特許第6445170号(P6445170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6445170線状無機配位高分子、金属錯化合物、これを含む金属ナノ構造体および触媒組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445170
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】線状無機配位高分子、金属錯化合物、これを含む金属ナノ構造体および触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 79/00 20060101AFI20181217BHJP
   C08G 64/34 20060101ALI20181217BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20181217BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20181217BHJP
   C07F 3/06 20060101ALN20181217BHJP
【FI】
   C08G79/00
   C08G64/34
   C07C31/20 A
   !C08L101/16
   !C07F3/06
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-536550(P2017-536550)
(86)(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公表番号】特表2018-504490(P2018-504490A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】KR2016001558
(87)【国際公開番号】WO2016133341
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2017年7月10日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0024341
(32)【優先日】2015年2月17日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0017309
(32)【優先日】2016年2月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ジョン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ホ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】イェ・ジ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ミン・オグ・キム
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−246271(JP,A)
【文献】 特開2004−031174(JP,A)
【文献】 特開昭62−089732(JP,A)
【文献】 特表2005−530021(JP,A)
【文献】 Jack Y. Lu et al.,A New Type of Two-Dimensional Metal Coordination Systems: Hydrothermal Synthesis and Properties of the First Oxalate-bpy Mixed-Ligand Framework [M(ox)(bpy)] (M=Fe(II),Co(II),Ni(II),Zn(II); ox=C2O42-; bpy=4,4'-bipyridine),Inorganic Chemistry,米国,1999年,vol.38,2695-2704
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G75/00−75/32
C08G79/00−79/14
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1の繰り返し単位を含む線状無機配位高分子鎖を複数含み、
化学式1の中心金属Mに配位結合された中性リガンドを介して前記複数の高分子鎖が互いに連結されている金属錯化合物
【化1】

前記化学式1において、Mは、Fe、Ni、Zn、およびCoからなる群より選択された1種以上の遷移金属元素であり、
RaおよびRbは、それぞれ独立に、酸素(−O−)または−NH−であり、Rcは、酸素または硫黄であるものの、Ra、RbおよびRcが全て酸素になることはないし、
nは、100〜100万の整数であり、実線は、共有結合を示し、点線は、配位結合を示し、*は、連結部位を示す
【請求項2】
前記中性リガンドは、前記Mに配位可能な酸素、硫黄、リン、または窒素含有官能基を複数含む化合物;または
酸素、硫黄、リン、および窒素からなる群より選択された1種以上のヘテロ元素を複数含む環含有化合物である、請求項に記載の金属錯化合物。
【請求項3】
前記酸素、硫黄、リン、または窒素含有官能基は、オキソ基(−O−)、ヒドロキシ基、アミン基、カルボキシ基(−COOH)、チオール基、ホスフィン基(−PRRは、アルキル基またはアリール基)、窒素含有ヘテロ環、硫黄含有ヘテロ環、リン含有ヘテロ環、および酸素含有ヘテロ環からなる群より選択される、請求項に記載の金属錯化合物。
【請求項4】
前記中性リガンドは、炭素数2〜5のアルキレンジオール、炭素数2〜5のアルキレンジアミン、炭素数2〜5のヒドロキシアルキルアミン、ジオキサン系化合物、モルホリン(morpholine)系化合物、ピペラジン系化合物、ピラジン系化合物、4,4’−ジピリジル系化合物、フェノキサジン系化合物、アミノフェノール系化合物、ヒドロキシキノリン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ヒドロキシ安息香酸系化合物、炭素数2〜5のアルキレンジチオール、炭素数2〜5のメルカプトアルカノール、チオフェノール系化合物、アミノチオフェノール系化合物、炭素数2〜5のジホスフィノ化合物、およびアミノ安息香酸系化合物からなる群より選択される1種以上である、請求項に記載の金属錯化合物。
【請求項5】
下記化学式2の繰り返し単位を含む、請求項に記載の金属錯化合物:
【化2】

前記化学式2において、M、n、Ra、Rb、Rc、実線、点線および*は、化学式1で定義された通りであり、Aは、中心金属Mに配位結合された中性リガンドである。
【請求項6】
求項に記載の金属錯化合物を含む金属ナノ構造体。
【請求項7】
0次元〜3次元の立体構造を有する、請求項に記載の金属ナノ構造体。
【請求項8】
溶媒中で、遷移金属Mの塩、下記化学式3の化合物、および前記中性リガンドを加熱下で反応させる段階を含む、請求項に記載の金属ナノ構造体の製造方法:
[化学式3]
Ra’−(C=Rc’)−(C=Rc’)−Rb’
前記化学式3において、Ra’およびRb’は、それぞれ独立に、−OH、−OM’、または−NHであり、Rc’は、酸素または硫黄であるものの、Rc’が酸素であれば、Ra’およびRb’が全て−OHまたは−OM’になることはなく、M’は、アルカリ金属である。
【請求項9】
前記化学式3の化合物は、オキサミド、オキサメート、またはチオシュウ酸を含む、請求項に記載の金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項10】
遷移金属Mの塩は、アセテート塩、ハロゲン塩、硫酸塩、硝酸塩、およびスルホン酸塩からなる群より選択される、請求項に記載の金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項11】
前記溶媒は、メチレンクロライド、エチレンジクロライド、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロホルム、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、1,4−ジオキサン、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルアミンケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、トリクロロエチレン、メチルアセテート、ビニルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチロラクトン、カプロラクトン、ニトロプロパン、ベンゼン、スチレン、キシレン、およびメチルプロパゾール(methyl propasol)、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、および1,3−プロパンジオールからなる群より選択された1種以上を含む、請求項に記載の金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項12】
前記遷移金属Mの塩、前記化学式3の化合物、および前記中性リガンドの反応段階は、常温〜250℃の加熱下で進行する、請求項に記載の金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項13】
請求項に記載の金属ナノ構造体を含む触媒組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の触媒組成物の存在下、エポキシドおよび二酸化炭素を含む単量体を重合させる段階を含むポリアルキレンカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項15】
有機溶媒中で溶液重合により進行する、請求項14に記載のポリアルキレンカーボネート樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2015年2月17日付の韓国特許出願第10−2015−0024341号および2016年2月15日付の韓国特許出願第10−2016−0017309号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、多様な立体構造を有する金属ナノ構造体の形態で製造され、ポリアルキレンカーボネート樹脂などの製造において優れた活性を有する触媒などとして使用できる新規な線状無機配位高分子、金属錯化合物、これを含む金属ナノ構造体および触媒組成物などに関する。
【背景技術】
【0003】
産業革命以降、人類は化石燃料を大量消費することによって、現代社会を構築してきたが、他方で、大気中の二酸化炭素の濃度を増加させ、しかも、森林破壊などの環境破壊によってその増加をさらに促進させている。地球温暖化は、大気中の二酸化炭素、フレオンやメタンのような温室効果ガスが増加したことが原因になる点で、地球温暖化への寄与率が高い二酸化炭素の大気中濃度を減少させることは非常に重要であり、その排出規制や固定化などの様々な研究が世界的な規模で実施されている。
【0004】
なかでも、井上らによって発見された二酸化炭素とエポキシドの共重合反応は地球温暖化問題の解決を担う反応として期待されており、化学的二酸化炭素の固定といった観点のみならず、炭素資源としての二酸化炭素の使用という観点でも活発に研究されている。特に、最近、前記二酸化炭素とエポキシドの重合によるポリアルキレンカーボネート樹脂は生分解可能な樹脂の一種として大きく注目されている。
【0005】
以前から、このようなポリアルキレンカーボネート樹脂の製造のための多様な触媒が研究および提案されており、代表的な触媒として、亜鉛およびジカルボン酸が結合された亜鉛グルタレート触媒などの亜鉛ジカルボキシレート系触媒が知られている。
【0006】
このような亜鉛ジカルボキシレート系触媒、代表的に、亜鉛グルタレート触媒は、亜鉛前駆体およびグルタル酸などのジカルボン酸を反応させて形成され、微細な結晶性粒子形態を呈する。しかし、このような亜鉛ジカルボキシレート系触媒は、かかる粒子形態などの立体構造を制御または変更するのに限界があり、このため、触媒としての活性を調節、変更または向上させるには限界があったのが事実である。
【0007】
これにより、立体構造や粒子形態、または触媒活性を示す金属イオンのやり取りなどをより容易に制御可能で、前記ポリアルキレンカーボネート樹脂などの製造において重合触媒としての活性をより容易に調節、変更または向上させられる新規な触媒候補物質が求められ続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、多様な立体構造を有する金属ナノ構造体の形態で製造され、ポリアルキレンカーボネート樹脂などの製造において優れた活性を有する触媒などとして使用できる新規な線状無機配位高分子および金属錯化合物と、これを含む金属ナノ構造体、そしてその製造方法を提供する。
【0009】
本発明はまた、前記金属ナノ構造体を含む触媒組成物と、これを用いたポリアルキレンカーボネート樹脂の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記化学式1の繰り返し単位を含む線状無機配位高分子を提供する:
【化1】

前記化学式1において、Mは、Fe、Ni、Zn、およびCoからなる群より選択された1種以上の遷移金属元素であり、RaおよびRbは、それぞれ独立に、酸素(−O−)または−NH−であり、Rcは、酸素または硫黄であるものの、Ra、RbおよびRcが全て酸素になることはないし、nは、100〜100万の整数であり、実線は、共有結合を示し、点線は、配位結合を示し、*は、連結部位を示す。
【0011】
本発明はまた、前記化学式1の繰り返し単位を含む線状無機配位高分子鎖を複数含み、
化学式1の中心金属Mに配位結合された中性リガンドを介して前記複数の高分子鎖が互いに連結されている金属錯化合物を提供する。
【0012】
前記金属錯化合物において、前記中性リガンドは、前記Mに配位可能な酸素、硫黄、リン、または窒素含有官能基を複数含む化合物;または酸素、硫黄、リン、および窒素からなる群より選択された1種以上のヘテロ元素を複数含む環含有化合物になってもよい。この時、前記酸素、硫黄、リン、または窒素含有官能基は、オキソ基(−O−)、ヒドロキシ基、アミン基、カルボキシ基(−COOH)、チオール基、ホスフィン基(−PR等;Rは、アルキル基またはアリール基)、窒素含有ヘテロ環、硫黄含有ヘテロ環、リン含有ヘテロ環、および酸素含有ヘテロ環からなる群より選択される。
【0013】
前記中性リガンドのより具体的な例としては、水(HO)、炭素数2〜5のアルキレンジオール、炭素数2〜5のアルキレンジアミン、炭素数2〜5のヒドロキシアルキルアミン、ジオキサン系化合物、モルホリン(morpholine)系化合物、ピペラジン系化合物、ピラジン系化合物、4,4’−ジピリジル系化合物、フェノキサジン系化合物、アミノフェノール系化合物、ヒドロキシキノリン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ヒドロキシ安息香酸系化合物、炭素数2〜5のアルキレンジチオール、炭素数2〜5のメルカプトアルカノール、チオフェノール系化合物、アミノチオフェノール系化合物、炭素数2〜5のジホスフィノ化合物、およびアミノ安息香酸系化合物からなる群より選択される1種以上が挙げられる。
【0014】
上述した金属錯化合物は、下記化学式2の繰り返し単位を含む構造を有することができる:
【化2】

前記化学式2において、M、n、Ra、Rb、Rc、実線、点線および*は、化学式1で定義された通りであり、Aは、中心金属Mに配位結合された中性リガンドである。
【0015】
一方、本発明はまた、前記線状無機配位高分子または前記金属錯化合物を含む金属ナノ構造体を提供する。このような金属錯化合物は、0次元〜3次元の多様な立体構造またはナノ粒子形態を有することができる。
【0016】
また、本発明は、溶媒中で、遷移金属Mの塩、下記化学式3の化合物、および前記中性リガンドを加熱下で反応させる段階を含む前記金属ナノ構造体の製造方法を提供する:
[化学式3]
Ra’−(C=Rc’)−(C=Rc’)−Rb’
前記化学式3において、Ra’およびRb’は、それぞれ独立に、−OH、−OM’、または−NHであり、Rc’は、酸素または硫黄であるものの、Rc’が酸素であれば、Ra’およびRb’が全て−OHまたは−OM’になることはなく、M’は、アルカリ金属である。
【0017】
このような金属ナノ構造体の製造方法において、前記化学式3の化合物としては、オキサミド、オキサメート、またはチオシュウ酸などが挙げられる。
【0018】
また、前記遷移金属Mの塩としては、アセテート塩、chloride塩、bromide塩、またはiodide塩のようなハロゲン塩、硫酸塩、硝酸塩、およびtriflate塩のようなスルホン酸塩からなる群より選択された金属塩を使用することができる。さらに、前記溶媒としては、ポリアルキレンカーボネート樹脂の製造のために重合溶媒として使用可能と知られた任意の有機溶媒またはジヒドロキシ系溶媒を使用することができ、その具体的な例としては、メチレンクロライド、エチレンジクロライド、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロホルム、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、1,4−ジオキサン、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルアミンケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、トリクロロエチレン、メチルアセテート、ビニルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチロラクトン、カプロラクトン、ニトロプロパン、ベンゼン、スチレン、キシレン、およびメチルプロパゾール(methyl propasol)、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、および1,3−プロパンジオールからなる群より選択された1種以上が挙げられる。
【0019】
そして、前記金属ナノ構造体の製造方法において、前記遷移金属Mの塩、前記化学式3の化合物、および前記中性リガンドの反応段階は、常温(約20℃)〜250℃の加熱下で進行できる。
【0020】
本発明はまた、上述した金属ナノ構造体を含む触媒組成物を提供する。このような触媒組成物は、ポリアルキレンカーボネート樹脂の製造のための重合触媒として好ましく使用できる。
【0021】
そこで、本発明は、前記触媒組成物の存在下、エポキシドおよび二酸化炭素を含む単量体を重合させる段階を含むポリアルキレンカーボネート樹脂の製造方法を提供する。
【0022】
このようなポリアルキレンカーボネート樹脂の製造方法において、前記重合段階は、有機溶媒中で溶液重合により進行できる。
【0023】
以下、発明の実施形態に係る線状無機配位高分子、金属錯化合物、これを含む金属ナノ構造体、および触媒組成物などについて詳細に説明する。
【0024】
発明の一実施形態によれば、下記化学式1の繰り返し単位を含む線状無機配位高分子が提供される:
【化3】

前記化学式1において、Mは、Fe、Ni、Zn、およびCoからなる群より選択された1種以上の遷移金属元素であり、RaおよびRbは、それぞれ独立に、酸素(−O−)または−NH−であり、Rcは、酸素または硫黄であるものの、Ra、RbおよびRcが全て酸素になることはないし、nは、100〜100万の整数であり、実線は、共有結合を示し、点線は、配位結合を示し、*は、連結部位を示す。この時、前記線状無機配位高分子鎖およびこれを含む金属錯化合物がポリアルキレンカーボネート樹脂の製造のための触媒としての適切なスケールなどを確保できるように、前記nは、より好適には1000〜100万の整数になってもよい。
【0025】
また、発明の他の実施形態によれば、前記化学式1の繰り返し単位を含む線状無機配位高分子鎖を複数含み、化学式1の中心金属Mに配位結合された中性リガンドを介して前記複数の高分子鎖が互いに連結されている金属錯化合物が提供される。
【0026】
前記一実施形態の線状無機配位高分子は、所定のシュウ酸誘導体、例えば、オキサミド、オキサメート、またはチオシュウ酸などが線状に連結された形態の化学式1の繰り返し単位を含む。また、前記他の実施形態の金属錯化合物は、このような化学式1の繰り返し単位を含む線状無機配位高分子鎖を構造中に含むことができる。このような線状無機配位高分子鎖はそれぞれ、下記化学式1Aのような連結構造を有することができる。より具体的には、前記シュウ酸誘導体がオキサミドになる場合、下記化学式1AのRa、Rbが−NH−であり、Rcが酸素になってもよく、前記シュウ酸誘導体がオキサメートになる場合、下記化学式1AのRaが−NH−であり、Rb、Rcが全て酸素になってもよいし、前記シュウ酸誘導体がチオシュウ酸になる場合、下記化学式1AのRa、Rbが酸素であり、Rcが硫黄になってもよい:
【化4】

前記化学式1Aにおいて、Ra、Rb、Rc、M、n、実線、点線および*は、化学式1で定義された通りである。
【0027】
また、前記他の実施形態の金属錯化合物の構造において、前記線状無機配位高分子鎖は、例えば、ヘテロ元素含有官能基が中心金属Mに配位結合された中性リガンドを介して互いに連結された構造を有することができ、このような連結構造を有する一実施形態の金属錯化合物は、例えば、下記化学式2の構造を有することができる:
【化5】

前記化学式2において、M、n、Ra、Rb、Rc、実線、点線および*は、化学式1で定義された通りであり、Aは、中心金属Mに配位結合された中性リガンドである。
【0028】
特に、前記中性リガンドは、前記一実施形態の線状無機配位高分子の鎖をその軸方向に3次元的に互いに連結することができる。したがって、前記線状無機配位高分子または金属錯化合物の製造過程において、前記中性リガンドと、前記高分子鎖との3次元連結構造を調節することによって(この調節は、後述する金属ナノ構造体の製造方法において、遷移金属塩、シュウ酸誘導体、および中性リガンドの反応温度、溶媒などの反応条件を調節するか、中性リガンドの使用の有無、種類または組成などを調節することで可能になる。)、前記線状無機配位高分子または金属錯化合物を多様な立体構造または粒子形態を有する金属ナノ構造体の形態で製造することができる。
【0029】
また、後述する実施例からも裏付けられるように、前記線状無機配位高分子や金属錯化合物およびこれを含む金属ナノ構造体は、その中心金属の基本的な触媒活性と、多様な立体構造などに起因して、ポリアルキレンカーボネート樹脂の製造のための重合反応で優れた触媒活性を示すことができる。
【0030】
したがって、前記線状無機配位高分子や、金属錯化合物を用いると、立体構造および粒子形態などの制御が容易であり、触媒としての活性をより容易に調節、変更または向上させられて、ポリアルキレンカーボネート樹脂などの製造のための重合触媒などとして好ましく使用できる新規な金属ナノ構造体が提供される。
【0031】
一方、前記金属錯化合物において、前記中性リガンドは、前記遷移金属Mに配位可能な酸素、硫黄、リン、または窒素含有官能基を複数含む化合物;または酸素、硫黄、リン、および窒素からなる群より選択された1種以上のヘテロ元素を複数含む環含有化合物になってもよい。この時、前記酸素、硫黄、リン、または窒素含有官能基は、オキソ基(−O−)、ヒドロキシ基、アミン基、カルボキシ基(−COOH)、チオール基、ホスフィン基(−PR等;Rは、アルキル基またはアリール基)、窒素含有ヘテロ環、硫黄含有ヘテロ環、リン含有ヘテロ環、および酸素含有ヘテロ環からなる群より選択される。また、前記ヘテロ元素を複数含む環は、ジオキサン系環、モルホリン(morpholine)系環、ピペラジン系環、またはピラジン系環などになってもよい。
【0032】
このような酸素、硫黄、リン、または窒素含有官能基を複数(例えば、2つ)有する化合物、または複数(例えば、2つ)のヘテロ元素を有する環含有化合物を中性官能基として用いると、前記線状無機配位高分子鎖を3次元連結構造として適切に連結することができ、よって、前記金属錯化合物と、これを含む多様な立体構造または粒子形態を有する金属ナノ構造体を提供することができる。ただし、カルボキシ基を複数有するジカルボン酸化合物は、前記線状無機配位高分子鎖を適切な3次元連結構造で連結するのに適さないことがある。
【0033】
上述した中性リガンドのより具体的な例としては、水(HO)、炭素数2〜5のアルキレンジオール、炭素数2〜5のアルキレンジアミン、炭素数2〜5のヒドロキシアルキルアミン、ジオキサン系化合物、モルホリン(morpholine)系化合物、ピペラジン系化合物、ピラジン系化合物、4,4’−ジピリジル系化合物、フェノキサジン系化合物、アミノフェノール系化合物、ヒドロキシキノリン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ヒドロキシ安息香酸系化合物、炭素数2〜5のアルキレンジチオール、炭素数2〜5のメルカプトアルカノール、チオフェノール系化合物、アミノチオフェノール系化合物、炭素数2〜5のジホスフィノ化合物、およびアミノ安息香酸系化合物からなる群より選択される1種以上が挙げられる。
【0034】
最も具体的には、前記中性リガンドとしては、以下に並ぶ化学式からなる群より選択された1種以上の化合物を使用することができる:
【化6】
【0035】
例えば、前記中性リガンドとして、エチレングリコールが使用された場合に、他の実施形態の金属錯化合物は、下記化学式2Aのような形態で中性リガンドが線状無機配位高分子鎖を連結する形態を有することができ、他の種類の中性リガンドが使用された場合にも、これと同一の形態で各中性リガンドの酸素または窒素などが遷移金属Mに配位されて前記中性リガンドが線状無機配位高分子鎖を連結する形態を有することができる:
【化7】

前記化学式2Aにおいて、Ra、Rb、Rc、M、n、実線、点線および*は、化学式1で定義された通りである。
【0036】
一方、本発明のさらに他の実施形態によれば、前記一実施形態の線状無機配位高分子、または前記他の実施形態の金属錯化合物を含む金属ナノ構造体が提供される。図1および図2Dには、いくつかの立体構造(線状立体構造および3次元立体構造など)を有する金属ナノ構造体の一例(金属錯化合物を含むもの)を示す電子顕微鏡写真が示されている。
【0037】
このような金属ナノ構造体は、前記中性リガンドと、前記線状配位高分子鎖との3次元連結構造の適用の有無またはその調節によって、0次元(例えば、粒子形態)、1次元(例えば、線状またはロッド形態)、2次元(例えば、多角形などの平面形態)、または3次元(例えば、多面体、球状または類似球状などの立体形態)の多様な立体構造またはナノ粒子形態を有することができる。以下にさらに詳細に説明するが、このような多様な立体構造やナノ粒子形態は、金属ナノ構造体の製造方法において、遷移金属塩、シュウ酸誘導体、および中性リガンドの反応温度、溶媒などの反応条件を調節するか、中性リガンドの使用の有無、種類または組成などを調節することで実現および制御できる。
【0038】
したがって、このような金属ナノ構造体は、多様な立体構造および粒子形態を有することができ、その中心金属の基本的な触媒活性と、多様な立体構造などに起因して、ポリアルキレンカーボネート樹脂の製造のための重合反応で優れた触媒活性を示すことができる。
【0039】
しかも、このような金属ナノ構造体の触媒活性は、その立体構造などに応じて多角的に制御できるため、前記金属ナノ構造体を適用して、立体構造および粒子形態などの制御が容易であり、触媒としての活性も容易に調節、変更または向上するポリアルキレンカーボネート樹脂などの製造のための重合触媒の提供が可能になる。
【0040】
さらに、前記金属ナノ構造体において、低沸点を有し、加熱によって容易に除去可能な中性リガンドを適用する場合、このような金属ナノ構造体の熱処理によって多孔性ナノ構造体(MOF)を提供することもでき、このような多孔性ナノ構造体は非常に多様な用途に適用可能である。
【0041】
そのため、前記他の実施形態の金属ナノ構造体は、ポリアルキレンカーボネート樹脂などの製造のための重合触媒としての次世代候補物質またはその他の多様な用途に適用可能な多孔性ナノ構造体の前駆物質として非常に好ましく考慮できる。
【0042】
一方、上述したさらに他の実施形態の金属ナノ構造体は、溶媒中で、遷移金属Mの塩、下記化学式3の化合物、および前記中性リガンドを加熱下で反応させる段階を含む方法により製造される:
[化学式3]
Ra’−(C=Rc’)−(C=Rc’)−Rb’
前記化学式3において、Ra’およびRb’は、それぞれ独立に、−OH、−OM’、または−NHであり、Rc’は、酸素または硫黄であるものの、Rc’が酸素であれば、Ra’およびRb’が全て−OHまたは−OM’になることはなく、M’は、アルカリ金属である。
【0043】
つまり、前記金属ナノ構造体は、溶媒中で遷移金属塩、前記化学式3のシュウ酸誘導体、および上述した中性リガンドを加熱下で反応させる、非常に単純化された工程で製造され、このような反応段階の温度、溶媒などの反応条件を調節するか、中性リガンドの適用の有無、種類または組成などを調節することで、多様な立体構造または粒子形態を有する金属ナノ構造体およびこれに含まれる一実施形態の線状無機配位高分子や、他の実施形態の金属錯化合物が製造可能になる。
【0044】
一方、前記金属ナノ構造体の製造方法において、前記化学式3の化合物としては、オキサミド、オキサメート、またはチオシュウ酸などが挙げられる:
【化8】
【0045】
また、前記遷移金属Mの塩としては、以前から遷移金属の錯化合物を製造するのに使用可能と知られた遷移金属の塩を特別な制限なく全て使用することができる。このような遷移金属塩のより具体的な種類としては、アセテート塩、chloride塩、bromide塩、またはiodide塩のようなハロゲン塩、硫酸塩、硝酸塩、およびtriflate塩のようなスルホン酸塩からなる群より選択された金属塩が挙げられる。
【0046】
そして、前記金属ナノ構造体の製造方法において、前記溶媒としては、ポリアルキレンカーボネート樹脂の製造のために重合溶媒として使用可能と知られた任意の有機溶媒またはジヒドロキシ系溶媒を使用することができ、その具体的な例としては、メチレンクロライド、エチレンジクロライド、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロホルム、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、1,4−ジオキサン、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルアミンケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、トリクロロエチレン、メチルアセテート、ビニルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチロラクトン、カプロラクトン、ニトロプロパン、ベンゼン、スチレン、キシレン、およびメチルプロパゾール(methyl propasol)、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、および1,3−プロパンジオールからなる群より選択された1種以上が挙げられる。
【0047】
また、前記金属ナノ構造体の製造方法において、前記遷移金属Mの塩、化学式3のシュウ酸誘導体、および前記中性リガンドの反応段階は、常温(約20℃)〜250℃の加熱下で進行できる。
【0048】
一方、発明のさらに他の実施形態によれば、上述した金属ナノ構造体を含む触媒組成物を提供する。このような触媒組成物は、前記金属ナノ構造体の、優れていながらも調節可能な重合活性により、ポリアルキレンカーボネート樹脂の製造のための重合触媒として非常に好ましく使用できる。
【0049】
そこで、発明のさらに他の実施形態によれば、前記触媒組成物の存在下、エポキシドおよび二酸化炭素を含む単量体を重合させる段階を含むポリアルキレンカーボネート樹脂の製造方法を提供する。
【0050】
このようなポリアルキレンカーボネート樹脂の製造方法において、前記金属ナノ構造体および触媒組成物は、不均一触媒の形態として使用され、前記重合段階は、有機溶媒中で溶液重合により進行できる。よって、反応熱が適切に制御可能であり、得ようとするポリアルキレンカーボネート樹脂の分子量または粘度制御が容易になり得る。
【0051】
このような溶液重合で、溶媒としては、メチレンクロライド、エチレンジクロライド、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロホルム、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、1,4−ジオキサン、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルアミンケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、トリクロロエチレン、メチルアセテート、ビニルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチロラクトン、カプロラクトン、ニトロプロパン、ベンゼン、スチレン、キシレン、およびメチルプロパゾール(methyl propasol)からなる群より選択される1種以上を使用することができる。なかでも、メチレンクロライドまたはエチレンジクロライドを溶媒として用いることによって、重合反応をより効果的に進行させることができる。
【0052】
前記溶媒は、エポキシド対比、約1:0.5〜1:100の重量比で使用することができ、好適には約1:1〜1:10の重量比で使用することができる。
【0053】
この時、その比率が約1:0.5未満と少なすぎると、溶媒が反応媒質としてうまく作用せず、上述した溶液重合の利点を生かしにくいことがある。また、その比率が約1:100を超えると、相対的にエポキシドなどの濃度が低くなって生産性が低下し、最終的に形成された樹脂の分子量が低くなったり、副反応が増加することがある。
【0054】
また、前記触媒組成物、特に、これに含まれている金属ナノ構造体は、エポキシド対比、約1:50〜1:1000のモル比で投入される。より好ましくは、前記有機亜鉛触媒は、エポキシド対比、約1:70〜1:600、あるいは約1:80〜1:300のモル比で投入される。その比率が小さすぎると、溶液重合時、十分な触媒活性を示しにくく、逆に、過度に大きくなると、過剰な量の触媒の使用で効率的でなく、副産物が生じたり、触媒の存在下で加熱による樹脂のバックバイティング(back−biting)が起こることがある。
【0055】
一方、前記エポキシドとしては、ハロゲンまたは炭素数1〜5のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキレンオキシド;ハロゲンまたは炭素数1〜5のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数4〜20のシクロアルキレンオキシド;およびハロゲンまたは炭素数1〜5のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数8〜20のスチレンオキシド;からなる群より選択された1種以上を使用することができる。代表的に、前記エポキシドとしては、ハロゲンまたは炭素数1〜5のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキレンオキシドを使用することができる。
【0056】
このようなエポキシドの具体的な例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、ペンテンオキシド、ヘキセンオキシド、オクテンオキシド、デセンオキシド、ドデセンオキシド、テトラデセンオキシド、ヘキサデセンオキシド、オクタデセンオキシド、ブタジエンモノオキシド、1,2−エポキシ−7−オクテン、エピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、イソプロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデセンオキシド、アルファ−ピネンオキシド、2,3−エポキシノルボルネン、リモネンオキシド、ジエルドリン、2,3−エポキシプロピルベンゼン、スチレンオキシド、フェニルプロピレンオキシド、スチルベンオキシド、クロロスチルベンオキシド、ジクロロスチルベンオキシド、1,2−エポキシ−3−フェノキシプロパン、ベンジルオキシメチルオキシラン、グリシジル−メチルフェニルエーテル、クロロフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル、エポキシプロピルメトキシフェニルエーテル、ビフェニルグリシジルエーテル、グリシジルナフチルエーテルなどがある。最も代表的に、前記エポキシドとしては、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを使用する。
【0057】
付加して、上述した溶液重合は、約50〜100℃および約15〜50barで、約1〜60時間行うことができる。また、前記溶液重合は、約70〜90℃および約20〜40barで、約3〜40時間行うことがより適切である。
【0058】
一方、上述した事項を除いた残りの重合工程および条件は、ポリアルキレンカーボネート樹脂の製造のための通常の重合条件などに従えばよいので、これに関する追加的な説明は省略する。
【発明の効果】
【0059】
本発明は、多様な立体構造を有する金属ナノ構造体の形態で製造され、ポリアルキレンカーボネート樹脂などの製造において優れた活性を有する触媒などとして使用できる新規な線状無機配位高分子や、金属錯化合物、そしてこれを含む金属ナノ構造体などを提供することができる。
【0060】
このような金属ナノ構造体は、立体構造および粒子形態などの制御が容易であり、触媒としての活性をより容易に調節、変更または向上させられるので、ポリアルキレンカーボネート樹脂などの製造のための重合触媒などとして好ましく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、発明の他の実施形態に係る金属錯化合物を含む、1次元立体構造(線状立体構造)を有する金属ナノ構造体の一例を示す電子顕微鏡写真である。
図2A図2A図2Dは、実施例1の金属錯化合物および金属ナノ構造体のFT−IR分析結果、EDS元素分析結果、TGA分析結果と電子顕微鏡写真をそれぞれ示す。
図2B図2A図2Dは、実施例1の金属錯化合物および金属ナノ構造体のFT−IR分析結果、EDS元素分析結果、TGA分析結果と電子顕微鏡写真をそれぞれ示す。
図2C図2A図2Dは、実施例1の金属錯化合物および金属ナノ構造体のFT−IR分析結果、EDS元素分析結果、TGA分析結果と電子顕微鏡写真をそれぞれ示す。
図2D図2A図2Dは、実施例1の金属錯化合物および金属ナノ構造体のFT−IR分析結果、EDS元素分析結果、TGA分析結果と電子顕微鏡写真をそれぞれ示す。
図3A図3A図3Bは、実施例2の金属錯化合物および金属ナノ構造体のFT−IR分析結果と電子顕微鏡写真をそれぞれ示す。
図3B図3A図3Bは、実施例2の金属錯化合物および金属ナノ構造体のFT−IR分析結果と電子顕微鏡写真をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は発明を例示するためのものに過ぎず、発明をこれらにのみ限定するものではない。
【0063】
実施例1:線状無機配位高分子、金属錯化合物(Zn−oxamide)、および金属ナノ構造体の製造
Oxamide(0.088g、1mmol)をエチレングリコール(15mL)に分散させた後、Zinc sulfate heptahydrate(0.287g、1mmol)を加えて、以降、Triethylamine(280μL、2mmol)を添加した。3時間反応させた後、遠心分離を利用して沈殿物を分離し、これをエタノールで3回洗った。以降、membrane filterでparticlesを除去してsheet形態のみを得た。
【0064】
これにより、実施例1の金属錯化合物を製造し、この金属錯化合物の構成元素および構造をEDS、FT−IRおよびTGAを通して分析および確認した。その確認結果のうち、FT−IR分析結果を図2Aに示し、EDS分析結果を図2Bに示し、TGA分析結果を図2Cに示した。
【0065】
図2AのFT−IR分析結果から、3386cm−1(N−H)、3194cm−1(O−H)、1660cm−1(C=O)、1350cm−1(C−N)、1108cm−1(N−H)、800cm−1(C−C)、670cm−1(N−H)、および636cm−1(C=O)に相当するピークを確認し、この金属錯化合物が化学式2の繰り返し単位構造を有することを確認した。また、図2BのEDS分析結果を通して、金属錯化合物の中心金属元素であるZnの存在を確認した。そして、図2CのTGA分析結果、100〜250℃および250〜450℃の温度範囲でそれぞれ26%および15%の質量減少を確認し、これにより、金属錯化合物に結合されたオキサミドの存在を確認した。これに加えて、TGA分析結果における残留量54%は、ZnOの理論値54%と一致することを確認した。つまり、前記図2A図2Cの分析結果を通して、実施例1の金属錯化合物が化学式2のような構造を有することを確認した。
【0066】
追加的に、実施例1の金属錯化合物の構造を電子顕微鏡写真で分析して、図2Dに示した。図2Dを参照すれば、特定の立体構造を有する金属ナノ構造体の形態に形成されることが確認され、図1と比較して、前記金属ナノ構造体が多様な3次元立体構造および形状に制御できることを確認した。
【0067】
実施例2:線状無機配位高分子、金属錯化合物(Zn−oxamate)、および金属ナノ構造体の製造
Oxamic acid(0.089g、1mmol)をエチレングリコール(15mL)に分散させた後、Zinc sulfate heptahydrate(0.287g、1mmol)を加えて、以降、Triethylamine(280μL、2mmol)を添加した。常温で3時間反応させた後、遠心分離を利用して沈殿物を分離し、これをエタノールで3回洗った。
【0068】
これにより、実施例2の金属錯化合物を製造し、この金属錯化合物の構成元素および構造をFT−IRを通して分析および確認した。このようなFT−IR分析結果を図3Aに示した。図3AのFT−IR分析結果から、3415cm−1(N−H)、1630cm−1(−COO−)、1472cm−1(N−H)、849cm−1(C−C)、および490cm−1(Zn−OおよびZn−N)に相当するピークを確認し、この金属錯化合物が化学式2の繰り返し単位構造を有することを確認した。
【0069】
そして、実施例2の金属錯化合物の構造を電子顕微鏡写真で分析して、図3Bに示した。図3Bを参照すれば、特定の立体構造を有する金属ナノ構造体の形態に形成されることが確認され、図1と比較して、前記金属ナノ構造体が多様な3次元立体構造および形状に制御できることを確認した。
【0070】
重合例:ポリプロピレンカーボネート樹脂の製造
まず、glove box内で、高圧反応器内に0.0182gの触媒(実施例1または2)と7.96gのジクロロメタン(methylene chloride)を入れた後、10.8gの酸化プロピレン(propylene oxide)を入れた。その後、反応器内に二酸化炭素を用いて20barに加圧した。重合反応は65℃で18時間進行した。反応終了後、未反応の二酸化炭素と酸化プロピレンは、溶媒のジクロロメタンと共に除去された。製造されたポリプロピレンカーボネートの量を知るために、残っている固体を完全乾燥後、定量した。このような重合結果による触媒の活性および収率を下記表1にまとめて示した。
【0071】
【表1】
【0072】
前記表1を参照すれば、実施例の金属錯化合物および金属ナノ構造体は、ポリプロピレンカーボネート樹脂の製造のための重合反応で、重合活性を示し、触媒として適切に使用できることが確認された。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B