをユーザに提供することができる。
【0066】
別の実施形態では、用量標示部材は、用量設定構成において少なくとも1つの弾性のラチェット要素と係合する、中央に配置された歯付き貫通口を含む。弾性のラチェット要素は、たとえば用量設定手順の終了時に渦巻ばね要素の作用の下で用量標示部材の自己作動式の回転を遮断するように働く。典型的には、ラチェット要素に関して用量標示部材が軸方向に変位するので、用量標示部材をそれから解放でき、それにより、渦巻ばね要素の作用の下で用量標示部材が用量減分方向に回転できる。
【0067】
用量標示部材の歯付き貫通口は、用量投薬中に軸方向に変位させると、弾性のラチェット要素から軸方向に係合解除することができ、別の、たとえば用量標示部材の音発生構造は弾性のラチェット要素と音を伴って係合することができる。このようにして、用量投薬中に頻繁に規則的に可聴式クリック音を発生させることができ、それにより、ユーザに用量の投薬が進行していることが示される。
【0068】
用量標示部材の音発生構造は、軸方向にずれているが、中央に配置された歯付き貫通口のすぐ隣に設けることができる。用量投薬中に用量標示部材の用量減分回転を遮断しないようにするには、音発生構造は、たとえば、用量減分方向に用量標示部材を回転させることを可能にする鋸歯状のプロフィルを含むことができる。
【0069】
別の態様では、薬剤の用量を設定および投薬するための薬物送達デバイスが、薬剤の用量を設定および投薬するために設けられる。薬物送達デバイスは、上記で説明した駆動機構と、薬物送達によって投薬されることになる薬剤で少なくとも部分的に充填されたカートリッジとを含む。カートリッジは、駆動機構のハウジングにまたは薬物送達デバイスのカートリッジホルダに配置され、そのカートリッジホルダは、たとえば、再利用可能な薬物送達デバイスの場合は解放可能に、または使い捨ての薬物送達デバイスの場合は解放不能にそれぞれハウジングに固定されている。その結果、薬物送達デバイスは、薬剤で充填されたカートリッジを受け収容するカートリッジホルダを含む。
【0070】
本文脈では、遠位方向は、投薬の方向およびデバイスの方向を向いており、ここで、好ましくは、薬剤送達のために生物学的組織または患者の皮膚に挿入される二重先端の注射ニードルを有するニードルアセンブリが設けられる。
【0071】
近位端または近位方向は、デバイスまたはその構成要素の、投薬端部から最も離れた端部を指す。典型的には、用量設定部材および/または用量投薬部材は、薬物送達デバイスの近位端に配置される。用量設定部材は、用量を設定するためにユーザによって直接操作可能な用量設定ダイヤルを提供し、たとえば用量ボタンの形態の用量投薬部材は、用量を投薬するために軸方向に押し下げられるように操作可能である。
【0072】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0073】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0074】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0075】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0076】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0077】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0078】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0079】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0080】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0081】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0082】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0083】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0084】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0085】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0086】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0087】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0088】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0089】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明に様々な修正および変更を加えることができることが、当業者にはさらに明らかであろう。さらに、添付の特許請求の範囲で用いられる参照符号はいずれも本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではないことに留意されたい。
【0090】
以下では、図面を参照することによって本発明の非限定的な実施形態をより詳細に説明する。