特許第6445691号(P6445691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

特許6445691光学フィルムコーティング用組成物及びこれを含む光学フィルム
<>
  • 特許6445691-光学フィルムコーティング用組成物及びこれを含む光学フィルム 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445691
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】光学フィルムコーティング用組成物及びこれを含む光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20181217BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   G02B5/02 B
   B32B7/02 103
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-519489(P2017-519489)
(86)(22)【出願日】2015年10月14日
(65)【公表番号】特表2017-531830(P2017-531830A)
(43)【公表日】2017年10月26日
(86)【国際出願番号】KR2015010850
(87)【国際公開番号】WO2016060476
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2017年4月11日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0139990
(32)【優先日】2014年10月16日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】セ−ジュン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ホン−クァン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−スン・キム
【審査官】 井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−506337(JP,A)
【文献】 特開2011−186437(JP,A)
【文献】 特開2008−262187(JP,A)
【文献】 特開2014−102377(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0201583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10−1/18
G02B 5/00−5/136
G02B 5/30
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化型アクリレート樹脂、
無機ナノ粒子及びカーボンブラックを含む粒子、及び
光開始剤を含み、
前記無機ナノ粒子と前記カーボンブラックの重量比が5.5:1〜9:1であり、
前記紫外線硬化型アクリレート樹脂100重量部に対し、前記無機ナノ粒子及びカーボンブラックを含む粒子を10重量部以上で含み、
前記無機ナノ粒子は、BaTiO、PbZrO、PbTiO、ZnO、ZrO、HfO、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、Y、TiO、SiO、SiC及びこれらの組み合わせからなる群より選択された一つ以上を含み、
光学フィルムコーティング用組成物が硬化して形成される光学フィルムの光透過率が90%〜98%であり、屈折率が1.4〜1.5である、光学フィルムコーティング用組成物。
【請求項2】
前記無機ナノ粒子の平均粒径は10nm〜100nmである、請求項1に記載の光学フィルムコーティング用組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラックの粒子直径は5μm〜25μmである、請求項1に記載の光学フィルムコーティング用組成物。
【請求項4】
前記無機ナノ粒子と前記カーボンブラックの重量比は85:15〜90:10である、請求項1に記載の光学フィルムコーティング用組成物。
【請求項5】
前記光開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、α,α−メトキシ−α−ヒドロキシアセトフェノン、2−ベンゾイル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォニル)フェニル]−1−ブタノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン及びこれらの組み合わせからなる群より選択された一つ以上を含む、請求項1に記載の光学フィルムコーティング用組成物。
【請求項6】
前記紫外線硬化型アクリレート樹脂100重量部に対し、前記無機ナノ粒子及びカーボンブラックを含む粒子10〜30重量部、前記光開始剤1〜5重量部を含む、請求項1に記載の光学フィルムコーティング用組成物。
【請求項7】
接着層、
前記接着層の上部に形成された基材層、及び
前記基材層の上部に形成されたコーティング層を含み、
前記コーティング層は、請求項1〜のいずれか1項に記載の光学フィルムコーティング用組成物が硬化して形成される光学フィルム。
【請求項8】
前記接着層は、ウレタンバインダー、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリルバインダー及びこれらの組み合わせからなる群より選択された一つ以上を含む、請求項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレート(PET;Polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN;Polyethylene naphthalate)、ポリカーボネート(PC;Polycarbonate)、環状オレフィン重合体または共重合体(Cyclic olefin polymer or copolymer)、またはメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI;Methylene diphenyl diisocyanate)材質である、請求項に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記コーティング層の厚さは0.5μm〜1μmである、請求項に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記コーティング層は色差Lが95〜99である、請求項に記載の光学フィルム。
【請求項12】
前記コーティング層は色差aが−0.16〜−0.01である、請求項に記載の光学フィルム。
【請求項13】
前記コーティング層は色差bが0.5〜1である、請求項に記載の光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムコーティング用組成物及びこれを含む光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PDA移動通信端末または車両用ナビゲーション等のような電子機器が大きな市場を形成している。ディスプレイ用光学フィルムは、前記電子機器においてユーザの視認性に直接的な影響を及ぼすため、フィルムの光学性能が重要な要素となる。
【0003】
一般に、OLEDまたはタッチスクリーンパネル等に用いられる光学フィルムは視認性等の光学特性を確保するために偏光フィルムを用いており、これは、外部光による視認性の改善には効果的である。しかし、ディスプレイ画面における輝度を減少させる側面で補完する必要性があり、それと共に、優れた光学特性を確保するための研究が活発に行われている現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、紫外線硬化型アクリレート樹脂、無機ナノ粒子及びカーボンブラックを含む混合粒子、及び光開始剤を含む光学フィルムコーティング用組成物等を提供しようとする。
【0005】
また、本発明が解決しようとする技術的課題は以上に言及した課題に制限されず、言及していないまた他の課題は下記の記載によって当業者に明らかに理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、紫外線硬化型アクリレート樹脂、無機ナノ粒子及びカーボンブラックを含む混合粒子、及び光開始剤を含む光学フィルムコーティング用組成物を提供する。
【0007】
前記無機ナノ粒子はBaTiO、PbZrO、PbTiO、ZnO、ZrO、HfO、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、Y、TiO、SiO、SiC及びこれらの組み合わせからなる群より選択された一つ以上を含む光学フィルムコーティング用組成物を提供することができる。
【0008】
前記無機ナノ粒子の平均粒径が10nm〜100nmの光学フィルムコーティング用組成物を提供することができる。
【0009】
前記カーボンブラックの粒子直径が5μm〜25μmの光学フィルムコーティング用組成物を提供することができる。
【0010】
前記無機ナノ粒子と前記カーボンブラックの重量比が85:15〜90:10の光学フィルムコーティング用組成物を提供することができる。
【0011】
前記光開始剤はベンゾインメチルエーテル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、α,α−メトキシ−α−ヒドロキシアセトフェノン、2−ベンゾイル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォニル)フェニル]−1−ブタノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン及びこれらの組み合わせからなる群より選択された一つ以上を含む光学フィルムコーティング用組成物を提供することができる。
【0012】
前記紫外線硬化型アクリレート樹脂100重量部に対し、前記混合粒子10〜30重量部、前記光開始剤1〜5重量部を含む光学フィルムコーティング用組成物を提供することができる。
【0013】
本発明は、接着層、前記接着層の上部に形成された基材層、及び前記基材層の上部に形成されたコーティング層を含み、前記コーティング層は光学フィルムコーティング用組成物が硬化して形成された光学フィルムを提供する。
【0014】
前記接着層はウレタンバインダー、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリルバインダー及びこれらの組み合わせからなる群より選択された一つ以上を含む光学フィルムを提供することができる。
【0015】
前記基材層はポリエチレンテレフタレート(PET;Polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN;Polyethylene naphthalate)、ポリカーボネート(PC;Polycarbonate)、環状オレフィン重合体または共重合体(Cyclic olefin polymer or copolymer)、またはメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI;Methylene diphenyl diisocyanate)材質である光学フィルムを提供することができる。
【0016】
前記コーティング層の厚さが0.5μm〜1μmの光学フィルムを提供することができる。
【0017】
前記コーティング層は色差Lが95〜99の光学フィルムを提供することができる。
【0018】
前記コーティング層は色差aが−0.16〜−0.01の光学フィルムを提供することができる。
【0019】
前記コーティング層は色差bが0.5〜1の光学フィルムを提供することができる。
【0020】
前記コーティング層は光透過率が90%〜98%の光学フィルムを提供することができる。
【0021】
前記コーティング層は屈折率が1.4〜1.5の光学フィルムを提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る光学フィルムコーティング用組成物は、無機ナノ粒子及びカーボンブラックからなる混合粒子を含むことによって、前記無機ナノ粒子及びカーボンブラックの重量比に応じて透過率を調節し、コーティング層の厚さを0.5μm〜1μmに維持することによって色差を調節することができる。
【0023】
前記光学フィルムコーティング用組成物を含む光学フィルムは、OLEDまたはタッチパネルに適用されることによって、優れた視認性だけでなく、高輝度等、優れた光学特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例による光学フィルムの断面を概略的に示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者らは、ディスプレイ用光学フィルムに対する研究の最中、無機ナノ粒子とカーボンブラックの重量比を調節することによって光学フィルムの透過率を調節し、コーティング層の厚さ別に色差を調節できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0026】
以下、添付図面を参考にして本発明の実施例について本発明が属する技術分野で通常の知識を有した者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は色々な互いに異なる形態に実現できるものであって、ここに説明する実施例に限定されるものではない。
【0027】
本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書の全体にわたり、同一または類似した構成要素に対しては同一の参照符号を付ける。
【0028】
図面において複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。また、図面において、説明の便宜上、一部の層及び領域の厚さを誇張して示した。
【0029】
以下において、基材の「上部(または下部)」または基材の「上(または下)」に任意の構成が形成されるということは、任意の構成が前記基材の上面(または下面)に接して形成されることを意味するだけでなく、前記基材と基材上に(または下に)形成された任意の構成との間に他の構成を含まないことに限定するものではない。
【0030】
光学フィルムコーティング用組成物
本発明は、紫外線硬化型アクリレート樹脂、無機ナノ粒子及びカーボンブラックを含む混合粒子、及び光開始剤を含む光学フィルムコーティング用組成物を提供する。
【0031】
前記光学フィルムコーティング用組成物はOLEDまたはタッチスクリーンパネル等の用途として用いられることができ、この時、輝度を増大させ、視認性に優れた特性を有しなければならない。このために、前記光学フィルムコーティング用組成物は、特定種類の無機ナノ粒子及び特定種類のカーボンブラックを特定含量比で有する混合粒子を含むことによって、透過率及び色差を調節して高輝度及び優れた視認性等の光学特性を実現することができる。
【0032】
先ず、本発明に係る光学フィルムコーティング用組成物は紫外線硬化型アクリレート樹脂を含み、これはコーティング層内部のナノ粒子をホールドするバインダー役割をするものであり、アクリレートモノマーまたはオリゴマーであってもよい。この時、前記アクリレートモノマーとしては光硬化可能な様々なアクリレートモノマーを用いることができ、例えば、1,2−エチレングリコールジアクリレート、1,12−ドデカンジオールアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペート(neopentylglycol adipate)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバル酸(hydroxyl puivalic acid)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(dicyclopentanyl)ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリルオキシエチルイソシアヌレート、アリル(allyl)化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレートまたは9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(fluorine)等、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタン(adamantane)ジ(メタ)アクリレートの2官能型アクリレート;より好ましくは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3官能型ウレタン(メタ)アクリレートまたはトリス(メタ)アクリルオキシエチルイソシアヌレート等の3官能型アクリレート;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレートまたはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型アクリレート;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型アクリレート;及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートまたはウレタン(メタ)アクリレート(例えば、イソシアネート単量体及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの反応物等の6官能型アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
この時、前記アクリレートオリゴマーとしては光硬化可能な様々なエポキシアクリレートオリゴマー、エステルアクリレートオリゴマー、カルド系アクリレートオリゴマー等を用いることができ、ウレタンアクリレートオリゴマーがより好ましい。
【0034】
前記ウレタンアクリレートオリゴマーはイソシアネート系モノマーとポリオールが重合反応して形成されたものであり、前記イソシアネート系化合物は脂肪族イソシアネート系化合物、芳香族イソシアネート系化合物及びこれらの組み合わせから選択された少なくとも1種以上を含み、前記ポリオールは(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル系化合物であってもよい。
【0035】
前記エポキシアクリレートは、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物及びこれらの組み合わせから選択された少なくとも1種以上を含むことができる。
【0036】
前記エステルアクリレートは、多価アルコールの多官能ポリエステルアクリレート系化合物を含むことができる。
【0037】
前記カルド系アクリレートは、カルド系化合物、二無水物化合物、ジオール化合物、ジアクリル酸及びこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくとも一つを反応させて光硬化可能なアクリレートが付与された化合物であってもよい。また、前記アクリレート樹脂は多官能アクリレート樹脂であることが好ましく、2官能〜6官能(2〜6個のアクリレート基を有する)アクリレート樹脂であることがより好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記モノマーまたはオリゴマーは、分子量が大きいほどUV硬化速度に優れるため、分子内のアクリル基のモル数を高くし、多官能数を増加させると、硬化速度を増加させることができる。
【0039】
次に、前記光学フィルムコーティング用組成物は無機ナノ粒子を含み、前記無機ナノ粒子はBaTiO、PbZrO、PbTiO、ZnO、ZrO、HfO、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、Y、TiO、SiO、SiC及びこれらの組み合わせからなる群より選択された一つ以上を含むことができ、より好ましくはSiO、TiO及びこれらの組み合わせを含む。
【0040】
前記無機ナノ粒子は平均粒径が10〜100nmであってもよい。前記範囲の粒子直径を維持することによって優れた光学特性を実現することができる。
【0041】
前記光学フィルムコーティング用組成物の混合粒子はカーボンブラックを含み、カーボンブラックは微細な炭素粉末であって、通常、粒子は球状であり、微結晶が表面に平衡に配列されて高剛性であり、細孔を有する。
【0042】
前記カーボンブラックの粒子直径は5〜25μmであってもよい。
【0043】
すなわち、前記無機粒子は前記範囲のナノ粒径を維持し、前記カーボンブラックは前記範囲のマイクロ粒径を維持することによって、前記混合粒子において前記カーボンブラック間の空いた空間に前記無機ナノ粒子が収集されて交互に配列されてコーティング層を形成する。このようなコーティング層は無機ナノ粒子の含量に応じて屈折率が変わり、このような屈折率が異なる層を光学フィルムにコーティングすることによって光干渉が容易な厚さの層を形成し、それによって色差を調節することができる。
【0044】
前記無機ナノ粒子と前記カーボンブラックの重量比は約85:15〜約90:10であってもよい。
【0045】
前記混合粒子において、前記無機ナノ粒子と前記カーボンブラックの重量比が前記範囲を外れる場合、例えば、約95:5の場合には無機ナノ粒子が過量添加されて色差調節が難しくなる恐れがあり、例えば、約60:40の場合にはカーボンブラックが過量添加されて光透過率が必要以上に低下する恐れがある。
【0046】
前記光開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、α,α−メトキシ−α−ヒドロキシアセトフェノン、2−ベンゾイル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォニル)フェニル]−1−ブタノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン及びこれらの組み合わせからなる群より選択された一つ以上を含むことができる。
【0047】
前記光学フィルムコーティング用組成物が光開始剤を含むことによって光の照射時に前記光硬化性単量体が硬化され、それにより、前記光学フィルムコーティング用組成物から硬化物を形成することができる。
【0048】
前記光学フィルムコーティング用組成物は、前記紫外線硬化型アクリレート樹脂100重量部に対し、前記混合粒子約10〜約30重量部、前記光開始剤約1〜約5重量部を含むことができる。
【0049】
前記混合粒子と前記光開始剤が前記範囲の重量部で含まれることによって、前記光学フィルムコーティング用組成物の光硬化効率が極大化され、製造費用及び光透過率及び色差等の光学特性の確保の側面でさらに有利な効果を実現することができる。
【0050】
前記光学フィルムコーティング用組成物は溶剤を含むことができる。前記溶剤はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、トルエン(toluene)、エチルアセテート(ethyl acetate)、ブチルアセテート(butyl acetate)、アセトン(acetone)、メタノール(methanol)、ブチルカルビトール(butyl carbitol)、ブチルカルビトールアセテート(butyl carbitol acetate)、ブチルセロソルブ(butyl cellosolve)、ブチルセロソルブアセテート(butyl cellosolve acetate)及びテルピネオール(terpineol)からなる群より選択された一つ以上であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0051】
光学フィルム
また、本発明は、接着層、前記接着層の上部に形成された基材層、及び前記基材層の上部に形成されたコーティング層を含み、前記コーティング層は前記光学フィルムコーティング用組成物が硬化して形成された光学フィルムを提供する。
【0052】
図1は、本発明に係る光学フィルムの断面を簡略に示すものである。
【0053】
図1に示すように、本発明に係る光学フィルム100は、接着層10、基材層20及びコーティング層30を含んでなる。
【0054】
前記接着層10は、ウレタンバインダー、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリルバインダー及びこれらの組み合わせからなる群より選択された一つ以上を含むことができる。
【0055】
前記基材層20は、ガラス;透明フィルム;またはポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリビニル樹脂等の重合体フィルムであってもよい。前記基材層20は、ポリエチレンテレフタレート(PET;Polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN;Polyethylene naphthalate)、ポリカーボネート(PC;Polycarbonate)、環状オレフィン重合体または共重合体(Cyclic olefin polymer or copolymer)、またはメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI;Methylene diphenyl diisocyanate)材質であることが、加工性、熱安定性及び透明性の側面で最も好ましい。また、前記基材層20の表面は当業者に周知の表面処理、例えば、コロナ、プラズマ等の表面処理により改質して後続工程時に付着性、表面張力等を調節することも可能である。
【0056】
前記基材層20に形成されるプライマ層をさらに含むことができる。前記プライマ層は、基材層20と隣接した層との間の温度伝達を制御し、基材層20と隣接した層との接着性を向上させることができる。このようなプライマ層に好適な素材としては、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群より選択された一つ以上を用いることができる。
【0057】
前記コーティング層30の厚さは約0.5〜約1μmであってもよい。前記コーティング層30の厚さが約0.5μm未満の場合には、形成に応じたコーティング層30の厚さ均一性を確保し難いという問題があり、約1μm超過の場合には、塗膜形成のための硬化性が低下し、硬化後コーティング層30のクラック(crack)に対してぜい弱な問題があるため、前記範囲で優れた光学特性を実現することができる。
【0058】
国際照明委員会(CIE)で制定した測色システムにより前記硬化物に白色光(D65)を照射する場合、透過する光による色差は、CIE 10°標準観測者(CIE 1964)を基準にする時、色空間で二つの色間の距離が人に見える色差の程度と一致するように定義したCIE L、a、bで表現されることができる。この時、前記Lは明るさ、前記aはRed−Green、前記bはYellow−blueの間の値を示し、約380nm〜約780nmの波長領域で前記硬化物に白色光源(D65)を照射した場合に透過して光に対して導き出された値を色差a及び色差bで示すことができる。
【0059】
前記コーティング層30は色差bが約0.5〜約1であってもよく、具体的には約0.6〜約0.8であってもよい。
【0060】
前記色差bは粘着剤の高温信頼性に影響を多く与える要素であって、前記色差はコーティング層30の厚さに応じて調節し、例えば、コーティング層30の厚さが約0.5μmである場合、色差bは約0.86であり、コーティング層30の厚さが約0.8μmである場合、色差bは約0.84であってもよい。コーティング層30の厚さに応じて色差を調節することによって、既存の染料を介した色差調節に比べて、光学的干渉を除去し、高温においても優れた視認性を確保するという効果を実現することができる。
【0061】
一方、前記コーティング層30は色差aが約−0.16〜約−0.01であってもよい。前記硬化物の色差aが前記範囲を満たすことによって、前記色差a及びbが絶対値が0に近く、これをタッチパネル等に用いる時にモアレ現象を防止し、優れた視認性を確保することができる。
【0062】
前記コーティング層30は色差Lが約95〜約99であってもよい。前記硬化物の色差Lが前記範囲を満たすことによって、それをタッチパネル等に用いる時、外部光によるディスプレイの視認性の阻害を防止するという効果がある。
【0063】
前記コーティング層30は光透過率が約90〜約98%であってもよい。前記光学フィルムコーティング用組成物の混合粒子における前記無機ナノ粒子と前記カーボンブラックの重量比を約85:15〜約90:10に維持することによって、それを含むコーティング層30が約90〜約98%の光透過率を確保することができる。前記光透過率が約80%未満の場合には、前記コーティング層30が優れた透明性を実現し難く、例えば、OLEDまたはタッチパネルに用いられる場合に優れた光学特性を実現できない恐れがある。
【0064】
前記コーティング層30は屈折率が約1.4〜約1.5であってもよい。前記コーティング層30が前記範囲の屈折率を満たすことによって優れた視認性を実現することができ、前記基材層20の上部に位置することによって反射率が下がり、明暗比が向上するという長所を実現することができる。
【0065】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。但し、下記に記載された実施例は本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これらに本発明が制限されるものではない。
【0066】
<実施例及び比較例>
実施例1
紫外線硬化型アクリレート樹脂(UN−907、Negami社製)25重量部、無機ナノ粒子(Thrulya4110、JGCC&C社製)20.7重量部、カーボンブラック2.3重量部、光開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製)2重量部、及び溶剤(Methyl ethyl ketone、Propylene Glycol Methyl Ether、Dimethylformamide)50重量部を含む光学フィルムコーティング用組成物を製造した。
【0067】
前記組成物をバーコーティング方式でポリエチレンテレフタレート基材層(U48、Toray)の上部に0.5μm厚さでコーティングして光学フィルムを製造した。
【0068】
実施例2
無機ナノ粒子19.5重量部及びカーボンブラック3.5重量部を含むことを除いては、実施例1と同様の方法により光学フィルムを製造した。
【0069】
比較例1
無機ナノ粒子16重量部及びカーボンブラック7重量部を含むことを除いては、実施例1と同様の方法により光学フィルムを製造した。
【0070】
比較例2
コーティング層の厚さが3μmであることを除いては、実施例1と同様の方法により光学フィルムを製造した。
【0071】
実験例
1)光透過率の測定
20℃〜30℃の常温条件でUV−Visスペクトロメーターを使って光透過率を測定した。
【0072】
2)屈折率の測定
20℃〜30℃の常温条件でプリズムカプラ(SPA−4000)を使って屈折率を測定した。
【0073】
3)色差の測定
20℃〜30℃の常温条件でCM−5(Konica Minolta社製、色差計)を使って色差を測定した。
【0074】
【表1】
【0075】
前記表1に示すように、実施例1〜2の光学フィルムは、無機ナノ粒子とカーボンブラックを約5.5:1〜9:1の重量比で含み、屈折率が1.4〜1.5であり、光透過率が95%以上であって、優れた視認性を実現することが分かる。それと共に、前記光学フィルムは、色差0〜1のb、比較的に0に近い色差a及び約98以上の色差Lを実現しており、段差吸収性能に優れ、視認性及び透明性が向上した効果を実現することができる。
【0076】
前記比較例1は、無機ナノ粒子とカーボンブラックの重量比が本発明とは異なって約2.3対1のものであって、光透過率が79.75%として低く、屈折率が1.5を超過する。また、色差Lが82.51として実施例1〜2に比べて低く、前記実施例1〜2の場合に、さらに優れた光学特性を実現することが分かる。
【0077】
前記比較例2は、コーティング層の厚さが3μmの光学フィルムであって、色差bとaの絶対値が顕著に0を外れており、本発明に係る光学フィルムに比べて色差調節が円滑になされず、視認性が良くないことが分かる。
【符号の説明】
【0078】
100 ・・・光学フィルム
10 ・・・接着層
20 ・・・基材層
30 ・・・コーティング層
図1