(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1ねじおよび前記第2ねじの内側および外側には、前記ドライブリングと前記リテーナリングとの間の隙間を封止するシールリングがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の研磨装置。
前記緩み検出器は、前記ドライブリングに形成された第1目印と、前記リテーナリングに形成された第2目印との相対位置を検出する目印検出器であることを特徴とする請求項16に記載の研磨装置。
前記第1ねじおよび前記第2ねじの内側および外側には、前記ドライブリングと前記リテーナリングとの間の隙間を封止するシールリングがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項19乃至29のいずれか一項に記載の研磨ヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リテーナリング301は、ウェーハWの研磨中に研磨パッドに摺接されるため、徐々に摩耗する。したがって、リテーナリング301は定期的に交換しなければならない消耗品の一つである。しかしながら、リテーナリング301を固定しているねじ307は研磨ヘッド300の内部に配置されているため、リテーナリング301を交換するためには研磨ヘッド300を研磨装置から取り外して、研磨ヘッド300を分解する必要がある。このため、リテーナリング301の交換にかなりの時間がかかり、研磨装置のダウンタイムが長くなってしまう。
【0006】
また、複数のねじ307でリテーナリング301を締め付けたときにリテーナリング301内の応力にばらつきが生じ、これがリテーナリング301を変形させることがある。リテーナリング301は、研磨中のウェーハWを保持する役割に加えて、研磨パッドのリバウンド量を制御することで、ウェーハWの外周部の研磨レートを制御する役割も持つ。リテーナリング301が変形すると、ウェーハWの外周部の研磨レートにばらつきが生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、リテーナリングを簡単に交換することができ、かつリテーナリングを変形させずに該リテーナリングをドライブリングに固定することができる研磨ヘッドおよび研磨装置を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような研磨ヘッドに簡単に取り付け、および取り外すことができるリテーナリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを回転させるためのヘッドモータとを備え、前記研磨ヘッドは、基板接触面を有するヘッド本体と、前記ヘッド本体に連結されたドライブリングと、前記基板接触面を囲み、前記ドライブリングに接続されたリテーナリングとを備え、前記ドライブリングには第1ねじが形成され、前記リテーナリングには前記第1ねじに係合する第2ねじが形成されており、前記第2ねじは前記リテーナリングの周方向に延びており、前記ドライブリングは、環状ドライブリング本体と、前記環状ドライブリング本体の下面から下方に突出する環状突部を有しており、前記リテーナリングの上面には、前記環状突部が収容される環状凹部が形成されており、前記環状突部の側面には前記第1ねじが形成され、前記環状凹部の側面には前記第2ねじが形成されて
おり、前記研磨ヘッドは、前記第1ねじおよび前記第2ねじの緩み止め構造体をさらに備え、前記緩み止め構造体は、前記ドライブリングに上下動自在に支持されたピンと、前記ドライブリングに回転可能に支持され、前記ピンを上方向に持ち上げるカムシャフトと、前記ピンを前記リテーナリングに向かって押して、前記ピンを下方向に移動させるばねとを備えており、前記リテーナリングは、前記ピンの先端が挿入されることが可能な穴を有していることを特徴とする研磨装置である。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記環状突部は、前記環状ドライブリング本体に固定されたねじリングの少なくとも一部から構成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記環状ドライブリング本体の下面は、前記リテーナリングの上面と接触していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記リテーナリングは、環状リテーナリング本体と、前記環状凹部および前記第2ねじが形成された凹リングとを有しており、前記凹リングは、前記環状リテーナリング本体よりも高い強度を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記カムシャフトは、前記ピンに係合するカム部と、露出した端部とを有しており、前記リテーナリングの前記ドライブリングに対する回転によって、前記ピンが前記穴に並んだとき、前記ピンは、前記ばねによって前記穴に挿入されることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記穴は、丸穴であることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様は、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付けるための研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを回転させるためのヘッドモータとを備え、前記研磨ヘッドは、基板接触面を有するヘッド本体と、前記ヘッド本体に連結されたドライブリングと、前記基板接触面を囲み、前記ドライブリングに接続されたリテーナリングとを備え、前記ドライブリングには第1ねじが形成され、前記リテーナリングには前記第1ねじに係合する第2ねじが形成されており、前記第2ねじは前記リテーナリングの周方向に延びており、前記リテーナリングは、環状リテーナリング本体と、前記環状リテーナリング本体の上面から上方に突出する環状突部を有しており、前記ドライブリングの下面には、前記環状突部が収容される環状凹部が形成されており、前記環状凹部の側面には前記第1ねじが形成され、前記環状突部の側面には前記第2ねじが形成されて
おり、前記研磨ヘッドは、前記第1ねじおよび前記第2ねじの緩み止め構造体をさらに備え、前記緩み止め構造体は、前記ドライブリングに上下動自在に支持されたピンと、前記ドライブリングに回転可能に支持され、前記ピンを上方向に持ち上げるカムシャフトと、前記ピンを前記リテーナリングに向かって押して、前記ピンを下方向に移動させるばねとを備えており、前記リテーナリングは、前記ピンの先端が挿入されることが可能な穴を有していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記環状突部は、前記環状リテーナリング本体に固定されたねじリングの少なくとも一部から構成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記環状リテーナリング本体の上面は、前記ドライブリングの下面と接触していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記カムシャフトは、前記ピンに係合するカム部と、露出した端部とを有しており、前記リテーナリングの前記ドライブリングに対する回転によって、前記ピンが前記穴に並んだとき、前記ピンは、前記ばねによって前記穴に挿入されることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記穴は、丸穴であることを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記第1ねじおよび前記第2ねじの内側および外側には、前記ドライブリングと前記リテーナリングとの間の隙間を封止するシールリングがそれぞれ設けられていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記リテーナリングの外周面には、該リテーナリングをその軸心の周りに回転させるための締め付け工具が係合する窪みが形成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ヘッドモータは、前記研磨ヘッドの回転をロックするロック機能を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第2ねじが締め付けられる方向は、前記基板の研磨時に前記ヘッドモータが前記研磨ヘッドを回転させる方向とは反対であることを特徴とする。
【0012】
本発明の
一参考例は、前記緩み止め構造体は、前記リテーナリングを前記ドライブリングに押さえ付けるロックリングであることを特徴とする。
本発明の
一参考例は、前記緩み止め構造体は、前記ドライブリングに対する前記リテーナリングの回転を止めるロックねじであることを特徴とする
。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記第1ねじに対する前記第2ねじの緩みを検出する緩み検出器をさらに備えたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記緩み検出器は、前記ドライブリングに形成された第1目印と、前記リテーナリングに形成された第2目印との相対位置を検出する目印検出器であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記緩み検出器は、前記ドライブリングと前記リテーナリングとの間に挟まれたロードセルであることを特徴とする。
【0014】
本発明のさらに他の態様は、
基板を研磨パッドに対して押し付けるための研磨ヘッドであって、基板接触面を有するヘッド本体と、前記ヘッド本体に連結されたドライブリングと、前記基板接触面を囲み、前記ドライブリングに接続されたリテーナリングとを備え、前記ドライブリングには第1ねじが形成され、前記リテーナリングには前記第1ねじに係合する第2ねじが形成されており、前記第2ねじは前記リテーナリングの周方向に延びており、前記ドライブリングは、環状ドライブリング本体と、前記環状ドライブリング本体の下面から下方に突出する環状突部を有しており、前記リテーナリングの上面には、前記環状突部が収容される環状凹部が形成されており、前記環状突部の側面には前記第1ねじが形成され、前記環状凹部の側面には前記第2ねじが形成されて
おり、前記研磨ヘッドは、前記第1ねじおよび前記第2ねじの緩み止め構造体をさらに備え、前記緩み止め構造体は、前記ドライブリングに上下動自在に支持されたピンと、前記ドライブリングに回転可能に支持され、前記ピンを上方向に持ち上げるカムシャフトと、前記ピンを前記リテーナリングに向かって押して、前記ピンを下方向に移動させるばねとを備えており、前記リテーナリングは、前記ピンの先端が挿入されることが可能な穴を有していることを特徴とする研磨ヘッドである。
本発明のさらに他の態様は、
基板を研磨パッドに対して押し付けるための研磨ヘッドであって、基板接触面を有するヘッド本体と、前記ヘッド本体に連結されたドライブリングと、前記基板接触面を囲み、前記ドライブリングに接続されたリテーナリングとを備え、前記ドライブリングには第1ねじが形成され、前記リテーナリングには前記第1ねじに係合する第2ねじが形成されており、前記第2ねじは前記リテーナリングの周方向に延びており、前記リテーナリングは、環状リテーナリング本体と、前記環状リテーナリング本体の上面から上方に突出する環状突部を有しており、前記ドライブリングの下面には、前記環状突部が収容される環状凹部が形成されており、前記環状凹部の側面には前記第1ねじが形成され、前記環状突部の側面には前記第2ねじが形成されて
おり、前記研磨ヘッドは、前記第1ねじおよび前記第2ねじの緩み止め構造体をさらに備え、前記緩み止め構造体は、前記ドライブリングに上下動自在に支持されたピンと、前記ドライブリングに回転可能に支持され、前記ピンを上方向に持ち上げるカムシャフトと、前記ピンを前記リテーナリングに向かって押して、前記ピンを下方向に移動させるばねとを備えており、前記リテーナリングは、前記ピンの先端が挿入されることが可能な穴を有していることを特徴とする研磨ヘッドである。
本発明の
一参考例は、基板接触面を有するヘッド本体と、前記ヘッド本体に連結されたドライブリングとを備えた研磨ヘッドに使用されるリテーナリングであって、前記ドライブリングに形成された第1ねじに係合する第2ねじを有し、前記第2ねじは前記リテーナリングの周方向に延びており、前記リテーナリングの上面には環状凹部が形成されており、前記環状凹部の側面に前記第2ねじが形成されていることを特徴とする。
本発明の
一参考例は、基板接触面を有するヘッド本体と、前記ヘッド本体に連結されたドライブリングとを備えた研磨ヘッドに使用されるリテーナリングであって、前記ドライブリングに形成された第1ねじに係合する第2ねじを有し、前記第2ねじは前記リテーナリングの周方向に延びており、前記リテーナリングは、環状リテーナリング本体と、前記環状リテーナリング本体の上面から上方に突出する環状突部を有しており、前記環状突部の側面に前記第2ねじが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
リテーナリングは、第1ねじと第2ねじとの係合によってドライブリングに接続される。すなわち、リテーナリングの全体を回転させることで、第2ねじが第1ねじに係合し、リテーナリングがドライブリングに固定される。リテーナリングを反対方向に回転させると、第1ねじと第2ねじとの係合が外れ、リテーナリングをドライブリングから外すことができる。このように、リテーナリングを回転させるだけでリテーナリングを取り付けることができ、かつ取り外すことができるので、研磨ヘッドを研磨装置から取り外す必要がなく、さらに研磨ヘッドを分解する必要もない。さらに、第2ねじはリテーナリングの周方向に延びているので、第1ねじと第2ねじとの間にする締付け力はリテーナリングの全周において均一である。したがって、リテーナリング内に生じる応力も均一となり、リテーナリングが歪まない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態における研磨装置を示す模式図である。
【
図4】ドライブリングおよび連結部材を示す平面図である。
【
図5】リテーナリングとドライブリングの拡大断面図である。
【
図6】
図5に示す第1ねじと第2ねじとの係合が外れたときのリテーナリングとドライブリングの拡大断面図である。
【
図7】ドライブリングとリテーナリングとの間にシールリングが設けられた実施形態を示す図である。
【
図8】ドライブリングとリテーナリングとの間にシールリングが設けられた他の実施形態を示す図である。
【
図9】リテーナリングとドライブリングの他の実施形態を示す拡大断面図である。
【
図10】
図9に示す第1ねじと第2ねじとの係合が外れたときのリテーナリングとドライブリングの拡大断面図である。
【
図11】リテーナリングの他の実施形態を示す図である。
【
図12】
図11に示す第1ねじと第2ねじとの係合が外れたときのリテーナリングとドライブリングの拡大断面図である。
【
図13】リテーナリングの他の実施形態を示す図である。
【
図14】リテーナリングとドライブリングの他の実施形態を示す拡大断面図である。
【
図15】
図14に示す第1ねじと第2ねじとの係合が外れたときのリテーナリングとドライブリングの拡大断面図である。
【
図16】リテーナリングを回転させるための締め付け工具を示す図である。
【
図17】締め付け工具でリテーナリングをその軸心周りに回転させている様子を示す図である。
【
図18】ロックねじから構成された緩み止め構造体を備えた実施形態を示す図である。
【
図20】ロックリングから構成された緩み止め構造体を備えた実施形態を示す図である。
【
図21】緩み止め構造体のさらに他の実施形態を示す図である。
【
図22】
図21に示すロックリングとロックナットの拡大図である。
【
図23】ロックリングおよびロックナットの分解図である。
【
図24】緩み止め構造体のさらに他の実施形態を示す図である。
【
図25】
図24に示す緩み止め構造体を矢印Aで示す方向から見た断面図である。
【
図26】ピンが上昇されてピンがリテーナリングの穴から出された状態を示す図である。
【
図27】ピンが上昇されてピンがリテーナリングの穴から出された状態を示す図である。
【
図28】リテーナリングの穴の一実施形態を示す平面図である。
【
図29】緩み止め構造体のさらに他の実施形態を示す図である。
【
図30】
図29に示す緩み止め構造体を矢印Bで示す方向から見た断面図である。
【
図31】リテーナリングに形成された穴を示す平面図である。
【
図32】カムシャフトを回転させてカム部でピンを上昇させた状態を示す図である。
【
図33】カムシャフトを回転させてカム部でピンを上昇させた状態を示す図である。
【
図34】ピンとリテーナリングの穴の位置があっていない状態を示す図である。
【
図35】第1ねじに対する第2ねじの緩みを検出する緩み検出器を示す図である。
【
図36】リテーナリングの第2ねじが緩んでいないときの第1目印および第2目印を示す拡大図である。
【
図37】リテーナリングの第2ねじが緩んだときの第1目印および第2目印を示す拡大図である。
【
図38】緩み検出器としてロードセルを用いた実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る研磨装置を示す模式図である。
図1に示すように、研磨装置は、基板の一例であるウェーハWを保持し回転させる研磨ヘッド(基板保持装置)1と、研磨パッド2を支持する研磨テーブル3と、研磨パッド2に研磨液(スラリー)を供給する研磨液供給ノズル5とを備えている。研磨パッド2の上面は、ウェーハWを研磨するための研磨面2aを構成する。
【0018】
研磨ヘッド1は、その下面に真空吸引によりウェーハWを保持できるように構成されている。研磨ヘッド1および研磨テーブル3は、矢印で示すように同じ方向に回転し、この状態で研磨ヘッド1は、ウェーハWを研磨パッド2の研磨面2aに押し付ける。研磨液供給ノズル5からは研磨液が研磨パッド2上に供給され、ウェーハWは、研磨液の存在下で研磨パッド2との摺接により研磨される。
【0019】
図2は、研磨装置の詳細な構成を示す図である。研磨テーブル3は、テーブル軸3aを介してその下方に配置されるテーブルモータ13に連結されており、そのテーブル軸3a周りに回転可能になっている。研磨テーブル3の上面には研磨パッド2が貼付されている。テーブルモータ13により研磨テーブル3を回転させることにより、研磨面2aは研磨ヘッド1に対して相対的に移動する。したがって、テーブルモータ13は、研磨面2aを水平方向に移動させる研磨面移動機構を構成する。
【0020】
研磨ヘッド1は、ヘッドシャフト11に接続されており、このヘッドシャフト11は、上下動機構27によりヘッドアーム16に対して上下動するようになっている。このヘッドシャフト11の上下動により、研磨ヘッド1の全体をヘッドアーム16に対して昇降させ、位置決めするようになっている。ヘッドシャフト11の上端にはロータリージョイント25が取り付けられている。
【0021】
ヘッドシャフト11および研磨ヘッド1を上下動させる上下動機構27は、軸受26を介してヘッドシャフト11を回転可能に支持するブリッジ28と、ブリッジ28に取り付けられたボールねじ32と、支柱30により支持された支持台29と、支持台29上に設けられたサーボモータ38とを備えている。サーボモータ38を支持する支持台29は、支柱30を介してヘッドアーム16に固定されている。
【0022】
ボールねじ32は、サーボモータ38に連結されたねじ軸32aと、このねじ軸32aが螺合するナット32bとを備えている。ヘッドシャフト11は、ブリッジ28と一体となって上下動するようになっている。したがって、サーボモータ38を駆動すると、ボールねじ32を介してブリッジ28が上下動し、これによりヘッドシャフト11および研磨ヘッド1が上下動する。
【0023】
また、ヘッドシャフト11はキー(図示せず)を介して回転筒12に連結されている。この回転筒12はその外周部にタイミングプーリ14を備えている。ヘッドアーム16にはヘッドモータ18が固定されており、上記タイミングプーリ14は、タイミングベルト19を介してヘッドモータ18に設けられたタイミングプーリ20に接続されている。したがって、ヘッドモータ18を回転駆動することによってタイミングプーリ20、タイミングベルト19、およびタイミングプーリ14を介して回転筒12およびヘッドシャフト11が一体に回転し、研磨ヘッド1がその軸心を中心として回転する。ヘッドモータ18、タイミングプーリ20、タイミングベルト19、およびタイミングプーリ14は、研磨ヘッド1をその軸心を中心として回転させる研磨ヘッド回転機構を構成する。ヘッドアーム16は、フレーム(図示せず)に回転可能に支持されたヘッドアームシャフト21によって支持されている。
【0024】
研磨ヘッド1は、その下面にウェーハWなどの基板を保持できるように構成されている。ヘッドアーム16はヘッドアームシャフト21を中心として旋回可能に構成されており、下面にウェーハWを保持した研磨ヘッド1は、ヘッドアーム16の旋回によりウェーハWの受取位置から研磨テーブル3の上方位置に移動される。研磨ヘッド1および研磨テーブル3をそれぞれ回転させ、研磨テーブル3の上方に設けられた研磨液供給ノズル5から研磨パッド2上に研磨液を供給する。研磨ヘッド1を下降させ、そしてウェーハWを研磨パッド2の研磨面2aに押圧する。このように、ウェーハWを研磨パッド2の研磨面2aに摺接させてウェーハWの表面を研磨する。
【0025】
次に、基板保持装置を構成する研磨ヘッド1について説明する。
図3は、研磨ヘッド1の断面図である。研磨ヘッド1は、トップリングとも呼ばれる。
図3に示すように、研磨ヘッド1は、ウェーハWを研磨面2aに対して押圧するヘッド本体10と、ウェーハWを囲むように配置されたリテーナリング40とを備えている。ヘッド本体10およびリテーナリング40は、ヘッドシャフト11の回転により一体に回転するように構成されている。リテーナリング40は、ヘッド本体10とは独立して上下動可能に構成されている。
【0026】
ヘッド本体10は、円形のフランジ41と、フランジ41の下面に取り付けられたスペーサ42と、スペーサ42の下面に取り付けられたキャリア43とを備えている。フランジ41は、ヘッドシャフト11に連結されている。キャリア43は、スペーサ42を介してフランジ41に連結されており、フランジ41、スペーサ42、およびキャリア43は、一体に回転し、かつ上下動する。フランジ41、スペーサ42、およびキャリア43は、エンジニアリングプラスティック(例えば、PEEK)などの樹脂により形成されている。なお、フランジ41をSUS、アルミニウムなどの金属で形成してもよい。
【0027】
キャリア43の下面には、ウェーハWの裏面に当接する弾性膜45が取り付けられている。弾性膜45の下面は、ウェーハWに接触する基板接触面45aを構成する。キャリア43と弾性膜45との間には圧力室50が形成されている。圧力室50はロータリージョイント25を経由して圧力調整装置65に接続されており、圧力調整装置65から加圧流体(例えば加圧空気)が供給されるようになっている。弾性膜45は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム等の強度および耐久性に優れたゴム材によって形成されている。
【0028】
圧力室50は大気開放機構(図示せず)にも接続されており、圧力室50を大気開放することも可能である。圧力室50は、さらに真空ポンプにも接続されている。弾性膜45の基板接触面45aには複数の通孔(図示せず)が形成されている。真空ポンプによって圧力室50内に真空を形成すると、基板接触面45aはウェーハWを真空吸引により保持することができる。ウェーハWを研磨するときは、圧力室50内に加圧流体(例えば加圧空気)が供給される。ウェーハWは、弾性膜45の基板接触面45aによって研磨パッド2の研磨面2aに押し付けられる。
【0029】
リテーナリング40は、弾性膜45の基板接触面45aの周囲に配置されている。このリテーナリング40は、第1ねじ91および第2ねじ92によってドライブリング46に接続されている。ウェーハWの研磨中、リテーナリング40は、基板接触面45aによって研磨パッド2に押し付けられているウェーハWを囲みつつ、研磨パッド2の研磨面2aを押圧する。ウェーハWはリテーナリング40によって研磨ヘッド1内に保持され、ウェーハWが研磨ヘッド1から飛び出すことが防止される。
【0030】
ドライブリング46の上部は、環状のリテーナリング押圧機構60に連結されている。このリテーナリング押圧機構60は、ドライブリング46の上面全体に均一な下向きの荷重を与え、これによりリテーナリング40の下面全体を研磨パッド2の研磨面2aに対して押圧する。
【0031】
リテーナリング押圧機構60は、ドライブリング46の上部に固定された環状のピストン61と、ピストン61の上面に接続された環状のローリングダイヤフラム62とを備えている。ローリングダイヤフラム62によってリテーナリング圧力室63が形成されている。このリテーナリング圧力室63はロータリージョイント25を経由して圧力調整装置65に接続されている。この圧力調整装置65からリテーナリング圧力室63に加圧流体(例えば、加圧空気)を供給すると、ローリングダイヤフラム62がピストン61を下方に押し下げ、さらに、ピストン61はドライブリング46およびリテーナリング40の全体を下方に押し下げる。このようにして、リテーナリング押圧機構60は、リテーナリング40の下面を研磨パッド2の研磨面2aに対して押圧する。さらに、圧力調整装置65または図示しない真空ポンプによりリテーナリング圧力室63内に負圧を形成することにより、ドライブリング46およびリテーナリング40の全体を上昇させることができる。リテーナリング圧力室63は大気開放機構(図示せず)にも接続されており、リテーナリング圧力室63を大気開放することも可能である。
【0032】
ドライブリング46は、リテーナリング押圧機構60に着脱可能に連結されている。より具体的には、ピストン61は金属などの磁性材から形成されており、ドライブリング46の上部には複数の磁石(図示せず)が配置されている。これら磁石がピストン61を引き付けることにより、ドライブリング46がピストン61に磁力により固定される。磁力を用いずにピストン61とドライブリング46を締結部材等により機械的に連結してもよい。ドライブリング46は、連結部材75を介して球面軸受85に連結されている。この球面軸受85は、リテーナリング40の半径方向内側に配置されている。
【0033】
図4は、ドライブリング46および連結部材75を示す平面図である。
図4に示すように、連結部材75は、ヘッド本体10の中心部に配置された軸部76と、この軸部76に固定されたハブ77と、このハブ77からから放射状に延びる複数のスポーク78とを備えている。スポーク78の一方の端部は、ハブ77に固定されており、スポーク78の他方の端部は、ドライブリング46に固定されている。ハブ77と、スポーク78と、ドライブリング46とは一体に形成されている。ドライブリング46は、スポーク78とは別部材として構成されてもよい。
【0034】
キャリア43には、複数対の駆動ローラ80,80が固定されている。各対の駆動ローラ80,80は各スポーク78の両側に配置されており、各スポーク78の両面に転がり接触する。キャリア43の回転は、駆動ローラ80,80を介してスポーク78に伝達され、スポーク78に接続されているドライブリング46が回転する。したがって、ドライブリング46に固定されているリテーナリング40はヘッド本体10と一体に回転する。
【0035】
図3に示すように、軸部76は球面軸受85内を縦方向に延びている。連結部材75の軸部76は、ヘッド本体10の中央部に配置された球面軸受85に縦方向に移動自在に支持されている。
図4に示すように、キャリア43には、スポーク78が収容される複数の放射状の溝43aが形成されており、各スポーク78は各溝43a内で縦方向に移動自在となっている。
【0036】
このような構成により、連結部材75に連結されたドライブリング46およびリテーナリング40は、ヘッド本体10に対して縦方向に移動可能となっている。さらに、ドライブリング46およびリテーナリング40は、球面軸受85により傾動可能に支持されている。リテーナリング40は基板接触面45aおよびこれに押圧されているウェーハWに対して相対的に傾動可能および上下動可能であり、かつウェーハWとは独立して研磨パッド2を押圧可能となっている。
【0037】
図5は、リテーナリング40とドライブリング46の拡大断面図である。リテーナリング40は第1ねじ91と第2ねじ92との係合によってドライブリング46に接続されている。ドライブリング46は、環状ドライブリング本体47と、この環状ドライブリング本体47の下面46aから下方に突出した環状突部95を備えている。環状突部95は、環状ドライブリング本体47に固定されたねじリング94の下部から構成されている。
【0038】
第1ねじ91および第2ねじ92は、互いに係合する螺旋状のねじ山である。第1ねじ91は、ドライブリング46のねじリング94に形成され、第2ねじ92はリテーナリング40に形成されている。第1ねじ91はドライブリング46の周方向に延び、第2ねじ92はリテーナリング40の周方向に延びている。第1ねじ91はドライブリング46の全周に形成され、第2ねじ92はリテーナリング40の全周に形成されている。リテーナリング40を回転させると、第1ねじ91と第2ねじ92との係合が外れ、リテーナリング40をドライブリング46から取り外すことができる。第1ねじ91は必ずしも連続的に延びている必要はなく、第1ねじ91がドライブリング46の全周に形成されていれば、第1ねじ91の一部が途切れていてもよい。同様に、第2ねじ92は必ずしも連続的に延びている必要はなく、第2ねじ92がリテーナリング40の全周に形成されていれば、第2ねじ92の一部が途切れていてもよい。
【0039】
図6は、第1ねじ91と第2ねじ92との係合が外れたときのリテーナリング40とドライブリング46の拡大断面図である。ねじリング94は、複数の取り付けねじ90によって環状ドライブリング本体47に固定されている。この取り付けねじ90は、ドライブリング46の周方向に沿って等間隔に配列されている(
図4参照)。各取り付けねじ90は、環状ドライブリング本体47を貫通して延び、ねじリング94に螺合されている。ねじリング94の上部は環状ドライブリング本体47内に埋設されており、ねじリング94の下部は、環状ドライブリング本体47の下面46aから下方に突出する環状突部95を構成している。
【0040】
本実施形態では、第1ねじ91の加工のしやすさの観点から、環状突部95は、環状ドライブリング本体47とは別部材であるねじリング94の一部から構成されている。ねじリング94を環状ドライブリング本体47の下面46aに固定して、ねじリング94の全体から環状突部95が構成されてもよい。より強固にねじリング94を環状ドライブリング本体47に固定するために、ねじリング94を環状ドライブリング本体47に接着したのちに、取り付けねじ90で固定してもよい。更にねじリング94と環状ドライブリング本体47とが同一の材料から一体に形成されてドライブリング46を構成してもよい。
【0041】
環状突部95は、環状ドライブリング本体47の全周を延びており、環状ドライブリング本体47およびリテーナリング40と同心状である。第1ねじ91は、環状突部95の内側の側面に形成されている。リテーナリング40の上面には、環状突部95が収容される環状凹部97が形成されており、この環状凹部97の内側の側面に第2ねじ92が形成されている。環状凹部97は、リテーナリング40の全周を延びており、リテーナリング40と同心状である。この実施形態では、第1ねじ91は雌ねじであり、第2ねじ92は雄ねじである。
【0042】
リテーナリング40の全体をその軸心まわりに回転させることにより、
図5に示すように、第2ねじ92を第1ねじ91に係合させ、リテーナリング40をドライブリング46に接続(固定)することができる。また、リテーナリング40の全体をその軸心まわりに反対方向に回転させることにより、第1ねじ91と第2ねじ92との係合を外し、
図6に示すように、リテーナリング40をドライブリング46から取り外すことができる。
【0043】
このように、リテーナリング40を回転させるだけでリテーナリング40を取り付けることができ、かつ取り外すことができる。したがって、研磨ヘッド1を研磨装置から取り外す必要がなく、さらに研磨ヘッド1を分解する必要もない。さらに、第1ねじ91および第2ねじ92はリテーナリング40の全周に亘って連続的に(または断続的に)延びているので、第1ねじ91と第2ねじ92との間にする締付け力はリテーナリング40の全周において均一である。したがって、リテーナリング40内に生じる応力も均一となり、リテーナリング40が歪まない。
【0044】
研磨ヘッド1が回転しているとき、リテーナリング40と研磨パッド2との間の摩擦に起因するトルクがリテーナリング40に作用する。ウェーハWの研磨中に第1ねじ91と第2ねじ92とが緩むことを防止するために、第2ねじ92が締め付けられる方向は、ウェーハWの研磨時にヘッドモータ18(
図2参照)が研磨ヘッド1(およびリテーナリング40)を回転させる方向とは反対にしてもよい。もちろん、第1ねじ91と第2ねじ92によって十分な締結力が得られればこの緩み防止構造は不要である。
【0045】
図5に示すように、第1ねじ91と第2ねじ92との締付け力によってリテーナリング40の上面40aがドライブリング46の環状ドライブリング本体47の下面46aに押し付けられた状態で、リテーナリング40がドライブリング46に接続される。環状ドライブリング本体47の下面46aは、リテーナリング40の上面40aと接触している。第1ねじ91および第2ねじ92は、ドライブリング46およびリテーナリング40によって完全に囲まれ、外部に晒されない。よって、ウェーハWの研磨時に研磨液(スラリ)が第1ねじ91および第2ねじ92に浸入せず、リテーナリング40のスムーズな取り外しが確保される。
【0046】
研磨液(スラリ)の浸入をより確実に防ぐために、
図7に示すように、ドライブリング46とリテーナリング40との間にOリングなどのシールリング100A,100Bを設けることが好ましい。
図7に示す実施形態では、第1ねじ91および第2ねじ92の内側には、Oリングからなる内側シールリング100Aが設けられ、第1ねじ91および第2ねじ92の外側には、Oリングからなる外側シールリング100Bが設けられている。これら2つのシールリング100A,100Bによって、ドライブリング46とリテーナリング40との間の隙間、より具体的には環状ドライブリング本体47の下面46aとリテーナリング40の上面40aとの間の隙間が封止されている。
【0047】
図8に示す実施形態では、内側シールリング100Aは逆U字型の断面を有している。この内側シールリング100Aの内周縁はヘッド本体10のキャリア43に接続され、内側シールリング100Aの外周縁はドライブリング46とリテーナリング40との間、より具体的には環状ドライブリング本体47の下面46aとリテーナリング40の上面40aとの間に挟まれている。逆U字型の内側シールリング100Aは、弾性膜(メンブレン)45とリテーナリング40の間へのスラリの浸入を防ぎ、かつリテーナリング40の上下動作も妨げない形状となっている。
図8に示す内側シールリング100Aは、弾性膜45と一体に形成されてもよい。
【0048】
図9は、リテーナリング40とドライブリング46の他の実施形態を示す拡大断面図である。
図10は、
図9に示す第1ねじ91と第2ねじ92との係合が外れたときのリテーナリング40とドライブリング46の拡大断面図である。この実施形態では、第1ねじ91は、環状突部95の外側の側面に形成され、第2ねじ92は、環状凹部97の外側の側面に形成されている。第1ねじ91は雄ねじであり、第2ねじ92は雌ねじである。
図7および
図8に示す実施形態のように、ドライブリング46とリテーナリング40との間にOリングなどのシールリング100A,100Bを設けてもよい。
【0049】
図5および
図6に示す実施形態と、
図9および
図10に示す実施形態は、どちらも第1ねじ91と第2ねじ92との係合によってリテーナリング40をドライブリング46に固定することができるが、これらの実施形態では締付け力の発生する位置が異なるので、研磨条件に合わせて適切な実施形態を選択することが望ましい。
【0050】
図11および
図12は、リテーナリング40の他の実施形態を示す図である。この実施形態では、リテーナリング40は、環状リテーナリング本体48と、該環状リテーナリング本体48内に配置された凹リング49とを備えている。環状リテーナリング本体48の下面は、研磨パッド2を押圧する押圧面を構成する。上述した環状凹部97および第2ねじ92は、凹リング49に形成されている。凹リング49は、接着、圧入、または溶接などにより環状リテーナリング本体48に固定されている。
【0051】
環状リテーナリング本体48は、樹脂から構成されているのに対し、凹リング49は、環状リテーナリング本体48よりも強度の高い材料、例えば金属、セラミック、カーボン、PEEKなどから構成されている。コストの観点からは、耐腐食性の高いステンレス鋼が好ましく使用される。ウェーハWの膜厚を測定するために渦電流センサが使用される場合には、凹リング49はセラミックなどの強度の高い非金属材料から構成することが好ましい。
図13に示すように、
図9および
図10に示す実施形態にも凹リング49を適用してもよい。
【0052】
図14は、リテーナリング40とドライブリング46の他の実施形態を示す拡大断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図5および
図6に示す実施形態の構成を同じであるので、その重複する説明を省略する。この実施形態では、リテーナリング40は、環状リテーナリング本体48と、この環状リテーナリング本体48の上面40aから上方に突出した環状突部95を備えている。環状突部95は、環状リテーナリング本体48に固定されたねじリング94の上部から構成されている。
【0053】
環状突部95は、環状リテーナリング本体48の全周を延びており、環状リテーナリング本体48と同心状である。ドライブリング46の下面46aには、環状突部95が収容される環状凹部97が形成されており、この環状凹部97の内側の側面に第1ねじ91が形成されている。第2ねじ92は、環状突部95の内側の側面に形成されている。環状凹部97は、ドライブリング46の全周を延びており、ドライブリング46と同心状である。この実施形態では、第1ねじ91は雄ねじであり、第2ねじ92は雌ねじである。環状凹部97の外側の側面に第1ねじ91が形成されてもよく、環状突部95の外側の側面に第2ねじ92が形成されてもよい。
【0054】
第1ねじ91および第2ねじ92は、ドライブリング46およびリテーナリング40の全周に形成されている。リテーナリング40を回転させると、第1ねじ91と第2ねじ92との係合が外れ、リテーナリング40をドライブリング46から取り外すことができる。
【0055】
図15は、
図14に示す第1ねじ91と第2ねじ92との係合が外れたときのリテーナリング40とドライブリング46の拡大断面図である。ねじリング94は、複数の取り付けねじ(図示せず)によって環状リテーナリング本体48に固定されている。ねじリング94の下部は環状リテーナリング本体48内に埋設されており、ねじリング94の上部は、環状リテーナリング本体48の上面40aから上方に突出する環状突部95を構成している。
【0056】
本実施形態では、第2ねじ92の加工のしやすさの観点から、環状突部95は、環状リテーナリング本体48とは別部材であるねじリング94の一部から構成されている。ねじリング94を環状リテーナリング本体48の上面40aに固定して、ねじリング94の全体から環状突部95が構成されてもよい。より強固にねじリング94を環状リテーナリング本体48に固定するために、ねじリング94を環状リテーナリング本体48に接着したのちに、複数の取り付けねじ(図示せず)で固定してもよい。更にねじリング94と環状リテーナリング本体48とが同一の材料から一体に形成されてリテーナリング40を構成してもよい。
【0057】
図14に示すように、第1ねじ91と第2ねじ92との締付け力によって環状リテーナリング本体48の上面40aがドライブリング46の下面46aに押し付けられた状態で、リテーナリング40がドライブリング46に接続される。ドライブリング46の下面46aは、リテーナリング40の環状リテーナリング本体48の上面40aと接触している。第1ねじ91および第2ねじ92は、ドライブリング46およびリテーナリング40によって完全に囲まれ、外部に晒されない。よって、ウェーハWの研磨時に研磨液(スラリ)が第1ねじ91および第2ねじ92に浸入せず、リテーナリング40のスムーズな取り外しが確保される。上述した
図7乃至
図10に示す実施形態は、
図14に示す実施形態にも適宜適用することが可能である。
【0058】
図16は、リテーナリング40を回転させるための締め付け工具110を示す図である。
図16に示すように、リテーナリング40を回転させるための専用の締め付け工具110を用いて、第2ねじ92を第1ねじ91に締め付ける。締め付け工具110は、リテーナリング40の外周面に沿った形状の円弧アーム111を有しており、その円弧アーム111の先端には突起112が形成されている。リテーナリング40の外周面には、締め付け工具110の突起112が係合する複数の窪み120が形成されている。
【0059】
リテーナリング40は、最初は締め付け工具110を用いずに手で回転され、第2ねじ92を第1ねじ91にある程度ねじ込む。その後、
図16に示す締め付け工具110を用いてリテーナリング40に強いトルクを与える。
図17は、締め付け工具110でリテーナリング40をその軸心周りに回転させている様子を示す図である。締め付け工具110の突起112は、リテーナリング40の複数の窪み120のうちの1つに嵌め込まれ、この状態で締め付け工具110を手で矢印に示す方向に回転させる。
【0060】
締め付け工具110でリテーナリング40を回転させるときに、研磨ヘッド1が回転しないようにするために、ヘッドモータ18(
図2参照)は、研磨ヘッド1の回転をロックするロック機能を有している。具体的には、ヘッドモータ18を回転させずに、ヘッドモータ18に電流を流して、ヘッドモータ18にその定格トルク以上の固定力を発生させる。研磨ヘッド1を支えるヘッドシャフト11(
図1,
図2参照)を専用工具で固定しながら、リテーナリング40を回転させてもよい。
【0061】
ウェーハWの研磨中に第1ねじ91と第2ねじ92が緩んでしまうと、ヘッド本体10に対するリテーナリング40の位置が変わり、結果としてウェーハWの研磨プロファイルが変化したり、ウェーハWが破損することがある。そこで、第1ねじ91および第2ねじ92の緩みを防止するために、
図18乃至
図23に示す緩み止め構造体を設けることが好ましい。
【0062】
図18に示す緩み止め構造体は、ドライブリング46に対するリテーナリング40の回転を止めるロックねじ125である。このロックねじ125は、リテーナリング40に埋設されており、ドライブリング46の環状突部95に接触している。より具体的には、リテーナリング40の外周面には環状凹部97に連通するねじ穴122が形成されており、ロックねじ125の先端が環状突部95の外周面に接触するまでロックねじ125がねじ穴122にねじ込まれている。
【0063】
図19は、
図14に示す実施形態にロックねじ125を適用した実施形態を示す図である。ロックねじ125は、ドライブリング46に埋設されており、リテーナリング40の環状突部95に接触している。より具体的には、ドライブリング46の外周面には環状凹部97に連通するねじ穴122が形成されており、ロックねじ125の先端が環状突部95の外周面に接触するまでロックねじ125がねじ穴122にねじ込まれている。
【0064】
図20に示す緩み止め構造体は、リテーナリング40をドライブリング46に押し付けるロックリング127である。ドライブリング46の外周面には雄ねじ130が形成され、ロックリング127の内周面には、ドライブリング46の雄ねじ130に係合する雌ねじ131が形成されている。リテーナリング40の上部には外側に突出したフランジ部135が形成されており、ロックリング127の下部には内側に突出した小径部136が形成されている。ロックリング127の小径部136の上面がリテーナリング40のフランジ部135の下面に当接するまで、ロックリング127はドライブリング46に締め付けられる。リテーナリング40はロックリング127によってドライブリング46に押し付けられ、これにより第1ねじ91および第2ねじ92の緩みが防止される。
【0065】
ロックリング127を締め付ける方向は、リテーナリング40の第2ねじ92を締め付ける方向とは逆であることが好ましい。第2ねじ92が緩む方向にリテーナリング40が回転しようとすると、ロックリング127が締め付けられるので、リテーナリング40の緩み防止としてより効果的である。ロックリング127は、
図14及び
図15に示す実施形態にも同様に適用することができる。
【0066】
図21は、緩み止め構造体のさらに他の実施形態を示す図である。
図21に示す緩み止め構造体は、ロックリング150とロックナット151との組み合わせから基本的に構成される。
図22は、
図21に示すロックリング150とロックナット151の拡大図である。ロックリング150は、下方に突出する複数の凸部152を有している。リテーナリング40の上面40aには、凸部152が嵌め込まれる複数の穴40bが形成されている。ロックリング150は、その凸部152がリテーナリング40の穴40bにそれぞれ嵌め込まれた状態で、ドライブリング46の外周面に接触している。
【0067】
ロックリング150は、ドライブリング46の周囲に配置されている。ロックリング150は、半径方向内側に突出する小径部154を有している。ドライブリング46は、半径方向外側に突出するフランジ部155を有している。小径部154の下面はフランジ部155の上面に接触し、これによりロックリング150の小径部154はドライブリング46のフランジ部155に係合する。
【0068】
ロックナット151は、ドライブリング46の周囲に配置され、かつロックリング150に接触している。ロックナット151の内周面には雌ねじ157が形成されており、ドライブリング46の外周面には雄ねじ158が形成されている。雌ねじ157はロックナット151の周方向に螺旋状に延び、雄ねじ158はドライブリング46の周方向に螺旋状に延びている。
【0069】
ロックナット151の下面の少なくとも一部はテーパー面161から構成されており、ロックリング150の上面の少なくとも一部は、ロックナット151のテーパー面161に接触するテーパー面162から構成されている。テーパー面161およびテーパー面162は、同じ傾斜角度を持つ円錐台形状を有している。ロックナット151のテーパー面161はロックリング150のテーパー面162に接触し、ロックナット151の雌ねじ157はドライブリング46の雄ねじ158に螺合されている。ロックリング150の小径部154はドライブリング46のフランジ部155に係合しているので、ロックリング150はドライブリング46に支持されている。したがって、ロックナット151を強く締め付けても、ロックリング150はリテーナリング40に下向きの力を伝えない。
【0070】
ロックリング150の下面の外周部はテーパー面163から構成されており、リテーナリング40の上面40aの外周部は、ロックリング150のテーパー面163に接触するテーパー面164から構成されている。テーパー面163およびテーパー面164は、同じ傾斜角度を持つ円錐台形状を有している。ロックナット151を締め付けると、ロックリング150のテーパー面163は、リテーナリング40のテーパー面164に押し付けられ、これによりロックリング150とリテーナリング40との間の隙間が封止される。
【0071】
図23は、ロックリング150およびロックナット151の分解図である。ロックリング150は、その凸部152がリテーナリング40の穴40bに嵌め込まれ、かつ小径部154がフランジ部155に係合した状態で、ドライブリング46の外周面に取り付けられる。さらに、ロックナット151を回転させてその雌ねじ157をドライブリング46の雄ねじ158に螺合させる。ロックナット151を締め付けることにより、ロックナット151のテーパー面161はロックリング150のテーパー面162に押し付けられ、これによりロックリング150はロックナット151とドライブリング46との間に挟まれる。ロックリング150の凸部152はリテーナリング40の穴40bに嵌合しているので、リテーナリング40の回転はロックリング150によって拘束される。
【0072】
締め付け工具110の突起112(
図16参照)が挿入可能な窪み165がロックナット151の外周面に形成されている。したがって、リテーナリング40と同様に、締め付け工具110を用いてロックナット151を締結可能となっている。なお、締め付け工具110とは別の締め付け工具をロックナット151用に用意してもよい。ロックナット151を締め込むと、ロックリング150とロックナット151のテーパー面161,162がくさび効果を発揮し、ロックリング150はドライブリング46に固定される。リテーナリング40の回転はロックリング150によって防止される。
【0073】
ロックナット151を締め付ける方向は、リテーナリング40の第2ねじ92を締め付ける方向とは逆であることが好ましい。第2ねじ92が緩む方向にリテーナリング40が回転しようとすると、ロックナット151が締め付けられるので、リテーナリング40の緩み防止としてより効果的である。
【0074】
図21に示すように、ヘッド本体10とロックナット151との間の隙間からの研磨液や水の浸入を防ぐため、ヘッド本体10の外周面とロックナット151の外周面とを接続するシールバンド167が設けられている。このシールバンド167は、柔軟な環状のシートから形成されており、ヘッド本体10およびロックナット151の全周を延びている。シールバンド167は、上下方向に伸縮可能であり、リテーナリング40の上下動を妨げないようになっている。
【0075】
図21に示す実施形態では、弾性膜(メンブレン)45とリテーナリング40とを連結する、逆U字型の断面を有したシールリング100Aが設けられている。このシールリング100Aの内周縁は弾性膜45に接続され、シールリング100Aの外周縁はリテーナリング40に接続されている。逆U字型のシールリング100Aは、弾性膜(メンブレン)45とリテーナリング40の間へのスラリの浸入を防ぎ、かつリテーナリング40の上下動作も妨げない形状となっている。シールリング100Aは、弾性膜45と一体に形成されてもよい。
【0076】
図24は、緩み止め構造体のさらに他の実施形態を示す図である。
図24に示す緩み止め構造体は、ドライブリング46に上下動可能に支持されたピン170と、ピン170に係合するカムシャフト190とを備えている。ピン170はドライブリング46およびリテーナリング40に対して上下方向に移動可能である。リテーナリング40には穴40cが形成されており、この穴40cにピン170の先端が挿入されることによってリテーナリング40のドライブリング46に対する回転が拘束される。本実施形態では、ピン170はドライブリング46を上下方向に延びており、ピン170の横方向の移動はドライブリング46によって拘束されている。
【0077】
カムシャフト190は、ドライブリング46に回転可能に支持されている。カムシャフト190は、露出した端部191を有している。この露出した端部191は、ドライブリング46の外周面内に位置している。露出した端部191には、マイナスドライバーの先端が係合可能な溝192が形成されている。マイナスドライバーの先端が溝192に係合した状態でマイナスドライバーを回転させると、カムシャフト190はその軸心を中心に回転することができる。
【0078】
図25は、
図24に示す緩み止め構造体を矢印Aで示す方向から見た断面図である。カムシャフト190は、その軸心に対して偏心したカム部195を有している。ピン170の上部は、長方形の穴171が空いたブロック172から構成されている。カムシャフト190は、ブロック172の穴171を貫通しており、カムシャフト190のカム部195は、穴171を形成するブロック172の内面に接触している。カムシャフト190がその軸心を中心に回転されると、カム部195によってピン170が上下動する。
図24および
図25は、ピン170が穴40cに挿入された状態を示し、
図26および
図27は、ピン170が上昇されてピン170が穴40cから出された状態を示している。
【0079】
研磨中にリテーナリング40が緩む、もしくは締まる方向の回転は、このピン170と穴40cの係合によって拘束される。
図28に示すように、リテーナリング40の穴40cは作業性を考慮すると周方向の長穴がよい。一定のトルクでリテーナリング40を締め付けた際、リテーナリング40がどの位置で止まるかは分からない。このため、リテーナリング40の穴40cが丸形状であると、ピン170を丸穴に揃えるのが難しい。本実施形態によれば、穴40cはリテーナリング40の周方向に延びる長穴であるので、位置調整を省略できる可能性が高くなる利点がある。すなわち、予め定められたトルクでリテーナリング40を締め付けた後、ピン170が穴40cの上に位置していればカムシャフト190を回してピン170を下げることができる。一方、ピン170が穴40cの上になければ、ピン170が穴40cの上に位置するまで更にリテーナリング40を締め付ける。ピン170の先端が穴40cに挿入されているときでも、リテーナリング40は穴40cの長さの範囲内で回転することができる。したがって、穴40cは締付トルクが変化してもプロセス影響のない長さ(リテーナリング40の周方向の長さ)を有するのがよい。
【0080】
リテーナリング40を締め付けた際にピン170が穴40cの真上に位置しているかどうかは、リテーナリング40の外周面とドライブリング46の外周面にそれぞれ設けられた目印(図示せず)の位置から判別できる。リテーナリング40に設けられた目印は穴40cの位置を示し、ドライブリング46に設けられた目印はピン170の位置を示している。
【0081】
図29は、緩み止め構造体のさらに他の実施形態を示す図である。
図30は、
図29に示す緩み止め構造体を矢印Bで示す方向から見た断面図である。
図29および
図30に示す緩み止め構造体は、ドライブリング46に上下動可能に支持されたピン170と、ピン170に係合するカムシャフト190と、ピン170をリテーナリング40に向かって押すばね197とを備えている。本実施形態では2つのばね197が設けられているが、1つのばね、または3つ以上のばねが設けられてもよい。本実施形態の基本的な構成は、
図24および
図25に示す実施形態と同じであるので、重複する説明を省略する。
【0082】
図31は、リテーナリング40に形成された穴40cを示す平面図である。本実施形態では、穴40cは丸穴である。
図32および
図33は、カムシャフト190を回転させてカム部195でピン170を上昇させた状態を示す図である。まず、
図32および
図33に示すように、リテーナリング40を締め付ける前にピン170をカムシャフト190で上昇させる。次に、リテーナリング40を締め付けた後にカムシャフト190を回転させ、ピン170をばね197でリテーナリング40に対して押し付ける。
図34に示すように、ピン170と穴40cの位置があっていない場合でも、研磨中に作用する回転力でリテーナリング40がドライブリング46に対して回転すると、ピン170が穴40cに並び、ばね197によってピン170が穴40cに挿入される。この実施形態では、カムシャフト190はピン170を上方向に持ち上げるのみであり、ピン170はばね197によって下方向に移動される。
【0083】
図35に示すように、第1ねじ91に対する第2ねじ92の緩みを検出する緩み検出器を設けてもよい。
図35に示す緩み検出器は、ドライブリング46の外周面に形成された第1目印141と、リテーナリング40の外周面に形成された第2目印142との相対位置を検出する目印検出器143である。目印検出器143には、画像センサまたはレーザーセンサなどの形状や相対位置が測定できるセンサを使用することができる。
【0084】
図36は、リテーナリング40の第2ねじ92が緩んでいないときの第1目印141および第2目印142を示す拡大図である。
図36に示すように、リテーナリング40の第2ねじ92が緩んでいないときは、第1目印141および第2目印142は同じ位置にある。これに対して、リテーナリング40の第2ねじ92が緩むと、
図37に示すように、第1目印141に対する第2目印142の位置がずれる。目印検出器143は、第1目印141と第2目印142との相対位置に基づいて、第2ねじ92の緩みを検出する。
【0085】
図38は、緩み検出器としてロードセル145を用いた実施形態を示す図である。ロードセル145はドライブリング46とねじリング94との間に配置されており、かつ隣接する2つの取り付けねじ90(
図4参照)の間に配置されている。第2ねじ92が第1ねじ91に締め付けられると、ねじリング94はリテーナリング40に引っ張られる。ロードセル145は、この引っ張り力を測定する。第2ねじ92が緩むと、ロードセル145によって測定される引っ張り力が低下する。したがって、引っ張り力の低下から第2ねじ92の緩みを検出することができる。
【0086】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。