(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多価アルコール(A)と炭素原子数14〜28のアルキル鎖を有するモノカルボン酸(B)とを反応させて得られる電子写真トナー用ワックスであり、該ワックスは、該多価アルコール(A)が有するアルコール性水酸基1モルに対して、該モノカルボン酸(B)が有するカルボキシル基を0.25〜0.75モル反応させることにより得られるものであり、前記多価アルコール(A)がペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールであり、前記モノカルボン酸(B)がベヘニン酸またはパルミチン酸である電子写真トナー用ワックスと、結着樹脂とを含有し、前記結着樹脂がジオール成分とジカルボン酸成分とエポキシ基を有する化合物とを用いて得られるポリエステル樹脂であることを特徴とする電子写真トナー用組成物を用い、粉砕法にて製造する電子写真トナーの製造方法。
多価アルコール(A)と炭素原子数14〜28のアルキル鎖を有するモノカルボン酸(B)とを反応させて得られる電子写真トナー用ワックスであり、該ワックスは、該多価アルコール(A)が有するアルコール性水酸基1モルに対して、該モノカルボン酸(B)が有するカルボキシル基を0.25〜0.75モル反応させることにより得られるものであり、前記多価アルコール(A)がペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールであり、前記モノカルボン酸(B)がベヘニン酸またはパルミチン酸である電子写真トナー用ワックスと、結着樹脂とを含有し、前記結着樹脂がジオール成分とジカルボン酸成分とエポキシ基を有する化合物とを用いて得られるポリエステル樹脂であることを特徴とする電子写真トナー用組成物を用い、粉砕法にて製造される電子写真トナー。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の電子写真トナー用ワックスは、前記多価アルコール(A)が有するアルコール性水酸基1モルに対して、前記モノカルボン酸(B)が有するカルボキシル基を0.25〜0.75モル反応させることにより得られるものであることを特徴とする。モノカルボン酸(B)が有するアルキル鎖の中でも、炭素原子数15〜24のアルキル鎖が、耐熱性に優れ、且つ、結着樹脂に対してより良好な混練性を発現するワックスとなることから好ましく、炭素原子数16〜22のアルキル鎖がより好ましい。
【0011】
本発明の電子写真トナー用ワックスは、通常理論水酸基価が40〜300である。このような水酸基価を有する事により十分な帯電量の確保と、時間に対する帯電量の安定性が十分な電子写真トナーを得ることができる。水酸基価は下記測定方法による実測値で25〜250が好ましく、50〜200がより好ましい。
【0012】
本発明において、上記水酸基価は、JIS K1557−1 A法において、アセチル化剤を「無水酢酸とイミダゾールを含むピリジン溶液」から「無水酢酸とジメチルアミノピリジンのトルエン溶液」に変更した事以外はJIS K1557−1 A法に従い測定した。
【0013】
本発明で用いる3価以上の多価アルコール(A)の価数は1分子中の水酸基の数を言う。また、モノカルボン酸(B)が有する炭素原子数とは、カルボキシル基の炭素原子を含めた数を言う。
【0014】
前記3価以上の多価アルコール(A)としては、例えば、脂肪族多価アルコールが好ましい。前記、脂肪族多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価のアルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジメチロールプロパン等の4価のアルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール;ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット、ジペンタエリスリトール等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いる3価以上の多価アルコールの中でも、反応が容易で、かつ入手も容易で電子写真トナー用途に適したワックスが得られる理由からペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールがより好ましい。
【0016】
本発明で用いる炭素原子数14〜28のアルキル鎖を有するモノカルボン酸(B)は、例えば、直鎖のアルキル基を有するモノカルボン酸を例示できる。このようなモノカルボン酸としては、例えば、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸等が挙げられる。また、前記に例示したモノカルボン酸のアルキルエステル、例えば、炭素原子数1〜4のアルキル基を有するモノカルボン酸のアルキルエステルもモノカルボン酸(B)として使用することができる
【0017】
本発明で用いるモノカルボン酸(B)の中でも、反応性が高く、合成する際の反応時間が低時間で済むため合成中の酸化による本発明の電子写真トナー用ワックスの着色防止が期待できることから、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸及びリグノセリン酸からなる群から選ばれる1種以上のモノカルボン酸が好ましく、ベヘニン酸またはパルミチン酸がより好ましい。脂肪族直鎖モノカルボン酸(B)は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0018】
尚、本発明において、前記モノカルボン酸(B)と共に、本発明の効果を損なわない範囲でモノカルボン酸(B)以外のモノカルボン酸を併用しても良い。
【0019】
本発明の電子写真トナー用ワックスの製造方法としては、例えば、前記多価アルコール(A)とモノカルボン酸(B)とを、多価アルコール(A)が有するアルコール性水酸基1モルに対して、該モノカルボン酸(B)が有するカルボキシル基が0.25〜0.75モルとなるように反応器に仕込み、通常のエステル化反応させる方法や、該モノカルボン酸(B)としてモノカルボン酸のアルキルエステルを用い、前記多価アルコール(A)とモノカルボン酸(B)とをエステル交換反応させる方法が挙げられる。前記エステル化反応を促進する目的で、エステル化触媒を用いることも可能である。
【0020】
前記エステル化触媒としては、例えば、金属又は有機金属化合物を用いることができる。具体的には、周期律表2族、4族、12族、13族及び14族からなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属や有機金属化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ハフニウム、ゲルマニウム等の金属;チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、オクタン酸スズ、2−エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、4塩化ハフニウム、4塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、ジイソプロポキシチタン・ビスジオクチルホスフェート、ジイソプロポキシチタン・ビスジオクチルピロホスフェート、イソプロポキシチタン・トリスジオクチルピロホスフェート、等の金属化合物などが挙げられる。これらの中でも、反応性、取扱いやすさ、エステル化反応により得られたエステル化合物の保存安定性が良好であることから、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、ジイソプロポキシチタン・ビスジオクチルピロホスフェート、イソプロポキシチタン・トリスジオクチルピロホスフェートが好ましい。
【0021】
前記エステル化触媒の使用量は、エステル化反応を制御でき、かつ得られるエステル化合物の着色を抑制できる範囲の量であればよく、前記多価アルコール(A)とモノカルボン酸(B)との合計量に対し、50〜2,000ppmの範囲が好ましく、100〜1,000ppmの範囲がより好ましい。
【0022】
本発明の電子写真トナー用ワックスを製造する際、前記エステル化触媒を添加する時期は、前記多価アルコール(A)とモノカルボン酸(B)とを反応器に仕込むのと同時に添加してもよく、昇温途中に添加しても良い。また、エステル化触媒を分割して添加してもよい。
【0023】
前記の通り、本発明の電子写真トナー用ワックスは、3価以上の多価アルコール(A)が有するアルコール性水酸基1モルに対して、炭素原子数14〜28モノカルボン酸(B)が有するカルボキシル基0.25〜0.75モルを反応させて得られる。本発明の電子写真トナー用ワックスの中でも3価以上の多価アルコール(A)のアルコール性水酸基1モルに対して、モノカルボン酸(B)を0.30〜0.70モルを反応させて得られる電子写真トナー用ワックスが、より帯電性に優れる電子写真トナー用組成物が得られることから好ましい。
【0024】
本発明の電子写真トナー用ワックスを製造する際の反応温度は、各原料が蒸発や昇華することを抑制しつつ反応を促進し、反応により生成するエステル化合物の熱分解、着色を抑制できることから、60〜300℃の範囲が好ましく、100〜250℃の範囲がより好ましい。
【0025】
前記3価以上の多価アルコール(A)と炭素原子数14〜28のアルキル鎖を有するモノカルボン酸(B)との反応の進行状況は、JIS K0070の中和滴定法に従い酸価を測定する事により把握することができる。
【0026】
本発明の電子写真トナー用ワックスの形態としては、特に限定されないが、例えば、粉状、粒状、ペレット状、板状、フレーク状等が挙げられる。それらの作製方法も特に制限されないが、溶融状態の本発明の電子写真トナー用ワックスをステンレス製バットや冷却装置付のベルトコンベアーに取り出し、粉砕機等により粉、板、フレーク等する方法、固化・粉砕品を圧縮もしくは加熱等により造粒する方法、溶融状態から直接、粒子、ペレット状に取り出す方法、ポリエステル樹脂等のベース樹脂と一定の割合で混練しマスターバッチ化して取り出す方法等が挙げられる。
【0027】
本発明の電子写真トナー用組成物は、本発明の電子写真トナー用ワックスと、結着樹脂とを含有することを特徴とする。前記結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレンアクリル系共重合体(スチレンアクリル酸系樹脂);ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂を用いることができ、これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。この中でも特にスチレンアクリル系樹脂及びポリエステル樹脂を本発明では好ましく用いることができる。
【0028】
前記スチレンアクリル系樹脂の調製に用いるスチレン系モノマーとしては公知の化合物を用いることができる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2、4−ジメチルスチレン、α−エチルスチレン、α−ブチルスチレン、α−ヘキシルスチレン等のアルキルスチレン、4−クロロスチレン、3−クロロスチレン、3−ブロモスチレンの如きハロゲン化スチレン、更に3−ニトロスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0029】
前記スチレン系モノマーと共重合させるラジカル重合性の二重結合を有するアクリル酸系化合物としては、公知の化合物を使用することができる。例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、α−メチルクロトン酸、α−エチルクロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、等が挙げられる。
【0030】
スチレンアクリル系樹脂には、更に、上記アクリル酸系化合物以外の公知のモノマーを使用できる。そのようなモノマーの例としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、1、3−ジメチルブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、エチルメタアクリレート、n−ブチルメタアクリレート、2−メチルブチルメタアクリレート、ペンチルメタアクリレート、ヘプチルメタアクリレート、ノニルメタアクリレート等のアクリル酸エステル類及びメタアクリル酸エステル類;
【0031】
3−エトキシプロピルアクリレート、3−エトキシブチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、エチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレートのようなアクリル酸エステル誘導体及びメタクリル酸エステル誘導体;
【0032】
フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルエチルアクリレート、フェニルエチルメタアクリレートのようなアクリル酸アリールエステル類及びアクリル酸アラルキルエステル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ビスフェノールAのような多価アルコールのモノアクリル酸エステル類あるいはモノメタアクリル酸エステル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンポリテトラメチレングリコール、ポリグリセリン、多価アルコールのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を付加したポリエーテルのモノアクリル酸エステル類あるいはモノメタアクリル酸エステル類;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルのようなマレイン酸ジアルキルエステル、酢酸ビニル等を挙げることができる。これらのモノマーはその1種又は2種以上をモノマー成分として添加することができる。
【0033】
前記スチレンアクリル系樹脂の製造方法としては、通常の重合方法を採ることが可能で、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等、重合触媒の存在下に重合反応を行う方法が挙げられる。重合触媒としては、例えば、2、2´−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2、2´−アゾビスイソブチロニトリル、1、1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられ、その使用量はビニルモノマー成分の0.1〜10.0質量%が好ましい。
【0034】
前記ポリエステル樹脂としては、例えば、既に公知の溶液中における縮重合等により容易に合成できる。具体的には、例えば、多価アルコールとしてジオール成分と、多塩基酸としてジカルボン酸成分を用いることにより得ることができる。
【0035】
前記ジオール成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0036】
前記ジカルボン酸成分としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、メサコン酸、メタコン酸、グルタコン酸などが挙げられる。勿論、これらの無水物や低級アルキルエステルを用いることもできる。
【0037】
前記ポリエステル樹脂の中でも、エポキシ基を有する化合物を原料として使用して得られるものは、ポリエステル樹脂の分子量が良好に制御され、耐ホットオフセット性に優れるポリエステル樹脂となることから好ましい。前記エポキシ基を有する化合物としては、例えば、エポキシ基を1個有するモノエポキシ化合物や、エポキシ基を2個以上有するポリエポキシ化合物等が挙げられる。
【0038】
前記モノエポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、α−オレフィンオキサイド、モノエポキシ脂肪酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0039】
前記アルキルフェニルグリシジルエーテルとしては、例えば、クレジルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル等が挙げられ、アルキルグリシジルエーテルとしては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0040】
また、アルキルグリシジルエステルとしては、例えば、下記一般式(1)
【0041】
【化1】
(但し、Rは炭素原子数1〜25のアルキル基、好ましくは炭素原子数10〜15のアルキル基である。)で示される化合物が挙げられる。
【0042】
更に、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテルとしては、例えば、ブチルフェノール等の低級アルキルフェノールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテルが挙げられ、具体例としては、エチレングリコールモノフェニルエーテルのグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテルのグリシジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルのグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールモノフェニルエーテルのグリシジルエーテル、プロピレングリコールモノ(p−t−ブチル)フェニルエーテルのグリシジルエーテル、エチレングリコールモノノニルフェニルエーテルのグリシジルエーテル等がある。
【0043】
前記α−オレフィンオキサイドとしては、例えば、アルファオレフィンオキサイド−168[アデカア−ガス化学(株)製品]、アルファオレフィンオキサイド−124[アデカアーガス化学(株)製品]等のオレフィン類をオキシ化した化合物等が挙げられる。
【0044】
前記モノエポキシ脂肪酸アルキルエステルとしては、例えば、不飽和脂肪酸のアルコールエステルの不飽和基をエポキシ化した化合物で、例えばエポキシ化オレイン酸ブチルエステル、下記構造式(2)
【0045】
【化2】
で示される化合物、エポキシ化オレイン酸オクチルエステル等が挙げられる。これらのモノエポキシ化合物は単独で用いても2種以上を併用しても差し支えない。
【0046】
前記モノエポキシ化合物としては、本発明の電子写真用ワックスとの親和性が良好となるポリエステルとなることから前記一般式(1)で表されるモノエポキシ化合物が好ましい。
【0047】
前記エポキシ基を2個以上有する化合物としては、例えば、2〜4価のエポキシ化合物、5価以上のエポキシ化合物等が挙げられる。
【0048】
前記2〜4価のエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0049】
前記5価以上のエポキシ化合物としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体あるいは共重合体、エポキシ化レゾルシノール−アセトン縮合物、部分エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0050】
エポキシ基を2個以上有する化合物の中でも、耐ホットオフセット性の良好な電子写真トナーを製造できる電子写真トナー用樹脂組成物が得られることから2価のエポキシ化合物が好ましく、2価のエポキシ化合物の中でも、耐可塑剤性が良好なことからビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。また、反応性が良好でポリエステル樹脂を容易に得られることからクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とフェノールノボラック型エポキシ樹脂がより望ましい。
【0051】
更に、帯電特性、低温定着性及び耐ホットオフセット性に優れる電子写真トナー用ポリエステル樹脂を得る為に、後述する重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比〔(Mw)/(Mn)〕が5〜70の範囲にあるポリエステル樹脂を得やすいことから、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0052】
前記前記2〜4価のエポキシ化合物と5価以上のエポキシ化合物は2種以上を併用しても差し支えない。
【0053】
更に、本発明で用いるポリエステル樹脂には、低温定着性と耐ホットオフセット性を両立させた電子写真トナーを得るために、複素環構造を含ませても良い。複素環構造は、例えば、複素環と、上記ジオール、ジカルボン酸、エポキシ基を含む化合物と反応する官能基を有する化合物をポリエステル樹脂の調製時に原料の一部として用いることにより得ることができる。
【0054】
複素環と、上記ジオール、ジカルボン酸、エポキシ基を含む化合物と反応する官能基を有する化合物としては、例えば、複素環を含有し、且つ前記ジオールと反応しうる官能基を有する化合物、複素環を含有し、且つ前記ジカルボン酸と反応しうる官能基を有する化合物、複素環を含有し、且つ前記エポキシ化合物反応しうる官能基を有する化合物等が挙げられる。
【0055】
複素環を含有し、且つ前記ジオールと反応しうる官能基を有する化合物としては、例えばトリスカルボキシエチルイソシアヌル酸レート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌル酸、トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、トリアリルシアヌル酸、トリメタアリルイソシアヌル酸等が挙げられる。
【0056】
複素環を含有し、且つ前記ジカルボン酸と反応しうる官能基を有する化合物としては、例えば、トリスヒドロキシエチルイソシアヌル酸、トリスヒドロキシエチルトリアジン、トリスエポキシプロピルイソシアヌル酸、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、ヒダトインジエポキシド、グアナミン、メラミン等が挙げられる。
【0057】
複素環を含有し、且つ前記エポキシ化合物反応しうる官能基を有する化合物としては、例えば、トリスカルボキシエチルイソシアヌル酸、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌル酸、トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、トリアリルシアヌル酸、トリメタアリルイソシアヌル酸等が挙げられる。
【0058】
本発明で用いるポリエステル樹脂は、既知の重縮合反応法により任意に製造される。例えば、エステル化触媒(ジブチル錫オキサイド、テトラブチルチタネート、パラトルエンスルホン酸等)の存在下やエステル交換触媒(鉛化合物、錫化合物、亜鉛化合物等)の存在下に、ジカルボン酸メチルエステル等の低級アルキルエステル使用のエステル交換反応、常圧脱水反応、減圧および真空脱水反応、溶液重縮合法、固相重縮合反応等いずれの製造法にて実施してもよい。この時のポリエステル化反応の追跡は、酸価、水酸基価、粘度または軟化点(T1/2)を測定することにより行うことができる。
【0059】
この際使用される装置としては、例えば、窒素導入口、温度計、攪拌装置、精留塔等を備えた反応容器の如き回分式の製造装置が好適に使用できるはか、脱気口を備えた押し出し機や連続式の反応装置、混練機等も使用できる。また、上記脱水縮合の際、必要に応じて反応系を減圧することにより、エステル化反応を促進することもできる。さらに、エステル化反応の促進のために、公知慣用の触媒を添加することもできる。
【0060】
本発明で用いるポリエステル樹脂は良好な低温定着性が更に良好な電子写真トナーが得られることから、ガラス転移温度(Tg)が50〜90℃のポリエステル樹脂が好ましく、55〜85℃のポリエステル樹脂がより好ましい。また、更に良好なホットオフセット性が得られることから、軟化点(T1/2)が90〜200℃のポリエステル樹脂が好ましく、100〜180℃のポリエステル樹脂がより好ましい。
【0061】
従って、ガラス転移温度(Tg)が50〜90℃で、且つ、かつ、軟化点(T1/2)が90〜200℃のポリエステル樹脂が好ましく、ガラス転移温度(Tg)が55〜85℃で、且つ、かつ、軟化点(T1/2)が100〜180℃のポリエステル樹脂がより好ましい。
【0062】
前記ガラス転移温度は以下に示す条件で測定した値である。
測定機器:セイコー電子工業(株)製DSC220C
測定条件:10℃/min、試料:アルミ容器に試料を10mg程度入れ、ふたをする。
測定方法:DSC(示唆走査熱量分析)法
【0063】
前記軟化点(T1/2)は以下の条件により測定した。
測定機器:株式会社島津製作所製CFT−500D
測定条件:昇温速度6℃/min、ノズル1.0mmΦ×10mm、荷重10kgf、 試料量1.5g
ここで、軟化点(T1/2)とは高化式フローテスター〔株式会社島津製作所製CFT−500D〕においてプランジャー(ピストン)が流出開始から流出終了までの工程において中間点にきたときの温度をいう。
【0064】
本発明で用いるポリエステル樹脂は低温定着性と耐ホットオフセット性に優れるトナーが得られることから重量平均分子量(Mw)が5,000〜700,000のポリエステルが好ましく、10,000〜500,000のポリエステルがより好ましい。また、本発明で用いるポリエステル樹脂は良好なガラス転移温度を保持し、その結果、良好な貯蔵安定性トナーが得られることから数平均分子量(Mn)が2,000〜8,000のポリエステルが好ましく、2,500〜7,500のポリエステルがより好ましい。
【0065】
更に、本発明で用いるポリエステル樹脂はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、ホットオフセット性と低温定着性と帯電特性に優れることから(Mw/Mn)で3〜100のポリエステル樹脂が好ましく、5〜70がより好ましい。
【0066】
ここで、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
【0067】
[GPC測定条件]
測定装置;東ソー株式会社製 HLC−8120GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN H
XL−H+東ソー株式会社製 TSK−GEL G5000H
XL+東ソー株式会社製 TSK−GEL G4000H
XL+東ソー株式会社製 TSK−GEL G3000H
XL+東ソー株式会社製 TSK−GEL G2000H
XL
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
【0068】
[標準]
単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製 A−500、F−2、F−20、F−80、F−288、A−2500、F−10、F−40、F−128、F−380)を用いて検量線を作成した。
【0069】
[試料]
樹脂固形分換算で0.5質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0070】
本発明の電子写真トナー用樹脂組成物中の、本発明の電子写真トナー用ワックスの含有量としては、低温定着性、耐ホットオフセット性、帯電性に優れる電子写真トナーが得られることから結着樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、1〜8質量部がより好ましい。
【0071】
本発明の電子写真トナー用組成物は、例えば、以下のような組成物を好ましく例示できる。
・本発明の電子写真トナー用ワックスと、結着樹脂と、着色剤を一括混合し、溶融混練する事により得られる電子写真トナー用組成物。
・本発明の電子写真トナー用ワックスと結着樹脂とを含む樹脂組成物と着色剤とを含有する電子写真トナー用組成物。具体的には、本発明の電子写真トナー用ワックスと結着樹脂とを予め結着樹脂が溶融している反応缶内において溶融混合した樹脂組成物としておき、この樹脂組成物に着色剤を加えて溶融混練する事により得られる電子写真トナー用組成物。
【0072】
前記着色剤としては、例えば、種々の有機顔料、無機顔料があり、例えば、カーボンブラック、マグネタイト、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、アゾ系イエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、イソインドリンイエロー、ウルトラマリンブルー、フタロシアニンブルー、ランプブラック、ローズベンガラ、キナクリドンレッド、ナフトールレッド、カーミン6B、ウオッチングレッド等を挙げることができ、1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。また、顔料以外の着色剤のほかには、染料類も用いても構わないし、顔料と染料を併用しても構わない。
【0073】
本発明の電子写真トナー用組成物には、帯電制御剤を含有させることができる。帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、トリメチルエタン系染料、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料等の重金属含有酸性染料等公知慣用の電荷制御剤を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
また、本発明の電子写真トナー用組成物には、本発明の電子写真トナー用ワックス以外のワックスも本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。このようなワックスとしては、例えば、モンタンワックス、カルナバワックス、精製カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス等の天然ワックス;ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス等のオレフィン系合成ワックス等;パルミチルパルミテート、ステアリルステアレート、ベヘニルべヘネート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラべヘネート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサべヘネート等のエステル系合成ワックス等が挙げられる。
【0075】
本発明の電子写真用トナー用組成物を用いて得られる電子写真トナーは、公知慣用の任意の製造方法に依って得ることができる。例えば、本発明で得られる電子写真トナー用組成物と必要に応じて着色剤、帯電制御剤、流動調整剤等をヘンシェルミキサ−などで予備混合して混合物を調製した後、この混合物を3本ロ−ル、加圧ニ−ダ−、2軸押し出し機等の装置で溶融混練し、混練物を得る。ついで、この混練物を冷却し、粗粉砕した後タ−ボミル等を用いた機械粉砕法あるいはジェットミルを用いたエア−式粉砕法等の方法によって所定の粒子径のトナ−粒子を得る。さらに必要に応じてこのトナ−粒子を風力分級機等により分級することが一般的である。通常は体積平均粒子径として、5〜15μmとなるように調製される。また、このように調製されたトナ−粒子に対し、粉体の流動性改良や帯電特性の改良のため外添剤としてシリカ粉末、酸化チタン、アルミナ等の微粒子が混合されるのが一般的である。
【0076】
前記外添剤として用いるシリカ粒子としては、比較的大きい平均粒子径を有するものと、比較的小さい平均粒子径を有するものがあり、これらは単独で用いても併用してもよい。シリカの外添量としては、帯電量が必要充分となり、感光体ドラムを傷つけたり、トナーの環境特性の悪化を招くこと等がないことから、電子写真トナー粒子100重量部に対し、0.1〜5.0重量部が実用上好適である。
【0077】
本発明の電子写真トナーは帯電安定性に優れる。例えば、本発明の電子写真トナーは、例えば、帯電量が−30μC/g〜−60μC/gのものである。
【0078】
本発明では帯電量の測定は下記の条件に従って行った。
測定機器:トレックジャパン(株) 製201HS−2Aブローオフ帯電量測定機器
測定条件:25℃/RH60%
測定方法:樹脂3gとフェライトキャリアMF−100(日本鉄粉社製)48.5gの混合物を50mlのポリ容器にて1分間、10分間、30分間、60分間ミキサーにて混合し帯電量測定機器によって測定した。
【実施例】
【0079】
以下、本発明の実施例を挙げ、比較例と比較しながら本発明を詳述する。例中、「部」、「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0080】
合成例1(結着樹脂の調製)
エチレングリコール516g、ネオペンチルグリコール868g、ネオデカン酸グリシジルエステル(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:1)4g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:4)44gおよびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:6)80gを5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解した。溶解後、テレフタル酸2520gおよびイソフタル酸80gを加え、ジブチル錫オキサイド2gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温し255℃で7時間反応させた。系内がクリアであることを確認した後、更に減圧下、5時間反応させポリエステル樹脂(A)を得た。ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は60,000、数平均分子量(Mn)は4,400、酸価は11KOHmg/g、FT(フローテスター)値は131℃、ガラス転移点は63℃であった。
【0081】
合成例2(同上)
エチレングリコール522g、ネオペンチルグリコール825g、ブチルエチルプロパンジオール76g、ネオデカン酸グリシジルエステル(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:1)4g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:4)28gおよびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:6)4gを5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解した。溶解後、テレフタル酸2460g、イソフタル酸:80gおよびアジピン酸40gを加え、ジブチル錫オキサイド2gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温させ255℃で7時間反応させた。系内がクリアであることを確認した後、更に減圧下、5時間反応させてポリエステル樹脂(B)を得た。ポリエステル樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は15,000、数平均分子量(Mn)は4,000、酸価は10KOHmg/g、FT値は119℃、ガラス転移点は59℃であった。
【0082】
合成例3(同上)
エチレングリコール345g、ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物562g、ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物1330g、ネオデカン酸グリシジルエステル(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:1)16gおよびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:6)76gを5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、テレフタル酸1660gを加え、ジブチル錫オキサイド1gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温させ255℃で5時間反応させて、系内がクリアであることを確認した後、更に減圧下、3時間反応させてポリエステル樹脂(C)を得た。ポリエステル樹脂(C)の重量平均分子量(Mw)は49,000、数平均分子量(Mn)は4,400、酸価は11KOHmg/g、FT値は132℃、ガラス転移点は67℃であった
【0083】
合成例4(同上)
ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物2932gを5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、テレフタル酸403g及びフマル酸658gを加え、ジブチル錫オキサイド1gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温させ255℃で6時間反応させた。系内がクリアであることを確認した後、更に現圧下6時間反応させてポリエステル樹脂(D)を得た。ポリエステル樹脂(D)の重量平均分子量(Mw)は14,000、数平均分子量(Mn)は4,200、酸価は11KOHmg/g、FT値は120℃、ガラス転移点は61℃であった。
【0084】
実施例1(本発明の電子写真トナー用ワックスの調製)
ベヘニン酸(アルキル鎖の炭素数22)3,335g(9.78モル)を5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、ペンタエリスリトール665g(4.96モル)を投入し窒素気流下にて240℃まで徐々に昇温した。酸価が1.0以下になるまで240℃で反応させて、本発明の電子写真トナー用ワックス(1)を得た。電子写真トナー用ワックス(1)は、アルコール性水酸基1モルに対して、カルボキシル基を0.49モル反応させて得られたものであり、水酸基価は75KOHmg/gであった。
【0085】
実施例2(同上)
ベヘニン酸(アルキル鎖の炭素数22)3,531g(10.35モル)を5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、ペンタエリスリトール469g(3.50モル)を投入し窒素気流下にて240℃まで徐々に昇温した。酸価が1.0以下になるまで240℃で反応させて、本発明の電子写真トナー用ワックス(2)を得た。電子写真トナー用ワックス(2)は、アルコール性水酸基1モルに対して、カルボキシル基を0.74モル反応させて得られたものであり、水酸基価は7KOHmg/gであった。
【0086】
実施例3(同上)
パルミチン酸(アルキル鎖の炭素数16)2,955g(8.67モル)を5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、ペンタエリスリトール1045g(7.80モル)を投入し窒素気流下にて240℃まで徐々に昇温した。酸価が1.0以下になるまで240℃で反応させて、本発明の電子写真トナー用ワックス(3)を得た。電子写真トナー用ワックス(3)は、アルコール性水酸基1モルに対して、カルボキシル基を0.28モル反応させて得られたものであり、水酸基価は170KOHmg/gであった。
【0087】
実施例4(同上)
ベヘニン酸(アルキル鎖の炭素数22)3,372g(9.89モル)を5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、ジペンタエリスリトール628g(4.69モル)を投入し窒素気流下にて240℃まで徐々に昇温した。酸価が1.0以下になるまで240℃で反応させて、本発明の電子写真トナー用ワックス(4)を得た。電子写真トナー用ワックス(4)は、アルコール性水酸基1モルに対して、カルボキシル基を0.35モル反応させて得られたものであり、水酸基価は135KOHmg/gであった。
【0088】
比較例1(比較対照用電子写真トナー用ワックスの調製)
ベヘニン酸(アルキル鎖の炭素数22)2,860g(8.39モル)を5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、ペンタエリスリトール1,140g(8.51モル)を投入し窒素気流下にて240℃まで徐々に昇温した。酸価が1.0以下になるまで240℃で反応させて、比較対照用電子写真トナー用ワックス(1´)を得た。比較対照用電子写真トナー用ワックス(1´)は、アルコール性水酸基1モルに対して、カルボキシル基を0.21モル反応させて得られたものであり、水酸基価は224KOHmg/gであった。
【0089】
比較例2(同上)
ベヘニン酸(アルキル鎖の炭素数22)3,637g(10.67モル)を5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、ペンタエリスリトール363g(2.71モル)を投入し窒素気流下にて240℃まで徐々に昇温した。酸価が1.0以下になるまで240℃で反応させて、比較対照用電子写真トナー用ワックス(2´)を得た。比較対照用電子写真トナー用ワックス(2´)は、アルコール性水酸基1モルに対して、カルボキシル基を0.98モル反応させて得られたものであり、水酸基価は1KOHmg/gであった。
【0090】
比較例3(同上)
ベヘニン酸(アルキル鎖の炭素数22)341g(1モル)を5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、エチレングリコール62g(1モル)を投入し窒素気流下にて240℃まで徐々に昇温した。酸価が1.0以下になるまで240℃で反応させて、比較対照用電子写真トナー用ワックス(3´)を得た。比較対照用電子写真トナー用ワックス(3´)は、アルコール性水酸基1モルに対して、カルボキシル基を0.50モル反応させて得られたものであり、水酸基価は69KOHmg/g以下であった。
【0091】
実施例5(電子写真トナー用組成物)
ポリエステル樹脂(A)99部を5Lフラスコ中に入れ、200℃に加温・溶融した。その後、本発明の電子写真トナー用ワックス(1)を1部加えて1時間撹拌し、本発明の電子写真トナー用組成物(1)を得た。得られた電子写真トナー用組成物(1)の酸価は11KOHmg/g、FT(フローテスター)値は132℃、Tg(ガラス転移温度)は61℃であった。
【0092】
実施例6〜9(同上)
第1表に示す原料と配合量を用いた以外は実施例5と同様にして電子写真トナー用組成物(2)〜(5)を得た。得られた電子写真トナー用組成物の酸価、FT(フローテスター)値及びTg(ガラス転移温度)を合わせて第1表に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
実施例10(本発明の電子写真トナーの調製)
ポリエステル樹脂(A)90部、本発明の電子写真トナー用ワックス(1)3部、カーボンブラックMA−11(三菱化学株式該社製)5部及びボントロンS34(オリエント化学工業株式会社製の帯電制御剤)2部をヘンシェルミキサ−で混合し、本発明の電子写真トナー用組成物(1)を得た。その後、該組成物を2軸混練機で混練し、混練物を得た。この混練物をAFG100/ATP50(ホソカワミクロン社製 ジェットミル兼分級機)で微粉砕、分級し、混練物の粒子を得た。分級後の粒子とシリカR972(日本アエロジル株式会社製)1部とをヘンシェルミキサーで混合後、篩かけをして混合物を得た。得られた混合物5部とキャリア(シリコン樹脂被覆フェライトキャリア)95部とを混合攪拌して本発明の電子写真用トナー(1)を得た。電子写真用トナー(1)の低温定着性、耐ホットオフセット性、帯電量及び帯電安定性を下記評価方法に従って評価した。評価結果を第3表に示す。
【0095】
<低温定着性の評価>
熱ロールの設定温度を5℃きざみに110℃から150℃まで変化させ、ベタ印刷を行った。ベタ印刷部分に堅牢度試験を行い、試験前後の画像濃度をマクベス濃度計(RD−918)で測定し、その試験前の値に対する剥離後の濃度値の比率を%で表示した場合に、その値が80%以上となる温度を定着開始温度とした。この温度が低いほど低温定着性の良好な電子写真用トナーである。低温定着性の評価基準は下記の通りとした。尚、堅牢度試験は学振型摩擦堅牢度試験機(荷重:200g、擦り操作:5ストローク)を用いて行った。
◎:定着開始温度が135℃未満の場合
○:定着開始温度が130℃以上、135℃未満の場合
△:定着開始温度が135℃以上、140℃未満の場合
×:定着開始温度が140℃以上の場合
【0096】
<耐ホットオフセット性の評価方法>
熱ロールの設定温度を5℃きざみに160℃から210℃まで変化させたときに、ベタ印刷部分が再び同じ用紙にオフセットし、目視で確認できる最低の温度で表示した。この温度が高いほど耐オフセット性が良好であることを示す。
◎:オフセット開始温度が200℃以上の場合
○:オフセット開始温度が180℃以上、200℃未満の場合
△:オフセット開始温度が160℃以上、180℃未満の場合
×:オフセット開始温度が160℃未満の場合
【0097】
尚、低温定着性の評価、耐ホットオフセット性の評価は、以下のヒートローラー定着機条件で行った。
ロール材質:上;ポリテトラフルオロエチレン、下;シリコーン
上ロール荷重:7Kg/350mm
ニップ幅:4mm
紙通し速度:90mm/sec
【0098】
<帯電量及び帯電安定性の評価方法>
トレックジャパン(株)製210HSー2Aブローオフ帯電量測定機器を用い、電子写真用トナー(1)1.5gとフェライトキャリアMF−1008(日本鉄粉株式会社製)48.5gとの混合物を50mlのポリ容器にて1分間、10分間、30分間、60分間ターブラシェイカーミキサーにて混合し、それぞれを前記帯電量測定機器によって測定した。それらの平均値をとったものを帯電量とした。また、前記10分間、30分間及び60分間ターブラシェイカーミキサーにて混合し帯電量測定機器によって測定した帯電量において、最大帯電量と最小帯電量の差を求め、この値を帯電安定性の評価とした。この値が小さいほど帯電安定性に優れることを表す。
【0099】
帯電量の評価基準
◎ :−45μC/g以上
○ :−40μC/g以上、−45μC/g未満
△ :−35μC/g以上、−40μC/g未満
× :−30μC/g以上、−35μC/g未満
××:−30μC/g未満
【0100】
帯電安定性の評価基準
◎:最大帯電量と最小帯電量の差が−3μC/g未満
○:最大帯電量と最小帯電量の差が−3μC/g以上、−6μC/g未満
△:最大帯電量と最小帯電量の差が−6μC/g以上、−9μC/g未満
×:最大帯電量と最小帯電量の差が−9μC/g以上、−12μC/g未満
【0101】
実施例11〜24(同上)
第2表に示す原料と配合量を用いた以外は実施例10と同様にして電子写真用トナー(2)〜(15)を得た。得られた電子写真用トナー(2)〜(15)のそれぞれについて、低温定着性、耐ホットオフセット性、帯電量及び帯電安定性を実施例10と同様にして評価した。評価結果を第3表に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
比較例4〜9(比較対照用の電子写真トナーの調製)
第3表に示す原料と配合量を用いた以外は実施例10と同様にして比較対照用電子写真用トナー(1´)〜(6´)を得た。得られた比較対照用電子写真用トナー(1´)〜(6´)のそれぞれについて、低温定着性、耐ホットオフセット性、帯電量及び帯電安定性を実施例10と同様にして評価した。評価結果を第4表に示す。
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】