特許第6446163号(P6446163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6446163-多結晶シリコンの製造方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446163
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】多結晶シリコンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/035 20060101AFI20181217BHJP
   C01B 3/52 20060101ALI20181217BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20181217BHJP
   C01B 33/02 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   C01B33/035
   C01B3/52
   C01B3/56 Z
   C01B33/02 E
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-540185(P2018-540185)
(86)(22)【出願日】2017年10月5日
(86)【国際出願番号】JP2017036340
(87)【国際公開番号】WO2018070341
(87)【国際公開日】20180419
【審査請求日】2018年8月1日
(31)【優先権主張番号】特願2016-201229(P2016-201229)
(32)【優先日】2016年10月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐一
(72)【発明者】
【氏名】江野口 正美
(72)【発明者】
【氏名】岡村 恒太郎
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−084422(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/040214(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101357287(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101791487(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/035
C01B 3/52
C01B 3/56
C01B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロシラン化合物と水素とを反応させて多結晶シリコンを析出させるシリコン析出工程、
前記シリコン析出工程から排出される排ガスを、クロロシラン凝縮液とガス成分Aとに分離する分離工程、
前記ガス成分Aをクロロシラン液と接触させて塩化水素を除去し、ガス成分Bを得る塩化水素除去工程、
前記ガス成分Bを活性炭と接触させてクロロシラン化合物を除去し、水素ガスAを得る水素精製工程、
前記ガス成分Bと接触させた活性炭を、水素ガスBと接触させて再生する活性炭再生工程、及び、
前記活性炭再生工程より得られるガス成分Cを加圧して、前記分離工程に供給する循環工程、
を含み、
前記塩化水素除去工程にて前記塩化水素を吸収させた前記クロロシラン液から、該塩化水素を放散する塩化水素放散工程をさらに含み、
前記分離工程より得られる前記クロロシラン凝縮液を前記塩化水素放散工程に供給することを特徴とする多結晶シリコンの製造方法。
【請求項2】
前記塩化水素放散工程より得られる、塩化水素を放散した前記クロロシラン液の一部を前記塩化水素除去工程に供給する吸収液循環工程をさらに含む、請求項に記載の多結晶シリコンの製造方法。
【請求項3】
前記水素精製工程より得られる前記水素ガスAを前記シリコン析出工程に供給することを含む、請求項1または2に記載の多結晶シリコンの製造方法。
【請求項4】
前記ガス成分Cが以下の式を満たす、請求項1〜の何れか1項に記載の多結晶シリコンの製造方法。
式:ジクロロシラン含有量<トリクロロシラン含有量+テトラクロロシラン含有量
(式中、含有量とは、ジクロロシラン、トリクロロシラン及びテトラクロロシランの含有量の合計に占める、各成分の割合(モル%)を指す)
【請求項5】
前記分離工程が、前記排ガスを−10℃以下に冷却することを含む、請求項1〜の何れか1項に記載の多結晶シリコンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多結晶シリコンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体又は太陽光発電用ウエハーの原料として使用されるシリコンを製造する方法は、種々知られている。例えばその一つであるシーメンス法は、次のような方法である。まず、通電加熱されたフィラメントに水素とトリクロロシランとの混合ガスを供給する。次に、化学気相析出法によりフィラメント上にシリコンを析出させてポリシリコン(多結晶シリコンとも称する)を得る。
【0003】
シーメンス法によるポリシリコンを得る工程から排出される排ガスは、水素を主成分とするが、その他不純物も含んでいる。該不純物には、未反応のトリクロロシラン、並びに、反応の副生物であるシラン化合物及び塩化水素等に加えて、金属シリコンに不可避的不純物として含まれている微量のホウ素等が含まれる。
【0004】
このような不純物を含む前記排ガスが、前記ポリシリコンを得る工程に主に水素源として供給された場合には、得られる多結晶シリコンの品質を低下させることとなる。そのため、前記排ガスは、精製され、そのほとんどは、前記ポリシリコンを得る工程に循環されるものの、その一部は、適切な処理を経て廃棄されてきた。多結晶シリコンの製造が増えるに従い、廃棄される排ガスの量も増加している。従って、このような排ガスの有効な再利用方法の確立が望まれてきた。
【0005】
特許文献1には、ポリシリコンの製造方法であって、前記排ガスを活性炭による吸着塔により処理し、活性炭に吸着された塩化水素及びシラン化合物を再利用することを含む、ポリシリコンの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−14504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来技術は、環境負荷及び生産コストに関して、さらなる改善の余地があった。
【0008】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、環境負荷が少なく、生産コストが低い、多結晶シリコンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、多結晶シリコンの製造方法において、クロロシラン液を用いて塩化水素を除去することによって、環境負荷及び生産コストを低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の一実施形態に係る多結晶シリコンの製造方法は、クロロシラン化合物と水素とを反応させて多結晶シリコンを析出させるシリコン析出工程、前記シリコン析出工程から排出される排ガスを、クロロシラン凝縮液とガス成分Aとに分離する分離工程、前記ガス成分Aをクロロシラン液と接触させて塩化水素を除去し、ガス成分Bを得る塩化水素除去工程、前記ガス成分Bを活性炭と接触させてクロロシラン化合物を除去し、水素ガスAを得る水素精製工程、前記ガス成分Bと接触させた活性炭を、水素ガスBと接触させて再生する活性炭再生工程、及び、前記活性炭再生工程より得られるガス成分Cを加圧して、前記分離工程に供給する循環工程、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、環境負荷が少なく、生産コストが低い、多結晶シリコンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る多結晶シリコンの製造方法における、ガス成分及びクロロシラン化合物の順路を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
【0014】
本発明の一実施形態に係る、多結晶シリコンの製造方法(以下、本製造方法と称する)は、クロロシラン化合物と水素とを反応させて多結晶シリコンを析出させるシリコン析出工程、前記シリコン析出工程から排出される排ガスを、クロロシラン凝縮液とガス成分Aとに分離する分離工程、前記ガス成分Aをクロロシラン液と接触させて塩化水素を除去し、ガス成分Bを得る塩化水素除去工程、前記ガス成分Bを活性炭と接触させてクロロシラン化合物を除去し、水素ガスAを得る水素精製工程、前記ガス成分Bと接触させた活性炭を、水素ガスBと接触させて再生する活性炭再生工程、及び、前記活性炭再生工程より得られるガス成分Cを加圧して、前記分離工程に供給する循環工程、を含む。
【0015】
本製造方法は、前記構成を含むため、以下のような利点がある。即ち、(1)塩化水素除去工程において、塩化水素の除去をクロロシラン液と接触させて行うため、塩化水素の除去を活性炭による吸着によって行う従来技術と比べて、不純物(ホウ素(B)、リン(P)等のドーパントを含み得る)の除去率が高いこと、(2)(1)の結果、ガス成分C(水素ガスとクロロシラン化合物とを含む)を前記分離工程に循環する場合であっても、前記不純物の蓄積がないこと、(3)水素ガス及びクロロシラン化合物を処理するために用いる苛性ソーダの量を低減することができること、(4)(1)〜(3)によって、排ガスを効率的に精製及び循環させることが可能となること、(5)(4)の結果、環境負荷が少なく、生産コストが低い、多結晶シリコンの製造方法を提供することができること、等の利点がある。
【0016】
さらに、特許文献1では、前記排ガスをSTC(テトラクロロシラン)還元工程に供給して再利用する。しかし、本製造方法では、前記排ガスを前記分離工程に供給して再利用することが可能である。前記分離工程は、前記STC還元工程より運転圧力が低圧である。そのため、本製造方法は、従来技術に比べて、再利用時にガスを加圧するための加圧設備が小規模となり、建設コストがより安価となる利点がある。また、特許文献1では、排ガスからの塩化水素の除去を活性炭によって行う。しかし、本製造方法では、塩化水素の除去をクロロシラン液と接触させて行う。そのため、本製造方法では、水素を精製するための活性炭の容量を、より削減することが可能である。
【0017】
以下に、本製造方法に含まれる各工程を、図1を参照しながら詳しく説明する。なお、実線は液体のクロロシラン化合物を、破線はガス成分を、二重線は活性炭を充填した吸着塔の切替えをそれぞれ表している。
【0018】
<1.シリコン析出工程1>
本製造方法は、クロロシラン化合物と水素とを反応させて多結晶シリコンを析出させるシリコン析出工程1を有する。
【0019】
シリコン析出工程1にて用いられる反応装置の構造及び反応条件は特に制限されず、公知の反応装置及び反応条件を採用することができる。シリコン析出工程1は、具体的には、例えばシーメンス法(ベルジャー法)、溶融析出法(VLD法、Vapor to Liquid Deposition法)等によって行うことが可能である。
【0020】
シーメンス法は、以下のような方法である。まず、反応器(ベルジャー)内に、加熱基材として多結晶シリコン芯線を設置し、該多結晶シリコン芯線を、多結晶シリコン析出温度以上の温度に通電加熱する。次に、加熱された多結晶シリコン芯線に、クロロシラン化合物及び水素を含有する原料ガスを接触させる。これによって、該多結晶シリコン芯線の表面に多結晶シリコンを析出させて、成長した多結晶シリコンロッドを得る。
【0021】
シーメンス法では、通電加熱された多結晶シリコン芯線の温度としては、多結晶シリコン析出温度以上であれば、特に制限されないが、多結晶シリコンを効率的に析出させるために、好ましくは600℃〜1250℃であり、より好ましくは900℃〜1200℃である。
【0022】
溶融析出法には、以下のように、逐次方法及び連続方法がある。逐次方法は、まず、反応器内に設置した基材を多結晶シリコン析出温度以上の高温(例えば600℃以上)に加熱する。次に、前記基材上にクロロシラン化合物及び水素を含有する原料ガスを流通し、接触させることによって、該基材の表面に多結晶シリコンを析出させる。その後、前記基材を多結晶シリコンの融点以上の高温(例えば1450℃〜1700℃)に維持することによって、前記析出した多結晶シリコンを溶融落下させて回収する。連続方法は、まず、反応器内に設置した基材を多結晶シリコンの融点以上の高温(例えば1450℃〜1700℃)に加熱する。次に、前記基材上にクロロシラン化合物及び水素を含有する原料ガスを流通し、接触させる。これによって、該基材の表面に多結晶シリコンを析出させるとともに、溶融落下させて多結晶シリコンを得る。
【0023】
シリコン析出工程1は、多結晶シリコンを効率的に析出させるために、溶融析出法によって行われることが好ましい。
【0024】
本明細書においてクロロシラン化合物とは、塩素元素とケイ素元素を含む化合物を意味する。シーメンス法及び溶融析出法ともに、原料ガスに含有されるクロロシラン化合物としては、例えばトリクロロシラン、ジクロロシラン等を挙げることができる。
【0025】
シリコン析出工程1では、原料ガスに含有されるクロロシラン化合物としては、後述の蒸留工程11より得られるクロロシラン化合物29がガス状にされた後に使用され得る。原料ガスに含有されるクロロシラン化合物が、不足する場合には、不足分は、公知の方法によって製造されたものが供給されて用いられ得る(図示せず)。クロロシラン化合物として用いられる得るトリクロロシランとしては、一般に、金属シリコンと塩化水素との公知の反応により製造することができる。当該反応による生成物を蒸留して得られたトリクロロシランからホウ素、リン等の不純物を除去するために、該トリクロロシランを、さらに蒸留することが好ましい。蒸留することによって、高純度なトリクロロシランを得ることが可能である。シリコン析出工程1に用いるトリクロロシランは、高純度の多結晶シリコンを得る観点から、純度が99.9%以上であることが好ましい。
【0026】
シリコン析出工程1において、原料ガスとしての水素の供給量は、クロロシラン化合物に対して過剰量である限りは特に制限されないが、多結晶シリコンを効率的に析出させるために、クロロシラン化合物の1モルに対して3モル以上とすることが好ましい。
【0027】
シリコン析出工程1では、原料ガスに含有される水素としては、水素ガスA22aにより、その殆どが補われ得るが、不足分は、公知の製造方法により得られる水素(図示せず)が用いられ得る。例えば、かかる水素は、電解設備などにより、水の電気分解によって製造され得る。具体的には、無機酸金属塩及び/又は金属水酸化物を電解質とする電解質水溶液(即ち、無機酸金属塩及び/又は金属水酸化物を溶質として含む水溶液)に電流を通じせしめて水を電気分解し、水素を得ることが可能である。電気分解によって得られた水素から金属不純物を取り除くために、該水素を水洗し、さらにミストフィルターに通すことが好ましい。水洗及びミストフィルターへ通すことにより、実質的に金属不純物を含まない水素を得ることが可能である。前記水素は、さらに、酸素及び水蒸気のような気体不純物を含まないことが好ましい。酸素及び水蒸気の除去方法は、工業用水素を得る際に知られている公知の方法が採用できる。シリコン析出工程1に用いる水素は、高純度の多結晶シリコンを得る観点から、純度が99.99vol%以上であることが好ましい。
【0028】
これら高純度のトリクロロシラン及び水素を用いることにより、純度11N以上の高純度の多結晶シリコンを得ることが可能である。
【0029】
<2.分離工程2>
本製造方法は、シリコン析出工程1から排出される排ガス13を、クロロシラン凝縮液26とガス成分A14とに分離する分離工程2を有する。
【0030】
排ガス13中には、少なくともクロロシラン化合物、水素及び塩化水素が含有される。排ガス13中に含まれるクロロシラン化合物は、原料ガス中に含有されていたクロロシラン化合物の熱分解生成物及び未反応のクロロシラン化合物からなり、例えばテトラクロロシラン、トリクロロシラン、ジクロロシラン、モノクロロシラン、ヘキサクロロジシラン、ペンタクロロジシラン等のうちの1種以上を含む。排ガス13中に含まれる水素は、原料ガス中に含有されていたクロロシラン化合物の熱分解により生ずる水素及び未反応の水素を含む。排ガス13中に含まれる塩化水素は、多結晶シリコンの析出反応から副生される塩化水素である。排ガス13中の塩化水素濃度は、例えば0.1モル%〜6モル%、特に0.2モル%〜3モル%である。
【0031】
分離工程2において得られるクロロシラン凝縮液26は、排ガス13に含まれていた種々のクロロシラン化合物の混合物である。クロロシラン凝縮液26には、さらに、若干の塩化水素も含まれるため、クロロシラン凝縮液26を、塩化水素放散工程4に供給することが好ましい。なお、クロロシラン凝縮液26は、後述される、塩化水素除去工程3、塩化水素放散工程4等の工程に供給されてもよく、本製造方法以外の用途に用いられてもよい。
【0032】
また、分離工程2において得られるガス成分A14は、水素ガス及び塩化水素を主成分として含む。ガス成分A14はさらに、クロロシラン凝縮液26として凝縮分離されずに残存しているクロロシラン化合物を、数体積%程度の量で含有しており、また極微量ではあるが、金属シリコン由来のホウ素及びリンを含み得る。
【0033】
分離工程2では、先ず、排ガス13が冷却されることが好ましい。排ガス13の冷却温度は、クロロシラン化合物が凝縮する温度以下であれば特に制限されず、用いられる冷却装置の冷却能力等を勘案して適宜決定することが可能である。冷却温度が低いほど、クロロシラン化合物の凝縮効果が高い傾向にある。分離工程2では、排ガス13の冷却温度は、クロロシラン凝縮液26とガス成分A14とをより効率的及び効果的に分離する観点から、好ましくは−10℃以下、より好ましくは―30℃以下である。排ガス13の冷却温度はまた、生産コストの観点から、−60℃を上回ることが好ましい。
【0034】
分離工程2で用いられる、分離方法としては、クロロシラン凝縮液26とガス成分A14とに分離できる限り特に制限されないが、凝縮除去法を用いることが好ましい。凝縮除去法は、排ガス13を冷却することによりクロロシラン化合物を凝縮させることによって、クロロシラン凝縮液26とガス成分A14とを分離する方法である。
【0035】
分離工程2において排ガス13を冷却する場合に用いられる冷却方法としては、排ガス13を前述の冷却温度に冷却することが可能である限り特に制限されず、公知の冷却方法を用いることが可能である。かかる冷却方法として具体的には、冷却された熱交換器に排ガス13を通過させて冷却させる冷却方法、又は、凝縮され冷却された凝縮物によって排ガス13を冷却する冷却方法等が挙げられる。これらの方法をそれぞれ単独で、又は併用して採用することも可能である。
【0036】
分離工程2は、次に、例えば耐圧容器内で、かつ、高圧力下で行われることが好ましい。分離工程2における圧力としては、クロロシラン化合物が十分に除去可能であれば特に制限されず、用いられる凝縮除去装置の能力等を勘案して適宜決定することが可能である。該圧力としては、クロロシラン凝縮液26とガス成分A14との分離効果を高くするために、400kPaG以上であることが好ましく、500kPaG以上であることがより好ましい。
【0037】
本製造方法では、分離工程2に供給する排ガス13の圧力を上昇させることを目的に、分離工程2に先だって、加圧機が設置されることも可能である。本製造方法はまた、該加圧機の保護のため、加圧機より上流側にて、予備的なクロロシラン凝縮が行われること、又はフィルターなどが設置されることが好ましい。これらの点は、工業的なプロセス設計の常法として採用することが可能である。
【0038】
<3.塩化水素除去工程3>
本製造方法は、ガス成分A14をクロロシラン液と接触させて塩化水素を除去し、ガス成分B15を得る塩化水素除去工程3を有する。
【0039】
塩化水素除去工程3で用いるクロロシラン液は、クロロシラン化合物を含む液体であり、該クロロシラン化合物としては、特に制限されないが、例えば、トリクロロシラン、ジクロロシラン、テトラクロロシラン等が挙げられる。
【0040】
塩化水素除去工程3で用いるクロロシラン液はまた、分離工程2で得られるクロロシラン凝縮液26の一部を含んでもよい。塩化水素除去工程3で用いるクロロシラン液は、効率的な塩化水素の除去の観点から、塩化水素を含んでいないことが好ましい。そのため、塩化水素除去工程3で用いるクロロシラン液は、後述する塩化水素放散工程4より得られる、塩化水素を放散したクロロシラン液21aであることが好ましい。これらにより、クロロシラン凝縮液26及び/又はクロロシラン液21aを有効に利用することができる。
【0041】
塩化水素除去工程3では、ガス成分A14に含まれる塩化水素をクロロシラン液と接触させ、該塩化水素を該クロロシラン液に吸収させることによって、ガス成分A14に含まれる塩化水素が除去される。
【0042】
塩化水素除去工程3では、ガス成分A14から効率的に塩化水素を除去するために、冷却されたクロロシラン液を用いることが好ましい。かかるクロロシラン液の温度は、ガス成分A14から効率的に塩化水素を除去するために、−40℃以下であることが好ましく、−50℃以下であることがより好ましい。
【0043】
塩化水素除去工程3では、ガス成分A14と接触させるクロロシラン液に含まれるクロロシラン化合物の量は、効率的に塩化水素を除去するために、クロロシラン化合物に含まれるシランの合計量に基づき、好適に設定され得る。ガス成分A14中に含有される塩化水素の1モルに対する上記クロロシラン化合物に含まれるシランの合計量は、130モル以上であることが好ましく、140モル以上であることがより好ましい。また、ランニングコスト低減の観点から、上記クロロシラン化合物に含まれるシランの合計量は、ガス成分A14中に含有される塩化水素の1モルに対して、150モル以下であることが好ましい。
【0044】
塩化水素除去工程3において、ガス成分A14とクロロシラン液とを接触させる方法としては、特に制限されないが、例えば、バブリング方式、充填塔方式、シャワー方式などの公知の方法を採用することができる。また、塩化水素除去工程3は、気液接触塔などの公知の設備で行われ得る。
【0045】
ガス成分A14とクロロシラン液とを接触させた後のガス成分を、ガス成分B15とする。塩化水素除去工程3で得られるガス成分B15は、水素ガスを主成分として含む。ガス成分B15はさらに、クロロシラン化合物を数体積%程度の量で含有するとともに、除去されずに残存している塩化水素を含む。ガス成分B15に含まれる塩化水素の濃度は、1ppm以下であることが好ましく、0.1ppm以下であることがより好ましい。
【0046】
塩化水素除去工程3では、ガス成分A14と接触させて塩化水素を吸収させたクロロシラン液20を、後述する塩化水素放散工程4に供給することが好ましい。これにより、塩化水素を吸収させたクロロシラン液20を有効に利用することができる。
【0047】
<4.水素精製工程5>
多結晶シリコンの製造方法は、ガス成分B15を活性炭と接触させてクロロシラン化合物を除去し、水素ガスA22a及び22bを得る水素精製工程5を有する。
【0048】
水素精製工程5は、活性炭の層又は活性炭を充填した吸着塔にガス成分B15を供給することによって行うことが好ましい。該吸着塔内で、ガス成分B15を活性炭と接触させることによって、ガス成分B15中のクロロシラン化合物が、活性炭によって吸着除去され、水素ガスA22a及び22bを得ることが可能である。水素精製工程5において使用される吸着塔は、主にクロロシラン化合物を吸着するため、クロロシラン吸着塔と称される場合もある。
【0049】
水素精製工程5で用いられる活性炭としては、ガス成分B15からクロロシラン化合物を除去することが可能な活性炭であれば特に制限なく、公知の活性炭を用いることができる。
【0050】
水素精製工程5で用いられる活性炭の形状は、特に制限されないが、例えば粒状、ハニカム状又は繊維状等の形状を有することが好ましい。それらの中でも、粒状のものは、前記吸着塔に充填させる際に、単位体積当りの充填量を多くすることが可能であるという点でより好ましい。該活性炭の大きさとしては、粒子径として1mm〜6mmであることが好ましい。
【0051】
活性炭は、一般に空気中の水分を吸着し易い。水分を吸着した活性炭を水素精製工程5に供すると、該水分がガス成分B15中のクロロシラン化合物と反応して活性炭上にケイ素酸化物が生成される場合がある。活性炭上にケイ素酸化物が生成されると、配管の閉塞、コンタミネーション等の不都合が生じるため好ましくない。従って、水素精製工程5で用いられる活性炭は、吸着した水分を除去した後に水素精製工程5に供することが好ましい。水分の除去方法としては、減圧処理及び加熱処理のうちの少なくとも一方を挙げることができる。
【0052】
前記減圧処理は、活性炭中の水分を十分に除去するために、絶対圧として、好ましくは1×104Pa以下、より好ましくは1×103Pa以下の減圧度で、一定時間保持することにより行うことができる。
【0053】
前記加熱処理は、活性炭中の水分を十分に除去するために、好ましくは80℃〜130℃において、一定時間保持することにより行うことができる。この加熱処理は、活性炭中の水分を十分に除去するために、不活性ガスの流通下又は減圧下で行うことが好ましい。使用される不活性ガスとしては、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン等を挙げることができる。減圧下で行う場合の好ましい減圧度としては、前記減圧処理における減圧度と同じである。
【0054】
減圧処理及び加熱処理ともに、活性炭中の水分が十分に除去されるまで行うことが好ましい。水分が十分に除去されたか否かは、雰囲気の露点測定によって確認することが可能である。水分の除去は、活性炭中の水分を十分に除去するために、雰囲気の露点が−30℃以下となるまで行うことが好ましく、−40℃以下となるまで行うことがより好ましい。
【0055】
水素精製工程5では、ガス成分B15を活性炭と接触させてクロロシラン化合物を吸着除去する間の、吸着温度及び吸着圧力としては、クロロシラン化合物が十分に吸着除去できる温度及び圧力であれば特に制限されない。該吸着温度としては、好ましくは−30℃〜50℃であり、より好ましくは−10℃〜40℃である。該吸着圧力としては、1300kPaG以上であることが好ましく、1500kPaG以上であることがより好ましい。前記吸着温度及び吸着圧力が前記範囲内であれば、ガス成分B15からクロロシラン化合物を十分に吸着除去することが可能である。
【0056】
水素精製工程5では、ガス成分B15を、活性炭の層又は活性炭を充填した吸着塔内に通過させるときの速度(即ち、通過速度)は、ガス成分B15中のクロロシラン化合物が十分に吸着除去できる速度であれば特に制限されない。前記通過速度は、該吸着塔の能力を勘案して適宜決定すれば良い。水素精製工程5におけるガス成分B15の前記通過速度は、空間速度(SV)としては、50Hr-1〜500Hr-1であることが好ましく、50Hr-1〜150Hr-1であることがより好ましい。
【0057】
ガス成分B15は、微量の塩化水素を含む場合があるが、その微量の塩化水素は、水素精製工程5において、クロロシラン化合物とともに、活性炭に吸着される。
【0058】
水素精製工程5で得られる水素ガスA22a及び22bは、純度99.99vol%以上の水素ガスであることが好ましい。また、水素精製工程5で得られる水素ガスA22a及び22b中に含まれるクロロシラン化合物の含有量は、クロロシラン化合物に含まれるシランの合計量に基づき、好適に制御され得る。上記クロロシラン化合物に含まれるシランの合計量は、3ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることがより好ましく、0.1ppm以下であることがさらに好ましい。前記構成とすることにより、水素精製工程5で得られる水素ガスA22a及び22bは、高純度の水素ガスとなる。
【0059】
水素精製工程5で得られる水素ガスA22aは、高純度の水素ガスであるため、シリコン析出工程1の原料ガスとして、そのまま循環利用することが可能である。また、水素ガスA22bは、後述する活性炭再生工程6で用いる水素ガスB28として用いてもよい。水素ガスA22aは更に、テトラクロロシランからトリクロロシランへの還元反応において用いる水素としても、又はテトラクロロシランを原料とするシリカの製造における水素源としても、用いることが可能である(図示せず)。
【0060】
本製造方法は、水素精製工程5より得られる水素ガスA22aをシリコン析出工程1に供給することを含むことが好ましい。前記構成によれば、水素ガスを再利用するため、環境負荷が少なく、生産コストが低い、多結晶シリコンの製造方法を提供することができる。
【0061】
水素精製工程5より得られる水素ガスA22aをシリコン析出工程1等の他の工程に供給する場合には、水素ガスA22aは他の工程に供給される前に、加圧されてもよい。水素ガスA22aを加圧する方法としては、後述する循環工程7においてガス成分C(加圧前)18を加圧する方法と同様の方法を用いることが可能である。
【0062】
<5.活性炭再生工程6>
本製造方法は、ガス成分B15と接触させた活性炭16を、水素ガスB28と接触させて再生する活性炭再生工程6を有する。
【0063】
水素精製工程5において、ガス成分B15から除去されたクロロシラン化合物は、活性炭の層又は活性炭を充填した吸着塔において吸着保持されている。活性炭再生工程6では、水素精製工程5において使用された、ガス成分B15と接触させた活性炭16からクロロシラン化合物が脱着し、ガス成分B15と接触させた活性炭16が再生され、再生活性炭17を得ることが可能である。再生活性炭17は、水素精製工程5において再利用することが可能である。活性炭再生工程6は、クロロシラン化合物が吸着保持された活性炭に、パージガスとしての水素ガスB28を流通させることで行うことが可能である。この結果、ガス成分B15と接触させた活性炭16から排出されるパージ排ガス、即ちガス成分C(加圧前)18中には、クロロシラン化合物及び水素が含有される。
【0064】
また、水素精製工程5に供するガス成分B15が微量の塩化水素を含んでいる場合、水素精製工程5において活性炭中にクロロシラン化合物と共に微量の塩化水素が吸着される。即ち、ガス成分B15と接触させた活性炭16が微量の塩化水素を含有する。従って、活性炭再生工程6で得られるガス成分C(加圧前)18中に塩化水素が含有される場合がある。
【0065】
活性炭再生工程6におけるクロロシラン化合物の脱着の条件は、クロロシラン化合物が活性炭から脱着できる条件であれば特に制限はなく、吸着塔の能力等を勘案して適宜決定すれば良い。活性炭からのクロロシラン化合物の脱着は、通常、10℃〜300℃、及び200kPaG以下の操作条件下で水素を流通しながら行う。特に、クロロシラン化合物の脱着効率を高めるためには、150℃〜250℃、100kPaG以下の操作条件下で水素を流通させることが好ましい。活性炭にパージガスとしての水素ガスB28を流通させるときの速度(空間速度(SV))は、該活性炭に吸着保持されたクロロシラン化合物が十分に脱着できる速度であれば特に制限されず、吸着塔の能力等を勘案して適宜決定すれば良い。該空間速度(SV)としては、一般的には、1Hr-1〜50Hr-1であり、1Hr-1〜20Hr-1の範囲で適宜決定することが好ましい。
【0066】
活性炭再生工程6では、パージガスとしての水素ガスB28の純度は特に制限されず、工業的に入手可能な水素をそのまま用いることが可能である。しかしながら、パージガスとしての水素ガスB28中に不純物が含まれている場合、該不純物が、活性炭再生工程6におけるクロロシラン化合物脱着時に活性炭に吸着される虞がある。そして、かかる不純物が吸着した再生活性炭17を、水素精製工程5においてガス成分B15からのクロロシラン化合物の除去に再利用した場合、前記不純物によって、活性炭から排出された水素ガスA22a及び22bが汚染される虞がある。本製造方法では、水素精製工程5において、ガス成分B15を再生活性炭17に接触させた場合であっても、再生活性炭17から得られる水素ガスA22a及び22bが再生活性炭17によって汚染されないことが好ましい。従って、水素ガスB28は、高純度の水素であることが好ましい。かかる水素としては、シリコン析出工程1に用いる水素、或いは水素精製工程5において得られた水素ガスA22b等を好適に用いることが可能である。
【0067】
水素精製工程5及び活性炭再生工程6は、工業的に連続操業することが可能である。このように連続操業する場合には、活性炭を充填した吸着塔を複数設けて、クロロシラン化合物を吸着塔内の活性炭に吸着させる水素精製工程5と、該活性炭を再生する活性炭再生工程6とを交互に実施する必要がある。例えば、2塔設置して、1塔で水素精製工程5を行い、その間に他塔で活性炭再生工程6を実施してもよい。或いは、3塔以上を設置して、1塔を水素精製工程5に使用し、2塔以上を活性炭再生工程6に使用してもよい。さらに、4塔以上設置することも可能である。また、多結晶シリコンの生産能力が大きい場合には、1塔当りの容量が大きい塔とすることも可能であるし、複数の塔を並列に使用することも可能である。
【0068】
複数の吸着塔を設置して、水素精製工程5と活性炭再生工程6とを交互に切り替えて水素精製工程5と活性炭再生工程6とが連続するように運用する場合について説明する。この場合、各吸着塔の水素精製工程5と活性炭再生工程6とを切り替えるタイミングについては、特に限定されない。例えば、予め水素精製工程5及び活性炭再生工程6の時間を設定し、ある時間が経過した段階で水素精製工程5から活性炭再生工程6へ、又は活性炭再生工程6から水素精製工程5へと切り替えればよい。水素精製工程5又は活性炭再生工程6の時間は、吸着塔の容量及び吸着塔に供給するガス成分B15の量などを勘案して適宜決定される。
【0069】
本製造方法は、ガス成分C(加圧前)18が以下の式を満たすことが好ましい。
【0070】
式:ジクロロシラン含有量<トリクロロシラン含有量+テトラクロロシラン含有量
(式中、含有量とは、ガス成分C(加圧前)における、ジクロロシラン、トリクロロシラン及びテトラクロロシランの含有量の合計に占める、各成分の割合(モル%)を指す)。
【0071】
<6.循環工程7>
本製造方法は、活性炭再生工程6より得られるガス成分C(加圧前)18を加圧して、分離工程2に供給する循環工程7を有する。
【0072】
活性炭再生工程6より得られるガス成分C(加圧前)18は、水素及びクロロシラン化合物、場合によってはさらに塩化水素を含有している。ガス成分C(加圧前)18を分離工程2に供給するためには、ガス成分C(加圧前)18を加圧する方法により、ガス成分C(加圧後)19を得る必要がある。従って、循環工程7は、ガス成分C(加圧前)18を加圧し、ガス成分C(加圧後)19を得る工程でもある。
【0073】
循環工程7では、ガス成分C(加圧前)18を加圧する方法としては、特に制限されず、公知の加圧方法を採用することが可能である。かかる加圧方法として具体的には、遠心圧縮機、軸流圧縮機等のターボ圧縮機、レシプロ圧縮機、ダイヤフラム式圧縮機、スクリュー圧縮機、ロータリー圧縮機等の容積圧縮機等の加圧方法が挙げられる。
【0074】
循環工程7では、ガス成分C(加圧前)18の加圧の圧力は、分離工程2に供給可能な程度まで加圧されれば特に制限はない。通常、ガス成分C(加圧後)19の圧力が500kPaG〜600kPaGとなるまでガス成分C(加圧前)18の加圧を行えば十分である。前述の圧縮方法によってガス成分C(加圧前)18は加圧され、ガス成分C(加圧後)19となり、分離工程2に供給することが可能となる。
【0075】
循環工程7では、ガス成分C(加圧前)18を加圧する際の圧力としては、分離工程2に供給可能な程度まで加圧できる圧力であれば特に制限はない。該圧力としては、500kPaG〜1000kPaGであることが好ましく、500kPaG〜700kPaGであることがより好ましい。即ち、ガス成分C(加圧後)19が、前記範囲の圧力であることが好ましい。ガス成分C(加圧前)18を加圧する際の圧力が、前記範囲内であれば、ガス成分C(加圧後)19を分離工程2に効率的に供給することが可能となる利点、及び、加圧設備が小規模となり建設コストがより安価となる利点、がある。
【0076】
<7.塩化水素放散工程4>
多結晶シリコンの製造方法は、塩化水素除去工程3にて前記塩化水素を吸収させたクロロシラン液20から、該塩化水素を放散する塩化水素放散工程4を有することが好ましい。前記構成によれば、塩化水素とクロロシラン液とを分離することができ、塩化水素を放散したクロロシラン液21a又は21bを、それぞれ、塩化水素除去工程3に再利用するか又は蒸留系に供給することが可能となる。
【0077】
塩化水素放散工程4では、塩化水素除去工程3にて前記塩化水素を吸収させたクロロシラン液20を放散塔に供給し、該放散塔の塔頂よりガス状の塩化水素を、放散された塩化水素27として回収することが可能である。
【0078】
塩化水素放散工程4では、前記放散塔の形式としては、公知の方法を特に制限なく採用することが可能である。例えば、底部にリボイラーを有した充填塔形式又は棚段形式等の放散塔を使用して行うことができる。
【0079】
塩化水素放散工程4において、塩化水素の放散条件は、公知の条件を何等制限されずに適用することが可能であるが、温度110℃〜150℃、及び圧力700kPaG〜900kPaGであることが好ましい。
【0080】
本製造方法は、分離工程2より得られるクロロシラン凝縮液26を塩化水素放散工程4に供給することを含むことが好ましい。前記構成によれば、分離工程2より得られたクロロシラン凝縮液26に含まれる塩化水素を塩化水素放散工程4において、放散された塩化水素27として回収することが可能となる。また、塩化水素放散工程4に供給することにより、クロロシラン凝縮液26中の塩化水素濃度が減少し、後述の蒸留工程11により好適に使用できるクロロシラン化合物を得ることができる。
【0081】
塩化水素放散工程4において得られた、放散された塩化水素27は、塩化水素を主成分とするが、その他微量の水素及びクロロシラン化合物を含む場合がある。
【0082】
塩化水素放散工程4において得られた、放散された塩化水素27は、他の工程において使用することが好ましい。これにより、放散された塩化水素27を有効に利用することができる。
【0083】
塩化水素放散工程4では、塩化水素を放散したクロロシラン液21bを、蒸留工程11に供給し、蒸留後のクロロシラン化合物29を、ガス状にした後に、シリコン析出工程1の原料ガスとして再利用することが好ましい。これにより、蒸留後のクロロシラン化合物29を有効に利用することができる。
【0084】
<8.吸収液循環工程>
本製造方法は、塩化水素放散工程4より得られる、塩化水素を放散したクロロシラン液21aの一部を塩化水素除去工程3に供給する吸収液循環工程をさらに含むことが好ましい。前記構成によれば、クロロシラン液を再利用するため、環境負荷が少なく、生産コストが低い、多結晶シリコンの製造方法を提供することができる。
【0085】
塩化水素放散工程4において、放散塔の塔底のクロロシラン液、即ち、塩化水素を放散したクロロシラン液21aの一部を塩化水素除去工程3に循環するクロロシラン液ラインを設けることが好ましい。クロロシラン液ラインを設けることによって、塩化水素を放散したクロロシラン液21aを、塩化水素除去工程3において用いるクロロシラン液の一部又は全部として使用することが可能となる。これにより、塩化水素を放散したクロロシラン液21aを有効に利用することができる。
【0086】
<9.蒸留工程11>
本製造方法は、塩化水素を放散したクロロシラン液21bを蒸留して、蒸留後のクロロシラン化合物29をシリコン析出工程1へと供給する蒸留工程11を含んでいることが好ましい。これにより、蒸留後に得られたクロロシラン化合物29をシリコン析出工程1の原料ガスとして再利用することができる。なお、蒸留後のクロロシラン化合物29をシリコン析出工程1に供給する前に、必要であれば精製工程を備えてもよい。
【0087】
本発明の一実施形態は、以下のような構成であってもよい。
[1]クロロシラン化合物と水素とを反応させて多結晶シリコンを析出させるシリコン析出工程、前記シリコン析出工程から排出される排ガスを、クロロシラン凝縮液とガス成分Aとに分離する分離工程、前記ガス成分Aをクロロシラン液と接触させて塩化水素を除去し、ガス成分Bを得る塩化水素除去工程、前記ガス成分Bを活性炭と接触させてクロロシラン化合物を除去し、水素ガスAを得る水素精製工程、前記ガス成分Bと接触させた活性炭を、水素ガスBと接触させて再生する活性炭再生工程、及び、前記活性炭再生工程より得られるガス成分Cを加圧して、前記分離工程に供給する循環工程、を含むことを特徴とする多結晶シリコンの製造方法。
[2]前記塩化水素除去工程にて前記塩化水素を吸収させた前記クロロシラン液から、該塩化水素を放散する塩化水素放散工程をさらに含む、[1]に記載の多結晶シリコンの製造方法。
[3]前記塩化水素放散工程より得られる、塩化水素を放散した前記クロロシラン液の一部を前記塩化水素除去工程に供給する吸収液循環工程をさらに含む、[2]に記載の多結晶シリコンの製造方法。
[4]前記分離工程より得られる前記クロロシラン凝縮液を前記塩化水素放散工程に供給することを含む、[2]又は[3]に記載の多結晶シリコンの製造方法。
[5]前記水素精製工程より得られる前記水素ガスAを前記シリコン析出工程に供給することを含む、[1]〜[4]の何れか1つに記載の多結晶シリコンの製造方法。
[6]前記ガス成分Cが以下の式を満たす、[1]〜[5]の何れか1つに記載の多結晶シリコンの製造方法。
式:ジクロロシラン含有量<トリクロロシラン含有量+テトラクロロシラン含有量
(式中、含有量とは、ジクロロシラン、トリクロロシラン及びテトラクロロシランの含有量の合計に占める、各成分の割合(モル%)を指す)
[7]前記分離工程が、前記排ガスを−10℃以下に冷却することを含む、[1]〜[6]の何れか1つに記載の多結晶シリコンの製造方法。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
図1に示す方法により、本発明を実施した。
【0089】
シリコン析出工程1では、シーメンス法により多結晶シリコンの析出を行った。内容積10m3のベルジャー(反応器)内には、逆U字型の多結晶シリコン芯線50セットを底盤に設けられた電極に設置した。前記ベルジャー内の温度は、多結晶シリコン芯線の温度が約1000℃で維持されるように、多結晶シリコン芯線への通電量により調整された。前記条件下で、ベルジャー内に、原料ガスとして、水素ガスA22a、及びガス状にしたクロロシラン化合物29を供給して、多結晶シリコンの析出を行った。ここで、クロロシラン化合物29に対する水素ガスA22aのモル比は7であった。また、クロロシラン化合物29の大部分は、トリクロロシランであった。
【0090】
シリコン析出工程1では、前記ベルジャーから、下記表1に示す組成の排ガス13が、24000Nm3/時間の量で得られた。
【0091】
【表1】
【0092】
前記排ガス13は分離工程2に送られ、冷却器により−15℃に冷却して、表2に示す組成のガス成分A14とクロロシラン凝縮液26とを得た。
【0093】
【表2】
【0094】
前記ガス成分A14は、20000Nm3/時間の量で塩化水素除去工程3に送り、ここで気液接触塔を用いて、クロロシラン液120m3/時間と接触せしめて表3に示すガス成分B15を得た。
【0095】
【表3】
【0096】
尚、前記クロロシラン液は、前記クロロシラン凝縮液26が供給された塩化水素放散工程4から得られた、塩化水素を放散したクロロシラン液21aを使用した。
【0097】
一方、塩化水素除去工程3にて使用後のクロロシラン液は、塩化水素を吸収させたクロロシラン液20として、塩化水素放散工程4に送られた。
【0098】
次いで、前記ガス成分B15は、水素精製工程5に設けられた吸着塔(以下、実施例中ではクロロシラン吸着塔と称する)で処理された。そして水素精製工程5で得られた水素ガスA22aは、上述したように、シリコン析出工程1に供給された。ここで、シリコン析出工程1において水素ガスが不足する場合には、電解設備により製造および精製された水素ガスを、シリコン析出工程1に補充した。
【0099】
前記クロロシラン吸着塔としては、活性炭(Chlorsorb(商品名);Jacobi社製)を充填した吸着塔を3本並列に設置して使用し、クロロシラン化合物の吸着と脱着とを切り替えて行った。即ち、クロロシラン化合物を吸着し終わったクロロシラン吸着塔(ガス成分Bと接触させた活性炭16を含んでいる)は、活性炭再生工程6に供され、クロロシラン吸着塔に含まれる活性炭の再生が行われ、再生されたクロロシラン吸着塔(再生活性炭17を含んでいる)が得られた。活性炭再生工程6は、水素精製工程5より得られる水素ガスAの一部を水素ガスA22bとして供給し、クロロシラン吸着塔内の温度を120℃以上に調整しながら、吸着されたクロロシラン化合物をパージすることにより行われた。ここで、水素ガスとしては水素ガスA22bのみが使用され、水素ガスBは使用されなかった。クロロシラン化合物を含むパージ排ガスは、ガス成分C(加圧前)18として得られ、循環工程7に送られ、コンプレッサーにて昇圧された後、ガス成分C(加圧後)19として、分離工程2に供給された。
【0100】
前記ガス成分C(加圧前)18の組成を表4に示す。
【0101】
【表4】
【0102】
前記表4より明らかなように、パージ排ガスとしてのガス成分C(加圧前)18には、ホウ素(B)及びリン(P)が検出されなかった。故に、得られたガス成分C(加圧前)18をクロロシラン化合物源として分離工程2において再利用しても、クロロシラン化合物の循環系において、ホウ素及びリンの蓄積は殆ど起こらない。
【0103】
一方、前記塩化水素放散工程4において、塩化水素が除去されたクロロシラン液は、クロロシラン液21bとして、蒸留工程11に送られた。蒸留工程11において、蒸留塔の留出液として、精製されたトリクロロシランが得られ、該トリクロロシランは、クロロシラン化合物29として、ガス状にされた後にシリコン析出工程1に供給された。ここで、シリコン析出工程1においてクロロシラン化合物が不足する場合には、次のように、クロロシラン化合物をシリコン析出工程1に補充した。つまり、金属シリコンとテトラクロロシランとの反応により別途製造されたクロロシラン化合物を、前記蒸留工程11に供給し、蒸留後のクロロシラン化合物29をガス状にした後にシリコン析出工程1に補充した。
【0104】
また、前記塩化水素放散工程4では、放散された塩化水素27も得られた。
【0105】
前記各表に示す各組成は、運転開始後10日目の測定データである。
【0106】
(比較例1)
実施例1において、塩化水素除去工程3について、前記気液接触塔を、塩化水素吸着塔に変更して、塩化水素の除去を行った以外は、実施例1と同様にして操作を実施した。
【0107】
前記塩化水素吸着塔としては、活性炭(Chlorsorb(商品名);Jacobi社製)を充填した吸着塔を使用した。塩化水素吸着塔を2本並列に設置して使用し、塩化水素の吸着と脱着とを切り替えて行った。即ち、塩化水素を吸着し終わった塩化水素吸着塔は、活性炭再生工程に供された。活性炭再生工程では、水素精製工程より得られる水素ガスの一部を供給し、吸着塔内の温度を120℃以上に調整しながら、吸着された塩化水素をパージすることにより再生した。
【0108】
塩化水素吸着塔を用いて塩化水素を除去されたガス成分は、実施例1と同様、水素精製工程に設けられた、クロロシラン吸着塔で同様に処理された。言い換えれば、比較例1では、活性炭を充填した吸着塔は、塩化水素を除去させるための塩化水素吸着塔と、クロロシラン化合物を吸着させるためのクロロシラン吸着塔とがある。
【0109】
比較例1において、クロロシラン化合物を吸着し終わったクロロシラン吸着塔よりクロロシラン化合物をパージして得られる、クロロシラン化合物を含むパージ排ガス(実施例1におけるガス成分C(加圧前)18に相当)は、表5に示す組成であった。
【0110】
【表5】
【0111】
前記表5より明らかなように、塩化水素の除去に活性炭を使用した比較例1では、クロロシラン化合物を含むパージ排ガスにおいて、ホウ素(B)及びリン(P)が存在する。そのため、該パージ排ガスをクロロシラン化合物源として分離工程2に戻した場合、クロロシラン化合物の循環系において、ホウ素(B)及びリン(P)の蓄積が問題となる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本製造方法は、従来の製造方法と比べて、環境負荷がより少なく、生産コストがより低いため、半導体又は太陽光発電用ウエハーの原料として使用される多結晶シリコンを製造するために、好適に利用できる。
【符号の説明】
【0113】
1 シリコン析出工程
2 分離工程
3 塩化水素除去工程
4 塩化水素放散工程
5 水素精製工程
6 活性炭再生工程
7 循環工程
13 排ガス
14 ガス成分A
15 ガス成分B
16 ガス成分Bと接触させた活性炭
18 ガス成分C(加圧前)
20 塩化水素を吸収させたクロロシラン液
21a、21b 塩化水素を放散したクロロシラン液
22a、22b 水素ガスA
26 クロロシラン凝縮液
28 水素ガスB
図1