特許第6451280号(P6451280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6451280-多層プリント配線板の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6451280
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】多層プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
   H05K3/46 B
   H05K3/46 T
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-251011(P2014-251011)
(22)【出願日】2014年12月11日
(65)【公開番号】特開2016-115713(P2016-115713A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】藤村 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 隆志
【審査官】 小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/086833(WO,A1)
【文献】 特開平05−037153(JP,A)
【文献】 特開平09−199858(JP,A)
【文献】 特開2011−171528(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/119621(WO,A1)
【文献】 特開2000−022334(JP,A)
【文献】 特開2004−134693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層基板の導体層上に電気絶縁層を形成する工程を含む多層プリント配線板の製造方法であって、
前記電気絶縁層を形成する工程は、前記内層基板の前記導体層側の表面上に第1の硬化性樹脂組成物層を形成する工程と、前記第1の硬化性樹脂組成物層を硬化させて前記電気絶縁層の基板側部分を形成する工程と、前記第1の硬化性樹脂組成物層または第1の硬化性樹脂組成物層の硬化物上に第2の硬化性樹脂組成物層を積層する工程と、前記第2の硬化性樹脂組成物層を硬化させて前記電気絶縁層の表面側部分を形成する工程とを含み、
前記第1の硬化性樹脂組成物層を形成する工程は、前記内層基板の前記導体層側の表面上に液状またはスラリー状の層形成用組成物を塗布する工程を含み、
前記第2の硬化性樹脂組成物層を積層する工程は、支持体と、支持体上に形成された第2の硬化性樹脂組成物層とを有する積層体を、前記第2の硬化性樹脂組成物層が前記内層基板側に位置するように前記第1の硬化性樹脂組成物層または第1の硬化性樹脂組成物層の硬化物上に積層する工程を含み、
前記第2の硬化性樹脂組成物層の厚みが0.1μm以上4μm以下である、
多層プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記第1の硬化性樹脂組成物層の溶剤含有率が、前記第2の硬化性樹脂組成物層の溶剤含有率よりも少ない、請求項1に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記第2の硬化性樹脂組成物層を積層する工程において、前記積層体を前記第1の硬化性樹脂組成物層上に積層し、
前記第1の硬化性樹脂組成物層と前記第2の硬化性樹脂組成物層とを積層した状態で一緒に硬化させる、請求項1または2に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記導体層が、配線幅が15μm以下で配線間隔が15μm以下の配線パターンを含む、請求項1〜の何れかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記電気絶縁層にビア用の穴を形成する工程を更に含み、
前記穴の形成を前記支持体の剥離前に行う、請求項1〜の何れかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記第2の硬化性樹脂組成物層の無機充填剤含有率が50質量%以下である、請求項1〜の何れかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項7】
前記第1の硬化性樹脂組成物層の無機充填剤含有率が50質量%以上である、請求項1〜の何れかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プリント配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、多機能化、通信高速化などの追求に伴い、電子機器に用いられる回路基板のさらなる高密度化が要求されており、このような高密度化の要求に応えるために、多層構造を有するプリント配線板(以下、「多層プリント配線板」という。)が使用されている。
【0003】
そして、このような多層プリント配線板は、例えば、基材の両面に電気絶縁層を形成してなるコア基板と、そのコア基板の表面に形成された導体層(配線層)とからなる内層基板に対し、電気絶縁層の形成と、電気絶縁層上への導体層の形成とを繰り返し行なうことにより形成される。
【0004】
ここで、多層プリント配線板の電気絶縁層は、通常、導体層を有する基板上に硬化性樹脂組成物層を形成した後、加熱等の手段を用いて当該硬化性樹脂組成物層を硬化させることにより形成される。そして、基板上に硬化性樹脂組成物層を形成する方法としては、液状またはスラリー状の組成物を基板に塗布して基板上に硬化性樹脂組成物層を直接形成する方法(塗布法)と、予め形成したフィルム状の硬化性樹脂組成物層を基板に圧着する方法(ラミネーション法)とが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−198887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、塗布法には、形成される電気絶縁層の表面の平坦性が低下するという問題があった。そのため、塗布法を用いて調製した硬化性樹脂組成物層を硬化させて電気絶縁層を形成する従来の多層プリント配線板の製造方法には、電気絶縁層の平坦性を向上させるという点において改善の余地があった。
【0007】
一方、ラミネーション法には、基板が有する導体層(配線層)のパターン形状への追従性が低い(即ち、配線埋め込み性が低い)という問題があった。特に、近年では高密度化の要求に応える観点から多層プリント配線板には薄厚化および配線の更なる微細化が求められているところ、ラミネーション法を用いて調製した硬化性樹脂組成物層を硬化させて電気絶縁層を形成する従来の多層プリント配線板の製造方法には、配線埋め込み性を向上させるという点において改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、平坦性に優れ、且つ、配線が良好に埋め込まれた電気絶縁層を有する多層プリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、導体層を有する基板上に電気絶縁層を形成する際に、電気絶縁層の基板側部分を塗布法により調製した第1の硬化性樹脂組成物層を硬化させて形成すると共に、電気絶縁層の表面側部分をラミネーション法により調製した第2の硬化性樹脂組成物層を硬化させて形成することにより、平坦性に優れ、且つ、配線が良好に埋め込まれた電気絶縁層を有する多層プリント配線板が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、内層基板の導体層上に電気絶縁層を形成する工程を含む多層プリント配線板の製造方法であって、前記電気絶縁層を形成する工程は、前記内層基板の前記導体層側の表面上に第1の硬化性樹脂組成物層を形成する工程と、前記第1の硬化性樹脂組成物層を硬化させて前記電気絶縁層の基板側部分を形成する工程と、前記第1の硬化性樹脂組成物層または第1の硬化性樹脂組成物層の硬化物上に第2の硬化性樹脂組成物層を積層する工程と、前記第2の硬化性樹脂組成物層を硬化させて前記電気絶縁層の表面側部分を形成する工程とを含み、前記第1の硬化性樹脂組成物層を形成する工程は、前記内層基板の前記導体層側の表面上に液状またはスラリー状の層形成用組成物を塗布する工程を含み、前記第2の硬化性樹脂組成物層を積層する工程は、支持体と、支持体上に形成された第2の硬化性樹脂組成物層とを有する積層体を、前記第2の硬化性樹脂組成物層が前記内層基板側に位置するように前記第1の硬化性樹脂組成物層または第1の硬化性樹脂組成物層の硬化物上に積層する工程を含むことを特徴とする。このように、内層基板の導体層側の表面上に液状またはスラリー状の層形成用組成物を塗布して形成した第1の硬化性樹脂組成物層を硬化させて電気絶縁層の基板側部分を形成すれば、電気絶縁層の基板側部分において導体層を良好に埋め込むことができる。また、支持体と、支持体上に形成された第2の硬化性樹脂組成物層とを有する積層体を用いて形成した第2の硬化性樹脂組成物層を硬化させて電気絶縁層の表面側部分を形成すれば、電気絶縁層の表面の平坦性を優れたものとすることができる。従って、平坦性に優れ、且つ、配線が良好に埋め込まれた電気絶縁層を有する多層プリント配線板が得られる。
【0011】
ここで、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、前記第1の硬化性樹脂組成物層の溶剤含有率が、前記第2の硬化性樹脂組成物層の溶剤含有率よりも少ないことが好ましい。第1の硬化性樹脂組成物層の溶剤含有率を第2の硬化性樹脂組成物層の溶剤含有率よりも少なくすれば、第2の硬化性樹脂組成物層を有する積層体のハンドリング性を確保しつつ、電気絶縁層の表面の平坦性を更に向上させることができるからである。
【0012】
また、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、前記第2の硬化性樹脂組成物層の厚みが0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。第2の硬化性樹脂組成物層の厚みを上記範囲内とすれば、電気絶縁層が厚くなり過ぎるのを防止しつつ、電気絶縁層の表面の平坦性を十分に向上させることができるからである。
なお、本発明において、「第2の硬化性樹脂組成物層の厚み」とは、第2の硬化性樹脂組成物層について20mm以上の間隔をあけて測定した5点の厚みの測定値の平均値を指す。
【0013】
更に、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、前記第2の硬化性樹脂組成物層を積層する工程において、前記積層体を前記第1の硬化性樹脂組成物層上に積層し、前記第1の硬化性樹脂組成物層と前記第2の硬化性樹脂組成物層とを積層した状態で一緒に硬化させることが好ましい。第1の硬化性樹脂組成物層と第2の硬化性樹脂組成物層とを積層した状態で一緒に硬化させれば、電気絶縁層を構成する硬化樹脂層(各硬化性樹脂組成物層の硬化物)同士の密着性を高めることができるからである。
【0014】
また、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、前記導体層が、配線幅が15μm以下で配線間隔が15μm以下の配線パターンを含むことが好ましい。導体層に含まれる配線パターンの配線幅および配線間隔が15μm以下であれば、十分に微細な配線を有する多層プリント配線板を製造することができるからである。なお、本発明の多層プリント配線板の製造方法によれば、配線パターンの配線幅および配線間隔を15μm以下としても、配線が良好に埋め込まれた電気絶縁層を形成することができる。
【0015】
更に、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、前記電気絶縁層にビア用の穴を形成する工程を更に含み、前記穴の形成を前記支持体の剥離前に行うことが好ましい。支持体の剥離前にビア用の穴を形成すれば、径の小さいビア用の穴を容易に形成することができるからである。
【0016】
そして、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、前記第2の硬化性樹脂組成物層の無機充填剤含有率が50質量%以下であることが好ましい。第2の硬化性樹脂組成物層の無機充填剤含有率が50質量%以下であれば、例えばデスミア処理などを施した場合等に、電気絶縁層の表面粗度が大きくなるのを抑制することができるからである。
【0017】
また、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、前記第1の硬化性樹脂組成物層の無機充填剤含有率が50質量%以上であることが好ましい。第1の硬化性樹脂組成物層の無機充填剤含有率が50質量%以上であれば、線膨張率が小さい電気絶縁層を形成することができるからである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、平坦性に優れ、且つ、配線が良好に埋め込まれた電気絶縁層を有する多層プリント配線板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】多層プリント配線板の製造方法の電気絶縁層形成工程において内層基板上に電気絶縁層を形成する過程を断面で示す図であり、(a)は電気絶縁層形成工程の一例について示し、(b)は電気絶縁層形成工程の他の例について示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、交互に積層された電気絶縁層および導体層を有する多層プリント配線板を製造する際に用いられる。
【0021】
(多層プリント配線板の製造方法)
ここで、本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例では、内層基板に対し、電気絶縁層の形成(電気絶縁層形成工程)と、電気絶縁層上への導体層の形成(導体層形成工程)とを実施して所望の層数の電気絶縁層および導体層が交互に積層された多層プリント配線板を製造する。なお、本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例では、ビア用の穴を形成する工程と、穴を形成する際に発生したスミアを除去(デスミア)する工程と、穴内に導体を形成する工程とよりなるビア形成工程を実施して、多層プリント配線板にブラインドビア、ベリードビア、スルーホールビアなどのビアを設けてもよい。
【0022】
そして、本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例は、電気絶縁層形成工程において所定の方法で電気絶縁層を形成することを特徴とする。
【0023】
<内層基板>
ここで、本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例の電気絶縁層形成工程において電気絶縁層を形成する内層基板としては、少なくとも一方の表面側に導体層(配線層)を有する既知の内層基板を用いることができる。具体的には、内層基板としては、特に限定されることなく、図1(a)および(b)に積層方向に沿う断面を示すような、基材11の上に電気絶縁層12と導体層13とを順次積層してなる内層基板10を用いることができる。
【0024】
そして、上記内層基板10の基材11としては、特に限定されることなく、多層プリント配線板の製造において用いられている既知の基材を使用することができる。具体的には、基材11としては、例えば、電気絶縁性基板、プリント配線板、プリント回路板などが挙げられる。なお、電気絶縁性基板は、例えば、脂環式オレフィン重合体、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ガラス等の電気絶縁材料を含有する樹脂組成物を硬化させて形成することができる。
【0025】
また、上記基材11上に積層する電気絶縁層12としては、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物よりなる層(絶縁樹脂層)等の既知の電気絶縁層が挙げられる。
【0026】
更に、基材11上に形成された電気絶縁層12上に積層する導体層13としては、例えば、銅や金などの導電体により形成された配線13aを含む層が挙げられる。なお、導体層は、各種の回路を含んでいてもよく、また、配線や回路の構成、厚み等は特に限定されない。
なお、十分に微細な配線を有する多層プリント配線板を製造する観点からは、導体層は、配線幅が15μm以下、好ましくは10μm以下で、且つ、配線間隔が15μm以下、好ましくは10μm以下の配線パターンを含むことが好ましい。
【0027】
<電気絶縁層形成工程>
そして、本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例の電気絶縁層形成工程は、所謂塗布法を用いて内層基板上に形成した第1の硬化性樹脂組成物層を硬化させて電気絶縁層の基板側部分を形成し、更に、所謂ラミネーション法を用いて形成した第2の硬化性樹脂組成物層を硬化させて電気絶縁層の表面側部分を形成することを特徴とする。
【0028】
具体的には、電気絶縁層形成工程の一例では、例えば図1(a)に示すように、内層基板10の導体層13側の表面上に第1の硬化性樹脂組成物層20を形成する工程と、第1の硬化性樹脂組成物層20上に第2の硬化性樹脂組成物層31を積層する工程とを実施した後、第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31を硬化させて電気絶縁層40を形成する。そして、この電気絶縁層形成工程の一例では、第1の硬化性樹脂組成物層20を形成する工程において、内層基板10の導体層13側の表面上に液状またはスラリー状の層形成用組成物を塗布し、必要に応じて塗布した層形成用組成物を乾燥させて、第1の硬化性樹脂組成物層20を形成する。また、この電気絶縁層形成工程の一例では、第2の硬化性樹脂組成物層31を積層する工程において、支持体32と、支持体32上に形成された第2の硬化性樹脂組成物層31とを有する積層体30を、第2の硬化性樹脂組成物層31が内側(内層基板10側)に位置するように第1の硬化性樹脂組成物層10上に積層し、内層基板10上に形成された第1の硬化性樹脂組成物層20に積層体30を圧着して、第2の硬化性樹脂組成物層31を第1の硬化性樹脂組成物層20の上側に積層する。
【0029】
このように、流動性が高く、形状追従性に優れる液状またはスラリー状の層形成用組成物を内層基板10の導体層13側の表面上に塗布して第1の硬化性樹脂組成物層20を形成すれば、導体層13を第1の硬化性樹脂組成物層20内に良好に埋め込むことができる。従って、基板側部分において配線13aが良好に埋め込まれた電気絶縁層40を形成することができる。
また、液状またはスラリー状の層形成用組成物を内層基板10に塗布して形成した第1の硬化性樹脂組成物層20および第1の硬化性樹脂組成物層20の硬化物よりなる第1の絶縁樹脂層20Aは表面の平坦性が低下し易いが、積層体30を用いて第2の硬化性樹脂組成物層31を形成すれば、表面の平坦性に優れる第2の硬化性樹脂組成物層31を第1の硬化性樹脂組成物層20の上に設けることができる。従って、表面の平坦性に優れる第2の硬化性樹脂組成物層31の硬化物よりなる第2の絶縁樹脂層31Aで電気絶縁層40の表面側部分を構成し、表面の平坦性に優れる電気絶縁層40を形成することができる。
更に、第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31を積層した状態で一緒に硬化させて電気絶縁層40を形成すれば、第1の硬化性樹脂組成物層20の硬化物よりなる第1の絶縁樹脂層20Aと、第2の硬化性樹脂組成物層31の硬化物よりなる第2の絶縁樹脂層31Aとの密着性を高めることができる。従って、電気絶縁層40内における層間剥離などの発生を抑制することができる。
【0030】
ここで、第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31としては、多層プリント配線板の製造において用いられている既知の熱硬化性樹脂組成物層を挙げることができる。具体的には、第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31としては、硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、任意に充填剤やポリフェニレンエーテル化合物を更に含有する熱硬化性樹脂組成物層を用いることができる。
なお、第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。即ち、第1の硬化性樹脂組成物層20および/または第2の硬化性樹脂組成物層31は、複数の熱硬化性樹脂組成物層で構成されていてもよい。また、多層構造の第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31を構成する各熱硬化性樹脂組成物層の組成は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
そして、硬化性樹脂としては、硬化剤と組み合わせることで熱硬化性を示し、かつ、電気絶縁性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネートエステル重合体、ポリイミドなどが挙げられる。これらの中でも、硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂や極性基を有する脂環式オレフィン重合体が好ましい。これらの樹脂は、それぞれ単独で、または、2種以上を組合せて用いられる。
【0032】
なお、エポキシ樹脂としては、ビフェニル構造および/または縮合多環構造を有する多価エポキシ化合物と、3価以上の多価グリシジル基含有エポキシ化合物(但し、ビフェニル構造および/または縮合多環構造を有する多価エポキシ化合物に該当するものを除く)と、トリアジン構造含有フェノール樹脂との混合物が好ましい。
また、極性基を有する脂環式オレフィン重合体としては、シクロアルカン構造を有し、且つ、極性基としてアルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基およびリン酸基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を有する重合体が好ましい。
【0033】
更に、第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31を硬化させて得られる電気絶縁層40上に形成される導体層(図示せず)との密着性を高める観点からは、第2の硬化性樹脂組成物層31の硬化性樹脂としては、極性基を有する脂環式オレフィン重合体を使用することが好ましい。
【0034】
また、硬化剤としては、加熱により硬化性樹脂と反応して硬化性樹脂組成物層を硬化させることが可能な既知の化合物を使用することができる。具体的には、硬化性樹脂が例えばエポキシ樹脂の場合には、硬化剤としては、特に限定されることなく、活性エステル化合物、好ましくは分子内に少なくとも2つの活性エステル基を有する活性エステル化合物を用いることができる。また、硬化性樹脂が例えば極性基を有する脂環式オレフィン重合体の場合には、硬化剤としては、特に限定されることなく、極性基を有する脂環式オレフィン重合体の極性基と反応して結合を形成することができる官能基を2個以上有する化合物を用いることができる。
【0035】
なお、活性エステル化合物としては、カルボン酸化合物および/またはチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物および/またはチオール化合物とを反応させたものから得られる活性エステル化合物が好ましく、カルボン酸化合物と、フェノール化合物、ナフトール化合物およびチオール化合物からなる群から選択される1種または2種以上とを反応させたものから得られる活性エステル化合物がより好ましく、カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたものから得られ、かつ、分子内に少なくとも2つの活性エステル基を有する芳香族化合物が更に好ましい。
また、極性基と反応して結合を形成することができる官能基を2個以上有する化合物としては、例えば、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価アミン化合物、多価ヒドラジド化合物、アジリジン化合物、塩基性金属酸化物、有機金属ハロゲン化物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。また、これらの化合物と、過酸化物とを併用することで硬化剤として用いてもよい。
【0036】
更に、充填剤としては、電気絶縁層の線膨張率を低減可能な公知の無機充填剤および有機充填剤のいずれも用いることができるが、無機充填剤を用いることが好ましい。無機充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、水和アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレーなどを挙げることができる。ここで、用いる充填剤は、シランカップリング剤等で予め表面処理されたものであってもよい。
【0037】
なお、第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31を硬化させて得られる電気絶縁層40について、例えばデスミア処理などを施した場合等に表面粗度が大きくなるのを抑制する観点からは、第2の硬化性樹脂組成物層31の無機充填剤含有率は、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、第2の硬化性樹脂組成物層31は無機充填剤を含有しないことが特に好ましい。
また、第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31を硬化させて得られる電気絶縁層40の線膨張率を低減する観点からは、第1の硬化性樹脂組成物層20の無機充填剤含有率は50質量%以上であることが好ましい。
更に、第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31を硬化させて得られる電気絶縁層40について、デスミア処理等の後の表面粗度の増加抑制と線膨張率の低減とを両立する観点からは、第1の硬化性樹脂組成物層20の無機充填剤含有率を第2の硬化性樹脂組成物層31の無機充填剤含有率よりも高くすることが好ましい。このようにすれば、表面粗度への影響が大きい第2の硬化性樹脂組成物層31の無機充填剤含有率を低くして電気絶縁層40の表面粗度の増加を抑制しつつ、表面粗度への影響が小さい第1の硬化性樹脂組成物層20の無機充填剤含有率を高くして電気絶縁層40の線膨張率を十分に低減することができるからである。
【0038】
また、第1の硬化性樹脂組成物層20および/または第2の硬化性樹脂組成物層31には、上述した成分に加えて、ポリフェニレンエーテル化合物を更に配合してもよい。ポリフェニレンエーテル化合物を配合すれば、電気絶縁層40の耐熱性を高めると共に誘電正接を低減することができる。また、第1の硬化性樹脂組成物層20および/または第2の硬化性樹脂組成物層31には、硬化促進剤、難燃剤、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの公知の配合剤を含有させてもよい。
【0039】
そして、内層基板10の導体層13側の表面上への第1の硬化性樹脂組成物層20の形成は、例えば、下記の(1)または(2)の方法を用いて行うことができる。
(1)上述した成分と、所望により有機溶剤などの溶剤とを混合して得た層形成用組成物を内層基板に塗布、散布または流延し、次いで、乾燥する方法。
(2)硬化性樹脂を形成し得る単量体および重合開始剤を含む単量体組成物と、硬化性樹脂以外の上述した成分と、所望により有機溶剤などの溶剤とを混合して得た層形成用組成物を内層基板に塗布、散布または流延し、次に、内層基板上で単量体を重合させて硬化性樹脂を形成し、最後に必要に応じて乾燥する方法。
【0040】
また、支持体32上への第2の硬化性樹脂組成物層31の形成、並びに、支持体32および第2の硬化性樹脂組成物層31を有する積層体30の第1の硬化性樹脂組成物層10上への積層および圧着は、例えば以下のようにして行うことができる。
【0041】
支持体32上への第2の硬化性樹脂組成物層31の形成は、特に限定されないが、例えば、下記の(3)または(4)の方法を用いて行うことができる。
(3)上述した成分と、所望により有機溶剤などの溶剤とを混合して得た層形成用組成物を支持体に塗布、散布または流延し、次いで、乾燥する方法。
(4)硬化性樹脂を形成し得る単量体および重合開始剤を含む単量体組成物と、硬化性樹脂以外の上述した成分と、所望により有機溶剤などの溶剤とを混合して得た層形成用組成物を支持体に塗布、散布または流延し、次に、支持体上で単量体を重合させて硬化性樹脂を形成し、最後に必要に応じて乾燥する方法。
【0042】
また、積層体30の第1の硬化性樹脂組成物層10上への積層および圧着は、例えば、第2の硬化性樹脂組成物層31が内側に位置するように第1の硬化性樹脂組成物層10上に積層体30を載置した後、加熱圧着等の手段を用いて第1の硬化性樹脂組成物層10と第2の硬化性樹脂組成物層31とを圧着することにより行うことができる。そして、加熱圧着操作の温度は、例えば、30℃以上250℃以下、好ましくは70℃以上200℃以下とすることができる。また、加熱圧着操作の際に加える圧力は、例えば、10kPa以上20MPa以下、好ましくは100kPa以上10MPa以下とすることができ、加熱圧着時間は、30秒間以上5時間以下、好ましくは1分間以上3時間以下とすることができる。また、加熱圧着は、気泡の発生を抑えるために減圧下で行うのが好ましく、加熱圧着を行う際の圧力は、例えば、1Pa以上100kPa以下、好ましくは10Pa以上40kPa以下とすることができる。
ここで、上述した加熱圧着時間が層形成用組成物を支持体上で乾燥させる時間以上である場合には、第2の硬化性樹脂組成物層の形成と積層および圧着とを連続的に行うことができ、生産効率を高めることができる。
【0043】
なお、支持体32としては、特に限定されることなく、フィルム状または板状等の部材を用いることができる。具体的には、支持体32としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の高分子化合物からなるフィルムまたは板や、ガラス基材等が挙げられる。これらの中でも、支持体32としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。
【0044】
そして、第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31を硬化させて得られる電気絶縁層40からの支持体32の剥離操作を容易なものとする観点からは、支持体32は離型層の形成などの離型処理が表面に施されていることが好ましい。
また、支持体32は、紫外線吸収性を有していることが好ましい。支持体32が紫外線吸収性を有していれば、電気絶縁層40にビア用の穴を形成する際等にエキシマレーザー、UVレーザー、UV−YAGレーザー等を用いたレーザー加工が容易になるからである。なお、本発明において、「紫外線吸収性を有する」とは、紫外可視吸光光度計により測定した波長355nmにおける光透過率が20%以下であることを指す。
更に、支持体32の表面粗さRaは、特に限定されないが、好ましくは1nm以上200nm以下、より好ましくは2nm以上150nm以下、更に好ましくは3nm以上100nm以下、特に好ましくは4nm以上70nm以下である。表面粗さRaが小さすぎると、取扱い性が低下してしまい、生産効率が悪化する場合がある。一方、表面粗さRaが大きすぎると、電気絶縁層40の表面に凹凸形状が転写されてしまい、電気絶縁層40の表面の平坦性が低下して電気絶縁層40上への導体層の形成が困難になる虞がある。
【0045】
なお、上述したようにして形成される第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31は、未硬化であってもよいし、半硬化の状態であってもよい。ここで、「硬化性樹脂組成物層が未硬化である」とは、硬化性樹脂組成物層の調製に用いた硬化性樹脂を溶解可能な溶剤に硬化性樹脂組成物層を浸けたときに、実質的に硬化性樹脂の全部が溶解する状態をいう。また、「硬化性樹脂組成物層が半硬化である」とは、さらに加熱すれば硬化しうる程度に途中まで硬化された状態であり、好ましくは、硬化性樹脂組成物層の調製に用いた硬化性樹脂を溶解可能な溶剤に硬化性樹脂の一部(具体的には7質量%以上の量であり、かつ、一部が残存するような量)が溶解する状態であるか、または、溶剤中に硬化性樹脂組成物層を24時間浸漬した後の体積が、浸漬前の体積の200%以上になる状態をいう。
【0046】
そして、上述したようにして形成される第1の硬化性樹脂組成物層20の溶剤含有率は、第2の硬化性樹脂組成物層31の溶剤含有率よりも少ないことが好ましい。支持体32上の第2の硬化性樹脂組成物層31の靭性を確保し、第2の硬化性樹脂組成物層31を有する積層体30を保管および輸送する際や、積層体30を第1の硬化性樹脂組成物層20上に積層する際のハンドリング性を高める観点からは第2の硬化性樹脂組成物層31の溶剤含有率はある程度高いことが好ましいからである。一方、第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31の双方の溶剤含有率が高いと、第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31を加熱して硬化させる際に溶剤が揮発して電気絶縁層40の表面の平坦性が低下する虞があるからである。
【0047】
また、上述したようにして形成される第2の硬化性樹脂組成物層31の厚みは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。第2の硬化性樹脂組成物層31の厚みを0.1μm以上とすれば、下側に位置する第1の硬化性樹脂組成物層20の凹凸形状が表面に転写されるのを抑制し、電気絶縁層40の表面の平坦性を更に高めることができるからである。また、第2の硬化性樹脂組成物層31の厚みを5μm以下とすれば、電気絶縁層40が厚くなり過ぎるのを防止することができるからである。
更に、上述したようにして形成される第1の硬化性樹脂組成物層20の厚みは、埋め込まれる導体層13の厚み以上であることが好ましく、第2の硬化性樹脂組成物層31よりも厚いことがより好ましく、1μm以上であることが更に好ましく、25μm以下であることが好ましい。第1の硬化性樹脂組成物層20の厚みが薄すぎると、基板側部分において導体層13の配線13aを良好に埋め込むことができない虞があるからである。また、第1の硬化性樹脂組成物層20の厚みが厚すぎると、電気絶縁層40が厚くなり過ぎるからである。
【0048】
なお、電気絶縁層40の表面の平坦性と、導体層13の配線13aの埋め込み性と、電気絶縁層40の線膨張率の低減との全てを並立する観点からは、第1の硬化性樹脂組成物層20の厚みを第2の硬化性樹脂組成物層31よりも厚くすると共に、第1の硬化性樹脂組成物層20の無機充填剤含有率を第2の硬化性樹脂組成物層31の無機充填剤含有率よりも高くし、且つ、第1の硬化性樹脂組成物層20の溶剤含有率を第2の硬化性樹脂組成物層31の溶剤含有率よりも低くすることが好ましい。
【0049】
そして、電気絶縁層形成工程の一例において、内層基板10上に形成した第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31の硬化による電気絶縁層40の形成は、例えば支持体32を剥離する前に第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31を加熱することにより行う。ここで、加熱温度は、各硬化性樹脂組成物層の硬化温度に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは100℃以上250℃以下、より好ましくは120℃以上220℃以下、更に好ましくは150℃以上210℃以下である。また、加熱時間は、通常、0.1時間以上3時間以下、好ましくは0.25時間以上1.5時間以下である。そして、加熱の方法は特に制限されず、例えば電気オーブンなどを用いて行えばよい。また、硬化処理は、生産性の観点より、大気下で行うことが好ましい。
【0050】
なお、上記電気絶縁層形成工程の一例では、一方の表面(図1(a)では上側)のみに導体層13を有する内層基板10の導体層13側のみに電気絶縁層40を形成したが、本発明の多層プリント配線板の製造方法では、内層基板が両方の表面に導体層を有している場合には、内層基板の両側に対して上述したようにして電気絶縁層を形成することができる。
【0051】
また、上記電気絶縁層形成工程の一例では、第1の硬化性樹脂組成物層20の上に第2の硬化性樹脂組成物層31を直接積層したが、本発明の多層プリント配線板の製造方法では、第1の硬化性樹脂組成物層と第2の硬化性樹脂組成物層との間にその他の硬化性樹脂組成物層を任意の方法で形成してもよい。
【0052】
更に、上記電気絶縁層形成工程の一例では、未硬化または半硬化の第1の硬化性樹脂組成物層20の上に第2の硬化性樹脂組成物層31を積層し、第1の硬化性樹脂組成物層20および第2の硬化性樹脂組成物層31を一緒に硬化させて電気絶縁層40を形成したが、本発明の多層プリント配線板の製造方法の電気絶縁層形成工程では、図1(b)に示すように、第1の硬化性樹脂組成物層20の硬化物よりなる第1の絶縁樹脂層20A上に第2の硬化性樹脂組成物層31を積層し、硬化させてもよい。即ち、本発明の多層プリント配線板の製造方法の電気絶縁層形成工程では、塗布法により内層基板10の導体層13側の表面上に第1の硬化性樹脂組成物層20を形成する工程と、第1の硬化性樹脂組成物層20を硬化させて第1の絶縁樹脂層20Aを形成する工程と、ラミネーション法により第1の絶縁樹脂層20A上に第2の硬化性樹脂組成物層31を積層する工程と、第2の硬化性樹脂組成物層31を硬化させて第2の絶縁樹脂層31Aを形成する工程とを順次実施して電気絶縁層40を形成してもよい。
このようにして電気絶縁層40を形成した場合であっても、先の一例の電気絶縁層形成工程と同様に、基板側部分において配線13aが良好に埋め込まれており、且つ、表面の平坦性に優れる電気絶縁層40を形成することができる。
【0053】
<導体層形成工程>
そして、上記電気絶縁層形成工程で形成した電気絶縁層40上への導体層の形成(図示せず)は、めっき法などの既知の方法を用いて行うことができる。具体的には、導体層は、必要に応じて電気絶縁層40上の支持体32を剥離した後、例えばフルアディティブ法やセミアディティブ法などを用いて電気絶縁層40上に形成することができる。
【0054】
<ビア形成工程>
なお、電気絶縁層40にビア用の穴を形成する場合には、例えば導体層形成工程の前に、必要に応じて電気絶縁層40上の支持体32を剥離した後、レーザー加工やドリル加工などの既知の方法を用いて電気絶縁層40にビア用の穴を形成することができる。中でも、電気絶縁層40へのビア用の穴の形成は、支持体32を剥離する前に、支持体32上からレーザーを照射して行うことが好ましい。このように、レーザーを用いたビア用の穴の形成を、電気絶縁層から支持体32を剥離する前に(即ち、穴が形成される電気絶縁層40上に支持体32が位置する状態で)実施することにより、小径で、且つ、開口率(底径/開口径)が高い穴を形成することができる。
【0055】
ここで、レーザーとしては、特に限定されることなく、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、UVレーザー、UV−YAGレーザーなどを用いることができる。また、形成する穴の大きさは、任意の大きさとすることができ、更に、形成する穴の深さは、所望の導体層同士を接続可能な深さとすることができる。
【0056】
また、電気絶縁層40にビア用の穴を形成した際に発生したスミア(樹脂残渣)は、既知の手法を用いて除去することができる。具体的には、スミアは、過マンガン酸塩溶液などのデスミア液、紫外線、プラズマ等を用いた既知のデスミア処理方法を用いて除去することができる。なお、デスミア処理は、電気絶縁層40から支持体32を剥離する前に(即ち、穴が形成された電気絶縁層40上に支持体32が位置する状態で)実施してもよいし、電気絶縁層40から支持体32を剥離した後に実施してもよい。中でも、デスミア処理中に電気絶縁層40の表面が荒れるのを抑制する観点からは、電気絶縁層40から支持体32を剥離する前にデスミア処理を行うことが好ましい。
【0057】
そして、上述のようにして電気絶縁層40に形成したビア用の穴内への導体の形成は、電気絶縁層40の表面から支持体32が剥離されていない場合には当該支持体32を剥離し、任意に洗浄および乾燥を行った後、めっき法などの既知の方法を用いて行うことができる。なお、生産性の観点からは、穴内への導体の形成は、上記導体層形成工程における導体層の形成と同時に行うことが好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、電気絶縁層の埋め込み性および平坦性は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。また、実施例および比較例において使用した硬化性樹脂組成物および内層基板は、それぞれ以下のようにして調製した。
【0059】
<埋め込み性>
得られた基板の中央部分10mm角(縦10mm×横10mm)を光学顕微鏡により観察し、以下の評価基準に従って評価した。ボイドとは硬化樹脂(硬化物)の存在しない部分(空隙)であり、ここでは最大径が5μm以上のものを指す。観察されたボイドの個数が少ないほど、埋め込み性に優れていることを示す。
A:ボイドが観察されなかった
B:ボイドが1個以上9個以下観察された
C:ボイドが10個以上観察された
<平坦性>
得られた基板について、電気絶縁層の下部に配線がある部分とない部分との段差を触針式段差膜厚計(Tencor Instruments製 P−10)にて測定し、以下の基準で、平坦性を評価した。段差が小さいほど、平坦性に優れていることを示す。
A:段差が2μm未満
B:段差が2μm以上3μm未満
C:段差が3μm以上
【0060】
<硬化性樹脂組成物1の調製>
ビフェニル構造を有する多価エポキシ化合物としてのビフェニルジメチレン骨格ノボラック型エポキシ樹脂(商品名「NC−3000L」、日本化薬社製、エポキシ当量269)50部、3価以上の多価グリシジル基含有エポキシ化合物としてのテトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ化合物(商品名「jER 1031S」、三菱化学社製、エポキシ当量200、軟化点90℃)50部、トリアジン構造含有フェノール樹脂としてのトリアジン構造含有クレゾ−ルノボラック樹脂(商品名「フェノライト LA−3018−50P」、不揮発分50%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、DIC社製、活性水酸基当量154)30部(トリアジン構造含有クレゾ−ルノボラック樹脂換算で15部)、活性エステル化合物(商品名「エピクロン HPC−8000−65T」、不揮発分65%のトルエン溶液、DIC社製、活性エステル基当量223)115.3部(活性エステル化合物換算で75部)、ポリフェニレンエーテル化合物としての両末端スチリル基変性ポリフェニレンエーテル化合物(商品名「OPE−2St1200」、三菱瓦斯化学社製、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルビフェニル−4,4’−ジオール・2,6−ジメチルフェノール重縮合物とクロロメチルスチレンとの反応生成物、数平均分子量(Mn)=1200、60%トルエン溶液)30部、無機充填剤としてのシリカ(商品名「SC2500−SXJ」、アドマテックス社製)650部、老化防止剤としてのヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名「イルガノックス(登録商標)3114」、BASF社製)1部、および、メチルエチルケトン110部を混合し、遊星式攪拌機で3分間攪拌した。更にこれに、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾールをアニソールに30%溶解した溶液8.3部(1−べンジル−2−フェニルイミダゾール換算で2.5部)、および、硬化剤としてのジクミルパーオキサイド(商品名「パーカドックスBC−FF」、化薬アクゾ社製)0.3部を混合し、遊星式攪拌機で5分間攪拌して硬化性樹脂組成物1のワニス(スラリー状の層形成用組成物)を得た。なお、ワニス中、無機充填剤の含有量は、固形分換算で75%であった。
<硬化性樹脂組成物2の調製>
重合1段目として5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン35モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール340モル部およびルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(C1063、和光純薬社製)0.005モル部を窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下、80℃で30分間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。
次いで、重合2段目として重合1段目で得た溶液中にテトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエンを45モル部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物を20モル部、アニソールを250モル部およびC1063を0.01モル部追加し、攪拌下、80℃で1.5時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーを用いて測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99%以上であった。
その後、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、C1063を0.03モル部追加し、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌して水素添加反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である脂環式オレフィン重合体の溶液を得た。脂環式オレフィン重合体の重量平均分子量は60000、数平均分子量は30000、分子量分布は2であった。また、水素添加率は95%であり、カルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率は20モル%であった。脂環式オレフィン重合体の溶液の固形分濃度は22%であった。
上記脂環式オレフィン重合体の溶液454部(脂環式オレフィン重合体換算で100部)、硬化剤としてのジシクロペンタジエン骨格を有する多価エポキシ化合物(商品名「エピクロン HP7200L」、DIC社製、「エピクロン」は登録商標)36部、無機充填剤としてのシリカ(商品名「アドマファイン SO−C1」、アドマテックス社製、平均粒子径0.25μm、「アドマファイン」は登録商標)24.5部、老化防止剤としてのトリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(商品名「イルガノックス(登録商標)3114」、BASF社製)1部、紫外線吸収剤としての2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール0.5部、および、硬化促進剤としての1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール0.5部を、アニソールに混合して、固形分濃度が16%になるように混合することで、硬化性樹脂組成物2のワニス(層形成用組成物)を得た。なお、ワニス中、無機充填剤の含有量は、固形分換算で15%であった。
<内層基板の作製>
ガラスフィラーおよびハロゲン不含エポキシ化合物を含有するワニスをガラス繊維に含浸させて得られたコア材の表面に厚みが12μmの銅が貼られた、厚み0.8mm、160mm角(縦160mm、横160mm)の両面銅張り基板の表面に、配線幅および配線間隔が15μm、厚み(配線高さ)が11μmで、表面が有機酸との接触によってマイクロエッチング処理された導体層を形成して内層基板(残銅率50%)を得た。
【0061】
(実施例1)
<第1の硬化性樹脂組成物層の形成>
内層基板の両面にロールコーターを用いて硬化性樹脂組成物1のワニスを塗布した。次いで、窒素雰囲気下、100℃で5分間乾燥させて、導体層の配線の頂部から表面まで厚みが10μmとなるように第1の硬化性樹脂組成物層を形成した。
<積層体の形成>
硬化性樹脂組成物2のワニスを、表面に離型層を備えるポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体、厚さ50μm)上にワイヤーバーを用いて塗布した。次いで、窒素雰囲気下、80℃で5分間乾燥させて、未硬化の熱硬化性樹脂組成物からなる、厚み3μmの第2の硬化性樹脂組成物層を有する積層体を得た。
<第2の硬化性樹脂組成物層の形成>
次いで、上記にて得られた積層体を150mm角に切断したものを、支持体が付いた状態で、第2の硬化性樹脂組成物層側の面が内側となるようにして第1の硬化性樹脂組成物層上に貼り合わせた。その後、耐熱性ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用い、30秒間減圧して気圧を200hPa以下とした後、温度110℃、圧力0.7MPaで30秒間圧着させた。次いで、温度110℃、圧力0.9MPaの条件で60秒間ホットプレスして、第1の硬化性樹脂組成物層上に第2の硬化性樹脂組成物層を積層した。
<電気絶縁層の形成>
次いで、室温で30分間静置した後、空気中において30℃から180℃まで30分(5℃/分)かけて昇温し、更に180℃で30分間加熱することにより、第1の硬化性樹脂組成物層および第2の硬化性樹脂組成物層を硬化させ、内層基板上に硬化樹脂層(電気絶縁層)を形成して多層プリント配線板用の基板を得た。そして、支持体を剥離した後に、電気絶縁層の埋め込み性および平坦性を評価した。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
内層基板の両面に、導体層の配線の頂部から表面まで厚みが10μmとなるように第1の硬化性樹脂組成物層を形成し、積層体の形成および第2の硬化性樹脂組成物層の形成を実施することなく、第1の硬化性樹脂組成物層を硬化させて内層基板上に硬化樹脂層(電気絶縁層)を形成した以外は実施例1と同様にして基板を得た。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
(比較例2)
厚みを20μmとした以外は実施例1と同様にして支持体上に第2の硬化性樹脂組成物層を有する積層体を得た。
そして、上記にて得られた積層体を150mm角に切断したものを、支持体が付いた状態で、第2の硬化性樹脂組成物層側の面が内側となるようにして内層基板の両面に貼り合わせた。その後、耐熱性ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用い、30秒間減圧して気圧を200hPa以下とした後、温度110℃、圧力0.7MPaで30秒間圧着させた。次いで、温度110℃、圧力0.9MPaの条件で60秒間ホットプレスして、内層基板上に第2の硬化性樹脂組成物層を積層した。
次いで、室温で30分間静置した後、空気中において30℃から180℃まで30分(5℃/分)かけて昇温し、更に180℃で30分間加熱することにより、第2の硬化性樹脂組成物層を硬化させ、内層基板上に硬化樹脂層(電気絶縁層)を形成して基板を得た。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1より、塗布法を用いて内層基板上に形成した第1の硬化性樹脂組成物層を硬化させて電気絶縁層の基板側部分を形成し、更に、ラミネーション法を用いて形成した第2の硬化性樹脂組成物層を硬化させて電気絶縁層の表面側部分を形成した実施例1では、埋め込み性および平坦性に優れる電気絶縁層を形成し得ることが分かる。また、塗布法のみを用いて形成した硬化性樹脂組成物層を硬化させて電気絶縁層を形成した比較例1では、表面の平坦性が低下することが分かる。更に、ラミネーション法のみを用いて形成した硬化性樹脂組成物層を硬化させて電気絶縁層を形成した比較例2では、埋め込み性が低下することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、平坦性に優れ、且つ、配線が良好に埋め込まれた電気絶縁層を有する多層プリント配線板を製造することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 内層基板
11 基材
12 電気絶縁層
13 導体層
20 第1の硬化性樹脂組成物層
20A 第1の絶縁樹脂層
30 積層体
31 第2の硬化性樹脂組成物層
31A 第2の絶縁樹脂層
32 支持体
40 電気絶縁層
図1