(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板を撓ませる工程において、第一の突出機構により前記第一の基板の中央部を押圧することにより前記第一の基板を撓ませるとともに、第二の突出機構により前記第二の基板の中央部を押圧することにより前記第二の基板を撓ませ、
前記第一の突出機構の突出量と前記第二の突出機構の突出量とは、前記互いに仮接合された前記第一の基板および前記第二の基板の中央部の外周部に対する反り量に応じた位置ずれ量と、前記第一の突出機構の突出量および前記第二の突出機構の突出量と、の相関関係に基づいて設定される、
請求項8に記載の基板接合方法。
前記張り合わせ工程において、更に、前記第一の基板を保持する第一基板保持部と前記第二の基板を保持する第二基板保持部との少なくとも一方を、前記第一基板保持部と前記第二基板保持部とが互いに近づく方向へ移動させる、
請求項4から11のいずれか一項に記載の基板接合方法。
前記突き合わせ工程において、前記第一の基板の外周部における前記第一の基板の中央部からの距離が異なる3つ以上の保持位置で、前記第一の基板を第一基板保持部に保持させ、
前記張り合わせ工程において、前記第一の基板の外周部における前記第一の基板の中央部からの距離が短い保持位置から順に前記第一の基板の保持を解除させていくことにより、前記第一の基板の外周部と前記第二の基板の外周部との距離を縮めて、前記第一の基板の外周部を前記第二の基板の外周部に接触させる、
請求項1から12のいずれか一項に記載の基板接合方法。
前記基板を撓ませる工程において、前記第一の反り量および前記第二の反り量のうち大きい方の反り量を特定し、前記第一の基板の中央部の前記第二の基板側への反り量と前記第二の基板の中央部の前記第一の基板側への反り量とが、特定した反り量以上の規定反り量となるように、前記第一の基板の中央部と前記第二の基板の中央部とを撓ませる、
請求項15又は16に記載の基板接合方法。
前記張り合わせ工程において、前記第一の基板の中央部の反り量と前記第二の基板の中央部の反り量とが等しくなるように、前記第一の基板に接触させる突出機構または前記第二の基板に接触させる突出機構の突出機構位置が制御される、
請求項17に記載の基板接合方法。
前記張り合わせ工程において、検知される圧力が一定の値以上になることで突き合わせ位置を検出し、前記第一の基板の外周部と前記第二の基板の外周部との距離を離す又は縮める動作を停止する、
請求項24又は25に記載の基板接合方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明による基板接合方法、基板接合装置を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0016】
本実施形態に係る基板接合方法は、第一の基板と第二の基板とを接合する方法であって、前記第一の基板及び前記第二の基板のそれぞれの接合面の表面に水又はOH含有物質を付着させる親水化処理を行う工程と、前記第一の基板を前記接合面の外周部に対して中央部が前記第二の基板側に突出するように撓ませ、前記第一の基板の前記接合面と前記第二の基板の前記接合面とを、前記中央部同士で突き合わせる工程と、前記中央部同士が一定の距離を保つように突き合わせた状態で、前記第一の基板の外周部と前記第二の基板の外周部との距離を縮め、前記第一の基板の前記接合面と前記第二の基板の前記接合面とを全面で張り合わせる位置まで距離を縮める張り合わせ工程とを備え、前記張り合わせ工程において、前記張合わせる位置を測定又は検知して、前記第一の基板の外周部と前記第二の基板の外周部との距離を縮める。
【0017】
上記のような構成とすることで、張り合わせる工程の途中で基板をステージからぎりぎりの位置で離しても、位置ずれやひずみを起こすことなく全面で張り合わせを行うことができる。また、上記のような全面で張り合わせる位置を規定することで、過剰な加圧力が生じることなく、基板同士の相対位置のずれが生じるということを抑制できる。また、張合わせる位置を測定又は検知してぎりぎりの位置を求めることで、従来不可能であった10μm隙間での両側からのセンタープッシュにより接合後の位置ずれとひずみを従来は1μm程度が限度であったものを0.1μm以内に納めることができた。そのデータを実験結果1に示す。通常ガラスステージの平坦度は5μm程度あり、平行度をサブミクロンに合わし、隙間をコントロールすることで初めて10μm程度の隙間まで加圧力が加わることなく上下を近づけることが可能となる。また、真空中で張り合わせを行うことで10μm隙間においても空気の巻き込みによるボイドをなくすことが容易となり好ましい。
【0019】
また、上記の接合方法において、前記親水化処理工程と張り合わせ工程の間に、前記第一の基板と前記第二の基板とを、前記接合面同士を対向させて配置し、前記第一の基板と前記第二の基板との位置ずれ量を測定して、前記第一の基板と前記第二の基板との位置ずれ量が小さくなるように前記第一の基板と前記第二の基板との相対位置を調整する工程、をさらに備える。
【0020】
また、上記の接合方法において、前記張り合わせ工程の間又は後に、前記第一の基板と前記第二の基板との位置ずれ量を測定する工程をさらに備える。前記張り合わせ工程の間、すなわち全面の接合が完了する前に位置ずれを測定して、基板同士を離間させることで、張り合わせ工程ないし相対位置の調整工程を繰り返し行うことができる。このため、基板間の相対位置の位置合わせの精度をより高めることができる。
【0021】
測定された前記位置ずれ量が許容誤差範囲を超えている場合には、前記中央部同士が一定の距離を保つように突き合わせた状態で、前記第一の基板の外周部と前記第二の基板の外周部との距離を離し、次いで、前記第一の基板の中央部の撓みを戻す工程と、前記第一の基板と前記第二の基板との位置ずれ量が小さくなるように前記第一の基板と前記第二の基板との相対位置を調整する工程とをさらに備え、前記位置ずれ量が許容誤差範囲内に収まるまで、前記第一の基板を前記接合面の外周部に対して中央部が前記第二の基板側に突出するように撓ませる工程から、前記第一の基板と前記第二の基板との相対位置を調整する工程までを繰り返す。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る基板接合装置100の内部の概略構造を示す正面図である。
図2は、ステージ及びヘッド付近を示す概略斜視図である。
図3は、基板を保持したステージの構成を示す正断面図である。
図7は、突出機構の他の例を示す正断面図である。なお、以下の説明においては、便宜上、XYZ直交座標系を用いて方向などを示している。
【0023】
図1に示すように、基板接合装置100は、チャンバ200と、被接合物である基板(第二の基板)301,基板(第一の基板)302を対向して支持する基板支持手段400と、基板301,302の相対的位置関係を測定する位置測定手段(位置合わせ部)500と、対向して支持された基板301,302の表面に対して表面活性化処理を施す親水化処理手段600と、基板接合装置100の各部の動作を制御するコントローラ(制御部)700と、を備えている。基板301、302としては、例えば、ガラス基板や酸化物基板(例えば、酸化ケイ素(SiO
2)基板やアルミナ基板(Al
2O
3))、窒化物基板(例えば、窒化ケイ素(SiN)、窒化アルミニウム(AlN))のいずれかからなる。
【0024】
<チャンバ>
チャンバ200は、中空箱状で、その内部に、後述する基板支持手段400のステージ401,402などが設けられている。チャンバ200は、内部を真空引きするための真空引き手段として、真空ポンプ201を備えている。真空ポンプ201は、排気管202を介してチャンバ200に接続されている。排気管202には、排気管202を開閉する排気弁203が設けられている。
【0025】
このようなチャンバ200は、排気管202を開くとともに、真空ポンプ201を作動させることによって、排気管202を通してチャンバ200内の気体を外部に排出する。これによりチャンバ200内は減圧されて真空引きされ、チャンバ200内の雰囲気は真空又は低圧状態にされる。また、排気弁203は、その開閉量を変動させることで、排気管202における排気流量を調整し、チャンバ200内の目的の真空度に調整することができる。
【0026】
<距離測定手段>
基板301又は302の中央部を撓ませる工程の前に、基板301,302を保持するステージ(第二基板保持部)401とステージ(第一基板保持部)402との距離を測定する距離測定手段(図示せず)を備える。距離測定手段は、例えばレーザー距離計などステージに接触せずにステージ間の距離を測れるものが好ましい。
【0027】
<ウエハ厚み測定手段>
基板301又は302の中央部を撓ませる工程の前に、各基板301,302の厚みを測定するウエハ厚み測定手段(図示せず)を備える。ウエハ厚み測定手段は、例えばレーザー変位計など基板に接触せずに基板の厚みを測れるものが好ましい。本実施形態では、アライナ位置にて上下からレーザーでウエハ厚みを3ヵ所測定する。また、円周上や全面を測定して必要な厚みを計算して求めても良い。
【0028】
上記の距離測定手段とウエハ厚み測定手段の測定結果より基板301と302との距離を算出することができる。ここで、基板301と302との距離とは、基板301と302の接合面間の距離であり、上記の測定手段によって測定されたステージ(第二基板保持部)401とステージ(第一基板保持部)402との距離から、上記のウエハ厚み測定手段によって測定された各基板301,302の厚みを引いた距離として算出することができる。
【0029】
<基板支持手段>
基板支持手段400は、基板301,302を支持するステージ(第二基板保持部)401,ステージ(第一基板保持部)402と、それぞれのステージを移動させるステージ駆動機構403,404と、基板を加熱する基板加熱手段420と、を備えている。
【0030】
ステージ401,402は、上下方向(Z方向)において互いに対向するよう設けられている。下側のステージ401は、その上面が基板301の支持面とされている。上側のステージ402は、その下面が基板302の支持面とされている。これらステージ401,402は、支持面同士が互いに平行に配置されている。
【0031】
ステージ401,402は、それぞれの支持面に、機械式チャック、静電チャック、真空チャックなどの保持機構を有していてもよい。この保持機構は、基板301,302の支持面への固定状態と、基板301,302の支持面への固定からの開放状態とを切り換えることができる。
【0032】
下側のステージ401は、ステージ駆動機構403を備えている。ステージ駆動機構403は、ステージ401とステージ402とが互いに対向する上下方向(Z方向)に直交する水平面内で、下側のステージ401をXYθ方向に移動させる。
【0033】
上側のステージ402は、ステージ駆動機構404として、Z方向昇降駆動機構406と、Z軸周り回転駆動機構407と、を備えている。ステージ駆動機構404は、XY方向駆動機構405をさらに備えることもできる。
【0034】
Z方向昇降駆動機構406は、ステージ402を、Z方向に移動させることによって、ステージ401,402をZ方向に沿って互いに接近又は離間させる。また、Z方向昇降駆動機構406は、両ステージ401,402同士を接近させることで、保持した基板301,302の対向する接合面同士を接触させ、さらに互いに接触した基板301,302同士を加圧することができる。
【0035】
Z方向昇降駆動機構406には、そのZ軸に係る力を測定する圧力センサ408が設けられている。圧力センサ408は、Z方向昇降駆動機構406により互いに加圧される基板301,302の接合面に作用する圧力を検知する。圧力センサ408には、例えばロードセルを用いることができる。
【0036】
Z方向昇降駆動機構406により、基板301と302の中央部同士が非接合状態を維持する圧力で突き合わせた状態、あるいは、基板301の中央部と基板302の中央部の距離を保った状態で、基板301の外周部と基板302の外周部との距離を縮め、基板301の接合面と基板302の接合面とが、接合面の全面で突き合わされるように移動することができる。
【0037】
XY方向駆動機構405は、ステージ401とステージ402とが互いに対向するZ方向に直交するXY方向で、ステージ402をスライド移動させることができる。
【0038】
図1及び
図2に示すように、XY方向駆動機構405とステージ402との間には、ステージ402の外周部近傍に、周方向に間隔をあけて、複数、例えば3つの突出機構412が設けられている。突出機構412は、それぞれ独立にZ方向に伸縮駆動される。これら突出機構412により、基板301,302の接合面に作用する力又は圧力の分布を微細又は正確に調節する。
【0039】
また、各突出機構412とXY方向駆動機構405との間には、それぞれステージ圧力センサ411が備えられている。突出機構412は、図示しない制御部により、複数のステージ圧力センサ411で測定した、基板301,302の接合面に作用する力又は圧力の分布に応じてその作動が制御される。これらステージ圧力センサ411及び突出機構412は、Z方向昇降駆動機構406によって、互いに加圧された接触した基板301,302に作用する圧力の分布を、さらに微細に調整し、その接合面に亘って均一又は所定の分布とすることができる。
【0040】
本発明の一実施形態では、基板301の接合面と基板302の接合面に生じる圧力に基づいて、基板301の外周部と基板302の外周部との距離を縮める速度、すなわちZ方向昇降駆動機構406の動作速度を調整することが好ましい。このような構成とすることで、基板301の接合面と基板302の接合面に生じる圧力を一定の力に維持することができる。
【0041】
又は、基板301の接合面と基板302の接合面に生じる圧力に基づいて、Z方向昇降駆動機構406の動作を止めてもよい。基板301の接合面と基板302の接合面に生じる圧力が一定値を超えた場合、例えば、基板を相手側基板に対して押圧する方向を正とした場合に、基板の接合面に生じる圧力が大きく負の値となったときは、基板同士が互いに距離を縮めようとする力が働いていると考えられる。このような状態で基板間の距離を縮めることにより、X又はY方向に生じる力で基板が変形する虞がある。このような変形が生じると、接合された基板同士の位置ずれが起こる。
【0042】
基板301の接合面と基板302の接合面に生じる圧力を一定の力に維持しつつ、この圧力が一定値を超えた場合に、Z方向昇降駆動機構406の動作を止めることで、時間が経つと、基板同士が互いに距離を縮めようとする力が緩和され、一定値以下に戻る。基板の接合面に生じる圧力が一定値以下に戻った時点で、再度Z方向昇降駆動機構406を再駆動させることができる。
【0043】
また本発明の一実施形態では、基板を相手側基板に対して押圧する方向を正とした場合に、基板の接合面に生じる圧力が負の値にならないように維持しながら、基板の接合面に生じる圧力を保つことがより好ましい。一例としては、基板の接合面に生じる圧力の下限値を−100Nと設定した場合、検知される圧力が−150N以下になったときには、動作速度をコントロールするか一時的に動作を止めるようにする。これは、基板間の距離を縮めるときと剥がすときの双方に適用できる。
【0044】
本発明の一実施形態では、基板の接合面に生じる圧力を、複数のステージ圧力センサ411で検知することができる。これにより、基板301又は302に厚みのバラツキやゆがみがあっても、基板間に生じる圧力による変形を抑制することができる。
【0045】
また、Z方向昇降駆動機構406を上昇させ、基板301の外周部と基板302の外周部との距離を離すときにも、基板の接合面に生じる圧力が一定の値を上回らないように維持するようにしてもよい。
【0046】
Z軸周り回転駆動機構407は、ステージ402をZ軸周りに回転させることができる。回転駆動機構407により、ステージ402をステージ401に対するZ軸周りの回転位置θを制御して、両基板301,302の回転方向の相対的位置を制御することができる。
【0047】
制御部は、撓ませた第一の基板を解放するに先立ち、チャンバ内で第一の基板および第二の基板の周囲の雰囲気を真空引きすることで空気の噛みこみによるボイドなく張り合わせることが可能となる。
【0048】
ハイブリッドボンディングと呼ばれる微小電極と周辺の絶縁層を同時に接合する分野においては、Cuからなる微小電極部を中凹状にへこました状態にCMP研磨して先に150℃程度の低温で絶縁層を接合させた後、350℃程度まで加熱することでCu電極を膨張させ隙間を埋めてCu同士を拡散接合させる手法がある。この手法において大気中で接合するとCu電極間の隙間は大気で埋められており、加熱膨張過程においてCu電極表面は酸化してしまい接合上好ましくない。また、隙間の空気は行きどころがないためボイドとして残る。基板の構成材料となるSiO
2以外に、Cu電極を接合面に含む場合には、接合工程において加熱及び加圧を加えることがより好ましい。
【0049】
本実施形態に係る接合装置では、真空中で接合することで隙間は真空であり、酸化を抑制でき、また、ボイドの発生も抑制できる。真空引きのタイミングとしては、中央部を接触させた状態では大気環境を確保することにより接触部に水分子が多く存在するため位置ずれを補正することが可能となるが、数分以内の短い時間で、かつ、数100Pa程度の真空度であれば最初から真空引きしていてもある程度界面に水分子を残すことも可能となる。
【0050】
また、中央部を接触させる直前に真空引きすることで水分子を介在させながら全面を真空雰囲気に確保することができる。また、接触後の位置補正を必要としない場合は最初から真空に引いておいてもよい。
【0051】
また、第一の基板と第二の基板との位置合わせ工程は、撓ませた基板の解放前でもよいし、真空引きの後でもよい。位置合わせに要する時間は、数秒〜数十秒であり、基板の接合に影響は出ない。
【0052】
本発明の一実施形態では、基板の中央部を撓ませる工程の前に、基板301(又は基板302)のいずれかのみを保持した状態で、基板を保持していないステージ402(又はステージ401)と保持された基板との間の距離を測定する距離測定手段(図示せず)を備えてもよい。
【0053】
距離測定手段は、例えばステージ402(又はステージ401)内部に設けられたレーザー距離計であって、対向するステージ又は基板に接触せずに対向ステージ又は基板上面からステージまでの距離を測れるものが好ましい。上記の距離測定手段とウエハ厚み測定手段の測定結果より基板301と302との距離を算出することができる。例えばヘッド側上ガラスステージの上部からレーザ光を投入して下ガラスステージ上面の反射光と上ガラスステージ下側表面の反射光の差分からステージ間距離を求めることができる。また、下ステージ上にウエハが乗っている場合には上ガラスステージ下側表面と下ウエハ上面との距離を求めることができる。
【0054】
また本発明の一実施形態では、基板301と基板302をステージ401、402上に保持した状態で、基板301と基板302の接合面の距離を測定する距離測定手段(図示せず)を備えてもよい。具体的には、基板間に基板301と基板302の接合面の距離を測定できる距離測定手段を挿入して、基板間の距離を測定する態様が挙げられる。
【0055】
<突出機構>
図3に示すように、上側のステージ402において、基板302を支持する支持面の中央部には、下側のステージ401側に向けて出没可能な突出機構430が内蔵されている。この突出機構430は、シリンダ構造、電磁式の機構を採用することができる。突出機構430は、少なくとも、基板302を撓ませる力を有し、突出する方向と逆向きの力を一定以上受けると、突出する方向と逆向きに移動可能な機能を備えるものが好ましい。
【0056】
突出機構430は、
図4に示すように、基板302を押圧する押圧部材434と、ボイスコイルモータ433と、変位センサ435と、を有する。ボイスコイルモータ433は、有底筒状のコイルボビン4331と、コイルボビン4331に巻回されたコイル4332と、コイル4332に対向して配置されたマグネット4333と、コイル4332の外側を覆う有底筒状部と有底筒状部の底部からコイル4332の内側に嵌入される突出部とから構成されるヨーク4334と、を有する。押圧部材434は、ボイスコイルモータ433のコイルボビン4331の底部に固定されている。ボイスコイルモータ433のヨーク4334は、ステージ本体4021に固定されている。ボイスコイルモータ433は、コイル4332に電流が流れると、コイルボビン4331がその筒軸方向に沿って移動する。これにより、コイルボビン4331に固定された押圧部材434が、ステージ402から突出する方向またはステージ402に没入する方向へ移動する。そして、コイル4332に流す電流の大きさを制御することにより、コイルボビン4331に固定された押圧部材434により基板302に加える圧力を制御することができる。また、押圧部材434は、ステージ本体4021から外部に突出する突出部4341と、突出部4341と一体に形成された平板状のベース部4342と、を有する。そして、変位センサ435は、例えば渦電流式変位センサから構成され、その検出部435aと、押圧部材434のベース部4342との間の距離LHを計測する。基板接合装置100は、この変位センサ435で測定される距離LHに基づいて、コイルボビン4331に固定された押圧部材434の位置制御を実行することができる。このように、突出機構430が、ボイスコイルモータ433を利用したものであることにより、押圧部材434で基板302を押圧する際の圧力制御並びに押圧部材434の位置制御が可能となっている。例えば、基板接合装置100は、押圧部材434により基板302を押圧しつつ圧力制御を実行しているときに、押圧部材434の位置が予め設定された範囲から外れた場合、押圧部材434の制御を位置制御に切り替えて押圧部材434を予め設定された範囲内に戻すことができる。このように、基板接合装置100は、押圧部材434の圧力制御と位置制御とを組み合わせることが可能となっている。
【0057】
なお、突出機構としては、例えばシリンダ構造を有し、シリンダ内へ供給するエア圧を変化させることにより加圧力を変化させることができるものであってもよい。また、突出機構として、電磁コイル式でありコイルに流れる電流の電流値を変化させることにより加圧力を変化させることができるものであってもよい。
【0058】
撓ませた状態から、ヘッドまたはステージの各基板間の距離を近づける基板間に垂直な移動軸、例えば本実施形態ではZ軸により基板同士を近づけていくことで、突出機構は押し下げられ、外周部を近づけて中央部から円上に接触面積を外周部へと、他方の平坦な基板に倣わせながら増やしていくことができる。
【0059】
また、基板間の距離を数値制御することで濡れ広がりのスピードをコントロールすることができる。表面活性化状況によっては濡れスピードが違い、従来のツメをウエハ間に挿入して引き抜き自然落下させる方法では早すぎるとボイドになったりするため、スピードコントロールすることは有効な方法である。
【0060】
また、両方の基板を撓ませる場合には、片側を数値制御可能なアクチュエータ、例えばピエゾアクチュエータとすれば、ヘッドのZ軸移動に合わせて伸縮させることで、各基板の底面から中央部の距離を上下同じくしながら外周部を近づけて接触面積を外周部へと増やしていくことができる。
【0061】
この場合、片側のみ撓ませると片側の基板のアライメントマーク位置も内側へずれることになりアライメント精度上もよくなく、かつ、接合時にひずみが生じる。両方向から撓ますことでアライメントマーク位置も同じ位置にくることができ、かつ、接合時のひずみも生じなく張り合わせることが可能となり、従来の片側のみの突出機構に比べて有効な方法である。
【0062】
例えば片側では20μm必要であった突出量は両側では各10μmで納めることができ、よりひずみが少なくなる。また、特にサブミクロンの精度を必要とされるハイブリッドボンディングと呼ばれる微小電極と周辺の絶縁層を同時に接合する分野、例えばCMOSイメージセンサやメモリ、演算素子、MEMSにおいては特に有効な方法である。
【0063】
また、中央部を接触させた後、基板の両端マークを画像処理装置で読み取り位置ずれ量を測定後、補正移動させる場合、両基板間の界面に水分子が存在し、加圧力が小さい場合は接触状態のまま補正移動させることができるが、接触面積が大きな場合などは一度突出機構を引き戻して両基板間に隙間を設けて補正移動させる場合もある。また、突出機構はそのままでZ軸移動により隙間を設けることもできる。また、両方を使用して隙間を設けることもできる。
【0064】
図5は、ステージ402に備えた突出機構430により基板302を撓ませた状態を示す正断面図である。
図5に示すように、突出機構430をステージ402から突出させると、基板302の外周部302sは、自重により下方向への力を受け、基板302の中央部302cが上方に凸となるように撓む。なお、「突出機構430をステージ402から突出させる」とは、詳細には突出機構430の押圧部材434をステージ402から突出させることを意味する。以後、本明細書において同様である。突出機構430による押圧を解除するか、あるいは、基板302が対抗する基板301に突き合わされて一定以上の力を受けると、基板302は元の平板状の形状に復元する。
【0065】
突出機構430の基板に接触する頭頂部430aは、例えば、
図9に示すような曲面形状であってもよい。これにより、基板に局所的な力を加えずに基板を撓ませることができる。また、これにより、基板の位置ずれも抑制することができる。
【0066】
本発明の一実施形態では、基板301の外周部301sと基板302の外周部302sとの距離を縮めるときに、先述のような張り合わせ位置の規定方法とは別に、基板301の中央部301cの接合面の、基板301の外周部301sの接合面に対する突出距離だけ、基板301の外周部301sと基板302の外周部302sとの距離を縮めることが好ましい。この実施形態では、好ましくは、突出機構430の突出した距離と同等の距離だけ、基板301の外周部301sと基板302の外周部302sとの距離を縮める。例えば、前述の変位センサ435により測定される突出機構430の押出し量から張り合わせる位置を決定することができる。例えば突き合わせ位置での変位センサ435の検出値を記憶しておき、突出した時の変位センサ435の検出値との差分から突出量を計算することができる。また、上下センタープッシュする場合には上下の突出量を足してやれば良い。Zの下降量は突出量だけ下降させる方法や、変位センサ435の検出値が、予め記憶しておいた突き合わせ位置での変位センサ435の検出値になるまで下降させる方法などがある。上下でのばらつきを考慮して上下を足した値で突き合わせ位置を割り出す方式が好ましい。また、適宜補正量を加えても良い。
【0067】
<保持機構>
ステージ401,402は、それぞれの支持面に、機械式チャック、静電チャック、真空チャックなどの保持機構440を有していてもよい。この保持機構は、基板301,302の支持面への固定状態と、基板301,302の支持面への固定からの開放状態とを切り換えることができる。
【0068】
保持機構は、
図6に一例を示すように、ステージ401,402の面上において、複数の領域に分割されて設けられてもよい。例えば、
図6の例では、外側保持機構440aと内側保持機構440bの二つの保持機構が設けられている。外側保持機構440aと内側保持機構440bは、独立して制御可能であり、外側保持機構440aで基板の外周部を保持しつつ、内側保持機構440bを開放して、基板の中央部においてはZ軸方向に力を受けないようにすることが可能である。
【0069】
保持機構440が複数設けられる場合、例えば、静電チャックと真空チャックなど、原理や機能の異なる保持機構を併用してもよい。例えば、静電チャックの電極と真空チャックの吸着溝がステージの径方向に交互に設けられてもよい。
【0070】
上記の構成に加え、下側のステージ401側に、突出機構430と同様の機構を有するようにしてもよい。
図7のように、ステージ401及び402の双方で、基板301及び302を撓ませる構成とすることにより、基板の撓み量が少なくなり、より誤差を少なく基板の位置合わせを行うことができる。
【0071】
下側の基板301を撓ませる場合、基板301の外周部301sのみを保持することが好ましい。この場合、基板301の外周部301sのみを外側の保持機構440aにより保持することで、突出機構430で基板を押圧する力が弱くても、所望の形状に基板が撓むので好ましい。
【0072】
上記の接合装置において、保持機構440が、真空吸着方式である場合、ステージ上に設けられた吸着溝が基板の箇所によって分離されていてもよい。例えば、基板の周辺部を保持する吸着溝と基板の中央部を保持する吸着溝とが分離され、それぞれが別個に作動してもよい。これにより、基板の外周部のみ保持することができる。
【0073】
また、中央部は最初、真空吸着しておき、撓ます時点で真空破壊して大気圧としたり0.数秒だけ加圧エアを放出して基板をはがれやすくしたりすることができる。また、基板が鏡面ではがれにくい場合は、保持部接触面をあえて粗くすることで、高さ精度を保持したまま、はがれやすくすることもできる。
【0074】
また、接合が完了した基板接合体は、反りや厚みのバラツキを有する場合があるが、下側ステージ401の全面を、再度真空吸着することで、基板接合体の反りや厚みのバラツキを減少させることができる。
【0075】
上記の接合装置において、保持機構440が、静電チャック方式である場合、保持機構は、
図6に一例を示すように、ステージ401,402の面上において、複数の領域に分割されて設けられてもよい。例えば、
図6の例では、外側保持機構440aと内側保持機構440bの二つの個別制御可能な別パターンが設けられる。
【0076】
外側保持機構440aと内側保持機構440bは、独立して制御可能であり、外側保持機構440aで基板の外周部を保持しつつ、内側保持機構440bを開放して、基板の中央部においてはZ軸方向に力を受けないようにすることが可能である。また、中央部を撓ませる時に、中央部の真空吸着溝を併用して真空破壊して大気圧としたり0.数秒だけ加圧エアを放出して基板をはがれやすくしたりすることができる。
【0077】
また、保持機構を3分割として中央部と外周部の間に1層以上の溝を挿入し、大気解放層を設けてもよい。これにより、外周部は真空保持を維持しながら中央部は加圧エアを放出しても間の大気解放層でどちらの漏れも吸収されるため、中央部のエア放出した際に外周部の吸着保持がはがれたり、エア放出しても外周部に吸引されて中央部を撓ますことができなくなることを防ぐことが可能となり有効である。また、吸着部や大気解放部は溝に限定されず、面内において複数個所を点支持するような構成としてもよい。
【0078】
また、
図8に示すように、上側のステージ402において、基板302を支持する支持面に、薄板状で可撓性を有した押圧板431が設けられていてもよい。押圧板431は、基板302を支持する支持面に、真空吸着方式、機械式チャック、静電チャックなどの保持機構(図示無し)を有していてもよい。
【0079】
図8に示すように、突出機構430を突出させると、押圧板431が弾性変形し、その中央部431cが下方に凸となるように撓む。このようにして押圧板431が下方に凸となるように撓むことによって、保持機構(図示無し)によって外周部302sが保持された基板302の中央部302cが、下側のステージ401に向けて押圧される。すると、基板302は押圧板431に沿って弾性変形し、外周部302sに対し、中央部302cが下方に凸となるように撓む。このとき、押圧板431が撓むことによって、基板302の全体が押圧されて撓むので、基板302に歪みが生じるのを抑えることができる。突出機構430による押圧を解除すると、基板302は元の平板状の形状に復元する。
【0080】
<基板加熱手段>
図1に示したように、基板加熱手段420は、ステージ401,402に内蔵されたヒータ421,422を備えている。ヒータ421,422は、例えば電熱ヒータでジュール熱を発するように構成される。ヒータ421,422は、ステージ401,402を介して熱を伝導させ、ステージ401,402に支持されている基板301,302を加熱する。ヒータ421,422が発する熱量を制御することで、基板301,302やその接合面の温度を調節することができる。ステージ401,402とヒータ421,422とは、別個の部材から構成してもよい。例えば、上記保持機構440を備えるステージ401,402とヒータ配線などを含むヒータ421,422とを重ね合わせてもよい。その一例を
図9に示す。
【0081】
また、接合装置のヒータで加熱してそのまま接合することもできるが、張り合わせた状態で取り出し、バッチ炉やホットプレート上で無加圧なフリーな状態で150℃数時間程度アニールすることでも接合できる。
【0082】
<位置測定手段>
位置測定手段500は、基板301,302の相対的位置関係を測定する。位置測定手段500は、チャンバ200に形成された窓503と、光源(図示せず)と、複数のカメラ501,502と、ミラー504,505と、を備えている。光源(図示無し)から発せられた光は、ミラー504,505、窓503を経て、基板301,302のマークが設けられた部分(図示せず)に当たる。カメラ501,502は、基板301,302のマークが設けられた部分(図示せず)からの反射光を、窓503、ミラー504,505を経て撮像する。
【0083】
図1では、カメラ501,502は、それぞれ、同軸照明系を有している。光源は、ステージ401の上側に設けられてもよく、また、カメラ501,502側からその光軸を進むように光を発するように設けられてもよい。なお、カメラ501,502の各同軸照明系の光としては、基板301,302のマークが附された部分及び両ステージなどの光が通過すべき箇所を透過する波長領域(例えば基板がシリコンで出来ている場合には、赤外光)の光を用いる。
【0084】
基板301と302の位置ずれ量を測定する位置測定手段として、基板301の接合面と基板302の接合面とを、全面同士が非接合状態を維持する距離を保った状態で赤外透過認識により行うことができる。ステージ401と402のいずれかの方向から一つの赤外透過認識カメラによって位置測定を行うことで、複数台のカメラを用いる場合と比較してカメラ間の誤差が生じないという利点がある。
【0085】
上記のように、ステージ401と402側のそれぞれに設けられたカメラによって対向配置された基板の相対位置を測定してもよい。
【0086】
<基板のアライメント>
基板接合装置100は、位置測定手段500と、各駆動機構403〜407と、これらに接続されたコントローラ700とを用い、基板301,302の相対的位置を測定し、位置合わせすることができる。
【0087】
基板301,302には、測定用の光が通過する箇所が規定されており、ここにマークが附されていて、通過光の一部を反射、遮断又は屈折させる。カメラ501,502が通過光を受光すると、撮影した明視野画像においてアライメントマークは暗く現れる。あるいは、アライメントマークからの反射光を受光する場合には、マークは暗い画像内に明るく現れる。アライメントマークは、好ましくは、基板に複数個、例えば基板の対向する2つの角に設けられている。これにより、複数個のアライメントマークの位置から、基板301又は302の絶対的位置を特定することができる。
【0088】
好ましくは、基板301,302の対応する箇所、例えば接合時にZ方向に重なり合う位置に、対応するアライメントマークが附されている。基板301,302の両方のアライメントマークを同じ視野内で観測して、そのX方向及びY方向における相対的ずれ量を測定する。複数個所でのX方向及びY方向における相対的ずれ量を測定することで、基板301,302のX方向、Y方向、θ方向における相対的な位置ずれ(ΔX,ΔY,Δθ)を計算することができる。
【0089】
なお、位置測定手段500における位置ずれ量の測定動作は、基板301,302同士が、非接触状態、接触状態のいずれにおいても実行できる。
【0090】
<マークを用いた基板の相対位置測定>
基板301には、
図10に示すように、位置合わせ用の2つのアライメントマーク(第一のアライメントマーク)MK1a,MK1bが設けられている。また、基板302にも、
図11に示すように、位置合わせ用の2つのアライメントマーク(第二のアライメントマーク)MK2a,MK2bが設けられている。両基板301,302に関するアライメントマークMK1a,MK1b,MK2a,MK2bを撮影して得られる画像は、例えば
図12に示すようになる。
【0091】
位置測定手段500は、両基板301,302が対向する状態において、カメラ501,502の各同軸照明系から出射された照明光の透過光及び反射光に関する画像(画像データ)GAを用いて、両基板301,302の位置を認識することもできる。換言すれば、両基板301,302の位置合わせ動作(ファインアライメント動作)のための位置ずれ測定は、カメラ501,502により、両基板301、302に付された2組のアライメントマーク(MK1a,MK2a)、(MK1b,MK2b)の位置を同時に認識することによって実行される。
【0092】
位置測定手段500は、
図12に示すようなアライメントマークMK1a,MK2aを含む画像GAaとアライメントマークMK1b,MK2bを含む画像GAbとを取得し、画像GAa,GAbに基づいて両基板301,302に付された各組のマーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)の位置を認識する。コントローラ700は、認識したマーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)の相対位置に基づいて、
図13に示すようなマーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)相互間の位置ずれ量(Δxa,Δya)を求めることができる。
【0093】
図12は、マーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)の各組が、互いにその中心同士が重なってほぼ所望の位置にある状態を示し、
図13は、1組のマーク(MK1a,MK2a)が所望の位置から互いにずれている状態を示している。
【0094】
図13に示すように、各画像GAa,GAb(
図13では画像GAaが示されている)のそれぞれについて、基板301,302のマークの幾何学的関係に基づいて、各マークの組ごとに位置ずれ量(Δxa,Δya),(Δxb,Δyb)が求められる。
【0095】
<補正移動量の算出及び移動動作>
コントローラ700は、2組のマーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)の位置ずれ量(Δxa,Δya),(Δxb,Δyb)に基づいて、両基板301,302の所望の位置からのX方向、Y方向及びθ方向における相対的ずれ量ΔD(詳細にはΔx,Δy,Δθ)を算出する。相対的ずれ量ΔDが、その後の補正移動による補正移動量に対応するものである。
【0096】
コントローラ700は、基板301,302間の相対的ずれ量ΔD(Δx,Δy,Δθ)に対応して、基板301,302を最終的に補正量−ΔD(−Δx,−Δy,−Δθ)だけ移動させるような補正移動の経路を計算する。そして、コントローラ700は、算出された補正経路に従って両基板301,302を移動させるように、各ステージ401,402の駆動機構403〜407に指示を出す。
【0097】
補正移動は、相対的ずれ量ΔDがゼロ又は低減されるように、行われる。
図1に示す基板接合装置100の場合には、基板302を支持するステージ402が、基板301を支持するステージ401に対して、最終的に補正量(−ΔD)だけ移動するように、ステージ駆動機構403,404を制御する。ステージ駆動機構403,404は、コントローラ700からの指示に応じ、2つの並進方向(X方向及びY方向)と回転方向(θ方向)とステージ402を駆動し、これにより、両基板301,302が相対的に移動され、上記の位置ずれ量ΔDが補正される。
【0098】
補正移動は、基板の接合面が離間した状態で行う場合と、接触した状態で行う場合とが考えられる。それぞれの、補正移動については、以下で説明する。
【0099】
このようにして、鉛直方向(Z方向)に垂直な平面(水平平面)内における位置ずれ量ΔD(詳細にはΔx,Δy,Δθ)が測定され、当該位置ずれ量ΔDを補正するアライメント動作(ファインアライメント動作)が実行される。
【0100】
なお、ここでは、2つのカメラ501,502を用いて、2つの画像GAa,GAbを並列的に(ほぼ同時に)撮影して取得する場合を例示するが、これに限定されない。例えば、1つのカメラをX方向及び/又はY方向に移動することによって、各画像GAa,GAbを逐次的に撮影して取得するようにしてもよい。また、各マークの組を同じ光軸上で同時に撮像したが、これに限られない。例えば、基板が並進方向(X方向及びY方向)において別の位置にあるときに、それぞれの基板の位置に対して配置された2組(合計4個の)カメラを用いて行ってもよい。カメラの光軸の位置関係が分かっていれば、それぞれのカメラで、対応するマーク(MK1a,MK2a)のそれぞれを、撮像した後に、これらを合成することで、基板を並進方向においてほぼ接合位置に移動させて位置決めを行うことができる。
【0101】
<親水化処理手段>
基板接合装置100は、親水化処理手段600を備えている。
図1に示す基板接合装置100の親水化処理手段600は、基板301,302の接合面を活性化させる活性化処理部610と、活性化した基板301,302の接合面を親水化させる親水化処理部620と、を備えている。
【0102】
活性化処理部610としては、例えば、粒子ビーム源やプラズマ源を採用することができる。活性化処理部610では、真空中で所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させて、接合面を形成する物質を物理的に弾き飛ばす現象(スパッタリング現象)を生じさせることで、表面層を除去することができる。表面活性化処理には、表面層を除去して接合すべき物質の新生表面を露出させるのみならず、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることで、露出された新生表面近傍の結晶構造を乱し、アモルファス化する作用もあると考えられている。アモルファス化した新生表面は、原子レベルの表面積が増え、より高い表面エネルギーを有するので、その後の親水化処理において結合される、単位表面積当たりの水酸基(OH基)の数が増加すると考えられる。これに対し、従来のウェット処理による表面の不純物の除去工程後に化学的に親水化処理する場合には、所定の運動エネルギーを有する粒子の衝突に起因する新生表面の物理的変化がないので、本願発明の接合方法に係る表面活性化処理に続く親水化処理は、この点で従来の親水化処理とは根本的に異なると考えられる。また、結晶構造が乱れ、アモルファス化した新生表面近傍の領域にある原子は、本接合時の加熱処理の際に、比較的低い熱エネルギーで拡散しやすく、比較的低温での本接合プロセスを実現することができると考えられる。
【0103】
表面活性化処理に用いる粒子として、例えば、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)などの希ガス又は不活性ガスを採用することができる。これらの希ガスは、比較的大きい質量を有しているので、効率的に、スパッタリング現象を生じさせることができ、新生表面の結晶構造を乱すことも可能になると考えられる。
【0104】
表面活性化処理に用いる粒子として、酸素のイオン、原子、分子などを採用することもできる。酸素イオンなどを用いて表面活性化処理を行うことで、表面層を除去した後に新生表面上を酸化物の薄膜で覆うことが可能になる。新生表面上の酸化物の薄膜は、その後の親水化処理における、水酸(OH)基の結合又は水の付着の効率を高めると考えられる。また、新生表面上に形成された酸化物の薄膜は、本接合での加熱処理の際に、比較的容易に分解すると考えられる。
【0105】
表面活性化される接合面に衝突させる粒子の運動エネルギーは、1eV(エレクトロンボルト)から2keVであることが好ましい。上記の運動エネルギーにより、効率的に表面層におけるスパッタリング現象が生じると考えられる。除去すべき表面層の厚さ、材質などの性質、新生表面の材質などに応じて、上記運動エネルギーの範囲から所望の運動エネルギーの値を設定することもできる。
【0106】
表面活性化される接合面に衝突させる粒子には、粒子を接合面に向けて加速することで所定の運動エネルギーを与えることができる。
【0107】
また、プラズマ発生装置を用いて、粒子に所定の運動エネルギーを与えることができる。基板の接合面に対して、交番電圧を印加することで、接合面の周りに粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の電離した粒子の陽イオンを、上記電圧により接合面に向けて加速させることで、所定の運動エネルギーを与える。プラズマは数パスカル(Pa)程度の低真空度の雰囲気で発生させることができるので、真空システムを簡易化でき、かつ真空引きなどの工程を短縮化することができる。
【0108】
粒子ビーム源は、例えば1×10
−2Pa(パスカル)や1×10
−5Pa以下などの、比較的高い真空中で作動するので、表面活性化処理後に、新生表面の不要な酸化や新生表面への不純物の付着などを防ぐことができる。さらに、粒子ビーム源は、比較的高い加速電圧を印加することができるので、高い運動エネルギーを粒子に付与することができる。したがって、効率良く表面層の除去及び新生表面のアモルファス化を行うことができると考えられる。
【0109】
プラズマ発生装置は、例えば、100Wで稼動して、親水化処理としては窒素(N
2)や酸素(O
2)、アルゴン(Ar)のプラズマを発生させて、このプラズマを接合面に30秒ほど照射させるように使用すれば親水化のための処理ができる。また、プラズマ発生装置は接合装置とは個別に設置して真空中を連結したり一旦、大気中をハンドリングしたりするように配置すればよい。
【0110】
表面活性化に用いられる粒子には、中性原子又はイオンを用いることもできる。この場合、接合面から離間された位置に配置された、中性原子ビーム源、イオンビーム源(イオンガン)などの粒子ビーム源を用いて、粒子に所定の運動エネルギーを与えることもできる。所定の運動エネルギーが付与された粒子は、粒子ビーム源から基板の接合面に向けて放射される。また、反応ガスとして窒素(N
2)や酸素(O
2)アルゴン(Ar)などを使用してもよい。
【0111】
中性原子ビーム源としては、高速原子ビーム源(FAB、Fast Atom Beam)を用いることができる。高速原子ビーム源(FAB)は、典型的には、ガスのプラズマを発生させ、このプラズマに電界をかけて、プラズマから電離した粒子の陽イオンを摘出し電子雲の中を通過させて中性化する構成を有している。この場合、例えば、希ガスとしてアルゴン(Ar)の場合、高速原子ビーム源(FAB)への供給電力を、1.5kV(キロボルト)、15mA(ミリアンペア)に設定してもよく、あるいは0.1W(ワット)から500W(ワット)の間の値に設定してもよい。例えば、高速原子ビーム源(FAB)を100W(ワット)から200W(ワット)で稼動してアルゴン(Ar)の高速原子ビームを2分ほど照射すると、接合面の上記酸化物、汚染物など(表面層)は除去され、新生表面を露出させることができる。
【0112】
イオンビーム源(IG)は、例えば110V、3Aで稼動して、アルゴン(Ar)を加速させ600秒ほど接合面に照射させるように使用されてもよい。
【0113】
本願発明において、表面活性化に用いられる粒子は、中性原子又はイオンでもよく、さらには、ラジカル種でもよく、またさらには、これらが混合した粒子群でもよい。
【0114】
各プラズマ又はビーム源の稼動条件、又は粒子の運動エネルギーに応じて、表面層の除去速度は変化し得る。そこで、表面活性化処理に必要な処理時間を調節する必要がある。例えば、オージェ電子分光法(AES、Auger Electron Spectroscopy)やX線光電子分光法(XPS、X−ray Photo Electron Spectroscopy)などの表面分析法を用いて、表面層に含まれる酸素や炭素の存在が確認できなくなる時間又はそれより長い時間を、表面活性化処理の処理時間として採用してもよい。
【0115】
表面活性化処理において接合面をアモルファス化するためには、粒子の照射時間を、表面層を除去し新生表面を露出させるために必要な時間より、長く設定してもよい。長くする時間は、10秒から15分、あるいは、表面層を除去し新生表面を露出させるために必要な時間の5%以上に設定してもよい。表面活性化処理において接合面をアモルファス化するための時間は、接合面を形成する材料の種類、性質、及び所定の運動エネルギーを有する粒子の照射条件によって適宜設定してもよい。
【0116】
表面活性化処理において接合面をアモルファス化するためには、照射される粒子の運動エネルギーは、表面層を除去し新生表面を露出させるために必要な運動エネルギーより、10%以上高く設定されてもよい。表面活性化処理において接合面をアモルファス化するための粒子の運動エネルギーは、接合面を形成する材料の種類、性質、及び粒子の照射条件によって適宜設定してもよい。
【0117】
ここで、「アモルファス化した表面」又は「結晶構造が乱れた表面」とは、具体的に表面分析手法を用いた測定により存在が確認されたアモルファス層又は結晶構造が乱れた層を含むとともに、粒子の照射時間を比較的長く設定した場合、又は粒子の運動エネルギーを比較的高く設定した場合に想定される結晶表面の状態を表現する概念的な用語であって、具体的に表面分析手法を用いた測定によりアモルファス層又は結晶構造が乱れた表面の存在が確認されていない表面をも含むものである。また、「アモルファス化する」又は「結晶構造を乱す」とは、上記アモルファス化した表面又は結晶構造が乱された表面を形成するための動作を概念的に表現したものである。
【0118】
また、FABやIGを使用した方法においては筐体内にSiを含んだ材料を介在させることで、Ar粒子ビームと同時にSi粒子ビームを放出させることができる。この方法によると界面にSiがドープされ、より活性なSiが多い界面が形成され、親水化処理した際により多くのOH基が形成され、強度アップできる。特に真空中での接合強度を増加させることに有効である。
【0119】
例えばFAB筐体底面にSi板を配置したもので1kV、100mA、Ar100ccm照射において、酸化膜付Siウエハの真空中での接合強度は、Si板がないものでは1.5J/m
2の強度であったものが、Si板を挿入したのものでは2.5J/m
2以上のバルク破壊が起こる強度へと上がる。また、FABやIGによる粒子ビーム処理は接合装置内に配置する以外に別装置として大気中を搬送したり、連結してもよい。
【0120】
<親水化処理部>
親水化処理部620は、上記活性化処理部610によって清浄又は活性化された基板301,302の接合表面に、水酸基(OH基)を結合させる。
【0121】
親水化処理部620による親水化処理は、チャンバ200内において、表面活性化された基板301,302の接合面の周囲に水(H
2O)を供給することにより行われる。このため、親水化処理部620は、水ガス発生装置621と、弁622と、水ガス供給管623と、を備えている。
【0122】
水の供給は、上記表面活性化された接合表面の周りの雰囲気に、例えば、気体の水(H
2O)を導入することで行われる。気体状の水は、水ガス発生装置621にて、キャリアガスであるアルゴン(Ar)を泡状にして通過させること(バブリング)で生成される。気体状の水は、キャリアガスに混合されて、弁622により所望の流量に制御されて、水ガス供給管623を通って、チャンバ200内に導入される。なお、この際のキャリアガスは、アルゴン(Ar)に限られず、例えば、窒素(N
2)、ヘリウム(He)、酸素(O
2)などであってもよい。
【0123】
また、水は、上記以外にも、水蒸気でもよいし、液状態の水を霧状に噴霧することで、チャンバ200内に導入してもよい。さらに、基板301,302の接合面への水の付着の他の態様として、ラジカルやイオン化されたOH基などを付着させてもよい。
【0124】
また、基板の接合面に水を付着させるために、基板を冷却してもよく、本実施形態の接合装置は、このための冷却装置を備えていてもよい。環境湿度が50%程度であっても基板を冷却することで基板表面の湿度を85〜100%程度に上げることができる。
【0125】
親水化処理では、表面活性化処理が行われた接合表面に、水や、水酸化物、水酸化イオン(OH
−)、又はヒドロシキルラジカル(・OH)など、又はOHで表記される物質のイオンやラジカル(以降、これらを「水など」とも呼ぶ。)などのOH含有物質を付着させて、接合表面上に水酸基(OH基)で終端化(M−OH)されている層が形成される。
【0126】
本願において、親水化処理工程で、表面活性化処理が行われた接合表面の付着される物質を、「水又はOH含有物質」、これらを総称して「水など」、又はより簡略に「水」と呼ぶことがあるが、これらの表記は、上記の物質を総称するものであり、「水(H
2O)」に限られるものではない。
【0127】
なお、表面活性化された基板301,302の接合面の周りの雰囲気の湿度を制御することで、親水化処理の工程を制御することもできる。当該湿度は、相対湿度として計算しても、絶対湿度として計算してもよく、又は他の定義を採用してもよい。
【0128】
水の導入は、両基板の接合面の少なくとも一方又は両方の周りの雰囲気における相対湿度を10%から90%となるように制御することが好ましい。
【0129】
例えば、窒素(N
2)又は酸素(O
2)をキャリアガスとして気体状の水を導入する場合、上記チャンバ内の全圧を9.0×10
4Pa(パスカル)、すなわち0.89atm(アトム)とし、チャンバ内での気体状の水の量を、容積絶対湿度で8.6g/m
3(グラム/立方メートル)又は18.5g/m
3(グラム/立方メートル)、23℃(摂氏23度)の相対湿度でそれぞれ43%又は91%となるように制御することができる。また例えば、銅(Cu)を、容積絶対湿度で、5g/m
3(グラム/立方メートル)から20g/m
3(グラム/立方メートル)の気体状の水を含む雰囲気に曝すと、2nm(ナノメートル)から14nm(ナノメートル)程度の酸化銅の層が形成されると想定される。
【0130】
また、チャンバ内の酸素(O
2)の雰囲気中濃度を10%としてもよい。
【0131】
また、親水化処理を行うために、所定の湿度を有するチャンバ外の大気を導入してもよい。大気をチャンバ内に導入する際には、望ましくない不純物の接合面への付着を防ぐために、当該大気が所定のフィルタを通過するように構成することが好ましい。所定の湿度を有するチャンバ外の大気を導入して親水化処理を行うことで、接合面の親水化処理を行う装置構成を簡略化することができる。
【0132】
また、水(H
2O)の分子やクラスターなどを加速して、接合面に向けて放射してもよい。水(H
2O)の加速に、上記表面活性化処理に用いる粒子ビーム源などを使用してもよい。この場合、上記バブリングなどで生成したキャリアガスと水(H
2O)との混合ガスを、上記粒子ビーム源に導入することにより、水の粒子ビームを発生させ、親水化処理すべき接合面に向けて照射することができる。また、親水化処理は、接合面の近傍の雰囲気中で、水分子をプラズマ化して、これを接合面に接触させることで行ってもよい。
【0133】
なお、粒子ビーム照射やプラズマへの露出などによる表面活性化処理の後に、親水化処理として、パーティクル(汚染粒子)などの除去をかねた水洗浄を行ってもよい。この水洗浄により、上記の親水化処理と同様の効果を得ることができる。
【0134】
なお、親水化処理として、同種又は異種の親水化処理を複数回行ってもよい。また、親水化処理の一環として、又は親水化処理の後に、接合面に強制的に水分子を付着させてもよい。これにより、接合面上の水分子の量を増やし又は制御することができる。さらには、これにより臨界圧力を調整することができる。
【0135】
表面活性化処理と親水化処理が施された接合面は、上述のように水分子を介在させながら張合される訳であるが、水分子を抜いていくことでOH基同士での水素結合の作用により互いに引き合い、比較的強い仮接合を形成する。さらに水素と酸素とを含む接合界面が形成されているので、本接合での加熱処理により水素と酸素が接合界面の外部に放出され、清浄な接合界面を形成することが可能になる。
【0136】
本実施形態では、接合させる手法として加圧する方法と加熱する方法を示したが、臨界圧力を超えて加圧することにより、例えば10MPaで加圧することで水分子が押しやられOH基同士での接合へと変わる。また、加熱を加えることでも水分子は界面から除去されOH基同士での接合へと変わる。その後も加熱を続けることで水素結合から共有結合へと移り変わり強固な本接合状態へと遷移する。
【0137】
また、真空中で長時間放置して水分子を飛ばしてから接合することでも同様な仮接合状態が維持される。水分子が介在した接合状態から加圧を加えて接合したり、真空中で接合させることもできる。その後強固な接合に遷移させるために加熱を併用することもできる。また、最初から加熱により強固な接合へと遷移させることも可能である。但し、アライメント精度を考慮すると、加熱は基板の熱膨張を伴うため、先に加圧や真空中での接合により仮接合した状態で加熱することが有効である。
【0138】
親水化処理により、接合面上に酸化物が形成されることもある。しかし、表面活性化処理後、連続して水などを付着させることで、不純物の付着のない新生表面上に直に水酸(OH)基を形成することができ、さらに水などを付着させることで、その水酸(OH)基上に水分子が付着していくことになる。この酸化物は、比較的コントロールされている(例えば、厚さが数nm又は数原子層以下)ので、特に電気的特性を悪化させるようなものではない。張り合わせ後の加熱処理により、金属材料内で吸収され、又は水として接合界面から外側へ逃げるなどして、消滅あるいは減少させることも可能である。したがって、この場合、基板との間の接合界面を介した導電性には実用上の問題が生じることはほぼないと考えられる。
【0139】
補正移動時に接触状態を維持して移動できる場合と隙間を開けてから移動させる場合がある。水分子が介在しており接触面積が小さければ接触状態でも移動できる。隙間を開ける場合は数μm程度開ければよい。
【0140】
<接合方法>
次に、本実施形態に係る基板接合装置100により実行される基板301,302の接合方法について
図14を参照しながら説明する。
【0141】
まず、ステージ間距離とウエハ厚みとを測定する測定工程が実行される(ステップS100)。測定工程は、基板の中央部を撓ませる工程の前に実行される。この測定工程では、前述の距離測定手段によりステージ401と402の間の距離を測定する距離測定工程と、前述のウエハ厚み測定手段により基板301,302それぞれの厚みを測定する厚み測定工程と、が実行される。
【0142】
なお、このステージ間距離とウエハ厚みとを測定する測定工程に代えて、基板の中央部を撓ませる工程の前に、基板301(又は基板302)のいずれかのみを保持した状態で、基板を保持していないステージ402(又はステージ401)と保持された基板との間の距離を測定し、この測定結果とウエハ厚み測定手段の測定結果より基板301と302との距離を算出してもよい。あるいは、基板301と基板302をステージ401、402上に保持した状態で、基板301と基板302の接合面の距離を測定してもよい。
【0143】
次に、親水化処理工程が実行される(ステップS101)。この親水化処理工程では、基板301及び基板302のそれぞれの接合面の表面に親水化処理を行う。親水化処理工程では、まず、
図3に示すように、基板接合装置100のステージ401の保持機構(図示無し)で基板301を保持し、ステージ402の保持機構(図示無し)で基板302の外周部302sを保持する。この状態で、基板301と基板302とは、その接合面同士を互いに離間させた状態で対向させる。なお、このとき、チャンバ200は大気開放し、チャンバ200内の基板301,302の周囲雰囲気には大気を導入しておく。
【0144】
次に、親水化処理手段600の活性化処理部610において、上記したような活性化処理法のいずれかにより、基板301,302の接合面を活性化させる。例えば、プラズマ化したアルゴン(Ar)を基板301,302の接合面に衝突させてスパッタリング処理を施す。すると、基板301,302の接合面の表面層が除去され、接合すべき物質の新生表面が露出するとともに、露出された新生表面近傍の結晶構造が乱され、アモルファス化する。続いて、親水化処理部620において、上記したような親水化処理法のいずれかにより、活性化した基板301,302の接合面を親水化させる。例えば、水ガス発生装置621で気体状の水を生成し、生成した気体状の水を、キャリアガスとともに水ガス供給管623を通して、チャンバ200内に導入する。表面活性化処理が行われた基板301,302の接合表面に、水などのOH含有物質を付着させて親水化処理を施すと、接合表面上に水酸基(OH基)で終端化(M‐OH)されている層が形成される。
【0145】
なお、前述のステージ間距離とウエハ厚みの測定工程(ステップS100)と親水化処理工程(ステップS101)とは、その順序が前後してもよい。これらの順序は、チャンバの構成による。
【0146】
続いて、基板301,302の位置合わせ工程が実行される(ステップS102)。この位置合わせ工程では、基板301と基板302との位置合わせを行う。これには、位置測定手段500において、撓んだ状態の基板301と、基板302とが対向する状態において、カメラ501,502の各同軸照明系から出射された照明光の透過光及び反射光に関する画像(画像データ)GAを用いて、両基板301,302の位置を認識する。位置測定手段500は、アライメントマークMK1a,MK2aを含む画像GAaとアライメントマークMK1b,MK2bを含む画像GAbとを取得し(
図12)、画像GAa,GAbに基づいて両基板301,302に付された各組のマーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)の位置を認識する。コントローラ700は、認識したマーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)の相対位置に基づいて、マーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)相互間の位置ずれ量(Δxa,Δya)(Δxb,Δyb)を求める(
図13)。
【0147】
コントローラ700は、2組のマーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)の位置ずれ量(Δxa,Δya),(Δxb,Δyb)に基づいて、両基板301,302の所望の位置からのX方向、Y方向及びθ方向における相対的ずれ量ΔD(詳細にはΔx,Δy,Δθ)を算出する。次いで、コントローラ700は、基板301,302間の相対的ずれ量ΔD(Δx,Δy,Δθ)に対応して、基板301,302を最終的に補正量−ΔD(−Δx,−Δy,−Δθ)だけ移動させるような補正移動の経路を計算する。そして、コントローラ700は、算出された補正経路に従って両基板301,302を移動させるように、各ステージ401,402の駆動機構403〜407に指示を出す。
【0148】
ステージ駆動機構403,404は、コントローラ700からの指示に応じ、2つの並進方向(X方向及びY方向)と回転方向(θ方向)とにステージ402を駆動し、これにより、両基板301,302が相対的に移動され、上記の位置ずれ量ΔDが補正される。
【0149】
その後、基板を撓ませる工程が実行される(ステップS103)。基板を撓ませる工程では、
図5に示すように、基板301と基板302とを、接合面同士を対向させた状態で、基板302を、接合面の外周部302sに対して中央部302cが基板301側に突出するように撓ませる。これには、上側のステージ402において、基板302を支持する支持面の中央部に内蔵した突出機構430を、下側のステージ401側に向けて突出させる。ここにおいて、
図7に示すように、基板301を、接合面の外周部301sに対して中央部301cが基板302側に突出するように撓ませるとともに、基板302を、接合面の外周部302sに対して中央部302cが基板301側に突出するように撓ませてもよい。
【0150】
次に、基板301,302の中央部同士を突き合わせる突き合わせ工程が実行される(ステップS104)。
図15は、撓ませた基板の中央部を上方の基板に突き当てた状態を示す正断面図である。突き合わせ工程では、
図15に示すように、基板301の接合面と基板302の接合面とを、中央部同士で突き合わせる。これには、ステージ駆動機構404のZ方向昇降駆動機構406において、ステージ402を、Z方向に沿って下方のステージ401側に移動させる。そして、中央部301cが上方に凸となるように撓んだ状態でステージ401に保持された基板301を、上方のステージ402に保持された基板302に突き当てる。これにより、基板301の接合面と基板302の接合面とが、中央部同士で突き合わされる。この状態で、チャンバ200内には大気が導入されているので、基板301の接合面と基板302の接合面の間には、親水化処理による接合表面上に水酸基(OH基)で終端化(M−OH)されている層が介在している。
【0151】
基板の中央部を押し出すセンタープッシュ方式において、従来の上下のいずれかから基板の中央部を押し出すセンタープッシュ(片側センタープッシュ)接合方法では、隙間を数100μm開けてウエハを撓ませて接合するため、撓みによるひずみが発生し、また、中央部と周辺部の伸びの違いから接合後ウエハがそるという問題がある。また、アライメント隙間、センタープッシュ隙間が大きいため、実際に接触する位置では誤差が生じるという問題もある。
図16は、上から基板の中央部を押し出すセンタープッシュ接合方法を説明する図である。
【0152】
一方、
図7で説明したように、ステージ401及び402の双方で、基板301及び302を撓ませる構成とすることにより、センタープッシュを上下から行う方式がある。この高精度低歪接合方法(両側センタープッシュ接合方法)では、アライメント隙間をウエハが接触するぎりぎり(例えば、10μm以下)まで近づけてアライメントし、その位置でセンタープッシュ接合させる。これにより、ヘッド下降による誤差が生じなくなる。また、センタープッシュを上下から行うことで上下ウエハ間のひずみをなくすことができる。結果そりなく、ひずみもない接合が可能となる。その後、ウエハ接合が進むに従いヘッドを0隙間位置へ下降させてリリースする。
図17は、本実施形態に係るセンタープッシュ接合方法を説明する図である。
【0153】
この、ぎりぎりのアライメント、センタープッシュ隙間やリリースポイントを決めるためには、ステージの平行度、隙間をミクロン単位で校正する必要と、各ウエハの厚みばらつき(2〜10μm)を補正する必要がある。以下にその方法について説明する。
【0154】
<ステージの平行度、隙間をミクロン単位で校正する方法>
図18Aおよび
図18Bは、ステージの平行度、隙間をミクロン単位で校正する方法を説明する図である。具体的には、
図2で説明したステージ及びヘッドに対して、レーザーセンサ(図示せず)が設けられている。そして、レーザーにてステージ401とステージ402の間の3ヵ所の隙間(A、B、C)の大きさを測定し、距離G1を求めることで、平行ずれや隙間誤差を読み取る。読み取った結果をもとに、突出機構412を用いて、あらかじめ設定した平行度及び隙間になるようにステージ402をフィードバック補正する。実際には、これらの装置と連動した校正ボタン(図示せず)を押すことで毎日、必要な状況で校正することができる。
【0155】
<ウエハ厚みばらつきを補正して隙間調整を行う方法>
図19は、ウエハ厚みばらつきを補正して隙間調整を行う方法を説明する図である。最初に、ウエハ厚み測定手段を用いて、アライナ位置にて上下からレーザーで基板301,302のウエハ厚みを3ヵ所測定する。基板接合装置100が新たな基板301,302を挿入する前にステージ401とステージ402が指定された隙間を保つよう移動した後、レーザーにてステージ401とステージ402の間の3ヵ所の隙間(A、B、C)の大きさを測定し、距離G1を求める。実際に基板301,302を挿入、保持した状態で事前測定した基板301,302のウエハ厚みt1、t2とステージ402とステージ401の間の距離G1から基板301と302の間の距離G2を自動的に求めてZ軸にフィードバックする。そうすることで、ぎりぎりのアライメント隙間と0点リリースを達成することができる。また、ステージ401、402におけるレーザ測定する位置は3点でなくても良い。1点でも良い。また、ウエハ交換時に毎回でなくても良く、適時行う方法や指定回数で行っても良い。
【0156】
続いて、基板301,302同士を仮接合する仮接合工程が実行される(ステップS104−2)。この仮接合工程では、基板301の接合面と基板302の接合面とを、中央部同士で突き合わせた状態で、Z方向昇降駆動機構406を駆動してステージ402を下降させ、少なくとも一方の基板301,302の接合面に一定値以下の圧力、あるいは臨界圧力以下の圧力をかける。圧力の印加は、接触と同時に開始してもよく、また接触後、ある時間経過後に開始してもよい。また、圧力の印加は、接触状態にある時間の一部に亘って行われてもよく、全体に亘って行われてもよい。さらにまた、圧力の印加は、断続的に行われてもよく、印加中は、一定の圧力が保たれても、時間的に変化されてもよい。なお、途中で離しても全面で張り合わせることができる。完全に張り合わせるまで押し込むと加圧が加わりずれたりするため全面加圧する位置に限定されない。
【0157】
「接合面の臨界圧力」とは、それを超える圧力で接合面を押すと、接合面の所望の特性が変化し又は失われる圧力として定義されうる。例えば、最終的に接合界面を形成する工程(本接合)の前の、接触工程(仮接合)で接合面に圧力を掛けすぎると、両基板301,302が接合し離間させることができなくなる場合や、離間させることができ、再度接触し加圧しても、所望の接合ができなくなる場合がある。そこで、接触工程で接合面に印加する圧力を低くすると、所望の接合を行うための表面特性を損なわずに、基板301,302が非接合状態のまま、接触した基板301,302を離間させることができる。このように、その後に基板301,302が離間されうる最低の圧力を臨界圧力と定義してもよい。
【0158】
あるいは、接触と離間を複数回繰り返す場合に、離間をさせることはできるが、接触又は接触の繰り返しにより、その後、接合工程を行っても、所望の接合強度などの特性を得ることができなくなる。例えば、接触界面の一部で新生表面同士が接触して、局部的に又は微視的に強固な接合界面が形成されても、比較的小さい力で基板301,302を離間できる場合がある。しかし、基板301,302自体は離間できても、離間により上記強固に形成された接合界面が破壊するなどして表面特性が悪化し、その結果、所望の接合特性が最終的に得られなくなる。この場合には、接触工程での接合面に掛かる圧力を小さくすることで、新生表面の露出や接触を十分に回避することも可能である。このように、接触工程での接合面に掛かる圧力が実質的に高いことが原因である場合には、当該圧力を低くすることで、接触と離間を複数回繰り返しても、最終的に所望の接合強度を得ることが可能になる。このように離間可能で、かつ最終的に所望の接合強度が得られるための、接触工程での圧力を臨界圧力と定義してもよい。
【0159】
臨界圧力は、それ以上の圧力を掛けると所望の接合を行うことができなくなる圧力と定義されてもよく、またそれを超える圧力を掛けると所望の接合を行うことができなくなる圧力と定義されてもよい。
【0160】
臨界圧力は、接合面を形成する材料、接合面上の表面層の存在の有無、表面層の特性、表面エネルギーなど種々の要因に応じて決定することができる。したがって、本願の接合方法は、仮接合工程(ステップS104−2)の前に、少なくとも一方の基板301,302の接合面の臨界圧力を決定する工程(図示せず)を有していてもよい。
【0161】
仮接合工程(ステップS104−2)において印加される圧力は、基板301,302の両接合面に定義される臨界圧力の小さい方の臨界圧力以下又はこれ未満であることが好ましい。これにより、基板301,302のいずれの接合面に対しても、適切な圧力の印加を確実にすることができる。一方の接合面に臨界圧力が定義されない場合には、臨界圧力が定義される他方の接合面の臨界圧力以下又は未満の圧力を、印加してもよい。
【0162】
その後、相対位置測定工程(位置ずれ量測定工程)が実行される(ステップS104−3)。この相対位置測定工程では、上記仮接合工程(ステップS104−2)の後に、中央部同士が接触状態にある基板301,302の接合面の相対的な位置関係又は両接合面の相対位置を測定する。これには、位置測定手段500において、カメラ501,502の各同軸照明系から出射された照明光の透過光及び反射光に関する画像(画像データ)GAを用いて、両基板301,302に付された各組のマーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)の位置を認識する。コントローラ700は、認識したマーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)の相対位置に基づいて、マーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)相互間の位置ずれ量(Δxa,Δya)(Δxb,Δyb)を求める。
【0163】
このように、基板301,302の接合面の相対位置の測定は、接触圧力下にある状態で行うと、接触かつ圧力が掛かっている状態では、接合面の相対位置が、最終的な接合状態に近づく。このため、加圧により、より正確で均一な接触状態を形成又は維持することができる。
【0164】
次に、相対位置ずれ量が許容誤差範囲内に収まっているか否かを判定する判定工程が実行される(ステップS104−4)。なお、位置ずれ量が所定の許容誤差範囲内に収まっているか否かは、3つの位置ずれ量(Δx,Δy,Δθ)の全てがそれぞれの許容誤差範囲に収まっている旨の条件を充足するか否かに基づいて判定されてもよい。
【0165】
前述の判定工程において、相対位置ずれ量が許容誤差範囲内に収まっていないと判定されると(ステップS104−4:No)、補正移動量算出工程が実行される(ステップS104−5)。この補正移動量算出工程では、基板301,302の補正移動量を決定する。補正移動量算出工程では、相対位置測定工程(ステップS104−3)で測定された相対位置から、所望の相対位置へと移動するための基板301,302の補正移動量を求める。これには、コントローラ700は、2組のマーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)の位置ずれ量(Δxa,Δya),(Δxb,Δyb)に基づいて、両基板301,302の所望の位置からのX方向、Y方向及びθ方向における相対的ずれ量ΔD(詳細にはΔx,Δy,Δθ)を算出する。次いで、コントローラ700は、基板301,302間の相対的ずれ量ΔD(Δx,Δy,Δθ)に対応して、基板301,302を最終的に補正量−ΔD(−Δx,−Δy,−Δθ)だけ移動させるような補正移動の経路を計算する。例えば、相対位置測定工程(ステップS104−3)で測定が行われた相対位置から、一旦、接合面の接触状態を解除し、すなわち接合面を離間させ、接合面にほぼ平行方向に基板301,302を相対的に移動させ、再び接合面同士を接触させるように、移動経路を形成してもよい。すなわち、以下の相対位置測定工程(ステップS104−3)では、一旦接触していた接合面又は接触していた基板301,302が離間して、補正移動量の移動後に、再び接触する。また、相対位置測定工程で測定が行われた相対位置から、一旦、接合面の接触状態での加圧を除去又は減圧させ、基板301,302が互いに中央部同士での接触状態を保ったままで、接合面にほぼ平行方向に基板301,302を相対的に移動させ、再び加圧することで、移動経路を形成してもよい。上記の移動経路の形成は、例示であって、これに限定されない。
【0166】
なお、補正移動量は、所定のパラメータの関数として決定されるようにしてもよい。測定された基板301,302の相対位置が、当該関数が考慮する一パラメータであることが好ましい。上記関数のパラメータは、測定された基板301,302の相対位置以外のパラメータを含んでいてもよい。上述のとおり、相対位置の補正のための基板301,302の移動経路は、種々の形状をとり得るので、その際の基板301,302の移動機構又は測定機構のくせや誤差などをパラメータとして考慮してもよい。
【0167】
次に、互いに仮接合された基板301,302同士を互いに離間した状態に解放する解放工程が実行される(ステップS104−6)。この解放工程では、基板の中央部同士が一定の距離を保つように突き合わせた状態で、基板301の外周部301sと基板302の外周部302sとの距離を離し、次いで、基板302の中央部の撓みを戻す。
【0168】
続いて、基板301,302の相対位置を補正する位置補正工程が実行される(ステップS104−7)。この位置補正工程では、補正移動量算出工程(ステップS104−5)で決定された補正移動量だけ基板301,302を移動させる。あるいは、上記求められた移動経路に従って基板301,302を移動させる。これにより、測定された位置ずれが補正され、又は最小化される。これには、コントローラ700は、補正移動量算出工程(ステップS104−5)で算出された補正経路に従って両基板301,302を移動させるように、各ステージ401,402の駆動機構403〜407に指示を出す。ステージ駆動機構403,404は、コントローラ700からの指示に応じ、2つの並進方向(X方向及びY方向)と回転方向(θ方向)とにステージ402を駆動し、これにより、両基板301,302が相対的に移動され、上記の位置ずれ量ΔDが補正される。
【0169】
この基板301,302の移動に、基板301,302が互いに離間した状態での移動経路が含まれている場合には、接合面を中央部同士で突き合わせて、再び接触状態にする。また、基板301,302又は接合面が離間せずに接触状態を保ちつつ、基板301,302が移動する場合には、移動が完了した時点で、基板301,302が中央部同士で突き合わされた接触状態が実現される。
【0170】
そして、位置補正工程(ステップS104−7)後、基板301を撓ませる工程(ステップS103)に戻る。そして、測定された基板301,302の位置ずれ量が許容誤差範囲内に収まるまで、基板301,302の突き合わせ工程(ステップS104)から、位置補正工程(ステップS104−7)を繰り返す。これにより、精度の高い基板301,302間の位置決めを行い、最終的に接合面又は基板301,302間で高い位置決め精度を有する接合界面を形成することができる。
【0171】
一方、相対位置ずれ量が許容誤差範囲内に収まっていると判定されると(ステップS104−4:Yes)、基板301,302同士を張り合わせる張り合わせ工程が実行される(ステップS105)。張り合わせ工程では、
図20Aの矢印AR21に示すように、まず、突出機構430をステージ402に没入させる。なお、「突出機構430をステージ402に没入させる」とは、詳細には突出機構430の押圧部材434をステージ402に没入させることを意味する。以後、本明細書において同様である。このとき、基板301、302は、それらの中央部同士が非接合状態を維持する圧力で突き合わせた状態を維持する。次に、
図20Bの矢印AR22に示すように、Z方向昇降駆動機構406により、上側ステージ402を下側ステージ401に近づける方向へ移動させる。これにより、基板302が基板301に押し付けられ、基板301の外周部と基板302の外周部との距離が縮められ、基板301、302同士が全面で張り合わされた状態となる。なお、この張り合わせ工程において、例えば、突出機構430をステージ402に没入させることにより、基板301の中央部と基板302の中央部の距離を保った状態にしてもよい。この場合でも、上側ステージ402を下側ステージ401に近づける方向へ移動させることにより、基板301の外周部と基板302の外周部との距離が縮められ、基板301,302同士が重ね合わされた状態となる。
【0172】
なお、
図7、17で説明した、ステージ401、402の双方で基板301、302を撓ませるいわゆるセンタープッシュを行う方式を採用するとする。この場合、張り合わせ工程では、
図21Aの矢印AR23、AR24に示すように、ステージ401、402双方の突出機構430をステージ402に没入させる。このとき、基板301、302は、それらの中央部同士が非接合状態を維持する圧力で突き合わせた状態を維持する。次に、
図21Bの矢印AR25に示すように、Z方向昇降駆動機構406により、上側ステージ402を下側ステージ401に近づける方向へ移動させる。これにより、基板302が基板301に押し付けられ、基板301の外周部と基板302の外周部との距離が縮められ、基板301、302同士が全面で突き合わされた状態となる。
【0173】
また、張り合わせ工程では、上側ステージ402から基板302を開放するときには、先ず、基板302を保持する真空チャックなどの保持手段を解放させ、次いで、下側ステージ401の真空吸着を稼働させ、かつ下側の基板301の中央部を撓ませている場合には、その撓みも元に戻す。その後、Z方向昇降駆動機構406により上側ステージ402を上昇させることが好ましい。
【0174】
なお、Z方向昇降駆動機構406によって、基板の全面が突き合わされた状態と、上側ステージ402から基板302を開放した状態とを比較すると、10μmから最大で40μm程度Z方向に突き合わされた基板の位置がずれることがある。これは、突き合わせる前の基板301又は302に反りやゆがみがあるためである。突き合わせる前には、この反りやゆがみのために、実際の基板の厚みより見せかけの厚みが大きくなるが、基板を突き合わせると、基板間に働く、互いに引き合う力によって、基板の反りやゆがみが強制される。このため、Z方向において、基板の全面が突き合わせたポイントと、基板をステージから解放するポイントには、10μmから最大で40μm程度の差が生じる。
【0175】
その後、基板301,302の接合工程が実行される(ステップS106)。この接合工程では、
図20Bに示すように、基板301の接合面と基板302の接合面とを全面で突き合わせた後に接合する。ここで、この接合工程では、基板301,302の接合面同士が全面で突き合わされた状態にある接合面に対し、圧力を加えるようにしてもよい。基板301,302の接合面同士が全面で突き合わされた状態で印加される圧力は、前記の臨界圧力以上の圧力又は臨界圧力を超える圧力であるのが好ましい。これにより、最終的な接触工程において基板301,302の接合面を一層密着させることができる。
【0176】
基板301,302の接合面同士が全面で突き合わされた状態での加圧は、例えば、基板接合装置100のZ方向昇降駆動機構406のような機構を用いて、機械的に基板301,302に対して加えることができる。また、基板301,302の接合面同士が全面で突き合わされた状態での加圧は、基板301,302に対して反対電荷を与えることで、この電荷による静電気の引力を用いて、電気的に基板301,302に対して加えてもよい。基板301,302の接合面同士が全面で突き合わされた状態での加圧の態様、方法、圧力などは、上記の例に限られず、種々の具体的な基板接合方法に応じて、適宜調節されてもよい。
【0177】
また、接合工程では、基板301,302の接合面同士が全面で突き合わされた状態にある接合面に対して熱を加える工程を有してもよい。加熱により、所望の特性を有する接合界面を形成させることができる。加熱により、最終的に所望の特性を有する接合界面を形成してもよい。加熱により、接合面近傍の原子の拡散を促進させることで、接合面の表面に存在する、最終的には不要な表面層を拡散させて除去し、新生表面が直接接触する接合界面を形成し、微視的な表面凹凸を減らして実質的な接合界面の面積を増大させることなどが可能になる。これにより、接合界面の機械的特性、電気特性、化学的特性など種々の特性を向上させることができる。加熱は、上記の加圧と同時に行うことができる。又は、加熱時間と加圧時間とを一部又はすべてが重なるように、加熱と加圧とを行ってもよい。加熱と加圧とを同時に行うことにより、接合面近傍の原子の拡散を一層促進させて、得られる接合界面の特性を向上させ、また接合プロセスを一層効率化させることができる。
【0178】
例えば、上記のように、基板301,302の接合面同士が全面で突き合わされた状態で、基板301,302に対して反対電荷を与えることで、この電荷による静電気の引力を用いて、電気的に基板301,302に対して加圧しつつ、加熱するようにしてもよい。これにより、いわゆる陽極接合を行うことができる。
【0179】
加熱は、基板301,302を支持するステージ401,402から熱を伝導させることで行ってもよく、基板301,302の雰囲気のガスを加熱することでガスから熱を伝導させることで行ってもよく、接合面を光などで照射することにより行ってもよい。
【0180】
このように、両基板301,302の接合面に対して加圧とともに加熱することで、両基板301,302間の最終的な接合界面を形成するようにしてもよい。このようにして、両基板301,302が良好にアライメントされて最終的な接合が達成される。
【0181】
上述した基板301,302の接合方法、基板接合装置100によれば、基板301及び基板302のそれぞれの接合面の表面に水又はOH含有物質を付着させる親水化処理を行う工程と、基板301と基板302とを、接合面同士を対向させて配置するとともに、基板301を、接合面の外周部301sに対して中央部301cが基板302側に突出するように撓ませる工程と、基板301の接合面と基板302の接合面とを、中央部同士で突き合わせる工程と、中央部同士が非接合状態を維持する圧力で突き合わせた状態で、基板301の外周部301sと基板302の外周部302sとの距離を縮め、基板301の接合面と基板302の接合面とを全面で突き合わせて接合するようにした。これにより、基板301,302同士の間でのボイドの発生を防ぐとともに、高い位置精度で接合することができる。
【0182】
また、基板301と基板302との位置合わせを行う工程を行った後、基板301,302同士を接合する前に、基板302及び基板301の周囲の雰囲気を真空引きするようにしてもよい。これにより、基板301と基板302との位置合わせを行う工程は、大気中で行うこととなる。すると、基板301の接合面と基板302の接合面とを、中央部同士で突き合わせたときに、基板301の接合面と基板302の接合面との間に水分子が介在した状態が維持される。この状態では、水分子を接合面に挟んでいるため、OH基同士が接合しておらず、接合面に影響を与えずに基板301,302同士を剥がすことができる。
【0183】
仮に、基板301の接合面と基板302の接合面とを、中央部同士で突き合わせる工程を真空中で行ったとすると、接合面に水分子が十分に残らないため、突き合わせた基板301,302同士を剥がしたときにその接合面に影響が出る。
【0184】
したがって、基板301の接合面と基板302の接合面とが接合されることがなく、基板301と基板302との位置合わせを繰り返し行うことができる。
【0185】
その一方で、基板302の接合面と基板301の接合面とを全面で突き合わせるときには、周囲の雰囲気は真空引きされているので、基板302の接合面と基板301の接合面との間に介在する水に空気が混入するのを防ぐことができる。したがって、基板302と基板301との接合部にボイドが発生するのを防ぐことができる。その結果、基板301,302同士を高精度に位置合わせしつつ、高品質に接合することが可能となる。
【0186】
また、基板302と基板301との位置合わせを行う工程では、基板302の接合面と基板301の接合面とを、中央部同士で突き合わせた状態で、基板302と基板301との位置ずれ量を測定し、測定された位置ずれ量が許容誤差範囲を超えている場合には、基板302と基板301との位置ずれ量が小さくなるように基板301と基板302との相対位置を調整し、位置ずれ量が許容誤差範囲内に収まるまで、基板301と基板302との位置ずれ量の測定と、基板301と基板302との相対位置の調整とを繰り返すようにした。このように、基板301と基板302との位置ずれ量が許容誤差範囲内となるまで繰り返すことで、基板301と基板302とを高精度に位置合わせすることができる。
【0187】
基板301と基板302との位置ずれ量を測定する工程は、基板301の接合面と基板302の接合面とを、中央部同士が非接合状態を維持する圧力又は時間で突き合わせた状態で行うようにした。基板301と基板302とを過大な圧力で突き合わせたり、長時間放置したりすると、基板301の接合面と基板302の接合面との間に介在する水が追い出されてしまい、基板301と基板302とが接合されてしまうことがある。そこで、基板301と基板302とが非接合状態を維持する圧力、言い換えると、基板301の接合面と基板302の接合面との間に水が介在した状態を維持させたままにすることで、基板301と基板302との位置合わせを円滑に行うことができる。
【0188】
また、基板301の接合面と基板302の接合面とを全面で突き合わせる工程では、基板301を平板状として、基板302の接合面に突き合わせるようにした。このように、撓ませていた基板301を平板状とすることで、基板301の接合面と基板302の接合面とを、容易に全面で突き合わせて接合することが可能となる。
【0189】
また、基板301の接合面と基板302の接合面とを全面で突き合わせる工程では、基板301と基板302とを加圧して接合することで、基板301,302の接合を確実に行うことができる。
【0190】
本発明の一態様によれば、上記の接合方法において、第一の基板と第二の基板と突き合わせる工程は、非接合状態を維持する圧力で突き合わせた状態で、第一の基板の外周部と第二の基板の外周部との距離を縮め、第一の基板の接合面と第二の基板の接合面とを全面で突き合わせて接合する。
【0191】
この場合、接合面を加圧しすぎるとひずみが生じ基板全面での位置精度が出なくなる。また、片側だけ撓ますと接合途上でひずみが生じる可能性もあるが、両方の基板を撓ますと接合時にひずみが抑えられる場合がある。
【0192】
また、基板301,302同士が接合される圧力まで加圧しないことで、再度位置合わせ調整することが可能となる。
【0193】
(その他の実施形態)
なお、本発明の基板接合方法、基板接合装置は、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
【0194】
上記実施形態において、位置合わせ工程(
図14のステップS102参照)の直前において、ステージ401,402に保持された基板301,302の反り量を測定する基板反り量測定工程が行われる基板接合方法であってもよい。例えば
図22Aに示すように、ステージ401,402に保持された基板301,302の中央部が突出する形で反っている場合がある。この場合、基板301,302の中央部同士の距離は、ステージ401、402間の距離G1から基板301,302の厚さを差し引いて得られる距離G2よりも短くなる。例えば、基板301,302の中央部が突出する形で反っているとする。この場合、実施形態のように距離G2が所望の距離となるように、ステージ402をステージ401に近づけた場合、ステージ401,402の中央部同士の距離は所望の距離よりも短くなる。従って、例えば基板301,302の中央部の反り量が合計で10μm以上ある場合、距離G2が10μmとなるようにステージ401,402同士を近づけると、基板301,302が接触してしまい、位置合わせ工程を行うことができなくなる。
【0195】
本変形例に係る基板接合装置は、実施形態に係る基板接合装置100と同様に、突出機構430の位置(突出機構430の押圧部材434の位置)を検出する変位センサ435を有する。本変形例に係る基板接合方法では、位置合わせ工程の直前の反り量測定工程において、
図22Bに示すように、変位センサ435により、反りの無い平坦な基準基板(図示せず)に突出機構430を極めて微小な圧力で接触させた状態での突出機構430の位置である突出機構位置と、基板301,302に突出機構430を極めて微小な圧力で接触させた状態での突出機構430の位置である突出機構位置とを検出する(位置検出工程)。つまり、基準基板に突出機構430を、基準基板を撓ませない大きさの圧力で接触させた状態での突出機構430の位置と、基板301、302に突出機構430を基板301、302を撓ませない大きさの圧力で接触させた状態での突出機構430の位置とを検出する。そして、基板接合装置は、変位センサ435により検出された前述の2つの突出機構位置の差分から、基板301、302のステージ401,402からの反り量p1,p2を算出する(反り量算出工程)。つまり、第1突出機構位置と第2突出機構位置との差分から基板301、302のステージ401,402からの反り量p1,p2を算出する。そして、距離G2から反り量p1,p2を差し引いて得られる距離G3が所望の距離となるようにステージ402をステージ401に近づける。ここにおいて、距離G3が所望の距離となるようにステージ402をステージ401に近づけた状態で、基板301、302のアライメント動作を行ってもよい。
【0196】
ところで、基板301、302の接合面側には、酸化膜や窒化膜のような絶縁膜が形成される。基板301、302の接合面側のみ(片面側のみ)に絶縁膜が形成された場合は、基板301、302は、絶縁膜が形成された接合面側に凸となるように反る。また、基板301、302の両面に絶縁膜が形成された場合、基板301、302の両面のうち、それらの接合面側に形成された絶縁膜が、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により成膜された後CMP(Chemical Mechanical Polishing)が施されたものである場合、基板301、302は、それらの接合面となる片面側に凸となるように反ってしまう。これに対して、本構成によれば、ステージ401,402に保持された基板301、302がそれらの接合面側に凸となるように反っている場合でも、位置合わせ工程直前においてステージ401,402同士を近づけたときに基板301,302同士が接触してしまうことを抑制できる。
【0197】
なお、本変形例では、突出機構430を用いて基板301、302の反り量を算出する例について説明したが、反り量を算出する方法は、この方法に限定されず、他の基板301、302の反り量を算出する方法を採用してもよい。例えば基板301、302の厚さを測定する工程において、レーザー距離計を用いて基板301、302の反り量を測定してもよい。
【0198】
実施形態では、基板を撓ませる工程(
図14のステップS103参照)において、
図7に示すように、基板301、302を撓ませてもよいことについて説明した。この場合、基板を撓ませる工程において、例えば、基板301の反り量(第一の反り量)と基板302の反り量(第二の反り量)のうち大きい方の反り量を特定し、基板301、302それぞれの反り量が、特定した反り量以上の規定反り量となるように、基板301、302を撓ませるようにしてもよい。ここで、基板301の反り量は、基板301の中央部301cの基板302側への反り量であり、基板302の反り量は、基板302の中央部302cの基板301側への反り量である。
【0199】
例えば
図23Aに示すように、基板301の反り量p11が、基板302の反り量p12よりも大きい場合、本変形例に係る基板接合装置は、基板を撓ませる工程において、まず、反り量の大きい基板301の反り量p11を特定する。ここにおいて、基板接合装置は、例えば前述のように、基板301、302に突出機構430を基板301、302が撓まない程度の大きさの圧力で接触させた状態での突出機構430の位置を用いて、基板301、302のステージ401,402からの反り量p11,p12を算出する。そして、基板接合装置は、例えば基板302の反り量が、特定した基板301の反り量と等しくなるように、基板302の中央部302cを撓ませる(
図23Bの矢印AR61参照)。その後、基板接合装置は、基板301、302同士を突き合わせる工程を実行する(
図14のステップS104)。
【0200】
本構成によれば、基板301、302の反り量を等しくした状態で基板301、302同士を突き合わせてから、仮接合工程、張り合わせ工程が実行されるので、互いに接合された2つの基板301、302の反り量を低減できる。
【0201】
また、実施形態に係る基板接合方法の張り合わせ工程において、基板301の中央部の反り量と基板302の中央部の反り量とが等しくなるように、基板301に接触させる突出機構(第一の突出機構)430または基板302に接触させる突出機構(第二の突出機構)430の突出機構位置が制御されるようにしてもよい。
【0202】
例えば、
図23Aに示すように、基板301の反り量が基板302の反り量よりも大きいとする。この場合、基板接合装置は、
図24Aおよび
図24Bに示すように、基板301と基板302とを互いに近づけていく際(
図24(A)、(B)中の矢印AR71、AR72参照)、基板301の反り量p13(p15)と基板302の反り量p14(p16)とが等しくなるように、基板302の中央部302cに接触させる突出機構430の突出機構位置を制御する。また、基板接合装置は、基板301に接触される突出機構430について、突出機構430により基板301を押圧する圧力を予め設定された圧力で一定となるように制御する。即ち、基板接合装置は、ステージ402をステージ401に近づく方向へ下降させる際、2つの突出機構430のうちの一方を位置制御し、他方の突出機構430を圧力制御する。ここにおいて、突出機構430が、前出の
図4に示すような、ボイスコイルモータ433と、押圧部材434と、変位センサ435と、を有する構成であるとする。この場合、突出機構430は、変位センサ435により検出される検出値に基づいて、押圧部材434の位置を制御する。なお、仮接合工程においても、前述のように、基板301の反り量と基板302の反り量とが等しくなるように、基板301の中央部301cに接触させる突出機構430または基板302の中央部302cに接触させる突出機構430の突出機構位置が制御されるようにしてもよい。
【0203】
本構成によれば、基板301、302の反り量を常に等しくした状態で張り合わせ工程が実行されるので、互いに接合された2つの基板301、302の反り量を低減できる。
【0204】
実施形態に係る基板接合方法では、相対位置測定工程(ステップS104−3)において互いに仮接合された2つの基板301,302同士の相対的な位置関係が測定され、位置補正工程(ステップS104−7)において、補正移動量算出工程(ステップS104−5)で決定された補正移動量だけ基板301,302を移動させる例について説明した。ここで、相対位置測定工程では、2つの基板301、302の一方に対する他方のXY方向またはZ軸周りの回転方向の位置ずれ量を測定する。なお、XY方向は、前述のように、ステージ401、402が対向するZ方向に直交する方向に相当する。但し、相対位置測定工程において測定される位置ずれ量の種類は、これらに限定されるものではない。例えば、相対位置測定工程において、更に、互いに仮接合された基板301、302の中央部の外周部に対する反り量に応じた位置ずれ量を測定するものであってもよい。そして、測定された位置ずれ量が許容誤差範囲を超えている場合、解放工程が実行された後、基板を撓ませる工程において、反り量に応じた位置ずれ量が小さくなるように、基板301、302それぞれを撓ませるようにしてもよい。
【0205】
ここで、本変形例に係る基板接合装置により実行される基板301,302の接合方法について、
図25を参照しながら説明する。まず、基板接合装置は、距離と厚み測定工程と親水化処理工程とを実行する(ステップS200、S201)。ステップS200、S201の処理は、実施形態で説明したステップS100、S101の処理と同様である。
【0206】
次に、基板接合装置は、基板を撓ませる工程(ステップS202)を実行する。ここでは、例えば前述のように、基板接合装置は、基板301の反り量と基板302の反り量のうち大きい方の反り量を特定し、基板301、302それぞれの反り量が、特定した反り量以上となるように、基板301、302の中央部を撓ませる。続いて、基板接合装置は、位置合わせ工程、基板の突き合わせ工程および仮接合工程を実行する(ステップS203、S204、S205)。ステップS203乃至S205の処理は、実施形態で説明したステップS102、S104、S104−2の処理と同様である。
【0207】
その後、基板接合装置は、相対位置測定工程を実行する(ステップS206)。ここでは、基板接合装置は、2つの基板301、302の一方に対する他方のXY方向またはZ軸周りの回転方向の位置ずれ量と、互いに仮接合された基板301、302の中央部の外周部に対する反り量に応じた位置ずれ量と、を測定する。具体的には、基板接合装置は、
図26Aに示すように、基板301に設けられた2つのアライメントマークMK1a、MK1bの中心間の距離LM1と、基板302に設けられた2つのアライメントマークMK2a、MK2bの中心間の距離LM2と、を算出する。そして、基板接合装置は、算出した距離LM1、LM2の差分を算出することにより、互いに仮接合された基板301、302の反り量に応じた位置ずれ量を測定する。ここで、
図26Aに示すように、基板301のアライメントマークMK1a、MK1bの距離LM1が基板302のアライメントマークMK2a、MK2bの距離LM2よりも長い場合、
図26Bに示すように、互いに仮接合された基板301、302が基板302側に凸となるように反っていることになる。そして、互いに仮接合された基板301、302の反り量が大きいほど、距離LM1と距離LM2との差が長くなる。
【0208】
図25に戻って、次に、基板接合装置は、2つの基板301、302のXY方向またはZ軸周り回転方向の相対位置ずれ量と互いに仮接合された基板301、302の反り量に応じた相対位置ずれ量とが許容誤差範囲内であるか否かを判定する(ステップS207)。基板接合装置は、相対位置ずれ量が許容誤差範囲内であると判定すると(ステップS207:Yes)、張り合わせ工程および接合工程を実行する(ステップS212、S213)。ステップS212、S213の処理は、実施形態で説明したステップS105、S106の処理と同様である。
【0209】
一方、基板接合装置は、相対位置ずれ量が許容誤差範囲を超えていると判定すると(ステップS207:No)、補正移動量・反り量算出工程を実行する(ステップS208)。この補正移動量・反り量算出工程では、実施形態で説明した補正移動量算出工程(ステップS104−5)と同様に、相対位置測定工程(ステップS104−3)で測定された相対位置から、所望の相対位置へと移動するための基板301,302の補正移動量を算出する。そして、基板接合装置は、基板301、302同士を突き合わせる基板の突き合わせ工程(ステップS204)における各基板301、302の反り量を決める。具体的には、基板接合装置は、基板の突き合わせ工程における、基板301を押圧する突出機構(第一の突出機構)430の突出量と、基板302を押圧する突出機構(第二の突出機構)430の突出量とを設定する。
【0210】
例えば
図27Aに示すように、基板301の反り量p21と基板302の反り量p22とを等しくした状態で基板301、302同士を突き合わせてから仮接合したとする。このとき、
図27Bに示すように、互いに仮接合された2つの基板301、302が基板302側に凸となる形で反っているとする。この場合、基板301のアライメントマークMK1a、MK1bの中心間の距離LM2が、基板302のアライメントマークMK2a、MK2bの中心間の距離LM1よりも短くなる。この場合、基板接合装置は、
図27Cに示すように、基板302の反り量p22が基板301の反り量p21よりも長くなるように、基板301、302の中央部301c、302cそれぞれを押圧する突出機構430の突出量を設定する。例えば、基板301の反り量p21と基板302の反り量p22とを共に15μmに設定した状態で基板301、302を突き合わせて仮接合した場合、互いに仮接合された基板301、302が、
図27Bに示すように反ったとする。この場合、基板接合装置は、例えば基板301の反り量p21が13μm、基板302の反り量p22が17μmとなるように、各突出機構430の突出量を設定する。
【0211】
一方、
図28Aに示すように、基板301、302の反り量p21、p22が等しい状態で基板301、302同士を突き合わせて仮接合した場合、
図28Bに示すように、基板301、302が基板301側に凸となる形で反っているとする。この場合、基板301のアライメントマークMK1a、MK1bの中心間の距離LM2が、基板302のアライメントマークMK2a、MK2bの中心間の距離LM1よりも長くなる。この場合、基板接合装置は、
図28Cに示すように、基板301の反り量p21が基板302の反り量p22よりも長くなるように、基板301、302の中央部301c、302cそれぞれを押圧する突出機構430の突出量を設定する。例えば、基板301の反り量p21と基板302の反り量p22とを共に15μmに設定した状態で基板301、302を突き合わせて仮接合した場合、互いに仮接合された基板301、302が、
図28Bに示すように反ったとする。この場合、基板接合装置は、例えば基板301の反り量p21が17μm、基板302の反り量が13μmとなるように、各突出機構430の突出量を設定する。
【0212】
ここにおいて、基板接合装置は、基板301、302それぞれを押圧する突出機構430の突出量を、互いに仮接合された基板301、302の中央部301c、302cの外周部301s、302sに対する反り量に応じた位置ずれ量と、基板301、302それぞれを押圧する突出機構430の突出量と、の相関関係に基づいて設定する。具体的には、基板接合装置が、互いに仮接合された基板301、302の反り量に応じた位置ずれ量と、基板301、302それぞれを押圧する突出機構430の突出量と、の相関関係を示す相関データを予め保持するようにすればよい。そして、基板接合装置は、予め保持した相関データを参照して、相対位置測定工程において算出された互いに仮接合された基板301、302の反り量に応じた位置ずれ量から基板301、302それぞれを押圧する突出機構430の突出量を設定する。この場合、基板接合装置は、予め、基板301、302それぞれを押圧する突出機構430の突出量を変更しながら互いに仮接合された基板301、302の反り量を測定することにより相関データを取得するようにすればよい。
【0213】
なお、基板接合装置は、互いに仮接合された基板301、302の反り量に応じた位置ずれ量と、基板301、302それぞれを押圧する突出機構430の突出量と、の相関関係を示す関係式を示す情報を予め保持するようにしてもよい。或いは、基板接合装置は、互いに仮接合された基板301、302の中央部301c、302cの外周部301s、302sに対する反り量に応じた位置ずれ量が許容誤差範囲を超えていると判定すると、基板301、302それぞれを押圧する突出機構430の突出量を、予め設定された単位量だけ変化させるようにしてもよい。
【0214】
図25に戻って、続いて、基板接合装置は、基板の解放工程および位置補正工程を実行する(ステップS209、S210)。ステップS209、S210の処理は、実施形態で説明したステップS104−6、S104−7の処理と同様である。
【0215】
その後、基板接合装置は、前述の補正移動量・反り量算出工程において設定された、基板301、302それぞれを押圧する突出機構430の突出量に基づいて、基板301、302を撓ませる工程を実行する(ステップS211)。そして、基板接合装置は、再びステップS204の処理を実行する。そして、基板301、302の位置ずれ量が許容誤差範囲内に収まるまで、基板を撓ませる工程、基板の突き合わせ工程、相対位置測定工程、補正移動量・反り量算出工程、基板の解放工程および位置補正工程が繰り返される。
【0216】
本構成によれば、互いに仮接合された基板301、302の反り量に応じた位置ずれ量が許容誤差範囲内に収まってから張り合わせ工程が実行されるので、互いに接合された2つの基板301、302の反り量を大きく低減できる。
【0217】
ところで、互いに接合された基板を複数枚製造する場合のように、基板同士の接合を複数回繰り返し実施する場合がある。この場合、複数回繰り返し実施される基板同士の接合の中の1つの基板同士の接合の際に設定された、基板の突き合わせ工程における各基板の反り量を、次以降の基板同士の接合の際の基板の突き合わせ工程における各基板の反り量として設定するようにしてもよい。
【0218】
上記実施形態の解放工程において、基板301の周部と基板302の周部との間の隙間に、基板301、302の周縁から基板301、302の中央部に向かう方向へ気体を吹き付けてもよい。この変形例に係るステージ401,402は、
図29に示すように、基板301,302を保持する保持機構3440と、基板301,302の中央部を押圧することにより基板301,302を撓ませる突出機構430と、を有する。保持機構3440は、複数(
図29では4つ)の円環状の吸着部3440a,3440b,3440c,3440dを有する真空チャックから構成されている。吸着部3440a,3440b,3440c,3440dは、互いに径が異なり、同心円状に配置されている。基板301、302は、吸着部3440a,3440b,3440c,3440dにより吸着された状態で、ステージ401,402に保持される。ここで、吸着部3440a,3440bは、基板301,302の中央部に対向し、吸着部3440c,3440dは、基板301,302の周部に対向している。
【0219】
吸着部3440a,3440b,3440c,3440dは、各別に基板301、302を吸着している状態と、吸着しない状態と、をとりうる。例えばステージ401,402の比較的内側に配置された吸着部3440a,3440bを真空吸着しない状態にして、ステージ401,402の比較的外側に配置された吸着部3440c,3440dを真空吸着している状態にすることができる。また、ステージ401,402の中心C1に最も近くに位置する吸着部3440aの半径L1、吸着部3440aと吸着部3440aと外側で隣接する吸着部3440bとの間の距離L2、吸着部3440bと吸着部3440bと外側で隣接する吸着部3440cとの間の距離L3、吸着部3440cと最も外側に位置する吸着部3440dとの間の距離L4で、基板301,302の固定位置が決定される。
【0220】
本変形例に係る解放工程の直前では、
図30Aに示すように、基板301が、その接合面の外周部301sに対して中央部301cが基板302側に突出する形で撓んでいる。このとき、ステージ401の周縁側の2つの吸着部3440c,3440dが基板301を吸着しつつ、ステージ401の中央部側の2つの吸着部3440a,3440bが基板301の吸着を停止している(
図30Aの矢印AR41、AR42参照)。このとき、ステージ401,402は、基板301、302の周部における基板301、302の中央部からの距離が異なる2つの吸着位置(保持位置)で、基板301、302を保持している。また、基板302は、その接合面の外周部302sに対して中央部302cが基板301側に突出する形で撓んでいる。このとき、ステージ402の周縁側の2つの吸着部3440c,3440dが基板302を吸着しつつ、ステージ402の中央部側の2つの吸着部3440a,3440bが基板302の吸着を停止している(
図30Aの矢印AR41、AR42参照)。
【0221】
そして、本変形例に係る解放工程では、
図30Bに示すように、ステージ402が上昇して基板301、302間の隙間が広がりつつ、ステージ401の突出機構430がステージ401に没入する方向(
図30Bの矢印AR51参照)へ移動するとともに、ステージ402の突出機構430がステージ402に没入させる方向(
図30Bの矢印AR52参照)へ移動する。ここにおいて、ステージ402は、基板302を基板301から剥がす際の基板302の引っ張り圧力が一定となるようにその上昇速度が制御されている。そして、ステージ401の中央部側の吸着部3440a、440bと、ステージ402の中央部側の吸着部3440a、3440bと、が、基板301、302の吸着を再開する(
図30Bの矢印AR61、AR62参照)。ここで、吸着部3440a、3440bが基板301、302の吸着を再開するタイミングは、基板301、302間の隙間を広げつつ、ステージ401の突出機構430がステージ401に没入し、ステージ402の突出機構430がステージ402に没入させるタイミングの前後のタイミングであってもよいし、同時であってもよい。このとき、ブロワ3811は、基板301の周部と基板302の周部との間の隙間に、基板301、302の周縁から基板301、302の中央部に向かう方向へ気体を吹き付ける(
図30Bの矢印AR6参照)。このとき、ブロワ3811により気体を吹き付ける圧力と吸着部3440a、3440bが吸着する引圧との差圧から、基板302が基板301から剥がれる方向への力が生じる。これにより、
図31に示すように、基板302が基板301から離脱し、基板301と基板302とが解放される。
【0222】
本構成によれば、解放工程において、基板302が基板301から離脱し易くなるので、基板301または基板302に加わる歪みが低減される。
【0223】
なお、
図30Bにおいて、ブロワ3811による基板301の周部と基板302の周部との間の隙間への気体を吹き付けを行なわずに、突出機構430のステージ401、402への没入と、吸着部3440a、3440bによる基板301、302の吸着のみを行うようにしてもよい。
【0224】
上記実施形態の張り合わせ工程において、ステージ401,402による基板301,302の保持位置を基板301、302の外側に向かって段階的に変化させることにより基板301、302の外周部の距離を縮めて基板301,302同士を張り合わせる構成であってもよい。この変形例に係るステージ401,402は、
図29に示すような、基板301,302を保持する保持機構3440と、基板301,302の中央部を押圧することにより基板301,302を撓ませる突出機構430と、を有する。
【0225】
本変形例に係る相対位置測定工程、即ち張り合わせ工程の直前において、
図30Aに示すように、基板301が、その接合面の外周部301sに対して中央部301cが基板302側に突出する形で撓んでいる。このとき、ステージ401の周縁側の2つの吸着部3440c,3440dが基板301を吸着しつつ、ステージ401の中央部側の2つの吸着部3440a,3440bが基板301の吸着を停止している。また、基板302は、その接合面の外周部302sに対して中央部302cが基板301側に突出する形で撓んでいる。このとき、ステージ402の周縁側の2つの吸着部3440c,3440dが基板302を吸着しつつ、ステージ402の中央部側の2つの吸着部3440a,3440bが基板302の吸着を停止している(
図30Aの矢印AR41、AR42参照)。
【0226】
そして、本変形例に係る張り合わせ工程では、
図32Aに示すように、基板301、302を吸着している吸着部3440c、3440dのうち、ステージ401,402の中央部側の吸着部3440cが停止する。即ち、基板301、302の周部における基板301、302の中央部からの距離が短い吸着部から順に基板301、302の吸着を停止することにより、基板301の周部と基板302の周部とを接触させる。これにより、基板301、302同士の接触部分が、基板301、302の中央部から周縁側に向かって広がっていく。その後、
図32Bに示すように、基板301、302を吸着している吸着部440dが停止することにより、基板301、302の接合面全体が接触した状態になる。この張り合わせ工程の後、基板301、302の接合面全体が互いに接触した状態で、接合工程(S106)が行われる。
【0227】
本構成によれば、基板301の周部における基板301の中央部からの距離が異なる4つの吸着位置(保持位置)で基板301がステージ401に保持され、基板302の周部における基板302の中央部からの距離が異なる4つの吸着位置で、基板302がステージ402に保持される。そして、基板301,302の周部における基板301,302の中央部からの距離が短い吸着位置から順に基板301、302の吸着保持が停止することにより、基板301(302)の周部を基板302(301)の周部に接触させる。ここにおいて、撓んでいた一方の基板301(302)は、元の平板状に復元する過程でその中央部から基板301、302の周縁側に向けて順次他方の基板302(301)に接触していく。これにより、2つの基板301、302間に存在する空気は、一方の基板301(302)が平板状に復元する過程で基板301、302の周縁側へ押し出される。従って、基板301、302同士が接合されたときに、基板301、302間への気体の入り込みが防止される。そして、2つの基板301,302間への気体の入り込みが防止されることにより、接合された2つの基板301、302間でのいわゆるボイドの発生が抑制される。
【0228】
ところで、上記実施形態で説明した張り合わせ工程では、ステージ401,402で基板301,302を挟持することで、基板301の外周部と基板302の外周部との距離を縮めて、基板301、302同士が全面で突き合わされた状態とする。この場合、例えばステージ401,402における基板301,302が載置される面に凹凸が存在すると、ステージ401,402で基板301,302を挟持したときに基板301,302がその凹凸に沿って変形し基板301,302に歪みが生じる虞がある。
【0229】
これに対して、本構成によれば、
図32Bに示すように、ステージ401,402それぞれの突出機構430により基板301,302の中央部を挟持した状態で基板301、302同士が全面で突き合わされた状態となる。従って、少なくとも基板301,302の中央部を除く領域では、基板301,302が挟持される部分の凹凸の存在に起因した基板301,302内での歪みの発生が抑制される。
【0230】
なお、
図29乃至
図32を用いて説明した変形例では、保持機構3440が真空チャックから構成される場合について説明したが、これに限らず、例えば保持機構が機械式チャックや静電チャックから構成されていてもよい。或いは、保持機構が、真空チャック、機械式チャックおよび静電チャックのうちの少なくとも2種類のチャックを組み合わせた構成であってもよい。また、前述の変形例では、保持機構3440が、円環状の吸着部3440a、3440b、3440c、3440dから構成される例について説明したが、吸着部の構造はこれに限定されるものではなく、例えば下側ステージ401の上面、上側ステージ402の下面の複数箇所に開口する孔を介して基板301、302を吸着する構造であってもよい。
【0231】
前出の
図29乃至
図31を用いて説明した変形例では、
図30Aに示すように、相対位置測定工程において、ステージ401、402の周縁側の2つの吸着部3440c,3440dが基板301、302を吸着しつつ、ステージ401、402の中央部側の2つの吸着部3440a,3440bが基板301、302の吸着を停止している例について示した。但し、基板301、302同士の張り合わせ時の位置ずれを少なくするには、基板301、302同士の仮接合をより基板301、302の外側まで進めた状態において、アライメントマークを撮像する位置での基板301、302の位置ずれを検出するほうが好ましい。この場合、相対位置測定工程の後、基板301、302の外周部まで張り合わせるときの基板301、302同士の位置ずれ量が小さくなる。そこで、例えば
図33Aに示すように、相対位置測定工程において、ステージ401、402の周縁側の1つの吸着部3440dのみで基板301、302を吸着するようにしてもよい。なお、
図33Aおよび
図33Bにおいて、実施形態と同様の構成については、
図1と同一の符号を付し、前述の変形例と同様の構成については
図29乃至
図31と同一の符号を付している。この場合、基板301、302同士の仮接合が、基板301、302における、カメラ501、502によりアライメントマークを撮像する位置(
図33Aの破線矢印参照)よりも内側で止まってしまう場合がある。この場合、その後、張り合わせ工程における基板301、302同士の位置ずれ量が、相対位置測定工程におけるアライメントマークの位置ずれとして十分に反映されない場合がある。
【0232】
その場合、
図33Bに示すように、相対位置測定工程において、例えばステージ401、402の中央部側の吸着部3440aから、基板301、302とステージ401、402との間に形成された隙間に、空気を吐出するようにしてもよい(
図33Bの矢印AR71、AR72参照)。つまり、ステージ401に基板301の外周部を保持させるとともに、ステージ402に基板302の外周部を保持させ、基板301、302の中央部が仮接合した状態で、ステージ401と基板301との間の領域(第1領域)S71およびステージ402と基板302との間の領域(第2領域)S72それぞれに空気を吐出する。これにより、領域S71、S72の空気圧を高める。この場合、
図33Aを用いて説明した場合に比べて、基板301、302のより周縁側まで基板301、302同士の仮接合が進んだ状態となる。その結果、基板301、302におけるカメラ501、502によりアライメントマークを撮像する位置(
図33Bの破線矢印参照)よりも基板301、302の周縁側まで仮接合した状態となる。
【0233】
ところで、相対位置測定工程では、基板301、302同士の仮接合をできるだけ基板301、302の周縁側まで進めてからカメラ501、502によりアライメントマークを撮像することが好ましい。この場合、吸着部3440a,3440b,3440c,3440dによる基板301、302の吸着を全て停止して基板301、302同士を全面で接触させるときに、既に外周部近くまで仮接合しているので、そこからの基板301、302の相対的な位置ずれが発生しにくくなる。
図33Aに示す基板接合方法の場合、ステージ401、402間の距離をできるだけ縮めることで仮接合をより基板301、302の外側まで進めた状態で、相対位置測定工程を実行する必要がある。但し、この場合、ステージ401、402の基板301、302の載置面に数μm程度のうねりがあると、基板301、302における中央部以外の部分が接触し中央部が接触していない状態が生じうる。そうすると、基板301、302同士が接合された状態において、互いに接合された基板301、302に歪が生じたり、基板301、302間にボイドが生じたりする虞がある。従って、ステージ401、402間の距離の短縮化は、ステージ401、402の載置面の平行度に制約される。また、基板301、302同士を近づけ過ぎると、基板301から基板302を剥がせなくなることもある。
【0234】
これに対して、
図33Bに示す基板接合方法の場合、基板301、302同士をある程度近づけた状態で領域S71、S72の空気圧を高めて基板301、302を互いに近づく方向へ膨らませることにより、基板301、302同士の仮接合部分を基板201、302の周縁側へ広げることができる。従って、基板301、302の外周部を近づけ過ぎることなく、基板301、302同士が仮接合した領域を広げることができるので、ステージのうねりの影響を受けることなく、また、基板302が基板301から剥がれなくなることを防止できる。更に、基板301、302同士を張り合わせたときの基板301、302の位置ずれ量が、カメラ501、502により認識されるアライメントマークの位置ずれ量に反映されている。従って、再度はがして位置ズレ量を修正することが可能であるとともに、その後の張り合わせ工程において基板301、302の全面で張り合わせる際、基板301、302の位置ずれが起こすことなく基板301、302同士を張り合わせることが可能となる。それ故、基板301、302同士の張り合わせ精度が向上する。
【0235】
ところで、基板301、302の外周部近くまで仮接合が進んでいても、基板301、302の外周部同士の隙間は保たれている。この状態で、基板301から基板302を剥がす際、ステージ401、402の全ての吸着部3440a、3440b、3440c、3440dにより基板301、302を吸着すると、基板301、302とステージ401、402との間に大きな負圧が発生する。そうすると、ステージ401、402の固定強度が小さい場合、ステージ401が浮き上がったり、ステージ402が引き下げられたりして、ステージが損傷する虞がある。従って、基板301、302の外周部の隙間に空気を吐出させながらステージ402を上昇させ、最後にステージ401、402の中央部に位置する吸着部3440a、3440bで基板301、302の中央部を吸着することにより、基板302を基板301から剥がす方法が好ましい。
【0236】
また、必ずしもマーク認識位置よりも外側まで接合させなければいけない訳ではない。
図30Aに示すようにマーク位置より内側であっても接合力が強ければ位置ずれを検出することができる。また、マーク位置を超えなくとも近辺まで接合を進めればよい場合もある。
【0237】
上記実施形態では、接合工程において、基板301、302の接合面全体が互いに接触した状態で、基板301、302に圧力を加えるとともに、基板加熱手段420により基板301、302を加熱する例について説明した。但し、これに限らず、例えば基板301、302の接合面全体が互いに接触した状態で、基板301、302に圧力を加えるだけで加熱しない構成であってもよい。この場合、基板301、302は、基板接合装置100から取り出された後、基板接合装置とは別体のアニール炉(図示せず)において加熱されるようにしてもよい。
【0238】
或いは、基板接合装置が、基板301、302の接合面全体が互いに接触した状態で、基板301、302の加熱のみ実行し圧力を加えない構成であってもよい。
【0239】
上記実施形態において、下側のステージ401の少なくとも一部が透明な材料からなるか、あるいは下側のステージ401を構成する材料が透明であってもよい。これにより、位置測定のために光源から発せられる光(上記の透過光と反射光を含む)が、下側のステージ401の透明な材料を透過することができる。そのため、基板支持手段の設計に制約を受けない。
【0240】
上記実施形態において、基板加熱手段420の少なくとも一部が透明な材料からなるか、あるいは基板加熱手段420を構成する材料が透明であり、かつ基板加熱手段420におけるヒータ421が、ヒータの配線間に所定の間隔を設けるようにしてもよい。
これにより、ヒータの配線が位置測定のために光源から発せられる光(上記の透過光と反射光を含む)に干渉することを避けることができる。また、初期設定の段階でヒータの配線が光源から発せられる光に干渉したとしても、ヒータ421を搭載する基板加熱手段420をZ軸周りに回転させることで、ヒータの配線を光路上から避けることができる。
【0241】
透明な材料としては、ガラス材料やセラミック材料が用いられることが好ましい。肉眼で見た場合に透明に見えなくとも、下側のステージ401は、光源から発せられる光が透過する材料から構成されればよい。
【0242】
また、下側のステージ401の少なくとも一部が透明な材料からなるか、あるいは下側のステージ401を構成する材料が透明であり、基板加熱手段420の少なくとも一部が透明な材料からなるか、あるいは基板加熱手段420を構成する材料が透明であり、かつ基板加熱手段420におけるヒータ421が、ヒータの配線間に所定の間隔を設けることにより、基板支持手段の設計に制約を受けない。
【0243】
例えば、上記実施形態においては、位置測定手段500として、2台のカメラ501,502が固定配置される場合を例示したがこれに限定されず、1台のカメラが移動して2箇所のアライメントマーク付近の画像をそれぞれ撮影するようにしてもよい。
【0244】
また、上記実施形態においては、ステージ401がX方向に移動される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、ステージ401は固定されるようにしてもよい。
【0245】
また、上記実施形態においては、ステージ402がX方向、Y方向、Z方向、θ方向に移動されることによって、ステージ401,402がこれらの方向に相対的に移動される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、逆に、ステージ402が固定され、且つ、ステージ401がX方向、Y方向、Z方向、θ方向に移動されることによって、ステージ401,402がこれらの方向に相対的に移動されるようにしてもよい。
【0246】
上記実施形態においては、所定の形状又は材料の基板301,302を用いて説明したが、これに限られない。
【0247】
実施形態では、基板301、302が、ガラス基板や酸化物基板、窒化物基板からなる例について説明したが、これに限らず、基板301、302がSi基板であってもよい。また、基板301、302の一方がSi基板であり他方がガラス基板であってもよい。更に、基板301、302が、酸化膜が形成された基板、窒化膜が形成された基板、炭化物基板、セラミック基板であってもよい。
【0248】
基板301、302が酸化膜または窒化膜が形成された基板の場合、酸化膜、窒化膜がCVD(Chemical Vapor Deposition)法により成膜されたものであってもよい。この場合、基板301、302の厚さがある程度薄いと、基板301、302は、その酸化膜または窒化膜が形成された面側に凸となる形で反ることがある。
【0249】
また、
図1に示す基板接合装置100では、その内部において表面活性化処理を行う場合を例示したが、これに限定されない。例えば、基板接合装置100の外部において、表面活性化処理を施すようにしてもよい。さらに、チャンバ200を開いてその内部を大気暴露するだけでも、表面活性化処理を行うことができる。これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0250】
本出願は、2016年3月11日に出願された日本国特許出願特願2016−048896号並びに2017年1月24日に出願された日本国特許出願特願2017−010762号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2016−048896号並びに日本国特許出願特願2017−010762号の明細書、特許請求の範囲および図面全体を参照として取り込むものとする。