特許第6445303号(P6445303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445303
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】生体電位計測装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0488 20060101AFI20181217BHJP
   A61B 5/0408 20060101ALI20181217BHJP
   A61B 5/0478 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   A61B5/04 330
   A61B5/04 300M
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-218003(P2014-218003)
(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公開番号】特開2016-83187(P2016-83187A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】江口 佳那
(72)【発明者】
【氏名】新島 有信
(72)【発明者】
【氏名】角田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】水野 理
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−000223(JP,A)
【文献】 実開昭58−112378(JP,U)
【文献】 特開2011−092274(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/144866(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/016547(WO,A1)
【文献】 稲見康司,睡眠時ミオクローヌス症候群にみられる下肢不随意運動に関する終夜睡眠ポリグラフィ的研究−脳血管障害後遺症による片麻痺患者と健康老年者との比較−,愛媛医学,1990年,第9巻、第1号,第115−139頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/04−5/0492
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測者に装着して生体電位を計測する少なくとも一方が開口している筒状の生体電位計測手段と、解析手段とを備える生体電位計測装置であって、
前記生体電位計測手段は、
当該生体電位計測手段を前記被計測者に固定する固定部と、
生体電位を計測する複数の計測部と、を有し、
前記解析手段は、前記複数の計測部それぞれで計測した前記生体電位の中から前記生体電位の特徴に応じて前記生体電位を計測対象として選択する
ことを特徴とする生体電位計測装置。
【請求項2】
前記生体電位計測手段は生体電位として表面筋電を計測し、
前記解析手段は、前記生体電位のうち平均振幅が最大の生体電位を計測対象として選択することを特徴とする請求項1に記載の生体電位計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
病気の発見や診断には生体情報を取得して解析することが非常に有用である。既存の生体情報を計測する装置として、筒状のカフ内に入れる空気量を調整することで適切な血圧計測が可能な血圧測定装置が考案されている(非特許文献1)。
【0003】
生体情報のひとつに表面筋電がある。表面筋電は、筋肉運動を伴う種々の病気判別に有効であることが知られている。表面筋電を計測するためには、計測対象の筋肉の筋腹付近に適切に計測電極を取り付ける必要がある。医師や看護師など医学的知見を有するものが筋腹に計測電極を設置し、筋電計(EMG)により表面筋電を計測していた。図4に、従来の表面筋電を測定する様子を示す。
【0004】
表面筋電の計測中は、計測電極を計測対象の筋肉の筋腹付近に設置し続けることが重要である。振戦とミオクローヌスなど、短時間の計測のみでは判別を行うことが難しい場合には、睡眠中など比較的長時間にわたる連続的な計測が診断に役立つことが知られている(非特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】中川原実、山越憲一、「鬱血を軽減する容積補償法指動脈圧計測用カフユニットの開発」、医用電子と生体工学、一般社団法人日本生体医工学会、2000年12月、第38巻、第4号、p.283−290
【非特許文献2】大澤美貴雄、「表面筋電図の臨床応用」、東京女子医科大学雜誌、東京女子医科大学学会、1989年6月、第59巻、第6号、p.499−513
【非特許文献3】稲見康司、「睡眠時ミオクローヌス症候群にみられる下肢不随意運動に関する終夜睡眠ポリグラフィ的研究−脳血管障害後遺症による片麻痺患者と健康老年者との比較−」、愛媛医学、愛媛医学会、1990年3月、第9巻、第1号、p.115−139
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、医学的知見を持たない者が計測対象の筋肉の筋腹を探し当てることが困難な場合があり、その場合、被計測者が自ら計測電極を適切な位置に設置できないという問題があった。表面筋電以外の生体情報を計測するときも同様の問題が考えられる。
【0007】
また、従来の機器では、大きな体動には弱く、寝返りの際などに計測電極が外れてしまうという問題があった。長時間にわたる生体情報の計測時には計測電極をメディカルテープなどで固定する必要があり、被計測者への侵襲性が高いことが問題となる。
【0008】
さらに、計測対象の筋肉の大きさや筋腹の位置は被計測者の体格によって異なる。特に、広範にわたる筋肉を計測対象とする場合には、体格差による筋腹の位置が大きく異なる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、被計測者の体格を問わず、医学的知見を持たなくても容易に生体情報計測を行えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る生体電位計測装置は、被計測者に装着して生体電位を計測する少なくとも一方が開口している筒状の生体電位計測手段と、解析手段とを備える生体電位計測装置であって、前記生体電位計測手段は、当該生体電位計測手段を前記被計測者に固定する固定部と、生体電位を計測する複数の計測部と、を有し、前記解析手段は、前記複数の計測部それぞれで計測した前記生体電位の中から前記生体電位の特徴に応じて前記生体電位を計測対象として選択することを特徴とする。
【0011】
上記生体電位計測装置において、前記生体電位計測手段は生体電位として表面筋電を計測し、前記解析手段は、前記生体電位のうち平均振幅が最大の生体電位を計測対象として選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被計測者の体格を問わず、医学的知見を持たなくても容易に生体情報計測を行えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態における生体電位計測装置の構成を示す図である。
図2】上記生体電位計測装置の表面筋電計測部の構成を示す図である。
図3】本実施の形態における別の生体電位計測装置の構成を示す図である。
図4】従来の表面筋電を測定する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態における生体電位計測装置の構成を示す図である。同図では、前脛骨筋の表面筋電を計測する生体電位計測装置1Aと長母趾伸筋の表面筋電を計測する生体電位計測装置1Bを図示している。生体電位計測装置1A,1Bは、例えば、サポーター、レッグウォーマー、アームカバー、あるいは腹巻きなどのような被計測者が装着可能な布製の筒状の装置であり、装置固定部11と複数の表面筋電計測部12A〜12Cを備える。
【0017】
装置固定部11は、生体電位計測装置1A,1Bの固定位置がずれない程度の力加減で被計測者を締め付けることで、生体電位計測装置1A,1Bを被計測者に固定する部分である。装置固定部11には、平ゴムやタック編み生地などの伸縮性の高い布・生地を用いる。あるいは、装置固定部11にマジックテープ(登録商標)やボタン・ホック・スナップを備えて生体電位計測装置1A,1Bを被計測者に固定してもよい。
【0018】
表面筋電計測部12A〜12Cは、それぞれ電極を備えて計測対象筋肉の表面筋電を計測する部分である。表面筋電計測部12A〜12Cは、計測位置がずれない程度の力加減で被計測者を締め付けて表面筋電計測部12を固定する。装置固定部11の締め付け力は表面筋電計測部12A〜12Cの締め付け力よりも強くする。
【0019】
図2に表面筋電計測部12の構成を示す。同図では、電極を設置した面を外側、つまり使用時の形態から裏返した状態で表面筋電計測部12を図示している。同図に示すように、表面筋電計測部12は、固定部121の一部に計測部122を備えた環状の部位である。
【0020】
固定部121は、表面筋電計測部12の固定位置がずれない程度の力加減で被計測者を締め付けて表面筋電計測部12を対象筋肉の表面筋電を計測する位置に固定する。固定部121には、平ゴムやタック編み生地などの伸縮性の高い布・生地を用いる。あるいは、固定部121にマジックテープ(登録商標)やボタン・ホック・スナップを備えて表面筋電計測部12を計測位置に固定してもよい。
【0021】
計測部122は、1組の皿形電極123を備える。皿形電極123は1.5〜2.0cm程度間隔をあけて設置する。皿形電極123の一方をグラウンドとして使用する。計測部122には非伸縮性の布・生地を用いる。固定部121が伸縮性を有するので、表面筋電計測部12全体として締め付け力を有し、皿形電極123のズレを防ぐことができる。なお、図1,2には図示していないが、皿形電極123は、皿形電極123から延ばした配線により表面筋電を計測・解析する解析装置に接続される。あるいは、皿形電極123が計測した表面筋電を無線により解析装置に送信してもよい。解析装置は、計測対象の筋肉を随意運動させたときの最大背屈、あるいは最大伸長時に計測された表面筋電の平均振幅をもとに、ローカットフィルタやローパスフィルタを作成して表面筋電の解析を行う。
【0022】
解析装置は、複数の表面筋電計測部12A〜12Cで計測された表面筋電のうち、随意運動時の表面筋電の平均振幅が最大のものを筋腹近傍に配置された表面筋電計測部12A〜12Cであるとして計測対象とする。
【0023】
また、表面筋電計測部12として、繊維素材を導電性高分子でコーティングした導電性繊維複合素材を用いてもよい(参考文献:高河原和彦、外4名、「業界の垣根を超えて結実したウェアラブルセンサ−hitoe技術」、NTT技術ジャーナル、日本電信電話株式会社、2014年5月、第26巻、第5号、p.42−p.44)。
【0024】
なお、本実施の形態の生体電位計測装置1A,1Bは、1組の皿形電極を備えた表面筋電計測部12A〜12Cを複数個設置したものであるが、表面筋電計測部12を計測対象の筋肉に合わせた大きさとして、表面筋電計測部12内に複数組の皿形電極を配置してもよい。
【0025】
装置固定部11が固定しにくい位置になる場合は、図3に示すように、装置固定部11の位置をくるぶしの下にするとともに、装置固定部11と表面筋電計測部12Bの間を布13などで繋げてもよい。
【0026】
本実施の形態では、生体電位計測装置1A,1Bを布製の筒状としたが、シャツの袖、胴まわりに生体電位計測装置1A,1Bを組み込むなど、計測部分に応じた形態を取ってもよい。例えば、靴下や手袋など、片側に閉口部をもつ筒状のものの一部に組み込んでも良い。また、計測対象の筋肉が膝や肘などの関節付近に位置する場合は、生体電位計測装置1A,1Bが関節部分をカバーしてもよい。この場合、関節の曲げ伸ばしによる影響を低減するために、関節部分のみを通常の生地を用いても良い。
【0027】
次に、本実施の形態における生体電位計測装置を睡眠時における下肢ミオクローヌス検出に適用する例について説明する。
【0028】
下肢ミオクローヌスは、膝下において発生する不随意運動を特徴とする。睡眠時における下肢ミオクローヌス検出は、周期性四肢運動障害など、睡眠障害を引き起こす疾病の診断に不可欠である。下肢ミオクローヌス検出の計測対象となる主な筋肉としては前脛骨筋や長母趾伸筋が挙げられる。前脛骨筋は広範にわたる筋肉であり、前脛骨筋の大きさや筋腹の位置は、性別、身長、膝下の長さによって異なる。以下、図1の生体電位計測装置1Aを用いて、前脛骨筋の表面筋電を計測対象とする例について説明する。
【0029】
前脛骨筋の表面筋電を測定するための生体電位計測装置1Aは、生体電位計測装置1Aを被計測者が装着したときに膝裏から下に複数組の皿形電極123が被計測者に接するように、所定の間隔を空けて配置された複数組の皿形電極123を備えている。図1の生体電位計測装置1Aでは、3組の皿形電極123(表面筋電計測部12A〜12C)を約3cm間隔で配置した。被計測者の身長が150cm前後の場合には膝に近い側の皿形電極123が筋腹に近くなり、被計測者の身長が170cm前後の場合には足首に近い側の皿形電極123が筋腹に近くなると推測される。後述の参考文献の身長推定計算式によれば、身長150〜185cmのバラつきに対して膝下高は約40〜60cmとなる(参考文献:“[2][身長][length]”、[online]、ニュートリー株式会社、[平成26年9月24日検索]、インターネット〈URL:http://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch1-5/keyword2/〉)。前脛骨筋の筋腹はふくらはぎよりやや下に位置するため、ふくらはぎのやや下に2組以上複数組の皿形電極123を配置する。これにより,いずれかの皿形電極123が筋腹近くに位置すると推測される。
【0030】
覚醒時、生体電位計測装置1Aを装着後、随意的に足関節を最大に背屈させて各表面筋電計測部12A〜12Cで表面筋電を計測し、同一期間における平均振幅が大きい表面筋電計測部12A〜12Cを解析対象として選択する。
【0031】
下肢ミオクローヌスの判定方法としては、非特許文献2に記載されているように、持続時間が100msec以下の短い群化放電が検出されたときに下肢ミオクローヌスとして判定する。
【0032】
あるいは、非特許文献3に記載されているように、持続時間が0.5〜5秒間、振幅が覚醒時に随意的に足関節を最大に背屈させたときの筋放電の1/2以上、各筋放電間の間隔が5〜120秒の条件を満たす筋放電が検出されたときにミオクローヌスとして判定する。また、一夜の睡眠中において左右いずれかの下肢にこのミオクローヌスが40回以上出現した場合は、周期性四肢運動障害のおそれがあると判定できる。
【0033】
さらに、非特許文献3に記載されているように、上記の前脛骨筋の表面筋電の計測に加えて、くるぶしの真上付近に筋腹が位置する長母趾伸筋の表面筋電の計測も同時に行い、拮抗筋である前脛骨筋と長母趾伸筋における同期性の単放電が検出されたときにミオクローヌスとして判定する。長母趾伸筋の表面筋電の計測には、図1の生体電位計測装置1Bを用いる。
【0034】
上記では、表面筋電の測定について説明したが、各部位をそれぞれ適したものとすることで、本発明は心電、胃電位、腸電位などの生体情報の計測にも同様に適用可能である。腸電位については、平時の生活の中での長時間に渡る計測を実現でき、過敏性腸症候群などの診断参考情報を取得可能となる(参考文献:岡久稔也、「過敏性腸症候群の診断と最適治療のための非侵襲的大腸小腸運動機能評価システムの開発」、科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書、2012年5月20日)。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態によれば、生体電位計測装置1A,1Bが被計測者に生体電位計測装置1A,1Bを固定する装置固定部11と、計測対象の筋肉の分布に基づいた複数の表面筋電計測部12A〜12Cを備えることにより、被計測者は、体格を問わず、事前に計測対象の筋肉の筋腹位置を確認する必要がなく、医学的知見を持たないものであっても適切に表面筋電を計測することが可能となる。
【0036】
本実施の形態によれば、生体電位計測装置1A,1Bを布製の筒状として、装置固定部11と表面筋電計測部12A〜12Cに伸縮性のある布・生地を用いることで、被計測者は生体電位計測装置1A,1Bを容易に取り付けることが可能で、体動による計測位置のズレを防止し、睡眠中などの長時間にわたる表面筋電の計測が可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1A,1B…生体電位計測装置
11…装置固定部
12,12A〜12C…表面筋電計測部
121…固定部
122…計測部
123…皿形電極
13…布
図1
図2
図3
図4