特許第6452017号(P6452017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6452017
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】液晶組成物及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/42 20060101AFI20190107BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20190107BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20190107BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20190107BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20190107BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20190107BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20190107BHJP
   C09K 19/16 20060101ALI20190107BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20190107BHJP
   C09K 19/22 20060101ALI20190107BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20190107BHJP
   C09K 19/60 20060101ALI20190107BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   C09K19/42
   C09K19/20
   C09K19/30
   C09K19/32
   C09K19/34
   C09K19/12
   C09K19/14
   C09K19/16
   C09K19/18
   C09K19/22
   C09K19/54 Z
   C09K19/54 C
   C09K19/54 B
   C09K19/60 Z
   G02F1/13 500
【請求項の数】10
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2018-543734(P2018-543734)
(86)(22)【出願日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】JP2018014541
【審査請求日】2018年8月17日
(31)【優先権主張番号】特願2017-82012(P2017-82012)
(32)【優先日】2017年4月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】大石 晴己
【審査官】 安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103254907(CN,A)
【文献】 特開2012−001502(JP,A)
【文献】 特開2014−114276(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103666485(CN,A)
【文献】 特開2009−035630(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/179966(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/053421(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/020643(WO,A1)
【文献】 特開2015−180613(JP,A)
【文献】 特開2001−335586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K19
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(N−i)で表される化合物を1種類又は2種類以上と、一般式(ii)で表される化合物を1種類又は2種類以上と、一般式(N−iii)で表される化合物を1種類又は2種類以上と、一般式(L)で表される化合物を1種類又は2種類以上と、を含有し、 前記一般式(L)で表される化合物として、少なくとも前記一般式(L)の式中のmL1が1である化合物を1種類又は2種類以上含有する、液晶組成物。
【化1】
(式中、Ri1及びRi2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又はOCO−によって置換されていてもよく、
i1及びAi2はそれぞれ独立して、
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−及び/又は−S−に置き換えられてもよい)
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−基は−N−に置き換えられてもよい)及び
(c) 1,4−シクロヘキセニレン、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル
からなる群より選ばれる基を表すが、前記の基(a)、基(b)及び基(c)上の水素原子は互いに独立して炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数2〜3のアルケニル基、炭素原子数1〜3のアルコキシル、炭素原子数1〜3のアルケニルオキシ基、CN又はハロゲンで置換されていてもよく、
i1は単結合、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−OCF−、−CFO−、−CH=N−N=CH−、−CH=CH−、−C≡C−又は−CF=CF−
i1は0、1又は2を表すが、mi1が2であってAi1及びZi1が複数存在する場合は、それらはそれぞれ独立して同一であっても異なっていてもよい。)
【化2】
(式中、Rii1及びRii2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又はOCO−によって置換されていてもよい。)
【化3】
(式中、Riii1は炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又はOCO−によって置換されていてもよく、
iii2は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表し、
iii1はトランス−1,4−シクロへキシレン基を表し、
iii2は、
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−及び/又は−S−に置き換えられてもよい)
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−基は−N−に置き換えられてもよい)
(c) 1,4−シクロヘキセニレン、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル
からなる群より選ばれる基を表すが、前記の基(a)、基(b)及び基(c)上の水素原子は互いに独立して炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数2〜3のアルケニル基、炭素原子数1〜3のアルコキシル、炭素原子数1〜3のアルケニルオキシ基、CN又はフッ素原子で置換されていてもよく、
iii1は−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、−(CH−、−CH=CH−CHCH−、−CHCH−CH=CH−又は単結合を表し、
iii1は0、1又は2を表すが、miii1が2であってAiii2及びZiii1が複数存在する場合は、Aiii2及びZiii1はそれぞれ独立して同一であっても異なっていてもよい。)
【化4】
(式中、RL1及びRL2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−によって置換されていてもよく、
L1は0、1、2又は3を表し、
L1、AL2及びAL3はそれぞれ独立して
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
(c) 1,4−シクロヘキセニレン、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立して炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数2〜3のアルケニル基、炭素原子数1〜3のアルコキシル、炭素原子数1〜3のアルケニルオキシ基、シアノ基又はフッ素原子で置換されていてもよいが、AL1、AL2及びAL3は2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,7,8−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル基又は3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル基を表すことはなく、
L1及びZL2はそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−OCF−、−CFO−、−CH=N−N=CH−、−CH=CH−、−CH≡CH−又は−CF=CFを表し、
L1が2又は3であってAL2及びZL2が複数存在する場合は、AL2及びZL2はそれぞれ独立して同一であっても異なっていてもよいが、但し一般式(ii)で表される化合物を除く。)
【請求項2】
更に、一般式(N)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有する請求項1に記載の液晶組成物。
【化5】
(式中、RN1及びRN2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−によって置換されていてもよく、
N1は0、1、2又は3を表し、
N1、AN2及びAN3はそれぞれ独立して
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
(c) 1,4−シクロヘキセニレン、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立して炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数2〜3のアルケニル基、炭素原子数1〜3のアルコキシル、炭素原子数1〜3のアルケニルオキシ基、シアノ基又はフッ素原子で置換されていてもよいが、AN1、AN2及びAN3のうち少なくとも1つは2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,7,8−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル基又は3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル基を表し、
N1及びZN2はそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−OCF−、−CFO−、−CH=N−N=CH−、−CH=CH−又は−CF=CF−を表し、
N1が2又は3であってAN2及びZN2が複数存在する場合は、AN2及びZN2はそれぞれ独立して同一であっても異なっていてもよいが、但し一般式(N−i)および一般式(N−iii)で表される化合物を除く。)
【請求項3】
更にモノマーを含有する請求項1または2のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項4】
更に安定剤を0.05〜0.5重量%含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
更に二色性色素を1種または2種以上含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項6】
更にカイラル剤を添加し、捩れピッチが10μm〜120μmに調節された請求項1〜のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項7】
ネマチック−アイソトロピック転移温度が80℃〜120℃、誘電率異方性が−2.0〜−6.0及び複屈折率が0.070〜0.130である請求項1〜のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いた液晶表示素子。
【請求項9】
プレチルト角が80°ないし90°である請求項に記載の液晶表示素子。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いた調光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気光学的液晶表示材料、調光素子用材料として有用な誘液晶組成物、及びこれを使用した液晶表示素子または調光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶材料は、TVやスマートフォンに代表される文字や画像、映像を表示させる各種表示素子に利用されるだけではなく、光の透過を調節する調光素子としての利用も実用化されつつある。
【0003】
液晶材料を調光素子として利用するに際しては、広い温度範囲でネマティック液晶相を呈し、且つ耐光性や耐熱性が屋外環境での使用に耐えうる信頼性を有していなければならない。
【0004】
調光素子用の液晶組成物としては、誘電率異方性が負の高信頼性TV用の液晶組成物を利用できる(特許文献1、2参照)。しかしながら、調光素子用液晶組成物として実用するために、高いネマティック−アイソトロピック転移温度(TNI)と低温での溶解安定性に優れ、更に、高耐光性、高耐熱性に有効な低い複屈折率異方性(Δn)を同時に満たす液晶組成物は不足しており、更なる液晶組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−241214号公報
【特許文献2】特開2006−225450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明が解決しようとする課題は、高いネマティック−アイソトロピック転移温度(TNI)と低温での溶解安定性に優れ、更に、高耐光性、高耐熱性に有効な低い複屈折率異方性(Δn)を同時に満たす液晶組成物を提供すること、及び、これを用いた液晶表示素子または調光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、一般式(N−i)で表される化合物を1種類又は2種類以上と、一般式(ii)で表される化合物を1種類又は2種類以上と、一般式(N−iii)で表される化合物及び一般式(N−iv)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を1種類又は2種類以上含有する液晶組成物とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本願発明を完成するに至った。。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、Ri1及びRi2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又はOCO−によって置換されていてもよく、
i1及びAi2はそれぞれ独立して、
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−及び/又は−S−に置き換えられてもよい)
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−基は−N−に置き換えられてもよい)及び
(c) 1,4−シクロヘキセニレン、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル
からなる群より選ばれる基を表すが、上記の基(a)、基(b)及び基(c)上の水素原子は互いに独立して炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数2〜3のアルケニル基、炭素原子数1〜3のアルコキシル、炭素原子数1〜3のアルケニルオキシ基、CN又はハロゲンで置換されていてもよく、
i1は単結合、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−OCF−、−CFO−、−CH=N−N=CH−、−CH=CH−、−C≡C−又は−CF=CF−
i1は0、1又は2を表すが、mi1が2であってAi1及びZi1が複数存在する場合は、それらはそれぞれ独立して同一であっても異なっていてもよい。)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、Rii1及びRii2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又はOCO−によって置換されていてもよい。)
【0012】
【化3】
【0013】
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−及び/又は−S−に置き換えられてもよい)
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−基は−N−に置き換えられてもよい)
(c) 1,4−シクロヘキセニレン、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル
からなる群より選ばれる基を表すが、上記の基(a)、基(b)及び基(c)上の水素原子は互いに独立して炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数2〜3のアルケニル基、炭素原子数1〜3のアルコキシル、炭素原子数1〜3のアルケニルオキシ基、CN又はフッ素原子で置換されていてもよく、
iii1及びZiv1はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、−(CH−、−CH=CH−CHCH−、−CHCH−CH=CH−又は単結合を表し、
iii1及びmiv1はそれぞれ独立して0、1又は2を表すが、miii1が2であってAiii2及びZiii1が複数存在する場合は、Aiii2及びZiii1はそれぞれ独立して同一であっても異なっていてもよく、また、miv1が2であってAiv2及びZiv1が複数存在する場合は、Aiv2及びZiv1はそれぞれ独立して同一であっても異なっていてもよい。)
つまり、本願発明は、一般式(N−i)で表される化合物を1種類又は2種類以上と、一般式(ii)で表される化合物を1種類又は2種類以上と、一般式(N−iii)で表される化合物及び一般式(N−iv)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を1種類又は2種類以上含有する液晶組成物を提供し、また、これを用いた液晶表示素子または調光素子を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本願発明により、高いネマチック−アイソトロピック転移温度(TNI)と低温での溶解安定性に優れ、更に、高耐光性、高耐熱性に有効な低い複屈折率異方性(Δn)と大きい誘電率異方性の絶対値(|Δε|)を同時に満たす液晶組成物を提供でき、更に、この液晶組成物を用いることで、高い信頼性と実用性を備えた液晶表示素子または調光素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の液晶組成物は、一般式(N−i)で表される化合物を1種類又は2種類以上と、一般式(ii)で表される化合物を1種類又は2種類以上と、一般式(N−iii)で表される化合物及び一般式(N−iv)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を1種類又は2種類以上とを組み合わせて液晶組成物に含有させることにより、低い複屈折率異方性(Δn)及び高い誘電率異方性(|Δε|)を満たしつつ、高いネマチック−アイソトロピック転移温度(TNI)と低温での溶解安定性に優れた液晶組成物を提供することができる。
【0016】
以下、まず成分ごとに説明する。
<一般式(N−i)で表される化合物>
本発明の液晶組成物は、一般式(N−i)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有する。
【0017】
【化4】
【0018】
一般式(N−i)中、Ri1及びRi2はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数2〜5のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基が更に好ましく、炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜3のアルケニル基が更に好ましく、炭素原子数3のアルケニル基(プロペニル基)が特に好ましい。
【0019】
また、Ri1は、Ri1が結合する環構造がフェニル基(芳香族)である場合には、直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基及び炭素原子数4〜5のアルケニル基が好ましく、それが結合する環構造がシクロヘキサン、ピラン及びジオキサンなどの飽和した環構造の場合には、直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基及び直鎖状の炭素原子数2〜5のアルケニル基が好ましい。ネマチック相を安定化させるためには炭素原子及び存在する場合酸素原子の合計が5以下であることが好ましく、直鎖状であることが好ましい。Ri2は直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基及び炭素原子数4〜5のアルケニル基が好ましく、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基が好ましい。
【0020】
アルケニル基としては、式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましい。(各式中の黒点は環構造中の炭素原子を表す。)
【0021】
【化5】
【0022】
i1及びAi2は互いに独立してトランス−1,4−シクロへキシレン基または1,4−フェニレン基が好ましく、粘度を低くしたい場合にはトランス−1,4−シクロへキシレン基がより好ましく、複屈折率異方性を大きくしたい場合には1,4−フェニレン基より好ましい。またそれぞれの基は非置換が好ましい。
【0023】
i1は−CHO−、−CFO−、−CHCH−、−CFCF−又は単結合を表すことが好ましく、−CHO−、−CHCH−又は単結合が更に好ましく、単結合が特に好ましい。
【0024】
i1は0、1又は2が好ましく、粘度を低くしたい場合にはmi1は0が好ましく、転移温度を高くしたい場合にはmi1は1が好ましい。
【0025】
一般式(N−1)として、一般式(N−i−1)を含有することが好ましい。
【0026】
【化6】
【0027】
(式中、Ri1、Ri2、Zi1及びmi1はそれぞれ独立して一般式(N−i)中のRi1、Ri2、Zi1及びmi1と同じ意味を表す。)
本願発明の液晶組成物は、組成物の総量に対して一般式(N−i)で表される化合物を1質量%以上50質量%以下含有することが好ましく、含有量の下限は1質量%以上が好ましく、2質量%以上が好ましく、3質量%以上が好ましく、4質量%以上が好ましく、5質量%以上が好ましく、8質量%が好ましく、含有量の上限は30質量%以下が好ましく、25質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましく、18質量%以下が好ましく、15質量%以下が好ましく、13質量%以下が好ましく、10質量%以下が好ましい。
<一般式(ii)で表される化合物>
本発明の液晶組成物は、一般式(ii)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有する。
【0028】
【化7】
【0029】
一般式(ii)中、Rii1は炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数2から8のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基であることが好ましい。Rii2は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基又は炭素原子数2から8のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から5のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から5のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基であることが更に好ましい。特に高い耐光性、耐UV性又は耐熱性を得るためには、Rii1及びRii2の少なくとも一方は炭素原子数1から5のアルキル基または炭素原子数1から5のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1から5のアルキル基が更に好ましく、Rii1及びRii2の両方が炭素原子数1から5のアルキル基が好ましい。
【0030】
一般式(ii)で表される化合物の中で、一般式(ii−11)及び一般式(II−12)で表される化合物が好ましい。
【0031】
【化8】
【0032】
式中、Rii2は一般式(ii)中のRii2と同じ意味を表すが、炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数2から5のアルキル基又は炭素原子数2から3のアルケニル基であることが好ましい。
【0033】
一般式(ii−11)及び又は一般式(ii−12)で表される化合物は、例えば、一般式(ii−101)から(ii−110)であることが好ましい。
【0034】
【化9】
【0035】
また、一般式(ii)で表される化合物は、一般式(ii−111)〜一般式(ii−113)であることが好ましい。
【0036】
【化10】
【0037】
本願発明の液晶組成物は、組成物の総量に対して一般式(ii)で表される化合物を1質量%以上80質量%以下含有することが好ましく、含有量の下限は1質量%以上が好ましく、2質量%以上が好ましく、3質量%以上が好ましく、4質量%以上が好ましく、5質量%以上が好ましく、10質量%以上が好ましく、15質量%以上が好ましく、20質量%以上が好ましく、25質量%以上が好ましく、含有量の上限は80質量%以下が好ましく、75質量%以下が好ましく、70質量%以下が好ましく、65質量%以下が好ましく、60質量%以下が好ましく、55質量%以下が好ましく、50質量%以下が好ましく、45質量%以下が好ましく、40質量%以下が好ましく、35質量%以下が好ましく、30質量%以下が好ましい。
<一般式(N−iii)又は一般式(N−iv)で表される化合物>
本発明の液晶組成物は、一般式(N−iii)又は一般式(N−iv)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有する。
【0038】
【化11】
【0039】
一般式(N−iii)又は一般式(N−iv)中、Riii1、Riii2及びRiv1及びRiv2はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数2〜5のアルケニルオキシ基が好ましい。
【0040】
また、それが結合する環構造がフェニル基(芳香族)である場合には、直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基及び炭素原子数4〜5のアルケニル基が好ましく、それが結合する環構造がシクロヘキサン、ピラン及びジオキサンなどの飽和した環構造の場合には、直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基及び直鎖状の炭素原子数2〜5のアルケニル基が好ましい。ネマチック相を安定化させるためには炭素原子及び存在する場合酸素原子の合計が5以下であることが好ましく、直鎖状であることが好ましい。
【0041】
アルケニル基としては、式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましい。(各式中の黒点は環構造中の炭素原子を表す。)
【0042】
【化12】
【0043】
iii1、Aiii2、Aiv1及びAiv2はそれぞれ独立してトランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキセニレンを表すが、1,4−フェニレン基上に存在する1個又は2個以上の水素原子は互いに独立してハロゲンで置換されていてもよいが、本発明においては互いに独立してトランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基が好ましく、粘度を低くしたい場合にはトランス−1,4−シクロへキシレン基が好ましく、複屈折率を大きくしたい場合には1,4−フェニレン基が好ましい。
【0044】
iii1及びZiv1はそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−OCF−、−CFO−、−CH=N−N=CH−、−CH=CH−又は−CF=CF−を表すが、本発明においてはそれぞれ独立して−CHO−、−OCH−または単結合が好ましい。
【0045】
iii1及びmiv1はそれぞれ独立して0、1又は2を表すが、miii1が2であってAiii2及びZiii1が複数存在する場合は、Aiii2及びZiii1はそれぞれ独立して同一であっても異なっていてもよく、また、miv1が2であってAiv2及びZiv1が複数存在する場合は、Aiv2及びZiv1はそれぞれ独立して同一であっても異なっていてもよい。液晶組成物の粘度を低くしたい場合にはmiii1及びmiv1は0が好ましく、転移温度を高くしたい場合にはmiii1及びmiv1はは1又は2が好ましい。
【0046】
前記一般式(N−iii)として、一般式(N−1d)を含有することが好ましい。
【0047】
【化13】
【0048】
(式中、Riii1及びRiii2は一般式(N―iii)におけるRiii1及びRiii2とそれぞれ同じ意味を表し、niii1は1又は2を表す。)
本発明の液晶組成物は、組成物の総量に対して一般式(N−iii)及び一般式(N−iv)で表される化合物を1質量%以上80質量%以下含有することが好ましく、含有量の下限は1質量%以上が好ましく、2質量%以上が好ましく、3質量%以上が好ましく、4質量%以上が好ましく、5質量%以上が好ましく、10質量%以上が好ましく、15質量%以上が好ましく、20質量%以上が好ましく、25質量%以上が好ましく、30質量%以上が好ましく、含有量の上限は80質量%以下が好ましく、75質量%以下が好ましく、70質量%以下が好ましく、65質量%以下が好ましく、60質量%以下が好ましく、55質量%以下が好ましく、50質量%以下が好ましい。
<一般式(L)で表される化合物>
本発明の液晶組成物は、更に、一般式(L)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。
【0049】
【化14】
【0050】
(式中、RL1及びRL2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−によって置換されていてもよく、
L1は0、1、2又は3を表し、
L1、AL2及びAL3はそれぞれ独立して
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
(c) 1,4−シクロヘキセニレン、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立して炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数2〜3のアルケニル基、炭素原子数1〜3のアルコキシル、炭素原子数1〜3のアルケニルオキシ基、シアノ基又はフッ素原子で置換されていてもよいが、AL1、AL2及びA4L3は2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,7,8−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル基又は3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル基を表すことはなく、
L1及びZL2はnそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−OCF−、−CFO−、−CH=N−N=CH−、−CH=CH−、−C≡C−又は−CF=CFを表し、
L1が2又は3であってAL2及びZL2が複数存在する場合は、AL2及びZL2はそれぞれ独立して同一であっても異なっていてもよいが、但し一般式(ii)で表される化合物を除く。)
一般式(L)で表される化合物は単独で用いてもよいが、組み合わせて使用することもできる。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、低温での溶解性、転移温度、複屈折率などの所望の性能に応じて適宜組み合わせて使用する。使用する化合物の種類は、例えば本発明の一つの実施形態としては1種類である。あるいは本発明の別の実施形態では2種類であり、3種類であり、4種類であり、5種類以上である。
【0051】
本発明の組成物において、一般式(L)で表される化合物の含有量は、低温での溶解性、転移温度、複屈折率などの求められる性能に応じて適宜調整する必要がある。
【0052】
本発明の組成物の総量に対しての式(L)で表される化合物の好ましい含有量の下限値は、1%以上であり、2%以上であり、5%以上であり、8%以上であり、10%以上であり、13%以上であり、15%以上であり、18%以上であり、20%以上であり、22%以上であり、25%以上であり、30%以上であり、40%以上であり、50%以上であり、55%以上であり、60%以上であり、65%以上であり、70%以上であり、75%以上であり、80%以上である。又、含有量が多いと析出等の問題を引き起こすため、好ましい含有量の上限値は85%以下であり、75%以下であり、65%以下であり、55%以下であり、45%以下であり、35%以下であり、30%以下であり、28%以下であり、25%以下であり、23%以下であり、20%以下であり、18%以下であり、15%以下であり、13%以下であり、10%以下であり、8%以下であり、5%以下である。
【0053】
本発明の組成物の粘度を低く保ち、応答速度が速い組成物が必要な場合は上記の下限値が高く上限値が高いことが好ましい。さらに、本発明の組成物が比抵抗値やVHRが高い高信頼性の組成物であり、駆動電圧に制限の無い場合には上記の下限値が高く上限値が高いことが好ましい。また、駆動電圧を低く保つために誘電率異方性を大きくしたいときは、上記の下限値を低く上限値が低いことが好ましい。
【0054】
信頼性を重視する場合にはRL1及びRL2はともにアルキル基であることが好ましく、化合物の揮発性を低減させることを重視する場合にはアルコキシ基であることが好ましく、粘性の低下を重視する場合には少なくとも一方はアルケニル基であることが好ましい。
【0055】
分子内に存在するハロゲン原子は0、1、2又は3個が好ましく、0又は1が好ましく、他の液晶分子との相溶性を重視する場合には1が好ましい。
【0056】
L1及びRL2は、それが結合する環構造がフェニル基(芳香族)である場合には、直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基及び炭素原子数4〜5のアルケニル基が好ましく、それが結合する環構造がシクロヘキサン、ピラン及びジオキサンなどの飽和した環構造の場合には、直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基及び直鎖状の炭素原子数2〜5のアルケニル基が好ましい。ネマチック相を安定化させるためには炭素原子及び存在する場合酸素原子の合計が5以下であることが好ましく、直鎖状であることが好ましい。
【0057】
アルケニル基としては、式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましい。(各式中の黒点は環構造中の炭素原子を表す。)
【0058】
【化15】
【0059】
L1は応答速度を重視する場合には0が好ましく、ネマチック相の上限温度を改善するためには2又は3が好ましく、これらのバランスをとるためには1が好ましい。また、組成物として求められる特性を満たすためには異なる値の化合物を組み合わせることが好ましい。
【0060】
L1、AL2及びAL3はΔnを大きくすることが求められる場合には芳香族であることが好ましく、応答速度を改善するためには脂肪族であることが好ましく、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表すことが好ましく、下記の構造を表すことがより好ましく、
【0061】
【化16】
【0062】
トランス−1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基を表すことがより好ましい。
【0063】
L1及びZL2は応答速度を重視する場合には単結合であることが好ましい。一般式(L)で表される化合物は分子内のハロゲン原子数が0個又は1個であることが好ましい。
【0064】
一般式(L)としてより具体的には、一般式(L)中のmL1が0である一般式(C1)、一般式(L)中のmL1が1である一般式(C2)、又は一般式(L)中のmL1が2である一般式(C3)で表される化合物を含有することが好ましい。一般式(C1)から(C3)で表される化合物としては、1種を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0065】
【化17】
【0066】
上式中、Rd及びPeはそれぞれ独立的に炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、これらは直鎖状であってもメチル又はエチル分岐を有していてもよく、3〜6員環の環状構造を有していてもよく、基内に存在する任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−又は−C≡C−により交換されていてもよく、基内に存在する任意の水素原子はフッ素原子又はトリフルオロメトキシ基により置換されていてもよいが、炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1−アルケニル基、炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基、炭素原子数1〜3の直鎖状アルコキシル基又は末端が炭素原子数1〜3アルコキシル基により置換された炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基が好ましく、更に少なくとも一方は炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1−アルケニル基又は炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基であることが特に好ましい。又、分岐により不斉炭素が生じる場合には、化合物として光学活性であってもラセミ体であってもよい。
【0067】
環G、環H、環I及び環Jはそれぞれ独立的に、トランス−1,4−シクロへキシレン基、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子あるいはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−トランス−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又はピリジン−2,5−ジイル基を表すが、各化合物において、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−トランス−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又はピリジン−2,5−ジイル基は1個以内であることが好ましく、他の環はトランス−1,4−シクロへキシレン基あるいは1〜2個のフッ素原子又はメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基であることが好ましい。
【0068】
、L及びLは連結基であって、それぞれ独立的に単結合、エチレン基(−CHCH−)、1,2−プロピレン基(−CH(CH)CH−及び)−CHCH(CH)−)、1,4−ブチレン基、−COO−、−OCO−、−OCF−、−CFO−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−C≡C−又は−CH=NN=CH−を表すが、単結合、エチレン基、1,4−ブチレン基、−COO−、−OCO−、−OCF−、−CFO−、−CF=CF−、−C≡C−又は−CH=NN=CH−が好ましく、(C2)においてはその少なくとも1個が、(C3)においてはその少なくとも2個が単結合を表すことが好ましい。
【0069】
なお一般式(C1)から(C3)で表される化合物を組み合わせて使用する場合、異なる分子中の同一の選択肢(環GやL等)は同一の置換基を表しても、異なる置換基を表してもよい。
【0070】
又、一般式(C1)から(C3)においては分子内のハロゲン原子数が0個又は1個であることが好ましい。
【0071】
本発明の組成物の総量に対しての一般式(C1)から(C3)で表される化合物の好ましい含有量の下限値は、1%以上であり、2%以上であり、5%以上であり、8%以上であり、10%以上であり、13%以上であり、15%以上であり、18%以上であり、20%以上であり、22%以上であり、25%以上であり、30%以上であり、40%以上であり、50%以上であり、55%以上であり、60%以上であり、65%以上であり、70%以上であり、75%以上であり、80%以上である。好ましい含有量の上限値は、85%以下であり、75%以下であり、65%以下であり、55%以下であり、45%以下であり、35%以下であり、30%以下であり、28%以下であり、25%以下であり、23%以下であり、20%以下であり、18%以下であり、15%以下であり、13%以下であり、10%以下であり、8%以下であり、5%以下である。
【0072】
本発明の組成物の粘度を低く保ち、応答速度が速い組成物が必要な場合は上記の下限値を低めに、上限値を高めにすることが好ましい。さらに、本発明の組成物の比抵抗値やVHRが高く、高信頼性の組成物が必要な場合は上記の下限値を高めに、上限値を高めにすることが好ましい。また、駆動電圧を低く保つために誘電率異方性を大きくしたいときは、上記の下限値を低めに、上限値を低めにすることが好ましい。
【0073】
(C1)におけるより好ましい形態は以下の一般式(C1a)〜(C1h)で表すことができる。
【0074】
【化18】
【0075】
上記各式中、Rf及びRgはそれぞれ独立的に炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1-アルケニル基、炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基、炭素原子数1〜3の直鎖状アルコキシル基又は末端が炭素原子数1〜3のアルコキシル基により置換された炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基を表すが、少なくとも一方は炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1-アルケニル基又は炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基を表す。ただし、環G1〜環G3が芳香環の場合、対応するRは1−アルケニル基及びアルコキシル基を除き、環H1〜環H3が芳香環の場合、対応するRは1-アルケニル基及びアルコキシル基を除く。
【0076】
環G1及び環H1はそれぞれ独立的にトランス−1,4−シクロへキシレン基、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子あるいはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−トランス−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又はピリジン−2,5−ジイル基を表すが、各化合物において、トランスデカヒドロナフタレン-トランス−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン-トランス−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又はピリジン−2,5−ジイル基は1個以内であることが好ましく、その場合の他方の環はトランス−1,4−シクロへキシレン基あるいは1〜2個のフッ素原子又はメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基である。但し、環G1及び環H1が共にトランス−1,4−シクロへキシレン基を表すものを除く。
【0077】
環G2及び環H2はそれぞれ独立的にトランス−1,4−シクロへキシレン基、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子あるいはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表すが、各化合物において、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基は1個以内であることが好ましく、その場合の他方の環はトランス−1,4−シクロへキシレン基あるいは1〜2個のフッ素原子又はメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基である。環G3及び環H3はそれぞれ独立的に1〜2個のフッ素原子あるいはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表すが、各化合物において1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基は1個以内であることが好ましい。
【0078】
さらに好ましくは、下記化合物である。
【0079】
【化19】
【0080】
【化20】
【0081】
(C2)におけるより好ましい形態は以下の一般式(C2a)〜(C2m)で表すことができる。
【0082】
【化21】
【0083】
上式中、環G1、環G2、環G3、環H1、環H2及び環H3は前述の意味を表し、環I1は環G1と、環I2は環G2と、環I3は環G3とそれぞれおなじ意味を表す。又、上記各化合物において、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−トランス−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又はピリジン−2,5−ジイル基は1個以内であることが好ましく、その場合の他方の環はトランス−1,4−シクロへキシレン基あるいは1〜2個のフッ素原子又はメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基である。
【0084】
さらに好ましくは、下記化合物である。
【0085】
【化22】
【0086】
【化23】
【0087】
次に(C3)におけるより好ましい形態は以下の一般式(C3a)〜(C3f)で表すことができる。
【0088】
【化24】
【0089】
上式中、環G1、環G2、環H1、環H2、環I1及び環I2は前述の意味を表し、環J1は環G1又環J2は環G2とそれぞれおなじ意味を表す。又、上記各化合物において、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン-トランス−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又はピリジン−2,5−ジイル基は1個以内であることが好ましく、その場合の他方の環はトランス−1,4−シクロへキシレン基あるいは1〜2個のフッ素原子又はメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基である。
【0090】
さらに好ましくは、下記化合物である。
【0091】
【化25】
【0092】
<一般式(N)で表される化合物>
本発明の液晶組成物は、更に、一般式(N)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。
【0093】
【化26】
【0094】
(式中、RN1及びRN2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−によって置換されていてもよく、
N1は0、1、2又は3を表し、
N1、AN2及びAN3はそれぞれ独立して
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
(c) 1,4−シクロヘキセニレン、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立して炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数2〜3のアルケニル基、炭素原子数1〜3のアルコキシル、炭素原子数1〜3のアルケニルオキシ基、シアノ基又はフッ素原子で置換されていてもよいが、AN1、AN2及びAN3のうち少なくとも1つは2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,7,8−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル基又は3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル基を表し、
N1及びZN2はそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−OCF−、−CFO−、−CH=N−N=CH−、−CH=CH−又は−CF=CF−を表し、
N1が2又は3であってAN2及びZN2が複数存在する場合は、AN2及びZN2はそれぞれ独立して同一であっても異なっていてもよいが、但し一般式(N−i)、一般式(N−iii)及び一般式(N−iv)で表される化合物を除く。)
一般式(N)中、RN1及びRN2はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数2〜5のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基が更に好ましく、炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜3のアルケニル基が更に好ましく、炭素原子数3のアルケニル基(プロペニル基)が特に好ましい。
【0095】
また、それが結合する環構造がフェニル基(芳香族)である場合には、直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基及び炭素原子数4〜5のアルケニル基が好ましく、それが結合する環構造がシクロヘキサン、ピラン及びジオキサンなどの飽和した環構造の場合には、直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基及び直鎖状の炭素原子数2〜5のアルケニル基が好ましい。ネマチック相を安定化させるためには炭素原子及び存在する場合酸素原子の合計が5以下であることが好ましく、直鎖状であることが好ましい。
【0096】
アルケニル基としては、式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましい。(各式中の黒点は環構造中の炭素原子を表す。)
【0097】
【化27】
【0098】
N1、AN2、AN21及びA23はそれぞれ独立してΔnを大きくすることが求められる場合には芳香族であることが好ましく、応答速度を改善するためには脂肪族であることが好ましく、トランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表すことが好ましく、下記の構造を表すことがより好ましく、
【0099】
【化28】
【0100】
トランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基又は1,4−フェニレン基を表すことがより好ましい。
【0101】
N11及びZN12はそれぞれ独立して−CHO−、−CFO−、−CHCH−、−CFCF−又は単結合を表すことが好ましく、−CHO−、−CHCH−又は単結合が更に好ましく、−CHO−又は単結合が特に好ましい。
【0102】
N1は0、1又は2が好ましく、粘度を低くしたい場合にはmN1は0が好ましく、転移温度を高くしたい場合にはmN1は1が好ましい。
【0103】
本発明の組成物の総量に対しての式(N)で表される化合物の好ましい含有量の下限値は、1%以上であり、10%以上であり、20%以上であり、30%以上であり、40%以上であり、50%以上であり、55%以上であり、60%以上であり、65%以上であり、70%以上であり、75%以上であり、80%以上である。好ましい含有量の上限値は、95%以下であり、85%以下であり、75%以下であり、65%以下であり、55%以下であり、45%以下であり、35%以下であり、25%以下であり、20%以下である。
【0104】
本発明の組成物の粘度を低く保ち、応答速度が速い組成物が必要な場合は上記の下限値が低く上限値が低いことが好ましい。さらに、本発明の組成物の比抵抗値やVHRが高く、高信頼性の組成物が必要な場合は上記の下限値が低く上限値が低いことが好ましい。また、駆動電圧を低く保つために誘電率異方性を大きくしたいときは、上記の下限値を高く上限値が高いことが好ましい。
一般式(N)として、下記の一般式(N−1a)〜(N−1g)で表される化合物群のいずれか一つ以上を含有することができる。
【0105】
【化29】
【0106】
(式中、RN1及びRN2は一般式(N)におけるRN1及びRN1と同じ意味を表し、nNa11は0又は1を表し、nNb11は1又は2を表し、nNc11は0又は1を表し、nNe11は1又は2を表し、nNf11は1又は2を表し、nNg11は1又は2を表し、ANe11はトランス−1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基を表し、ANg11はトランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基又は1,4−フェニレン基を表すが少なくとも1つは1,4−シクロヘキセニレン基を表し、ZNe 11は単結合又はエチレンを表すが少なくとも1つはエチレンを表す。)
本願発明の液晶組成物は、一般式(N−i)で表される化合物と、一般式(ii)で表される化合物と、一般式(N−iii)で表される化合物及び/又は一般式(N−iv)で表される化合物と、一般式(L)で表される化合物を同時に含有することが好ましく、一般式(N−i)で表される化合物と、一般式(ii)で表される化合物と、一般式(N−iii)で表される化合物及び/又は一般式(N−iv)で表される化合物と、一般式(N)で表される化合物を同時に含有することが好ましく、一般式(N−i)で表される化合物と、一般式(ii)で表される化合物と、一般式(N−iii)で表される化合物及び/又は一般式(N−iv)で表される化合物と、一般式(L)で表される化合物と、一般式(N)で表される化合物を同時に含有することが好ましい。
【0107】
液晶組成物の総量に対しての一般式(N−i)で表される化合物と、一般式(ii)で表される化合物と、一般式(N−iii)で表される化合物及び/又は一般式(N−iv)で表される化合物の合計の好ましい含有量の下限値は、30%以上であり、40%以上であり、45%以上であり、50%以上であり、55%以上であり、60%以上であり、65%以上であり、70%以上であり、75%以上であり、80%以上であり、85%以上であり、90%以上である。好ましい含有量の上限値は、100%以下であり、95%以下であり、90%以下であり、85%以下であり、80%以下であり、75%以下であり、70%以下であり、65%以下であり、60%以下であり、55%以下であり、50%以下である。
【0108】
液晶組成物の総量に対しての一般式(N−i)で表される化合物と、一般式(ii)で表される化合物と、一般式(N−iii)で表される化合物及び/又は一般式(N−iv)で表される化合物と、一般式(L)で表される化合物の合計の好ましい含有量の下限値は30%以上であり、40%以上であり、45%以上であり、50%以上であり、55%以上であり、60%以上であり、65%以上であり、70%以上であり、75%以上であり、80%以上であり、85%以上であり、90%以上であり、95%以上であり、98%以上である。好ましい含有量の上限値は、100%以下であり、95%以下であり、90%以下であり、85%以下であり、80%以下であり、75%以下であり、70%以下であり、65%以下であり、60%以下であり、55%以下であり、50%以下である。
【0109】
液晶組成物の総量に対しての一般式(N−i)で表される化合物と、一般式(ii)で表される化合物と、一般式(N−iii)で表される化合物及び/又は一般式(N−iv)で表される化合物と、一般式(N)の合計の好ましい含有量の下限値は30%以上であり、40%以上であり、45%以上であり、50%以上であり、55%以上であり、60%以上であり、65%以上であり、70%以上であり、75%以上であり、80%以上であり、85%以上であり、90%以上であり、95%以上であり、98%以上である。好ましい含有量の上限値は、100%以下であり、95%以下であり、90%以下であり、85%以下であり、80%以下であり、75%以下であり、70%以下であり、65%以下であり、60%以下であり、55%以下であり、50%以下である。
【0110】
液晶組成物の総量に対しての一般式(N−i)で表される化合物と、一般式(ii)で表される化合物と、一般式(N−iii)で表される化合物及び/又は一般式(N−iv)で表される化合物と、一般式(L)で表される化合物と、一般式(N)で表される化合物の合計の好ましい含有量の下限値は30%以上であり、40%以上であり、45%以上であり、50%以上であり、55%以上であり、60%以上であり、65%以上であり、70%以上であり、75%以上であり、80%以上であり、85%以上であり、90%以上であり、95%以上であり、98%以上である。好ましい含有量の上限値は、100%以下であり、95%以下であり、90%以下であり、85%以下であり、80%以下であり、75%以下であり、70%以下であり、65%以下であり、60%以下であり、55%以下であり、50%以下である。
【0111】
液晶組成物の総量に対しての一般式(L)及び一般式(N)で表される化合物の合計の好ましい含有量の下限値は、1%以上であり、2%以上であり、5%以上であり、8%以上であり、10%以上であり、13%以上であり、15%以上であり、18%以上であり、20%以上であり、22%以上であり、25%以上であり、30%以上であり、40%以上であり、50%以上であり、55%以上であり、60%以上であり、65%以上であり、70%以上であり、75%以上であり、80%以上である。好ましい含有量の上限値は、85%以下であり、75%以下であり、65%以下であり、55%以下であり、45%以下であり、35%以下であり、30%以下であり、28%以下であり、25%以下であり、23%以下であり、20%以下であり、18%以下であり、15%以下であり、13%以下であり、10%以下であり、8%以下であり、5%以下である。
【0112】
本願発明の組成物は、分子内に過酸(−CO−OO−)構造等の酸素原子等のヘテロ原子同士が結合した構造を持つ化合物を含有しないことが好ましい。
【0113】
また、本発明の組成物において、分子内に
【0114】
【化30】
【0115】
で表される基を1個又は2個以上有する化合物は、該化合物中に−CH≡CH−で表される基を有さないことが好ましい。また、本発明の組成物において、−CH≡CH−で表される基を有する化合物を含有しないことがより好ましい。
【0116】
組成物の信頼性及び長期安定性を重視する場合にはカルボニル基を有する化合物の含有量を前記組成物の総質量に対して5%以下とすることが好ましく、3%以下とすることがより好ましく、1%以下とすることが更に好ましく、実質的に含有しないことが最も好ましい。
【0117】
UV照射による安定性を重視する場合、塩素原子が置換している化合物の含有量を前記組成物の総質量に対して15%以下とすることが好ましく、10%以下とすることが好ましく、8%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましく、3%以下とすることが好ましく、実質的に含有しないことが更に好ましい。
【0118】
分子内の環構造がすべて6員環である化合物の含有量を多くすることが好ましく、分子内の環構造がすべて6員環である化合物の含有量を前記組成物の総質量に対して80%以上とすることが好ましく、90%以上とすることがより好ましく、95%以上とすることが更に好ましく、実質的に分子内の環構造がすべて6員環である化合物のみで組成物を構成することが最も好ましい。
【0119】
組成物の酸化による劣化を抑えるためには、環構造としてシクロヘキセニレン基を有する化合物の含有量を少なくすることが好ましく、シクロヘキセニレン基を有する化合物の含有量を前記組成物の総質量に対して10%以下とすることが好ましく、8%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましく、3%以下とすることが好ましく、実質的に含有しないことが更に好ましい。
【0120】
粘度の改善及びTniの改善を重視する場合には、水素原子がハロゲンに置換されていてもよい2−メチルベンゼン−1,4−ジイル基を分子内に持つ化合物の含有量を少なくすることが好ましく、前記2−メチルベンゼン−1,4−ジイル基を分子内に持つ化合物の含有量を前記組成物の総質量に対して10%以下とすることが好ましく、8%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましく、3%以下とすることが好ましく、実質的に含有しないことが更に好ましい。
【0121】
本願において実質的に含有しないとは、意図せずに含有する物を除いて含有しないという意味である。
本発明の組成物に含有される化合物が、側鎖としてアルケニル基を有する場合、前記アルケニル基がシクロヘキサンに結合している場合には当該アルケニル基の炭素原子数は2〜5であることが好ましく、前記アルケニル基がベンゼンに結合している場合には当該アルケニル基の炭素原子数は4〜5であることが好ましく、前記アルケニル基の不飽和結合とベンゼンは直接結合していないことが好ましい。
【0122】
本発明における液晶組成物の安定性を高めるため、酸化防止剤、紫外線(UV)吸収剤、光安定剤又は赤外線吸収剤等等の安定剤を添加することが好ましい。酸化防止剤としては、ヒドロキノン誘導体、ニトロソアミン系重合禁止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられ、より具体的には、tert−ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、和光純薬工業株式会社製の「Q−1300」、「Q−1301」、BASF社の「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1425」、「IRGANOX1520」、「IRGANOX1726」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」等々があげられる。
【0123】
UV吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。より具体的には、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物が挙げられ、ヒンダードフェノール系化合物としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレートが挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2′−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2−(2′−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が挙げられ、BASFジャパン(株)製のTINUVIN109、TINUVIN171、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN328、TINUVIN770、TINUVIN900、TINUVIN928、ケミプロ化成(株)製の、KEMISORB 71、KEMISORB 73、KEMISORB 74も好ましく用いることができる。
【0124】
安定剤の添加量は重合性液晶組成物に対して0.01〜2.0質量%であることが好ましく、0.05〜1.0質量%、0.05〜0.5質量%であることがより好ましく、0.1〜1.0質量%であることがより好ましく、0.1〜0.5質量%であることがより好ましい。
【0125】
本願発明の液晶組成物は、上述の化合物以外に、通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶、キラル剤及び重合性化合物から選択される化合物を含有しても良い。
【0126】
本願発明の液晶組成物は、ピッチを誘起するカイラル剤として、不斉原子をもつ化合物を用いても、軸不斉化合物を用いても、これらを混合して用いてもよい。ピッチを誘起するカイラル剤として不斉炭素原子を有する化合物が好ましく、1,4−フェニレン基(この基中の水素原子の1個又は2個はフッ素、メチル基、メトキシ基で置換されていても良い。)を1個又は2個以上有する分子構造であることが好ましい。ピッチの温度依存性を改良又は調整するために、カイラル剤を複数種混合して用いても良い。
【0127】
本願発明の液晶組成物は、重合性化合物として、PS型、PSA型、PSVA型などに用いられる重合性化合物を含有しても良く、例えば、1,4−フェニレン基が2個または3個から構成される重合性化合物が好ましく、重合基はアクリレートまたはメタクリレートであることが好ましい。具体的には、式(RM−001)から(RM−007)で表される重合性化合物を0質量%から5質量%の範囲で適宜含有することができる。
【0128】
【化31】
【0129】
で表される重合性化合物を0質量%から5質量%の範囲で適宜含有しても良い。
重合性化合物の分子構造を構成している1,4−フェニル基中の水素原子またはフッ素原子は、フッ素原子またはメチル基またはメトキシ基で任意に置換されていても良い。また、本願発明に用いる重合性化合物は、RM−005のように、環と重合基の間にスペーサーと一般的に呼ばれているアルキレン基を含んでも良く、アルキレン基は炭素原子数1から10が好ましい。
本願発明の液晶組成物が、重合性化合物を1質量%から5質量%含有する場合には、上述のスペーサーが炭素原子数1から6のアルキレン基であることが好ましく、複数種の重合性化合物を組み合わせた方が、溶解性が良好になる観点から更に好ましい。本願発明の液晶組成物が、重合性化合物を0.1質量%から1質量%含有する場合には、式(RM−001)から(RM−007)で表される重合性化合物を1種または2種以上含有することが好ましい。
【0130】
本願発明の液晶組成物は、誘電率異方性(Δε)が負であるネマチック液晶組成物である。液晶組成物が負の誘電率異方性を有する場合、25℃における誘電率異方性(Δε)が−2.0から−6.0であるが、−2.0から−5.0がより好ましく、−2.5から−5.0が特に好ましい。
【0131】
本願発明の液晶組成物は、25℃における複屈折率異方性(Δn)が0.070から0.200であるが、0.07から0.13がより好ましく、0.09から0.12が特に好ましい。
【0132】
本願発明の液晶組成物は、20℃における粘度(η)が10から100mPa・sであるが、10から90mPa・sであることが好ましく、10から80mPa・sであることが好ましく、10から70mPa・sであることが好ましく、10から60mPa・sであることが好ましく、10から50mPa・sであることが更に好ましく、10から40mPa・sであることが好ましく、10から30mPa・sであることが特に好ましい。
【0133】
本願発明の液晶組成物は、25℃における回転粘性(γ)が40から250mPa・sであるが、40から200mPa・sであることが好ましく、40から160mPa・sであることが好ましく、40から140mPa・sであることが好ましく、40から140mPa・sであることが好ましく、40から130mPa・sであることが好ましく、40から125mPa・sであることが好ましく、40から120mPa・sであることがより好ましく、40から115mPa・sであることが更に好ましく、40から110mPa・sであることがより好ましく、40から100mPa・sであることが特に好ましい。
【0134】
本願発明の液晶組成物は、ネマチック相−等方性液体相転移温度(Tni)が80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることが好ましいが、90℃から115℃に調節されるのが特に好ましい。
【0135】
本願発明の液晶組成物は、ゲストホスト型の液晶組成物として使用してもよい。ゲスト化合物として、例えばアゾ化合物等の二色性色素を1種又は2種以上含有することができる。
【0136】
本願発明の液晶組成物は、誘電率異方性が負の液晶組成物であり、APL(アンチパラレル)かつVA(垂直配向)である液晶表示素子であることが好ましいが、カイラル剤を添加して、電圧オン時に液晶分子が捩れ配向するように上下基盤の配向軸をずらしても良い。液晶組成物に二色性色素を添加して、偏光板なしのゲストホスト型の液晶組成物として透過光量を調節したい場合には、高いコントラストを得るために、配向軸を90°ツイストさせることが更に好ましく、240°ツイストさせることが更に好ましく、更に高いコントラストを得たい場合には、技術的にはより難しいが250°ツイストまたは260°ツイストまたは270°ツイストが好ましく、360°ツイストであることも好ましい。
【0137】
また、液晶組成物が負の誘電率異方性を有する液晶組成物である場合は、プレチルト角が80°〜90°であることが好ましい。
本願発明の液晶組成物は、液晶表示素子あるいは調光素子に使用することができる。
【0138】
また、本願発明の液晶組成物を用いた液晶表示素子は、パッシブマトリックス駆動方式、及びアクティブマトリックス駆動用液晶表示素子に有用であり、PSAモード、PSVAモード、VAモード、PS−IPSモード、TNモード、STNモード、IPSモード又はPS−FFSモード用液晶表示素子に用いることができる。
【0139】
素子に使用される液晶セルの2枚の基板はガラス又はプラスチックの如き柔軟性をもつ透明な材料を用いることができ、一方はシリコン等の不透明な材料でも良い。透明電極層を有する透明基板は、例えば、ガラス板等の透明基板上にインジウムスズオキシド(ITO)をスパッタリングすることにより得ることができる。素子のコントラスト向上のために、ARコート等のアンチグレア処理を施した基板を用いることが好ましい。
【0140】
カラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法又は、染色法等によって作成することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作成方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基板上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作成することができる。その他、該基板上に、TFT、薄膜ダイオード、金属絶縁体金属比抵抗素子等の能動素子を設けた画素電極を設置することができる。
【0141】
前記基板を、透明電極層が内側となるように対向させる。その際、スペーサーを介して、基板の間隔を調整してもよい。このときは、得られる調光層の厚さが1〜100μmとなるように調整するのが好ましい。1.5から10μmが更に好ましく、偏光板を使用する場合は、コントラストが最大になるように液晶の屈折率異方性Δnとセル厚dとの積を調整することが好ましい。
【0142】
液晶組成物がカイラル剤を含む場合は、液晶組成物の捩れピッチ(p)は、例えば10μm〜120μm、好ましくは2μm〜20μmである。より具体的には、捩れピッチ(p)は、TNモード、STNモード等の液晶表示素子のモードに応じて適宜調整される。
【0143】
また、液晶組成物がカイラル剤を含む場合は、捩れピッチ(p)とセル厚dとの関係であるd/p値が0.5〜2.2を満たすことが好ましい。具体的には、ツイスト角に応じて捩れピッチ(p)とセル厚(d)の関係d/p値が最適となるように調節する。最適なd/p値とはリバースツイストドメインやストライプドメインなどの配向欠陥がでない領域である。例えば、240°ツイストの場合、最適なd/p値は0.45〜0.66の範囲内に存在する。目視や顕微鏡などでドメインを観察して配向欠陥が生じないよう調節することが好ましい。
【0144】
又、二枚の偏光板がある場合は、各偏光板の偏光軸を調整して視野角やコントラトが良好になるように調整することもできる。更に、視野角を広げるための位相差フィルムも使用することもできる。スペーサーとしては、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子、フォトレジスト材料等が挙げられる。その後、エポキシ系熱硬化性組成物等のシール剤を、液晶注入口を設けた形で該基板にスクリーン印刷し、該基板同士を貼り合わせ、加熱しシール剤を熱硬化させる。
【0145】
2枚の基板間に液晶組成物を狭持させる方法は、通常の真空注入法又はODF法などを用いることができる。
【0146】
本発明の素子は、液晶セルに紫外線カットフィルムとして、例えば400nm以下の波長の光をカットするフィルムを積層して用いてもよい。
【0147】
本発明の素子は、単層の液晶セルで用いてもよいし、複数の液晶セルを2層又は3層以上積層して用いてもよい。液晶組成物に二色性色素を添加して、偏光板なしのゲストホスト型の液晶組成物として透過光量を調節したい場合には、コントラスト向上の観点から、アンチパラレルに配向処理された垂直配向のセルを90°直行させて積層させることが好ましい。
【実施例】
【0148】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
実施例において液晶化合物の記載について以下の略号を用いる。
(環構造)
【0149】
【化32】
【0150】
(側鎖構造及び連結構造)
【0151】
【表1】
【0152】
実施例中、測定した特性は以下のとおりである。
【0153】
ni :ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
メトラー社製のホットステージを用いてニコン偏光顕微鏡にて測定した。
【0154】
Δn :25℃における屈折率異方性
アッベ屈折計を用いて測定した。
【0155】
Δε :25℃における誘電率異方性
Agilent社製のLCRメーターを用いて測定した。
【0156】
η :バルクフロー粘度[mPa・s](20℃)
E型粘度計を用いて測定した。
【0157】
溶解性 :液晶組成物を0.5g程度試験管に入れ、脱気、窒素充填後キャップをして恒温槽に保存し、240時間後に析出の有無を目視観察した。析出がない場合は「○」、析出が確認された場合は「×」とした。保存温度は−30℃、−25℃及び−15℃でそれぞれ行った。
【0158】
耐光性(VHR(UV)):キセノンランプでUVを10日間(240時間)照射後の初期印加電圧に対する電圧保持率(%)であって、測定条件は1V、60Hz、25℃、照度は300〜800nmで500W/m、テストパネルのセル厚は3.5μmである。
耐熱性(VHR(HEAT)):80℃で10日間(240時間)加熱した後の初期印加電圧に対する電圧保持率(%)であって、測定条件は1V、60Hz、25℃、テストパネルのセル厚は3.5μmである。
(実施例1〜実施例6、比較例1〜3)
以下の表に示す実施例1〜6、及び比較例1〜3の液晶組成物を調製し、それらの物性および特性を測定した。 表中の液晶組成物の割合は、質量%で示す。また、これらの液晶組成物を用いてテストパネル用液晶セルを作製し、耐光性及び耐熱性試験を行った。物性および特性や試験結果は表2のとおりであった。
【0159】
【表2】
【0160】
実施例1、2と比較例1、及び、実施例6と比較例3の結果より、一般式(N−i)に相当する化合物を含有することで、粘度、誘電率異方性及び屈折率異方性に影響を与えることなく、Tniの値を上昇することができ、且つ、低温保存特性を向上させることができた。また、実施例1,2と比較例2より、一般式(ii)で表される化合物を含有することで、低温保存特性を向上させることができることがわかる。実施例1,2及び6の耐光性及び耐熱性試験の結果より、本発明の液晶組成物は、十分な信頼性の結果を得られることが確認できた。
(実施例7、実施例8、比較例4、比較例5)
以下の表に示す実施例7、実施例8、比較例4及び比較例5の液晶組成物を調製し、それらの物性および特性を測定した。 表中の液晶組成物の割合は、質量%で示す。また、これらの液晶組成物を用いてテストパネル用液晶セルを作製し、耐光性及び耐熱性試験を行った。物性および特性や試験結果は表3のとおりであった。
【0161】
【表3】
【0162】
実施例7、8と比較例4、及び比較例5の結果より、一般式(N−i)に相当する化合物を含有し、且つ、一般式(ii)で表される化合物を含有することで、粘度、誘電率異方性及び屈折率異方性に影響を与えることなく、Tniの値を上昇することができることがわかる。実施例7及び8の耐光性及び耐熱性試験の結果より、本発明の液晶組成物は、十分な信頼性の結果を得られることが確認できた。
(実施例9〜実施例12、比較例6、比較例7)
以下の表に示す実施例9〜実施例12、比較例6及び比較例7の液晶組成物を調製し、それらの物性および特性を測定した。 表中の液晶組成物の割合は、質量%で示す。また、これらの液晶組成物を用いてテストパネル用液晶セルを作製し、耐光性及び耐熱性試験を行った。物性および特性や試験結果は表4のとおりであった。
【0163】
【表4】
【0164】
実施例9〜12と比較例6、及び比較例7の結果より、一般式(N−i)に相当する化合物を含有し、且つ、一般式(ii)で表される化合物を含有することで、粘度、誘電率異方性及び屈折率異方性に影響を与えることなく、Tniの値を上昇することができることがわかる。実施例9〜12の耐光性及び耐熱性試験の結果より、本発明の液晶組成物は、十分な信頼性の結果を得られることが確認できた。
以上の結果より、本願発明の液晶組成物は、耐光性及び高耐熱性に有効な低い複屈折率異方性(Δn)と大きい誘電率異方性の絶対値(|Δε|)を同時に満たしつつ、高いネマチック−アイソトロピック転移温度(TNI)と低温での溶解安定性に優れた液晶組成物を得られることから、本発明の液晶表示素子または調光素子は実用上求められる優れた特性を満たしたものである。
【要約】
本発明は、一般式(N−i)で表される化合物を1種類又は2種類以上と、一般式(ii)で表される化合物を1種類又は2種類以上と、一般式(N−iii)で表される化合物及び一般式(N−iv)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を1種類又は2種類以上含有する液晶組成物、及びこれを用いた液晶表示素子または調光素子を提供する。本発明によれば、高いネマチック−アイソトロピック転移温度(TNI)と低温での溶解安定性に優れ、更に、高耐光性、高耐熱性に有効な低い複屈折率異方性(Δn)を同時に満たす液晶組成物を得られ、また、本発明の液晶組成物を用いることで、高い信頼性と高い実用性を備えた液晶表示素子または調光素子を得られる。