(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置の製造方法を例示するものであって、本発明は、発光装置の製造方法を以下に限定するものではない。
【0010】
本実施形態に係る発光装置の製造方法は、粒子状の蛍光体を準備する工程と、発光素子が載置された基板を準備する工程と、2液硬化型樹脂成分である第1樹脂液及び第2樹脂液を準備する工程と、第1樹脂液中に蛍光体を混合させて第1混合液を作製する工程と、第1混合液中に第2樹脂液を混合させて第2混合液を作製する工程と、発光素子上に第2混合液を配置し、第2混合液を硬化して封止部材とする工程と、を備える。
以下、各工程について詳説する。
【0011】
(蛍光体を準備する工程)
粒子状の蛍光体を準備する。蛍光体は、例えば、平均粒径が3μm〜30μm程度の粒子であり、その形状は球形又は不定形である。ここで、平均粒径は、D
50により定義することができる。また、蛍光体の平均粒径は、例えば、レーザ回折散乱法、画像解析法(走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM))などにより測定することができる。レーザ回折散乱法の粒径測定装置は、例えば島津製作所社製のSALDシリーズ(例えばSALD−3100)を用いることができる。画像解析法は、例えばJIS−Z8827−1:2008に準ずる。
【0012】
蛍光体としては、例えば、酸化物系、硫化物系、窒化物系の蛍光体などが挙げられる。例えば、発光素子として青色発光する窒化ガリウム系発光素子を用いる場合、青色光を吸収して黄色〜緑色系発光するYAG系、LAG系、緑色発光するSiAlON系(βサイアロン)、SGS蛍光体、赤色発光するSCASN、CASN系、マンガンで賦活されたフッ化珪酸カリウム系蛍光体(KSF系蛍光体;K
2SiF
6:Mn)、硫化物系蛍光体等の蛍光体の単独又は組み合わせが挙げられる。
【0013】
(発光素子が載置された基板を準備する工程)
図2(a)に示すように、発光素子14が載置された基板11を準備する。この工程は、発光素子が載置された基板を購入して準備してもよく、基板及び発光素子を準備して、基板上に発光素子を載置する工程を経て準備してもよい。また、
図2(a)などでは1つの発光素子が載置された基板を例示しているが、通常の工程においては1枚の基板には複数の発光素子が載置されている。すなわち、1枚の基板で複数の発光装置を形成しており、このような発光装置の集合体を切断して個片化することで個々の発光装置とすることができる
【0014】
発光素子14は、半導体層と電極と、を備える。半導体層は、例えばp型半導体層、発光層、n型半導体層を含む。更に、素子基板を備えていてもよい。さらに、p電極及びn電極を備える。
【0015】
半導体層は、例えば、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の窒化物系化合物半導体が好適に用いられる。これらの窒化物半導体層は、それぞれ単層構造でもよいが、組成及び膜厚等の異なる層の積層構造、超格子構造等であってもよい。特に、発光層は、量子効果が生ずる薄膜を積層した単一量子井戸又は多重量子井戸構造であることが好ましい。
【0016】
発光素子の一対の電極(p電極及びn電極)は、半導体層の同一面側に配置されている。これらの一対の電極は、上述したp型半導体層及びn型半導体層と、それぞれ、電流−電圧特性が直線又は略直線となるようなオーミック接続されるものであれば、単層構造でもよいし、積層構造でもよい。
【0017】
基板11は、発光素子14が載置可能な部材であり、後述の封止部材を形成する際の土台となる部材である。基板は、発光装置の一部を構成する部材を用いるほか、封止部材形成後に除去する部材を用いることもできる。
【0018】
発光装置の一部を構成する部材となる基板としては、例えば、
図2(a)〜
図2(c)に示すように、発光素子14が載置される凹部を備えた基板11を用いることができる。基板は、絶縁性の母材11bと、電極として機能する導電部材11aと、を備える。母材としては、樹脂、セラミック、ガラスエポキシ樹脂等が挙げられる。母材が樹脂の場合、基板は、リードの一部を内包するように一体成形した樹脂パッケージとすることができる。また、母材がセラミックの場合は、基板は、グリーンシートと金属薄膜との積層体を焼成して得られるセラミックパッケージとすることができる。このような基板は、平板状、又は、発光素子が載置可能な凹部が設けられた形状とすることができる。
【0019】
また、基板として、封止部材を形成した後に除去する基板、すなわち、製造工程のみで用いられる基板を用いることができる。例えば、
図3(a)に示すように、平板状(又はシート状)の基板11を用いることができる。このような基板11は、
図3(a)に示すように発光素子14を載置可能な部材であればよい。また、基板11は、
図3(b)に示すように、第2混合液12Bを形成し、更に硬化して封止部材12とする際の加熱温度に対する耐熱性を有する材料であればよい。さらに、基板11は、
図3(c)に示すように、封止部材12及び発光素子14から除去するため、除去しやすい部材がよい。除去方法は、例えば、機械的に剥がす、溶剤等を用いて溶解するなどの方法を用いることができる。このような基板としては、例えばセラミック等が挙げられる。
【0020】
上述のような基板及び発光素子を準備し、基板上に接合部材を用いて発光素子を載置することで、発光素子が載置された基板を準備することができる。接合部材としては、導電性の接合部材又は絶縁性の接合部材を用いることができる。また、フェイスアップ実装、フリップチップ実装のいずれの方法で発光素子を載置してもよい。基板自体が接着性を備えている場合(例えばウエハシート)は、別途接合部材を用いなくてもよい。フェイスアップ実装の場合は、基板の導電部材と発光素子の電極とをワイヤで接続する。
【0021】
(第1樹脂液及び第2樹脂液を準備する工程)
2液硬化型樹脂成分である第1樹脂液及び第2樹脂液を準備する。第1樹脂液と第2樹脂液は、両者を混合することで化学反応が起こり硬化する。
【0022】
第1樹脂液は、2液硬化型樹脂の主剤であり、透光性を有し、且つ、耐光性を有する。具体的な材料としては、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。また、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂及びこれらの樹脂を少なくとも1種以上含むハイブリッド樹脂等も用いることができる。
【0023】
第2樹脂液は、2液硬化型樹脂の硬化剤を含んでいる。具体的な材料としては、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。また、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂及びこれらの樹脂を少なくとも1種以上含むハイブリッド樹脂等も用いることができる。
【0024】
(第1混合液を作成する工程)
第1樹脂液と、粒子状の蛍光体と、を混合して第1混合液を作製する。蛍光体は、第1混合液に対して、10質量%〜80質量%程度混合することができる。
【0025】
図1(a)に示すように、第1樹脂液120Aと蛍光体Pとを、攪拌機能を備えた混合容器100に投入して撹拌する。このとき、先に第1樹脂液120Aのみを混合容器100投入して撹拌しながら蛍光体Pを投入してもよく、あるいは、両者を混合容器100に投入したのちに撹拌してもよい。また、蛍光体Pに加え、拡散材なども混合することができる。
【0026】
撹拌する際は、温度を約20℃〜50℃程度とすることが好ましい。また、撹拌は、遠心撹拌、真空遠心撹拌、手動による撹拌などを用いることができる。遠心撹拌の場合、例えば、第1混合液が150ml程度の場合、回転数400rpm〜1200rpmの範囲とすることができる。また、撹拌時間は1分〜20分の範囲とすることができる。
【0027】
撹拌により得られた第1混合液12Aは、
図1(b)に示すように蛍光体が第1樹脂液中に分散された状態である。この後、12時間〜36時間程度静置させる。静置する場合は、10℃〜30℃程度で静置する。静置する際、混合容器中でそのまま静置してもよく、あるいは別の容器に移し替えてもよい。尚、静置時間は樹脂の組成や量、蛍光体の比率等により適宜選択することができる。
【0028】
第1樹脂液のみに蛍光体を混合させることで、蛍光体を樹脂中に均一に混合させやすい。この理由は定かではないが、以下のように考えられる。第1樹脂液と第2樹脂液とを先に混合させた場合、その一部で硬化反応が開始されるため、樹脂液が局部的に異なる特性の部分が生じ、それにより蛍光体を均一に混合させにくくなる場合がある。これに対し、第1樹脂液のみに蛍光体を混合させると、樹脂自体が全体的に均一であるため、蛍光体を樹脂中に均一に混合させ易いと考えられる。
【0029】
(第2混合液を作製する工程)
第1混合液と第2樹脂液とを混合して第2混合液を作製する。
【0030】
図1(c)に示すように、第1混合液12Aの入った混合容器100内に、第2樹脂液120Bを投入する。このとき、第1混合液12Aのみを撹拌しながら第2樹脂液120Bを投入してもよく、あるいは、第1混合液12Aに第2樹脂液120Bを投入したのちに撹拌してもよい。
【0031】
撹拌する際は、温度を約20℃〜50℃程度とすることが好ましい。また、撹拌は、遠心撹拌、真空遠心撹拌、手動による撹拌などを用いることができる。第2混合液は、第1樹脂液と第2樹脂液とを混合させると化学反応が始まるため、撹拌する時間は第1混合液の作製時に比べると短くすることが好ましい。また、遠心撹拌を行う場合、その回転数は、例えば、第2混合液が250ml程度の場合、回転数400rpm〜1200rpmの範囲とすることができる。また、撹拌時間は1分〜20分の範囲とすることができる。
得られた第2混合液12Bは、混合容器からモールド装置のディスペンサに移す。
【0032】
(第2混合液を、発光素子を被覆するように形成し、硬化する工程)
図2(b)に示すように、基板11上に載置された発光素子14の上方にディスペンサのノズル140を配置し、ノズル140から第2混合液12Bをポッティングする。第2混合液12Bの量は、発光素子14の全体が埋設される量、さらに、ワイヤを用いている場合はワイヤも埋設される量が好ましい。
【0033】
図2(b)は、基板11が凹部を備えているため、凹部内に第2混合液12Bをポッティングしているが、
図3(b)に示すように、基板11が凹部を備えない場合は、第2混合液12Bは印刷、圧縮成形、トランスファモールドなどにより形成することができる。
【0034】
次いで、第2混合液12Bを加熱により硬化する。これより、基板11上に載置された発光素子14を覆う封止部材12とすることができる。最後に基板を切断することで、1枚の基板から色度ばらつきの少ない複数の発光装置10を得ることができる。
【0035】
図3(e)に示すような、基板を有していない発光装置20の場合は、
図3(c)に示すように基板11を除去した後、
図3(d)に示すように封止部材12を切断することで、
図3(e)に示すような発光装置20とすることができる。尚、このような基板を有しない発光装置20は、発光素子14の電極14bが封止部材12から露出させて、発光装置20の電極として機能させることができる。そのため、
図3(a)に示すように、基板11上に発光素子14を載置する際に、半導体層14a側を上にし、電極14bと基板11とが対向するように配置させておくことが好ましい。
【0036】
また、3(a)に示すような平板状の基板11は、除去せずにそのまま発光装置を構成する基板としてもよい。その場合は、
図3(b)に示すような、基板11上に複数の発光素子14を一体的に覆う封止部材12を形成した後、基板11と封止部材12との両方を切断することで発光装置を得ることができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0038】
[実施例1]
発光装置として、横幅4.0mm、縦幅3.6mm、厚さ2.05mmの側面発光型の発光装置の製造方法を説明する。
図2(a)〜
図2(c)は実施例1に係る製造工程を示す。
【0039】
粒子状の蛍光体として、平均粒径20μmのKSF系蛍光体(K
2SiF
6:Mn)を準備する。第1樹脂液として2液硬化型樹脂の主剤(シリコーン樹脂)を準備する。第2樹脂液として2液硬化型樹脂の硬化剤(シリコーン樹脂)を準備する。
【0040】
攪拌機として、容量500mlの混合容器を備えた遠心攪拌機(シンキー社製、AR−500)を準備する。混合容器に第1樹脂液を50mlとKSF蛍光体50g(第1混合液に対して50質量%)を入れた後、遠心攪拌機で撹拌する。撹拌速度は1000rpmで撹拌時間は3分である。撹拌して得られた第1混合液を、その混合容器内においてそのまま混合物を18時間程度静置する。
【0041】
次いで、上述の第1混合液を収容している混合容器に、第2樹脂液を50ml入れた後、遠心撹拌する。撹拌速度は600rpmで撹拌時間は1分である。
【0042】
撹拌して得られた第2混合液は、そのまま用いることもできるが、好ましくは濾過してから用いる。濾過は、目開き212μmのフィルターを用いて、吸引濾過する方法などが挙げられる。
【0043】
さらに、脱泡処理を行うことが好ましい。例えば、真空撹拌脱泡器(シンキー社製、ARV−310)を用いる。撹拌条件は、600rpmで撹拌時間は3分である。このようにして得られた第2混合液を、ノズルが取り付けられたディスペンサに充填する。
【0044】
図2(a)に示すように、発光素子14が載置された基板11を準備する。発光素子14として主ピークが445nmである窒化物半導体層を備えた発光素子14を準備する。また、基板11としてリードフレーム11aと成形樹脂11bと、を備えた樹脂パッケージを準備する。尚、樹脂パッケージは、工程内では樹脂パッケージの集合体として用いられる。リードフレーム11aは、厚さ0.25mm、横200mm、縦47mmのCu板を所定の形状にパターニングし、表面にAgなどのメッキが施されている。1枚のリードフレームには40列×8行の成形樹脂が形成されており、発光装置1つに相当する成形樹脂及びリード(リードフレームの一部)により樹脂パッケージが構成されている。
【0045】
樹脂パッケージは、横幅3.4mm、縦幅3.6mm、深さ0.35mmの凹部を備える。凹部の底面は横幅1.13mm、縦幅2.125mmである。この凹部の底面には正負電極となる1対のリード11aが露出されており、発光素子14はこの凹部の底面のリード11aの上に載置される。凹部の側面は成形樹脂11bから構成されている。また、凹部の底面の一対のリード間にも成形樹脂11bが形成されている。
【0046】
リード11aと発光素子14とは接合部材によって接合されている。発光素子14の上面にはp電極及びn電極が設けられている。p電極及びn電極は、ワイヤ16によってリード11aと接合されている。
【0047】
図2(b)に示すように、基板11上に載置された発光素子14の上にノズル140から、第2混合液12Bをポッティングする。その後、基板ごと加熱器に入れて150℃で4時間加熱する。これにより第2混合液12Bが硬化して封止部材12とすることができる。最後に基板を切断することで
図2(c)に示す発光装置10を得ることができる。
【0048】
1枚の基板から得られた320個の発光装置10の色度のばらつきは、第1樹脂液と第2樹脂液とを先に混合させたのちに蛍光体を混合させた混合液を用いて得られた発光装置のばらつきに比して、x値で20%程度、y値で10%程度、ばらつきが少なかった。