特許第6445712号(P6445712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445712
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】リチウム空気電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20181217BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20181217BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20181217BHJP
   H01M 4/96 20060101ALI20181217BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20181217BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   H01M12/08 K
   H01M12/06 F
   H01M4/90 X
   H01M4/96 M
   H01M4/88 K
   H01M2/16 P
   H01M2/16 F
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-544621(P2017-544621)
(86)(22)【出願日】2016年8月12日
(65)【公表番号】特表2018-507520(P2018-507520A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(86)【国際出願番号】KR2016008937
(87)【国際公開番号】WO2017030332
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2017年8月22日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0115017
(32)【優先日】2015年8月14日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0103096
(32)【優先日】2016年8月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウンキョン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】クォンナム・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンヒョン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・キョン・ヤン
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−188389(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104689811(CN,A)
【文献】 特表2013−516037(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104310388(CN,A)
【文献】 特開2012−182050(JP,A)
【文献】 特開2013−073765(JP,A)
【文献】 特表2007−529404(JP,A)
【文献】 特表2016−531824(JP,A)
【文献】 特開2014−192076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/06−12/08、2/16、4/88−4/96
C01B 32/182
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を正極活物質として用い、カーボンブラック一次粒子及びグラフェンが固まってなるカーボンブラック二次粒子が積層されてなり、前記カーボンブラック二次粒子間に形成された100nm超過の気孔を含む正極;
前記正極と対向するように配置される負極;及び
前記正極と負極と間に配置される分離膜;
を含むリチウム空気電池であって、
前記カーボンブラック二次粒子は、前記カーボンブラック一次粒子及び前記グラフェンを250:100〜1250:100の重量比で含む、リチウム空気電池
【請求項2】
前記カーボンブラック一次粒子は、1nm〜500nmの球状であり、
前記グラフェンは、0.1μm〜50μmの大きさ、0.34nm〜20nm厚さの板状であり、
前記カーボンブラック二次粒子は、500nm〜10μmの球状のものである、請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項3】
前記カーボンブラック二次粒子は、前記板状のグラフェンを前記球状のカーボンブラック一次粒子が囲む構造であり、
前記カーボンブラック二次粒子の表面では、前記球状のカーボンブラック一次粒子が占める面積が、前記板状のグラフェンが占める面積よりさらに広いものである、請求項2に記載のリチウム空気電池。
【請求項4】
前記カーボンブラック二次粒子は、前記カーボンブラック一次粒子及び前記グラフェンを250:100〜625:100の重量比で含む、請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項5】
前記カーボンブラック二次粒子は、前記カーボンブラック一次粒子及びグラフェンを溶媒に分散させた後、噴霧乾燥方法を利用して製造されるものである、請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項6】
前記カーボンブラック二次粒子は、前記カーボンブラック一次粒子と前記グラフェンと間に形成された20〜100nmの気孔、前記カーボンブラック一次粒子内部に形成された10nm未満の気孔及び前記グラフェン内部に形成された10nm未満の気孔を含むものである、請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項7】
前記カーボンブラックは、ケッチェンブラック(ketjen black)、スーパーP(super p)、テンカブラック(denka black)、アセチレンブラック(acetylene black)、ファーネスブラック(furnace black)及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つである、請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項8】
前記グラフェンは、グラフェンプレート(GNP)、グラフェンオキシド(GO)、還元されたグラフェンオキシド(rGO)及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つである、請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項9】
前記正極は、水銀細孔測定法を介して測定された平均気孔径が、100nm超過〜10μm以下のものである、請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項10】
前記正極は、前記カーボンブラック二次粒子が積層されたガス拡散層を更に含むものである、請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項11】
前記ガス拡散層は、炭素布、カーボン紙、炭素フェルト、酸素選択的透過性メンブレイン及びこれらの混合で構成される群から選ばれるいずれか一つの活物質を含むものである、請求項10に記載のリチウム空気電池。
【請求項12】
前記分離膜は、ポリエチレン分離膜、ポリプロピレン分離膜及びガラス繊維分離膜からなる群から選ばれるいずれか一つを含む、請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項13】
前記リチウム空気電池は、水系電解質、非水系電解質、有機固体電解質、無機固体電解質及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つの電解質を更に含むものである、請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項14】
カーボンブラック一次粒子を溶媒に分散して、第1分散液を製造する工程;
グラフェンを溶媒に分散して、第2分散液を製造する工程;
前記第1分散液と前記第2分散液とを混合して、スラリーを製造する工程;
前記スラリーを噴霧乾燥して、カーボンブラック二次粒子を製造する工程;及び
前記カーボンブラック二次粒子をガス拡散層に積層して、正極を製造する工程;を含むリチウム空気電池の製造方法であって、
前記カーボンブラック二次粒子が前記カーボンブラック一次粒子及び前記グラフェンを250:100〜1250:100の重量比で含むように前記スラリーが製造される、リチウム空気電池の製造方法
【請求項15】
前記噴霧乾燥は、前記スラリーをノズルで噴霧して、10〜500μm大きさの液滴を形成し、前記液滴の溶媒を乾燥するものである、請求項14に記載のリチウム空気電池の製造方法。
【請求項16】
前記カーボンブラック二次粒子は、前記ガス拡散層に0.1〜10mg/cmで塗布されるものである請求項14に記載のリチウム空気電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム空気電池及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、放電テスト時放電容量が増加し、過電圧が減少し、簡単な方法を利用して製造することができるリチウム空気電池及びその製造方法に関するものである。
【0002】
[関連出願との相互引用]
本願は、韓国特許出願第10−2015−0115017号(出願日:2015年8月14日)及び韓国特許出願第10−2016−0103096号(出願日:2016年8月12日)の先権利益を主張するものであり、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として援用される。
【背景技術】
【0003】
リチウム空気電池は、重量エネルギー密度が約500Wh/kg以上と現在のリチウムイオン電池(200Wh/kg)や次世代リチウムイオン電池(300Wh/kg)に比べて格段に高いことから、1回充填長距離走行が可能な電気車用電池として多くの研究が行われている。
【0004】
リチウム空気電池において、正極は炭素の種類に応じて放電容量が変わる。これは放電生成物であるLiの形状と量が孔隙の構造と炭素の構造に応じて変わるからである。現在まで知らされたカーボンブラックの中では、ケッチェンブラック(ketjen black)が最も多い容量を実現する炭素電極として知られている。しかし、ケッチェンブラックを使用することだけでは、充填時過電圧が大きく、サイクル寿命が短いというリチウム空気電池の問題を完全に解決することはできない。
【0005】
従って、正極の放電容量を増大し、充填及び放電時に過電圧を低くするための研究は、リチウム空気電池の容量を増大し、サイクル寿命を延ばすための方法の一環として正極研究の重要テーマの一つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の前記のような問題を解決するためのものであり、放電テスト時放電容量が増加し、過電圧が減少し、簡単な方法を利用して製造することができるリチウム空気電池を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、前記リチウム空気電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例によれば、酸素を正極活物質として用い、カーボンブラック一次粒子及びグラフェンからなるカーボンブラック二次粒子が積層されてなり、前記カーボンブラック二次粒子間に形成された100nm超過の気孔を含む正極;前記正極と対向するように配置される負極;及び前記正極と負極と間に配置される分離膜;を含むリチウム空気電池を提供する。
【0009】
前記カーボンブラック一次粒子は、1nm〜500nmの球状であってもよい。
【0010】
前記グラフェンは、0.1μm〜50μmの大きさ、0.34nm〜20nm厚さの板状であってもよい。
【0011】
前記カーボンブラック二次粒子は、500nm〜10μmの球状であってもよい。
【0012】
前記カーボンブラック二次粒子は、前記板状のグラフェンを前記球状のカーボンブラック一次粒子が囲む構造であってもよい。
【0013】
前記カーボンブラック二次粒子の表面では、前記球状のカーボンブラック一次粒子が占める面積が、前記板状のグラフェンが占める面積よりさらに広くてもよい。
【0014】
前記カーボンブラック二次粒子は、前記カーボンブラック一次粒子を1〜99重量%及び前記グラフェンを1〜99重量%で含んでもよい。
【0015】
前記カーボンブラック二次粒子は、前記カーボンブラック一次粒子及びグラフェンを溶媒に分散させた後、噴霧乾燥(spray−drying)方法を利用して製造されてもよい。
【0016】
前記カーボンブラック二次粒子は、前記カーボンブラック一次粒子と前記グラフェンと間に形成された20〜100nmの気孔、前記カーボンブラック一次粒子内部に形成された10nm未満の気孔及び前記グラフェン内部に形成された10nm未満の気孔を含んでもよい。
【0017】
前記正極は、水銀細孔測定法を介して測定された平均気孔径が、100nm超過〜10μm以下であってもよい。
【0018】
前記カーボンブラックは、ケッチェンブラック(ketjen black)、スーパーP(super p)、テンカブラック(denka black)、アセチレンブラック(acetylene black)、ファーネスブラック(furnace black)及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つであってもよい。
【0019】
前記グラフェンは、グラフェンプレート(GNP)、グラフェンオキシド(GO)、還元されたグラフェンオキシド(rGO)及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つであってもよい。
【0020】
前記正極は、前記カーボンブラック二次粒子が積層されたガス拡散層を更に含んでもよい。
【0021】
前記ガス拡散層は、炭素布、カーボン紙、炭素フェルト、又は酸素選択的透過性メンブレインで構成される群から活物質を含んでもよい。
【0022】
前記負極は、リチウム金属、有機物又は無機化合物で処理されたリチウム金属複合体、リチウム化金属−カーボン複合体、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる一つであってもよい。
【0023】
前記分離膜は、ポリエチレン分離膜、ポリプロピレン分離膜及びガラス繊維分離膜からなる群から選ばれるいずれか一つを含んでもよい。
【0024】
前記リチウム空気電池は、水系電解質、非水系電解質、有機固体電解質、無機固体電解質及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つの電解質を更に含んでもよい。
【0025】
本発明の他の一実施例によると、カーボンブラック一次粒子を溶媒に分散して、第1分散液を製造する工程;グラフェンを溶媒に分散して、第2分散液を製造する工程;前記第1分散液と前記第2分散液とを混合して、スラリーを製造する工程;前記スラリーを噴霧乾燥(spray−drying)して、カーボンブラック二次粒子を製造する工程;及び前記カーボンブラック二次粒子をガス拡散層に積層して、正極を製造する工程;を含むリチウム空気電池の製造方法を提供する。
【0026】
前記噴霧乾燥は、前記スラリーをノズルで噴霧して、10〜500μm大きさの液滴(droplet)を形成し、前記液滴の溶媒を乾燥であってもよい。
【0027】
前記カーボンブラック二次粒子は、前記ガス拡散層に0.1〜10mg/cmで塗布されてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明のリチウム空気電池は、放電テスト時放電容量が増加し、過電圧が減少し、簡単な方法を利用して製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施例1で製造されたカーボンブラック二次粒子を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。
図2】本発明の実施例1で製造されたカーボンブラック二次粒子を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。
図3】本発明の実施例4で製造されたカーボンブラック二次粒子を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。
図4】本発明の実施例4で製造されたカーボンブラック二次粒子を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。
図5】本発明の実施例6で製造されたカーボンブラック二次粒子を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。
図6】本発明の実施例6で製造されたカーボンブラック二次粒子を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。
図7】本発明の実施例で製造したリチウム空気電池の放電容量を示すグラフである。
図8】本発明の実験例3で測定したリチウム空気電池のサイクル特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施例に係るリチウム空気電池は、酸素を正極活物質として用い、カーボンブラック一次粒子及びグラフェンからなるカーボンブラック二次粒子が積層されてなり、前記カーボンブラック二次粒子間に形成された100nm超過の気孔を含む正極;前記正極と対向するように配置される負極;及び前記正極と負極と間に配置される分離膜;を含む。
【0031】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0032】
本明細書で使用される用語「空気(air)」とは、大気空気に制限されなく、酸素を含む気体の組み合わせ、又は純粋酸素気体を含む。このような用語空気に対する広い定義が全ての用途、例えば、空気電池、空気正極などに適用することができる。
【0033】
本明細書で使用される用語「球状」とは、完ぺきな球状を意味しなく、実質的に球状と見なされ得る程度を意味する。即ち、断面が円形又は楕円形であるものを含み、完全に対称を成さず、歪んだ形状、表面が滑らかでなく、デコボコとした形状、角張った形状を有しても全体的に球状に見える場合を皆含む。より具体的に、前記球状は、下記の数学式(1)で示されると表示される球形度(Ψ)が0.9以上のものであってもよいが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0034】
【数1】
【0035】
本発明の一実施例に係るリチウム空気電池は、酸素を正極活物質として用い、カーボンブラック一次粒子及びグラフェンからなるカーボンブラック二次粒子が積層されてなり、前記カーボンブラック二次粒子間に形成された100nm超過の気孔を含む正極;前記正極と対向するように配置される負極;及び前記正極と負極と間に配置される分離膜;を含む。
【0036】
前記リチウム空気電池の正極は、カーボンブラック一次粒子及びグラフェンからなるカーボンブラック二次粒子が積層されてなることによって、従来のリチウム空気電池の正極に比べて孔隙の構造、形状及び粒子の大きさ、構造が改善されて、放電テスト時放電容量が増加し、過電圧が減少する。
【0037】
前記カーボンブラック一次粒子は、1nm〜500nmの球状であり、前記グラフェンは、0.1μm〜50μmの大きさ、0.34nm〜20nmの厚さ、好ましくは、0.5〜10μmの大きさ、1nm〜3nm厚さの板状である。
【0038】
前記カーボンブラック一次粒子の大きさが、1nm未満のとき、微細粒子により二次粒子内部に10nm以下の適合した気孔を生成することが難しくなる恐れがあり、500nmを超えると、20〜100nm大きさのメソ細孔(meso pore)の気孔を二次粒子内に形成することが困難になる恐れがある。
【0039】
一般的なグラフェン一枚の厚さが0.34nmであるので、グラフェンシートが積層されて形成されるグラフェンの厚さが0.34nm未満に製造されるのは不可能であり、前記グラフェンの大きさが50μmを超えるか、厚さが20nmを超えると、噴霧乾燥時、ノズルの詰まりなどの問題が発生する可能性がある。
【0040】
また、前記カーボンブラック二次粒子は、前記カーボンブラック一次粒子及びグラフェンならなることによって、前記カーボンブラック二次粒子は、500nm〜10μm、好ましくは1〜3μmの球状であってもよい。前記カーボンブラック二次粒子の大きさが500nm未満のとき、2次構造があたえる長所である100nm超過の気孔が小さくなり、10μmを超えると、電極のローディングを増大するために厚く電極を積層しなければならないので、バインダーの含量が増える恐れがある。
【0041】
前記カーボンブラック二次粒子は、前記カーボンブラック一次粒子を1〜99重量%及び前記グラフェンを1〜99重量%、ただ、前記カーボンブラック一次粒子を前記グラフェンに比べてさらに多く含むことが好ましく、具体的には、前記カーボンブラック一次粒子を50重量%以上99重量%以下及び前記グラフェンを1重量%以上50重量%未満で含むことがより層好ましい。
【0042】
即ち、前記カーボンブラック二次粒子が、前記カーボンブラック一次粒子を前記グラフェンに比べてさらに多く含む場合、前記カーボンブラック二次粒子は、前記板状のグラフェンを前記球状のカーボンブラック一次粒子が囲む構造を有するようになり、このような構造を有するとき、放電容量が共に増加し、過電圧が更に減少される効果がある。これは、前記カーボンブラック一次粒子が、前記グラフェンと一緒に固まりながらも前記カーボンブラック一次粒子の形状及び気孔構造をそのまま保持するからである。
【0043】
前記カーボンブラック二次粒子が、前記板状のグラフェンを前記球状のカーボンブラック一次粒子が囲む構造を有することによって、前記カーボンブラック二次粒子の表面では前記カーボンブラック一次粒子を前記グラフェンよりさらに多く観察することができ、これは、前記球状のカーボンブラック一次粒子が占める面積が、前記板状のグラフェンが占める面積より更に広いものとして測定することができる。このとき、前記カーボンブラック二次粒子の表面は、前記カーボンブラック一次粒子が占める表面面積の50面積%以上であり、好ましくは、55〜75面積%であってもよい。ただ、前記カーボンブラック二次粒子において、前記グラフェンが分布する様相に応じて前記カーボンブラック一次粒子と前記グラフェンと間の面積比が変わることがあり、例えば、前記グラフェンが1枚の厚さで前記カーボンブラック一次粒子間に分布すると仮定したとき、前記カーボンブラック一次粒子と前記グラフェンと間の面積比が前記範囲内の場合、最上の電池性能を示す。
【0044】
前記カーボンブラック二次粒子の表面形状は走査型電子顕微鏡(SEM)等を介して観察することができ、前記カーボンブラック一次粒子が、前記グラフェンに比べて表面にさらに多く存在する場合、前記カーボンブラック二次粒子の表面は、小さな球状の粒子が固まっている形状を有し、前記グラフェンが、前記カーボンブラック一次粒子に比べて表面にさらに多く存在する場合、前記カーボンブラック二次粒子の表面はシワクチャの表面形状を有する。
【0045】
前記正極は、500nm〜10μmのカーボンブラック二次粒子が積層されてなっていることによって、前記カーボンブラック二次粒子間に形成された100nm超過の気孔を含む。
【0046】
前記カーボンブラック二次粒子が積層されてなる正極は、マイクロメリティックス社の水銀細孔測定器(Hg porosimeter)を利用して、0.1psi〜60,000psiの圧力条件で測定された値、即ち、前記正極水銀細孔測定法による平均気孔径が100nm超過であってもよく、好ましくは、100nm超過〜10μm以下、より好ましくは、300nm超過〜10μm以下、さらに好ましくは、300nm超過〜2μm以下であってもよい。水銀細孔測定法は、一定圧力条件で水銀を気孔に入れ、その量を通じて気孔の体積を測定する方法であり、気孔が小さいほど圧力をさらに増加させなければ、水銀を含浸させることができ
【0047】
前記平均気孔径が100nm以下のとき、充・放電時、産物によって電極の気孔が詰まり、結果的に電解質やリチウムイオンなどの物質伝達(mass transfer)に問題が生じる恐れがあり、10μmを超えると、電極の強度が弱くなるだけでなく、充・放電産物が担持され得る比表面積が減り、エネルギー密度が低くなる恐れがある。
【0048】
前記カーボンブラック二次粒子は、前記カーボンブラック一次粒子がその粒子構造及び気孔の形態が損傷されず、そのまま固まってなることによって、前記カーボンブラック一次粒子と前記グラフェンと間に形成された20〜100nmの気孔、前記カーボンブラック一次粒子内部に形成された10nm未満の気孔及び前記グラフェン内部に形成された10nm未満の気孔を含むことができる。
【0049】
一方、前記カーボンブラック二次粒子が、前記グラフェンを前記カーボンブラック一次粒子に比べてさらに多く含む場合、前記カーボンブラック二次粒子が、前記板状のグラフェンが前記球状のカーボンブラック一次粒子を囲む構造を有するようになり、前記カーボンブラック一次粒子の気孔構造が損傷され、電池性能に寄与する前記カーボンブラック二次粒子の有効表面積(effective surface area)が減少され得る。
【0050】
前記カーボンブラック二次粒子は、前記カーボンブラック一次粒子及びグラフェンを固めて、二次粒子を製造する方法であればいずれも使用可能であり、本発明では特に制限されない。ただ、具体的に、例えば、前記カーボンブラック二次粒子は、前記カーボンブラック一次粒子及びグラフェンを溶媒に分散させた後、噴霧乾燥(spray−drying)方法で製造することができる。
【0051】
前記噴霧乾燥は、前記スラリーをノズルで噴霧し、10〜500μm大きさの液滴(droplet)を形成し、前記液滴の溶媒を乾燥してなる。噴霧乾燥時吸引器パワー(aspirator power)や供給量(feed rate)は、スラリーの粘度と乾燥温度の条件に応じて調節することができる。
【0052】
前記噴霧乾燥方法を利用すれば、前記溶媒に分散させたカーボンブラック一次粒子及びグラフェンを熱風中に噴霧分散させ、熱風で返送しながら、急速に乾燥して、球形度の高いカーボンブラック二次粒子を製造することができる。
【0053】
前記乾燥は、スラリー分散溶媒を乾燥することができる条件で実施でき、例えば、水を溶媒として用いた場合、水の蒸発点である100℃以上の条件で実施することができる。蒸発点以下の温度で実施する場合、溶媒が円滑に蒸発されなく、噴霧後、乾燥されない問題が生じる恐れがある。
【0054】
前記カーボンブラック一次粒子は、ケッチェンブラック(ketjen black)、スーパーP(super p)、テンカブラック(denka black)、アセチレンブラック(acetylene black)、ファーネスブラック(furnace black)及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つであってもよい。
【0055】
前記グラフェンは、グラフェンプレート(GNP)、グラフェンオキシド(GO)、還元されたグラフェンオキシド(rGO)及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つであってもよい。
【0056】
前記正極は、前記カーボンブラック二次粒子が積層されたガス拡散層を更に含む。前記ガス拡散層は、本発明では特に限定されないが、炭素布、カーボン紙、炭素フェルト、又は酸素選択的透過性メンブレインなどを含んで構成される。
【0057】
また、前記正極は、多孔性集電体を更に含んでもよい。この場合、前記ガス拡散層は、以下の通りに形成される。例えば、前記多孔性集電体の表面に炭素布、カーボン紙、炭素フェルト、又は酸素選択的透過性メンブレインなどを付着する方法で製造されてもよく、しかし、本発明は、このような方法に限定されるものではない。
【0058】
前記多孔性集電体としては、3次元構造のニッケルフォーム(foam)、平面構造のニッケルメッシュ、アルミニウムメッシュ、カーボン紙(carbon paper)、炭素フォーム、アルミニウムフォーム及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つであってもよい。
【0059】
また、前記正極は、酸素の酸化/還元のための触媒を選択的に更に含んでもよく、このような触媒は例えば、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Ag、Au、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mo、W、Zr、Zn、Ce、La金属、前記金属の酸化物及び前記金属の複合体からなる群から選ばれるある一つであってもよい。
【0060】
また、前記触媒は、担体に担持され得る。前記担体は、酸化物、ゼオライト、粘土系鉱物、カーボン及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つであってもよい。前記酸化物は、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、二酸化チタンなどの酸化物や、Ce、Pr、Sm、Eu、Tb、Tm、Yb、Sb、Bi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo及びWから選ばれる一つ以上の金属を含む酸化物であってもよい。前記カーボンは、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、テナルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラック類、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛類、活性炭類、炭素繊維類などであってもよいが、必ずしもこれらに限定されなく、当該技術分野で担体として用いられるものであればいずれも使用可能である。
【0061】
前記リチウムを吸蔵及び放出しうる負極は、リチウム金属、有機物又は無機化合物で処理されたリチウム金属錯体、又はリチウム化金属−カーボン複合体などで構成される。
【0062】
前記負極は、集電体を含んでもよく、前記集電体としては、この分野で公知されたものを制限なく使用することができる。例えば、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウムなどの金属板又はカーボン紙等を使用することができる。前記集電体は、酸化を防止するために耐酸化性の金属又は合金皮膜で被覆することができる。
【0063】
前記分離膜は、本発明では特に限定されないが、ポリエチレン分離膜、ポリプロピレン分離膜又はガラス繊維分離膜などからなる群から選ばれるものから構成される。
【0064】
また、前記リチウム空気電池は、電解質を更に含んでもよく、前記電解質は、本発明では特に限定されないが、水系電解質、非水系電解質、有機固体電解質、無機固体電解質及びこれらの混合形態からなる群から選ばれるいずれか一つの電解質を用いることができる。
【0065】
前記非水系電解質は、非プロトン性溶媒を含んでもよい。前記非プロトン性溶媒とは、例えば、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アミン系、ホスフィン系溶媒及びこれらの複合物からなる群から選ばれるいずれか一つが用いられる
【0066】
前記エーテル系溶媒は、非環式エーテル(acyclic ethers)又は環状エーテル(cyclic ethers)を含む。
【0067】
非制限的な例として、前記非環式エーテルは、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド(N,N−dimethyl acetamide)及びこれらの複合物からなる群から選ばれたいずれか一つであってもよい。
【0068】
また、非制限的な例として、前記環状エーテルは、1,3−ジオキソラン、4,5−ジメチル−ジオキソラン、4,5−ジエチル−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、4−エチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、2−エトキシテトラヒドロフラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、2−ビニル−1,3−ジオキソラン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−メトキシ−1,3−ジオキソラン、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン、イソソルビドジメチルエーテル及びこれらの混合物からなる群から選ばれたいずれか一つの化合物であってもよい。
【0069】
前記電解質には前記非水系有機溶媒上に分散されたリチウム塩が含まれ得る。
【0070】
前記リチウム塩としては、リチウム空気電池に通常的に適用可能なものが特別な制限なしで用いられる。好ましくは、前記リチウム塩は、LiSCN、LiBr、LiI、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiCHSO、LiCFSO、LiClO、Li(Ph)、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(SFO)、LiN(CFCFSO及びこれらの混合物からなる群から選ばれたいずれか一つの化合物であってもよい。
【0071】
前記有機固体電解質では、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルファイド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体及びこれらの複合体からなる群から選ばれるいずれか一つが挙げられる。
【0072】
前記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN−LiI−LiOH、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiPO−LiS−SiS、Liの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩及びこれらの一つ以上の混合物からなる群から選ばれるいずれか一つの化合物が挙げられる。
【0073】
また、前記電解質は、LiI、NaI及びKIからなる群から選ばれるいずれか一つの酸化還元媒介体(redox mediator)を選択的に更に含む。前記電解質が、前記酸化還元媒介体を更に含む場合、前記リチウム空気電池の充填時過電圧を低減することができる。
【0074】
前記電解質は、前記分離膜に含浸されて存在してもよく、前記分離膜の外にも前記正極又は前記負極にも一部吸収されて存在してもよい。
【0075】
本発明の他の実施例に係るリチウム空気電池の製造方法は、カーボンブラック一次粒子を溶媒に分散して、第1分散液を製造する工程;グラフェンを溶媒に分散して、第2分散液を製造する工程;前記第1分散液と前記第2分散液とを混合して、スラリーを製造する工程;前記スラリーを噴霧乾燥(spray−drying)して、カーボンブラック二次粒子を製造する工程;及び前記カーボンブラック二次粒子をガス拡散層に積層して、正極を製造する工程;を含む。
【0076】
まず、カーボンブラック一次粒子を溶媒に分散して、第1分散液を製造する。
【0077】
前記カーボンブラック一次粒子は、ケッチェンブラック(ketjen black)、スーパーP(super p)、テンカブラック(denka black)、アセチレンブラック(acetylene black)、ファーネスブラック(furnace black)及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つであってもよい。
【0078】
前記第1分散液は、前記カーボンブラック一次粒子の分散性を向上させるために、選択的に分散剤を更に含んでもよい。
【0079】
前記分散剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)であってもよいが、本発明はこれに限定されない。前記第1分散液は、前記分散剤を前記スラリー全重量に対して、30重量%以下、好ましくは、1〜30重量%で含んでもよい。
【0080】
前記溶媒としては、水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドンなどが挙げられ、好ましくは、水を使用できるが、本発明はこれらに限定されない。
【0081】
一方、グラフェンを溶媒に分散して、第2分散液を製造する。
【0082】
前記グラフェンは、グラフェンプレート(GNP)、グラフェンオキシド(GO)、還元されたグラフェンオキシド(rGO)及びこれらの混合物からなる群から選ばれるいずれか一つであってもよい。
【0083】
前記溶媒としては、水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドンなどが挙げられ、好ましくは、水を使用できるが、本発明がこれに限定されない。
【0084】
前記製造された第1分散液と前記第2分散液とを混合して、スラリーを製造する。ただ、前記では、前記第1分散液と前記第2分散液を別々に製造した後、混合することを記載したが、本発明はこれに限定されなく、前記第2分散液を別途製造せずに、前記第1分散液に前記グラフェンを添加して、スラリーを製造することができ、前記第1分散液を別に製造せずに、前記第2分散液に前記カーボンブラック一次粒子を添加して、スラリーを製造することもできる。
【0085】
前記スラリーは、前記スラリー全重量に対して、前記カーボンブラック一次粒子を1〜99重量%及び前記グラフェンを1〜99重量%、好ましくは、前記カーボンブラック一次粒子を50重量%以上99重量%以下及び前記グラフェンを1重量%以上50重量%未満で含んでいてもよい。
【0086】
次に、前記製造されたスラリーを噴霧乾燥(spray−drying)して、カーボンブラック二次粒子を製造する。
【0087】
前記噴霧乾燥は、前記スラリーをノズルで噴霧して、10〜500μm大きさの液滴(droplet)を形成し、前記液滴の溶媒を乾燥してなる。選択的に、前記形成されたカーボンブラック二次粒子を加熱して、炭化(carbonization)過程を介して、前記分散剤を焼いて除去する。前記加熱は、400〜1000℃で1〜6時間行ってもよい。前記加熱温度が400℃未満のとき、前記分散剤が十分に分解されない恐れがあり、1000℃を超える加熱は必要とされなく、前記加熱時間が1時間未満のとき、前記分散剤が十分に分解されないか、前記グラフェンが十分に還元されない恐れがあり、6時間を超える長時間の加熱は必要とされない。
【0088】
最後に、前記製造されたカーボンブラック二次粒子を前記ガス拡散層に積層して、正極を製造する。
【0089】
前記カーボンブラック二次粒子を、前記ガス拡散層に積層させる方法は、従来のカーボンブラック一次粒子などの炭素物質をガス拡散層にローディング(loading)させる方法であればいずれであってもよい。具体的に、前記製造されたカーボンブラック二次粒子をN−メチルピロリドン(NMP)等の溶媒に分散し、前記ガス拡散層に塗布して、製造することができるが、本発明がこれに限定されない。
【0090】
このとき、前記カーボンブラック二次粒子は、前記ガス拡散層に0.1〜10mg/cm、好ましくは、1〜5mg/cmで塗布してもよい。前記カーボンブラック二次粒子が、0.1mg/cm未満で塗布される場合、電池の電流量が少なく、エネルギー密度が小さくなる恐れがあり、10mg/cmを超えて塗布される場合、酸素や電解液の拡散(diffusion)により、均一な分布が困難にある恐れがある。
【0091】
前記リチウム空気電池の製造方法により製造された正極は、カーボンブラック一次粒子及びグラフェンからなるカーボンブラック二次粒子が積層されてなることによって、従来のリチウム空気電池の正極に比べて、孔隙の構造、形態及び粒子の大きさ、構造が改善され、放電テスト時放電容量が増加し、過電圧が減少する。
【0092】
以下、発明の理解を助けるために好ましい実施例及び比較例を提示する。しかし、下記実施例は発明を例示するためだけのものであり、本発明がこれに限定されるものではない。
【0093】
[製造例:リチウム空気電池の製造]
(実施例1)
カーボンブラック一次粒子としてケッチェンブラック(Ketjen black EC−600 JD)と分散剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)とを9:1の重量比で、水に前記カーボンブラック一次粒子の含量が5重量%になるように分散させた。
【0094】
2重量%のGOがス分散された溶液を2mg/ml濃度で希釈した。
【0095】
前記カーボンブラック一次粒子水分散液と前記GO水分散液とを混合した。このとき、最終製造されたカーボンブラック二次粒子で前記カーボンブラック一次粒子と前記グラフェンの重量比(KB−rGO)が250:20になるように、前記カーボンブラック一次粒子水分散液と前記GO水分散液とを混合した。
【0096】
これを超音波槽(bath sonication)で3時間分散させた後、噴霧乾燥(spray drying)工程を介して、二次粒子構造を有するカーボンブラック二次粒子を製造した。このとき、前記噴霧乾燥は、180℃温度で吸引器パワー(Aspirator power)90%、供給量(Feed rate)12(Bushi spray dryer B−290)の条件で行った。
【0097】
前記製造されたカーボンブラック二次粒子を600℃で2時間炭化(carbonization)させる過程で前記GOを還元させ、前記分散剤も除去した。
【0098】
前記用意されたカーボンブラック二次粒子をNMPに5重量%で分散し、カーボン紙に約0.5mg/cmローディングでコーティングして、正極を用意し、分離膜としては、400μm厚さのガラス繊維紙(glass fiber paper)、負極としては、150μm厚さのリチウム金属を用意し、エーテル系溶媒であるテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)にリチウム塩として1.0MのLiTFSI(LiN(CFSO)を添加して、電解質を用意した。
【0099】
前記分離膜に前記電解質を含浸させた。前記用意された正極、電解質を含浸させた分離膜、リチウム負極を電池ケースに収納して、リチウム空気電池を製造した。
【0100】
(実施例2)
前記実施例1において、最終製造されたカーボンブラック二次粒子の前記カーボンブラック一次粒子と前記グラフェンとの重量比(KB−rGO)が250:40になるように、前記カーボンブラック一次粒子水分散液と前記GO水分散液とを混合したことを除いては、前記実施例1と同様にして、リチウム空気電池を製造した。
【0101】
(実施例3)
前記実施例1において、最終製造されたカーボンブラック二次粒子の前記カーボンブラック一次粒子と前記グラフェンとの重量比(KB−rGO)が250:100になるように、前記カーボンブラック一次粒子水分散液と前記GO水分散液とを混合したことを除いては、前記実施例1と同様にして、リチウム空気電池を製造した。
【0102】
(実施例4)
前記実施例1において、最終製造されたカーボンブラック二次粒子の前記カーボンブラック一次粒子と前記グラフェンとの重量比(KB−rGO)が250:200になるように、前記カーボンブラック一次粒子水分散液と前記GO水分散液とを混合したことを除いては、前記実施例1と同様にして、リチウム空気電池を製造した。
【0103】
(実施例5)
前記実施例1において、最終製造されたカーボンブラック二次粒子の前記カーボンブラック一次粒子と前記グラフェンとの重量比(KB−rGO)が250:300になるように、前記カーボンブラック一次粒子水分散液と前記GO水分散液とを混合したことを除いては、前記実施例1と同様にして、リチウム空気電池を製造した。
【0104】
(実施例6)
前記実施例1において、最終製造されたカーボンブラック二次粒子の前記カーボンブラック一次粒子と前記グラフェンとの重量比(KB−rGO)が250:400になるように、前記カーボンブラック一次粒子水分散液と前記GO水分散液とを混合したことを除いては、前記実施例1と同様にして、リチウム空気電池を製造した。
【0105】
(参考例)
前記実施例1において、前記カーボンブラック一次粒子で、ケッチェンブラックを別途のグラフェンを添加せずに、前記実施例1と同じローディングと同じ方法で正極を用意し、同じ方法でリチウム空気電池を製造した。
【0106】
[試験例1:製造されたカーボンブラック二次粒子の構造分析]
前記実施例1、4及び6で製造されたカーボンブラック二次粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、その結果を図1図6に示した。
【0107】
前記図1及び図6を参照すれば、前記カーボンブラック二次粒子が、前記カーボンブラック一次粒子を前記グラフェンに比べてさらに多く含む場合、前記カーボンブラック二次粒子の表面は、小さな球状の粒子が固まっている形状を有し、前記グラフェンが前記カーボンブラック一次粒子に比べて表面にさらに多く存在する場合、前記カーボンブラック二次粒子の表面はシワクチャの形状を有することを確認することができた。
【0108】
[試験例2:製造された正極の構造分析]
前記実施例で製造されたカーボンブラック二次粒子を積層して正極を形成し、前記正極をカーボン紙にコーティングし、マイクロメリティックス社の水銀細孔測定器(Hg porosimeter)を利用して0.1psi〜60,000psiの圧力条件で正極内気孔の平均の大きさを測定した。
【0109】
前記実施例1の正極の平均気孔径は、1,048.3nmであり、前記参考例の正極の平均気孔径は、263.5nmであった。また、電極の製造に用いられたカーボン紙の平均気孔径は、60,480.4nmに測定された。
【0110】
前記測定結果を参考にすれば、二次粒子を導入した実施例1の正極の場合、一次粒子のみで構成された参考例の正極に比べて大きな気孔が形成されたことが分かった。これは、従来の方法では製造が不可能な気孔の大きさであり、また、このような正極内の平均気孔径の増加は、カーボン紙の影響によるものではないことが分かった。
【0111】
[試験例3:製造されたリチウム空気電池の性能分析1]
前記実施例で製造されたリチウム空気電池に対して、下記方法で放電容量を評価し、その結果を図7に示した。
【0112】
前記実施例で製造されたリチウム空気電池を電気化学的測定が可能なボックス内に挿入した。ボックスは1atm酸素圧力、25℃の恒温が保持されるようにした。
【0113】
放電容量は、ボックス外部に連結された正極と負極の電線を利用して電気化学的方法で測定した。それぞれのセルは、コーティングされたカーボン量対比100mA/gの電流を流して、放電容量を測定した。
【0114】
前記図7を参照すれば、前記実施例で製造されたリチウム空気電池は、陽極がカーボンブラック一次粒子及びグラフェンが固まってなるカーボンブラック二次粒子が積層されてなることによって、従来のリチウム空気電池の正極に比べて、孔隙の構造、形態及び粒子の大きさ、構造が改善され、放電テスト時放電容量が増加し、過電圧が減少することを確認することができた。
【0115】
また、前記カーボンブラック二次粒子が、前記カーボンブラック一次粒子を前記グラフェンに比べてさらに多く含む場合、前記カーボンブラック二次粒子は、前記板状のグラフェンを前記球状のカーボンブラック一次粒子が囲む構造を有するようになり、このような構造を有する時放電容量が共に増加し、過電圧が更に減少される効果があることを確認することができた。これは、前記カーボンブラック一次粒子が前記グラフェンと一緒にかたまりながらも、前記カーボンブラック一次粒子の形状及び気孔構造をそのまま保持するためであると推測された。
【0116】
[試験例4:製造されたリチウム空気電池の性能分析2]
前記実施例1、3、6、及び参考例で製造されたリチウム空気電池に対して、2.0〜4.6V駆動電圧範囲内で0.3C放電/0.1C充填の条件で、充・放電行い、サイクル特性を測定し、その結果を図8に示した。
【0117】
前記図8を参照すれば、前記グラフェンの含量の増加に伴って性能が継続して向上されないことを確認することができた。即ち、前記カーボンブラック一次粒子と前記グラフェンの重量比が250:100の実施例3までは、性能が増加していることが分かるが、前記グラフェンの含量が更に増加すれば、前記カーボンブラック二次粒子は、前記板状のグラフェンが前記球状のカーボンブラック一次粒子を囲む構造に変わることになり、この場合、前記図7の充放電データから判るように、グラフェンの含量が200、300の場合、放電容量が減少し始めており、前記図8のサイクル特性から判るように、グラフェン含量が400の実施例6の寿命特性も減少していることが分かる。
【0118】
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の種々の変形及び改良形態もまた、本発明の権利範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、リチウム空気電池及びその製造方法に関し、更に詳しくは、放電テスト時放電容量が増加し、過電圧が減少し、簡単な方法を利用して製造することが可能なリチウム空気電池及びその製造方法を提供するものである。
【0120】
本発明の一実施例に係るリチウム空気電池は、長距離走行が可能な電気車用電池で多くの研究が進められている。
【0121】
このように自動車産業の外にも前記リチウム空気電池は、スマートグリッドを含む建築及び電力産業、電機電子及び化学産業、通信産業、ロボット産業などのような産業分野でエネルギー貯蔵、移動及び発電の用途で利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8