(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<多層シート>
当該多層シートは、
図1に示すように、熱可塑性樹脂を主成分とする第1フィルム1と、この第1フィルム1の一方の面側(裏面側)に積層され、ビニルアルコール系重合体(以下、ビニルアルコール系重合体を「PVA」と略記することがある。)を主成分とする第2フィルム2と、この第2フィルム2の一方の面(裏面)に積層される無機蒸着層3とを備える。また、当該多層シートは上記無機蒸着層3の一方の面側(裏面側)に積層される第3フィルム4をさらに備えるとよい。なお、本実施形態において「表面側」とは、多層シート及び外被材の厚さ方向のうち、第1フィルム1が積層される側を指すものであり、本実施形態の表裏が多層シート及び外被材の使用状態における表裏を決定するものではない。
【0017】
[第1フィルム]
第1フィルム1は、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂層1aを有する。また、第1フィルム1はこの樹脂層1aに積層される蒸着層1bをさらに有するとよい。
【0018】
上記熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリアリレート、再生セルロース、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、アイオノマー樹脂等が挙げられる。
【0019】
上記ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。上記ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合体等が挙げられる。上記ポリアミドとしては、例えばナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12等が挙げられる。
【0020】
熱可塑性樹脂としては、これらの中で、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6又はナイロン−66が好ましい。
【0021】
第1フィルム1の平均厚みの上限としては、200μmが好ましく、100μmがより好ましく、60μmがさらに好ましい。一方、上記平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、5μmがより好ましく、7μmがさらに好ましい。上記平均厚みが上記上限を超えると、当該多層シートの厚みが過度に増加するおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記下限未満の場合、第1フィルム1の機械的強度や加工性が低下するおそれがある。
【0022】
第1フィルム1の25℃の貯蔵弾性率の上限としては、10000MPaが好ましく、8000MPaがより好ましい。一方、上記貯蔵弾性率の下限としては、1000MPaが好ましく、2000MPaがより好ましい。
【0023】
第1フィルム1の100℃の貯蔵弾性率の上限としては、10000MPaが好ましく、8000MPaがより好ましい。一方、上記貯蔵弾性率の下限としては、600MPaが好ましく、1200MPaがより好ましい。
【0024】
第1フィルム1の25℃及び100℃の貯蔵弾性率が上記上限を超えると、第1フィルム1の加工性が低下するおそれがある。逆に、上記貯蔵弾性率が上記下限未満の場合、第1フィルム1の強度が低下するおそれがある。ここで、「貯蔵弾性率」とは、JIS−K7244−4(1999)に準拠し、動的粘弾性測定装置を用い測定される値である。
【0025】
第1フィルム1の25℃の貯蔵弾性率に対する100℃の貯蔵弾性率の比の下限としては、60%であり、62%が好ましい。一方、上記比の上限としては、90%が好ましく、85%がより好ましい。上記比が上記下限未満の場合、高温条件下におけるガスバリア性の低減を十分に抑制できないおそれがある。逆に、上記比が上記上限を超えると、第1フィルム1の加工性が低下するおそれがある。
【0026】
第1フィルム1の25℃の損失係数の上限としては、0.1が好ましく、0.05がより好ましい。一方、上記損失係数の下限としては、0.001が好ましく、0.005がより好ましい。
【0027】
第1フィルム1の100℃の損失係数の上限としては、0.15が好ましく、0.1がより好ましい。一方、上記損失係数の下限としては、0.01が好ましく、0.03がより好ましい。
【0028】
上記損失係数が上記上限を超えると、高温条件下におけるガスバリア性の低減を十分に抑制できないおそれがある。逆に、上記損失係数が上記下限未満の場合、第1フィルム1の加工性が低下するおそれがある。ここで「損失係数」とは、JIS−K7244−4(1999)に準拠し、動的粘弾性測定装置を用い測定される値である。
【0029】
第1フィルム1の樹脂層1aは、延伸フィルムでもよく、無延伸フィルムでもよいが、当該多層シートの印刷、ラミネート等の加工適性を向上させる点から、延伸フィルムが好ましく、二軸延伸フィルムがより好ましい。この二軸延伸フィルムの製造方法としては、例えば同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チューブラ延伸法等が挙げられる。
【0030】
上記蒸着層1bの主成分としては、例えば金属、金属酸化物又は非金属が挙げられる。この金属等としては、例えば後述する無機蒸着層3と同様のものが挙げられ、これらの中でアルミニウムが好ましい。蒸着層1bは、樹脂層1aの裏面に上記金属等を蒸着することで積層できる。
【0031】
蒸着層1bの平均厚みの上限としては、200nmが好ましく、180nmがより好ましく、150nmがさらに好ましい。一方、上記平均厚みの下限としては、20nmが好ましく、30nmがより好ましい。上記平均厚みが上記上限を超えると、クラック等が生じ易くなるおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記下限未満の場合、第1フィルム1のガスバリア性が向上し難くなるおそれがある。
【0032】
[第2フィルム]
第2フィルム2は、上記第1フィルム1の裏面側に積層され、ビニルアルコール系重合体を主成分とする。
【0033】
PVAは、ビニルエステル単位をケン化することで得られるビニルアルコール単位(−CH
2−CHOH−)を含有するものであればよく、例えばポリビニルアルコール、エチレンービニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記することがある。)が挙げられる。上記ポリビニルアルコールとしては、例えば未変性ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールが挙げられる。PVAは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
上記未変性ポリビニルアルコールは、例えば酢酸ビニルの単独重合体をケン化することで製造できる。上記変性ポリビニルアルコールは、例えば酢酸ビニル及び酢酸ビニルと共重合可能な不飽和単量体を共重合させた後にケン化することで製造できる。また、酢酸ビニルを単独で重合した後に変性してもよい。なお、変性ポリビニルアルコールにおける変性量としては通常10モル%未満である。
【0035】
上記酢酸ビニルと共重合可能な不飽和単量体としては、例えばオレフィン、ヒドロキシ基含有α−オレフィン及びそのアシル化物等の誘導体、不飽和酸及びその塩、モノエステル、ジアルキルエステル、ニトリル化合物、アミド化合物、オレフィンスルホン酸及びその塩、ビニル化合物、置換酢酸ビニル、塩化ビニリデン、1,4一ジアセトキシー2一ブテン、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0036】
酢酸ビニルを単独で重合した後に変性する方法としては、ポリビニルアルコールをアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化又はオキシアルキレン化する方法等が挙げられる。
【0037】
ポリビニルアルコールの重合度の上限としては、4000が好ましく、2600がより好ましい。一方、上記重合度の下限としては、1100が好ましく、1200がより好ましい。上記重合度が上記上限を超えると、第2フィルム2の製膜時及び延伸時の加工性が低下するおそれがある。逆に、上記重合度が上記下限未満の場合、第2フィルム2の機械的強度が低下するおそれがある。
【0038】
ポリビニルアルコールのケン化度の上限としては、100モル%が好ましく、99.99モル%がより好ましい。一方、上記ケン化度の下限としては、90モル%が好ましく、95モル%がより好ましく、99モル%がさらに好ましい。ケン化度が上記下限未満の場合、第2フィルム2の耐水性が低下するおそれがある。
【0039】
上記EVOHは通常10〜60モル%のエチレンとビニルエステルとの共重合体をケン化して得られる。上記ビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステル等が挙げられる。
【0040】
また、EVOHは共重合成分としてビニルシラン化合物を含有してもよい。このようにEVOHがビニルシラン化合物を含有することで、加熱溶融時の安定性が向上する。上記ビニルシラン化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β一メトキシーエトキシ)シラン、γ一メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等が挙げられ、ビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランが好ましい。上記ビニルシラン化合物の含有量としては、0.0002モル%以上0.2モル%以下が好ましい。
【0041】
さらに、本発明の目的が阻害されない範囲で、EVOHが他の共重合性単量体を含有してもよい。このような共重合性単量体としては、例えばプロピレン、ブチレン;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸又はそのエステル;N一ビニルピロリドン等のビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0042】
EVOHのエチレン含有量の上限としては、60モル%が好ましく、55モル%がより好ましく、50モル%がさらに好ましい。一方、上記エチレン含有量の下限としては、10モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましい。上記エチレン含有量が上記上限を超えると、第2フィルム2のガスバリア性が低下するおそれがある。逆に、上記エチレン含有量が上記下限未満の場合、第2フィルム2の溶融成形性が低下するおそれがある。ここで、EVOHのエチレン含有量は、核磁気共鳴(NMR)法により求められる値である。
【0043】
EVOHのケン化度の上限としては、100モル%が好ましく、99.99モル%がより好ましい。一方、上記ケン化度の下限としては、90モル%が好ましく、95モル%がより好ましく、99モル%がさらに好ましい。上記ケン化度が上記下限未満の場合、高湿度下での第2フィルム2のガスバリア性が低下する傾向がある。
【0044】
EVOHは、熱安定性や粘度調整の観点から酸、金属塩等の添加物を含有しているとよい。上記添加物としては、例えばアルカリ金属塩、カルボン酸及び/又はその塩、リン酸化合物、ホウ素化合物等が挙げられる。
【0045】
第2フィルム2の平均厚みの上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましく、40μmがさらに好ましい。一方、上記平均厚みの下限としては、5μmが好ましく、8μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。上記平均厚みが上記上限を超えると、当該多層シートの厚みが過度に増加するおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記下限未満の場合、第2フィルム2の機械的強度や加工性が低下するおそれがある。
【0046】
第2フィルム2としては、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム等が挙げられ、第2フィルム2のガスバリア性向上の観点から一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムが好ましく、二軸延伸フィルムがより好ましい。この一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムの流れ方向(MD方向)の延伸倍率としては、2.5倍以上5倍以下が好ましい。このような延伸処理方法としては、一軸延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が挙げられる。
【0047】
第2フィルム2の製膜方法としては特に限定されず、例えばドラム、エンドレスベルト等の金属面上にPVA溶液を流延してフィルム形成する流延式成形法、押出機により溶融押出する溶融成形法などが挙げられる。
【0048】
[無機蒸着層]
無機蒸着層3は、上記第2フィルム2の裏面側に積層される。また、無機蒸着層3としては、酸素ガスや水蒸気に対するバリア性を有するものが好ましい。
【0049】
無機蒸着層3の主成分としては、アルミニウム等の金属、無機酸化物、無機窒化物、炭化ケイ素等の無機炭化物、これらの混合物などが挙げられる。上記無機酸化物としては、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。上記無機窒化物としては、例えば窒化ケイ素、炭窒化ケイ素等が挙げられる。無機蒸着層3の主成分としては、酸素ガスや水蒸気に対するバリア性が優れる観点からアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム又は窒化ケイ素が好ましい。
【0050】
無機蒸着層3の平均厚みの下限としては、30nmであり、40nmが好ましく、45nmがより好ましい。一方、上記平均厚みの上限としては、100nmであり、90nmが好ましく、70nmがより好ましい。上記平均厚みが上記下限未満の場合、無機蒸着層3のバリア性が低下するおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記上限を超えると、当該多層シートを変形させる際に無機蒸着層3のバリア性が低下しやすくなるおそれがある。
【0051】
第2フィルム2と無機蒸着層3との密着強度の下限としては、0.98N/15mmが好ましく、1.0N/15mmがより好ましく、1.1N/15mmがさらに好ましい。一方、上記密着強度の上限としては、3.0N/15mmが好ましく、2.5N/mmがより好ましい。上記密着強度が上記下限未満の場合、当該多層シートを変形させる際に無機蒸着層3が第2フィルム2から剥離し易くなるおそれがある。逆に、上記密着強度が上記上限を超えると、当該多層シートを備える真空断熱材等において、無機蒸着層3が破損し易くなるおそれがある。ここで「第2フィルム2と無機蒸着層3との密着強度」とは、T型剥離強度測定装置(島津製作所社の「オートグラフAGS−H」)を用い、剥離速度250mm/分、温度23℃、湿度50%RHの条件下で測定される幅15mmあたりの接着力である。
【0052】
[第3フィルム]
第3フィルム4は、無機蒸着層3の裏面側に積層され、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂層4aと、この樹脂層に積層される蒸着層4bとを有する。この熱可塑性樹脂、蒸着層4bの主成分としては、例えば上記第1フィルム1において挙げたものと同様の物質を使用できる。また、第3フィルム4の平均厚みは、第1フィルム1と同様のものとできる。
【0053】
当該多層シートの100℃、0%RHにおける酸素透過量の上限としては、1.6mL/(m
2・day・atm)が好ましく、1.5mL/(m
2・day・atm)がより好ましい。一方、上記酸素透過量の下限としては、0.1mL/(m
2・day・atm)が好ましく、0.3mL/(m
2・day・atm)がより好ましい。上記酸素透過量が上記上限を超えると、当該多層シートのガスバリア性が低下するおそれがある。逆に、上記酸素透過量が上記下限未満の場合、当該多層シートの製造コストが増大するおそれがある。
【0054】
[多層シートの製造方法]
当該多層シートの製造方法は、上記第1フィルム1の一方の面側(裏面側)に第2フィルム2を積層する工程(以下、「フィルム積層工程」と略記することがある。)、及び無機物の蒸着により第2フィルム2の一方の面(裏面)に無機蒸着層3を形成する工程(以下、「蒸着工程」と略記することがある。)を備える。
【0055】
(フィルム積層工程)
本工程では、第1フィルム1の裏面側に第2フィルム2を積層する。この積層方法としては、例えば第1フィルム1の裏面側にPVAを主成分とする塗液を塗工して塗膜を形成した後塗膜を乾燥させる方法、第2フィルム2の表面側に熱可塑性樹脂を主成分とする塗液を塗工して塗膜を形成した後塗膜を乾燥させる方法、第1フィルム1と第2フィルム2とを製造した後に接着剤で貼り合わせる方法、第1フィルム1と第2フィルム2とを製造した後に熱プレスにより貼り合わせる方法、第1フィルム1と第2フィルム2とを共押出する方法等が挙げられる。
【0056】
(蒸着工程)
本工程では、第2フィルム2の裏面側に無機蒸着層3を形成する。具体的には、第2フィルム2の裏面側に、上記無機蒸着層3の主成分として例示した金属等を蒸着等する。
【0057】
無機蒸着層3の形成方法としては、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)等が挙げられる。これらの中で、生産性の観点から真空蒸着法が好ましい。また、真空蒸着法における加熱方式としては、例えば電子線加熱方式、抵抗加熱方式、誘導加熱方式等が挙げられる。また無機蒸着層3と第2フィルム2との密着強度を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いてもよい。さらに、無機蒸着層3の透明性を上げるため、蒸着の際に酸素ガスなどを反応させる反応蒸着法を採用してもよい。
【0058】
蒸着工程は、積層工程の前に行ってもよく、積層工程の後に行ってもよいが、無機蒸着による多層シートの熱劣化を低減する観点及び無機蒸着層3と第2フィルム2との密着強度を向上させる観点から、積層工程の後に行うことが好ましい。
【0059】
<外被材>
当該外被材は、当該多層シートを備える。当該外被材は当該多層シートのみからなってもよいが、さらにその他の層を備えてもよい。このように当該外被材がその他の層を備えることで、当該外被材にヒートシール性を付与したり、当該外被材のバリア性や力学的物性をより向上することができる。また、当該外被材は上記その他の層と当該多層シートとを接着するアンカーコート層や接着層をさらに備えてもよい。
【0060】
上記その他の層としては、例えば、熱可塑性樹脂層、熱硬化性樹脂層、布帛や紙等の繊維層、木材層、ガラス層、金属層などが挙げられる。これらの中で、熱可塑性樹脂層が好ましく、ポリオレフィン層、ポリエステル層、ポリアミド層、ビニルアルコール重合体層がより好ましく、ポリプロピレン層、ポリエチレン層、ポリエチレンテレフタレート層、EVOH層がさらに好ましい。その他の層がこれらの層であることで、当該外被層にヒートシール性を付与すると共に、当該外被材の力学的物性をより向上できる。
【0061】
<真空断熱材>
当該真空断熱材は、芯材と、この芯材を真空包装する当該外被材とを備える。また、芯材と当該外被材とを接着する接着層をさらに備えてもよい。
【0062】
[芯材]
上記芯材の主成分は、断熱性を有するものであれば特に制限されず、例えばパーライト粉末、シリカ粉末、沈降シリカ粉末、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、グラスファイバー、ロックウール、スチレンフォームやウレタンフォーム等の発泡樹脂などが挙げられる。また、芯材の形状としては、例えばフィルム状、中空の容器状、ハニカム状等が挙げられる。また、必要に応じて、水蒸気、ガス等を吸着するゲッター材を芯材に含んでもよい。
【0063】
当該真空断熱材では、外被材が芯材を真空包装するため、芯材と外被材との間の内部空間は真空状態である。ここでいう真空状態とは必ずしも絶対的な真空状態を意味せず、内部空間の圧力が大気圧より充分に低いことを意味する。上記内部空間の圧力の上限としては、2kPaが好ましく、200Paがより好ましく、20Paがさらに好ましい。一方、上記内部空間の圧力の下限としては、0.001Paが好ましい。上記圧力が上記上限を超えると、当該真空断熱材の断熱性が低下するおそれがある。逆に、上記圧力が上記下限未満の場合、当該真空断熱材の製造コストが増大するおそれがある。
【0064】
当該真空断熱材の製造直後の熱伝導率の上限としては、3mW/mKが好ましく、2.5mW/mKがより好ましい。一方、上記製造直後の熱伝導率の下限としては、1mW/mKが好ましく、1.2mW/mKがより好ましい。上記熱伝導率が上記上限を超えると、当該真空断熱材の断熱性能が不十分となるおそれがある。逆に、上記熱伝導率が上記下限未満の場合、当該真空断熱材の製造コストが増大するおそれがある。ここで、「熱伝導率」とは、JIS−A1412−1(1999)に準拠し測定される値である。
【0065】
当該真空断熱材を100℃の条件下で50日間保管した後の熱伝導率の上限としては、19mW/mKが好ましく、18mW/mKがより好ましい。一方、上記真空断熱材を100℃の条件下で50日間保管した後の熱伝導率の下限としては、3mW/mKが好ましく、5mW/mKがより好ましい。上記熱伝導率が上記上限を超えると、当該真空断熱材が高温環境下での使用に適さないおそれがある。逆に、上記熱伝導率が上記下限未満の場合、当該真空断熱材の製造コストが増大するおそれがある。
【0066】
当該真空断熱材を100℃の条件下で50日間保管した後の熱伝導率の上限としては、保管前の熱伝導率に対し10倍が好ましく、9.5倍がより好ましい。一方、上記真空断熱材を100℃の条件下で50日間保管した後の熱伝導率の下限としては、保管前の熱伝導率に対し1.5倍が好ましく、2倍がより好ましい。上記熱伝導率が上記上限を超えると、当該真空断熱材が高温環境下での使用に適さないおそれがある。逆に、上記熱伝導率が上記下限未満の場合、当該真空断熱材の製造コストが増大するおそれがある。
【0067】
[真空断熱材の製造方法]
当該真空断熱材の製造方法としては、例えば2枚の外被材で芯材を狭持するか、1枚の外被材を折り曲げ、その内側に芯材を狭持する工程、外被材の外周部のうち排気口となる部分以外をヒートシールする工程、及び排気口により当該断熱材の内部空間を真空状態とし、その状態で排気口をヒートシールして閉じる密封工程を備えるものが挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。なお、実施例中、第2フィルム及び無機蒸着層を備える積層体の「表面」とは第2フィルム側の面を意味し、「裏面」とは無機蒸着層側の面を意味する。
【0069】
<多層シートの製造>
[第1フィルム]
第1フィルムとして、以下に示すフィルムを用いた。
A−1:平均厚み12μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社の「ルミラー(登録商標)」)
A−2:平均厚み12μmのアルミニウム蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レフィルム加工社の「VM−PET 1510」、アルミニウム蒸着層の平均厚み50nm)
A−3:平均厚み12μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社の「ルミラー(登録商標)」)に、蒸着層の平均厚みが100nmとなるようにアルミニウム蒸着層を形成したアルミニウム蒸着延伸ポリエチレンレテレフタレートフィルム
A−4:平均厚み15μmの延伸ナイロンフィルム(ユニチカ社の「エンブレムON(登録商標)」)
【0070】
[第2フィルム]
第2フィルムとして、以下に示すフィルムを用いた。
B−1:平均厚み12μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム(クラレ社の「EF−XL」)
B−2:平均厚み12μmのポリビニルアルコールフィルム(日本合成化学社の「ボブロンEX(登録商標)」)
【0071】
なお、各フィルムの平均厚みは、多層シートを縦20cm、横20cmに切断し、厚み測定器(PEACOCK社の「UPRIGHT DIAL GAUGE、No.25」)にて9箇所を測定した値を平均して求めた。
【0072】
[実施例1]
第1フィルムとしての(A−1)の裏面側に、ドライラミネート用接着剤(大日本インキ化学工業社の「LX−500」、大日本インキ化学工業社の「KR−90S」及び酢酸エチルを質量比で18:1.2:28.3となるように混合したもの)を固形分が3.0g/m
2となるように塗布し、80℃で溶剤を蒸発させた後、第2フィルムとしての(B−1)を貼り合わせ、23℃で5日間静置した。次いで、第2フィルム(B−1)の裏面側に、バッチ式蒸着設備(日本真空技術社の「EWA−105」)を用い、第2フィルム(B−1)の表面温度を38℃としてアルミニウムを平均厚みが30nmとなるように蒸着し、無機蒸着層を形成することで多層シートを得た。
【0073】
[実施例2〜10及び比較例1〜9]
用いたフィルムの種類並びに無機蒸着層の成分及び平均厚みを表1の通りとした他は、実施例1と同様にして多層シートを得た。なお、表1中、「−」はその成分を備えないことを示す。
【0074】
実施例4及び比較例4では、ケイ素酸化物により無機蒸着層を以下の方法により形成した。第2フィルム(B−1)の裏面に、温度40℃、圧力0.01Paの条件下、マイクロ波を用いたアルゴンガスプラズマによりプラズマ処理を行った。続いて同条件下でアルゴンガス、シラン及び酸素の混合ガスにマイクロ波を照射してケイ素酸化物プラズマを発生させ、プラズマ化学蒸着により第2フィルム(B−1)の裏面に無機蒸着層としての平均厚み50nmのケイ素酸化物層を形成した。このケイ素酸化物層の組成はケイ素原子1モルに対し酸素原子1.8モルであった。
【0075】
また、実施例5及び比較例5では、アルミニウム酸化物により無機蒸着層を以下の方法により形成した。第2フィルム(B−1)の裏面をコロナ放電処理後、第1フィルム(A−1)と第2フィルム(B−1)との積層体を巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着した。アルミニウムを蒸着源とし、酸素ガスを供給しながら、酸素ガス導入後の蒸着チャンバー内の真空度を0.02Pa、巻き取りチャンバー内の真空度を2Paとし、電子ビーム電力(25kW)にてエレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法を行った。これにより、第2フィルム(B−1)の裏面に無機蒸着層としての平均厚み50nmのアルミニウム酸化物を形成した。
【0076】
さらに、実施例6及び10並びに比較例7では、第1フィルムとしてアルミニウム蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(A−2)を用い、実施例7では、第1フィルムとしてアルミニウム蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(A−3)を用いた。これらのフィルムにおけるアルミニウムが蒸着された側の面が裏面となるように第2フィルム(B−1)を積層した。
【0077】
また、実施例8では、第2フィルムとして(B−2)を用い、比較例8では、第1フィルムとして(B−1)を用い、比較例9では、第1フィルムとして(A−4)を用いた。
【0078】
さらに、実施例9及び比較例6では、無機蒸着層の平均厚みを表1の通りとした他は実施例1と同様に多層シートを形成した後、無機蒸着層の裏面にドライラミネート用接着剤を塗布し、第3フィルムとして(A−1)を用い、この(A−1)を無機蒸着層にさらに貼り合わせ、裏面側に第3フィルムを備える多層シートを得た。このドライラミネート用接着剤の組成及び貼り合わせ方法は、第1フィルムと第2フィルムとの貼り合わせにおいて用いたものと同様である。
【0079】
また、実施例10及び比較例7では、無機蒸着層の平均厚みを表1の通りとした他は実施例1と同様に多層シートを形成した後、無機蒸着層の裏面にドライラミネート用接着剤を塗布し、第3フィルムとして(A−2)を用い、この(A−2)のアルミニウムが蒸着された側の面と無機蒸着層とをさらに貼り合わせ、裏面側に第3フィルムを備える多層シートを得た。このドライラミネート用接着剤の組成及び貼り合わせ方法は、第1フィルムと第2フィルムとの貼り合わせにおいて用いたものと同様である。
【0080】
<評価>
得られた多層シート等の評価は、以下の方法により行った。
【0081】
[第1フィルムの貯蔵弾性率及び損失係数]
第1フィルムの貯蔵弾性率及び損失係数は、動的粘弾性測定装置(UBM社の「Rheogel−E4000」)を用い測定した。第1フィルムを縦30mm、横5mmに切断し、引張りモード正弦波で一定の周波数(10Hz)で、温度を10℃/分で昇温させ、0℃から120℃までの測定を行った。この測定結果に基づき、25℃と100℃との貯蔵弾性率E’
25及びE’
100並びに損失係数tanδ
25及びtanδ
100を求めた。
【0082】
[無機蒸着層の平均厚み]
多層シートをミクロトームでカットし断面を露出させた後、この断面を走査型電子顕微鏡(エス・アイ・アイナノテクノロジー社の「ZEISS ULTRA 55」)の反射電子検出器を用いて測定することで無機蒸着層の平均厚みを測定した。
【0083】
【表1】
【0084】
<外被材の製造>
[実施例1〜8、比較例8及び比較例9]
多層シートの裏面にドライラミネート用接着剤を塗布し、外被材を構成するその他の層として(A−2)を用い、この(A−2)のアルミニウムが蒸着された側の面と無機蒸着層とを貼り合わせた。次いで、多層シートの表面にドライラミネート用接着剤を塗布し、平均厚み50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、三井化学東セロ社の「RXC−11」)を貼り合わせ、さらに23℃で5日間静置し外被材を得た。このドライラミネート用接着剤の組成及び貼り合わせ方法は、第1フィルムと第2フィルムとの貼り合わせにおいて用いたものと同様である。
【0085】
[実施例9、実施例10、比較例6及び比較例7]
多層シートの表面にドライラミネート用接着剤を塗布し、平均厚み50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、三井化学東セロ社の「RXC−11」)を貼り合わせ、さらに23℃で5日間静置し外被材を得た。このドライラミネート用接着剤の組成及び貼り合わせ方法は、第1フィルムと第2フィルムとの貼り合わせにおいて用いたものと同様である。
【0086】
[比較例1〜5]
多層シートの裏面にドライラミネート用接着剤を塗布し、外被材を構成するその他の層として(A−2)を用い、この(A−2)のアルミニウムが蒸着された側の面と無機蒸着層とを貼り合わせた。その後、上記(A−2)の裏面側にドライラミネート用接着剤を塗布し、さらに別のその他の層として(A−4)を用い、この(A−4)を上記(A−2)の裏面側にさらに貼り合わせた。次いで、多層シートの表面にドライラミネート用接着剤を塗布し、平均厚み50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、三井化学東セロ社の「RXC−11」)を貼り合わせ、さらに23℃で5日間静置し外被材を得た。これらのドライラミネート用接着剤の組成及び貼り合わせ方法は、第1フィルムと第2フィルムとの貼り合わせにおいて用いたものと同様である。
【0087】
<真空断熱材の製造>
2枚の外被材をCPP層が内側となるように対向させ、この外被材間に芯材としてのグラスファイバーを配設した。その後、真空度0.5Paの条件下でヒートシールすることにより芯材及び外被材を封止し、真空断熱材を得た。この真空断熱材の平均幅及び平均長さは共に60cmであり、平均厚みは2cmであった。
【0088】
<評価>
実施例及び比較例の多層シートの外観及び酸素透過量、外被材の密着強度、並びに真空断熱材の熱伝導率を表2に示す。表2中、「0日後の熱伝導率」は真空断熱材の製造直後の熱伝導率を示し、「50日後の熱伝導率」は100℃の条件下で50日保管した後の真空断熱材の熱伝導率を示す。
【0089】
[多層シートの外観]
多層シート(全長4000m、幅1m)をフィルム巻取機にロール間距離50cmで水平に展開して装荷し、巻取り張力を5kg/mとして巻き取った。多層シートを巻き取る際に、多層シートが幅方向に5cm以上変形し、かつ多層シートの厚み方向に1cm以上変形している部分を局部的なタルミとし、以下の基準により評価した。
A:局部的なタルミがまったく認められない。
B:局部的なタルミが1箇所認められる。
C:局部的なタルミが2箇所以上認められる。
【0090】
[酸素透過量(OTR)]
酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製MOCON OX−TRAN2/21)を用いて、100℃、0%RH条件下で、裏面側がキャリアガス側に向くように多層シートを装着して、酸素圧1気圧、キャリアガス圧力1気圧の条件下で酸素透過量(単位:mL/(m
2・day・atm))を測定した。
【0091】
[第2フィルムと無機蒸着層との密着強度]
外被材の第2フィルムと無機蒸着層との間を一部剥離させた後、幅15mm、長さ150mmの試験片を成形した。この試験片について、T型剥離強度測定装置(島津製作所社の「オートグラフAGS−H」)を用い、剥離速度250mm/分、温度23℃、湿度50%RHの条件下で幅15mmあたりの接着力を5回測定し、平均値を算出した。
【0092】
[熱伝導率]
熱伝導率測定器(英弘精機社の「HC−074/600」)を用い、真空断熱材の一方の側を38℃とし、他方の面側を12℃として測定した。
【0093】
【表2】
【0094】
表2に示すように、実施例の多層シートは外観に優れており、酸素透過量が低かった。また、実施例の外被材は第2フィルムと無機蒸着層との密着強度に優れていた。さらに、実施例の真空断熱材は高温環境下における断熱性の低下が少なかった。一方、比較例の多層シートは外観に劣る傾向があり、酸素透過量が多かった。また、比較例の外被材はPVA(B)と無機蒸着層との接着強度も低かった。加えて、比較例の真空断熱材は高温環境下において断熱性が大きく低下していた。