(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内容物が収容されるとともに内容物の減少に伴いしぼみ変形する可撓性の内容器、および該内容器が内装されており、弾性変形して該内容器との間に外気を吸入するための吸気孔が形成された外容器を有する容器本体と、
内容物を吐出する吐出口が天面部に形成されており、該容器本体の口部に装着される吐出キャップと、
外部と前記吸気孔とを連通する外気導入孔と、
該外気導入孔から導入された外気の流路の近傍に設けられた弁座と、
該弁座に座するリップ部を備えており、該外気導入孔と前記吸気孔との連通およびその遮断を切り替える逆止弁であって、前記外容器と前記内容器との間に外気が吸入される外気吸入時に撓み、前記リップ部が前記弁座から離反した状態となって前記外気導入孔と前記吸気孔とを連通させる逆止弁と、
を備える吐出容器であって、
前記逆止弁は、外気吸入時における異音の発生が抑えられる程度に当該外気吸入時における外気流量を増大させる外気流量増大手段を備えている、吐出容器。
前記外気流量増大手段は、前記逆止弁を、外気流入時における外気の流れ方向上流に向けて凸状に反った断面形状とすることを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の吐出容器。
内容物が収容されるとともに内容物の減少に伴いしぼみ変形する可撓性の内容器、および該内容器が内装されており、弾性変形して該内容器との間に外気を吸入するための吸気孔が形成された外容器を有する容器本体と、
内容物を吐出する吐出口が天面部に形成されており、該容器本体の口部に装着される吐出キャップと、
外部と前記吸気孔とを連通する外気導入孔と、
該外気導入孔から導入された外気の流路の近傍に設けられた弁座と、
該弁座に座するリップ部を備えており、該外気導入孔と前記吸気孔との連通およびその遮断を切り替える逆止弁であって、前記外容器と前記内容器との間に外気が吸入される外気吸入時に撓み、前記リップ部が前記弁座から離反した状態となって前記外気導入孔と前記吸気孔とを連通させる逆止弁と、
を備える吐出容器であって、
前記逆止弁は、前記外気吸入時における当該逆止弁のモード振幅を低減させるモード振幅低減手段を備えている、吐出容器。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る吐出容器について説明する。
【0026】
図1に示すように、吐出容器10は、内容物Mが収容されるとともに内容物Mの減少に伴いしぼみ変形する可撓性に富む内容器11と、内容器11が内装されるとともに弾性変形可能な外容器12とを備える容器本体13、容器本体13の口部13aに装着され、内容物Mを吐出する吐出口14が形成された吐出キャップ15、吐出キャップ15に着脱自在に配設されたオーバーキャップ16等を備えている。
【0027】
ここで、容器本体13は有底筒状に形成され、オーバーキャップ16は有頂筒状に形成され、オーバーキャップ16を吐出キャップ15に装着した被蓋状態において、これら容器本体13およびオーバーキャップ16の各中心軸が共通軸上に位置するように配置されている(
図8等参照)。以下、この共通軸を容器軸Oといい、容器軸O方向に沿ってオーバーキャップ16側を上側、容器本体13の図示しない底部側を下側といい、また容器軸Oに直交する方向を径方向といい、容器軸Oを中心に周回する方向を周方向という。
【0028】
なお、オーバーキャップ16は、ヒンジ部16aによって吐出キャップ15に接続されていてもよい(
図2等参照)。内容物Mを吐出口14から吐出させる際にオーバーキャップ16が邪魔にならないよう、このヒンジ部16aは、吐出口14が下方を向くように吐出容器10を傾けて吐出姿勢にした状態で吐出口14よりも高い位置になるように配置されている。
【0029】
容器本体13は、内容器11が外容器12の内面に剥離可能に積層されたいわゆるデラミボトルとなっている。該容器本体13は、例えば、共押出し成形した二層構造のパリソンをブロー成形することにより成形される。外容器12は、例えばポリエチレン樹脂製やポリプロピレン樹脂製等とされるとともに、内容器11は、例えば外容器12を形成する樹脂に対して相溶性のないポリアミド系の合成樹脂製やエチレンビニルアルコール共重合樹脂製等とされている。
【0030】
容器本体13の口部13aは、上側に位置する上筒部17と、下側に位置し上筒部17よりも大径に形成された下筒部18と、を備える二段筒状に形成されている(
図2等参照)。上筒部17のうち、外容器12で構成された部分(以下、外上筒部という)17aの外周面には雄ねじ部29が形成されている。また、外上筒部17aにおいて、雄ねじ部29より下側に位置する部分には、内容器11との間に外気が吸入される吸気孔19が形成されている(
図3等参照)。雄ねじ部29において吸気孔19の上側に位置する部分には、容器軸O方向に延在する連通溝20が形成されている。
【0031】
外上筒部17aの内周面は円筒面とされ、この内周面に、上筒部17のうち、内容器11で構成された部分(以下、内上筒部という)17bが積層されている(
図2等参照)。内上筒部17bの上端部は、径方向の外側に折り返されて外上筒部17aの開口端上に配置されていてもよい。
【0032】
吐出キャップ15は、容器本体13の口部13aを閉塞する中栓部材21と、該中栓部材21を覆うとともに吐出口14が形成された有頂筒状の本体筒部材23と、を備えている(
図2等参照)。中栓部材21は、外周縁部が容器本体13の口部13aの開口端上に配置された栓本体47と、該栓本体47から立設された連通筒部22と、を備えている。
【0033】
栓本体47は、容器本体13の口部13a内に、該口部13aとの間に隙間をあけて配置された有底筒状の内筒部24と、内筒部24の上端から径方向の外側に向けて突設され、容器本体13の口部13aの開口端上に配置されたフランジ部25と、フランジ部25の外周縁から上方に向けて延設された外筒部26と、内筒部24を径方向の外側から囲繞するようにフランジ部25から下方に向けて延設され、容器本体13の口部13a内に液密に嵌合された中間筒部27と、を備えている(
図2等参照)。これら内筒部24、フランジ部25、外筒部26および中間筒部27は、容器軸Oと同軸に配設されている。また外筒部26の下端部には、径方向に貫通し、かつ下方に向けて開口する外気流通孔28が形成されている。
【0034】
内筒部24の底壁部には、上記の連通筒部22が配設されている。またこの底壁部には、内容器11内および連通筒部22内の双方に開口する貫通孔42が貫設されている。該貫通孔42は、例えば容器軸Oを中心として均等に配置された複数の小孔によって構成されている(
図2等参照)。
【0035】
本体筒部材23は、容器軸Oと同軸に配置された有頂筒状に形成されている。この本体筒部材23の周壁部23aの内周面には、容器本体13の口部13aの雄ねじ部29に螺着された雌ねじ部30が形成されている。また周壁部23aのうち、雌ねじ部30が形成されたねじ部分よりも下側に位置する下端部内には、容器本体13の口部13aにおける下筒部18が気密状態で嵌合され、上記ねじ部分よりも上側に位置する上端部内には、中栓部材21の外筒部26が嵌合されている。
【0036】
吐出キャップ15の天面部31には、内容物Mを吐出する吐出口14が形成されている(
図5等参照)。本実施形態の吐出容器10において、この吐出口14は容器軸Oと同軸となるように形成されているが(
図2等参照)、該容器軸Oからずれた位置に形成されていてもよい。
【0037】
さらに、吐出キャップ15の天面部31には、上方に突出する外気導入用突起33が形成され、該外気導入用突起33に外気導入孔34が形成されている(
図2等参照)。内容物Mが外気導入孔34から吸い込まれるのを回避するため、この外気導入用突起33は、吐出口14から内容物Mを吐出させるために当該吐出容器10を傾けて吐出姿勢にした状態で、当該吐出口14よりも高くなる位置に形成されている(
図2等参照)。
【0038】
例えば本実施形態において、外気導入用突起33は吐出口14とヒンジ部16aとの間に立設するように形成されて、外気導入孔34は、天面部31よりも高くなる位置に該天面部31から空間的距離をおいて配置されている。このため、仮に吐出口14から液だれした内容物Mが吐出キャップ15の外面に付着したとしても、当該液だれした内容物Mが外気導入孔34から吸い込まれにくい。また、外気導入孔34は、吐出口14から内容物Mを吐出させるために当該吐出容器10を傾けて吐出姿勢にした際、上方に開口した状態、より好ましくは外気導入用突起33の鉛直上方向きに開口した状態となるように形成されている(
図2等参照)。
【0039】
上述した外気導入用突起33の具体的形状は特に限定されないが、例えば本実施形態では、吐出キャップ15の径方向(容器軸Oに垂直な方向)の厚みよりも周方向への長さが長い、吐出口14を中心とした円弧に沿って湾曲した形状に形成されている(
図5参照)。このような形状の外気導入用突起33によれば、液だれ等して吐出キャップ15の外面に付着した内容物Mが外気導入孔34に近付くのを阻止して当該外気導入孔34から吸い込まれるのを回避することができる。このような外気導入用突起33は、吐出口14を中心とした円弧に沿って湾曲していることも好ましい。
【0040】
吐出キャップ15には、被蓋状態時のオーバーキャップ16が係合する係合部32が形成されている。例えば本実施形態では、吐出キャップ15の天面部31の周囲に、径方向に僅かに張り出した段部が形成されており、該段部によって、被蓋状態時のオーバーキャップ16が係合する係合部32が形成されている(
図2、
図5等参照)。
【0041】
また、天面部31は、平滑に形成されていることが好ましい。例えば本実施形態の吐出容器10においては、天面部31のうち、吐出口14が形成されている部位と外気導入用突起33が形成されている部位とを除く部分が平滑面とされている。この場合、液だれ等した内容物Mが吐出キャップ15の天面部31に付着したとしても一拭きで拭き取ることができるなど、拭き取りが容易である。
【0042】
天面部31には、下方に向けて延設され、外径が後述する外嵌筒部40の内径と同等とされた受け筒部35が形成されている。さらに天面部31には、内部が上記吐出口14とされた吐出筒36が貫設されている。
【0043】
なお、吐出筒36内には、オーバーキャップ16から下方に向けて延設された内シール筒部(シール部)37が嵌合される(
図1、
図5、
図8等参照)。また、内シール筒部37の周囲には、オーバーキャップ16の裏面から下方へ向けて突設された環状突部38が形成されている(
図5等参照)。
【0044】
さらに、オーバーキャップ16には、当該オーバーキャップ16が吐出キャップ15に装着された状態のとき外気導入孔34を塞ぐ外気導入孔シール部39が形成されている(
図11、
図12参照)。吐出容器10の不使用時や搬送時などにおいてオーバーキャップ16を吐出キャップ15に装着した状態としておけば、この外気導入孔シール部39が、外気導入孔34から内容物Mが不意に吸い込まれることを回避する(
図4、
図8参照)。
【0045】
ここで中栓部材21と本体筒部材23との間には、中栓部材21の連通筒部22に外嵌された外嵌筒部40が配設されている。該外嵌筒部40は、容器軸Oと同軸に配置されており、外嵌筒部40の下端部は、連通筒部22に外嵌されるとともに中栓部材21の内筒部24内に嵌合し、外嵌筒部40の上端部は、本体筒部材23の受け筒部35に外嵌している。
【0046】
外嵌筒部40の容器軸O方向における中間部分には、径方向の外側に向けて突設された環状の逆止弁(空気弁部)41が形成されている(
図2、
図3参照)。逆止弁41は、弾性変形可能とされ、吸気孔19と外気導入孔34との連通およびその遮断を切り替えるための弁であり、内容物Mの吐出時には外気の流入を抑止し、外気吸入時のみ開いて吸気を可能とする。環状(ないし周状、円盤状、鍔状、シルクハット形状)である本実施形態の逆止弁41の外周部(符号41pで示す)には、弁座31aに座するリップ部41aが形成されている(
図8、
図9等参照)。弁座31aは、本体筒部材23の内側であって、外気導入孔34から導入された外気の流路の近傍となる位置に設けられている。また、この弁座31aは、天面部31の裏側となる天井面のうち、逆止弁41のリップ部41aが接触する部分に環状に形成されている。リップ部41aは、該環状の弁座31aと同様に環状に形成されている(
図14、
図15等参照)。
【0047】
また中栓部材21には、吐出筒36と内容器11内とを連通する連通凹部43が形成されている。連通凹部43は、連通筒部22の内部により構成され、容器軸Oと同軸に配置されている。これにより、容器軸O方向と、連通凹部43の軸線方向とは一致している。また図示の例では、連通凹部43は、吐出筒36よりも下側、つまり容器軸O方向に沿った内容器11の内側に位置している。さらに連通凹部43の内容積は、吐出筒36の内容積よりも大きくなっている。
【0048】
中栓部材21の連通筒部22内には、容器軸O方向に沿って摺動可能に嵌合され、容器軸O方向に沿って摺動して当該連通凹部43を開閉する弁体部44が配設されている。弁体部44は、容器軸Oと同軸に配置された有底筒状に形成され、さらに容器軸O方向の上側端部(上端部)から径方向外方に突設された環状のフランジ部を有する形状に規制されている。この弁体部44に対し、連通筒部22の環状の上端面が、当該フランジ部と当接して該弁体部44を受ける弁座(弁押さえ)として機能する。このとき、弁体部44の外周面と連通凹部43の内周面とが接触しにくい構造としてもよいし、弁体部44の底面が、栓本体47において連通筒部22よりも径方向の内側に位置する部分に当接しないような構造としてもよい。
【0049】
また弁体部44の上端は、連通筒部22の上端面に当接するかあるいは該上端面よりも上側に位置しており、
図2および
図3に示すように、弁体部44の上端には、弁体部44と外嵌筒部40とを連結する連結片45の一端が連結されている。連結片45は、周方向に間隔をあけて複数、図示の例では3つ設けられており、各連結片45は、周方向に沿って湾曲して延在している。また連結片45の両端部の容器軸O方向の位置は同等となっている。なお弁体部44、外嵌筒部40、連結片45および逆止弁41は一体に成形され、連結体48を構成している。
【0050】
連結片45は、弾性変形することによって、弁体部44が容器軸O方向に沿って変位することを許容する(なお、本明細書では、このように連結片45が弾性変形しつつ弁体部44が変位することを弾性変位と表現している)。連結片45が本実施形態のごとく複数(図示の例では3つ)である場合、これら連結片45は周方向に等間隔に配置されていることが好ましい。このように連結片45が等間隔に配置されていれば、弾性変位するときの弁体部44が、容器軸Oに垂直な面に対して傾斜した状態(こじれた状態)とならないようにして当該弁体部44の円滑な変位を補助することができる(
図14、
図15参照)。
【0051】
弁体部44が弾性変位する際、連結片45は、一部に撚(ひね)りが加えられて弾性変形しながら全体として傾斜した状態となる(
図15参照)。このとき、連結片45自体は一部が捻(ねじ)られた状態となり、尚かつ状態に応じて全体が伸長した状態となり、当該連結片45の弾性復元力が、弁体部44を変位前の位置へ復元変位(復帰)させる力として作用する。なお、弾性変位あるいは復元変位する際、弁体部44が容器軸Oを中心として周方向(時計回り又は反時計回り)に回転しても差し支えない。
【0052】
次に、以上のように構成された吐出容器10の作用について説明する。
【0053】
図2に示すように、当該吐出容器10から内容物Mを吐出するときには、まず、吐出キャップ15からオーバーキャップ16を外す。その後、吐出口14が水平面よりも下方を向くように吐出容器10を傾けて吐出姿勢にした状態で、吐出容器10を径方向の内側に押し込むように加圧してスクイズ変形(弾性変形)させ、内容器11を外容器12とともに変形させ減容させる。
【0054】
すると、内容器11内の圧力が上昇し、内容器11内の内容物Mが貫通孔42を通して弁体部44を押圧することとなり、連結片45が弾性変形させられて弁体部44が容器軸O方向に沿って内容器11の外側に向けて摺動させられて、連通凹部43が開放される。これにより、内容器11内の内容物Mが、貫通孔42、連通凹部43、外嵌筒部40内および吐出口14を通して外部に吐出される(
図2参照)。
【0055】
その後、吐出容器10の押し込みを停止したり解除したりすることで、内容器11内の内容物Mによる弁体部44への押圧力を弱めると、吐出容器10の弾性復元力により生じる圧力差により、弁体部44が、容器軸O方向に沿って内容器11の内側に摺動する(
図3参照)。
【0056】
このとき
図3に示すように、弁体部44が、連通凹部43内に進入すると、弁体部44の外周面が連通凹部43の内周面に摺接して連通凹部43と該弁体部44との間の隙間が閉塞される。これにより、本体筒部材23と中栓部材21との間に、内容器11に戻されなかった内容物Mが残存する内空間46が形成される。この内空間46は、吐出口14に連通するとともに弁体部44を画壁の一部とし、該弁体部44により連通凹部43との連通が遮断されている。
【0057】
そして、このように内空間46が形成された後、該弁体部44が継続して連通凹部43内を容器軸O方向に沿って摺動すると、該摺動に伴って内空間46の内容積が増大することとなる。これにより、吐出口14内の内容物Mを内空間46内に引き込むことが可能になり、吐出口14内に外部から空気Aを吸引することができる。
【0058】
ここで、弁体部44により連通凹部43が閉塞された状態で容器本体13の押圧を解除すると、内容器11が減容変形したまま外容器12が復元変形しようとする。このとき、内容器11と外容器12との間に負圧が発生し、この負圧が、吸気孔19を通して逆止弁41に作用することにより、逆止弁41が開状態となる。すると、外気導入孔34、外気流通孔28、連通溝20および吸気孔19を通して外容器12と内容器11との間に外気が吸入される(
図3参照)。そして、外容器12と内容器11との間の内圧が大気圧まで上昇すると、逆止弁41が復元変形して吸気孔19と外部とを遮断する。これにより、内容物Mの吐出後に内容器11の減容形状が保持される。
【0059】
この状態から、再び容器本体13の外容器12をスクイズ変形させると、逆止弁41は遮断状態とされていることから外容器12と内容器11との間の内圧が正圧となり、この正圧によって内容器11が減容変形され、前述の作用により内容物Mが吐出される。
【0060】
なお、内容物Mを吐出した後、弁体部44により連通凹部43が閉塞される前に、吐出容器10の押し込みを停止するだけでなく解除もした場合、内容器11が外容器12に追従して復元変形しようとする。すると、内容器11内の圧力が低下し負圧が生じることとなり、この負圧が弁体部44に作用することで、弁体部44が、容器軸O方向に沿って内容器11の内側に向けて円滑に摺動させられることとなる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る吐出容器10によれば、内容物Mの吐出後、吐出口14内の内容物Mを内空間46内に引き込んで、吐出口14内に外部から空気Aを吸引することができるので、内容器11に戻されなかった内容物Mが吐出口14内に残存するのを抑えることが可能になる。これにより、内容物Mの吐出後、内容物Mが吐出口14から漏出するのを抑制することができる。
【0062】
また、貫通孔42が、連通凹部43よりも小径なので、弁体部44が、意図せずに上記の軸線方向に沿った内容器11の内側に変位しようとしても、弁体部44のフランジ部が、栓本体47において連通筒部22の環状の上端面に当接することとなり、弁体部44の前述の変位を規制することができる。
【0063】
また本実施形態のように、当該吐出容器10の未操作時に、弁体部44が栓本体47に当接している場合には、弁体部44により連通凹部43と貫通孔42との連通を遮断することができる。さらにこの場合、前述のように内容物Mを吐出して上記の内空間46が形成された後、弁体部44が復元変位するときに、該弁体部44が、連通凹部43内を容器軸O方向の全長にわたって摺動することができる。これにより、内空間46の内容積を確実に増大させることが可能になり、前述の作用効果を顕著に奏功させることができる。
【0064】
また、オーバーキャップ16に内シール筒部37が設けられているので、オーバーキャップ16を閉じた状態で吐出口14から内容物Mが不意に漏出するのを抑制することができる。また前述のように、内容物Mの吐出後、内容器11に戻されなかった内容物Mが吐出口14内に残存し難くなっているので、内容物Mの吐出後にオーバーキャップ16を吐出キャップ15に装着させ、内シール筒部37を吐出口14内に嵌合させたときに、内シール筒部37により内容物Mが吐出口14から外部に押し出されたり、内シール筒部37に内容物Mが付着したりするのを抑制することができる。
【0065】
<外気吸入時の音鳴り(異音)の発生を抑止するための構成>
続いて、本実施形態の吐出容器10における逆止弁41の音鳴り(異音)発生抑止のための構成について以下に説明する(
図16等参照)。なお、逆止弁41の部分的な断面構造を示す
図16等では、見やすさ等を考慮し、ハッチングは付さずに断面部分のみを図示することとする。
【0066】
この逆止弁41は、外容器12と内容器11との間に外気が吸入される外気吸入時に撓み、リップ部41aが弁座31aから離反した状態となって外気導入孔34と吸気孔19とを連通させる。さらに、この逆止弁41は、外気吸入時における音鳴り(異音発生)現象を抑えるための手段を有している。
【0067】
(音鳴りのメカニズム)
外気吸入時における音鳴りのメカニズムは、以下のとおりであるとの知見が得られるに至った。すなわち、外気導入孔34から導入された空気は、弁座31aに接していたリップ部41aを引き離し、その間に形成された隙間を通過し、外気流通孔28、吸気孔19を通過し、内容器11と外容器12との間に流れ込む(
図3等参照)。このとき、特に、逆止弁41の近傍における空気流路の内部を流れる空気の圧力が変化して圧力小の状態と圧力大の状態が交互に生じると、逆止弁41の振動を励起し(
図17参照)、これにより空気の疎密が発生し、これが音鳴り(異音発生)現象を引き起こすと考えられた。
【0068】
このような音鳴り現象について検討すると、流入空気の流量によって音鳴りが発生しなくなることから、逆止弁41が大きく開くことによって圧力変化が減少し、これが音鳴りの抑止に繋がると考えられた。本実施形態の吐出容器10は、このような第1の知見に基づく、外気流量増大手段7を備えている。
【0069】
さらに音鳴り現象について検討すると、外気流入時、逆止弁41の振動数と同等の疎密波が生成され、この振動数と音鳴り周波数が一致するとの知見が得られた。本実施形態の吐出容器10は、このような第2の知見に基づく、モード振幅低減手段8を備えている。
【0070】
(外気流量増大手段7)
外気流量増大手段7は、外気吸入時における外気流量を増大させることにより、外気吸入時における異音の発生が抑えるための手段である。このような外気流量増大手段7によれば、外気吸入時における逆止弁41の撓みが大きくなり、外気流量が増大する結果、空気の疎密現象を抑止ないし消滅させることが可能となる(
図18参照)。このような外気流量増大手段7を備えた吐出容器10は、外気吸入時における外気流量を増大させ、空気の疎密に起因した流入空気の変動を抑えることにより、外気吸入時における音鳴りの発生を抑える。その根拠としては以下が挙げられる。
・空気流入量が一定値に達することで音鳴り発生が抑止される。
・逆止弁41の剛性が低くなることで音鳴り発生が抑止される。
・外気吸入時の逆止弁41の撓みが大きくなり、弁座31aとリップ部41a間に形成される流路の面積が大きくなることで、音鳴り発生が抑止される。
【0071】
(外気流量増大手段7の具体例)
外気流量増大手段7の具体例について以下に説明する。外気流量増大手段7の一例は、逆止弁41の撓みを増大させるための構成を含むものである。また、外気流量増大手段7は、逆止弁41を薄く形成するための構成を含むものであってもよい。これらの構成の具体例としては、逆止弁41としての機能を確保しつつ当該逆止弁41を従前よりも薄くする構成などが含まれる。さらに、この場合の外気流量増大手段7は、逆止弁41の基端部41bを支持する支持部材71を含むものであってもよい。支持部材71は、特に、逆止弁41を薄肉化した場合の強度低下を補って強度を確保する機能を有する。
【0072】
さらに、外気流量増大手段7は、逆止弁41を、外気流入時における外気の流れ方向上流に向けて凸状に反った断面形状とすることを含むものであってもよい。例えば、外気流入時における外気の流れ方向の下流に向けて凸状に反った、下側凸の断面形状(カーブ形状)である従来の逆止弁に対し(
図21参照)、これとは逆に、外気の流れ方向上流に向けて凸状に反った、上側凸の断面形状(逆カーブ形状)とすることは、外気吸入時の外気流量を増大させ得る(
図30等参照)。
【0073】
(撓みの解析手順その1)
ここで、外気吸入時における逆止弁41の撓み(変位)を解析する手順(その1)として以下を挙げることができる。すなわち、流体解析することにより、外気吸入時に逆止弁41にかかる圧力分布を求めるというものである。
【0074】
(撓みの解析手順その2)
また、外気吸入時における逆止弁41の撓み(変位)を解析する手順(その2)としては、構造解析して撓み(変位)を求めることを挙げることができる。この場合の方法としては、構造解析において、流体解析によって得られた圧力分布を逆止弁41に与える、といったものがある。
【0075】
(撓み比の定義)
ここで、外気吸入時における逆止弁41の撓み(変位)を表す指標として「撓み比」を導入する。撓み比は、
撓み比=(構造変更後の変位量最大値(構造解析結果)/現行(従来)の変位量最大値(構造解析結果))×100[%]
で定義される。
【0076】
上述の定義式で表されるように、変位量最大値は、構造解析の結果から得ることができる。図を用いてこの変位量最大値について説明すると、変形前の逆止弁41の図と、変形後(撓み時の構造解析から得られた結果)の逆止弁41の図とを重ねて表示したときの逆止弁41の変位の最大値が変位量最大値となる(
図19参照)。
【0077】
(モード振幅低減手段8)
モード振幅低減手段8は、外気吸入時における逆止弁41のモード振幅を低減させるための手段である。
【0078】
(モード振幅低減手段8の具体例)
モード振幅低減手段8の具体例について以下に説明する。モード振幅低減手段8の一例は、逆止弁41の外周部41pに形成された厚肉部41cを含むという構成である。厚肉部41cは、外気吸入時における逆止弁41のモード振幅を低減させる手段として機能しうる。この場合の厚肉部41cは、例えば、弁座31aと接触するリップ部41aの裏側に形成されたリブで形成されたもの等である。あるいは、厚肉部41cは、逆止弁41において同心円状に配置された複数の厚肉部分で構成されるものであってもよい。リブ等からなる厚肉部41cは、逆止弁41の外周部等を強化し、モード振幅を低減させる。
【0079】
(モード解析について)
本明細書におけるモード解析とは、構造有限要素解析により、構造物の固有振動数および振動モードを得る手法である。
【0080】
(振動モードについて)
物体には、固有振動数が複数存在しており、それぞれの固有振動数における物体の振動状態は、振動モードと呼ばれる。物体の振動モードを得る手法には、モード解析がある。
【0081】
(モード振幅比の定義)
ここで、吐出容器10の逆止弁41におけるモード振幅低減効果を検討する指標として「モード振幅比」を導入する。モード振幅比は、
モード振幅比=(構造変更後のモード振幅/現行(従来)のモード振幅)×100[%]
で定義される。
【0082】
振動モードにおける振幅はモード振幅と呼ばれる。モード振幅は無次元数である。モード振幅は、モード解析の結果から得ることができる。図を用いてこのモード振幅について説明すると、モード振幅前の逆止弁41の図と、モード振幅後の逆止弁41の図とを重ねて表示したときの逆止弁41(のリップ部41a)の振幅(換言すれば、逆止弁41が波打つように振動したときの振幅)がモード振幅となる(
図20参照)。
【0083】
(音鳴り現象に関与するパラメータ)
音鳴り現象に関与し、したがって音鳴り発生の抑止に寄与しうるパラメータとしては、加振力、剛性、減衰が挙げられる。加振力は、外気吸入時における空気の流量に依存する。剛性は、材料のヤング率および弁形状に依存する。減衰は、材料に依存する。
【0084】
(構造変更による剛性の変化)
上述の「剛性」というパラメータに着目すると、静圧が一定という条件の下において以下のようになる(かかる剛性の変化と撓みの関係に着目した後述の実施例4参照)。なお、ここでいう静圧が一定というのは、実際の音鳴り時、逆止弁にかかる圧力は変動するが、撓みの解析を行う際は、一定の圧力が負荷しているものとして解析を行っていることを意味している。
(A)剛性を従前構造よりも低くする→一定の静圧下、逆止弁41の撓みは大きくなる
(B)剛性を従前構造よりと同等とする→一定の静圧下、逆止弁41の撓みは同等
(C)剛性を従前構造よりも高くする→一定の静圧下、逆止弁41の撓みは小さくなる
【0085】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の外気流量増大手段7は、逆止弁41の撓み基部からリップ部41aまで全体的に凸状に反った断面形状とすることであってもよい。ここでいう「撓み基部」とは、逆止弁41に撓みが生じる場合における当該撓みが始まる部分(凸状または凹状の撓みの始点となる部分)をいい、基端部41bと一致する場合もあるし、基端部41bとがリップ部41aの間に位置する場合もある。
【実施例1】
【0086】
<音鳴り発生抑止構造の実施例(その1)>
本発明者は、上述した外気流量増大手段7および/またはモード振幅低減手段8を適用した吐出容器10の逆止弁41の具体的構造例について種々検討した。当該構造により達成される撓み比、モード振幅比と併せて以下に説明する(
図21〜
図31参照)。なお、
図21には従前構造を参考例として示す。
【0087】
例A01および例A02は、逆止弁41のリップ部41aの裏側に厚肉部41cを形成したものである(
図22、
図23参照)。例A03は、逆止弁41の厚みを、基端部41bに近づくほど厚くしたもの(
図24参照)、例A04は、これとは逆に、逆止弁41の厚みを、基端部41bから離れるほど(リップ部41aに近づくほど)厚くしたものである(
図25参照)。例A05は、下側凸である逆止弁41の上側面の径方向略中央に環状のリブからなる厚肉部41cを形成したものである(
図26参照)。例A06は、逆止弁41の下側面であって基端部41bの近傍となる部分に断面ブラケット形状の支持部材71を形成したものである(
図27参照)。例A07は、例A06における支持部材71を大型化してリップ部41aの近傍まで延ばしたもの(
図28参照)、上述した例A01〜A07が従前例と同様の下側凸の断面形状(本明細書では便宜的に「カーブ形状」と呼ぶ)であるのに対し、例A08は上側凸の断面形状(本明細書では便宜的に「逆カーブ形状」と呼ぶ)であり、尚かつ、支持部材71によって逆止弁41の径方向略中央部分から支持するようにし、さらに、リップ部41aの裏側に厚肉部41cを形成したものである(
図29参照)。例A09は、逆止弁41を均一的に薄肉化したうえで上側凸(逆カーブ形状)とし、尚かつリップ部41aの裏側に厚肉部41cを形成したものである(
図30参照)。
【0088】
これら各例A01〜A09の逆止弁41によって達成された撓み比、モード振幅比を表に示す(
図31参照)。ここで示す撓み比、モード振幅比は、従前構造の逆止弁における撓み比、モード振幅比をそれぞれ100[%]としたときの数値である。
【0089】
なお、撓み比は、外気吸入時に逆止弁41がどれほど撓むかを示す指標であり、撓めば撓むほど外気流量を増大させることから、高い数値ほど好適といえる。この数値が100よりも高ければ、外気流量増大手段7としての音鳴り抑止効果が従前構造よりも優れるということができる。
図31に示す表では、好適な結果となった100よりも高い数値を太字斜体で示している(
図31参照)。また、撓み比100[%]〜176[%]の間で音鳴り発生が抑止され、実験上、撓み比が176[%]程度となれば、音鳴りは発生しないことが推測される。
【0090】
また、モード振幅比は、外気吸入時に逆止弁41のモード振幅がどれほど低減するかを示す指標であり、モード振幅が低減すればするほど空気の圧力変動が低減することから、低い数値ほど好適といえる。この数値が100よりも低ければ、モード振幅低減手段8としての音鳴り抑止効果が従前構造よりも優れるということができる。
図31に示す表では、好適な結果となった100よりも低い数値を太字斜体で示している(
図31参照)。
【0091】
図31に示す撓み比とモード振幅比を参照すると以下のことがいえることが判明した。まず、例A09は、逆カーブ形状の反りと曲率が大きく、従前構造よりも撓み比が高いため、外気吸入時における空気の疎密現象を抑止ないし消滅させることが期待できる。また、例A01,A02,A04,A05,A09は、従前構造よりもモード振幅比が低いため、外気吸入時における空気の圧力変動が小さくなることが期待できる。以上を勘案すると、上述した例A01〜A09の中で音鳴り抑止効果にもっとも優れるのは、外気流量増大手段7による抑止効果とモード振幅低減手段8による抑止効果の両方が期待できる例A09(
図31に示す表中において二重丸を付して示している)であることが判明した(
図30、
図31等参照)。
【実施例2】
【0092】
<音鳴り発生抑止構造の実施例(その2)>
続いて、本発明者は、上述した例A09の逆止弁41(薄肉化された逆カーブ形状であって、尚かつ厚肉部41cを有する逆止弁41)に着目し、逆カーブ形状の反り(逆カーブ反り)、厚み(逆カーブ厚み)について種々検討した。検討するにあたっては、以下の定義を用いた(
図32参照)。
【0093】
すなわち、まず、リップ部41aの裏側に形成されたリブ状の厚肉部41cの立ち上がり部(リブの根元)をリブ付根41eとする。また、このリブ付根41eを通る水平線を基準線Lとする。「逆カーブ反り」は、上側凸の断面形状(逆カーブ形状)の下側曲線の接線のうち、基準線Lと平行になる線L1と、この基準線Lとの距離[mm]をいう。「逆カーブ厚み」は、線L1との接点における逆止弁41の厚み[mm]をいう(
図32参照)。
【0094】
例B01は、逆カーブ反りを極小(0.09[mm])としたものである(
図33参照)。例B02は、逆カーブ反りを小(0.1[mm])としたものである(
図34参照)。例B03は、逆カーブ反りを中くらい(0.5[mm])としたものである(
図35参照)。例B04は、逆カーブ反りを大(0.6[mm])としたものである(
図36参照)。例B05は、逆カーブ厚みを小(0.1[mm])としたものである(
図39参照)。例B06は、逆カーブ厚みを中くらい(0.15[mm])としたものである(
図38参照)。例B07は、逆カーブ厚みを大(0.22[mm])としたものである(
図39参照)。なお、例B03と例B06とは、結果的に同じ断面形状となった。
【0095】
逆カーブ反りを種々変更した例B01〜B04の逆止弁41によって達成された撓み比、モード振幅比を表に示す(
図40参照)。また、逆カーブ厚みを種々変更した例B05〜B07の逆止弁41によって達成された撓み比、モード振幅比を表に示す(
図41参照)。上述した実施例1と同様、ここで示す撓み比、モード振幅比は、従前構造の逆止弁における撓み比、モード振幅比をそれぞれ100[%]としたときの数値である。なお、好適な結果となった数値は太字斜体で示している。
【0096】
以上の検討結果から、以下のことが判明した。
・モード振幅は逆止弁41の外周部41pの厚肉部(リブ)41cによって制御されていることが推測されるため、すべての例(パターン)B01〜B07でほぼ同じ値を示す
・解析上、逆カーブ反りを大きくすれば、外気吸入時における逆止弁41の撓みは大きくなる。
・解析上、逆カーブ厚みを小さくすれば、外気吸入時における逆止弁41の撓みは大きくなる。
【実施例3】
【0097】
<音鳴り発生抑止構造の実施例(その3)>
続いて、本発明者は、上述した例A09の逆止弁41(薄肉化された逆カーブ形状であって、尚かつ厚肉部41cを有する逆止弁41)に関し、当該逆止弁41の基端部41bを支持する支持部材71の構造によって撓み比、モード振幅比がどのように変わるかについても検討した(
図42〜
図46参照)。
【0098】
例C01は、逆止弁41の基端部41bの上側に支持部材71を形成したものである(
図42参照)。例C02は、逆止弁41の基端部41bの下側に支持部材71を形成したものである(
図43参照)。例C03は、逆止弁41の基端部41bの上側と下側の両方に支持部材71を形成したものである(
図44参照)。例C04は、逆止弁41の基端部41bの上側と下側の両方に、例C03におけるよりも大きな支持部材71を形成したものである(
図45参照)。
【0099】
支持部材71の構造を種々変更した例C01〜C04の逆止弁41によって達成された撓み比、モード振幅比を表に示す(
図46参照)。
【0100】
以上の検討結果から、以下のことが判明した。
・解析上、支持部材71を形成すると、逆止弁41の撓み比は減少する。
・支持部材71を大型化するほど、逆止弁41の撓み比は減少する。
・逆止弁41の外周部41pに形成した厚肉部(リブ)41cの構造等が同等である限り、モード振幅比に変化はない。
【実施例4】
【0101】
<音鳴り発生抑止構造の実施例(その4)>
上述した逆止弁41の剛性の変化と当該逆止弁41の撓みの関係に着目した本発明者は、(A)剛性が従前構造よりも低、(B)剛性が従前構造と同等、(C)剛性が従前構造よりも高、という3つに区分し、この条件を前提とした各区分において、異音発生抑止の効果が得られると考えられる構造を種々検討した。以下、異音発生抑止という観点から考えられた種々の逆止弁41の各例を示す。なお、各図では、参考までに従前構造の逆止弁の断面形状例を二点鎖線で示す。
【0102】
((A)剛性が従前構造よりも低)
[例D01]
逆止弁41の先端部(外周部41p)の位置をさらに下げた例である(
図47参照)。
[例D02]
逆止弁41の断面形状が上側凸状(逆カーブ形状)であって、撓み量を増大させた例である(
図48参照)。
[例D03]
逆止弁41の断面形状が上側凸状(逆カーブ形状)であって、凸部41tに厚肉部(リブ)41cを形成した例である(
図49参照)。
[例D04]
逆止弁41の径方向略中央よりも内側(基端部41b寄り)に凸部41tを形成した例である(
図50参照)。
[例D05]
逆止弁41の径方向略中央よりも外側(リップ部41a寄り)に凸部41tを形成した例である(
図51参照)。
[例D06]
逆止弁41の開始部たる基端部41bを従前構造よりも下側に位置させた例である(
図52参照)。
[例D07]
逆止弁41の先端部たるリップ部41aやその周辺部を従前構造よりも下側に位置するように構成した例である(
図53参照)。
【0103】
((B)剛性が従前構造と同等)
[例E01]
下側凸の断面形状(カーブ形状)である逆止弁41の上側に厚肉部(リブ)41cを形成した例である(
図54参照)。
[例E02]
逆止弁41の上側に厚肉部(リブ)41cを形成し、さらにその下側(裏側)にも厚肉部(リブ)41cを形成した例である(
図55参照)。
[例E03]
逆止弁41の上側に厚肉部(リブ)41cを形成し、さらにその下側(裏側)の径方向外周側および内周側にそれぞれ同心円状の厚肉部(リブ)41cを形成した例である(
図56参照)。なお、同心円状の厚肉部41cは、逆止弁41自体の剛性を向上させうる。
[例E04]
逆止弁41の上側に切込み部41uを形成した例である(
図57参照)。
[例E05]
逆止弁41のリップ部41aの裏側(下側)に略三角形状の切込み部41uを形成した例である(
図58参照)。
[例E06]
逆止弁41のリップ部41aの裏側(下側)に略円形ないしこれに近似した形状の切込み部41uを形成した例である(
図59参照)。
[例E07]
逆止弁41のリップ部41aに切込み部41uを形成して二股形状にした例である(
図60参照)。
[例E08]
断面波状の逆止弁41であって、開始部たる基端部41bが上側外周向きに延びる構造とした例である(
図61参照)。
[例E09]
断面波状の逆止弁41であって、開始部たる基端部41bが下側外周向きに延びる構造とした例である(
図62参照)。
[例E10]
逆止弁41の上側に凸部41tを形成し、その裏側(下側)を凹部として断面を二股形状とした例である(
図63参照)。
[例E11]
逆止弁41の下側に切込み部41uを形成した例である(
図64参照)。
【0104】
((C)剛性が従前構造よりも高)
[例F01]
逆止弁41のリップ部41aの裏側(下側)に断面三角状の厚肉部(リブ)41cを形成するとともに、撓み量を低減させた例である(
図65参照)。
[例F02]
逆止弁41のリップ部41aの裏側(下側)に断面半円状の厚肉部(リブ)41cを形成するとともに、撓み量を低減させた例である(
図66参照)。
[例F03]
逆止弁41のリップ部41aの裏側(下側)に断面矩形状の厚肉部(リブ)41cを形成した例である(
図67参照)。
[例F04]
逆止弁41のリップ部41aの全体を断面菱形(ダイヤモンド形)にした例である(
図68参照)。
[例F05]
逆止弁41のリップ部41aの全体を断面矩形にした例である(
図69参照)。
[例F06]
逆止弁41のリップ部41aの全体を断面円形(丸形)にした例である(
図70参照)。
[例F07]
逆止弁41のリップ部41aの先端部(外周寄り)を統一した(下側の厚みを増やし、凹部がなくなるようにならした)例である(
図71参照)。
[例F08]
逆止弁41を平坦にして断面が線状になるようにし、反りをなくした例である(
図72参照)。
[例F09]
逆止弁41の開始部たる基端部41bを従前構造よりも上側に位置させた例である(
図73参照)。