特許第6450314号(P6450314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6450314クエチアピンハプテンに対する抗体及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6450314
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】クエチアピンハプテンに対する抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/44 20060101AFI20181220BHJP
   C12N 5/16 20060101ALI20181220BHJP
   C12N 15/06 20060101ALI20181220BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20181220BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20181220BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20181220BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20181220BHJP
   A61K 31/554 20060101ALN20181220BHJP
   A61P 25/18 20060101ALN20181220BHJP
   C07D 417/12 20060101ALN20181220BHJP
   C07D 417/14 20060101ALN20181220BHJP
【FI】
   C07K16/44
   C12N5/16
   C12N15/06 100
   C12P21/08
   C12M1/34 F
   G01N33/53 G
   G01N33/543 511A
   !A61K31/554
   !A61P25/18
   !C07D417/12
   !C07D417/14
【請求項の数】26
【全頁数】68
(21)【出願番号】特願2015-528598(P2015-528598)
(86)(22)【出願日】2013年8月20日
(65)【公表番号】特表2015-529203(P2015-529203A)
(43)【公表日】2015年10月5日
(86)【国際出願番号】US2013055830
(87)【国際公開番号】WO2014031665
(87)【国際公開日】20140227
【審査請求日】2016年2月23日
(31)【優先権主張番号】61/691,598
(32)【優先日】2012年8月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397060175
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】リョホレンコ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】サンカラン,バヌマティ
(72)【発明者】
【氏名】デコリー,トーマス,アール.
(72)【発明者】
【氏名】タブス,テレサ
(72)【発明者】
【氏名】コルト,リンダ
(72)【発明者】
【氏名】レメリー,バート,エム.
(72)【発明者】
【氏名】サルター,ライズ
(72)【発明者】
【氏名】ドナエ,マシュー,ギャレット
(72)【発明者】
【氏名】ゴング,ヨン
【審査官】 藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/115733(WO,A1)
【文献】 特開2011−102316(JP,A)
【文献】 特表2010−512537(JP,A)
【文献】 特表2010−507648(JP,A)
【文献】 特表2007−514157(JP,A)
【文献】 特表2012−507297(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/112657(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/159537(WO,A1)
【文献】 Goodrow, M.H., "Strategies for Immunoassay Hapten Design", Immunoanalysis of Agrochemicals (1995) Vol.586, Chapter 9, pp.119-139
【文献】 J. Pharm. Biomed. Anal. (2002) Vol.30, pp.969-977
【文献】 Clin. Lab. (2002) Vol.48, No.1-2, pp.61-71
【文献】 Ann. 1st. Super. Sanita (1991) Vol.27, No.1, pp.149-154
【文献】 Annals of General Psychiatry (2011) Vol.10, No.12, pp.1-10
【文献】 Analytica Chimica Acta (2008) Vol.619, pp.87-93
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
CAplus/REGISTRY(STN)
MEDLINE/BIOSIS/WPIDS/WPIX(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエチアピンに特異的に結合し、
式Iの化合物と免疫原性担体とのコンジュゲートに応答して生成される、単離抗体又はその結合断片
式I:
【化1】
式中、
は、H、
【化2】
CHNH、若しくはCHNHC(O)(CHCOHであり、
は、H、
【化3】
CHNH、若しくはCHNHC(O)(CHCOHであり、
は、Hであるが、但し、R又はRのいずれかがHでなければならないものとし、かつ更に、R及びRが同時にHであってはならないものとし、
mは、1、2、3、4、又は5であり、及び
nは、1、2、3、4、又は5である
【請求項2】
前記抗体が、式Iの化合物と免疫原性担体とのコンジュゲートに応答して生成される、請求項1に記載の抗体又はその結合断片。
【請求項3】
前記結合断片が、Fv、F(ab’)、F(ab’)2、scFv、ミニボディ、及びダイアボディ断片からなる断片の群から選択される、請求項1に記載の抗体又はその結合断片。
【請求項4】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体又はその結合断片。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体またはその結合断片を含む、アッセイキット。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体またはその結合断片を含む、アッセイ装置。
【請求項7】
前記装置は、側方流動アッセイ装置である、請求項6に記載のアッセイ装置。
【請求項8】
クエチアピンに結合する抗体産生する方法であって、
(i)抗体産生のための宿主(ヒトを除く)を選択することと、
(ii)前記宿主に式Iの化合物と免疫原性担体とのコンジュゲートを接種することと、を含み、前記宿主が、クエチアピンに結合する抗体産生する方法:
式I:
【化4】
式中、
は、H、
【化5】
CHNH、若しくはCHNHC(O)(CHCOHであり、
は、H、
【化6】
CHNH、若しくはCHNHC(O)(CHCOHであり、
は、Hであるが、但し、R又はRのいずれかがHでなければならないものとし、かつ更に、R及びRが同時にHであってはならないものとし、
mは、1、2、3、4、又は5であり、及び
nは、1、2、3、4、又は5である
【請求項9】
クエチアピンに結合するモノクローナル抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞株を産生する方法であって、
(i)抗体産生のための宿主(ヒトを除く)を選択することと、
(ii)前記宿主に式Iの化合物と免疫原性担体とのコンジュゲートを接種することと、
(iii)前記接種された宿主からの細胞株を連続的に分裂している細胞と融合させて、クエチアピンに結合するモノクローナル抗体を産生することができる融合細胞を作製することと、
(iv)ハイブリドーマ細胞株を得るために、前記融合細胞をクローニングすることと、を含方法:
式I:
【化7】
式中、
は、H、
【化8】
CHNH、若しくはCHNHC(O)(CHCOHであり、
は、H、
【化9】
CHNH、若しくはCHNHC(O)(CHCOHであり、
は、Hであるが、但し、R又はRのいずれかがHでなければならないものとし、かつ更に、R及びRが同時にHであってはならないものとし、
mは、1、2、3、4、又は5であり、及び
nは、1、2、3、4、又は5である
【請求項10】
サンプル中のクエチアピンを検出する方法であって、
(i)サンプルを検出可能なマーカーで標識された請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体またはその結合断片と接触させることと、ここで、前記標識された抗体またはその結合断片と前記サンプル中に存在するクエチアピンとが標識された複合体を形成する、
(ii)前記サンプル中のクエチアピンを検出するために、前記標識された複合体を検出することと、を含む、方法。
【請求項11】
サンプル中のクエチアピンを検出するための競合的イムノアッセイ方法であって、
(i)サンプルを、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体またはその結合断片、及びクエチアピン又はクエチアピンの競合結合パートナーと、接触させることと、ここで、前記抗体またはその結合断片及び前記クエチアピン又はその競合結合パートナーのうちの1つが、検出可能なマーカーで標識され、サンプルのクエチアピンが、前記抗体またはその結合断片への結合に対して、前記クエチアピン又はその競合結合パートナーと競合する、
(ii)サンプルのクエチアピンを検出するために、前記標識を検出することと、を含む、方法。
【請求項12】
前記クエチアピン又はその競合結合パートナーが、前記検出可能なマーカーで標識される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体またはその結合断片が、検出可能なマーカーで標識される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記イムノアッセイが、側方流動アッセイ装置において行われ、前記サンプルが、前記装置に適用される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
クエチアピンに加えて1つ以上の検体の存在を検出することを更に含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上の検体が、クエチアピン以外の抗精神病薬である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
クエチアピン以外の前記抗精神病薬が、リスペリドン、パリペリドン、アリピプラゾール、オランザピン、及びそれらの代謝産物からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
クエチアピンの前記検出が、処方されたクエチアピン療法の患者の順守の指標である、請求項10〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
クエチアピンの前記検出が、患者が経口クエチアピンのレジメンから、注入可能な抗精神病薬のレジメンへと切り替えられるべきかどうかの判定を補助するために使用される、請求項10〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
クエチアピンの前記検出が、有効又は安全な薬物レベルの到達又は維持を確実にするために、経口又は注入可能なクエチアピンの用量レベル又は投薬間隔を増加させるべきか、それとも減少させるべきかの判定を補助するために使用される、請求項10〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
クエチアピンの前記検出が、最小限のpKレベルの到達の証拠を提供することにより、クエチアピン療法の開始時の一助になる、請求項10〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
クエチアピンの前記検出が、複数の製剤中又は複数の源からのクエチアピンの生物学的同等性の判定を補助するために使用される、請求項10〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
クエチアピンの前記検出が、多剤投与及び潜在的な薬物−薬物相互作用の影響の評価を補助するために使用される、請求項10〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
クエチアピンの前記検出が、患者が臨床治験から除外されるべきか、又は含まれるべきかの指標であり、臨床治験の投薬必要条件の順守のその後のモニタリングの一助になる、請求項10〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
クエチアピンに結合する抗体の結合断片を産生する方法であって、
(i)抗体産生のための宿主(ヒトを除く)を選択する工程と、
(ii)宿主に式Iの化合物及び免疫原性担体のコンジュゲートを接種する工程であって、前記宿主がクエチアピンに結合する抗体を産生する、工程と、
(iii)前記宿主が産生した抗体からクエチアピンに結合する抗体の結合断片を調製する工程と、を含む、方法:
式I:
【化10】
式中、
は、H、
【化11】
CHNH、若しくはCHNHC(O)(CHCOHであり、
は、H、
【化12】
CHNH、若しくはCHNHC(O)(CHCOHであり、
は、Hであるが、但し、R又はRのいずれかがHでなければならないものとし、かつ更に、R及びRが同時にHであってはならないものとし、
mは、1、2、3、4、又は5であり、及び
nは、1、2、3、4、又は5である。
【請求項26】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項8又は25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は2012年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/691,598号の利益を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、イムノアッセイの分野、具体的には、クエチアピンの検出のためにイムノアッセイに使用することができるクエチアピンに結合する抗体に関する。
【背景技術】
【0003】
統合失調症は、慢性かつ消耗性の精神障害であり、世界人口の約0.45〜1%が罹患している(van Os,J.、Kapur,S.「Schizophrenia」Lancet 2009,374,635〜645)。治療の主な目的は、精神病の症状から持続的寛解を達成し、再発のリスク及び影響を低減し、患者の機能及び全体的な生活の質を向上することである。統合失調症に罹患している多くの患者は、抗精神病薬の投薬により症状の安定を得ることができるが、投薬の順守不足が、毎日投与される経口投薬での再発の一般的な理由である。非順守の結果を調査するいくつかの研究(Abdel−Baki,A.;Ouellet−Plamondon,C.;Malla,A.「Pharmacotherapy Challenges in Patients with First−Episode Psychosis」Journal of Affective Disorders 2012,138,S3〜S14)は、処方されたように薬物治療を行わない統合失調症に罹患している患者は再発、入院、及び自殺の割合がより高く、死亡率が増加することを示している。統合失調症に罹患している患者の40〜75%が、毎日の経口治療レジメンの順守に困難を有することが推定されている(Lieberman,J.A.、Stroup,T.S.、McEvoy,J.P.、Swartz,M.S.;Rosenheck,R.A.、Perkins,D.O.、Keefe,R.S.E.、Davis,S.M.、Davis,C.E.、Lebowitz,B.D.、Severe,J.、Hsiao,J.K.「Effectiveness of Antipyschotic Drugs in Patients with Chronic Schizophrenia」New England Journal of Medicine 2005,353(12),1209〜1223)。
【0004】
治療薬物モニタリング(TDM)は、治療モニタリング及び治療最適化のための、抗精神病薬を含む薬物の血清又は血漿濃度の定量である。そのようなモニタリングは、例えば、薬物治療レジメンに従わない、治療用量に達していない、治療用量で反応していない、準最適な忍容性を有する、薬物動態学的な薬物−薬物相互作用を有する、又は不適切な血漿濃度をもたらす異常代謝を有する、患者の識別を可能にする。抗精神病薬を吸収、分配、代謝、及び排出する患者の能力において、かなりの個人差がある。そのような差異は、併発症、年齢、併用薬、又は遺伝的特徴により生じ得る。異なる薬物製剤もまた、抗精神病薬の代謝に影響を及ぼし得る。TDMは、個々の患者に対する用量の最適化を可能にし、治療的帰結及び機能的帰結を改善する。TDMは、処方する医師が、処方した投与量の順守及び有効な血清濃度の達成を確実にすることを更に可能にする。
【0005】
今日まで、抗精神病薬の血清又は血漿濃度のレベルを判定するための方法は、紫外線又は質量分析法検出による液体クロマトグラフィー(LC)の使用、及びラジオイムノアッセイを伴う(例えば、Woestenborghs et al.,1990「On the selectivity of some recently developed RIA’s」in Methodological Surveys in Biochemistry andAnalysis 20:241〜246.Analysis of Drugs and Metabolites,Including Anti−infective Agents、Heykants et al.,1994「The Pharmacokinetics of Risperidone in Humans:A Summary」,J Clin Psychiatry 55/5,suppl:13〜17、Huang et al.,1993「Pharmacokinetics of the novel anti−psychotic agent risperidone and the prolactin response in healthy subjects」,Clin Pharmacol Ther 54:257〜268を参照されたい)。ラジオイムノアッセイは、リスペリドン及びパリペリドンのうちの一方又は両方を検出する。米国特許第8,088,594号において、Salamoneらは、リスペリドン及びパリペリドンの両方を検出するが、薬理学的に不活性な代謝産物を検出しない抗体を使用した、リスペリドンに対する競合的イムノアッセイを開示する。競合的イムノアッセイに使用される抗体は、特定の免疫原に対して開発されている。ID Labs Inc.(London,Ontario,Canada)は、別の抗精神病薬であるオランザピンのためのELISAを市販しており、これもまた、競合形式を使用する。使用説明書は、アッセイがスクリーニングのために設計され、法医学又は研究での使用を意図するが、特に、治療での使用を意図しないことを示す。この説明書は、全ての陽性試料がガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC−MS)で確認されるべきであることを推奨し、使用される抗体がオランザピン及びクロザピンを検出することを示す(ID Labs Inc.,「Instructions For Use Data Sheet IDEL−F083」,Rev.Date Aug.8,2011を参照されたい)。これらの方法のうちのいくつか、即ち、HPLC及びGC/MSは、高価かつ労働集約的であり得、一般的に、適切な設備を有する大規模又は専門研究所でのみ行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
抗精神病薬のレベルを判定するための他の方法、特に、処方医師の診療所で行うことができ(その結果、個々の患者に対する治療をより迅速に調整することができる)、及びLC若しくはGC/MS設備を欠いているか又は迅速な試験結果を必要とする他の医療現場において行うことができる方法が必要である。
【0007】
クエチアピンは、である。
【0008】
【化1】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、クエチアピンに結合し、(i)式Iの化合物と免疫原性担体との複合体に応答して生成されるか、又は(ii)(i)の抗体により結合されるエピトープと同じであるエピトープに対して競合する、単離抗体又はその結合断片に関する。
【0010】
式I:
【0011】
【化2】
式中、
1は、H、
【0012】
【化3】
CH2NH2、若しくはCH2NHC(O)(CH2mCO2Hであるか、又は
Z−(Y)p−Gであり、
2は、H、
【0013】
【化4】
CH2NH2、若しくはCH2NHC(O)(CH2mCO2Hであるか、
又はZ−(Y)p−Gであり、
3は、H、又はW−(Y)p−Gであるが、但し、R1、R2、R3のうちの2つがHでなければならないものとし、かつ更に、R1、R2、及びR3が全て同時にHであってはならないものとし、
式中、
Zは、
−N(R4)−、−O−、−S−、−アルキル−、−アミノアルキル−、−チオアルキル−、−ヘテロアルキル−、−アルキルカルボニル−、
【0014】
【化5】
からなる群から選択され、
4は、H、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又は置換若しくは非置換アリール基であり、
式中、
Wは、
−C(O)−、アルキル−、−アミノアルキル−、−チオアルキル−、−ヘテロアルキル−、−アルキルカルボニル−からなる群から選択され、
Yは、有機スペーサ基であり、
Gは、担体に結合することができる官能性連結基であり、
pは、0又は1であり、
mは、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、4、又は5である。
【0015】
本発明の抗体の現在好ましい実施形態は、式IIを有する化合物に対して生成された11、89−3、89−5、及び89−13と指定される抗体である。別の好適な免疫原は、式IIIを有する化合物である。
【0016】
式II(化合物9):
【0017】
【化6】
【0018】
式III(化合物8):
【0019】
【化7】
【0020】
本発明の抗体は、アッセイキット及びアッセイ装置において提供され得、現在好ましい装置は、ポイントオブケア分析を提供する側方流動アッセイ装置である。
【0021】
本発明は、クエチアピンに結合する抗体を産生する方法を更に提供し、本方法は、(i)抗体産生のための宿主細胞を選択することと、(ii)宿主に式Iの化合物と免疫原性担体との複合体を接種することと、を含み、この宿主は、クエチアピンに結合する抗体を産生する。クエチアピンに結合するモノクローナル抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞株を産生する方法が、更に提供される。本方法は、(i)抗体産生のための宿主を選択することと、(ii)宿主に式Iの化合物と免疫原性担体との複合体を接種することと、(iii)接種された宿主からの細胞株を連続的に分裂している細胞と融合させて、クエチアピンに結合するモノクローナル抗体を産生することができる融合細胞を作製することと、(iv)ハイブリドーマ細胞株を得るために、融合細胞をクローニングすることと、を含む。
【0022】
本発明は、試料中のクエチアピンを検出する方法を更に提供する。本方法は、(i)試料を検出可能なマーカーで標識された本発明による抗体と接触させることであって、標識された抗体と試料中に存在するクエチアピンとが標識された複合体を形成する、接触させることと、(ii)試料中のクエチアピンを検出するために、標識された複合体を検出することと、を含む。
【0023】
試料中のクエチアピンを検出するための競合的イムノアッセイ方法が更に提供される。本方法は、(i)試料を、本発明による抗体と、及びクエチアピン又はクエチアピンの競合結合パートナーと、接触させることであって、抗体及びクエチアピン又はその競合結合パートナーのうちの1つが、検出可能なマーカーで標識され、試料のクエチアピンが、抗体への結合に対して、クエチアピン又はその競合結合パートナーと競合する、接触させることと、(ii)試料のクエチアピンを検出するために、標識を検出することと、を含む。
【0024】
本発明の更なる目的、特徴及び利点が、以下の好ましい実施形態の詳細な考察から、当業者に明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】種々のハイブリドーマにより生成された競合的ELISAの結果を示す。
図2】種々のハイブリドーマにより生成された競合的ELISAの結果を示す。
図3】側方流動アッセイ装置において使用される競合的イムノアッセイ形式を示す。
図4】クエチアピンサブクローン89−3、89−13、及び89−5により生成された典型的な用量反応曲線を示す。
図5】本発明による側方流動アッセイ装置のチップ設計を示す。
図6】抗体5C7及び標識されたアリピプラゾールの競合結合パートナーにより生成された、アリピプラゾールの陽性対照についての典型的な用量反応曲線を示す。
図7】抗体4G9−1及び標識されたオランザピンの競合結合パートナーにより生成された、オランザピンの陽性対照についての典型的な用量反応曲線を示す。
図8】抗体11及び標識されたクエチアピンの競合結合パートナーにより生成された、クエチアピンの陽性対照についての典型的な用量反応曲線を示す。
図9】抗体5−9及び標識されたリスペリドンの競合結合パートナーにより生成された、リスペリドンの陽性対照についての典型的な用量反応曲線を示す。
図10】標識されたアリピプラゾールの競合結合パートナーの存在下で、アリピプラゾール抗体5C7により生成された、アリピプラゾールを含有する試料についての典型的な用量反応曲線を示し、オランザピン、クエチアピン、又はリスペリドンについての、それぞれの標識された競合結合パートナーの存在下での用量反応曲線はない。
図11】標識されたオランザピンの競合結合パートナーの存在下で、オランザピン抗体4G9−1により生成された、オランザピンを含有する試料についての典型的な用量反応曲線を示し、アリピプラゾール、クエチアピン、又はリスペリドンについての、それぞれの標識された競合結合パートナーの存在下での用量反応曲線はない。
図12】標識されたクエチアピンの競合結合パートナーの存在下で、クエチアピン抗体11により生成された、クエチアピンを含有する試料についての典型的な用量反応曲線を示し、アリピプラゾール、オランザピン、又はリスペリドンについての、それぞれの標識された競合結合パートナーの存在下での用量反応曲線はない。
図13】標識されたリスペリドンの競合結合パートナーの存在下で、リスペリドン抗体5−9により生成された、リスペリドンを含有する試料についての典型的な用量反応曲線を示し、アリピプラゾール、オランザピン、又はクエチアピンについての、それぞれの標識された競合結合パートナーの存在下での用量反応曲線はない。
図14】標識されたアリピプラゾールの競合結合パートナーの存在下で、アリピプラゾール抗体5C7により生成された、アリピプラゾールを含有する試料についての典型的な用量反応曲線を示し、オランザピン、クエチアピン、又はリスペリドンについての、それぞれの抗体及び標識された競合結合パートナーの存在下での用量反応曲線はない。
図15】標識されたオランザピンの競合結合パートナーの存在下で、オランザピン抗体4G9−1により生成された、オランザピンを含有する試料についての典型的な用量反応曲線を示し、アリピプラゾール、クエチアピン、又はリスペリドンについての、それぞれの抗体及び標識された競合結合パートナーの存在下での用量反応曲線はない。
図16】標識されたクエチアピンの競合結合パートナーの存在下で、クエチアピン抗体11により生成された、クエチアピンを含有する試料についての典型的な用量反応曲線を示し、アリピプラゾール、オランザピン、又はリスペリドンについての、それぞれの抗体及び標識された競合結合パートナーの存在下での用量反応曲線はない。
図17】標識されたリスペリドン競合結合パートナーの存在下で、リスペリドン抗体5−9により生成された、リスペリドンを含有する試料についての典型的な用量反応曲線を示し、アリピプラゾール、オランザピン、又はクエチアピンについての、それぞれの抗体及び標識された競合結合パートナーの存在下での用量反応曲線はない。
図18】多重形式で生成されたアリピプラゾールの用量反応曲線に対する、陽性対照として生成されたアリピプラゾールの用量反応曲線の比較を示す。
図19】多重形式で生成されたオランザピンの用量反応曲線に対する、陽性対照として生成されたオランザピンの用量反応曲線の比較を示す。
図20】多重形式で生成されたクエチアピンの用量反応曲線に対する、陽性対照として生成されたクエチアピンの用量反応曲線の比較を示す。
図21】多重形式で生成されたリスペリドンの用量反応曲線に対する、陽性対照として生成されたリスペリドンの用量反応曲線の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、クエチアピンに結合する単離抗体を提供する。本発明は、抗体を含むアッセイキット及びアッセイ装置を提供する。また、抗体を産生する方法及び抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞株を産生する方法も提供する。競合的イムノアッセイ方法を含む、試料中のクエチアピンを検出する方法が更に提供される。
【0027】
一実施形態において、本発明は、クエチアピンに結合し、(i)式Iの化合物と免疫原性担体との複合体に応答して生成されるか、又は(ii)(i)の抗体により結合されるエピトープと同じであるエピトープに対して競合する、単離抗体又はその結合断片を目的とする。
【0028】
式I:
【0029】
【化8】
式中、
1は、H、
【0030】
【化9】
CH2NH2、若しくはCH2NHC(O)(CH2mCO2Hであるか、又は
Z−(Y)p−Gであり、
2は、H、
【0031】
【化10】
CH2NH2、若しくはCH2NHC(O)(CH2mCO2Hであるか、
又はZ−(Y)p−Gであり、
3は、H、又はW−(Y)p−Gであるが、但し、R1、R2、R3のうちの2つがHでなければならないものとし、かつ更に、R1、R2、及びR3が全て同時にHであってはならないものとし、
式中、
Zは、
−N(R4)−、−O−、−S−、−アルキル−、−アミノアルキル−、−チオアルキル−、−ヘテロアルキル−、−アルキルカルボニル−、
【0032】
【化11】
からなる群から選択され、
4は、H、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又は置換若しくは非置換アリール基であり、
式中、
Wは、
−C(O)−、アルキル−、−アミノアルキル−、−チオアルキル−、−ヘテロアルキル−、−アルキルカルボニル−からなる群から選択され、
Yは、有機スペーサ基であり、
Gは、担体に結合することができる官能性連結基であり、
pは、0又は1であり、
mは、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、4、又は5である。
【0033】
更なる実施形態において、本発明は、クエチアピンに結合し、(i)式Iの化合物と免疫原性担体との複合体に応答して生成されるか、又は(ii)(i)の抗体により結合されるエピトープと同じであるエピトープに対して競合する、単離抗体又はその結合断片を目的とし、式中、
1は、H、
【0034】
【化12】
CH2NH2、若しくはCH2NHC(O)(CH2mCO2Hであるか、又はZ(Y)pGであり、
2は、H、
【0035】
【化13】
CH2NH2、若しくはCH2NHC(O)(CH2mCO2Hであるか、
又はZ−(Y)p−Gであり、
3は、Hであるが、R1又はR2のいずれかがHでなければならないものとし、かつ更に、R1及びR2の両方が同時にHであってはならないものとし、
式中、
Zは、
−N(R4)−、−O−、−S−、−アルキル−、−アミノアルキル−、−チオアルキル−、−ヘテロアルキル−、−アルキルカルボニル−、
【0036】
【化14】
からなる群から選択され、
4は、H、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又は置換若しくは非置換アリール基であり、
Yは、有機スペーサ基であり、
Gは、担体に結合することができる官能性連結基であり、
pは、0又は1であり、
mは、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、4、又は5である。
【0037】
更なる実施形態において、本発明は、クエチアピンに結合し、(i)式Iの化合物と免疫原性担体との複合体に応答して生成されるか、又は(ii)(i)の抗体により結合されるエピトープと同じであるエピトープに対して競合する、単離抗体又はその結合断片を目的とし、式中、
1は、H、又はCH2NH−(Y)p−Gであり、
2は、H、又はCH2NH−(Y)p−Gであるが、但し、R1又はR2のいずれかがHでなければならないものとし、かつ更に、R1及びR2の両方が同時にHであってはならないものとし、
3は、Hであり、
式中、
Yは、有機スペーサ基であり、
Gは、担体に結合することができる官能性連結基であり、
pは、1である。
【0038】
更なる実施形態において、本発明は、クエチアピンに結合し、(i)式Iの化合物と免疫原性担体との複合体に応答して生成されるか、又は(ii)(i)の抗体により結合されるエピトープと同じであるエピトープに対して競合する、単離抗体又はその結合断片を目的とし、式中、
1は、H、
【0039】
【化15】
CH2NH2、又はCH2NHC(O)(CH2mCO2Hであり、
2は、H、
【0040】
【化16】
CH2NH2、又はCH2NHC(O)(CH2mCO2Hであるが、但し、R1又はR2のいずれかがHでなければならないものとし、かつ更に、R1及びR2の両方が同時にHであってはならないものとし、
3は、Hであり、
mは、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、4、又は5である。
【0041】
更なる実施形態において、本発明は、クエチアピンに結合し、(i)式Iの化合物と免疫原性担体との複合体に応答して生成されるか、又は(ii)(i)の抗体により結合されるエピトープと同じであるエピトープに対して競合する、単離抗体又はその結合断片を目的とし、式中、
1は、H、
【0042】
【化17】
又はCH2NH2であり、
2は、H、
【0043】
【化18】
又はCH2NH2であるが、但し、R1又はR2のいずれかがHでなければならないものとし、かつ更に、R1及びR2の両方が同時にHであってはならないものとし、
3は、Hであり、
mは、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、4、又は5である。
【0044】
好ましい実施形態において、本発明は、クエチアピンに結合し、(i)式IVの化合物と免疫原性担体との複合体に応答して生成されるか、又は(ii)(i)の抗体により結合されるエピトープと同じであるエピトープに対して競合する、単離抗体又はその結合断片を目的とする。
【0045】
【化19】
【0046】
好ましい実施形態において、本発明は、クエチアピンに結合し、(i)式Vの化合物と免疫原性担体との複合体に応答して生成されるか、又は(ii)(i)の抗体により結合されるエピトープと同じであるエピトープに対して競合する、単離抗体又はその結合断片を目的とする。
【0047】
【化20】
【0048】
好ましい実施形態において、本発明は、クエチアピンに結合し、(i)式VIの化合物と免疫原性担体との複合体に応答して生成されるか、又は(ii)(i)の抗体により結合されるエピトープと同じであるエピトープに対して競合する、単離抗体又はその結合断片を目的とする。
【0049】
【化21】
【0050】
好ましい実施形態において、本発明は、クエチアピンに結合し、(i)式VIIの化合物と免疫原性担体との複合体に応答して生成されるか、又は(ii)(i)の抗体により結合されるエピトープと同じであるエピトープに対して競合する、単離抗体又はその結合断片を目的とする。
【0051】
【化22】
【0052】
好ましくは、本発明の抗体は、式I、式IV、式V、式VI、及び式VIIの化合物から選択される化合物と免疫原性担体との複合体に応答して生成される。
【0053】
上記の式により説明される化合物、及び化合物と免疫原性担体により形成される複合体の更なる詳細は、以下の「化合物、複合体、及び免疫原」と題する節に提供される。
【0054】
本発明の抗体の更なる詳細は、以下の「抗体」と題する節に提供される。
【0055】
本発明は、抗体を含むアッセイキット、並びに抗体を含むアッセイ装置を更に提供する。好ましくは、アッセイ装置は、側方流動アッセイ装置である。アッセイキット及びアッセイ装置の更なる詳細は、以下の「アッセイキット及び装置」と題する節に提供される。
【0056】
本発明は、クエチアピンに結合する抗体を産生する方法を更に提供し、本方法は、(i)抗体産生のための宿主細胞を選択することと、(ii)宿主に式Iの化合物と免疫原性担体との複合体を接種することと、を含み、この宿主は、クエチアピンに結合する抗体を産生する。更なる実施形態において、本方法において使用される複合体は、式IV、式V、式VI、及び式VIIの化合物から選択される化合物と免疫原性担体との複合体であり得る。本発明の抗体の産生における更なる詳細は、以下の「抗体」と題する節に提供される。
【0057】
クエチアピンに結合するモノクローナル抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞株を産生する方法が、更に提供される。本方法は、(i)抗体産生のための宿主を選択することと、(ii)宿主に式Iの化合物と免疫原性担体との複合体を接種することと、(iii)接種された宿主からの細胞株を連続的に分裂している細胞と融合させて、クエチアピンに結合するモノクローナル抗体を産生することができる融合細胞を作製することと、(iv)ハイブリドーマ細胞株を得るために、融合細胞をクローニングすることと、を含む。更なる実施形態において、本方法において使用される複合体は、式IV、式V、式VI、及び式VIIの化合物から選択される化合物と免疫原性担体との複合体であり得る。本発明によるハイブリドーマの産生の更なる詳細は、以下の「抗体」と題する節に提供される。
【0058】
本発明は、試料中のクエチアピンを検出する方法を更に提供する。本方法は、(i)試料を検出可能なマーカーで標識された本発明による抗体と接触させることであって、標識された抗体と試料中に存在するクエチアピンとが標識された複合体を形成する、接触させることと、(ii)試料中のクエチアピンを検出するために、標識された複合体を検出することと、を含む。本発明によるクエチアピンを検出する方法の更なる詳細は、以下の「イムノアッセイ」と題する節に提供される。
【0059】
試料中のクエチアピンを検出するための競合的イムノアッセイ方法が更に提供される。本方法は、(i)試料を、本発明による抗体と、及びクエチアピン又はクエチアピンの競合結合パートナーと、接触させることであって、抗体及びクエチアピン又はその競合結合パートナーのうちの1つが、検出可能なマーカーで標識され、試料のクエチアピンが、抗体への結合に対して、クエチアピン又はその競合結合パートナーと競合する、接触させることと、(ii)試料のクエチアピンを検出するために、標識を検出することと、を含む。本発明によるクエチアピンを検出する競合的イムノアッセイ方法の更なる詳細は、以下の「イムノアッセイ」と題する節に提供される。
【0060】
本発明の好ましい実施形態において、クエチアピンの検出は、クエチアピンに加えて1つ以上の検体の検出を伴う。好ましくは、1つ以上の追加の検体は、クエチアピン以外の抗精神病薬であり、より好ましくは、クエチアピン以外の抗精神病薬は、アリピプラゾール、リスペリドン、パリペリドン、オランザピン、及びそれらの代謝産物からなる群から選択される。
【0061】
上述のように、本発明の抗体は、患者試料中の抗精神病薬の存在及び/又はその量を検出するためのアッセイにおいて使用することができる。そのような検出は、治療薬物の全ての便益を有効にする治療薬物モニタリングを可能にする。抗精神病薬のレベルの検出は、多くの目的のために有用であり得、これらのそれぞれは、本発明の別の実施形態を表し、処方された治療薬の患者の順守又は服薬遵守の判定、患者が経口抗精神病薬レジメンから持続性のある注入可能な抗精神病薬レジメンに切り替えるべきかどうかを判定するための決定ツールとしての使用、有効又は安全な薬物レベルの到達又は維持を確実にするために、経口又は注入可能な抗精神病薬の用量レベル又は投薬間隔を増加させるべきか、それとも減少させるべきかを判定するための決定ツールとしての使用、最小のpKレベルの到達の証拠を提供することによる抗精神病薬の開始時の一助としての使用、複数の製剤中又は複数の源からの抗精神病薬の生物学的同等性を判定するための使用、多剤投与及び潜在的な薬物間相互作用の影響を評価するための使用、並びに患者が臨床治験から除外されるべきか、又は含まれるべきかの指標、及び臨床治験の投薬必要条件の順守のその後のモニタリングの一助としての使用が含まれる。
【0062】
化合物、複合体、及び免疫原
化合物及び複合体及び免疫原に関連して、次の略号が使用される:AMASは、N−(α−マレイミドアセトキシ)スクシンイミドエステルであり、BINAPは、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナプチル(binapthyl)であり、Boc又はBOCは、tert−ブトキシカルボニルであり、BTGは、ウシサイログロブリンであり、Bu3Nは、トリブチルアミンであり、DCCは、ジシクロヘキシルカルボジイミドであり、DCMは、ジクロロメタンであり、DIEAは、ジイソプロピルエチルアミンであり、DMFは、N,N−ジメチルホルムアミドであり、EDCI又はEDCは、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩であり、EDTAは、エチレンジアミン四酢酸であり、HOBT又はHOBtは、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物であり、KLHは、キーホールリンペットヘモシニアンであり、Pd2(dba)3は、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)であり、SATAは、N−スクシンイミジルS−アセチルチオ酢酸塩であり、TEA又はEt3Nは、トリエチルアミンであり、THFは、テトラヒドロフランであり、TFAは、トリフルオロ酢酸であり、r.t.は、室温であり、DEADは、アゾジカルボン酸ジエチルであり、DICは、ジイソプロピルカルボジイミドであり、NHSは、N−ヒドロキシスクシンイミドであり、TFPは、テトラフルオロフェニルであり、PNPは、p−ニトロフェニルであり、TBTUは、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラートであり、DEPBTは、3−(ジエトキシホスホリルオキシ)−1,2,3−ベンゾトラジン−4(3H)−オンであり、BOP−Clは、ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)五塩化リンであり、DTTは、ジチオエリトリトールである。
【0063】
用語「複合体」は、別々の部分を一緒に結合することで形成される任意の物質を指す。代表的な複合体には、式Iの化合物等の小分子を、担体又はポリアミンポリマー、特にタンパク質等の大分子と一緒に結合することにより形成されるものが含まれる。複合体において、小分子は、大分子上の1つ以上の活性部位で結合することができる。
【0064】
用語「ハプテン」は、部分的又は不完全な抗原を指す。ハプテンは、抗体形成を刺激できないが、抗体と反応する、タンパク質不含物質である。抗体は、高分子量の免疫原性担体にハプテンを結合し、この結合した生成物、即ち、免疫原をヒト又は動物対象に注射することにより形成される。
【0065】
用語「免疫原」は、生物体において免疫応答を誘発する、生じる、又は生成することができる物質を指す。
【0066】
本明細書で使用される「免疫原性担体」は、免疫原性物質、一般的に、ハプテンと1つ以上の位置で結合し、それにより、これらのハプテンと結合し得る抗体の産生を可能にするタンパク質である。免疫原性担体物質の例としては、タンパク質、糖タンパク質、複合ポリアミノ−多糖類、粒子、及び外来物質として認識され、結果として宿主から免疫学的な応答を誘発する核酸が挙げられるが、これらに限定されない。ポリアミノ−多糖類は、この調製に関して知られている従来の手段のいずれかを使用して多糖類から調製され得る。
【0067】
アルブミン、血清タンパク質、リポタンパク質等を含むが、これらに限定されない、様々な型のタンパク質が、免疫原性担体として使用され得る。例示的なタンパク質には、ウシ血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、卵オボアルブミン、ウシチログロブリン、第V画分ヒト血清アルブミン、ウサギアルブミン、カボチャ種子グロブリン、ジフテリア毒素、テタヌス毒素、ボチリヌス毒素、サクシニル化タンパク質、及びポリリシン等の合成ポリ(アミノ酸)が含まれる。
【0068】
免疫原性担体はまた、ポリアミノ−多糖類を含み得、これらは、単糖類の反復的な縮合により構築された、高分子量のポリマーである。多糖類の例は、デンプン、グリコーゲン、セルロース、アラビアガム等の炭水化物ガム、寒天等である。多糖類はまた、ポリ(アミノ酸)残基及び/又は脂質残基も含有する。
【0069】
免疫原性担体はまた、単独の又は上述のポリ(アミノ酸)又は多糖類のうちの1つに複合化されているポリ(核酸)であり得る。
【0070】
免疫原性担体はまた、固体粒子も含むことができる。粒子は、一般に、直径が少なくとも約0.02マイクロメートル(μm)で約100μm以下、通常、約0.05μm〜10μmである。粒子は、最適には水に近似する密度、一般に約0.7〜1.5g/mLの、有機又は無機の膨張可能又は非膨張可能な多孔質又は非多孔質の粒子であり得、透明、部分的透明、又は不透明な材料から構成され得る。粒子は、細胞及び微生物等の生物学的材料であり得、非限定的な例として、赤血球、白血球、リンパ球、ハイブリドーマ、ストレプ卜コッカス属、スタヒロコッカスアウレウス、大腸菌、及びウイルス等が挙げられる。粒子はまた、有機及び無機ポリマー、リポソーム、ラテックス、リン脂質小胞、又はリポタンパク質からも構成され得る。
【0071】
用語「誘導体」は、1つ以上の化学反応により親化合物から作られた化学化合物又は分子を指す。
【0072】
化学化合物の用語「類似体」は、炭素原子鎖及び参照化合物と同じ特定の官能基を含有する化学化合物を指すが、類似体の炭素鎖は、参照化合物の鎖よりも長い又は短い。
【0073】
「標識」、「検出分子」、「レポーター」、又は「検出可能なマーカー」は、検出可能なシグナルを生成する又は誘発されて生成することができる任意の分子である。標識は、検体、免疫原、抗体に、又は受容体等の別の分子若しくはリガンド等の受容体に結合し得る分子、特にハプテン又は抗体に、複合化され得る。標識は、直接的に、又は連結部分若しくは架橋部分を用いて間接的に、結合され得る。標識の非限定的な例としては、放射能アイソトープ(例えば、125I)、酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ)、酵素断片、酵素基質、酵素阻害剤、コエンザイム、触媒、フルオロフォア(例えば、ローダミン、フルオレセインイソチオシアネート、若しくはFITC、若しくはDylight 649)、染料、化学発光物質及び発光物質(例えば、ジオキセタン、ルシフェリン)、又は増感剤が挙げられる。
【0074】
本明細書で使用される場合、「スペーサ」は、官能性連結基を介してハプテン、担体、免疫原、標識、又は結合パートナー等の2つ以上の部分構造体を接続する化学構造の部分を指す。これらのスペーサ基は、一般的に存在する原子からなり、有機化合物に一般的に見られる方法で組立てられるため、「有機スペーサ基」として称され得る。スペーサを組立てるために使用される化学的成分は、本出願において以下に記載されよう。好ましいスペーサの中には、直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和炭素鎖がある。これらの炭素鎖はまた、鎖内に1つ以上のヘテロ原子、鎖内に又は鎖の末端で任意の炭素原子の1つ以上の水素を置き換える1つ以上のヘテロ原子も含み得る。「ヘテロ原子」とは、酸素、窒素、リン、及び硫黄からなる群から選択される炭素以外の原子を意味し、この窒素、リン、及び硫黄原子は、任意の酸化状態で存在し得、炭素若しくはそれらに結合する他のヘテロ原子を有し得る。スペーサはまた、鎖の一部として、又は鎖の中の原子のうちの1つの上の置き換えとして環式又は芳香族基も含み得る。
【0075】
スペーサ基の原子の数は、水素以外の原子を計数することにより決定される。スペーサ基の内部の鎖の原子の数は、接続されている部分構造体の間の最短経路に沿って水素以外の原子の数を計数することにより決定される。好ましい鎖の長さは、1〜20個の原子である。
【0076】
「官能性連結基」とは、ハプテン上に存在する反応基を指し、この反応基を使用して、利用可能な反応部位を提供し得、この反応部位を通じて、ハプテン部分が共有化学結合の形成により別の部分に連結されて、ハプテンと別の部分(標識若しくは担体等)との複合体を生成し得る。ハプテンは、このようにして、ビオチン等の部分に連結して、競合結合パートナーを形成し得る。
【0077】
スペーサ基を使用して、ハプテンを担体に連結し得る。異なる長さのスペーサにより、抗体形成プロセスの最適化のために、免疫化されている動物又はヒトの免疫系への提示のために、担体から様々な距離でハプテンを結合させることができる。ハプテン分子中の異なる位置への結合により、抗体認識に影響を及ぼす免疫系にハプテン上の特定部位を示す機会を与える。スペーサは、水性培地中でより可溶性であるハプテン誘導体を作製するために親和性可溶化基を含み得る。親水性可溶化基の例としては、ポリオキシアルキルオキシ基、例えば、ポリエチレングリコール鎖、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、及びスルホネート基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
用語「求核基」又は「求核剤」は、電子対を提供して、反応において化学結合を形成する種を指す。用語「求電子性基」又は「求電子剤」は、求電子剤から電子対を受容して、反応において化学結合を形成する種を指す。
【0079】
用語「置換」は、親分子上の任意の位置で炭素原子上の水素原子の代わりに、1個の原子又は原子群の置換を指す。置換基の非限定的な例には、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキル基、アリール基、ヘテロアルキル基、ヘテロアリール基、シアノ基、アルコキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、及びケトン基が挙げられる。
【0080】
用語「アルキル」は、別途記載のない限り、最大で12個の炭素原子の飽和又は不飽和の直鎖及び分枝鎖ラジカルを指し、具体的には、飽和の任意の程度又はレベルを有するラジカルを含むことが意図される。アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、及びドデシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
用語「シクロアルキル」は、3〜10個の炭素原子からなる飽和又は部分的に不飽和の単環式又は二環式の炭化水素環ラジカルを指す。アルキル置換基は、任意に、環上に存在し得る。例としては、シクロプロピル、1,1−ジメチルシクロブチル、1,2,3−トリメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘキセニルが挙げられる。
【0082】
用語「ヘテロアルキル」は、鎖内に1つ以上のヘテロ原子を含むアルキル基を指し、1つ以上のヘテロ原子は鎖内又は鎖の末端で任意の炭素原子に1つ以上の水素を置換する。
【0083】
用語「アミノアルキル」は、アルキル鎖に沿って任意の炭素原子に結合される少なくとも第1級又は2級アミノ基を指す。
【0084】
用語「アルコキシ」は、別途記載のない限り、酸素原子に結合される最高で12個の炭素原子の直鎖及び分枝鎖ラジカルを指す。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、及びブトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
用語「アルコキシアルキル」は、アルキル鎖に沿って任意の炭素原子に結合される少なくとも1つのアルコキシ基を指す。
【0086】
用語「チオアルキル」は、アルキル鎖に沿って任意の炭素原子に結合される少なくとも1つの硫黄基を指す。硫黄基は、いずれかの酸化状態であり得、スルホキシド、スルホン、及び硫酸塩を含む。
【0087】
用語「カルボキシレート基」には、カルボン酸、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルカルボキシレートエステルが含まれる。
【0088】
用語「アルキルカルボニル」は、アルキル鎖に沿って任意の炭素原子に結合されるカルボニル基を有する基を指す。
【0089】
用語「ヘテロアリール」は、5員〜7員の単環式、又は8員〜10員の二環式芳香環ラジカルを指し、これらの任意の環は、N、O、又はSから選択される1〜4個のヘテロ原子からなり得、窒素及び硫黄原子は、許容されるいずれかの酸化状態で存在し得る。例としては、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、フリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、キノリニル、チアゾリル、及びチエニルが挙げられる。
【0090】
用語「アリール」は、環内に6〜12個の炭素を含有する単環式又は二環式芳香環ラジカルを指す。アルキル置換基は、任意に、環上に存在し得る。例としては、フェニル、ビフェニル、及びナフタレン(napththalene)が挙げられる。
【0091】
用語「アラルキル」は、アリール置換基を含有するC1〜6アルキル基を指す。例としては、ベンジル、フェニルエチル、又は2−ナフチルメチルが挙げられる。
【0092】
用語「アシル」は、基−C(O)Raを指し、式中、Raは、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、アラルキル、及びヘテロアリールである。「アシル化剤」は、分子に−C(O)Ra基を付加する。
【0093】
用語「スルホニル」は、基−S(O)2bを指し、式中、Rbは、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、アリール、アラルキル、及びヘテロアリールである。「スルホニル化剤」は、分子に−S(O)2a基を付加する。
【0094】
担体部分へのハプタンの結合のための反応性官能性連結基を担持するスペーサは、様々な方法により調製され得る。このスペーサは、ハプテンと担体との選択的な逐次反応を可能にするようにいずれかの末端で基と特異的に官能化されるか又は活性化される分子を使用して形成され得るが、同じ反応性部分は、両末端でも使用され得る。ハプテンと担体に結合されるべき官能性連結基との反応のために選択される基は、ハプテンとハプテンが結合される担体の官能性基の種類により判定される。スペーサ並びにハプテン及び担体への結合の方法としては、Brinkley,M.,A.,Bioconjugate Chem.1992,3:2〜13,Hermanson,Greg T.,Bioconjugate Techniques,.Academic Press,London,Amsterdam,Burlington,MA,USA,2008及びThermo Scientific Pierce Crosslinking Technical Handbook;Thermo Scientific 3747 N Meridian Rd,Rockford,IL USA 61101,ph 800−874−3723、又はhttp://www.piercenet.com/からダウンロード若しくはハードコピーの要求で利用可能、及びその中の参考文献により記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。スペーサ基の形成のための多くの特異的に活性化された分子は、供給メーカー、例えば、Thermo Scientificから市販されている。
【0095】
アミノ基を担持するハプテンについては、ハプテンへのスペーサの結合モードには、ハプテン上のアミンとハロゲン化アシル又は活性エステルを担持するスペーサ構築ブロックとの反応が含まれる。「活性エステル」は、安定した連結を形成する緩やかな条件下で、求核基、例えば、アミノ基との反応を行うエステルとして定義される。安定した連結は、例えば、その後の合成工程、免疫原としての使用、又は生化学的アッセイにおいて、更なる使用の条件下で、無傷の状態のままでいるものとして定義される。安定した連結の好ましい例は、アミド結合である。活性エステル及び形成の方法は、Benoiton,N.L.,in Houben−Weyl,Methodsof Organic Chemistry,Thieme Stuttgart,New York,vol E22 section 3.2:443及びBenoiton,N.L.,Chemistry of Peptide Synthesis,Taylor and Francis,NY,2006により記載される。好ましい活性エステルとしては、p−ニトロフェニルエステル(PNP)、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)、及びテトラフルオロフェニルエステル(TFP)が挙げられる。アシルハロゲン化物は、当業者に既知の多くの方法、例えば、カルボン酸の塩化チオニル又は塩化オキサリルとの反応によって、調製され得る。Fieser,L.F.and Fieser,M.Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons,NY,1967及びその中の参考文献を参照されたい。これらは、Wu et.al,Organic Letters,2004,6(24):4407により記載される活性二官能性スペーサにも使用され得るp−ニトロフェニルエステル(PNP)等の他の活性エステルに変換され得る。N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルは、非プロトン性溶媒中のトリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基の存在下で、国際公開第WO2012012595号の実施例35に記載される無水条件下で、N,N−ジスクシンイミジルカーボネート(CAS 74124−79−1)と化合物のカルボン酸との反応により、あるいは、無水条件下で、N−ヒドロキシスクシンイミド及びジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)又は他の脱水剤を使用することにより調製され得る。テトラフルオロフェニルエステル(TFP)は、非プロトン性溶媒中のトリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基の存在下で、Wilbur,et.al,Bioconjugate Chem.,2004,15(1):203により報告される無水条件下で、カルボン酸と2,3,5,6−テトラフルオロフェニルトリフルオロアセテートとの反応により調製され得る。当業者により、とりわけ、表1に示されるスペーサが、既知の方法を使用して得ることができ、通常の反応条件の最適化のために使用するアミノを担持するハプテンに結合させることできることを認識されよう。これらのスペーサは、担体におけるチオール基へのハプテンの結合を可能にする。
【0096】
【表1】
【0097】
カップリング剤の存在下で、ハプテン上のアミンとスペーサ構築ブロック上のカルボン酸官能基の直接カップリングはまた、結合モードとして使用され得る。好ましい試薬は、ペプチド合成において一般的に使用されるものである。ペプチドカップリング試薬としては、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU,CAS #125700−67−6)、Pruhs,S.,Org.Process.Res.偏差2006,10:441を参照されたい)、カルボジイミド脱水剤を含むN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT,CAS #2592−95−2)、例えば、N−N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、又は1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、(Konig W.,Geiger,R.Chem.Ber.,1970,103(3):788を参照されたい)、3−(ジエトキシホスホリルオキシ)−1,2,3−ベンゾトラジン−4(3H)−オン(DEPBT,CAS#165534−43−0)、(Liu,H.et.al.,Chinese Chemical Letters,2002,13(7):601を参照されたい)、ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスホニッククロリド(BOP−Cl,CAS# 68641−49−6)、(Diago−Meseguer,J et.al.Synthesis,1980,7:547〜51、及びBenoiton in Chemistry of Peptide Synthesis,CRC Press,Boca Raton,FL,2005,Chapter 2により詳述されるもの、Advanced Automated Peptide Protein Technologies(aapptec),6309 Shepardsville Rd.,Louisville KY 40228,ph 888 692 9111により提供される技術告示、www.aapptec.com、及びその中の参考文献を参照されたい)等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの方法は、スペーサにハプテンを結合する安定したアミド連結を形成する。既知の方法を使用して得ることができ、上に記載及び言及される方法を利用する通常の反応条件の最適化のために使用するアミノを担持するハプテンに結合させることできるスペーサの例を、表2に示すが、表2中のものに限定されない。これらのスペーサは、担体におけるチオール基へのハプテンの結合を可能にする。
【0098】
【表2】
【0099】
スペーサはまた、段階的な様式で、ハプテンへの適切な化学基の逐次結合により構成され得、担体に結合することができる官能性連結基を形成する工程が含まれる。一般的な反応スキーム下、例示的な例を参照されたい。
【0100】
更に、ハプテンが求核基、例えば、スペーサの結合点になるであろうチオール基、アミノ基、又はヒドロキシル基を有する場合、スペーサはまた、チオール基、アミン基、又はヒドロキシル基のアルキル化により構成され得る。置換反応を行うことができる部分で適切に置換される任意のアルキル基、例えば、ハロゲン化アルキル、又はp−トルエンスルホネート等のスルホン酸エステルは、スペーサを結合させるために使用され得る。アルキル化反応の多くの例は、当業者には知られており、特定の例は、一般の化学文献において見出され、通常の実験を通して最適化され得る。多くの参考文献によるアルキル化反応の考察は、Chapter 10 of March’s Advanced Organic Chemistry,Smith,M.B.,and March,J.,John Wiley & sons,Inc.NY,2001において見出され得る。他の連結はまた、求核部分、例えば、ハプテン上のアミンと、尿素を形成するためのイソシアネートとの反応、又はチオ尿素連結を形成するためのイソチオシアネートとの反応を使用され得る、Li,Z.,et.al.,Phosphorus,Sulfur and Silicon and the Related Elements,2003,178(2):293〜297を参照されたい。スペーサを、ヒドロキシル基を担持するハプテンに結合させて、イソシアネート基との反応により、カルバメート又はウレタン連結を形成し得る。スペーサは、ある末端上でイソシアネート官能性基と、担体と反応させることができる官能性連結基と特異的に活性化され得る(Annunziato,M.E.,Patel,U.S.,Ranade,M.and Palumbo,P.S.,Bioconjugate Chem.,1993,4:212〜218を参照されたい)。
【0101】
カルボン酸基を担持するハプテンについては、ハプテンへのスペーサ部分の結合モードには、ハロゲン化アルキル若しくは活性エステルとしてカルボン酸基の活性化が含まれ、この例を表3に示し、この調製は、上述されており、続いて、アミド、ヒドラジド、ジアシルヒドラジン、若しくはエステル連結を形成するために、スペーサ部分上でのアミノ(−NH2−)、ヒドラジノ(−NH−NH2−)、ヒドラジド(−C(O)−NH−NH2−)、又はヒドロキシル基(−OH)との反応、あるいはスペーサ部分上での又は上述されるペプチドカップリング試薬及び/若しくはカルボジイミド脱水剤により担体上での直接的な、アミノ基とのカルボン酸基の直接カップリングが含まれ、これらの例を表4及び5に示す。活性化エステルの形成及びペプチドカップリング剤の使用のために上に言及される参考文献に見出される手順は、スペーサ構築ブロックへのカルボンサンを担持するハプテン、及び通常の反応条件の最適化のために使用する利用可能なアミノ基とのタンパク質担体の結合のために使用され得る。
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
【表5】
【0105】
他の求電子基は、スペーサ、例えば、ハロゲン化スルホニル
【0106】
【化23】
又は、求電子リン基、例えば、
【0107】
【化24】
【0108】
(Malachowski,William P.,Coward,James K.,Journal of Organic Chemistry,1994,59(25):7616を参照されたい)、
又は
【0109】
【化25】
である、Rcは、アルキル、シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキルである、スペーサに結合させるために、ハプテン上に存在し得る。
【0110】
Aliouane,L.,et.al,Tetrahedron Letters,2011,52(28):8681を参照されたい。
【0111】
アルデヒド基又はケトン基を担持するハプテンは、スペーサ上でのヒドラジド基H2N−NH−C(O)−との反応を含むが、これに限定されない方法を使用して、スペーサに結合されて、アシルヒドラゾンを形成し得る。Chamow,S.M.,Kogan,T.P.,Peers,D.H.,Hastings,R.C.,Byrn,R.A.and Askenaszi,A.,J.Biol.Chem.,1992,267(22):15916を参照されたい。担体上でのチオール基への結合を可能にする二官能性ヒドラジドスペーサ基の例を表6に示す。
【0112】
【表6】
【0113】
ハプテンはまた、担体と反応し得るチオール基を含有し得るが、但し、この担体は、チオールと反応し得る基を提供するために修飾されるものとする。担体基は、担体上のアミノ基と、N−スクシンイミジルマレイミドアセテート(AMAS,CAS#55750−61−3)、スクシンイミジルヨードアセテート(CAS# 151199−81−4)との反応による、マレイミド官能性基を含有する基の結合、又は担体へのハプテンの結合をもたらす反応を経ることがある基を導入するための、表1に示される二官能性スペーサ基のうちのいずれかの結合が含まれるが、これに限定されない方法により修飾され得る。
【0114】
担体との結合を形成することができる官能性連結基は、安定した連結を形成することができる任意の基であり得、担体上で多くの異なる基と反応し得る。官能性連結基は、好ましくは、担体上でアミノ基、カルボン酸基、若しくはチオール基、又はその誘導体と反応し得る。官能性連結基の非限定的な例は、カルボン酸基、ハロゲン化アシル、活性エステル(上で定義されるように)、イソシアネート、イソチオシアネート、ハロゲン化アルキル、アミノ基、チオール基、マレイミド基、アクリル酸基(H2C=CH−C(O)−)、又はビニルスルホン基H2C=CH−SO2−)である。Park,J.W.,et.al.,Bioconjugate Chem.,2012,23(3):350を参照されたい。官能性連結基は、ハプテンと段階的に反応し得る特異的に活性化したスペーサ構築ブロックの一部として存在し得、得られたハプテン誘導体は、担体と反応し得る。あるいは、ハプテンは、その後の反応により官能性連結基に形質転換され得る前駆体基を担持するスペーサで誘導体化され得る。スペーサ上の官能性連結基がアミン又はカルボン酸基であるとき、担体上のカルボン酸基又はアミンとのカップリング反応は、これらの試薬について上で言及される参考文献の手順に従って、ペプチドカップリング試薬の使用を通して直接行われ得る。
【0115】
特定のジスルフィド基、例えば、ピリジルジスルフィドは、スペーサ上で官能性連結基として使用され得、担体上でチオール基との交換を行い、混合ジスルフィド結合を形成し得る。Ghetie,V.,et al.,Bioconjugate Chem.,1990,1:24〜31を参照されたい。これらのスペーサは、アミンを担持するハプテンと、ピリジルジスルフィド基を担持するスペーサに結合される活性エステルとの反応により結合され得、これらの例には、表7に示されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
【表7】
【0117】
ほとんどの場合、担体は、タンパク質であり、アミン反応性官能性連結基による反応により直接、又はN−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA,CAS 76931−93−6)若しくはその類似体を含むチオール含有基で誘導体化した後、ヒドロキシルアミンによりアセテート基を開裂し、ハプテン上での官能性連結基との反応のためにチオール基を曝露することにより、リシン残基のε−アミノ基が、結合のために使用され得る。チオール基はまた、2−メルカプトエチルアミン(Bilah,M.,et.al.,Bioelectrochemistry,2010,80(1):49を参照されたい)、ホスフィン試薬、(Kirley,T.L.,Analytical Biochemistry,1989,180(2):231を参照されたい)、又はジチオエリトリトール(DTT,CAS3483−12−3)(Cleland,W.,Biochemistry,1964,3:480〜482を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない、穏やかな還元試薬を用いて、タンパク質担体内でのジスルフィド結合の還元により担体に導入され得る。
【0118】
一般的な反応スキーム
本発明による抗体を産生するために有用な化合物は、以下に記載される一般的な合成方法に従って合成することができる。式(i)の化合物は、当業者に既知の方法により調製することができる。以下の反応スキームは、本発明の代表的な実施例であるということのみを意味し、本発明の限定であることは全く意味しない。
【0119】
クエチアピンの誘導体は、幾つかの方法によって調製され得る。スキーム1に示される出発化合物(R1及びR2=H)である、クエチアピンにおける第一ヒドロキシル基は、例えば、無水コハク酸、及びFiedler,H.,et.al.,Langmuir,1994,10:3959によって記載される方法を使用して、アシル化され得る。得られた酸を、本開示内の他の箇所に記載されるように更に官能化してもよく、又は後続の実施例に示される方法を含む任意の数の上述の方法を使用して、担体に直接結合してもよい。
【0120】
【化26】
【0121】
クエチアピンの第一ヒドロキシル基はまた、米国特許公開第20100069356号の手順に従って、スキーム2に示されるように、硫酸水素テトラブチルアンモニウム及び水酸化ナトリウム水溶液の存在下で4−ブロモメチルペンタノエート等の、アルキルハロゲン化物又はスルホン酸エステルを使用してアルキル化して、エーテルを形成して、酸を得てもよく、この酸を上述のように使用してもよい。
【0122】
【化27】
【0123】
式Iの化合物(式中、R2は、CH2NHC(O)(CH2mCO2Hである)は、スキーム3に従って作製され得る。実施例1に記載されるように調製された、2−(2−(2−(アミノメチル)−4−(ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル)ピペラジン−1−イル)エトキシ)エタノールの反応は、無水コハク酸又は無水グルタル酸等の環状無水化合物と共に、ピリジン等の溶媒中、室温から60℃の範囲の温度で約48時間進行する。当業者であれば、同じ化学反応を使用して、式Iの化合物(式中、R1は、CH2NHC(O)(CH2mCO2Hである)を作製し得ることを認識するであろう。
【0124】
【化28】
【0125】
式Iの化合物(式中、R2は、
【0126】
【化29】
である)は、スキーム4に従って作製され得る。スキーム1に記載されるように調製された、式Iの化合物(式中、R2は、CH2NHC(O)(CH2mCO2Hである)を、N−t−ブトキシカルボニルピペラジン、シアノホスホン酸ジエチル、及びジイソプロピルエチルアミン等の塩基で処理する。反応は、ジクロロメタン等の溶媒中、室温で約2時間行う。ピペラジニル基の脱保護を、スキーム4に記載されるように無水トリフルオロ酢酸により遂行し、続いて無水コハク酸又は無水マレイン酸等の適切な無水物との反応を、ジイソプロピルエチルアミン等の好適な塩基の存在下で行う。当業者であれば、同じ化学反応を使用して、式Iの化合物(式中、R1は、
【0127】
【化30】
である)を作製し得ることを認識するであろう。
【0128】
【化31】
【0129】
式Iの化合物(式中、R1は、
【0130】
【化32】
である)は、スキーム5に従って作製され得る。マレイミドは、当該技術分野において既知の任意の方法により導入され得る。2,5−ジオキソピロリジン−1−イル2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)酢酸塩(式中、mは、1である)等のマレイミド官能基を、DMF又はCH2Cl2等の溶媒、及びトリブチルアミン又はトリエチルアミン等の塩基中で使用してもよい。別の方法として、スキーム4に記載される脱保護されたピペラジニル基は、スキーム5に記載されるようにマレイミド官能基により産生して、式Iの化合物(式中、R1は、
【0131】
【化33】
である)を得てもよい。当業者であれば、同じ化学反応を使用して、式Iの化合物(式中、R2は、
【0132】
【化34】
である)を作製し得ることを認識するであろう。
【0133】
【化35】
【0134】
マレイミド官能化ハプテン(式中、R1又はR2は、
【0135】
【化36】
である)は、スキーム6に示される方法に従ってタンパク質に複合化され得る。N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA)によるε−窒素のアシル化、続いて、ヒドロキシルアミンによるS−アセチル基の加水分解によるタンパク質リシン残基の活性化により、求核スルフヒドリル基を生成する。スルフヒドリルで活性化したタンパク質とマレイミドで誘導体化されたハプテン(一般スキーム3に記載されるように調製された)とのコンジュゲーションは、マイケル付加反応により発生する。好適なタンパク質は、当業者には既知であり、キーホールリンペットヘモシアニン、ウシサイログロブリン、及びオボアルブミンが含まれる。同じ手法を使用して、タンパク質をマレイミド官能化ハプテン(式中、R1又はR2は、
【0136】
【化37】
である)に複合化してもよい。
【0137】
【化38】
【0138】
カルボン酸官能化ハプテン(式中、R1又はR2は、CH2NHC(O)(CH2mCO2Hである)を、スキーム7に示される方法に従ってタンパク質に複合化してもよい。DMF等の溶媒中、N−ヒドロキシスクシンイミドと、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の好適なカップリング剤と、トリブチルアミン等の塩基との、約20℃の温度で約18時間の反応により、ヒドロキシピロリジン−2,5−ジオン離脱基でカルボン酸を活性化する。活性化したリンカー及びハプテンを次いで、pH 7.5のリン酸緩衝液等の溶媒中、約20℃で約2.5時間、タンパク質に複合化してもよい。好適なタンパク質は、当業者には既知であり、キーホールリンペットヘモシアニン、ウシサイログロブリン、及びオボアルブミンが含まれる。同じ手法を使用して、タンパク質をカルボン酸官能化ハプテン(式中、R1又はR2は、
【0139】
【化39】
である)に複合化してもよい。
【0140】
抗体
本発明は、クエチアピンに結合し、(i)式Iの化合物と免疫原性担体との複合体に応答して生成されるか、又は(ii)(i)の抗体により結合されるエピトープと同じであるエピトープに対して競合する、単離抗体又はその結合断片に関する。用語「抗体」は、抗原又はその部分に結合することができる(本発明に従って、抗精神病薬又はその代謝産物に結合することができる)特異的タンパク質を指す。抗体は、注射により、宿主、例えば、動物又はヒトに導入され得る免疫原に応答して産生される。一般的用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、及び抗体断片が含まれる。
【0141】
「抗体」又は「抗原結合抗体断片」は、結合について無傷抗体と競合する、無傷抗体、又はその断片を指す。一般的に言えば、抗体又は抗原結合抗体断片は、解離定数が、1μM以下、好ましくは、100nM以下、最も好ましくは、10nM以下であるときに、抗原と特異的に結合すると言われている。結合は、当業者に知られている方法により測定することができ、一例は、BIAcore(商標)計器の使用である。
【0142】
抗体断片は、無傷抗体の一部、好ましくは、無傷抗体の抗原結合又は可変領域を含む。結合断片には、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、ダイアボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子、並びに抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。「二重特異性」又は「二官能性」抗体以外の抗体は、その結合部位のそれぞれが同一であることが理解される。
【0143】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」は、免疫グロブリン又はT細胞受容体への特異的結合が可能な任意のタンパク質決定基を含む。エピトープの決定基は通常、アミノ酸又は糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面基からなり、かつ、通常、特定の三次元構造特性並びに特定の電荷特性を有する。2つの抗体は、当業者によく知られている方法のうちのいずれか(例えば、上で言及されるBIAcore(商標)方法)により、ある抗体が競合結合アッセイにおいて第2の抗体と競合することが示される場合、「同じエピトープを結合する」と言われる。ハプテン(クエチアピン又は他の抗精神病薬等)に関して、抗体は、ハプテンを免疫原性担体に複合化することにより非抗原性ハプテン分子に対して生成され得る。次いで、ハプテンにより定義される「エピトープ」として認識する抗体が生成される。
【0144】
抗体の文脈において使用される場合、「単離された」とは、任意の自然状態から「人工により」変化させる、即ち、それが自然に生じる場合、変化させるか、又はその元の環境から除去される、又はその両方であることを意味する。例えば、その自然状態で生きている動物に自然に存在する自然発生抗体は、「単離され」ないが、その用語が本明細書に使用されるように、その自然状態の共存する材料から切り離された同じ抗体が「単離される」。抗体は、自然発生の組成物ではない、イムノアッセイ試薬等の組成物に生じ得、それが本明細書に使用されるように、その用語の意味内で単離された抗体をその中に維持する。
【0145】
「交差反応性」とは、抗体と、その抗体を誘発させるために使用されなかった抗原との反応を指す。
【0146】
好ましくは、本発明の抗体は、薬物及び任意の所望の薬理学的に活性な代謝産物と結合するであろう。本発明の化合物への免疫原性担体の結合の位置を変化させることにより、代謝産物による選択性及び交差反応性は、抗体に改変され得る。クエチアピンについて、N−デスアルキルクエチアピン(ノルクエチアピン(norquetiapine))、クエチアピン(quatiapine)スルホキシド、O−デスアルキルクエチアピン、又は7−ヒドロキシクエチアピン等のクエチアピン代謝産物との交差反応性は、望ましいこともあれば、望ましくないこともある。これらの薬物及び/又は代謝産物の複数のものを検出する抗体が生成され得るか、それぞれを別々に検出する抗体が生成され得る(そのため、「特異的な結合」特性を定義する)。抗体は、1つ以上の化合物の結合が等モル又は実質的に等モルであるとき、1つ以上の化合物を特異的に結合する。
【0147】
そのような抗体を産生する方法は、宿主に本明細書に記載の複合体を接種することを含む。好適な宿主としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ロバ、ウマ、サル、チンパンジー、オランウータン、ゴリラ、ヒト、及び成熟免疫応答を呈し得る任意の種が挙げられるが、これらに限定されない。免疫化手順は、当技術分野で十分に確立されており、多くの専門書及び刊行物、例えば、David Wildにより編集された「The Immunoassay Handbook」,2nd Edition(Nature Publishing Group,2000)及びそこに引用されている参考文献に記載されている。
【0148】
好ましくは、本発明の特徴を具現化した免疫原は、アジュバントと組み合わせて、宿主対象、例えば、動物又はヒト対象に投与される。好適なアジュバントとしては、フロイントアジュバント、粉末水酸化アルミニウム(ミョウバン)、百日咳菌と組み合わせた水酸化アルミニウム、及びモノホスホリルリピドA−合成トレハロースジコリノミコレート(MPL−TDM)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
典型的には、免疫原又は免疫原とアジュバントとの組み合わせは、1回若しくは複数回の皮下注射又は腹腔内注射により、哺乳動物宿主に注入される。好ましくは、免疫化計画は、少なくとも1週間かけて、より好ましくは、2週間以上かけて行う。このようにして産生されたポリクローナル抗体は、当技術分野でよく知られている方法を利用して単離及び精製することができる。
【0150】
モノクローナル抗体は、Kohler及びMilsteinの十分に確立されたハイブリドーマ法、例えば、Nature 256:495〜497(1975)により産生することができる。ハイブリドーマ法は、典型的には、宿主又は宿主に由来するリンパ球を免疫化することと、リンパ球を分泌するか又はリンパ球を分泌する能力を有するモノクローナル抗体を採取することと、不死化細胞にリンパ球を融合させることと、所望のモノクローナル抗体を分泌する細胞の選択することと、を含む。
【0151】
宿主を免疫化することにより、免疫原に特異的な抗体を産生するか、又は産生し得るリンパ球を惹起することができる。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。ヒト細胞が望ましい場合、末梢血リンパ球を使用することができるが、他の哺乳動物源に由来する脾臓細胞又はリンパ球が好ましい。
【0152】
リンパ球を不死化細胞系に融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成することができ、このプロセスは、融合剤、例えば、ポリエチレングリコールの使用により容易に行うことができる。例示として、トランスフォーメーションにより不死化された突然変異型の齧歯動物、ウシ、又はヒトの骨髄腫細胞を使用することができる。非融合不死化細胞に対して実質的に純粋なハイブリドーマ細胞集団が好ましい。したがって、融合後、例えば、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)が欠如している突然変異骨髄腫細胞を使用することにより、非融合不死化細胞の増殖又は生存を阻害する好適な培地中で、細胞を増殖させることができる。その場合、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを、培地(HAT培地)に添加して、ハイブリドーマの増殖を可能にした状態で、HGPRT欠損細胞の増殖を防止することができる。
【0153】
好ましくは、不死化細胞は、効率的に融合し、HATのような培地中における選択により混合集団から単離することが可能であり、融合後、安定かつ高レベルの抗体発現を支持する。好ましい不死化細胞系には、American Type Culture Collection,Manassas,VAから入手可能な骨髄腫細胞系が含まれる。
【0154】
ハイブリドーマ細胞は典型的には細胞外に抗体を分泌するため、抗精神病薬に特異的なモノクローナル抗体の存在について培養培地をアッセイすることができる。免疫沈降アッセイ又はインビトロ結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して、モノクローナル抗体の結合特異性を測定することができる。
【0155】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞は、限界希釈手順により単一クローンとして単離し、継代培養することができる。好適な培養培地としては、ダルベッコ変法イーグル培地、RPMI−1640、及び無ポリペプチド培地、低ポリペプチド培地、又は無血清培地、例えば、Biowhittaker,Walkersville,MDから入手可能なUltra DOMA PF若しくはHL−1が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、ハイブリドーマ細胞を腹水としてインビボで増殖させることもできる。
【0156】
モノクローナル抗体は、ポリペプチドA−SEPHAROSE、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、硫酸アンモニウム沈澱、及びアフィニティクロマトグラフィーが含まれるが、これらに限定されない、従来の免疫グロブリン(Ig)精製手順により、培養培地又は腹水から単離及び/又は精製することができる。
【0157】
モノクローナル抗体はまた、米国特許第4,166,452号に記載されるような組み換え法により産生することもできる。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して、例えば、マウス重鎖及び軽鎖抗体遺伝子に特異的に結合するオリゴヌクレオチドプローブを使用して、好ましくは、抗精神病薬に特異的な抗体を分泌するモノクローナル抗体ハイブリドーマ細胞系から単離されたDNAをプローブするために、単離及び配列決定することができる。
【0158】
抗精神病薬に対して特異的な結合部位を含む抗体断片もまた、生成され得る。そのような断片としては、抗体分子のペプシン消化により産生され得るF(ab’)2断片、及びF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することにより産生され得るFab断片が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、Fab発現ライブラリーを構成して、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な特定を可能にし得る(Huse et al.,Science 256:1270〜1281(1989))。Fab、Fv、及びScFv抗体断片はすべて、大腸菌に発現し、それから分泌し得、多量のこれらの断片の産生を可能にする。あるいは、Fab’−SH断片は、大腸菌から直接回収され、化学的に結合して、F(ab’)2断片を形成し得る(Carter et al.,BioTechnology 10:163〜167(1992))。抗体断片の産生のための他の技術は、当業者には既知である。また、単鎖Fv断片(scFv)も構想される(米国特許第5,761,894号及び同第5,587,458号を参照されたい)。Fv及びsFv断片は、定常領域を欠いている無傷混合部位を有する唯一の種であり、そのため、非特異的結合の減少を示す可能性がある。例えば、抗体断片はまた、例えば、米国特許第5,642,870号に記載されるような「直鎖抗体」であり得る。そのような直鎖抗体断片は、単一特異的であっても、二重特異的であってもよい。
【0159】
アッセイキット及び装置
上述の抗体を含むアッセイキット(試薬キットとも称される)もまた、提供され得る。代表的な試薬キットは、抗精神病薬、クエチアピンに結合する抗体、標識部分に結合される抗精神病薬の類似体若しくはその誘導体を含む複合体を含み得、任意に、既知の量の抗精神病薬若しくは関連標準を含む1つ以上の較正器も含み得る。
【0160】
語句「アッセイキット」は、アッセイを行う際に使用される材料及び試薬のアセンブリを指す。試薬は、それらの交差反応性及び安定性に応じて、同一又は別箇の容器にて、液体又は凍結乾燥形態で、パッケージ化された組み合わせで提供することができる。キットで提供される試薬の量及び割合を、特定の用途に対する最適な結果をもたらすように選択することができる。本発明の特徴を具現化するアッセイキットは、クエチアピンに結合する抗体を含む。キットは、クエチアピンの競合結合パートナー、並びに較正及び対照材料を更に含み得る。
【0161】
語句「較正及び対照材料」は、既知の量の検体を含有する任意の標準又は対照材料を指す。検体及び対応する較正材料を含有する疑いがある試料は、同様の条件下でアッセイされる。検体の濃度は、未知の被検物について得られた結果と、標準について得られた結果とを比較することによって計算される。これは、一般には、較正曲線を作成することによって行われる。
【0162】
本発明の特徴を具現化する抗体は、キット、容器、パック、又はディスペンサー内に、それらの利用についての取扱説明書と共に含まれ得る。抗体がキット内に供給される場合、イムノアッセイの異なる成分は、別箇の容器内にパッケージ化され得るか、又は使用前に混合され得る。成分のそのようなパッケージ化は、活性成分の機能を実質的に低下させることなく、長期間保存を可能にし得る。更に、試薬は、不活性環境下で、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の正圧下でパッケージ化することができ、これは、空気及び/又は水分に敏感な試薬に特に好ましい。
【0163】
本発明の特徴を具現化するキット内に含まれる試薬は、異なる成分の活性が実質的に保持されるが、成分自体が容器の材料により実質的に吸着されたり改変されたりしないように、すべての方式の容器内に供給することができる。好適な容器としては、アンプル、ボトル、試験管、バイアル、フラスコ、シリンジ、エンベロープ(例えば、ホイルでライニングされた)等が挙げられるが、これらに限定されない。容器は、ガラス、有機ポリマー(例えばポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン等)、セラミック、金属(例えばアルミニウム)、金属合金(例えばスチール)、コルク等が挙げられるが、これらに限定されない任意の好適な材料で構成され得る。加えて、容器は、セプタムにより提供され得るような、例えば、針によりアクセスするための1つ以上の滅菌アクセスポートを備え得る。セプタムの好ましい材料には、ゴム及びDuPont(Wilmington,DE)により商品名TEFLONとして販売されているタイプのポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。加えて、容器は、成分を混合できるように取り外すことができるパーティション又は膜により仕切られた2つ以上のコンパートメントを備え得る。
【0164】
本発明の特徴を具現化する試薬キットはまた、取扱説明書と共に供給され得る。取扱説明書は、例えば、紙面上等に印刷されたもの及び/又は電子可読媒体として供給されたものであってもよい。あるいは、取扱説明書は、例えば、キットの製造業者又は販売業者により指定されたサイトインターネットウェブサイトにユーザーを案内することにより、及び/又は電子メールを介して、提供され得る。
【0165】
抗体はまた、アッセイ装置の一部として提供され得る。そのようなアッセイ装置は、側方流動アッセイ装置を含む。一般的な種類の使い捨て側方流動アッセイ装置は、液体試料を受ける区画又は領域、複合体区画、及び反応区画を含む。これらのアッセイ装置は一般に、側方流動試験ストリップとして既知である。これらは、毛管流を支持し得る、流体流の経路を画定する多孔質材料、例えば、ニトロセルロースを利用する。実施例には、米国特許第5,559,041号、同第5,714,389号、同第5,120,643号、及び同第6,228,660号に示されるものが挙げられ、これらは本明細書において参照によりその全体が組み込まれる。
【0166】
アッセイ装置の別の種類は、毛管流を含むべく突起部を有する非多孔質アッセイ装置である。このようなアッセイ装置の例としては、PCT国際公開第2003/103835号、同第2005/089082号、同第2005/118139号、及び同第2006/137785号に開示される、開いた側方流動装置が挙げられ、これらは全て、本明細書において参照によりその全体が組み込まれる。
【0167】
非多孔質アッセイ装置において、アッセイ装置は、一般的に、少なくとも1つの試料添加区画、少なくとも1つの複合体区画、少なくとも1つの反応区画、及び少なくとも1つの吸上区画を有する。区画は、試料添加区画から吸上区画まで試料が流れる流路を形成する。任意で装置に堆積される(例えば、コーティングにより)検体に結合することができる、反応区画内の抗体等の捕捉要素、及び複合体区画内で装置に堆積される検体の濃度の判定を可能にする反応に関与することができる標識された複合体材料も含み、この場合、標識された複合体材料は反応区画内の検出のための標識を有する。試料が複合体区画を通って流れる際に、複合体材料は溶解して、反応区画へと下流に流れる溶解した標識された複合体材料及び試料の複合体プルームを形成する。複合体プルームが反応区画へと流れると、複合体材料が、例えば複合体材料と検体の複合体を介して(「サンドイッチ」アッセイにおいて)、又は直接的に(「競合」アッセイにおいて)捕捉要素により捕捉される。拘束されない溶解した複合体材料は、反応区画を通過して少なくとも1つの吸上区画へと流される。そのような装置は、流路において、突起部又はマイクロ柱を含み得る。
【0168】
米国特許出願公開第20060289787A1号、及び同第20070231883A1号、並びに米国特許第7,416,700号、及び同第6,139,800号(これらは全て、本明細書において参照によりその全体が組み込まれる)は、反応区画内において結合した複合体材料を検出することができる。一般的な標識としては、蛍光染料を励起し、蛍光染料を感知することができる検出器を組み込む器具により検出され得る、蛍光染料が挙げられる。
【0169】
イムノアッセイ
このようにして産生された抗体は、抗精神病薬を認識/結合するためにイムノアッセイに使用され、それにより、患者試料中の薬物の存在及び/又は量を検出することができる。好ましくは、アッセイ形式は、競合的イムノアッセイ形式である。そのようなアッセイ形式及び他のアッセイは、Hampton et al.(Serological Methods,A Laboratory Manual,APS Press,St.Paul,MN 1990)及びMaddox et al.(J.Exp.中央値158:12111,1983)における他の箇所において記載されている。
【0170】
用語「検体」は、任意の物質又は物質の群を指し、これらの存在又は量は判定されるべきである。代表的な抗精神病薬検体としては、リスペリドン、パリペリドン、オランザピン、アリピプラゾール、及びクエチアピンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
用語「競合結合パートナー」は、抗体への結合親和性に関して検体に似た振る舞いをする、競合的イムノアッセイに使用され得るような物質、又は物質の群を指す。代表的な競合結合パートナーとしては、抗精神病薬誘導体等が挙げられるが、これに限定されない。
【0172】
検体と共に使用される場合、用語「検出すること」は、任意の定量的、半定量的、又は定質的方法、並びに一般に、検体、とりわけ、抗精神病薬を判定するためのすべての他の方法を指す。例えば、試料中の抗精神病薬の存在又は非存在を単に検出する方法は本発明の範囲内にあり、また、試料中の抗精神病薬の量又は濃度についてのデータを提供する方法もある。用語「検出すること」、「判定すること」、及び「特定すること」等は、本明細書で同意語として使用され、すべてが本発明の範囲内にある。
【0173】
本発明の好ましい実施形態は、競合的イムノアッセイであり、抗精神病薬に結合する抗体、又は薬物若しくはその競合結合パートナーは、それぞれ、固体支持体(側方流動アッセイ装置内の反応区画等)、及び標識された薬物若しくはその競合結合パートナー、又は標識された抗体に結合し、宿主由来の試料は、固体支持体の上を通過し、固体支持体に結合した検出された標識の量は、試料中のある量の薬物に相関させることができる。
【0174】
検体、例えば、抗精神病薬を含有する疑いがある任意の試料は、本発明の好ましい実施形態の方法に従って分析することができる。試料は、必要に応じて前処理することができ、アッセイを妨げない任意の好都合な培地中に調製することができる。好ましくは、試料は、宿主由来の体液、最も好ましくは、血漿又は血清等の水性培地を含む。
【0175】
抗体を使用するイムノアッセイのすべての様式が本発明の好ましい実施形態に従って使用するために企図され、これには、抗体が固相に結合されるアッセイ、及び抗体が液体培地中にあるアッセイが含まれる。本発明の特徴を具現化する抗体を使用する検体を検出するために使用することができるイムノアッセイの方法としては、試料中の標識された検体(検体類似体)及び検体が、抗体について競合する競合的(試薬を限定した)アッセイ、及び抗体が検出される一部位イムノメトリックアッセイ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0176】
本発明を以下の実施例により更に説明する。本実施例は、特定の実施形態を参照することにより本発明を単に例示するためだけに提供される。本発明のある特定の態様を示すが、これらの例示は、開示される本発明の範囲を限定せず、又は制限しない。
【0177】
詳述されることを除いて、当業者によく知られ、常用である標準技術を使用するすべての実施例が実施される。以下の実施例の常用の分子生物学技術は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Habor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1989)等の標準実験室的なマニュアルに記載されるように、実施することができる。
【0178】
同時係属出願の表題「Haptens of Aripiprazole」(代理人整理番号PRD3265USPSP、2012年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/691,450号)、「Haptens of Olanzapine」(代理人整理番号PRD3266USPSP、2012年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/691,454号)、「Haptens of Paliperidone」(代理人整理番号PRD3267USPSP、2012年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/691,459号)、「Haptens of Quetiapine」(代理人整理番号PRD3268USPSP、2012年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/691,462号)、「Haptens of Risperidone and Paliperidone」(代理人整理番号PRD3269USPSP、2012年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/691,469号)、「Antibodies to Aripiprazole Haptens and Use Thereof」(代理人整理番号CDS5128USPSP、2012年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/691,544号)、「Antibodies to Olanzapine Haptens and Use Thereof」(代理人整理番号CDS5132USPSP、2012年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/691,572号)、「Antibodies toPaliperidone Haptens and Use Thereof」(代理人整理番号CDS5126USPSP、2012年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/691,634号)、「Antibodies to Risperidone Haptens and Use Thereof」(代理人整理番号CDS5130USPSP、2012年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/691,615号)、「Antibodies to Aripiprazole and Use Thereof」(代理人整理番号CDS5129USPSP、2012年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/691,522号)、「Antibodies to Olanzapine and Use Thereof」(代理人整理番号CDS5133USPSP、2012年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/691,645号)、「Antibodies to Paliperidone and Use Thereof」(代理人整理番号CDS5127USPSP、2012年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/691,692号)、「Antibodies to Quetiapine and Use Thereof」(代理人整理番号CDS5135USPSP、2012年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/691,659号)、「Antibodies to Risperidone and Use Thereof」(代理人整理番号CDS5131USPSP、2012年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/691,675号)、及び「Antibodies to Risperidone and Use Thereof」(代理人整理番号CDS5145USPSP、2013年3月15日に出願された米国仮特許出願第61/790,880号)はすべて、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0179】
(実施例1)
2−(2−(2−(アミノメチル)−4−(ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル)ピペラジン−1−イル)エトキシ)エタノール
【0180】
工程A
ピペラジン−2−カルボニトリル
【0181】
【化40】
【0182】
30℃のテトラヒドロフラン(300mL)及びエチレンジアミン(108.2g)の撹拌した溶液を、2−クロロアクリロニトリル(105.0g)の液滴で2時間の期間にわたって処理し、30℃で更に6時間撹拌した。反応混合物を20℃まで冷却し、沈殿物が形成された。反応を濾過し、35%塩酸を添加することによって濾液のpHを4に調整した。得られた沈殿物を濾過によって収集した。組み合わせた沈殿物を20%塩酸溶液中に溶解させ、次いでTHF溶液中に注いで表題化合物を沈殿させ、それを減圧下により乾燥させ、更に精製することなく次の反応において使用した。1H NMR:(D2O、400MHz):δ(ppm)5.00〜4.97(m、1H)、3.79(d、J=4.8Hz、2H)、3.62〜3.44(m、4H)。
【0183】
工程B
tert−ブチル3−シアノピペラジン−1−カルボン酸塩
【0184】
【化41】
【0185】
前の工程に記載されるように調製された、化合物ピペラジン−2−カルボニトリルの溶液(90.6g、0.492mol)に、トリエチルアミン(206mL、1.476mol)及びBoc2O(117g、0.542mol)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、次いで濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を得た。
【0186】
1H NMR:(CDCl3、400MHz):δ(ppm)4.06〜3.91(m、3H)、3.28〜2.83(m、4H)、1.47(s、9H)。
【0187】
工程C
tert−ブチル3−シアノ−4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−1−カルボン酸塩
【0188】
【化42】
【0189】
前の工程に記載されるように調製された、tert−ブチル3−シアノピペラジン−1−カルボン酸塩(10g、0.047mol)及び2−(2−ヒドロキシエトキシ)アセトアルデヒド(14.8g)のジクロロメタン中溶液(Bodin,A.,Contact Dermatitis,2001,44:207を参照されたい)をギ酸(12.7g)で処理し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。シアノ水素化ホウ素ナトリウム(7.2g、0.118mol)を部分量に分けて添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌し、続いて水の添加及びジクロロメタンでの抽出を行った。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製して、生成物を得た。
【0190】
1H NMR:(CDCl3、400MHz):δ(ppm)4.15(s、1H)、3.69〜3.63(m、4H)、3.58(d、J=4.4 Hz、2H)、3.47〜3.44(m、4H)、2.61(d、J=5.2Hz、2H)、2.51〜2.48(m、4H)、1.43(s、9H)。
【0191】
工程D
tert−ブチル3−(アミノメチル)−4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−1−カルボン酸塩
【0192】
【化43】
【0193】
前の工程に記載されるように調製された、tert−ブチル3−シアノ−4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−1−カルボン酸塩のメタノール(20mL)中溶液(9.9g、33.1mmol)に、ラネーニッケル(15g)を添加した。反応溶液を室温で一晩、窒素雰囲気下(344.7kPa(50psi))で撹拌した。混合物を濾過及び濃縮して、生成物を得、それを更に精製することなく次の工程で使用した。
【0194】
ESI−MS(M+1):304 C142934についての計算値303。
【0195】
工程E
tert−ブチル4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−3−((2,2,2−トリフルオロアセトアミド)メチル)ピペラジン−1−カルボン酸塩
【0196】
【化44】
【0197】
前の工程に記載されるように調製された、tert−ブチル3−(アミノメチル)−4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−1−カルボン酸塩(8.8g)のジクロロメタン(100mL)中溶液に、トリエチルアミン(8.8g、87.0mmol)及び無水トリフルオロ酢酸(6.1g、29.0mmol)を添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗生成物を得、それをカラムクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を得た。
【0198】
ESI−MS(M+1):400 C1628335についての計算値399。
【0199】
工程F
2,2,2−トリフルオロ−N−((1−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−2−イル)メチル)アセトアミド
【0200】
【化45】
【0201】
前の工程に記載されるように調製された、tert−ブチル4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−3−((2,2,2−トリフルオロアセトアミド)メチル)ピペラジン−1−カルボン酸塩(8.6g、粗)のメタノール塩化水素(20mL)中溶液を室温で1時間撹拌し、続いて濃縮を行って、表題化合物を得、それを更に精製することなく使用した。
【0202】
ESI−MS(M+1):300 C1120333についての計算値299。
【0203】
工程G
2−((2−ニトロフェニル)チオ)安息香酸
【0204】
【化46】
【0205】
室温の2−メルカプト−安息香酸(30g、0.195mol)のイソプロパノール(500mL)中溶液に、1−フルオロ−2−ニトロ−ベンゼン(30.2g、0.214mol)、水(100mL)、及び水酸化カリウム(31.1g、0.555mol)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、水で反応停止処理し、酢酸エチルで希釈した。水相を酢酸エチル(3×400mL)で抽出し、組み合わせた有機抽出物を飽和塩化ナトリウム水溶液(500mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗残渣をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を得た。ESI−MS(M+1):276 C139NO4Sについての計算値275。1H NMR:(CDCl3、400MHz):δ(ppm)8.12〜8.07(m、2H)、7.54〜7.43(m、2H)、7.42〜7.39(m、2H)、7.35〜7.31(m、1H)、7.12〜7.09(m、1H)。
【0206】
工程H
2−((2−アミノフェニル)チオ)安息香酸
【0207】
【化47】
【0208】
前の工程に記載されるように調製された、2−((2−ニトロフェニル)チオ)安息香酸(43.3g、0.157mol)の酢酸エチル(500mL)中溶液に、Pd/C(8g)を添加した。反応溶液を室温で一晩、水素ガス雰囲気下で撹拌した。混合物を濾過及び濃縮して、表題化合物を得た。ESI−MS(M+1):246 C1311NO2Sについての計算値245。1H NMR:(CDCl3、400MHz):δ(ppm)8.20〜8.17(m、1H)、7.51〜7.48(m、1H)、7.36〜7.30(m、2H)、7.21〜7.17(m、1H)、6.88〜6.80(m、3H)。
【0209】
工程I
ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11(10H)−オン
【0210】
【化48】
【0211】
前の工程に記載されるように調製された、2−((2−アミノフェニル)チオ)安息香酸(30g、0.122mol)のジクロロメタン(300mL)中溶液に、EDCI(35.2g、0.183mol)、トリエチルアミン(51mL、0.366mol)、及びHOBT(24.7g、0.183mol)を添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌し、1M HCI水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、MgSO4により乾燥させた。溶液を濾過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を得た。ESI−MS(M+1):228 C139NOSについての計算値227。1H NMR:(CDCl3、400MHz):δ(ppm)7.70〜7.67(m、1H)、7.58〜7.52(m、2H)、7.50〜7.42(m、2H)、7.39〜7.35(m、1H)、7.24〜7.22(m、1H)、7.17〜7.13(m、1H)。
【0212】
工程J
11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン
【0213】
【化49】
【0214】
前の工程に記載されるように調製された、ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11(10H)−オン(14.6g、64mmol)のオキシ塩化リン(20mL)中溶液を、2時間加熱還流させた。混合物を濃縮して、粗生成物を得、それを更に精製することなく直接使用した。ESI−MS(M+1):246 C138ClNSについての計算値245。
【0215】
工程K
N−((4−(ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル)−1−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−2−イル)メチル)−2,2,2−トリフルオロアセトアミド
【0216】
【化50】
【0217】
前の工程に記載されるように調製された、11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン(2g、粗)のジオキサン(20mL)中溶液に、Pd2(dba)3(327mg、0.357mmol)、BINAP(225mg、0.357mmol)、トリエチルアミン(6mL、42.9mmol)、及び工程Fに記載されるように調整された、2,2,2−トリフルオロ−N−((1−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−2−イル)メチル)アセトアミド(2.4g、粗)を添加した。得られた混合物を窒素雰囲気下で一晩加熱還流させ、CELITE(商標)を通して濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を得た。ESI−MS(M+1):509 C2427343Sについての計算値508。
【0218】
工程L
2−(2−(2−(アミノメチル)−4−(ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル)ピペラジン−1−イル)エトキシ)エタノール
【0219】
【化51】
【0220】
前の工程に記載されるように調製された、N−((4−(ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル)−1−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−2−イル)メチル)−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(2.0g)及び炭酸カリウム水溶液(5%)(15mL)のメタノール(20mL)中混合物を室温で18時間撹拌し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥させ、濾過し、蒸発させて、粗生成物を得、それをカラムクロマトグラフィーによって精製し、続いて分取HPLCを行って、黄色の固体として表題化合物を得た。ESI−MS(M+1):413 C222842Sについての計算値412。1H NMR:(CDCl3、400MHz):δ(ppm)7.52〜7.50(m、1H)、7.41〜7.31(m、4H)、7.17〜7.12(m、1H)、7.02〜7.00(m、1H)、6.89〜6.84(m、1H)、3.66〜3.59(m、5H)、3.54〜3.51(m、2H)、3.49〜3.38(m、1H)、3.19〜3.12(m、1H)、3.03〜2.88(m、2H)、2.79〜2.53(m、5H)。
【0221】
(実施例2)
N−((4−(ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル)−1−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−2−イル)メチル)−2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)アセトアミド
【0222】
【化52】
【0223】
実施例1に記載されるように調製された、2−(2−(2−(アミノメチル)−4−(ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル)ピペラジン−1−イル)エトキシ)エタノール(7.8mg、19.0μmol)の、410μLのDMF及び8.9μLのトリブチルアミン中溶液に、N−(α−マレイミドアセトキシ)スクシンイミドエステル(AMAS、10mg/mL、4.8mg、19.0μmol)の480μLのDMF溶液を添加した。得られた溶液を20℃で60分間撹拌し、次いで、チオール活性化タンパク質による抱合反応においてそのまま使用した。
【0224】
(実施例3)
2−{2−[4−(3−アミノメチル−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル)−ピペラジン−1−イル]−エトキシ}−エタノール
【0225】
【化53】
【0226】
工程A
11−オキソ−10,11−ジヒドロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−3−カルボン酸
【0227】
【化54】
【0228】
2−アミノ−ベンゼンチオール(1.34mL、12.5mmol)、2−ブロモ−テレフタル酸(1.54g、6.3mmol)、亜酸化銅(0.50g、3.5mmol)、キノリン(6.3mL)、及びピリジン(0.63mL)の混合物を180℃の油浴中、窒素下で20時間加熱し、次いで室温まで冷却した。濃縮塩酸(20mL)を、撹拌と共に、冷水中で冷却しながら緩徐に添加した。得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、乾燥させて、粗表題化合物(2g)を得た。LC−MS:m/z 270(M−1)。
【0229】
工程B
11−クロロ−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−3−塩化カルボニル
【0230】
【化55】
【0231】
前の工程に記載されるように調製された、11−オキソ−10,11−ジヒドロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−3−カルボン酸(0.41g)のトルエン(6.5mL)中懸濁液に、DMF(0.125mL)及び塩化チオニル(6.5mL)を添加した。混合物を80℃の油浴中、窒素下で一晩加熱した。得られた溶液を濃縮乾固。粗生成物を次の工程に使用した。
【0232】
工程C
11−クロロ−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−3−カルボン酸アミド
【0233】
【化56】
【0234】
前の工程に記載されるように調製された、11−クロロ−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−3−塩化カルボニル、(約1.5mmol)のジクロロメタン(10mL)中溶液’を、アンモニアの1,4−ジオキサン溶液(0.5M、9mL)により氷浴下で処理した。得られた懸濁液を室温で1時間撹拌し、この反応物を水(10mL)で反応停止処理した。得られた沈殿物を濾過し、水及びジクロロメタンで洗浄し、乾燥させた。濾液の有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、追加の灰白色の生成物にまで濃縮し、それを更に精製することなく次の工程で使用した。LC−MS:m/z 289(M+1)。1H NMR(DMSO−d6、400MHz):δ(ppm)8.19(br、1H)、8.00〜7.96(m、2H)、7.90(d、1H)、7.64(br、1H)、7.56(m、1H)、7.47(m、1H)、7.31(m、2H)。
【0235】
工程D
11−{4−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エチル]−ピペラジン−1−イル}−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−3−カルボン酸アミド
【0236】
【化57】
【0237】
前の工程に記載されるように調製された、11−クロロ−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−3−カルボン酸アミド(0.40g)のDMF(1.5mL)及びトルエン(1.5mL)中溶液に、2−(2−ピペラジン−1−イル−エトキシ)−エタノール(0.50g、2.9mmol)を添加した。溶液を110℃の油浴中、窒素下で5時間加熱し、濃縮し、精製して(シリカゲル、アンモニア溶離剤を含有する2〜5%メタノール−ジクロロメタン)、灰白色の固体として表題化合物を得た。LC−MS:m/z 427(M+1)。
【0238】
工程E
2−{2−[4−(3−アミノメチル−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル)−ピペラジン−1−イル]−エトキシ}−エタノール
【0239】
【化58】
【0240】
前の工程に記載されるように調製された、2−{2−[4−(3−アミノメチル−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル)−ピペラジン−1−イル]−エトキシ}−エタノール(0.24g、0.56mmol)のTHF(15mL)中溶液に、1Mリチウムアルミニウム水素化物のTHF溶液(6mL、6mmol)を添加した。白色の懸濁液を70℃の油浴中、窒素下で2時間加熱した。反応懸濁液を、飽和硫酸ナトリウム水溶液の緩徐な添加により氷浴下で反応停止処理した。溶液相を分離し、固体をTHF(5×10mL)で抽出した。組み合わせた有機相を濃縮及び精製して(シリカゲル、アンモニア溶離剤を含有する2〜5%メタノール−ジクロロメタン)、灰白色の固体として表題化合物を得た。LC−MS:m/z 413(M+1)。1H NMR(CDCl3、400MHz)δ(ppm)7.47(s、1H)、7.38(m、1H)、7.26(m、2H、溶媒と重複)、7.17(m、1H)、7.06(m、1H)、6.88(m、1H)、3.85(s、2H)、3.76〜3.46(m、11H、交換可能な陽子を含有)、2.66〜2.57(m、8H)。
【0241】
(実施例4)
2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)−N−((11−(4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−1−イル)ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−3−イル)メチル)アセトアミド
【0242】
【化59】
【0243】
実施例3に記載されるように調製された、2−{2−[4−(3−アミノメチル−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル)−ピペラジン−1−イル]−エトキシ}−エタノール(5.6mg、13.6μmol)の、295μLのDMF及び6.4μLのトリブチルアミン中溶液に、N−(α−マレイミドアセトキシ)スクシンイミドエステル(AMAS、10mg/mL、3.4mg、13.6μmol)の340μLのDMF溶液を添加した。得られた溶液を20℃で60分間撹拌し、次いで、チオール活性化タンパク質による抱合反応においてそのまま使用した。
【0244】
(実施例5)
N−((4−(ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル)−1−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−2−イル)メチル)−2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)アセトアミド−ウシサイログロブリン−複合体
【0245】
工程A
SATAとのウシサイログロブリン(BTG)反応:
ウシサイログロブリン(BTG、20.0mg、0.03μmol)の、3.0mLの100mMリン酸緩衝液(pH 7.5)中溶液に、N−スクシンイミジル−S−アセチルチオ酢酸塩(SATA、25mg/mL、6.9mg、30.0μmol)の276.0μLのDMF溶液を添加した。得られた溶液を、ローラーミキサー上で20℃で1時間インキュベートした。この反応物をSephadex G−25カラム上で、pH 6.0で100mMリン酸緩衝液、5mM EDTAを使用して精製した。6.0mLのBTG−SATA(18.0mg、0.027μmol)に、600μLの2.5Mヒドロキシルアミン、50mM EDTA(pH 7.0)を添加した。得られた溶液を、ローラーミキサー上で20℃で1時間インキュベートした。
【0246】
工程B
前の工程に記載されるように調製された、BTG−SH溶液のアリコート(6.6mL、0.027μmol)に、実施例2において調製された溶液のアリコート(898.9μL、19.0μmol)を添加した。得られた混濁混合物を、ローラーミキサー上で20℃で3時間インキュベートした。この反応物を、0.45μmシリンジフィルター通して濾過し、次いでSephadex G−25カラム上で、pH 7.4で100mMリン酸緩衝液、0.14M塩化ナトリウムを使用して精製した。
【0247】
(実施例6)
2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)−N−((11−(4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−1−イル)ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−3−イル)メチル)アセトアミド−ウシサイログロブリン−複合体
【0248】
実施例5、工程Aに記載されるように調製された、BTG−SH溶液のアリコート(3.4mL、0.014μmol)に、実施例4に記載されるように調製された、641.4μLの2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)−N−((11−(4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−1−イル)ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−3−イル)メチル)アセトアミド(13.6μmol)を添加した。得られた混濁混合物を、ローラーミキサー上で20℃で3時間インキュベートした。この反応物をSephadex G−25カラム上で、pH 7.4で100mMリン酸緩衝液、0.14M塩化ナトリウムを使用して精製した。
【0249】
(実施例7)
N−((4−(ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル)−1−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−2−イル)メチル)−2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)アセトアミド−キーホールリンペットヘモシニアン−複合体
【0250】
工程A
SATAとのキーホールリンペットヘモシニアン(KLH)反応
キーホールリンペットヘモシアニン(KLH、15.6mg、0.156μmol)の、100mMリン酸緩衝液、0.46M塩化ナトリウム中の3.18mLの溶液に、pH 7.4で、72.1μLのN−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテオートのDMF溶液(SATA、25mg/mL、1.8mg、7.80μmol)を添加した。得られた溶液を、ローラーミキサー上で20℃で1時間インキュベートした。100mMリン酸緩衝液、0.46M塩化ナトリウム、5mM EDTAを使用して、この反応物を、pH 6.0で、Sephadex G−25カラム上で精製した。6.27mLの得られたKLH−SATA溶液(13.3mg、0.133μmol)に、pH 7.0で627μLの2.5Mヒドロキシルアミン、50mM EDTAを添加した。得られた溶液を、ローラーミキサー上で20℃で1時間インキュベートした。この反応物をマレイミド活性化ハプテンによる抱合反応においてそのまま使用した。
【0251】
工程B
前の工程に記載されるように調製された、KLH−SH溶液のアリコート(6.9mL、0.133μmol)に、実施例2において調製された溶液のアリコート(624.3μL、13.3μmol)を添加した。得られた混濁混合物を、ローラーミキサー上で20℃で3時間インキュベートした。この反応物を、0.45μmシリンジフィルターを通して濾過し、次いでSephadex G−25カラム上で、pH 7.4で100mMリン酸緩衝液、0.46M塩化ナトリウムを使用して精製した。
【0252】
(実施例8)
2−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)−N−((11−(4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ピペラジン−1−イル)ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−3−イル)メチル)アセトアミド−キーホールリンペットヘモシニアン−複合体
【0253】
実施例7、工程Aに記載されるように調製された、KLH−SH溶液のアリコート(3.2mL、0.061μmol)に、実施例4において調製された溶液のアリコート(283.0μL、6.10μmol)を添加した。得られた混濁混合物を、ローラーミキサー上で20℃で3時間インキュベートした。この反応物をSephadex G−25カラム上で、pH 7.4で100mMリン酸緩衝液、0.46M塩化ナトリウムを使用して精製した。
【0254】
(実施例9)
クエチアピンに対する競合的イムノアッセイ、並びにアリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、及びリスペリドン/パリペリドンに対する多重競合的イムノアッセイ
クエチアピン免疫原を用いた一連の免疫付与後、マウスの尾からの採血を、反応性について、ELISAを使用して試験した。ハイブリドーマ上清もまた試験し、下の表8及び9に示されるELISAデータは、いくつかのハイブリドーマの反応性を示す(融合パートナーはNSO細胞であった)。
【0255】
【表8】
【0256】
【表9】
【0257】
上清を次いで競合ELISAによって試験して、シグナルがクエチアピンに特異的であったかどうかを判定した。図1及び2は、代表的なハイブリドーマからの結果を示す。データは、クエチアピンへの特異的反応性である。
【0258】
図3は、側方流動アッセイ装置に使用される競合的イムノアッセイ形式を示し、この装置において、捕捉抗体であるクエチアピンクローンを、フルオロフォアに複合化されたクエチアピンからなる検出複合体と共にチップ上に堆積させた。図3に示されるようなこの競合的形式において、低レベルの検体(クエチアピン)は、高いシグナルを生じるが、一方で、高レベルの検体(クエチアピン)は、低いシグナルを生じる。試料中のクエチアピンの量は、薬物が存在しない対照試料と比較した蛍光の消失から計算することができる。クエチアピンサブクローン89〜3、89〜13、及び89〜5により生成された典型的な用量反応曲線が、図4に示される。
【0259】
図5は、本発明の一実施形態に従う側方流動アッセイ装置のチップ設計を示す。装置は、試料を受容するための区画又は領域、複合体区画(所望の標識された競合結合パートナー(複数を含む)を含む)、及び反応区画(反応区画内の8つの領域を示す、それぞれの領域は、別々の所望の抗体を含むことができる)を含む。試料は、複合体区画を通って試料区画から反応区画に流れる。
【0260】
図6〜9は、反応区画2内に堆積された抗体5C7及び複合体区画内の標識されたアリピプラゾール競合結合パートナーにより生成された、アリピプラゾール陽性対照(アリピプラゾールを含有する試料)(図6)、反応区画4内に堆積された抗体4G9−1及び複合体区画内の標識されたオランザピン競合結合パートナーにより生成された、オランザピン陽性対照(オランザピンを含有する試料)(図7)、反応区画6内に堆積された抗体11及び複合体区画内の標識されたクエチアピン競合結合パートナーにより生成された、クエチアピン陽性対照(クエチアピンを含有する試料)(図8)、並びに反応区画8内に堆積された抗体5−9及び複合体区画内の標識されたリスペリドン競合結合パートナーにより生成された、リスペリドン陽性対照(リスペリドンを含有する試料)(図9)についての典型的な用量反応曲線を示す。複合体区画内の標識された競合結合パートナーは、抗体への結合に対して、試料中に存在する薬物と競合する。標識の量を検出し、それは試料中に存在する薬物の量の指標である(シグナルの量は試料中の薬物の量に反比例する−図3を参照されたい)。
【0261】
標識された競合結合パートナーの複合体は反応区画内に堆積した抗体に結合しないことを確認するために、陰性対照は、薬物を含有しない試料を使用することにより行われた。表10を参照すると、アリピプラゾールを含有しない試料は、試料区画内に堆積され、毛管現象により複合体区画(この時、標識されたオランザピン、標識されたクエチアピン、及び標識されたリスペリドンを含有するが、標識されたアリピプラゾールは含有しない)を通って反応区画に移動する。反応区画は、反応区画2内にアリピプラゾール抗体(5C7)を再度含有する。下の表10は、用量反応がなく、毛管現象により反応区画を通って移動するオランザピン、クエチアピン、及びリスペリドンの複合体がアリピプラゾール抗体に結合しないことを確認する、結果を示す。
【0262】
【表10】
【0263】
表11を参照すると、オランザピンを含有しない試料は、試料区画内に堆積され、毛管現象により複合体区画(この時、標識されたアリピプラゾール、標識されたクエチアピン、及び標識されたリスペリドンを含有するが、標識されたオランザピンは含有しない)を通って反応区画に移動する。反応区画は、反応区画4内にオランザピン抗体(4G9−1)を再度含有する。下の表11は、用量反応がなく、毛管現象により反応区画を通って移動するアリピプラゾール、クエチアピン、及びリスペリドンの複合体がオランザピン抗体に結合しないことを確認する、結果を示す。
【0264】
【表11】
【0265】
表12を参照すると、クエチアピンを含有しない試料は、試料区画内に堆積され、毛管現象により複合体区画(この時、標識されたアリピプラゾール、標識されたオランザピン、及び標識されたリスペリドンを含有するが、標識されたクエチアピンは含有しない)を通って反応区画に移動する。反応区画は、反応区画6内にクエチアピン抗体(11)を再度含有する。下の表12は、用量反応がなく、毛管現象により反応区画を通って移動するアリピプラゾール、オランザピン、及びリスペリドンの複合体がクエチアピン抗体に結合しないことを確認する、結果を示す。
【0266】
【表12】
【0267】
表13を参照すると、リスペリドンを含有しない試料は、試料区画内に堆積され、毛管現象により複合体区画(この時、標識されたアリピプラゾール、標識されたオランザピン、及び標識されたクエチアピンを含有するが、標識されたリスペリドンは含有しない)を通って反応区画に移動する。反応区画は、反応区画8内にリスペリドン抗体(5−9)を再度含有する。以下の表13は、用量反応がなく、毛管現象により反応区画を通って移動するアリピプラゾール、オランザピン、及びクエチアピンの複合体がリスペリドン抗体に結合しないことを確認する、結果を示す。
【0268】
【表13】
【0269】
標識された競合結合パートナーの複合体が反応区画内に堆積されたそれらのそれぞれの抗体にのみ結合することを確認するために、更なる陰性対照を薬物を含有しない試料を使用することにより行った。表14を参照すると、アリピプラゾールを含有しない試料は、試料区画内に堆積され、毛管現象により複合体区画(この時、標識されたアリピプラゾールを含有する)を通って反応区画に移動する。反応区画は、反応区画2内にアリピプラゾール抗体(5C7)、並びに反応区画4内にオランザピン抗体(4G9−1)、反応区画6内にクエチアピン抗体(11)、及び反応区画8内にリスペリドン抗体(5−9)を再度含有する。以下の表14は、アリピプラゾール抗体5C7(反応区画2内)を除いては、用量反応がないことを確認する結果を示す。
【0270】
【表14】
【0271】
表15を参照すると、オランザピンを含有しない試料は、試料区画内に堆積され、毛管現象により複合体区画(この時、標識されたオランザピンを含有する)を通って反応区画に移動する。反応区画は、反応区画2内にアリピプラゾール抗体(5C7)、並びに反応区画4内にオランザピン抗体(4G9−1)、反応区画6内にクエチアピン抗体(11)、及び反応区画8内にリスペリドン抗体(5−9)を再度含有する。下の表15は、オランザピン抗体4G9−1(反応区画4内)を除いては、用量反応がないことを確認する結果を示す。
【0272】
【表15】
【0273】
表16を参照すると、クエチアピンを含有しない試料は、試料区画内に堆積され、毛管現象により複合体区画(この時、標識されたクエチアピンを含有する)を通って反応区画に移動する。反応区画は、反応区画2内にアリピプラゾール抗体(5C7)、並びに反応区画4内にオランザピン抗体(4G9−1)、反応区画6内にクエチアピン抗体(11)、及び反応区画8内にリスペリドン抗体(5−9)を再度含有する。下の表16は、クエチアピン抗体11(反応区画6内)を除いては、用量反応がないことを確認する結果を示す。
【0274】
【表16】
【0275】
表17を参照すると、リスペリドンを含有しない試料は、試料区画内に堆積され、毛管現象により複合体区画(この時、標識されたリスペリドンを含有する)を通って反応区画に移動する。反応区画は、反応区画2内にアリピプラゾール抗体(5C7)、並びに反応区画4内にオランザピン抗体(4G9−1)、反応区画6内にクエチアピン抗体(11)、及び反応区画8内にリスペリドン抗体(5−9)を再度含有する。下の表17は、リスペリドン抗体5−9(反応区画8内)を除いては、用量反応がないことを確認する結果を示す。
【0276】
【表17】
【0277】
上に示される結果は、標識された競合結合パートナーの複合体が反応区画内のそれらのそれぞれの抗体にのみ結合することを確認する。
【0278】
図10〜13は、特定の抗体反応区画内の典型的な用量反応曲線、及び他の複合体の存在下でのそれぞれの特定のアッセイについての、低/高濃度の用量反応の証拠を示す。図10において、アリピプラゾールを含有する試料は、試料区画内に堆積され、毛管現象により複合体区画(今度は、標識されたアリピプラゾール、標識されたオランザピン、標識されたクエチアピン、及び標識されたリスペリドンを含有する)を通って反応区画に移動する。反応区画は、反応区画2内にアリピプラゾール抗体(5C7)を再度含有する。典型的な用量反応曲線が、オランザピン、クエチアピン、又はリスペリドンについてではなく、アリピプラゾールのみについて、図10に示されるように生成された。
【0279】
図11において、オランザピンを含有する試料は、試料区画内に堆積され、毛管現象により複合体区画(今度は、標識されたアリピプラゾール、標識されたオランザピン、標識されたクエチアピン、及び標識されたリスペリドンを含有する)を通って反応区画に移動する。反応区画は、反応区画4内にオランザピン抗体(4G9−1)を再度含有する。典型的な用量反応曲線が、アリピプラゾール、クエチアピン、又はリスペリドンについてではなく、オランザピンのみについて、図11に示されるように生成された。
【0280】
図12において、クエチアピンを含有する試料は、試料区画内に堆積され、毛管現象により複合体区画(今度は、標識されたアリピプラゾール、標識されたオランザピン、標識されたクエチアピン、及び標識されたリスペリドンを含有する)を通って反応区画に移動する。反応区画は、反応区画6内にクエチアピン抗体(11)を再度含有する。典型的な用量反応曲線が、アリピプラゾール、オランザピン、又はリスペリドンについてではなく、クエチアピンのみについて、図12に示されるように生成された。
【0281】
図13において、リスペリドンを含有する試料は、試料区画内に堆積され、毛管現象により複合体区画(今度は、標識されたアリピプラゾール、標識されたオランザピン、標識されたクエチアピン、及び標識されたリスペリドンを含有する)を通って反応区画に移動する。反応区画は、反応区画8内にリスペリドン抗体(5−9)を再度含有する。典型的な用量反応曲線が、アリピプラゾール、オランザピン、又はクエチアピンについてではなく、リスペリドンのみについて、図13に示されるように生成された。
【0282】
図14〜17は、他の複合体及び抗体の存在下での、それぞれのアッセイについて典型的な用量反応曲線を示す。図14において、アリピプラゾールを含有する試料は、試料区画内に堆積され、毛管現象により複合体区画(再び、標識されたアリピプラゾール、標識されたオランザピン、標識されたクエチアピン、及び標識されたリスペリドンを含有する)を通って反応区画に移動する。反応区画は、反応区画2内にアリピプラゾール抗体(5C7)、並びに反応区画4内にオランザピン抗体(4G9−1)、反応区画6内にクエチアピン抗体(11)、及び反応区画8内にリスペリドン抗体(5−9)を再度含有する。図14に示されるように、アリピプラゾールについて典型的な用量反応曲線を生成した。オランザピンを含有する試料をこのチップの試料区画内に堆積した場合、図15に示されるように、オランザピンについて典型的な用量反応曲線を生成した。クエチアピンを含有する試料をこのチップの試料区画内に堆積した場合、図16に示されるように、クエチアピンについて典型的な用量反応曲線を生成した。リスペリドンを含有する試料をこのチップの試料区画内に堆積した場合、図17に示されるように、リスペリドンについて典型的な用量反応曲線を生成した。
【0283】
図18〜21は、陽性対照として生成された用量反応曲線(図6〜9)の、多重形式で生成された用量反応曲線(図14〜17)との比較を示す。アリピプラゾールについての比較を図18に、オランザピンについては図19に、クエチアピンについては図20に、リスペリドンについては図21に示す。これらの図は、陽性対照曲線が多重曲線に類似していることを示す。
【0284】
これらのデータは、本発明の側方流動アッセイ装置を使用し、ある携帯型のポイントオブケア装置において患者からの単一試料を使用して、複数の抗精神病薬を検出することができることを示す。

本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1] クエチアピンに結合し、
(i)式Iの化合物と免疫原性担体とのコンジュゲートに応答して生成されるか、又は
(ii)式Iの化合物と免疫原性担体とのコンジュゲートに応答して生成される抗体により結合されるエピトープと同じであるエピトープに対して競合する、単離抗体又はその結合断片であって、
式I:
【化60-1】
式中、
は、H、
【化60-2】
CHNH、若しくはCHNHC(O)(CHCOHであるか、又は
Z−(Y)−Gであり、
は、H、
【化60-3】
CHNH、若しくはCHNHC(O)(CHCOHであるか、
又はZ−(Y)−Gであり、
は、H、又はW−(Y)−Gであるが、但し、R、R、Rのうちの2つがHでなければならないものとし、かつ更に、R、R、及びRが全て同時にHであってはならないものとし、
式中、
Zは、
−N(R)−、−O−、−S−、−アルキル−、−アミノアルキル−、−チオアルキル−、−ヘテロアルキル−、−アルキルカルボニル−、
【化60-4】
からなる群から選択され、
は、H、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又は置換若しくは非置換アリール基であり、
式中、
Wは、
−C(O)−、アルキル−、−アミノアルキル−、−チオアルキル−、−ヘテロアルキル−、−アルキルカルボニル−からなる群から選択され、
Yは、有機スペーサ基であり、
Gは、担体に結合することができる官能性連結基であり、
pは、0又は1であり、
mは、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、4、又は5である、抗体又はその結合断片。
[2] 前記抗体が、式Iの化合物と免疫原性担体とのコンジュゲートに応答して生成される、上記[1]に記載の抗体。
[3] 前記抗体断片が、Fv、F(ab’)、F(ab’)2、scFv、ミニボディ、及びダイアボディ断片からなる断片の群から選択される、上記[1]に記載の抗体。
[4] 前記抗体が、モノクローナル抗体である、上記[1]に記載の抗体。
[5] 上記[1]に記載の抗体を含む、アッセイキット。
[6] 上記[1]に記載の抗体を含む、アッセイ装置。
[7] 前記装置は、側方流動アッセイ装置である、上記[6]に記載のアッセイ装置。
[8] クエチアピンに結合する抗体を産生する方法であって、
(i)抗体産生のための宿主を選択することと、
(ii)前記宿主に式Iの化合物と免疫原性担体とのコンジュゲートを接種することと、を含み、前記宿主が、クエチアピンに結合する抗体を産生し、
式I:
【化60-5】
式中、
は、H、
【化60-6】
CHNH、若しくはCHNHC(O)(CHCOHであるか、又は
Z−(Y)−Gであり、
は、H、
【化60-7】
CHNH、若しくはCHNHC(O)(CHCOHであるか、
又はZ−(Y)−Gであり、
は、H、又はW−(Y)−Gであるが、但し、R、R、Rのうちの2つがHでなければならないものとし、かつ更に、R、R、及びRが全て同時にHであってはならないものとし、
式中、
Zは、
−N(R)−、−O−、−S−、−アルキル−、−アミノアルキル−、−チオアルキル−、−ヘテロアルキル−、−アルキルカルボニル−、
【化60-8】
からなる群から選択され、
は、H、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又は置換若しくは非置換アリール基であり、
式中、
Wは、
−C(O)−、アルキル−、−アミノアルキル−、−チオアルキル−、−ヘテロアルキル−、−アルキルカルボニル−からなる群から選択され、
Yは、有機スペーサ基であり、
Gは、担体に結合することができる官能性連結基であり、
pは、0又は1であり、
mは、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、4、又は5である、方法。
[9] クエチアピンに結合するモノクローナル抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞株を産生する方法であって、
(i)抗体産生のための宿主を選択することと、
(ii)前記宿主に式Iの化合物と免疫原性担体とのコンジュゲートを接種することと、
(iii)前記接種された宿主からの細胞株を連続的に分裂している細胞と融合させて、クエチアピンに結合するモノクローナル抗体を産生することができる融合細胞を作製することと、
(iv)ハイブリドーマ細胞株を得るために、前記融合細胞をクローニングすることと、を含み、
式I:
【化60-9】
式中、
は、H、
【化60-10】
CHNH、若しくはCHNHC(O)(CHCOHであるか、又は
Z−(Y)−Gであり、
は、H、
【化60-11】
CHNH、若しくはCHNHC(O)(CHCOHであるか、
又はZ−(Y)−Gであり、
は、H、又はW−(Y)−Gであるが、但し、R、R、Rのうちの2つがHでなければならないものとし、かつ更に、R、R、及びRが全て同時にHであってはならないものとし、
式中、
Zは、
−N(R)−、−O−、−S−、−アルキル−、−アミノアルキル−、−チオアルキル−、−ヘテロアルキル−、−アルキルカルボニル−、
【化60-12】
からなる群から選択され、
は、H、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又は置換若しくは非置換アリール基であり、
式中、
Wは、
−C(O)−、アルキル−、−アミノアルキル−、−チオアルキル−、−ヘテロアルキル−、−アルキルカルボニル−からなる群から選択され、
Yは、有機スペーサ基であり、
Gは、担体に結合することができる官能性連結基であり、
pは、0又は1であり、
mは、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、4、又は5である、方法。
[10] サンプル中のクエチアピンを検出する方法であって、
(i)サンプルを検出可能なマーカーで標識された上記[1]に記載の抗体と接触させることと、ここで、前記標識された抗体と前記サンプル中に存在するクエチアピンとが標識された複合体を形成する、
(ii)前記サンプル中のクエチアピンを検出するために、前記標識された複合体を検出することと、を含む、方法。
[11] サンプル中のクエチアピンを検出するための競合的イムノアッセイ方法であって、
(i)サンプルを、上記[1]に記載の抗体と、及びクエチアピン又はクエチアピンの競合結合パートナーと、接触させることと、ここで、前記抗体及び前記クエチアピン又はその競合結合パートナーのうちの1つが、検出可能なマーカーで標識され、サンプルのクエチアピンが、前記抗体への結合に対して、前記クエチアピン又はその競合結合パートナーと競合する、
(ii)サンプルのクエチアピンを検出するために、前記標識を検出することと、を含む、方法。
[12] 前記クエチアピン又はその競合結合パートナーが、前記検出可能なマーカーで標識される、上記[11]に記載の方法。
[13] 前記抗体が、検出可能なマーカーで標識される、上記[11]に記載の方法。
[14] 前記イムノアッセイが、側方流動アッセイ装置において行われ、前記サンプルが、前記装置に適用される、上記[11]に記載の方法。
[15] クエチアピンに加えて1つ以上の検体の存在を検出することを更に含む、上記[10]又は[11]に記載の方法。
[16] 前記1つ以上の検体が、クエチアピン以外の抗精神病薬である、上記[15]に記載の方法。
[17] クエチアピン以外の前記抗精神病薬が、リスペリドン、パリペリドン、アリピプラゾール、オランザピン、及びそれらの代謝産物からなる群から選択される、上記[16]に記載の方法。
[18] クエチアピンの前記検出が、処方されたクエチアピン療法の患者の順守の指標である、上記[10]又は[11]に記載の方法。
[19] クエチアピンの前記検出が、患者が経口クエチアピンのレジメンから、注入可能な抗精神病薬のレジメンへと切り替えられるべきかどうかを判定するために使用される、上記[10]又は11に記載の方法。
[20] クエチアピンの前記検出が、有効又は安全な薬物レベルの到達又は維持を確実にするために、経口又は注入可能なクエチアピンの用量レベル又は投薬間隔を増加させるべきか、それとも減少させるべきかを判定するために使用される、上記[10]又は[11]に記載の方法。
[21] クエチアピンの前記検出が、最小限のpKレベルの到達の証拠を提供することにより、クエチアピン療法の開始時の一助になる、上記[10]又は[11]に記載の方法。
[22] クエチアピンの前記検出が、複数の製剤中又は複数の源からのクエチアピンの生物学的同等性を判定するために使用される、上記[10]又は[11]に記載の方法。
[23] クエチアピンの前記検出が、多剤投与及び潜在的な薬物−薬物相互作用の影響を評価するために使用される、上記[10]又は[11]に記載の方法。
[24] クエチアピンの前記検出が、患者が臨床治験から除外されるべきか、又は含まれるべきかの指標であり、臨床治験の投薬必要条件の順守のその後のモニタリングの一助になる、上記[10]又は[11]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21