(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の撮像装置の一実施形態である撮像システムの概略構成を示す図である。
【0016】
図1に示す撮像システムは、レンズ装置11及びフォーカスレンズ操作装置12を有するレンズシステム1と、カメラ本体2と、を備える。
【0017】
レンズ装置11は、レンズ制御部21と、ズームレンズ20、フォーカスレンズ22、及び、絞り24を含む撮像光学系と、フォーカスレンズ駆動部23と、ズームレンズ駆動部27と、絞り駆動部25と、通信インタフェース(以下、I/Fと略す)26と、を有する。
【0018】
レンズ制御部21は、レンズ装置11全体を統括制御する。レンズ制御部21は、プロセッサを主体に構成されており、プロセッサの実行するプログラム等が記憶されるROM(Read Only Memory)、及び、ワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)等を含む。レンズ制御部21は、ROMに記憶されたレンズ駆動プログラムを含むプログラムを実行することで、後述する各機能を実現する。
【0019】
レンズ制御部21のROMは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない(non−transitory)記憶媒体である。このROMに記憶されるプログラムは、レンズ装置11の製造時に予め記憶されるものの他、パーソナルコンピュータ等の電子機器から入力されて記憶されたり、レンズ装置11にネットワークを介してダウンロードされて記憶されたりしたものであってもよい。
【0020】
ズームレンズ20は、光軸方向に移動可能な可動レンズである。ズームレンズとは、光軸方向に移動することで、焦点距離を調整するレンズを言う。
【0021】
ズームレンズ駆動部27は、レンズ制御部21の制御に基づいてズームレンズ20を光軸方向に移動させて焦点距離の調整を行うためのハードウェアであり、モータ等によって構成される。
【0022】
フォーカスレンズ22は、光軸方向に移動可能な可動レンズである。フォーカスレンズとは、光軸方向に移動することで、焦点位置を調整するレンズを言う。
【0023】
フォーカスレンズ駆動部23は、レンズ制御部21の制御に基づいてフォーカスレンズ22を光軸方向に移動させて焦点位置の調整を行うためのハードウェアであり、モータ等によって構成される。
【0024】
絞り駆動部25は、レンズ制御部21の制御に基づいて絞り24を駆動して露光量の調整を行う。
【0025】
通信I/F26は、フォーカスレンズ操作装置12と無線又は有線により通信を行うためのインタフェースである。通信I/F26は、フォーカスレンズ操作装置12から受信した操作信号をレンズ制御部21に入力する。
【0026】
フォーカスレンズ操作装置12は、操作部材31と、回転量検出部32と、操作制御部33と、通信I/F34と、を有する。
【0027】
操作部材31は、フォーカスレンズ22を手動で移動させるための移動自在な部材である。操作部材31の例として、回転可能な部材又はスライド可能な部材を挙げることができる。以下では、操作部材31が回転可能な部材であるものとして説明する。
【0028】
回転量検出部32は、操作部材31が操作者により回転されることによる操作部材31の回転量(言い換えると移動量)を検出し、検出した回転量を操作制御部33に出力する。ここで検出される回転量の単位は例えば角度で示される。
【0029】
操作制御部33は、回転量検出部32で検出された回転量の情報を操作信号として、通信I/F34を介してレンズ装置11に送信する。
【0030】
通信I/F34は、レンズ装置11と無線又は有線により通信を行うためのインタフェースである。
【0031】
カメラ本体2は、撮像素子41と、画像処理部42と、を有する。
【0032】
撮像素子41は、レンズ装置11の撮像光学系を通して被写体を撮像して撮像画像信号を出力する。
【0033】
画像処理部42は、撮像素子41から出力された撮像画像信号に所定の信号処理を施して、例えば放送用の映像信号を生成する。
【0034】
図2は、
図1に示すレンズ制御部21の機能ブロック図である。
【0035】
レンズ制御部21は、操作信号取得部21aと、深度範囲算出部21bと、駆動量生成部21cと、平滑化処理部21dと、可動レンズ駆動部21eと、を備える。操作信号取得部21a、深度範囲算出部21b、駆動量生成部21c、平滑化処理部21d、及び、可動レンズ駆動部21eは、プロセッサがプログラムを実行することで構成される。
【0036】
操作信号取得部21aは、通信I/F26がフォーカスレンズ操作装置12から受信した操作信号を取得する。
【0037】
深度範囲算出部21bは、フォーカスレンズ22の光軸方向の位置、絞り24の絞り値、及び、ズームレンズ20の光軸方向の位置に基づいて、フォーカスレンズ22の移動可能範囲のうちの、フォーカスレンズ22の位置を基準とした焦点の合う深度範囲を算出する。
【0038】
深度範囲は、この範囲にフォーカスレンズ22があれば、フォーカスレンズ22が現在の位置にある状態から焦点がほぼ変化しないと判断できる範囲をいい、具体的には被写界深度又は焦点深度である。
【0039】
深度範囲には、フォーカスレンズ22の位置を起点とする無限遠端側の第一の範囲と、フォーカスレンズ22の位置を起点とする最近接端側の第二の範囲とがある。第一の範囲と第二の範囲の大きさは同じである。深度範囲算出部21bは、第一の範囲と第二の範囲の各々の大きさを示す情報を深度範囲として算出する。深度範囲は、例えばフォーカスレンズ22を駆動するモータの駆動パルスの数によって表される。
【0040】
駆動量生成部21cは、操作信号取得部21aで取得された操作信号に基づいて、フォーカスレンズ22の駆動量(具体的には、モータの駆動パルスの数)を生成する。
【0041】
例えば、駆動量生成部21cは、操作部材31の回転量とフォーカスレンズ22の駆動量との関係を示すデータから、操作信号取得部21aで取得された操作信号に基づく回転量に対応する駆動量を読み出すことで、フォーカスレンズ22の駆動量を生成する。
【0042】
または、駆動量生成部21cは、操作部材31の回転量とフォーカスレンズ22の駆動量との関係を示す関係式に操作信号取得部21aで取得された操作信号に基づく回転量を代入することで、フォーカスレンズ22の駆動量を演算により生成する。
【0043】
平滑化処理部21dは、操作信号取得部21aによって順次取得される操作信号をフィルタ処理によって平滑化し、平滑化後の操作信号(以下、平滑操作信号ともいう)を可動レンズ駆動部21eに入力する。このフィルタ処理は具体的にローパスフィルタ処理である。
【0044】
平滑化処理部21dは、深度範囲算出部21bで算出された深度範囲に対する駆動量生成部21cで生成された駆動量の割合に基づいて、フィルタ処理による平滑化の度合いを制御する。
【0045】
平滑化の度合いとは、ローパスフィルタ処理におけるカットオフ周波数のことを言う。平滑化の度合いが強くなるほど、フィルタ処理後の複数の操作信号のバラツキは小さくなる。
【0046】
図3は、深度範囲に対する駆動量の割合と、平滑化の度合いとの関係を示す図である。
図3において、横軸は深度範囲に対する駆動量の割合を百分率で示し、縦軸は平滑化の度合いを示す。
【0047】
図3に示すように、平滑化処理部21dは、深度範囲に対する駆動量の割合が100%以下である場合には、平滑化の度合いを最大値とする。平滑化処理部21dは、深度範囲に対する駆動量の割合が100%を超える場合には、この割合が大きいほど、平滑化の度合いを弱くする。
【0048】
可動レンズ駆動部21eは、平滑化処理部21dから入力された操作信号に基づいてフォーカスレンズ駆動部23を制御し、フォーカスレンズ22を駆動する。
【0049】
具体的には、可動レンズ駆動部21eは、駆動量生成部21cによる処理内容と同じ方法で、平滑操作信号に基づいてフォーカスレンズ22の駆動量を生成、生成した駆動量にしたがって、フォーカスレンズ22を現在位置から移動させる。
【0050】
以下、
図1に示す撮像システムの動作について説明する。
【0051】
図4は、
図1に示すレンズ装置11のレンズ制御部21が実行するレンズ駆動処理を説明するためのフローチャートである。
【0052】
レンズ装置11とフォーカスレンズ操作装置12及びカメラ本体2の各々とが通信可能な状態になり、撮像システムが起動すると、深度範囲算出部21bは、フォーカスレンズ22の位置、絞り24の絞り値、及び、ズームレンズ20の位置に基づいて、深度範囲を算出する(ステップS1)。また、操作信号取得部21aは、フォーカスレンズ操作装置12から受信した操作信号を取得する(ステップS2)。
【0053】
次に、駆動量生成部21cは、ステップS2で取得された操作信号に基づいてフォーカスレンズ22の駆動量を生成する(ステップS3)。
【0054】
次に、平滑化処理部21dは、ステップS1で算出された深度範囲に対する、ステップS3で生成された駆動量の割合を算出し、この割合が予め定められた割合閾値以下であるか否かを判定する(ステップS4)。ここでの割合閾値は、例えば、
図3に示す制御例であれば100%である。
【0055】
平滑化処理部21dは、深度範囲に対する駆動量の割合が割合閾値以下であると判定した場合(ステップS4:YES)には、フィルタ処理による平滑化の度合いを最大値に設定し、ステップS2で取得された操作信号の平滑化を行う(ステップS5)。
【0056】
平滑化処理部21dは、深度範囲に対する駆動量の割合が割合閾値を超えると判定した場合(ステップS4:NO)には、フィルタ処理による平滑化の度合いを、この割合に応じた値(上記の最大値よりは小さい値)に設定し、ステップS2で取得された操作信号の平滑化を行う(ステップS6)。
【0057】
可動レンズ駆動部21eは、ステップS5又はステップS6で平滑化された後の平滑操作信号に基づいてフォーカスレンズ駆動部23を制御し、フォーカスレンズ22を駆動する(ステップS7)。
【0058】
ステップS7の後は、ステップS1に戻り、上述した処理が繰り返し実行される。
【0059】
以上のように、
図1に示すレンズ装置11によれば、平滑化処理部21dによって操作信号が平滑化され、平滑化後の平滑操作信号に基づいてフォーカスレンズ22が駆動される。このため、操作部材31を操作している撮影者の手の震え等に伴って操作信号にばらつきが生じた場合でも、フォーカスレンズ22の位置のブレを抑制することができ、撮像品質を向上させることができる。
【0060】
また、
図1に示すレンズ装置11によれば、深度範囲と操作信号に基づく駆動量とに基づいて平滑化の度合いが制御される。深度範囲に対する駆動量の割合が割合閾値以下の場合は、フォーカスレンズ22の位置が撮影者の目的としている合焦位置の近傍にあり、わずかなピントのずれが許容されない状況であると考えられる。したがって、このような状況では平滑化の度合いが強くなることで、フォーカスレンズ22の位置のブレを抑制することができ、撮像品質を向上させることができる
【0061】
一方、深度範囲に対する駆動量の割合が割合閾値を超える場合は、フォーカスレンズ22の位置が撮影者の目的としている合焦位置から大きく離れた位置にあり、ピントのずれが許容される状況であると考えられる。したがって、このような状況では平滑化の度合いが弱くなることで、操作部材31の操作に対するフォーカスレンズ22の駆動の応答性を向上させることができる。また、平滑化がなされないわけではないため撮像品質の低下も防ぐことができる。
【0062】
なお、以上の説明では、深度範囲と操作信号に基づくフォーカスレンズの駆動量とに基づいて平滑化の度合いを制御するようにしたが、これに限らず、フォーカスレンズ22を通過した光に基づいて位相差を算出し、深度範囲とこの位相差の変化量とに基づいて平滑化の度合いを制御するようにしてもよい。
【0063】
図5は、
図1に示す撮像システムの変形例を示す図である。
図5に示す撮像システムは、レンズ装置11がレンズ装置11Aに変更された点を除いては
図1と同じ構成である。
【0064】
レンズ装置11Aは、レンズ装置11の構成に対し、ハーフミラー28と位相差検出センサ29が追加され、レンズ制御部21がレンズ制御部21Aに変更された構成である。
【0065】
ハーフミラー28は、ズームレンズ20、フォーカスレンズ22、及び、絞り24を含む撮像光学系の光路上に配置されており、撮像光学系を通過した光の一部を反射させて位相差検出センサ29に導き、この光の残りを撮像素子41に導く。
【0066】
位相差検出センサ29は、レンズ装置11Aの撮像光学系の瞳領域の異なる部分を通る一対の光をそれぞれ受光して光電変換する位相差検出用画素のペアが二次元状に配列されたセンサである。
【0067】
レンズ制御部21Aは、プロセッサとROMとRAMを有する。
【0068】
図6は、
図5に示すレンズ制御部21Aの機能ブロック図である。
図6に示すレンズ制御部21Aは、位相差算出部21fが追加された点と、平滑化処理部21dの機能が異なる点を除いては
図2と同じ構成である。
図6に示す各機能ブロックは、レンズ制御部21AのプロセッサがROMに記憶されたプログラムを実行することで構成される。
【0069】
位相差算出部21fは、位相差検出センサ29の位相差検出用画素のペアの一方から出力される画素信号と、このペアの他方から出力される画素信号との相関演算により位相差を算出し、算出した位相差をRAMに記憶する。位相差算出部21fは、算出した位相差と、RAMに記憶されている直前に算出した位相差との差である位相差の変化量(絶対値、単位は画素)を算出し、RAMに記憶する。
【0070】
レンズ制御部21Aの平滑化処理部21dは、レンズ制御部21Aの操作信号取得部21aによって順次取得される操作信号をフィルタ処理によって平滑化する。このフィルタ処理は具体的にローパスフィルタ処理である。
【0071】
レンズ制御部21Aの平滑化処理部21dは、RAMに記憶された最新の位相差の変化量と、深度範囲算出部21bで算出された深度範囲と、に基づいて、フィルタ処理の平滑化の度合いを制御する。
【0072】
具体的には、レンズ制御部21Aの平滑化処理部21dは、RAMに記憶された位相差の変化量に基づいてフォーカスレンズ22の駆動量を生成する。平滑化処理部21dは、深度範囲算出部21bで算出された深度範囲に対する、位相差の変化量から生成した駆動量の割合に基づいて、フィルタ処理による平滑化の度合いを制御する。
【0073】
平滑化処理部21dによる平滑化の度合いの制御例は、
図3において、横軸が深度範囲に対する位相差の変化量から生成したフォーカスレンズ22の駆動量の割合に変更されたものとなる。
【0074】
図7は、
図5に示すレンズ制御部21Aが実行するレンズ駆動処理を説明するためのフローチャートである。
【0075】
レンズ装置11Aとフォーカスレンズ操作装置12及びカメラ本体2の各々とが通信可能な状態になり、撮像システムが起動すると、深度範囲算出部21bは、フォーカスレンズ22の位置、絞り24の絞り値、及び、ズームレンズ20の位置に基づいて、深度範囲を算出する(ステップS11)。また、操作信号取得部21aは、フォーカスレンズ操作装置12から受信した操作信号を取得する(ステップS12)。
【0076】
次に、位相差算出部21fは、位相差検出センサ29から出力された画素信号に基づいて位相差を算出し、この位相差と、直前に算出してRAMに記憶していた位相差との差分である位相差の変化量を算出する(ステップS13)。
【0077】
次に、平滑化処理部21dは、ステップS13で算出された位相差の変化量をフォーカスレンズ22の駆動量に変換する(ステップS14)。
【0078】
次に、平滑化処理部21dは、ステップS11で算出された深度範囲に対する、ステップS14で算出した駆動量の割合を算出し、この割合が割合閾値以下であるか否かを判定する(ステップS15)。ここでの割合閾値は、例えば、
図3に示す制御例であれば100%である。
【0079】
平滑化処理部21dは、深度範囲に対する駆動量の割合が割合閾値以下であると判定した場合(ステップS15:YES)には、フィルタ処理による平滑化の度合いを最大値に設定し、ステップS12で取得された操作信号の平滑化を行う(ステップS16)。
【0080】
平滑化処理部21dは、深度範囲に対する駆動量の割合が閾値を超えると判定した場合(ステップS15:NO)には、フィルタ処理による平滑化の度合いを、算出した割合に応じた値(上記の最大値よりは小さい値)に設定し、ステップS12で取得された操作信号の平滑化を行う(ステップS17)。
【0081】
可動レンズ駆動部21eは、ステップS16又はステップS17で平滑化された後の平滑操作信号に基づいてフォーカスレンズ駆動部23を制御し、フォーカスレンズ22を駆動する(ステップS18)。
【0082】
ステップS18の後は、ステップS11に戻り、上述した処理が繰り返し実行される。
【0083】
位相差の変化量が大きいほど、フォーカスレンズ22が大きく移動されている状況であると判断できる。したがって、レンズ制御部21Aは、深度範囲に対する駆動量(位相差の変化量から変換した値)の割合に基づいて平滑化の度合いを制御することで、レンズ制御部21と同様に、撮像品質の向上と応答性の向上とを実現することができる。
【0084】
以上の説明では、平滑化処理部21dが操作信号に対して平滑化処理を常時行うものとしたが、これに限らず、操作部材31が一定速度で回転していると判断できる場合にのみ、平滑化処理を行うようにすることも可能である。
【0085】
図8は、
図1に示すレンズ制御部21の機能ブロックの変形例を示す図である。
図8に示すレンズ制御部21は、変化量算出部21gが追加された点を除いては
図2と同じ構成である。変化量算出部21gは、レンズ制御部21のプロセッサがROMに記憶されたプログラムを実行することで構成される。
【0086】
変化量算出部21gは、操作信号取得部21aで取得された操作信号に基づいて、操作部材31の回転量の変化量を算出する。操作部材31の回転量の変化量は、前回の回転量と今回の回転量の差分である。
【0087】
平滑化処理部21dは、変化量算出部21gで算出された変化量に基づいて、フィルタ処理を行う対象とする操作信号を制限する。
【0088】
具体的には、平滑化処理部21dは、変化量算出部21gで算出された変化量の絶対値が変化閾値以下となる場合には、操作信号に対してフィルタ処理を行って平滑操作信号を可動レンズ駆動部21eに入力し、変化量算出部21gで算出された変化量の絶対値が変化閾値を超える場合には、操作信号に対してフィルタ処理を行わず、その操作信号をそのまま可動レンズ駆動部21eに入力する。
【0089】
可動レンズ駆動部21eは、平滑化処理部21dから入力された操作信号又は平滑操作信号に基づいてフォーカスレンズ22を駆動する。
【0090】
図9は、
図8に示すレンズ制御部21によるレンズ駆動処理を説明するためのフローチャートである。
図9に示すステップS100は、
図4に示したステップS3〜ステップS7の処理を示す。
【0091】
レンズ装置11とフォーカスレンズ操作装置12及びカメラ本体2の各々とが通信可能な状態になり、撮像システムが起動すると、深度範囲算出部21bは、フォーカスレンズ22の位置、絞り24の絞り値、及び、ズームレンズ20の位置に基づいて、深度範囲を算出する(ステップS20)。また、操作信号取得部21aは、フォーカスレンズ操作装置12から受信した操作信号を取得する(ステップS21)。
【0092】
次に、変化量算出部21gは、ステップS21で取得された操作信号に基づいて、操作部材31の回転量の変化量を算出する(ステップS22)。
【0093】
平滑化処理部21dは、ステップS22で算出された変化量の絶対値が変化閾値以下であるかを判定する(ステップS23)。
【0094】
変化量の絶対値が予め定められた変化閾値以下であると判定した場合(ステップS23:YES)には、ステップS100に進み、
図4に示したステップS3〜ステップS7の処理が行われる。このステップS7の処理の後はステップS20に処理が戻る。
【0095】
一方、平滑化処理部21dは、変化量の絶対値が変化閾値を超えたと判定した場合(ステップS23:NO)には、ステップS21で取得された操作信号に対してはフィルタ処理を行わないと判断し、この操作信号をそのまま可動レンズ駆動部21eに入力する。そして、可動レンズ駆動部21eは、入力された操作信号に基づいてフォーカスレンズ駆動部23を制御し、フォーカスレンズ22を駆動する(ステップS24)。ステップS24の後は、ステップS20に戻り、上述した処理が繰り返し実行される。
【0096】
以上ように、操作部材31の回転量の変化量の絶対値が変化閾値を超える場合、すなわち、フォーカスレンズ22を大きく移動させる指示が撮影者によりなされている状況では、操作信号の平滑化を行わないことで、操作部材31の操作に対するフォーカスレンズ22の駆動の応答性を向上させることができる。
【0097】
このように、一定速度で操作部材31を回転させているときにだけ平滑化処理を行うことで、フォーカスレンズ22の動き出し時の応答性を向上させることが可能となる。この変形例は、スポーツ中継など急激な被写体変化を撮影する場合に有効である。
【0098】
一方、操作部材31の回転量の変化量の絶対値が変化閾値以下の場合、すなわち、フォーカスレンズ22の位置を大きく変化させないような操作が行われている状況では、操作信号の平滑化を行うことで、フォーカスレンズ22の位置のブレを抑制して撮像品質を向上させることができる。
【0099】
図8に示すレンズ制御部21の平滑化処理部21dは、変化量算出部21gによって算出される変化量が正の値かつ第一閾値以上となる第一期間とこの第一期間以外の期間とで平滑の度合いの制御方法を変更する、又は、この変化量が負の値かつ第二閾値未満となる第二期間とこの第二期間以外の期間とで平滑化の度合いの制御方法を変更してもよい。
【0100】
図10は、
図8に示すレンズ制御部21によるレンズ駆動処理の変形例を説明するためのフローチャートである。
図10において
図9と同じ処理には同一符号を付して説明を省略する。
図10においてステップS100AとステップS100Bは、それぞれ、
図4に示したステップS3〜ステップS7の処理を示す。なお、ステップS22では、現在の回転量から直前の回転量を減算することで変化量が算出されるものとして説明する。
【0101】
ステップS22の後、平滑化処理部21dは、ステップS22で算出された変化量が正の値かつ第一閾値以上であるか否かを判定する(ステップS31)。
【0102】
平滑化処理部21dは、ステップS22で算出された変化量が正の値かつ第一閾値以上であると判定した場合(ステップS31:YES)には、
図11に示す平滑化処理の第二の制御内容を選択する(ステップS34)。その後、平滑化処理部21dは、
図4に示したステップS3〜ステップS7の処理を行う(ステップS100B)。なお、平滑化処理部21dは、ステップS100Bの中のステップS5及びステップS6の処理においては、
図11に示したデータにしたがって平滑化の度合いを制御する。
【0103】
平滑化処理部21dは、ステップS22で算出された変化量が正の値かつ第一閾値以上ではないと判定した場合(ステップS31:NO)には、
図3に示す平滑化処理の第一の制御内容を選択する(ステップS32)。その後、平滑化処理部21dは、
図4に示したステップS3〜ステップS7の処理を行う(ステップS100A)。なお、平滑化処理部21dは、ステップS100Aの中のステップS5及びステップS6の処理においては、
図3に示したデータにしたがって平滑化の度合いを制御する。
【0104】
図11に示す第二の制御内容は、
図3に示す第一の制御内容に対し、横軸の割合が割合閾値(=100%)以下であるときの平滑化の度合いが弱くなっている。また、
図11に示す第二の制御内容は、
図3に示す第一の制御内容に対し、横軸の割合が割合閾値を超えているときの平滑化の度合いの直線の傾斜が緩やかになっている。
【0105】
第二の制御内容と第一の制御内容は、横軸の割合が任意の値である場合に、第一の制御内容の方が第二の制御内容よりも平滑化の度合いが強くなる関係になっていればよい。
【0106】
ステップS100A又はステップS100Bの後は、ステップS20に戻り、上述した処理が繰り返し実行される。
【0107】
図10に示す動作例によれば、フォーカスレンズ22が加速されている第一期間と、フォーカスレンズ22が減速又は定速で移動されている期間とでは、第一期間において平滑化が相対的に弱く行われる。
【0108】
例えば、目的の被写体に焦点が合っていない状態から、フォーカスレンズ22を速く移動させて目的の被写体に焦点を合わせてフォーカスレンズ22を停止させるような撮影を行う場合を想定すると、フォーカスレンズ22を目的位置の近くまで到達させる操作を行っている間は平滑化の度合いが弱くなることで、応答性を向上させることができる。
【0109】
図12は、
図8に示すレンズ制御部21によるレンズ駆動処理の変形例を説明するためのフローチャートである。
図12において
図10と同じ処理には同一符号を付して説明を省略する。
【0110】
ステップS22の後、平滑化処理部21dは、ステップS22で算出された変化量が負の値かつ第二閾値未満であるか否かを判定する(ステップS33)。
【0111】
平滑化処理部21dは、ステップS22で算出された変化量が負の値かつ第二閾値未満であると判定した場合(ステップS33:YES)には、ステップS32以降の処理を行う。平滑化処理部21dは、ステップS22で算出された変化量が負の値かつ第二閾値未満ではないと判定した場合(ステップS33:NO)には、ステップS34以降の処理を行う。
【0112】
図12に示す動作例によれば、フォーカスレンズ22が減速されている第二期間と、フォーカスレンズ22が加速又は定速で移動されている期間とでは、第二期間において平滑化が相対的に強く行われる。
【0113】
例えば、目的の被写体に焦点が合っていない状態から、フォーカスレンズ22を移動させて目的の被写体に焦点を合わせてフォーカスレンズ22を停止させるような撮影を行う場合を想定すると、フォーカスレンズ22を停止させる直前、すなわち、目標位置の近傍では、操作信号が強く平滑化されるため、撮像品質を向上させることができる。
【0114】
図13は、
図1に示すレンズ制御部21の機能ブロックの変形例を示す図である。
図13に示すレンズ制御部21は、動体検出部21hが追加された点を除いては
図8と同じ構成である。動体検出部21hは、レンズ制御部21のプロセッサがROMに記憶されたプログラムを実行することで構成される。
【0115】
動体検出部21hは、カメラ本体2の画像処理部42により生成された映像信号を取得し、この映像信号から動体を検出し、検出結果を平滑化処理部21dに入力する。
【0116】
平滑化処理部21dは、動体検出部21hにより動体が検出された場合には、
図9のステップS23における変化閾値を第一の値に設定し、動体検出部21hにより動体が検出されていない場合には
図9のステップS23における変化閾値を第二の値に設定する。第一の値は、第二の値よりも大きい。
【0117】
変化閾値が大きくなるということは、操作信号の平滑化が行われやすくなることを意味する。撮像中の被写体に動体が含まれる場合には、動体に追従するために、撮像システム全体を三脚等によって移動させたり、ズームレンズ20の位置を変えたり等の操作が行われる。つまり、操作部材31の操作に集中しにくい状況となる。このため、このような状況では操作信号の平滑化が行われやすくなることで、撮像品質の低下を防ぐことができる。
【0118】
図8〜
図13で説明した実施形態は、平滑化処理部21dが平滑化の度合いを制御するために用いる情報として、
図5〜
図7で説明したような位相差の変化量の情報を用いることも可能である。
【0119】
図1及び
図5に示した撮像システムは、カメラ本体2に対してレンズシステム1を着脱可能なシステムであってもよいし、カメラ本体2とレンズシステム1が固定されているシステムであってもよい。また、レンズ装置11,11Aとフォーカスレンズ操作装置12が一体化されたものであってもよい。
【0120】
また、本実施形態では可動レンズとしてフォーカスレンズを例にして説明したが、フォーカスレンズに限らず、ズームレンズにも本発明を適用可能である。
【0121】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0122】
開示されたレンズ装置は、光軸方向に移動可能な可動レンズと、移動自在な操作部材の移動量に応じた操作信号を取得する操作信号取得部と、上記操作信号を平滑化する平滑化処理部と、上記平滑化された後の上記操作信号に基づいて上記可動レンズを駆動する可動レンズ駆動部と、を備えるものである。
【0123】
開示されたレンズ装置は、上記平滑化処理部は、上記平滑化の度合いを制御するものである。
【0124】
開示されたレンズ装置は、上記可動レンズはフォーカスレンズを含み、上記フォーカスレンズの位置を基準とした焦点の合う深度範囲を算出する深度範囲算出部と、上記操作信号に基づいて上記フォーカスレンズの駆動量を生成する駆動量生成部と、を更に備え、上記平滑化処理部は、上記深度範囲と上記駆動量とに基づいて上記平滑化の度合いを制御するものである。
【0125】
開示されたレンズ装置は、上記平滑化処理部は、上記深度範囲に対する上記駆動量の割合に基づいて上記平滑化の度合いを制御するものである。
【0126】
開示されたレンズ装置は、上記可動レンズはフォーカスレンズを含み、上記フォーカスレンズの位置を基準とした焦点の合う深度範囲を算出する深度範囲算出部と、上記可動レンズを通過した光に基づいて位相差を算出する位相差算出部と、を更に備え、上記平滑化処理部は、上記深度範囲と上記位相差の変化量とに基づいて上記平滑化の度合いを制御するものである。
【0127】
開示されたレンズ装置は、上記平滑化処理部は、上記深度範囲に対する上記位相差の変化量に基づく上記フォーカスレンズの駆動量の割合に基づいて上記平滑化の度合いを制御するものである。
【0128】
開示されたレンズ装置は、上記平滑化処理部は、上記割合が割合閾値を超える場合に、上記割合が大きいほど上記平滑化の度合いを弱くするものである。
【0129】
開示されたレンズ装置は、上記操作信号に基づいて上記操作部材の移動量の変化量を算出する変化量算出部を更に備え、上記平滑化処理部は、上記変化量算出部により算出された上記変化量が正の値かつ第一閾値以上となる第一期間と上記第一期間以外の期間とで上記平滑化の度合いの制御方法を変更する、又は、上記変化量算出部により算出された上記変化量が負の値かつ第二閾値未満となる第二期間と上記第二期間以外の期間とで、上記平滑化の度合いの制御方法を変更するものである。
【0130】
開示されたレンズ装置は、上記操作信号に基づいて上記操作部材の移動量の変化量を算出する変化量算出部を更に備え、上記平滑化処理部は、上記変化量算出部により算出された上記変化量の絶対値が変化閾値以下となる場合に上記平滑化の処理を行うものである。
【0131】
開示されたレンズ装置は、上記可動レンズを通して撮像される被写体像から動体を検出する動体検出部を更に備え、上記平滑化処理部は、上記動体が検出された場合における上記変化閾値を、上記動体が非検出の場合における上記変化閾値よりも大きくするものである。
【0132】
開示されたレンズ装置は、上記操作部材を有するものである。
【0133】
開示された撮像装置は、上記レンズ装置と、上記可動レンズを通して被写体を撮像する撮像素子と、を備えるものである。
【0134】
開示されたレンズ駆動方法は、光軸方向に移動可能な可動レンズを操作するための操作部材であって移動自在な操作部材の移動量に応じた操作信号を取得する操作信号取得ステップと、上記操作信号を平滑化する平滑化処理ステップと、上記平滑化された後の上記操作信号に基づいて上記可動レンズを駆動する可動レンズ駆動ステップと、を備えるものである。
【0135】
開示されたレンズ駆動方法は、上記平滑化処理ステップは、上記平滑化の度合いを制御するものである。
【0136】
開示されたレンズ駆動方法は、上記可動レンズはフォーカスレンズを含み、上記フォーカスレンズの位置を基準とした焦点の合う深度範囲を算出する深度範囲算出ステップと、上記操作信号に基づいて上記フォーカスレンズの駆動量を生成する駆動量生成ステップと、を更に備え、上記平滑化処理ステップは、上記深度範囲と上記駆動量とに基づいて上記平滑化の度合いを制御するものである。
【0137】
開示されたレンズ駆動方法は、上記平滑化処理ステップは、上記深度範囲に対する上記駆動量の割合に基づいて上記平滑化の度合いを制御するものである。
【0138】
開示されたレンズ駆動方法は、上記可動レンズはフォーカスレンズを含み、上記フォーカスレンズの位置を基準とした焦点の合う深度範囲を算出する深度範囲算出ステップと、上記可動レンズを通過した光に基づいて位相差を算出する位相差算出ステップと、を更に備え、上記平滑化処理ステップは、上記深度範囲と上記位相差の変化量とに基づいて上記平滑化の度合いを制御するものである。
【0139】
開示されたレンズ駆動方法は、上記平滑化処理ステップは、上記深度範囲に対する上記位相差の変化量に基づく上記フォーカスレンズの駆動量の割合に基づいて上記平滑化の度合いを制御するものである。
【0140】
開示されたレンズ駆動方法は、上記平滑化処理ステップは、上記割合が割合閾値を超える場合に、上記割合が大きいほど上記平滑化の度合いを弱くするものである。
【0141】
開示されたレンズ駆動方法は、上記操作信号に基づいて上記操作部材の移動量の変化量を算出する変化量算出ステップを更に備え、上記平滑化処理ステップは、上記変化量算出ステップにより算出された上記変化量が正の値かつ第一閾値以上となる第一期間と上記第一期間以外の期間とで上記平滑化の度合いの制御方法を変更する、又は、上記変化量算出ステップにより算出された上記変化量が負の値かつ第二閾値未満となる第二期間と上記第二期間以外の期間とで上記平滑化の度合いの制御方法を変更するものである。
【0142】
開示されたレンズ駆動方法は、上記操作信号に基づいて上記操作部材の移動量の変化量を算出する変化量算出ステップを更に備え、上記平滑化処理ステップは、上記変化量算出ステップにより算出された上記変化量の絶対値が変化閾値以下となる場合に上記平滑化の処理を行うものである。
【0143】
開示されたレンズ駆動方法は、上記可動レンズを通して撮像される被写体像から動体を検出する動体検出ステップを更に備え、上記平滑化処理ステップは、上記動体が検出された場合における上記変化閾値を、上記動体が非検出の場合における上記変化閾値よりも大きくするものである。
【0144】
開示されたレンズ駆動プログラムは、光軸方向に移動可能な可動レンズを操作するための操作部材であって移動自在な操作部材の移動量に応じた操作信号を取得する操作信号取得ステップと、上記操作信号を平滑化する平滑化処理ステップと、上記平滑化された後の上記操作信号に基づいて上記可動レンズを駆動する可動レンズ駆動ステップと、をコンピュータに実行させるためのものである。