特許第6444555号(P6444555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6444555分離方法、及び、これを用いたイソブチレンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6444555
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】分離方法、及び、これを用いたイソブチレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/20 20060101AFI20181217BHJP
   C07C 11/09 20060101ALI20181217BHJP
   C07C 7/11 20060101ALI20181217BHJP
   C07C 29/80 20060101ALI20181217BHJP
   C07C 31/04 20060101ALI20181217BHJP
   B01D 3/00 20060101ALI20181217BHJP
   B01D 3/14 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   C07C1/20
   C07C11/09
   C07C7/11
   C07C29/80
   C07C31/04
   B01D3/00 Z
   B01D3/14 A
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-68272(P2018-68272)
(22)【出願日】2018年3月30日
【審査請求日】2018年4月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】村上 能寿
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−112803(JP,A)
【文献】 特開2008−056673(JP,A)
【文献】 特開昭58−110529(JP,A)
【文献】 特表2015−503509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/20
B01D 3/00
B01D 3/14
C07C 7/11
C07C 11/09
C07C 29/80
C07C 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソブチレン及びメタノールを含む流(F2)を第1の蒸留塔に供して、蒸留により、メタノールを主として含み、かつ水を含む流(F7)と、イソブチレンを主として含み、かつメタノールを含む流(F4)とを得る工程と、
流(F4)を液体の水と接触させてイソブチレンを主として含む流(F5)、並びに、水を主として含み、かつメタノールを含む流(F8)を得る工程と、
流(F7)及び流(F8)を第2の蒸留塔に供して蒸留し、メタノールを主とする流(F9)と、水を主とする流(F10)とを得る工程と、を備え、
前記流(F7)中のメタノール濃度は、前記流(F8)中のメタノール濃度より高く(ただし、前記メタノール濃度は、該流中のメタノールおよび水の合計質量に対するメタノールの質量割合である。)、
前記流(F7)及び流(F8)を第2の蒸留塔に供して蒸留し、メタノールを主とする流(F9)と、水を主とする流(F10)とを得る工程において、前記第2の蒸留塔に対して、流(F7)を流(F8)よりも上に供給する、イソブチレンの製造方法。
【請求項2】
前記第2の蒸留塔は複数の段を有する棚段塔であり、前記第2の蒸留塔に対して、前記流(F7)を前記流(F8)よりも上の段に供給する、請求項記載の方法。
【請求項3】
MTBEを分解してイソブチレン及びメタノールを含む流(F2)を得る工程を更に備える、請求項又は記載の方法。
【請求項4】
炭化水素及びメタノールを含む流(F6)を液体の水と接触させて、炭化水素を主として含む流(F101)、並びに、水を主として含み、かつメタノールを含む流(F102)を得る工程をさらに備え、
流(F7)及び流(F8)を第2の蒸留塔に供して蒸留し、メタノールを主とする流(F9)と、水を主とする流(F10)とを得る前記工程が、流(F7)、流(F8)及び流(F102)を第2の蒸留塔に供して蒸留し、メタノールを主とする流(F9)と、水を主とする流(F10)とを得る工程であり、
前記第2の蒸留塔に対して、前記流(F102)を前記流(F7)よりも下に供給する、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記第2の蒸留塔に対して、前記流(F102)と前記流(F8)とを同じ高さに供給する、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離方法、及び、これを用いたイソブチレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセス中の複数の箇所から、同じ成分を含む混合物が排出される場合がある。例えば、メチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)をイソブチレンとメタノールとに分解し、分解により得られた混合物からイソブチレンを単離する、イソブチレンの製造方法が知られている。特許文献1には、混合物からのイソブチレンの単離の過程において、水を用いたメタノールの抽出工程、及び、蒸留工程が記載されており、各工程からそれぞれ水とメタノールを含む流が排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2012−531475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同じ2成分を含む複数の流は、各流の排出箇所より下流において、1つの蒸留塔で蒸留して各成分を分離することが効率的である。しかしながら、複数の流を一つに合流させた後に蒸留塔へ供給すると、各成分の分離効率が十分ではない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので有り、同じ二成分を含む二つ以上の流を1つの蒸留塔で蒸留により各成分に効率よく分離する方法及びこれを用いたイソブチレンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る方法は、A成分とB成分とを含む第1の流と、A成分とB成分とを含む第2の流とを蒸留塔に供して、蒸留により、A成分を主として含む流と、B成分を主として含む流とに分離する方法であって、
前記A成分の沸点は、前記B成分の沸点より低く、
前記第1の流中のA成分の濃度は、前記第2の流中のA成分の濃度より高く(ただし、前記A成分の濃度は、該流中のA成分およびB成分の合計質量に対するA成分の質量割合である。)、
前記蒸留塔に対して、前記第1の流を前記第2の流よりも上に供給する。
【0007】
本発明によれば、相対的にA成分を高濃度で含有する第1の流(X1)を、相対的にA成分を低濃度で含有する第2の流(X2)よりも上に供給することで、蒸留塔510において、効率よくA成分と、B成分との分離が行われ、例えば、小さい還流比で純度を高めることができる。
【0008】
ここで、前記A成分がメタノールであり、前記B成分が水であることができる。
【0009】
本発明に係るイソブチレンの製造方法は、
イソブチレン及びメタノールを含む流(F2)を第1の蒸留塔に供して、メタノールを主として含む流(F7)と、イソブチレンを主として含み、かつメタノールを含む流(F4)とを得る工程と、
流(F4)を液体の水と接触させてイソブチレンを主として含む流(F5)、並びに、水を主として含み、かつメタノールを含む流(F8)を得る工程と、
流(F7)及び流(F8)を第2の蒸留塔に供してメタノールを主とする流(F9)と、水を主とする流(F10)とを得る工程と、を備え、
前記流(F7)中のメタノール濃度は、前記流(F8)中のメタノール濃度より高く(ただし、前記メタノール濃度は、該流中のメタノールおよび水の合計質量に対するメタノールの質量割合である。)、
前記流(F7)及び流(F8)を第2の蒸留塔に供してメタノールを主とする流(F9)と、水を主とする流(F10)とを得る工程が、上述の方法により行われる、すなわち、流(F7)を第1の流とし、流(F8)を第2の流とし、流(F7)を流(F8)よりも上に供給する、工程である。
【0010】
本発明によれば、流(F5)に単離されたイソブチレンが、流(F9)に単離されたメタノールが得られる。特に、第1の蒸留塔から得られる流(F7)におけるメタノール濃度(水及びメタノールの合計質量に対するメタノールの質量割合)は、水との接触による抽出により得られた流(F8)におけるメタノール濃度よりも高い。したがって、水とメタノールとを分離する第2の蒸留塔に対して、メタノール濃度の高い流(F7)を流(F8)よりも上の段に供給することで、第2の蒸留塔において、効率よく水とメタノールとの分離が行われ、水の低減されたメタノールが得られる。
【0011】
ここで、前記第2の蒸留塔は複数の段を有する棚段塔であり、前記第2の蒸留塔に対して、前記流(F7)を前記流(F8)よりも上の段に供給することができる。
【0012】
また、上記方法は、MTBEを分解してイソブチレン及びメタノールを含む流(F2)を得る工程を更に備えることができる。
【0013】
また、上記方法は、炭化水素及びメタノールを含む流(F6)を液体の水と接触させて、炭化水素を主として含む流(F101)、並びに、水を主として含み、かつメタノールを含む流(F102)を得る工程をさらに備え、
流(F7)及び流(F8)を第2の蒸留塔に供してメタノールを主とする流(F9)と、水を主とする流(F10)とを得る前記工程が、流(F7)、流(F8)及び流(F102)を第2の蒸留塔に供してメタノールを主とする流(F9)と、水を主とする流(F10)とを得る工程であり、
前記第2の蒸留塔に対して、前記流(F102)を前記流(F7)よりも下に供給することができる。
【0014】
また、上記方法は、前記第2の蒸留塔に対して、前記流(F102)と前記流(F8)とを同じ高さに供給することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、同じ二成分を含む二つ以上の流を1つの蒸留塔で蒸留により各成分に効率よく分離する方法、および、これを用いた、イソブチレンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の第1実施形態にかかる分離方法のフロー図である。
図2図2は、本発明の第2実施形態にかかるフロー図である。
図3図3は、本発明の第3実施形態にかかるフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、イソブチレンとは2−メチルプロペンを指す。
本明細書において、「成分αを主として含む流」と記載した場合、該流中に含まれる各成分の濃度中、成分αの濃度が最大であることを意味する。
【0018】
(第1実施形態)
まず、本発明の実施形態にかかる分離方法について図1を参照して説明する。図1は、本実施形態の分離方法で用いる蒸留装置500である。
【0019】
この分離方法は、A成分とB成分とを含む第1の流(X1)と、A成分とB成分とを含む第2の流(X2)とを蒸留塔510に供して、蒸留により、A成分を主として含む流(Y1)と、B成分を主として含む流(Y2)とに分離する方法である。A成分の沸点は、B成分の沸点より低い。したがって、A成分を主として含む流は塔頂側から排出され、B成分を主として含む流は塔底側から排出される。また、第1の流(X1)中のA成分の濃度は、第2の流(X2)中のA成分の濃度より高い。第1の流(X1)中のB成分の濃度は、第2の流(X2)中のB成分の濃度より低いことが好適である。ただし、各流中のA成分の濃度は、該流中のA成分およびB成分の合計質量に対するA成分の質量割合である。
【0020】
本分離方法において、特に、蒸留塔510に対して、第1の流(X1)を第2の流(X2)よりも上に供給する。
【0021】
蒸留塔が複数の段50aを有する棚段塔である場合には、蒸留塔に対して、第1の流(X1)を第2の流(X2)よりも上の段に供給することが好適である。
【0022】
本実施形態によれば、以下のような作用・効果がある。相対的にA成分を高濃度で含有する第1の流(X1)を、相対的にA成分を低濃度で含有する第2の流(X2)よりも上に供給することで、蒸留塔510において、効率よくA成分と、B成分との分離が行われ、例えば、小さい還流比で純度を高めることができたり、少ない段数で純度を高めたりすることができる。
【0023】
A成分及びB成分の組み合わせは、A成分の沸点が、前記B成分の沸点より低ければ特段の限定を受けない。例えば、A成分がメタノール(沸点64.7℃)、B成分が水(沸点100℃)であることができる。
【0024】
A成分及びB成分の沸点差は、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。
【0025】
第1の流(X1)と第2の流(X2)におけるA成分の濃度の差は、35質量%以上であることが好ましい。
【0026】
蒸溜における、温度、圧力等は、沸点等に合わせて適宜調節できる。また、第1の流(X1)と第2の流(X2)との供給高さの差も、A成分の濃度差に応じて適宜設定できる。
【0027】
第1の流及び第2の流は、A成分及びB成分以外の成分を含むことができる。
【0028】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態にかかる、イソブチレンの製造方法を説明する。
まず、図2を参照して、本実施形態のイソブチレンの製造装置100について説明する。
【0029】
この製造装置100は、MTBEを含有する流(F0)を供給する原料源S、蒸留塔(第3の蒸留塔)10、MTBE分解反応器20、蒸留塔(第1の蒸留塔)30、抽出器(第1の抽出器)40、及び、蒸留塔(第2の蒸留塔)50を備える。
【0030】
原料源Sと蒸留塔10とがラインL1により接続されている。蒸留塔10の塔頂にはラインL2が、塔底にはラインL3が、塔の側面にはラインL4がそれぞれ接続されている。ラインL4はMTBE分解反応器20に接続されている。MTBE分解反応器20と蒸留塔30とがラインL5を介して接続されている。
【0031】
蒸留塔30の塔頂にはラインL6が、塔底にはラインL7が接続されている。ラインL6は抽出器40に接続されている。抽出器40には水を供給するラインL14が接続されている。抽出器40の塔頂にはラインL8が、塔底にはラインL9が接続されている。
【0032】
蒸留塔30からのラインL7及び抽出器40からのラインL9は、それぞれ、蒸留塔50に接続されている。蒸留塔50の塔頂にはラインL10が、塔底にはラインL11が接続されている。
【0033】
続いて、本実施形態にかかるイソブチレン及びメタノールの分離方法について説明する。
【0034】
(流(F0))
まず、原料源SとしてのMTBEを含む流(F0)を用意する。
【0035】
流(F0)は、MTBE(メチルtert-ブチルエーテル)、及び、MTBE以外の化合物を含む。
【0036】
MTBE以外の化合物の例は、炭化水素、MTBE以外のエーテル、アルコールである。
【0037】
炭化水素の例は、イソブチレン、イソブタン、n−ブタン、1−ブテン、2−ブテン、1,3−ブタジエンなどの炭素数4の炭化水素;ジイソブチレンなどの炭素数8の炭化水素;プロパン、プロピレン、プロパジエン、プロピン等の炭素数3の炭化水素;ペンタン、ペンテン、イソペンタンなどの炭素数5の炭化水素である。
【0038】
MTBE以外のエーテルの例は、ジメチルエーテル、メチル sec-ブチルエーテルである。
【0039】
アルコールの例は、メタノール、tert-ブチルアルコール(TBA)である。
【0040】
流(F0)は、水を含むことができる。
【0041】
流(F0)中のMTBEの濃度は10〜97質量%であることができる。
【0042】
このような流(F0)は、粗イソブチレンとメタノールとを反応させて得られたMTBE含有流であることができる。
【0043】
粗イソブチレンの例は、ナフサの水蒸気分解から得られた炭素数4の炭化水素留分(C4留分)又はこれから1,3−ブタジエンを抽出若しくは選択水素化によって除去したもの(スペントBB留分);流動接触分解によって得られた炭素数4の炭化水素混合物(FCC−C4);イソブタンを脱水素化して得られたイソブチレンを含む混合物;TBAを脱水して得られたイソブチレンを含む混合物;及び1−ブテン若しくは2−ブテンの骨格異性化で得られたイソブチレンを含む混合物;並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0044】
酸性イオン交換樹脂を、粗イソブチレン中のイソブチレンとメタノールとを反応させてMTBEを合成する触媒として使用できる。酸性イオン交換樹脂としては、例えばジビニルベンゼンで架橋したスチレン系スルホン酸樹脂、及びホルムアルデヒドで架橋したフェノールスルホン酸樹脂が挙げられる。上記酸性イオン交換樹脂は、マクロポーラス型の樹脂であることが好ましい。
【0045】
MTBE合成の反応温度は、20〜90℃、反応圧力は0.2〜2.5MPa−G(ゲージ圧)とすることができる。
【0046】
(流(F0)の蒸留塔10での蒸留)
次に、流(F0)を、ラインL1を介して蒸留塔10に供給する。
【0047】
蒸留塔10の入口での流(F0)の温度は、25〜490℃とすることができる。蒸留塔10内の圧力は、0.1〜1.2MPa−Gとすることができる。
【0048】
蒸留塔10で流(F0)を蒸留することにより、塔頂からラインL2を介して1−ブテン等の炭素数4の炭化水素及びメタノールを主として含有するガス流(F6)を排出させ、塔底からジイソブチレン、メチル sec-ブチルエーテル等の高沸点化合物を主として含有する液流(F17)をラインL3を介して排出させ、塔頂よりも下かつ塔底よりも上からMTBEを主として含む液流(F1)をラインL4を介して排出させる。
【0049】
蒸留塔10から中間留分である液流(F1)をラインL4から安定的に排出させるため、蒸留塔10は、複数のトレイを有する棚段塔であることができる。これにより、トレイから好適に中間留分を排出させることができる。蒸留塔10からラインL4を介して排出させる流(F1)の蒸留塔10の出口での温度、すなわち、液をサイドカットするトレイの温度は、80〜200℃とすることができる。
【0050】
流(F17)は、ボイラー燃料などに利用できる。
【0051】
(MTBE分解反応器20でのMTBEの分解)
次に、蒸留塔10で生成した流(F1)を、ラインL4を介してMTBE分解反応器20に供する。
【0052】
MTBE分解反応器20では、流(F1)中のMTBEを分解してイソブチレン及びメタノールを含む流(F2)を得る。
【0053】
流(F1)をガスとしてMTBE分解反応器20に供給することが好適である。MTBE分解反応器20の入口での流(F1)の温度は100〜500℃とすることができる。
【0054】
固定床方式のMTBE分解反応器を用いた気相反応でMTBEを分解できる。反応温度は通常100〜500℃、好ましくは150〜350℃である。反応圧力は通常大気圧〜2.0MPa−G、好ましくは大気圧〜1.2MPa−Gである。原料の供給速度は反応温度、圧力、MTBEの転化率等により選定されるが、重量空間速度(WHSV)で通常0.1〜50h−1、好ましくは1〜20h−1が採用される。WHSVは、MTBE分解工程に供する全ての流の流速(kg/h)を触媒重量(kg)で除したものである。
【0055】
MTBE分解工程におけるMTBEの転化率は、好ましくは40%〜99%、より好ましくは70%〜98%、更に好ましくは85%〜96%である。
【0056】
MTBE分解工程では、通常、固体触媒が使用される。固体触媒としては、例えば、金属酸化物、非金属酸化物及び複合酸化物が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、アルミナ、酸化チタン及び酸化クロムが挙げられる。非金属酸化物としては、例えば、二酸化ケイ素が挙げられる。複合酸化物としては、例えば、シリカアルミナ及びゼオライトが挙げられる。これらは結晶性でもアモルファスでもよく、また、硫黄、リン、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム等の元素を含んでいてもよい。MTBE分解工程で用いられる固体触媒としては、好ましくは、酸化アルミニウム換算で4〜30質量%のアルミニウム源と二酸化ケイ素換算で60〜95質量%のケイ素源とを含み、50〜450m/gのBET表面積を有するシリカアルミナが使用される。
【0057】
MTBE分解工程は、100℃以上500℃以下でシリカアルミナを用いて行われることが好ましい。この反応は、吸熱反応であるため、外部からの熱の供給が必要となる。熱の供給は、MTBE分解反応器20内に設けた伝熱管に外部から熱媒を供給することにより行ってもよいし、流(F1)を加熱して顕熱として供給してもよいし、これらを組み合わせてもよい。
【0058】
MTBE分解反応器から排出される流(F2)は通常ガスである。流(F2)を冷却して液相を形成して蒸留塔30に供給することもできる。
【0059】
ラインL4を流れる流(F1)に対して、水を添加してからMTBE分解反応器20に供給してもよい。水の添加量は、蒸留塔10から排出される量に対して、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0.2〜5.0質量%となるように行われる。
【0060】
(蒸留塔30でのイソブチレンとメタノールとの分離)
次に、ラインL5を介して流(F2)を蒸留塔30に供する。
【0061】
流(F2)の蒸留塔30における入口温度は、20〜480℃とすることができる。
【0062】
蒸留塔30での蒸留により、蒸留塔30の塔頂からラインL6を介してイソブチレンを主とする流(F4)が排出され、蒸留塔30の塔底からラインL7を介して、メタノールを主とする流(F7)が排出される。
【0063】
流(F4)は、イソブチレン以外に、メタノール、ジメチルエーテルを含むことができる。
【0064】
流(F7)は、メタノール以外に、水、及び未分解のMTBEを含むことができる。
【0065】
蒸留塔30の塔頂の温度は、10〜110℃とすることができる。蒸留塔30の塔底の温度は、80〜200℃とすることができる。蒸留塔30の圧力は、0.1〜2.0MPa−Gとすることができる。
【0066】
(抽出器40での水によるイソブチレンからのメタノールの抽出)
次に、流(F4)を、熱交換により冷却して液相とした上で、ラインL6を介して抽出器40に供給すると共に、ラインL14を介して抽出器40に液体の水を供給する。水との接触により、流(F4)中に存在するメタノールが水に溶けて水相に抽出され、塔底からラインL9を介して水を主として含み、かつメタノールを含む流(F8)が排出される。
【0067】
一方、油相であるイソブチレンを含む流(F5)は、メタノールが十分除去された状態で、塔頂からラインL8を介して排出される。
【0068】
流(F5)に対しては、必要に応じて、蒸留などによるジメチルエーテルなどの軽沸成分の除去を行ってイソブチレンのさらなる高純度化を行ってもよい。
【0069】
抽出器40の温度は15〜80℃とすることができ、圧力は0.2〜1.0MPa−Gとすることができる。
【0070】
(蒸留塔50での水とメタノールとの分離)
蒸留塔30から流(F7)を、ラインL7を介して蒸留塔50に供すると共に、抽出器40から流(F8)を、ラインL9を介して蒸留塔50に供する。蒸留塔50に対して流(F7)を供給する位置は、流(F8)を供給する位置よりも高い。
【0071】
蒸留塔50は、充填塔でも良いが、複数の段(トレイ)50aを有する棚段塔であることが好適である。棚段塔の場合には、蒸留塔50に対して流F7を供給する段50aを、流(F8)を供給する段50aよりも高くすることが好適である。段数の差は1段以上であれば良く、2段以上でも良い。棚段塔の全段数は、例えば、20〜80とすることができる。
【0072】
蒸留塔50の入口での流(F7)の温度は、80〜200℃とすることができる。蒸留塔50の入口での流(F8)の温度は、30〜80℃とすることができる。
【0073】
蒸留塔50では、蒸留により、塔頂からラインL10を介してメタノール及び未分解MTBEを主とする流(F9)が排出され、塔底からラインL11を介して水を主とする流(F10)が排出される。
【0074】
塔頂の温度は60〜150℃とすることができる。塔底の温度は100〜200℃とすることができる。蒸留塔50の圧力は大気圧〜1.0MPa−Gとすることができる。
【0075】
流(F9)は、MTBE合成用のメタノールとして利用できる。また流(F10)は抽出器40でメタノール抽出用の水として利用できる。
【0076】
(作用)
本実施形態によれば、MTBE分解反応器20から排出されるメタノール及びイソブチレンを含む流(F2)が蒸留塔30でイソブチレンを主とする流(F4)とメタノールを主とする流(F7)に分離される。イソブチレンを主とする流(F4)は、抽出器40で水と接触し、メタノールが除去されたイソブチレンを主とする流(F5)と、水を主として含み、かつメタノールを含む流(F8)が得られる。流(F7)と流(F8)とを蒸留塔50で蒸留して、メタノールを主とする流(F9)と、水を主とする流(F10)が得られる。
【0077】
特に、蒸留塔30から得られる流(F7)におけるメタノール濃度(水及びメタノールの合計質量に対するメタノールの質量割合)W7は、抽出器40から得られた流(F8)におけるメタノール濃度W8よりも高い。したがって、水とメタノールとを分離する蒸留塔50に対して、メタノール濃度の高い流(F7)を流(F8)よりも上に供給することで、効率よく水とメタノールとの分離が行われる。
W7は75〜100質量%であることができ、W8は3〜40質量%であることができる。
【0078】
(第3実施形態)
図3を参照して、本発明の第3実施形態にかかるイソブチレンの製造方法を説明する。
本実施形態が第2実施形態と異なる点について説明する。
【0079】
本実施形態のイソブチレンの製造装置200では、抽出器(第2の抽出器)60をさらに備えている。抽出器60はラインL2で蒸留塔10と接続されている。抽出器60の塔頂にはラインL101が、塔底にはラインL102が、それぞれ接続されている。ラインL102は蒸留塔50に接続されている。
【0080】
続いて、本実施形態のイソブチレンの製造方法について、第1実施形態と相違する点について述べる。
【0081】
(抽出器60での水による炭素数4の炭化水素及びメタノールを主として含む流(F6)からのメタノールの抽出)
流(F6)を、ラインL2を介して抽出器60に供給すると共に、ラインL103を介して抽出器60に液体の水を供給する。水との接触により、流(F6)中のメタノールが水に溶けて炭素数4の炭化水素及びメタノールを主として含む流からメタノールが水相に抽出され、塔底からラインL102を介して水を主として含み、かつメタノールを含む流(F102)が排出される。
【0082】
一方、メタノールが除去された油相としての、炭素数4の炭化水素を主として含む流(F101)は、塔頂からラインL101を介して排出される。
【0083】
抽出器60の入口での流(F6)の温度は、10〜80℃とすることができる。抽出器60の温度は15〜80℃とすることができ、圧力は0.2〜1.0MPa−Gとすることができる。
【0084】
(蒸留塔50での水とメタノールとの分離)
蒸留塔30から流(F7)を、ラインL7を介して蒸留塔50に供し、抽出器40から流(F8)を、ラインL9を介して蒸留塔50に供すると共に、抽出器60から流(F102)をラインL102を介して蒸留塔50に供する。ここで、流(F102)は、流(F8)と混合された後、抽出器60に供給される。すなわち、流(F8)と流(F102)とは、蒸留塔50に対して同一の高さに供給される。
【0085】
蒸留塔50では、蒸留により、塔頂からラインL10を介してメタノールを主とする流(F9)が排出され、塔底からラインL11を介して水を主とする流(F10)が排出される。
【0086】
流(F9)は、MTBE合成用のメタノールとして利用できる。また流(F10)は抽出器40、及び、若しくは、抽出器60でメタノール抽出用の水として利用できる。
【0087】
(作用)
本実施形態においては、蒸留塔10から排出される、炭素数4の炭化水素及びメタノールを主に含む流(F6)が抽出器60で水と接触し、メタノールが除去された、炭素数4の炭化水素を主とする流(F101)と、水を主として含み、かつメタノールを含む流(F102)が得られる。流(F102)は、流(F7)と流(F8)と共に、蒸留塔50で蒸留され、メタノールを主とする流(F9)と、水を主とする流(F10)が得られる。
【0088】
本実施形態においても、蒸留塔30から得られる流(F7)におけるメタノール濃度(水及びメタノールの合計質量に対するメタノールの質量割合)W7は、抽出器40から得られた流(F8)におけるメタノール濃度W8、および、抽出器60から得られた流(F102)におけるメタノール濃度W60よりも高い。したがって、水とメタノールとを分離する蒸留塔(第2の蒸留塔)50に対して、メタノール濃度の高い流(F7)を、流(F102)および、流(F8)よりも上に供給することで、効率よく水とメタノールとの分離が行われる。W60は3〜40質量%であることができる。
【0089】
(他の実施態様)
本発明は上記実施形態に限られず、様々な変形態様が可能である。
【0090】
例えば、上記第2及び第3実施形態において、蒸留塔10は、塔頂からラインL2で軽質留分を、塔底からラインL3で重質留分を、塔の中間からラインL4で中間留分を抜き出す構成を有しているが、蒸留塔を二段用いて同様の構成としてもよい。すなわち、最初の蒸留塔で、塔頂から軽質成分を抜き出し、塔底から重質成分及び中間留分を抜き出して後段の蒸留塔に供し、後段の蒸留塔で、塔頂から中間留分を抜き出してMTBE分解反応器20に供し、塔底から重質成分を抜き出してもよい。
【0091】
また、上述する各蒸留塔は、最上段から排出されるガスを再び凝縮させて蒸留塔に環流する環流部を備えることができ、最下段から排出される液を加熱して再び蒸留塔に戻すリボイラを備えることができる。また、蒸留塔は、複数のトレイを有する棚段式であることが好適であるが、充填塔であっても実施は可能である。
【0092】
上記実施形態では、塔型の抽出器40を開示しているがこれに限定されるものでは無い。塔型の抽出器としては、例えば、スプレー塔型、回転円盤塔型、及び多孔板型などの抽出器を好適に利用できるが、また、塔型以外の抽出器としては、例えば、ミキサーセトラー型などの槽型の抽出器などがある。
【0093】
また、上記第3実施形態では、蒸留塔50に対し、流(F102)を流(F8)と同一の高さに供給しているが、蒸留塔50に対して同一でない位置に供給しても実施は可能である。ただし、流(F102)及び流(F8)のメタノール濃度は、流(F7)のメタノール濃度よりは低いので、流(F8)及び流(F102)の供給位置は、流(F7)の供給位置より低いことが必要である。例えば、流(F102)及び流(F8)のメタノール濃度が互いに異なる場合には、流(F102)及び流(F8)のうち相対的にメタノール濃度が高い流を、相対的に高い位置に供給することが好適である。
【実施例】
【0094】
第2実施形態のイソブチレンの製造装置100における蒸留塔50について、シミュレーションを行った。
【0095】
プロセス詳細:蒸留塔50(段数26)から生成される流(F9)を、液化して還流ドラムに貯留し、一部を蒸留塔50に環流し、一部を系外に留出する。蒸留塔50から生成される流(F10)の一部をリボイラで加熱して蒸留塔に戻し、一部を缶出とする。リボイラに供給する熱が蒸留の熱源となる。
【0096】
流(F7)及び流(F8)の組成は、下記の表1のようにした。また、流(F9)及び流F10)の組成が、下記の表1のようになるように、還流比(還流量R/留出量D)を調整した。したがって、実施例1および比較例1〜3において、得られる流(F9)及び流(F10)の組成は同一であるが、還流比が互いに異なるので、リボイラに供給する熱量も互いに異なる。
なお、DIBはジイソブチレン、TBAはtert-ブチルアルコール、MSBEはメチルsecブチルエーテルを示す。
【0097】
【表1】
【0098】
(実施例1)
蒸留塔50に対する流(F7)の供給位置を上から13段、流(F8)の供給位置を上から19段とし、流(F7)を流(F8)よりも上に供給する。
【0099】
流(F7)の温度及び圧力は115℃、500kPaG、流(F8)の温度は70℃、100kPaGとする。留出する流(F9)の温度及び圧力は62.7℃、25kPaGとし、缶出する流(F10)の温度及び圧力は108.2℃、及び、35kPaGとする。
【0100】
(比較例1)
蒸留塔50に対する流(F7)及び流(F8)を混合して上から13段に供給する。
流(F7)及び流(F8)の混合物の温度及び圧力は115℃、500kPaGとする。留出する流(F9)の温度及び圧力、及び、缶出する流(F10)の温度及び圧力は、実施例1と同じである。
【0101】
(比較例2)
蒸留塔50に対する流(F7)及び流(F8)を混合して上から19段に供給する。
流(F7)及び流(F8)の混合物の温度及び圧力は70℃、100kPaGとする。留出する流(F9)の温度及び圧力、及び、缶出する流(F10)の温度及び圧力は、実施例1と同じである。
【0102】
(比較例3)
蒸留塔50に対する流(F7)の供給位置を上から19段、流(F8)の供給位置を上から13段とし、流(F7)を流(F8)よりも下に供給する。
流(F7)及び流(F8)の混合物の温度及び圧力、及び、留出する流(F9)の温度及び圧力、及び、缶出する流(F10)の温度及び圧力は、実施例1と同じである。
【0103】
必要な還流量R、還流比(還流量R/留出量D)、当該還流比の達成に必要なリボイラ熱量、及び、対応するリボイラのスチーム量を表2に示す。
実施例1では、同一の純度まで精製するのに最小のリボイラ熱量を要求することから、実施例1は、比較例1〜3に比べて、分離効率が高いことが確認された。
【0104】
【表2】
【符号の説明】
【0105】
20…MTBE分解反応器、10…蒸留塔(第3の蒸留塔)、30…蒸留塔(第1の蒸留塔)、40…抽出器(第1の抽出器)、50…蒸留塔(第2の蒸留塔)、60…抽出器(第2の抽出器)、100,200…イソブチレンの製造装置、510…蒸留塔。
【要約】
【課題】同じ二成分を含む二つ以上の流を1つの蒸留塔で蒸留により各成分に効率よく分離する方法及びこれを用いたイソブチレンの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】A成分とB成分とを含む第1の流(X1)と、A成分とB成分とを含む第2の流(X2)とを蒸留塔510に供して、蒸留により、A成分を主として含む流(Y1)と、B成分を主として含む流(Y2)とに分離する。A成分の沸点は、B成分の沸点より低い。第1の流(X1)中のA成分の濃度は、第2の流(X2)中のA成分の濃度より高い。A成分の濃度は、各流中のA成分およびB成分の合計質量に対するA成分の質量割合である。蒸留塔510に対して、第1の流(X1)を第2の流(X2)よりも上に供給する。
【選択図】図1
図1
図2
図3