特許第6450047号(P6450047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6450047薄片状ノンフライポテトスナックの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6450047
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】薄片状ノンフライポテトスナックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/18 20160101AFI20181220BHJP
   A23G 3/48 20060101ALI20181220BHJP
   A21D 8/02 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   A23L19/18
   A23G3/48
   A21D8/02
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-151972(P2018-151972)
(22)【出願日】2018年8月10日
【審査請求日】2018年8月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】小野 隆
【審査官】 宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−131566(JP,A)
【文献】 特開2017−012062(JP,A)
【文献】 特開平10−313816(JP,A)
【文献】 特開2007−135462(JP,A)
【文献】 特開昭51−032762(JP,A)
【文献】 米国特許第03520248(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0091698(US,A1)
【文献】 特開2006−204297(JP,A)
【文献】 小林 彰夫 他,菓子の事典,株式会社 朝倉書店,2000年,p.432,図V.4.5
【文献】 研究所員直販プロジェクト「森永新研究所」日本百貨店にて12月1日(木)より期間限定オープン,NEWS RELEASE,森永製菓株式会社,2016年12月 1日,商品名「おののじゃが芋子」,URL,<http://www.morinaga.co.jp/public/newsrelease/web/fix/file583d198d5c268.pdf>
【文献】 小林 彰夫 他,菓子の事典,2000年,株式会社 朝倉書店,p.417
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 19/12−19/18
A21D 8/00−8/02
A23G 3/00−3/56
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャガイモ原料を含むポテトスナック生地を成形する成形工程、及び成形後の前記ポテトスナック生地を焼成する焼成工程を備える、ノンフライの薄片状成形ポテトスナックの製造方法であって、
前記成形工程が、ロータリーモールドによる成形を含むことを特徴とする、ポテトスナックの製造方法。
【請求項2】
前記ポテトスナックの油脂含量が20質量%未満となるように、前記ポテトスナック生地を調製することを特徴とする、請求項1に記載のポテトスナックの製造方法。
【請求項3】
前記ポテトスナックの油脂含量が5質量%未満となるように、前記ポテトスナック生地を調製することを特徴とする、請求項1又は2に記載のポテトスナックの製造方法。
【請求項4】
前記焼成工程として、一次焼成及び二次焼成を行うことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のポテトスナックの製造方法。
【請求項5】
前記ロータリーモールドにおけるモールド深さが、3mm以下であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のポテトスナックの製造方法。
【請求項6】
前記ジャガイモ原料として、裏ごし芋を含むことを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のポテトスナックの製造方法。
【請求項7】
前記ポテトスナックは、前記ジャガイモ原料由来の食物繊維以外の食物繊維をさらに含み、前記ポテトスナックに含まれる前記ジャガイモ原料由来の食物繊維以外の食物繊維の含有量が2質量%以上となるように、前記ポテトスナック生地を調製することを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載のポテトスナックの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄片状であって、ノンフライのポテトスナックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の健康志向の上昇により、油で揚げずに、焼成により製造された、いわゆるノンフライポテトスナックの需要が高まっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、サツマイモ、カボチャ、クリなどの乾燥粉末からなる高糖粉体、ジャガイモ、コメ等の乾燥粉末からなる低糖粉体、澱粉、精白糖、乳化剤、膨張剤、塩及び香辛料を混合した原料粉末に、食用油を噴霧してコーティングし、その後オーブンに入れて焼成する、チップ状焼き菓子の製造方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、紫芋粉、中力粉、コーンスターチ、アルファ化蝋質コーンスターチ、ショートニング、リン脂質、膨張剤、塩、砂糖、香料及び水を含む生地を圧延し、ベークした後、パーム油を噴き掛ける工程を備える、ノンフライの紫芋チップの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−204297号公報
【特許文献2】特開2016−131566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、スナック菓子はシート成形法を用いて成形される。シート成形法とは、ローラーを用いて生地を圧延し、薄く延ばした後に、切断、又は型抜きすることで成形する方法である。
【0007】
シート成形法において、油脂は極めて重要な機能を有しており、油脂含有量を高めることで、生地の結着性を改善して成形をしやすくし、焼成時の生地の水抜けを改善してより食感の良いポテトスナックを製造することができる。
一方で、シート成形法は、生地中の油脂分が少ないと、生地表面がべたつき、薄片状に成形することが困難であるという問題があった。
【0008】
また、油脂量を少なくすることによる成形性の悪さを改善するために、特許文献2に記載のポテトスナックのように小麦粉を多く配合すると、ジャガイモ本来の味や風味が損なわれてしまうという問題があった。
【0009】
このように、従来のポテトスナックの製造方法では、じゃがいもの風味を十分に有しつつ、低油脂量のポテトスナックを製造するのは困難であった。
【0010】
したがって、本発明は、ジャガイモの風味を有しつつ、油脂量が低いノンフライ薄片状ポテトスナックを効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
【0011】
また、油脂分が少ないノンフライのポテトスナックは、焼成による水抜けが悪く、焼成後のスナックの食感はボソボソとして口溶けが悪く、ポテトスナックに求められるパリパリとした食感のものを得ることが困難である。
【0012】
したがって、本発明は、さらに、食感に優れたノンフライ薄片状ポテトスナックを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、ポテトスナック生地の成形方法として、特定の方法を用いることで、油脂量が低いノンフライ薄片状ポテトスナックを製造できることを見出し、本発明に至った。
【0014】
上記課題を解決する本発明は、ジャガイモ原料を含むポテトスナック生地を成形する成形工程、及び成形後の前記ポテトスナック生地を焼成する焼成工程を備える、ノンフライの薄片状ポテトスナックの製造方法であって、
前記成形工程が、ロータリーモールドによる成形を含むことを特徴とする。
ポテトスナック生地の成形方法として、ロータリーモールドを用いることで、生地を薄片状に成形することが可能となり、ノンフライの薄片状ポテトスナックを容易に製造することができる。また、デモールドした生地部分のみが成型されるため、生産効率が良い。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記ポテトスナックの油脂含量が、20質量%未満となるように、前記ポテトスナック生地を調製する。
また、本発明の好ましい形態では、前記ポテトスナックの油脂含量が、5質量%未満となるように、前記ポテトスナック生地を調製する。
本発明の製造方法によれば、油脂含量が低いノンフライ薄片状ポテトスナックでも、容易に製造することが可能となる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記焼成工程として、一次焼成及び二次焼成を行う。
本発明の製造方法によれば、二次焼成を行うことで、一次焼成時の水分除去を補うことが出来、パリパリとした、好ましい食感のポテトスナックを製造することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記ロータリーモールドにおけるモールドの深さが、3mm以下である。
本発明の製造方法によれば、3mm以下の厚さのノンフライ薄片状ポテトスナックであっても、容易に製造することができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記ジャガイモ原料として、裏ごし芋を含む。
裏ごし芋をジャガイモ原料として含むことで、生地のべたつきを抑えることができ、また、じゃがいもの風味をより強く付与することができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記ジャガイモ原料由来の食物繊維以外の食物繊維をさらに含み、前記ポテトスナックに含まれるジャガイモ原料由来の食物繊維以外の食物繊維の含有量が2質量%以上となるように、前記ポテトスナック生地を調製する。
ジャガイモ原料由来の食物繊維以外の食物繊維を2質量%以上となるようにポテトスナック生地を調製することで、薄片状の成形がより容易となり、焼成後のポテトスナックの食感が、よりパリパリとして、好ましい食感となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の製造方法によれば、ノンフライ薄片状ポテトスナックを容易に製造することができる。
本発明の好ましい形態によれば、より薄片状の成形が容易となり、よりパリパリとした好ましい食感のノンフライ薄片状ポテトスナックを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の製造方法における各工程について説明する。
【0022】
(1)成形工程
本発明のポテトスナックの製造方法は、ロータリーモールドによりポテトスナック生地を成形する。
ロータリーモールドとは任意の型(モールド)が設けられたロール(型ロール)に、生地を供給することで生地を成形し、当該型ロールとコンベヤーベルト等の移送手段とを接触させることで、成形された生地を型ロールから移送手段に転写し、成形された生地を得る方法である。
【0023】
本発明のポテトスナックの製造方法によれば、ポテトスナック生地の成形にロータリーモールドを適用することで、容易に薄片状ノンフライポテトスナックを製造することができ、特に、油脂含量が低いものであっても製造することができる。
【0024】
モールドの深さは、特に限定されないが、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下であり、さらに好ましくは2mm以下である。
また、モールドの形状は、円形、短冊形、棒状形等、任意の形状とすることができる。また、モールドの底の形状は、平滑であっても、波形であってもよい。
【0025】
(2)焼成工程
上述したロータリーモールドによる成形後、成形されたポテトスナック生地を焼成する。
焼成方法としては、常法を用いることができ、赤外線により焼成する方法、熱風で焼成する方法、加熱蒸気で焼成する方法等が例示でき、オーブンを用いて焼成する方法が好ましい。
【0026】
焼成温度は、特に限定されないが、好ましくは100〜280℃であり、より好ましくは120〜220℃であり、さらに好ましくは150〜220℃であり、特に好ましくは190〜210℃である。
焼成時間は、特に限定されず、上述した焼成温度に併せて適宜調整可能であるが、好ましくは2〜10分であり、より好ましくは3〜8分であり、さらに好ましくは4〜6分である。
【0027】
本発明の製造方法は、一回目の焼成(一次焼成)で焼成工程を終えても良いが、必要に応じて二回目の焼成(二次焼成)を行うこともできる。
二次焼成は、一次焼成と同一の焼成温度、焼成時間で行ってもよく、異なる焼成温度及び焼成時間で行ってもよい。
【0028】
二次焼成における焼成温度は、特に限定されないが、好ましくは100〜200℃であり、より好ましくは100〜180℃であり、さらに好ましくは100〜150℃であり、特に好ましくは110〜130℃である。
二次焼成における焼成時間は、特に限定されず、上述した二次焼成の焼成温度に併せて適宜調整可能であるが、好ましくは2〜10分であり、より好ましくは3〜8分であり、さらに好ましくは4〜6分である。
【0029】
一方で、本発明の製造方法によれば、一次焼成及び二次焼成を行うことで、よりパリパリとした、好ましい食感の薄片状ポテトスナックを製造することができる。
【0030】
以下、本発明の製造方法に適したポテトスナック生地について説明する。
【0031】
(3)ポテトスナック生地
本発明の製造方法において用いるポテトスナック生地は、ジャガイモ原料を必須成分として含む。
ジャガイモ原料としては、ジャガイモを蒸煮処理、水煮処理等の加熱処理、粉砕処理等の粉粒化処理、裏漉し処理(マッシング)及び乾燥処理等の何らかの加工処理を行ったものを用いることができる。
【0032】
本発明の製造方法においては、粉粒化処理を行っていないジャガイモ加工品を用いることが好ましく、粉粒化処理を行っていないジャガイモ加工品、及び粉粒化処理を行ったジャガイモ加工品の両方を用いることがより好ましい。
【0033】
ジャガイモは、加熱により澱粉がα化することで、粘度が上昇するが、その粘度の上昇値は、ジャガイモ細胞の破損度に起因することが知られている。
澱粉は、ジャガイモ細胞中に存在しているため、細胞破損度が高ければ、α化した澱粉が多く流出し、粘度の上昇値が高くなる。一方で、細胞破損度が低ければ、α化した澱粉が流出せず、粘度の上昇値が低い、あるいは全く上昇しない。
ジャガイモ細胞は、例えば、粉砕等の粉粒化処理を行うことで、破損度が上昇する。
【0034】
本発明の製造方法は、粉粒化処理を行っていないジャガイモ加工品を含むことで、加熱による粘度の上昇を抑え、よりモールドからの型離れが良いポテトスナック生地を調製することができる。また、生地の粘度が上昇しないため、水抜けがよく、パリパリとした好ましい食感のポテトスナックを製造することができる。
【0035】
粉粒化処理を行っていないジャガイモ加工品としては、裏ごし芋、及びカット芋等が例示でき、裏ごし芋を用いることが好ましい。
粉粒化処理を行ったジャガイモ加工品としては、ポテトフレーク及びポテトフラワー等が例示でき、ポテトフレークを用いることが好ましい。
【0036】
裏ごし芋は、芋を蒸煮、水煮等の加熱処理後にマッシングすることで製造できる。
ポテトフレークは、芋を蒸煮、水煮等の加熱処理後にマッシングし、乾燥し、粉砕することで製造できる。
ポテトフラワーは、ポテトフレークと同様の製法であるが、ポテトフレークと比してより微細な粒度となるように粉砕する。
【0037】
また、本発明の製造方法においては、ジャガイモ原料として、乾燥処理を行っていないジャガイモ加工品を用いることが好ましい。
乾燥処理を行うことで、ジャガイモの風味が飛び、ジャガイモ本来の風味が薄まってしまう。乾燥処理を行っていないジャガイモ加工品を用いることで、よりジャガイモ本来の風味に富んだポテトスナックを製造することができる。
【0038】
ジャガイモ原料の含有量は、ポテトスナック生地全量に対して、固形分換算で好ましくは20〜55質量%であり、より好ましくは25〜50質量%であり、さらに好ましくは25〜40質量%であり、特に好ましくは25〜35質量%である。
【0039】
生地中に粉粒化処理を行っていないジャガイモ加工品及び粉粒化処理を行ったジャガイモ加工品を含む場合、生地の成形のしやすさの観点から、固形分換算で粉粒化処理を行っていないジャガイモ加工品10質量部に対して、粉粒化処理を行ったジャガイモ加工品が、固形分換算で好ましくは4〜40質量部であり、より好ましくは4〜20質量部であり、さらに好ましくは4〜15質量部であり、特に好ましくは5〜10質量部である。
【0040】
原料として、裏ごし芋(水分含量50〜80質量%)を使用する場合、その含有量は生地全量に対して、好ましくは40〜80質量%であり、より好ましくは45〜80質量%であり、より好ましくは50〜80質量%であり、特に好ましくは60〜75質量%であり、一層好ましくは65〜75質量%であり、より一層好ましくは70〜75質量%である。
【0041】
原料として、ポテトフレーク(水分含量3〜15質量%)を使用する場合、その含有量は生地全量に対して、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは5〜40質量%であり、さらに好ましくは5〜30質量%であり、特に好ましくは5〜25質量%であり、一層好ましくは5〜21質量%であり、より一層好ましくは10〜20質量%であり、さらに一層好ましくは13〜17質量%である。
【0042】
ポテトスナック生地には、ジャガイモ原料由来の食物繊維以外の食物繊維(以下、単に「食物繊維」という)を含むことが好ましい。食物繊維としては、水溶性食物繊維及び/又は不溶性食物繊維を用いることができる。
【0043】
水溶性食物繊維としては、イソマルトデキストリンが例示できる。
不溶性食物繊維としては、サトウキビ由来食物繊維が例示できる。
【0044】
食物繊維としては、市販のものを使用することができ、例えば、「ファイバリクサ(イソマルトデキストリン、株式会社林原製)」、及び「ファイトセル(サトウキビ由来食物繊維、ユニテックフーズ株式会社製)」等が例示できる。
【0045】
ポテトスナック生地全量に対する食物繊維の含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、特に好ましくは6質量%以上である。
また、ポテトスナック生地全量に対する食物繊維の含有量は、好ましくは11質量%以下であり、より好ましくは9質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以下である。
【0046】
食物繊維を2種以上含む場合、ポテトスナック生地全量に対する食物繊維全量が、上述した好ましい含有量となるように調製することが好ましい。
【0047】
また、食物繊維の含有量は、固形分換算で前記ジャガイモ原料10質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは1〜5質量部、特に好ましくは1〜3質量部である。
【0048】
ポテトスナック生地には、トレハロースを含むことが好ましい。トレハロースを含むことで、焼成後のポテトスナックにおけるチェッキング(表面等にできる浅い割れ)を防止することができる。
【0049】
ポテトスナック生地全量に対するトレハロースの含有量は、好ましくは0.5〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%であり、さらに好ましくは3〜5%質量である。
【0050】
ポテトスナック生地は、焼成後のスナック菓子における油脂含有量が20質量%以下となるように調製することが好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下となるように調製する。
【0051】
生地は、焼成により水分が抜けていくため、生地中の水分量を計算、又は測定し、目的とする焼成後の水分量を決定することで、焼成後の油脂含量が特定の数値範囲内となるように生地を調製することができる。
【0052】
ポテトスナックの焼成後の水分量は、9質量%以下とすることが好ましく、7質量%以下とすることがより好ましく、5質量%以下とすることがさらに好ましく、3質量%以下とすることが特に好ましい。
【0053】
ポテトスナック生地には、少量の油脂を添加してもよい。油脂は、液体油であることが好ましい。液体油としては、オリーブオイル等が例示できる。
油脂は、生地全体中の0.5〜6質量%加えることが好ましく、0.5〜2質量%加えることがより好ましく、0.5〜1.5質量%加えることがさらに好ましい。少量の油脂を添加することで、生地のモールドに対する離型性が向上する。
【0054】
ポテトスナック生地には、上述した以外に、ポテトスナックに通常用いられる調味料、香料、乳化剤等の成分を任意に加えることができる。
【0055】
ポテトスナック生地の水分量は特に限定されないが、好ましくは30〜75質量%であり、より好ましくは40〜75質量%であり、さらに好ましくは50〜70質量%であり、特に好ましくは50〜60質量%である。
【0056】
ポテトスナック生地は、上述した成分を、常法により混合及び撹拌することで製造できる。混合及び撹拌は、ニーダー、ホモジナイザー等を用いて行うことができる。
【0057】
また、ポテトスナック生地は、水抜けを改善するために、ピンホールを備えていてもよい。
【0058】
(4)ノンフライ薄片状ポテトスナック
本発明により製造されるノンフライ薄片状ポテトスナックは、ジャガイモをフレーク状や粉末状にしたものを成形して製造された、いわゆる成形ポテトスナックである。
【0059】
ノンフライ薄片状ポテトスナックの全体形状は、平らの、いわゆるフラットタイプであっても、反っている、いわゆる積重ね包装タイプであってもよい。また、ノンフライ薄片状ポテトスナックの平面形状は、平であっても、波型であっても、気泡による凹凸を備えていてもよい。
【0060】
ポテトスナックの厚さは、食感、及び風味の観点から、好ましくは0.5〜5mmであり、より好ましくは0.5〜3mmであり、さらに好ましくは0.5〜2mmであり、特に好ましくは1.0〜1.5mmである。
【0061】
ノンフライ薄片状ポテトスナックの水分量は、好ましくは9質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以下である。
水分量を少なくすることで、よりパリパリとした、ポテトスナックとして好ましい食感となる。
【0062】
ノンフライ薄片状ポテトスナックの油脂含量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。
【実施例】
【0063】
(試験例1)工程適性の評価
表1に記載の組成に基いてポテトスナック生地を調製し、当該ポテトスナック生地を、モールド深さ1.5mmのロータリーモルダーを用いて、薄片状に成形を試みた。次いで、成形したポテトスナック生地を、オーブンに入れ、200℃で5分間一次焼成し、120℃で5分間二次焼成し、薄片状ポテトスナックを製造した。
ポテトスナック生地の工程適性について、表2に記載の評価基準に従い、それぞれ評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表1の結果から、ジャガイモ原料を含むポテトスナック生地を、ロータリーモールドにより成形することで、ノンフライの薄片状ポテトスナックを製造できることがわかる。
さらに、実施例1〜6のポテトスナックは、何れも低油脂分である。
したがって、本発明の製造方法によれば、油脂含量が5質量%未満のノンフライの低油脂薄片状ポテトスナックを製造できることがわかる。
【0067】
また、工程適性の観点から、ポテトスナック生地中における食物繊維の含有量は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、6質量%以上が特に好ましいことがわかる。
【0068】
(試験例2)食感及び風味の評価
上記実施例2〜6のノンフライ薄片状ポテトスナックについて、本発明の技術分野に精通している研究者が試食し、表3及び表4に記載の評価基準に従い、食感及び風味を評価した。結果を表5に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
表5の結果より、食感及び風味の観点から、ポテトスナック生地中の食物繊維の含有量は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、6質量%以上が特に好ましいことがわかる。また、食感及び風味の観点から食物繊維の含有量は、11質量%以下が、好ましく、9質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましく、7質量%以下が特に好ましいことがわかる。
【0073】
(試験例3)ジャガイモ原料の配合比の影響
次に、上記実施例4から、裏ごし芋及びポテトフレークの質量比を変えたポテトスナック生地を調製し、試験例1に記載の方法に基いて、薄片状ポテトスナックを製造した(実施例7〜10)。なお、実施例7〜10においては加水を行い、生地中の水分量を同等に調製した。
実施例7〜10について、試験例1及び試験例2と同様に、工程適性、食感及び風味を評価した。結果を表6に示す。
【0074】
【表6】
【0075】
表6の結果から、ジャガイモ原料として裏ごし芋と、ポテトフレークとの質量比を変えて薄片状ポテトスナックを製造しても、工程適性、食感、及び風味の何れも問題ないレベルであることがわかる。
【0076】
工程適性の観点から、固形分換算で裏ごし芋10質量部に対して、ポテトフレークが4質量部以上であることが好ましく、8質量部以上がより好ましいことがわかる。
【0077】
食感及び風味の観点から、固形分換算で裏ごし芋10質量部に対して、ポテトフレークが40質量部未満であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましいことがわかる。
【0078】
(試験例4)焼成方法の影響
表7に記載の組成に従い、ポテトスナック生地を調製し、実施例12、15、16及び18については、試験例1と同様の方法により薄片状ポテトスナックを製造し、実施例11、13、14及び17については、焼成工程において二次焼成を行わず、一次焼成のみで焼成工程を終えた。なお、実施例13と14、及び実施例15と16は、それぞれduplicateで行った処理である。
実施例11〜18について、試験例1と同様に工程適性、食感及び風味を評価した。結果を表7に示す。
【0079】
【表7】
【0080】
表7の結果から、焼成工程において、一次焼成及び二次焼成を行った実施例15、16及び18は、一次焼成のみで焼成工程を終えた実施例13、14、及び17と比して、食感の評価が向上する傾向にあることがわかる。
なお、実施例12は、ぼそぼそとした食感であったが、実施例11と比して、ぼそぼそとした食感は改善されていた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、低油脂の薄片状ポテトスナックの新たな製法として応用できる。

【要約】
【課題】本発明は、ジャガイモの風味を有しつつ、油脂量が低いノンフライ薄片状ポテトスナックを製造可能な方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
ジャガイモ原料を含むポテトスナック生地を成形する成形工程、及び成形後の前記ポテトスナック生地を焼成する焼成工程を備える、ノンフライの薄片状成形ポテトスナックの製造方法であって、
前記成形工程が、ロータリーモールドによる成形を含むことを特徴とする、ポテトスナックの製造方法。
【選択図】なし