(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446273
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】予組立てされた角度測定装置とこの予組立てされた角度測定装置を得るためのキット
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
G01D5/245 110W
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-4181(P2015-4181)
(22)【出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2015-152591(P2015-152591A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年9月5日
(31)【優先権主張番号】14154668.9
(32)【優先日】2014年2月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト・ズーリク
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−127793(JP,A)
【文献】
実開昭58−189917(JP,U)
【文献】
特開平06−003163(JP,A)
【文献】
米国特許第05981940(US,A)
【文献】
米国特許第04343992(US,A)
【文献】
独国特許出願公開第03038005(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目盛キャリヤ(11)を有するロータ(10)と、走査ユニット(21)を有するステータ(20)と、組立て手段とを有し、測定モードでロータ(10)とステータ(20)が、回転軸(D)を中心として互いに相対回転可能に配置され、目盛キャリヤ(11)が、ステータ(20)に対するロータ(10)の相対的な角度位置を決定するために走査ユニット(21)によって走査可能であり、組立て手段が、測定モード以外ではステータ(20)に対してロータ(10)を位置固定する、予組立てされた角度測定装置において、
組立て手段が、スリーブ(2)と拡開要素(9)を備え、スリーブ(2)が、ロータ(10)の、回転軸(D)に沿って延在する穿孔(13)内へ挿入され、拡開要素(9)によって半径方向に拡開され、拡開により、スリーブ(2)が、穿孔(13)の内壁に半径方向にクランプされ、更にスリーブ(2)が、ステータ(20)に固定されたホルダ(1.1,1.2,1.3)に配置されていること、を特徴とする予組立てされた角度測定装置。
【請求項2】
拡開要素(9)が、回転軸(D)に沿ってスリーブ(2)内へねじ込まれていること、を特徴とする請求項1に記載の予組立てされた角度測定装置。
【請求項3】
スリーブ(2)が、回転軸(D)に沿って延在するスリット(4)を備え、これにより、舌片(5)が構成され、これら舌片が、拡開要素(9)によって半径方向に穿孔(13)の内壁に押し付けられていること、を特徴とする請求項1又は2に記載の予組立てされた角度測定装置。
【請求項4】
ホルダ(1.1,1.2,1.3)が、ストッパ面(8)を備え、このストッパ面が、ホルダ(1.1,1.2,1.3)を軸方向にステータ(20)に位置固定すること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の予組立てされた角度測定装置。
【請求項5】
ホルダ(1.1,1.2,1.3)が、少なくとも1つのネジ(6,7)によってステータ(20)に固定され、このネジが、ステータ(20)内へねじ込まれ、ホルダ(1.1,1.2,1.3)をそのストッパ面(8)でもってステータ(20)にクランプすること、を特徴とする請求項4に記載の予組立てされた角度測定装置。
【請求項6】
組立て手段が、更に外ガイド(3)を備え、この外ガイドが、ロータ(10)を噛合い係合式にホルダ(1.1,1.2,1.3)に半径方向に位置決めすること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の予組立てされた角度測定装置。
【請求項7】
目盛キャリヤ(11)を有する角度測定装置のロータ(10)と、走査ユニット(21)を有する角度測定装置のステータ(20)とを有し、測定モードでロータ(10)とステータ(20)が、回転軸(D)を中心として互いに相対回転可能に配置され、目盛キャリヤ(11)が、ステータ(20)に対するロータ(10)の相対的な角度位置を決定するために走査ユニット(21)によって走査可能である、予組立てされた角度測定装置を得るためのキットであって、このキットが、更に、測定モード以外では角度測定装置のステータ(20)に対するロータ(10)の位置固定をするための組立て手段を有する、キットにおいて、
組立て手段が、スリーブ(2)と拡開要素(9)を備え、スリーブ(2)が、ロータ(10)の、回転軸(D)に沿って延在する穿孔(13)内へ挿入可能であり、拡開要素(9)によって半径方向に拡開可能であり、拡開により、スリーブ(2)が、穿孔(13)の内壁に半径方向にクランプ可能であり、これによりロータ(10)をステータ(20)に位置固定し、更にスリーブ(2)が、ステータ(20)に固定可能なホルダ(1.1,1.2,1.3)に配置されていること、を特徴とするキット。
【請求項8】
拡開要素(9)が、回転軸(D)に沿ってスリーブ(2)内へねじ込み可能であること、を特徴とする請求項7に記載のキット。
【請求項9】
スリーブ(2)が、回転軸(D)に沿って延在するスリット(4)を備え、これにより舌片(5)が構成され、これら舌片が、拡開要素(9)によって半径方向に穿孔(13)の内壁に移動可能であること、を特徴とする請求項7又は8に記載のキット。
【請求項10】
ホルダ(1.1,1.2,1.3)が、ストッパ面(8)を備え、このストッパ面が、一方ではホルダ(1.1,1.2,1.3)を軸方向にステータ(20)に位置固定し、他方ではステータ(20)に対するホルダ(1.1,1.2,1.3)の半径方向の調整を許容すること、を特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のキット。
【請求項11】
ホルダ1.1,1.2,1.3)が、ネジ(6,7)を収容するための少なくとも1つの穿孔(61,71)を備え、このネジが、ステータ(20)内へねじ込み可能であり、穿孔(61,71)は、ネジ(6,7)が挿入されているが締め付けられていない時に、ホルダ(1.1,1.2,1.3)の半径方向の調整が可能にされているように、寸法設定されていること、を特徴とする請求項10に記載のキット。
【請求項12】
組立て手段が、更に外ガイド(3)を備え、この外ガイドが、ロータ(10)を噛合い係合式にホルダ(1.2,1.3)に半径方向に位置決めするために形成されていること、を特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1による予組立てされた角度測定装置並びに請求項7によるこの角度測定装置を得るためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
角度測定装置は、しばしば位置測定のために電気駆動ユニットと関係して利用される。省スペースの組込みのため、しばしば、内蔵ロータリエンコーダとも呼ばれる軸受なしの角度測定装置が使用される。このような内蔵ロータリエンコーダは、目盛キャリヤを有するロータとメモリキャリヤを走査するための走査ユニットを有するステータとから成る。ステータに対してロータを回転可能に支承するため、測定モードで駆動ユニットの支承部が利用されるので、角度測定装置の固有の支承部は不要である。駆動ユニットへの角度測定装置の取付け時には、ロータが、ステータに対して、最適な走査信号が得られる軸方向並びに半径方向の位置関係を備えることが保証されなければならない。従って、このような角度測定装置のメーカにおいて既に、目盛キャリヤと走査ユニットの間の軸方向の間隔並びに半径方向の関係の最適な調整が行なわれる。調整を行なった後、ロータとステータは、組立て手段によって互いにロックされるので、調整された位置関係は、ユーザへの搬送中並びに駆動ユニットへの取付け中に維持される。取付けを行なった後、次にロックが、後続の測定モードのために解除される。
【0003】
組立て手段により、取付けを行なった後のこの角度測定装置のロータとステータを再びこの調整された位置に互いに固定し、こうして予組立てされた角度測定装置を場合によっては測定すべき他の対象、例えば他の駆動ユニットに再び取り付けることも可能である。
【0004】
欧州特許出願公開第1 526 363号明細書から、請求項1の上位概念の特徴を有する予組立てされた角度測定装置並びに請求項7の特徴を有するキットが公知である。測モード以外でステータに対してロータを位置固定するため、即ち搬送及び駆動ユニットへ取り付けるため、組立て手段は、一方ではロータとネジ固定され、他方ではステータとネジ固定されるプレートの形態の組立て手段が設けられている。
【0005】
ロータとのプレートのネジ固定は、比較的多くのスペースを前提とする。更に、最適な位置関係の簡単な調整は、要求される全ての自由度では可能でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 526 363号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根底にある課題は、コンパクトな構成を可能にし、正確な位置測定を可能にする予組立てされた角度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を有する予組立てされた角度測定装置によって解決される。
【0009】
更に、本発明の根底にある課題は、角度測定装置のコンパクトな構成を可能にし、角度測定装置の正確な位置測定を保証する予組立てされた角度測定装置を得るためのキットを提供することにある。
【0010】
この課題は、請求項7の特徴を有するキットによって解決される。
【0011】
本発明の有利な形成は、従属請求項と後続の実施例の説明からわかる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図6】駆動ユニットへの取付け時の
図5による予組立てされた角度測定装置
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び2に基づいて、本発明により形成された軸受なしの予組立てされた角度測定装置とこの予組立てされた角度測定装置を得るために形成されたキットを説明する。
【0014】
角度測定装置は、一方では目盛キャリヤ11を有するロータ10を、他方では走査ユニット21を有するステータ20を有する。測定モードで、ロータ10とステータ20は、回転軸Dを中心として互いに相対回転可能に配置されている。この場合、目盛キャリヤ11は、ステータ20に対するロータ10の相対的な角度位置を決定するために走査ユニット21によって走査される。目盛キャリヤ11は、この実施例では目盛12を支持するディスクとして形成されている。目盛12は、インクリメンタル目盛又はコード化された目盛として形成され、走査ユニット21と向かい合うように配置されているので、走査ユニット21は、測定モードで位置に依存した走査信号を発生させる。
【0015】
この軸受なしの角度測定装置の駆動ユニットへの取付け時には、ロータ10が、ステータ20に対して、最適な走査信号が発生される軸方向並びに半径方向の位置関係を備えることを保証しなければならない。このため、ステータ20に対してロータ10を位置固定するための組立て手段が設けられている。これら組立て手段は、ホルダ1.1から成り、このホルダに、中空シリンダ状のスリーブ2が配置され、このスリーブは、予組立てのために回転軸Dに沿って延在するロータ10の同軸の穿孔13内へ挿入されている。穿孔13とスリーブ2は、周囲に関して、スリーブ2が穿孔13のため、従ってロータ10のために遊びのない長手方向ガイドを軸方向に、即ち回転軸Dに沿って構成するように、寸法設定されている。この長手方向ガイドにより、ステータ20に対するロータ10の軸方向の調整が可能にされるので、目盛12と走査ユニット21の間の最適な走査間隔が設定可能である。ロータ10の軸方向の調整のため、スリーブ2は、軸方向にステータ20に対して相対的に固定されている。この固定は、ホルダ1.1がその下のストッパ面8でもってステータ20の対応するストッパ面22に載置されていることにより、軸方向に作用する噛合い係合部によって実現されている。
【0016】
スリーブ2は、最適な走査間隔の設定後にロータ10をこの位置関係でホルダ1.1に軸方向に固定するために形成されている。この固定は、拡開要素9によって実現され、この拡開要素により、スリーブ2が半径方向に拡開可能であり、拡開により、スリーブ2は、穿孔13の内壁に半径方向にクランプされる。穿孔13と拡開要素9を中心に及び回転軸Dに対して回転対称に配置することにより、クランプ力が回転軸Dに対して対称に作用することが保証されている。導入される力は、ステータ20に対して相対的なロータ10の半径方向の移動を惹起する力が生じないように、相殺される。
【0017】
拡開要素9は、例えば回転軸Dに沿ってスリーブ2内へねじ込み可能である。このため、スリーブ2が内ネジを備え、拡開要素9が対応する外ネジを備える。
【0018】
スリーブ2の簡単な拡開を可能にするため、スリーブは、このスリーブが例えば少なくとも部分的に薄肉に形成されていることにより、少なくとも部分的に半径方向に拡幅可能に形成されている。スリーブ2が少なくとも部分的に回転軸Dに沿って延在するスリット4を備え、これにより、特に
図2に図示したような、拡開要素9によって半径方向に移動可能な弾性的な複数の舌片5もしくはクランプジョーが生じる。半径方向に転向可能な舌片5は、これら舌片により半径方向に作用するクランプ力だけが加えられ、横方向力が導入されないことを保証する。
【0019】
拡開要素9は、例えばその端部が円錐状になったピンである。
【0020】
ホルダ1.1のストッパ面8は、一方では調整中、即ち予組立て中に軸方向にホルダをステータ20に固定し、他方ではステータ20に対するホルダ1.1の半径方向の調整を許容する機能を有する。ホルダ1.1の半径方向の調整は、ホルダ1.1をステータ20に載置し、そのストッパ面8によりステータ20の軸方向に作用する対応するストッパ面22に沿ってホルダ1.1を移動させることによって実現される。
【0021】
調整を行なった後、ホルダ1.1は、ステータ20に位置不動に固定される。このため、複数のネジ6,7が設けられ、これらネジは、ステータ20内へ上からねじ込み可能であるので、ホルダ1.1は、そのストッパ面8によりステータ20にクランプされる。ネジ6,7を収容するため、ホルダ1.1に穿孔61,71が設けられ、これら穿孔は、ステータ20内へネジ6,7がねじ込まれているが、ネジ6,7が未だしっかりと締め付けられていない時に、そのストッパ面8によるステータ20のストッパ面22に沿ったホルダ1.1の移動を許容する。この移動を、従ってロータ10を伴うホルダ1.1の半径方向の調整を可能にするため、穿孔61,71は、相応に、特にそれぞれのネジ6,7のシャフトよりも大きく寸法設定されている。
【0022】
図3及び4は、本発明の第2の実施例を示す。この角度測定装置の構成は、十分に第1の実施例に一致するので、そこで説明した形成が、ここでも当て嵌まり、以下では違う特徴だけを説明する。第1の実施例に対して補足的に、ステータ20に対するロータ10の位置固定のために外ガイド3が設けられ、この外ガイドは、ロータ10を半径方向に噛合い係合式に位置決めするために形成されている。外ガイド3は、拡開要素9によるロータ10の半径方向の変形に反作用するカウンタホルダとしても機能する。スリーブ2と外ガイド3は、特に
図4からわかるように、この例では共にホルダ1.2に配置されている。
【0023】
図5及び6は、本発明により形成された角度測定装置の第3の選択的な実施形態を示す。この角度測定装置の構成は、十分に第2の実施例に一致するので、そこで説明した形成がここでも当て嵌まり、以下では違う特徴だけを説明する。第2の実施例とは違い、ホルダ1.3が2部材から形成されている。スリーブ2は、ホルダ1.3の第1の部分に配置され、外ガイド3は、ホルダ1.3の第2の部分に配置されている。この2部材からの形成により、スリーブ2と外ガイド3の製造は、より簡単である。
【0024】
ホルダ1.3の第1の部分とホルダ1.3の第2の部分は、共に取扱い可能であり、調整時に半径方向と軸方向の位置は、噛合い係合部により互いに不動に位置決めされている。ホルダ1.3の第2の部分に対するホルダ1.3の第1の部分の半径方向の関係は、噛合い係合部によって設定され、この噛合い係合部は、この例では、ホルダ1.3の第1の部分(上の部分)におけるツバとして形成され、このツバは、ホルダ1.3の第2の部分(下の部分)の嵌合部に遊びなく係合する。
図5には、どのように、ここではホルダ1.3、拡開要素9及びネジ6,7から成る組立て手段が、ロータ10とステータ20と予組立て品を得るために集結されるかが図示されている。
【0025】
図6は、駆動ユニットに取り付けられた予組立てされた角度測定装置を示す。この場合、ロータ10とステータ20は、調整された状態で駆動ユニットに供給され、ロータ10が駆動ユニットの軸100と結合され、ステータ20が駆動ユニットのステータ200と結合される。取付けを行なった後、組立て手段(ホルダ1.3、拡開要素9及びネジ6,7)が解離され、特にまた除去されるので、測定モードでは、角度測定装置のステータ20に対する角度測定装置のロータ10の回転が可能にされている。
【0026】
目盛キャリヤ11は、ディスク状に形成すること又はドラムとして形成することができ、その場合ドラムにおける目盛は、ドラムの外周又は内周に配置することができる。
【0027】
目盛12は、光学的、誘導的、磁気的又は容量的に走査可能に形成することができる。
【符号の説明】
【0028】
1.1 ホルダ
2 スリーブ
4 スリット
5 舌片
6 ネジ
7 ネジ
8 ストッパ面
9 拡開要素
10 ロータ
11 目盛キャリヤ
12 目盛
13 穿孔
20 ステータ
21 走査ユニット
22 ストッパ面
61 穿孔
71 穿孔
D 回転軸