【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは先の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、酸処理黒鉛を加熱処理して膨張黒鉛を得る際、1100〜1200℃での熱処理時の130%以下のかさ密度を有する膨張黒鉛からなり、炭素質物と黒鉛の含有量が5〜90重量%含み、複合化している炭素質物と共に0.2μm以下の厚みの黒鉛薄層の間に挟まった構造であり、その構造が積層および/または網目状に広がっており、該黒鉛薄層が活物質粒子の表面付近で湾曲して活物質粒子を覆っていることを特徴とするリチウムイオン2次電池用負極活物質は、放電容量が大きく、サイクル寿命が長いリチウムイオン2次電池が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、黒鉛と炭素質物、Si化合物とを含んでなるリチウムイオン2次電池用負極活物質において、1100〜1200℃での熱処理時の130%以下のかさ密度を有する膨張黒鉛からなることを特徴とするリチウムイオン2次電池用カーボンシリコン系負極活物質である。
【0010】
以下、本発明のリチウムイオン2次電池用カーボンシリコン系負極活物質について詳細に説明する。
【0011】
本発明でいう黒鉛とは、グラフェン層がc軸に平行な結晶であり、黒鉛を酸処理、酸化処理した後、熱処理することにより膨張させ、黒鉛層間の一部が剥離してアコーディオン状となった膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物である。酸処理に使用する酸の種類としては、硫酸、硝酸、過マンガン酸等が挙げられる。膨張黒鉛のかさ密度は、低いことが好ましい。通常、酸処理黒鉛は高温で熱処理すると膨張が大きくなる傾向にあるため、1100〜1200℃の高温で熱処理すれば最大の膨張率が得られ、低かさ密度の膨張黒鉛が得られる。また、これより低い温度で熱処理すると膨張率が低くなり、かさ密度は高くなる傾向となる。本発明の黒鉛は、1100〜1200℃での熱処理時の130%以下のかさ密度を有することが好ましい。さらに好ましい範囲は120%以下である。130%を超えると、膨張率が低いために、後述する黒鉛薄層によるSi表面を覆う機能が低下し、Siと電解液が直接接して、充放電時に反応物が形成され、充放電時の効率低下が激しくなる。これと平行して、かさ密度が高くなると黒鉛の膨張も十分ではなくなることから、比表面積値は低下する傾向となる。この場合、1100〜1200℃での熱処理時の50%以上の比表面積値を有することが好ましい。
【0012】
本発明のリチウムイオン2次電池用負極活物質は、炭素質物と黒鉛の含有量として5〜90重量%含むことが好ましく、20〜60重量%がさらに好ましい。炭素質物の含有量が5重量%未満の場合、炭素質物と黒鉛がSi化合物を覆うことができず、導電パスが不十分となって容量劣化が激しく起こりやすく、90重量%より大きい場合、容量が十分に得られない。
【0013】
本発明でいう炭素質物とは、非晶質もしくは微結晶の炭素物質であり、2000℃を超える熱処理で黒鉛化する易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)と、黒鉛化しにくい難黒鉛化炭素(ハードカーボン)がある。
【0014】
また、本発明でいう炭素質物の含有量は、5〜40重量%であることが好ましい。炭素質物の含有量が5重量%未満の場合、炭素質物がSi化合物および黒鉛を覆うことができず、Si化合物と黒鉛との接着が不十分となり、活物質粒子の形成が困難となりやすい。また、40重量%より大きい場合、導電性が炭素質物より高い黒鉛の効果が十分に引き出されない。
【0015】
本発明でいうSiとは、純度が98%程度の汎用グレードの金属シリコン、純度が2〜4Nのケミカルグレードの金属シリコン、塩素化して蒸留精製した4Nより高純度のポリシリコン、単結晶成長法による析出工程を経た超高純度の単結晶シリコン、もしくはそれらに周期表13族もしくは15族元素をドーピングして、p型またはn型としたもの、半導体製造プロセスで発生したウエハの研磨や切断の屑、プロセスで不良となった廃棄ウエハなど、汎用グレードの金属シリコン以上の純度であれば特に限定されない。
【0016】
本発明のリチウムイオン2次電池用カーボンシリコン系負極活物質において、Siの平均粒径D50は0.01〜0.5μmである。0.01μmより小さいと、表面酸化による容量や初期効率の低下が激しく、0.5μmより大きいと、リチウム挿入による膨張で割れが激しく生じ、サイクル劣化が激しくなる。なお、D50はレーザー回折法又は動的光散乱法で測定した体積平均の粒子径である。また、BET法で測定される比表面積が23〜300m
2/gである。比表面積が23m
2/gより小さいと、粒子が大きく、リチウム挿入による膨張で割れが激しく生じ、サイクル劣化が激しくなる。
【0017】
Siの含有量は10〜80重量%が好ましく、15〜50重量%がさらに好ましい。Siの含有量が10重量%未満の場合、従来の黒鉛に比べて十分に大きい容量が得られず、80重量%より大きい場合、サイクル劣化が激しくなる。
【0018】
本発明の負極活物質に含まれる黒鉛の粒子サイズは、負極活物質粒子のサイズより小さければ特に限定されないが、黒鉛粒子の厚みは活物質の平均粒径D50の1/5以下であることが好ましい。黒鉛の添加により活物質粒子の導電性および強度が高まり、充放電のレート特性およびサイクル特性が向上する。黒鉛粒子のX線回折で測定される(002)面の面間隔d002は0.338nm以下であることが好ましく、これは高度に黒鉛化が進んだ黒鉛を意味している。d002がこの値を超える場合、黒鉛による導電性向上効果が小さくなる。
【0019】
本発明のリチウムイオン2次電池用カーボンシリコン系負極活物質において、黒鉛薄層は0.5μm以下が好ましい。0.5μm以下であることで、黒鉛薄層間に挟まれたSi化合物と、炭素質物の層が薄くなって、Si化合物への電子の伝達が良くなり、厚みが0.5μmを超えると黒鉛薄層の電子伝達効果が薄まる。黒鉛薄層を断面で見て線状の場合、その長さは負極活物質粒子のサイズの半分以上あることが電子伝達に好ましく、負極活物質粒子のサイズと同等程度であることがさらに好ましい。黒鉛薄層が網目状の場合、黒鉛薄層の網が負極活物質粒子のサイズの半分以上に渡って繋がっていることが電子伝達に好ましく、負極活物質粒子のサイズと同等程度であることがさらに好ましい。
【0020】
本発明のリチウムイオン2次電池用カーボンシリコン系負極活物質では、その構造が積層および/または網目状に広がっており、該黒鉛薄層が活物質粒子の表面付近で湾曲して活物質粒子を覆っていることが好ましい。そのような形状にすることで、黒鉛薄層端面から電解液が侵入して、Si化合物や黒鉛薄層端面と電解液が直接接して、充放電時に反応物が形成され、効率が下がるリスクが低減する。
【0021】
本発明でいう黒鉛薄層とは、先に述べた黒鉛を酸処理、酸化処理した後、熱処理することにより膨張させて黒鉛層間の一部が剥離してアコーディオン状となった膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物からなる黒鉛薄層である。
【0022】
本発明のリチウムイオン2次電池用カーボンシリコン系負極活物質は、形状が丸みを帯びた平均粒径D50が1〜40μmの複合粒子であり、好ましくは2〜30μmである。D50が1μm未満の場合、かさ高くなって高密度の電極が作製しにくくなり、40μmを超える場合、塗布した電極の凹凸が激しくなって均一な電極が作製しにくくなる。また、前記Siの平均粒径が該負極活物質の平均粒径の1/5以下であることが好ましい。
【0023】
形状が丸みを帯びた複合粒子とは、粉砕等により生成した粒子の角が取れているもの、球状もしくは回転楕円体形状、円板もしくは小判形状で厚みを有して角が丸いもの、またはそれらが変形したもので角が丸いものなどである。形状が丸みを帯びることにより複合粒子のかさ密度が高まり、負極にした時の充填密度が高まる。
【0024】
また、本発明のリチウムイオン2次電池用シリコン含有負極活物質においては、前記Si化合物の含有量が10〜60重量%、前記炭素質物の含有量が5〜40重量%、前記黒鉛の含有量が20〜80重量%であることが好ましい。
【0025】
本発明のリチウムイオン2次電池用カーボンシリコン系負極活物質では、比表面積が5〜120m
2/gであることがさらに好ましい。比表面積が5μm未満では、粒子径が大きくなることで、塗布した電極の凹凸が激しくなって均一な電極が作製しにくくなり、120m
2/gを超えると、表面積が大きいために電解液との反応生成物が多くなり、電池特性にサイクル特性の低下などの影響が発生する。
【0026】
次に、本発明のリチウムイオン2次電池用カーボンシリコン系負極活物質の製造方法について説明する。
【0027】
本発明のリチウムイオン2次電池用カーボンシリコン系負極活物質の製造方法は、膨張黒鉛、炭素前駆体、Siを混合する工程と、造粒・厚密化する工程と、粉砕して複合粒子を形成する工程と、該複合粒子を不活性雰囲気中で焼成する工程を含むものである。
【0028】
原料である膨張黒鉛は、天然黒鉛、石油や石炭のピッチを黒鉛化した人造黒鉛等で、鱗片状、小判状もしくは球状、円柱状もしくはファイバー状等の形状を有した黒鉛を、酸処理、酸化処理した後、熱処理することにより膨張させて黒鉛層間の一部が剥離してアコーディオン状となった膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物を用いる。混合前の粒子サイズとしては5μm〜5mm程度である。膨張黒鉛においては、酸処理を十分に行い、熱処理の温度勾配を大きくすることで大きく膨張させることが可能であり、混合分散を十分に行うことで出来上がった負極活物質の黒鉛薄層の厚みを薄くできるため、良好な電気伝導性、サイクル特性を得ることができる。
【0029】
原料の炭素前駆体としては、炭素を主体とする高分子で、不活性ガス雰囲気中での熱処理により炭素質物になるものであれば特に限定されないが、石油系ピッチ、石炭系ピッチ、合成ピッチ、タール類、セルロース、スクロース、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、フラン樹脂、フルフリルアルコール、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が使用できる。
【0030】
原料であるSiは、平均粒径D50が0.01〜0.5μmであり、BET法で測定される比表面積が23〜300m
2/gの粉末を使用する。所定の粒子径のSiを得るためには、上述のSiの原料(インゴット、ウエハ、粉末などの状態)を粉砕機で粉砕し、場合によっては分級機を用いる。インゴット、ウエハなどの塊の場合、最初はジョークラッシャー等の粗粉砕機を用いて粉末化することができる。その後、例えば、ボール、ビーズなどの粉砕媒体を運動させ、その運動エネルギーによる衝撃力や摩擦力、圧縮力を利用して被砕物を粉砕するボールミル、媒体撹拌ミルや、ローラによる圧縮力を利用して粉砕を行うローラミルや、被砕物を高速で内張材に衝突もしくは粒子相互に衝突させ、その衝撃による衝撃力によって粉砕を行うジェットミルや、ハンマー、ブレード、ピンなどを固設したローターの回転による衝撃力を利用して被砕物を粉砕するハンマーミル、ピンミル、ディスクミルや、剪断力を利用するコロイドミルや高圧湿式対向衝突式分散機「アルティマイザー」などを用いて粉砕した後、さらに、微粉化を行う。
【0031】
微粉化の方法として例えば、湿式のビーズミルを用い、ビーズの径を段階的に小さくすること等により非常に細かい粒子を得ることができる。ビーズミルに使用するメディアとしては高強度であるジルコニアが好ましい。ビーズの径は、粉砕するSiの粒径により変化させ、例えばSiの平均粒径D50が10〜40μmであれば、0.5〜1mmのビーズを使用し、Siの平均粒径D50が0.5〜10μmでは、0.1〜0.5mmのビーズを使用し、Siの平均粒径D50が0.1〜0.5μmでは、0.03〜0.1mmのビーズを使用することが好ましい。0.1mmよりも小さいビーズを使用する場合、ビーズとスラリーの分離として遠心分離方式を使用することが好ましい。
【0032】
粉砕時の分散剤としては、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールやヘキサン、トルエンなどの炭化水素系溶剤が好ましい。水はSiの酸化が激しくなるので適さない。また、必要に応じてスラリー粘度を下げるためのアニオン系やカチオン系、ノニオン系の分散剤を添加してもよい。スラリーの濃度には特に指定はないが、効率的な粉砕を行うこと、粉砕中の凝集を防ぐこと及びスラリー粘度を低くするための粘度として5〜25%が挙げられ、さらに好ましくは5〜20%が挙げられる。5%よりも濃度が低いと粉砕効率が低くなり、25%よりも高いとスラリー粘度が上昇し、粉砕効率の低下や詰まり等により粉砕ができなくなることがある。
【0033】
粉砕後に粒度分布を整えるため、乾式分級や湿式分級もしくはふるい分け分級を用いることができる。乾式分級は、主として気流を用い、分散、分離(細粒子と粗粒子の分離)、捕集(固体と気体の分離)、排出のプロセスが逐次もしくは同時に行われ、粒子相互間の干渉、粒子の形状、気流の乱れ、速度分布、静電気の影響などで分級効率を低下させないように、分級をする前に前処理(水分、分散性、湿度などの調整)を行うか、使用される気流の水分や酸素濃度を調整して行われる。乾式で分級機が一体となっているタイプでは、一度に粉砕、分級が行われ、所望の粒度分布とすることが可能となる。
【0034】
別の所定の粒子径のSiを得る方法としては、プラズマやレーザー等でSi化合物を加熱して蒸発させ、不活性ガス中で凝固させて得る方法、ガス原料を用いてCVDやプラズマCVD等で得る方法があり、これらの方法は0.1μm以下の超微粒子を得るのに適している。
【0035】
これらの膨張黒鉛、炭素前駆体、Siとの混合は、炭素前駆体が加熱により軟化、液状化するものである場合は、加熱下で黒鉛、炭素前駆体、Siを混練することによって行うことができる。また、炭素前駆体が溶媒に溶解するものである場合には、溶媒に膨張黒鉛、炭素前駆体、Siを投入し、炭素前駆体が溶解した溶液中で膨張黒鉛、炭素前駆体、Siを分散、混合し、次いで溶媒を除去することで行うことができる。用いる溶媒は、炭素前駆体を溶解できるものであれば特に制限なく使用できる。例えば、炭素前駆体としてピッチ、タール類を用いる場合には、キノリン、ピリジン、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、クレオソート油等が使用でき、ポリ塩化ビニルを用いる場合には、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ニトロベンゼン等が使用でき、フェノール樹脂、フラン樹脂を用いる場合には、エタノール、メタノール等が使用できる。
【0036】
混合方法としては、炭素前駆体を加熱軟化させる場合は、混練機(ニーダー)を用いることができる。溶媒を用いる場合は、上述の混練機の他、ナウターミキサー、レーディゲミキサー、ヘンシェルミキサ、ハイスピードミキサー、ホモミキサー等を用いることができる。また、これらの装置でジャケット加熱したり、その後、振動乾燥機、パドルドライヤーなどで溶媒を除去する。
【0037】
これらの装置で、炭素前駆体を固化、または、溶媒除去の過程における撹拌をある程度の時間続けることで、膨張黒鉛、Si、炭素前駆体の混合物は造粒・圧密化される。また、炭素前駆体を固化、または溶媒除去後の混合物をローラーコンパクタ等の圧縮機によって圧縮し、解砕機で粗粉砕することにより、造粒・圧密化することができる。これらの造粒・圧密化物の大きさは、その後の粉砕工程での取り扱いの容易さから0.1〜5mmが好ましい。
【0038】
造粒・圧密化物の粉砕方法は、圧縮力を利用して被砕物を粉砕するボールミル、媒体撹拌ミルや、ローラによる圧縮力を利用して粉砕を行うローラミルや、被砕物を高速で内張材に衝突もしくは粒子相互に衝突させ、その衝撃による衝撃力によって粉砕を行うジェットミルや、ハンマー、ブレード、ピンなどを固設したローターの回転による衝撃力を利用して被砕物を粉砕するハンマーミル、ピンミル、ディスクミル等の乾式の粉砕方法が好ましい。また、粉砕後に粒度分布を整えるため、風力分級、ふるい分け等の乾式分級が用いられる。粉砕機と分級機が一体となっているタイプでは、一度に粉砕、分級が行われ、所望の粒度分布とすることが可能となる。
【0039】
粉砕して得られた複合粒子は、アルゴンガスや窒素ガス気流中、もしくは真空など不活性雰囲気中で焼成する。焼成温度は800〜1000℃とすることが好ましい。焼成温度が800℃未満であると、炭素前駆体由来の非晶質炭素の不可逆容量が大きく、またサイクル特性が悪いため、電池の特性が低下する傾向にある。
【0040】
本発明のリチウムイオン2次電池用カーボンシリコン系負極活物質の製造方法は、膨張黒鉛、Si、炭素前駆体を、該炭素前駆体が溶解する溶媒に混合分散する工程と、造粒・厚密化する工程と、粉砕および球形化処理して形状が丸みを帯びた複合粒子を形成する工程と、該複合粒子を不活性雰囲気中で焼成する工程を含むことが好ましい。
【0041】
造粒・圧密化物を粉砕して球形化処理を施す方法としては、上述の粉砕方法により粉砕して粒度を整えた後、専用の球形化装置を通す方法と、上述のジェットミルやローターの回転による衝撃力を利用して被砕物を粉砕する方法を繰り返す、もしくは処理時間を延長することで球形化する方法がある。専用の球形化装置としては、ホソカワミクロン社のファカルティ(登録商標)、ノビルタ(登録商標)、メカノフュージョン(登録商標)、日本コークス工業社のCOMPOSI、奈良機械製作所社のハイブリダイゼーションシステム、アーステクニカ社のクリプトロンオーブ、クリプトロンエディ等が挙げられる。
【0042】
このようにして得られる本発明のリチウムイオン2次電池用カーボンシリコン系負極活物質は、リチウム二次電池の負極材料として用いることができる。
【0043】
本発明の負極活物質は、例えば、有機系結着剤、導電助剤および溶剤と混練して、シート状、ペレット状等の形状に成形するか、または集電体に塗布し、該集電体と一体化してリチウム二次電池用負極とされる。
【0044】
有機系結着剤としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンポリマー、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、イオン導電性の大きな高分子化合物が使用できる。イオン導電率の大きな高分子化合物としては、ポリ弗化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエピクロロヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド等が使用できる。有機系結着剤の含有量は、負極材全体に対して3〜20重量%含有させることが好ましい。また、有機系結着剤の他に粘度調整剤として、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、その他のアクリル系ポリマー、または脂肪酸エステル等を添加しても良い。
【0045】
導電剤の種類は特に限定されず、構成された電池において、分解や変質を起こさない電子伝導性の材料であれば良く、具体的にはAl,Ti,Fe,Ni,Cu,Zn,Ag,Sn,Si等の金属粉末や金属繊維、または天然黒鉛、人造黒鉛、各種のコークス粉末、メソフェーズ炭素、気相成長炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、各種の樹脂焼成体等の黒鉛などを用いることができる。導電剤の添加量は、負極材全体中に対して0〜20重量%であり、さらには1〜10重量%が好ましい。導電剤量が少ないと、負極材の導電性に乏しい場合があり、初期抵抗が高くなる傾向がある。一方、導電剤量の増加は電池容量の低下につながるおそれがある。
【0046】
前記溶剤としては特に制限はなく、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、イソプロパノール、純水等が挙げられ、その量に特に制限はない。集電体としては、例えばニッケル、銅等の箔、メッシュなどが使用できる。一体化は、例えばロール、プレス等の成形法で行うことができる。
【0047】
このようにして得られた負極は、セパレータを介して正極を対向して配置し、電解液を注入することにより、従来のシリコンを負極材料に用いたリチウム二次電池と比較して、サイクル特性に優れ、高容量、高初期効率という優れた特性を有するリチウム二次電池を作製することができる。
【0048】
正極に用いられる材料については、例えばLiNiO
2、LiCoO
2、LiMn
2O
4、LiNi
xMn
yCo
1−x−yO
2、LiFePO
4、Li
0.5Ni
0.5Mn
1.5O
4、Li
2MnO
3−LiMO
2(M=Co,Ni,Mn)、Li箔等を単独または混合して使用することができる。
【0049】
電解液としては、LiClO
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSO
3CF
3等のリチウム塩を、例えばエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート等の非水系溶剤に溶解させた、いわゆる有機電解液を使用することができる。さらには、イミダゾリウム、アンモニウム、およびピリジニウム型のカチオンを用いたイオン液体を使用することができる。対アニオンは特に限定されるものではないが、BF
4−、PF
6−、(CF
3SO
2)
2N
−等が挙げられる。イオン液体は前述の有機電解液溶媒と混合して使用することが可能である。電解液には、ビニレンカーボネートやフロロエチレンカーボネートの様なSEI(固体電解質界面層)形成剤を添加することもできる。
【0050】
また、上記塩類をポリエチレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド等やこれらの誘導体、混合物、複合体等に混合された固体電解質を用いることもできる。この場合、固体電解質はセパレータも兼ねることができ、セパレータは不要となる、セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムまたはこれらを組み合わせたものを使用することができる。