特許第6452020号(P6452020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6452020ビトリゲル膜乾燥体の製造方法及び製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6452020
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】ビトリゲル膜乾燥体の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20190107BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20190107BHJP
   A61L 27/52 20060101ALN20190107BHJP
【FI】
   C12M3/00 A
   !C12N5/071
   !A61L27/52
【請求項の数】8
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-552899(P2018-552899)
(86)(22)【出願日】2018年4月12日
(86)【国際出願番号】JP2018015373
【審査請求日】2018年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2017-98330(P2017-98330)
(32)【優先日】2017年5月17日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度国立研究開発法人科学技術振興機構研究成果展開事業、大学発新産業創出プログラム、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 俊明
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/026531(WO,A1)
【文献】 特開2007−185107(JP,A)
【文献】 特開2012−115262(JP,A)
【文献】 薬剤学, (2015), 75, [6], p.344-353
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
A61L 27/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の凹部を有し、且つ、前記凹部の底面において、中心部はハイドロゲルに対する吸着性が低い第1の材料で構成され、周縁部はハイドロゲルに対する吸着性が高い第2の材料で構成された部材Aと、
前記部材Aの前記凹部の横断面とほぼ同一の大きさの横断面の貫通孔を1以上有する部材Bと、を
前記部材Aの前記凹部と前記部材Bの前記貫通孔とが重なるように同心状に配置させ、載置する工程1と、
前記部材Bの前記貫通孔からゾルを注入する工程2と、
前記ゾルが注入された前記部材A及び前記部材Bを静置して、前記ゾルをゲル化させる工程3と、
前記工程3で得られたハイドロゲルを前記部材A及び前記部材B内に形成された状態で乾燥しガラス化させる工程4と、
前記工程4で得られたハイドロゲル乾燥体を前記部材A及び前記部材B内に形成された状態で水和させる工程5と、
前記工程5で得られたビトリゲルを前記部材A及び前記部材B内に形成された状態で乾燥し再度ガラス化させる工程6と、
前記工程6で得られたビトリゲル乾燥体のうち前記部材Aの天面上をわずかに覆う部分を切り離す工程7と、
をこの順に備えるビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の材料が前記部材Aの前記凹部の底面において脱着可能である請求項1に記載のビトリゲル膜乾燥体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のビトリゲル膜乾燥体の製造方法により得られたビトリゲル膜乾燥体を用いてビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスを製造する方法であって、
前記ビトリゲル膜乾燥体が前記部材A及び前記部材B内に配置された状態で、前記部材Bを前記部材Aから離間させ、
前記ビトリゲル膜乾燥体と接する側の面の周縁部に接着剤層を有する筒状部材が抜き差し可能にはめ込まれており、且つ、前記部材Aの前記凹部の横断面とほぼ同一の大きさの横断面の凹部を1以上有する部材Cを、前記部材Aの前記凹部と前記部材Cの前記凹部とが重なるように同心状に配置させ、前記部材Cの上に前記部材Aを載置する工程8と、
前記部材Aと前記部材Cとを離間させ、前記部材Aから前記ビトリゲル膜乾燥体が接着された筒状部材を抜き出す工程9と、
をこの順に備えるビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記工程9の後に、さらに、
前記工程9で得られた前記ビトリゲル膜乾燥体が接着された前記筒状部材を、前記ビトリゲル膜乾燥体が接着された面が底面と接するように第2の部材Cに抜き差し可能にはめ込み、前記筒状部材の前記ビトリゲル膜乾燥体が接着されていない面の周縁部に接着剤層を形成する工程10と、
前記ビトリゲル膜乾燥体の製造方法により得られた第2のビトリゲル膜乾燥体が第2の部材A及び第2の部材B内に形成された状態で、前記第2の部材Bを前記第2の部材Aから離間させ、
前記工程10で得られた第2の部材Cを、前記第2の部材Aの前記凹部と前記第2の部材Cの前記凹部とが重なるように同心状に配置させ、前記第2の部材Cの前記ビトリゲル乾燥体が接着されていない面の前記接着剤層と前記第2の部材A内に形成された第2のビトリゲル乾燥体とが接するように、前記第2の部材Cの上に前記第2の部材Aを載置する工程11と、
前記第2の部材Cと前記第2の部材Aとを離間させ、前記第2の部材Aから前記ビトリゲル膜乾燥体が両面に接着された筒状部材を抜き出す工程12と、
をこの順に備える請求項3に記載のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法。
【請求項5】
1以上の凹部を有し、且つ、前記凹部の底面において、中心部はハイドロゲルに対する吸着性が低い第1の材料で構成され、周縁部はハイドロゲルに対する吸着性が高い第2の材料で構成された部材Aと、
前記部材Aの前記凹部の横断面とほぼ同一の大きさの横断面の貫通孔を1以上有する部材Bと、を備え、
前記部材Aと前記部材Bとを同心状に配置した場合に、前記凹部と前記貫通孔とが重なるように配置されているビトリゲル膜乾燥体の製造装置。
【請求項6】
前記第1の材料が前記部材Aの前記凹部の底面において脱着可能である請求項5に記載のビトリゲル膜乾燥体の製造装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のビトリゲル膜乾燥体の製造装置と、
前記部材Aの前記凹部の横断面とほぼ同一の大きさの横断面の凹部を1以上有する部材Cと、を備え、
前記部材Cの前記凹部は、ビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの本体となる筒状部材を抜き差し可能にはめ込むためのものであり、
前記部材Aと前記部材Cとを同心状に配置した場合に、前記部材Aの前記凹部と前記部材Cの前記凹部とが重なるように配置されているビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置。
【請求項8】
2以上の前記ビトリゲル膜乾燥体の製造装置を備える請求項7に記載のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビトリゲル膜乾燥体の製造方法及び製造装置に関する。具体的には、本発明は、ビトリゲル膜乾燥体の製造方法及び製造装置、並びに、該製造方法及び製造装置を用いて得られたビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法及び製造装置に関する。
本願は、2017年5月17日に、日本に出願された特願2017−098330号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
これまで、発明者は、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体を備えるチャンバーを開発してきた(例えば、特許文献1参照)。当初、パラフィルム(登録商標)と一体化した、しわのない平滑な面を有するコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を製造し(例えば、特許文献2参照)、これを筒状のチャンバー本体に貼り付けた後にパラフィルム(登録商標)を剥離することでコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を備えるチャンバーを製造していた。現在では、2枚の環状磁石に挟んだコラーゲンビトリゲル膜を乾燥させてコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を製造し(例えば、特許文献3参照)、これを筒状のチャンバー本体に貼り付けた後に不要部分を切除することでコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を備えるチャンバーを製造している。
また、発明者は、製造されたコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を備えるチャンバーにおいて、水和時にコラーゲンビトリゲル膜がたわむことを防ぐために、当該コラーゲンビトリゲル膜の下に、シリコン処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り付ける方法を開発した(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
また、発明者は、現在、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体を備える細胞封入用デバイスを開発している。その製造方法としては、まず、2枚の環状磁石に挟んだコラーゲンビトリゲル膜を乾燥させてコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を製造する(例えば、特許文献3参照)。次いで、このコラーゲンビトリゲル膜乾燥体をリング状の側面部材に貼り付けた後に不要部分を切除することでコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を備える細胞封入用デバイスが得られる。
一方、発明者がこれまでに開発した貼付型(絆創膏型)人工皮膚製剤は、アテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を創傷部に置き、次いで、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体よりも一回り大きいシリコン処理されたPETフィルムを重ね、さらに、その上からドレッシングテープを覆い被せて貼り付けたものである(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特許第5933223号公報
【特許文献2】日本国特許第5892611号公報
【特許文献3】日本国特許第4817847号公報
【特許文献4】日本国特開2015−223108号公報
【特許文献5】再公表WO2014/208525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載のパラフィルム(登録商標)と一体化した、しわのない平滑な面を有するコラーゲンビトリゲル膜乾燥体では、パラフィルム(登録商標)を剥離した後に、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体の表面にパラフィルム(登録商標)に由来する成分が付着するという課題があった。
また、特許文献3に記載の環状磁石を用いて製造されたコラーゲンビトリゲル膜乾燥体は、作業に時間とコストとを要し、さらに、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体に乾燥皺が生じるという課題があった。
また、特許文献4に記載のシリコン処理されたPETフィルムが貼付されたコラーゲンビトリゲル膜を備えるチャンバーでは、コラーゲンビトリゲル膜を備えるチャンバーを製造した後にシリコン処理されたPETフィルムを貼付していた。そのため、シリコン処理されたPETフィルムが弱く貼付された、しわのない平滑な面を有するコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を低コスト且つ簡便に製造する技術は未だ開発されていなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、簡便に、しわのない平滑な面を有するビトリゲル膜乾燥体を得られるビトリゲル膜乾燥体の製造方法及び製造装置を提供する。また、ビトリゲル膜乾燥体の製造から連続的に製造可能であり、簡便なビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法及び製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ハイドロゲルに対する吸着性が低い部材及びハイドロゲルに対する吸着性が高い部材を備える装置を用いることで、簡便にしわのない平滑な面を有するビトリゲル膜乾燥体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係るビトリゲル膜乾燥体の製造方法は、1以上の凹部を有し、且つ、前記凹部の底面において、中心部はハイドロゲルに対する吸着性が低い第1の材料で構成され、周縁部はハイドロゲルに対する吸着性が高い第2の材料で構成された部材Aと、前記部材Aの前記凹部の横断面とほぼ同一の大きさの横断面の貫通孔を1以上有する部材Bと、を前記部材Aの前記凹部と前記部材Bの前記貫通孔とが重なるように同心状に配置させ、載置する工程1と、前記部材Bの前記貫通孔からゾルを注入する工程2と、前記ゾルが注入された前記部材A及び前記部材Bを静置して、前記ゾルをゲル化させる工程3と、前記工程3で得られたハイドロゲルを前記部材A及び前記部材B内に形成された状態で乾燥しガラス化させる工程4と、前記工程4で得られたハイドロゲル乾燥体を前記部材A及び前記部材B内に形成された状態で水和させる工程5と、前記工程5で得られたビトリゲルを前記部材A及び前記部材B内に形成された状態で乾燥し再度ガラス化させる工程6と、前記工程6で得られたビトリゲル乾燥体のうち前記部材Aの天面上をわずかに覆う部分を切り離す工程7と、をこの順に備える方法である。
上記第1態様に係るビトリゲル膜乾燥体の製造方法において、前記第1の材料が前記部材Aの前記凹部の底面において脱着可能であってもよい。
【0009】
本発明の第2態様に係るビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法は、上記第1態様に係るビトリゲル膜乾燥体の製造方法により得られたビトリゲル膜乾燥体を用いてビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスを製造する方法であって、前記ビトリゲル膜乾燥体が前記部材A及び前記部材B内に配置された状態で、前記部材Bを前記部材Aから離間させ、前記ビトリゲル膜乾燥体と接する側の面の周縁部に接着剤層を有する筒状部材が抜き差し可能にはめ込まれており、且つ、前記部材Aの前記凹部の横断面とほぼ同一の大きさの横断面の凹部を1以上有する部材Cを、前記部材Aの前記凹部と前記部材Cの前記凹部とが重なるように同心状に配置させ、前記部材Cの上に前記部材Aを載置する工程8と、前記部材Aと前記部材Cとを離間させ、前記部材Aから前記ビトリゲル膜乾燥体が接着された筒状部材を抜き出す工程9と、をこの順に備える方法である。
上記第2態様に係るビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法において、前記工程9の後に、さらに、前記工程9で得られた前記ビトリゲル膜乾燥体が接着された前記筒状部材を、前記ビトリゲル膜乾燥体が接着された面が底面と接するように第2の部材Cに抜き差し可能にはめ込み、前記筒状部材の前記ビトリゲル膜乾燥体が接着されていない面の周縁部に接着剤層を形成する工程10と、前記ビトリゲル膜乾燥体の製造方法により得られた第2のビトリゲル膜乾燥体が第2の部材A及び第2の部材B内に形成された状態で、前記第2の部材Bを前記第2の部材Aから離間させ、前記工程10で得られた第2の部材Cを、前記第2の部材Aの前記凹部と前記第2の部材Cの前記凹部とが重なるように同心状に配置させ、前記第2の部材Cの前記ビトリゲル乾燥体が接着されていない面の前記接着剤層と前記第2の部材A内に形成された第2のビトリゲル乾燥体とが接するように、前記第2の部材Cの上に前記第2の部材Aを載置する工程11と、前記第2の部材Cと前記第2の部材Aとを離間させ、前記第2の部材Aから前記ビトリゲル膜乾燥体が両面に接着された筒状部材を抜き出す工程12と、をこの順に備えていてもよい。
【0010】
本発明の第3態様に係るビトリゲル膜乾燥体の製造装置は、1以上の凹部を有し、且つ、前記凹部の底面において、中心部はハイドロゲルに対する吸着性が低い第1の材料で構成され、周縁部はハイドロゲルに対する吸着性が高い第2の材料で構成された部材Aと、前記部材Aの前記凹部の横断面とほぼ同一の大きさの横断面の貫通孔を1以上有する部材Bと、を備え、前記部材Aと前記部材Bとを同心状に配置した場合に、前記凹部と前記貫通孔とが重なるように配置されている。
上記第3態様に係るビトリゲル膜乾燥体の製造装置において、前記第1の材料が前記部材Aの前記凹部の底面において脱着可能であってもよい。
【0011】
本発明の第4態様に係るビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置は、上記第3態様に係るビトリゲル膜乾燥体の製造装置と、前記部材Aの前記凹部の横断面とほぼ同一の大きさの横断面の凹部を1以上有する部材Cと、を備え、前記部材Cの前記凹部は、ビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの本体となる筒状部材を抜き差し可能にはめ込むためのものであり、前記部材Aと前記部材Cとを同心状に配置した場合に、前記部材Aの前記凹部と前記部材Cの前記凹部とが重なるように配置されている。
上記態様に係るビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置において、2以上の前記ビトリゲル膜乾燥体の製造装置を備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記態様のビトリゲル膜乾燥体の製造方法及び製造装置によれば、簡便に、しわのない平滑な面を有するビトリゲル膜乾燥体を得られる。また、上記態様のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法及び製造装置によれば、ビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスをビトリゲル膜乾燥体の製造から連続的に製造でき、簡便にビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスを得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置の一例を示す平面図である。
図1B】本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置の一例を示す正面図である。
図1C】本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置の一例を示す斜視図である。
図2A】実施例1における本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法を用いて得られた細胞封入用デバイスにPBSが満たした状態を示す画像である。
図2B】比較例1における環状磁石を用いて製造されたビトリゲル膜乾燥体が接着された細胞封入用デバイスにPBSが満たした状態を示す画像である。
図3】実施例2における本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたチャンバーにPBSを注いだ状態を示す画像である。
図4】製造例6における本実施形態のビトリゲル膜乾燥体とPETフィルムとを脱着させた様子を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪ビトリゲル膜乾燥体の製造方法≫
本実施形態のビトリゲル膜乾燥体の製造方法は、部材Aと部材Bとを用いる方法である。部材Aは、1以上の凹部を有する。この凹部の底面において、中心部はハイドロゲルに対する吸着性が低い第1の材料で構成され、周縁部はハイドロゲルに対する吸着性が高い第2の材料で構成されている。また、部材Bは、部材Aの凹部の横断面とほぼ同一の大きさの横断面の貫通孔を1以上有する。
また、本実施形態のビトリゲル膜乾燥体の製造方法は、以下の工程1〜工程7をこの順に備える。
工程1では、前記部材Aの前記凹部と前記部材Bの前記貫通孔とが重なるように同心状に配置させ、載置する。
工程2では、前記部材Bの前記貫通孔からゾルを注入する。
工程3では、前記ゾルが注入された前記部材A及び前記部材Bを静置して、前記ゾルをゲル化させる。
工程4では、前記工程3で得られたハイドロゲルを前記部材A及び前記部材B内に形成された状態で乾燥しガラス化させる。
工程5では、前記工程4で得られたハイドロゲル乾燥体を前記部材A及び前記部材B内に形成された状態で水和させる。
工程6では、前記工程5で得られたビトリゲルを前記部材A及び前記部材B内に形成された状態で乾燥し再度ガラス化させる。
工程7では、前記工程6で得られたビトリゲル乾燥体のうち前記部材Aの天面上をわずかに覆う部分を切り離す。
【0015】
本実施形態のビトリゲル膜乾燥体の製造方法によれば、簡便にしわのない平滑な面を有するビトリゲル膜乾燥体を製造することができる。
なお、本明細書において、「ゾル」とは、液体を分散媒とする分散質のコロイド粒子(サイズ:約1〜数百nm程度)が、特に高分子化合物で構成されるものを意味する。ゾルとしてより具体的には、天然物高分子化合物や合成高分子化合物の水溶液が挙げられる。そのため、これら高分子化合物が化学結合により架橋が導入されて網目構造をとった場合は、その網目に多量の水を保有した半固形状態の物質である、「ハイドロゲル」に転移する。すなわち、「ハイドロゲル」とは、ゾルをゲル化させたものを意味する。
また、「ビトリゲル」とは、従来のハイドロゲルをガラス化(vitrification)した後に再水和して得られる安定した状態にあるゲルのことを指し、発明者によって、「ビトリゲル(vitrigel)(登録商標)」と命名されている。なお、以下、用語「ビトリゲル」を用いる際には、用語「(登録商標)」を省略して用いる。
また、本明細書において、ハイドロゲルからなるビトリゲル膜乾燥体の製造工程を詳細に説明するにあたり、当該ガラス化工程の直後であり再水和の工程を経ていないハイドロゲルの乾燥体に対しては、単に「ハイドロゲル乾燥体」と称する。そして、当該ガラス化工程の後に再水和の工程を経て得られたゲルを「ビトリゲル」として区別して表し、そのビトリゲルをガラス化させて得られた乾燥体を「ビトリゲル乾燥体」と称する。また、ビトリゲル乾燥体に紫外線照射する工程を施して得られるものを「ビトリゲル乾燥体に紫外線照射処理を施したビトリゲル材料」と称し、該ビトリゲル材料に再水和する工程を施して得られるゲルを「ビトリゲル材料」と称し、ビトリゲル材料を乾燥させて得られた乾燥体を「ビトリゲル材料の乾燥体」と称する。従って、「ビトリゲル」及び「ビトリゲル材料」は水和体である。
本実施形態のビトリゲル膜乾燥体の製造方法の各工程について、以下に詳細を説明する。
【0016】
<工程1>
まず、部材Aの上に部材Bを載置する。このとき、部材Aの凹部と部材Bの貫通孔とが重なるように同心状に配置させる。部材Aの凹部と部材Bの貫通孔とが重なり、連通することで、続く工程2において、部材Bの貫通孔を通して部材Aの凹部にゾルを注入することができる。
次いで、各部材の構成及び材料について、以下に示す。
【0017】
[部材A]
(形状)
部材Aは、1以上の凹部を有する。この凹部内に、ビトリゲル膜乾燥体が製造される。
部材Aの凹部は、平滑な面を有するビトリゲル膜乾燥体が得られることから、底面が平滑であり、且つ、側面と底面とが互いに垂直になっているものである。
また、凹部の横断面の面積としては、所望の大きさのビトリゲル膜乾燥体となるような大きさとすることができ、特別な限定はない。凹部の横断面の面積としては、具体的には、例えば4mm以上400cm以下とすることができ、例えば20mm以上40cm以下とすることができ、例えば80mm以上4cm以下とすることができる。
【0018】
凹部の数は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、凹部の数は、偶数であることが好ましく、2、4、6又は8であることがより好ましく、4、6又は8であることがさらに好ましい。
また、部材Aにおいて凹部を2以上有する場合、凹部は部材A上において、等間隔に配置されていることが好ましい。
【0019】
また、部材Aにおいて、凹部の深さは、ビトリゲル膜乾燥体の厚さが所望の厚さとなるように適宜調整することができ、1μm以上5mm以下であることが好ましく、5μm以上3mm以下であることがより好ましく、10μm以上2mm以下であることがさらに好ましく、100μm以上1mm以下であることが特に好ましい。凹部の深さが上記範囲であることにより、例えば、本実施形態の製造方法により得られたビトリゲル膜乾燥体を細胞封入用デバイスに使用した場合に、当該デバイス内に細胞を注入し、培養することが可能な強度とすることができる。
【0020】
また、部材Aにおいて、凹部の横断面の形状は、ビトリゲル膜乾燥体の形状が所望の形状となるように適宜調整することができ、例えば、三角形、四角形(正方形、長方形、台形含む)、五角形、六角形、七角形、八角形等の多角形;円形、楕円形、略円形、楕円形、略楕円形、半円形、扇形等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、凹部の横断面の形状は、円形であることが好ましい。
【0021】
また、部材Aにおいて、凹部の横断面が円形である場合、その径は、ビトリゲル膜乾燥体の径が所望の径となるように適宜調整することができ、例えば2mm以上226mm以下とすることができ、例えば5mm以上72mm以下とすることができ、例えば10mm以上23mm以下とすることができる。
【0022】
(材料)
また、部材Aを構成する材料としては、凹部の底面において、中心部はハイドロゲルに対する吸着性が低い第1の材料で構成され、周縁部はハイドロゲルに対する吸着性が高い第2の材料で構成されている。また、凹部の底面の中心部以外の部分は全て第2の材料で構成されていてもよい。
ここで、「凹部の底面の中心部」とは、底面の中心から最短の縁部までの距離のうち、例えば9/10、好ましくは4/5、より好ましくは3/4、さらに好ましくは2/3、特に好ましくは1/2までの位置を意味する。また、「凹部の底面の周縁部」とは、前記凹部の底面の中心部を取り囲む部分を意味する。
【0023】
本明細書において、「ハイドロゲルに対する吸着性が低い材料」とは、ハイドロゲルが全く吸着しない材料又は脱着可能な程度の弱い力で吸着する材料を意味する。
また、本明細書において、「ハイドロゲルに対する吸着性が高い材料」とは、ハイドロゲルが完全に吸着する材料又は脱着できない程度の強い力で吸着する材料を意味する。
具体的には、以下に示すとおり定義することができる。
まず、ハイドロゲルと第1の材料又は第2の材料とを接触させて、第1の材料又は第2の材料の表面上のハイドロゲルを水平方向から観察したときに、ハイドロゲルの輪郭曲線と第1の材料表面又は第2の材料との交点を「端点」とすると、端点において接触角θが測定される。このとき、端点には、第1の材料又は第2の材料の表面張力(気体/第1の材料又は第2の材料間の界面張力)γS1又はγS2、ハイドロゲル/第1の材料又は第2の材料間の界面張力γLS1又はγLS2、及び、ハイドロゲルの表面張力(気体/ハイドロゲル間の界面張力)γLが働く。ぬれの状態が安定しているとき、端点は右左に動かず静止するため、これら「γS1、γLS1、及び、γL」、又は、「γS2、γLS2、及び、γL」のそれぞれ3つの力はつり合っていることになる。これらの3つの力のつり合いは、以下の[1]又は[2]で表される式(Youngの式)で示される。
γS1=γLcosθ+γLS1 ・・・[1]
γS2=γLcosθ+γLS2 ・・・[2]
【0024】
また、ぬれ性、すなわち接触角の大小は、ハイドロゲル及び第1の材料又は第2の材料それぞれの表面特性によって決まることになる。よって、上記式[1]を変形した以下の[3]で表される式、又は、上記式[2]を変形した以下の[4]で表される式で考えることができる。
cosθ=(γS1−γLS1)/γL ・・・[3]
cosθ=(γS2−γLS2)/γL ・・・[4]
【0025】
cosθが小さくなって0に近づくということは、接触角θが180°に近づき、ぬれが悪くなる、すなわちハイドロゲルに対する吸着性が低くなることを意味する。このことから、ハイドロゲルに対する吸着性を低くするための方法としては、「(1)ハイドロゲルの表面張力γLを大きくする」、又は、「(2)第1の材料の表面張力γS1を小さくする」のいずれかの方法が挙げられる。
【0026】
一方、cosθが大きくなって1に近づくということは、接触角θが0°に近づき、ぬれが良くなる、すなわちハイドロゲルに対する吸着性が高くなることを意味する。このことから、ハイドロゲルに対する吸着性を高くするための方法としては、「(1)ハイドロゲルの表面張力γLを小さくする」、又は、「(2)第2の材料の表面張力γS2を大きくする」のいずれかの方法が挙げられる。
【0027】
ハイドロゲルの表面張力は、得られる膜の強度を一定とするために、可変できる領域が限られている。そのため、ハイドロゲルに対する吸着性を低くする場合には、「(2)第1の材料の表面張力γS1を小さくする」方法が好適である。一方、ハイドロゲルに対する吸着性を高くする場合には、「(2)第2の材料の表面張力γS2を大きくする」方法が好適である。
【0028】
以上のことから、ハイドロゲルに対する吸着性が低い材料とは、ハイドロゲルの表面張力よりも表面張力が小さい材料を意味する。より具体的には、第1の材料の表面張力がハイドロゲルの表面張力よりも、例えば1dynes/cm以上、好ましくは5dynes/cm以上、より好ましくは10dynes/cm以上、さらに好ましくは20dynes/cm以上、特に好ましくは30dynes/cm以上小さくすることができる。
第1の材料の表面張力がハイドロゲルの表面張力よりも上記下限値以上小さいことにより、製造されたビトリゲル膜乾燥体を第1の材料から容易に引き剥がすことができる。
【0029】
また、ハイドロゲルに対する吸着性が高い材料とは、ハイドロゲルの表面張力よりも表面張力が大きい材料を意味する。より具体的には、第2の材料の表面張力がハイドロゲルの表面張力よりも、例えば1dynes/cm以上、好ましくは3dynes/cm以上、より好ましくは5dynes/cm以上、さらに好ましくは7dynes/cm以上、特に好ましくは10dynes/cm以上大きい。
第2の材料の表面張力がハイドロゲルの表面張力よりも上記下限値以上大きいことにより、後述の工程7の後に、製造されたビトリゲル膜乾燥体が意図に反して剥がれること、又は、移動することを抑制することができる。
【0030】
また、ハイドロゲルがコラーゲン等のタンパク質を含むゲルである場合、ハイドロゲルに対する吸着性が低い材料とは親水性基を表面上に多く有する材料であってもよく、ハイドロゲルに対する吸着性が高い材料とは疎水性基を表面上に多く有する材料であってもよい。前記親水性基及び前記疎水性基の表面上に有する数は、使用するタンパク質を含むハイドロゲルの種類に応じて、適宜調整することができる。
前記親水性基としては、例えば、ホスホリルコリン基、アルキレングリコール基等が挙げられる。
前記疎水性基としては、例えば、直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、例えば1以上20以下であり、例えば4以上20以下である。
【0031】
前記第1の材料として具体的には、例えば、ステンレス鋼、ポリ(塩化ビニル)等が挙げられ、これらに限定されない。
また、第1の材料としては、例えば、シリコン等の剥離剤が積層されたフィルムであってもよい。ビトリゲル膜乾燥体と当該フィルムの剥離剤層が積層された面とが接するように、ビトリゲル膜乾燥体を製造することで、容易にビトリゲル膜乾燥体を引き剥がすことができる。前記フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリスチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、特別な限定はない。
また、第1の材料としては、例えば、シリコン等のオイルを部材Aの底面上に塗布してなるオイル被膜であってもよい。
【0032】
前記第2の材料として具体的には、例えば、ガラス材料、ポリアクリレート(アクリル樹脂)、ポリスチレン、ナイロン等が挙げられ、これらに限定されない。
前記ガラス材料としてより具体的には、例えば、ソーダ石灰ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、バイコール(登録商標)ガラス、石英ガラス等が挙げられる。
前記ポリアクリレート(アクリル樹脂)としてより具体的には、例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)等が挙げられる。
また、凹部の底面の中心部以外の部分が全て上記例示した第2の材料で構成されていてもよい。
【0033】
また、前記第1の材料は、部材Aの凹部の底面において、脱着可能に載置されていてもよい。このとき、第1の材料は物理的な引き剥がしによって、簡単に脱着可能な程度の弱い力で、部材Aの凹部の底面を構成する材料に接着されていることが好ましい。具体的には、例えば、後述の製造例に示すように、第1の材料はPBS等の塩を介して、ピンセット等による物理的な引き剥がしによって簡単に脱着可能な程度の弱い力で、部材Aの凹部の底面を構成する材料に接着されていてもよい。又は、第1の材料はシリコン等の剥離剤を含有する剥離剤層を介して、ピンセット等による物理的な引き剥がしによって簡単に脱着可能な程度の弱い力で、部材Aの凹部の底面を構成する材料に接着されていてもよい。
このとき、第1の材料の下に存在する部材Aの凹部の底面を構成する材料としては、上述の第2の材料と同様のものが挙げられる。
【0034】
[部材B]
(形状)
部材Bは、1以上の貫通孔を有する。この貫通孔は、部材Aの凹部の横断面とほぼ同一の大きさである。具体的には、貫通孔の横断面の面積は、部材Aの凹部の横断面の面積に対して好ましくは1倍以上1.5倍以下、より好ましくは1倍以上1.3倍以下、さらに好ましくは1倍以上1.25倍以下、特に好ましくは1.21倍である。
貫通孔の数は、部材Aの凹部の数と同じ数であることが好ましく、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、貫通孔の数は、偶数であることが好ましく、2、4、6又は8であることがより好ましく、4、6又は8であることがさらに好ましい。
また、部材Bにおいて貫通孔を2以上有する場合、貫通孔は部材B上において、等間隔に配置されていることが好ましい。
また、部材Bにおいて貫通孔を2以上有する場合、貫通孔は部材B上において、部材A上の凹部と同じ間隔で配置されている。
また、部材Aと部材Bとを同心状に配置させたときに、部材Bの貫通孔は、部材Aの凹部と重なるように配置されている。
【0035】
また、部材Bにおいて、貫通孔の高さは、特別な限定はなく、例えば1μm以上100mm以下とすることができ、例えば1μm以上50mm以下とすることができ、例えば5μm以上10mm以下とすることができ、例えば10μm以上5mm以下とすることができる。
【0036】
また、部材Bにおいて、貫通孔の横断面の形状は、部材Aの凹部の横断面と同一とすることができ、例えば、三角形、四角形(正方形、長方形、台形含む)、五角形、六角形、七角形、八角形等の多角形;円形、楕円形、略円形、楕円形、略楕円形、半円形、扇形等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、貫通孔の横断面の形状は、円形であることが好ましい。
【0037】
また、部材Bにおいて、貫通孔の横断面が円形である場合、その径は、部材Aの凹部の径とほぼ同一とすることができ、例えば2mm以上226mm以下とすることができ、例えば5mm以上72mm以下とすることができ、例えば10mm以上23mm以下とすることができる。
【0038】
(材料)
また、部材Bの材料としては、特別な限定はなく、取扱いやすさから、部材Aを構成する第2の材料と同じものであることが好ましい。部材Bの材料としては、上述の部材Aの第2の材料として例示されたものと同じものが挙げられる。
【0039】
<工程2>
次いで、部材Bの貫通孔から、部材Aの凹部にゾルを注入する。
前記ゾルとしては、例えば、ゲル化する細胞外マトリックス由来成分、フィブリン、寒天、アガロース、セルロース等の天然高分子化合物、及びポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、poly(II−hydroxyethylmethacrylate)/polycaprolactone等の合成高分子化合物が包含される。
前記ゲル化する細胞外マトリックス由来成分としては、例えば、コラーゲン(I型、II型、III型、V型、XI型等)、マウスEHS腫瘍抽出物(IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン等を含む)より再構成された基底膜成分(商品名:マトリゲル)、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、ゼラチン等が挙げられ、これらに限定されない。それぞれのゲル化に至適な塩等の成分、その濃度、pH等を選択し所望のビトリゲル膜乾燥体を製造することが可能である。また、原料を組み合わせることで、様々な生体内組織を模倣したビトリゲル膜乾燥体を得ることができる。
中でも、ゾルとしては、ゲル化する細胞外マトリックス由来成分が好ましく、コラーゲンがより好ましい。また、コラーゲンの中でもより好ましい原料としては、ネイティブコラーゲン又はアテロコラーゲンを例示できる。
【0040】
前記ゾルがコラーゲンゾルである場合、コラーゲンゾルは至適な塩濃度を有するものとして、例えば、生理食塩水、PBS(Phosphate Buffered Saline)、HBSS(Hank’s Balanced Salt Solution)、基礎培養液、無血清培養液、血清含有培養液等を用いて、調製したものを用いることができる。また、コラーゲンのゲル化の際の溶液のpHは、例えば6以上8以下とすることができる。
特に無血清培養液を用いる場合、他動物血清成分中に含まれる移植に適さない物質(例えば、抗原、病原因子等)がビトリゲル膜乾燥体に含まれることを回避できる。そのため、無血清培養液を用いて得られたビトリゲル膜乾燥体は、医療用細胞移植デバイスに好適に用いられる。
【0041】
また、ビトリゲル膜乾燥体を作製するためのコラーゲンゾルの濃度は、0.1%以上1.0%以下であることが好ましく、0.2%以上0.6%以下であることがより好ましい。コラーゲンゾルの濃度が上記下限値以上であることにより、ゲル化が弱すぎず、また、コラーゲンゾルの濃度が上記上限値以下であることにより、均一なコラーゲンゲルからなるビトリゲル膜乾燥体を得ることができる。
また、コラーゲンゾルの調製は例えば4℃程度で行えばよい。
【0042】
<工程3>
次いで、ゾルが注入された部材A及び部材Bを静置して、ゾルをゲル化させる。
ゾルを保温する温度は、用いるゾルの種類に応じて適宜調整することができる。例えば、ゾルがコラーゲンゾルである場合、ゲル化する際の保温は、用いるコラーゲンの動物種に依存したコラーゲンの変性温度より低い温度とすることができ、一般的には20℃以上37℃以下の温度で保温することで数分から数時間でゲル化を行うことができる。
【0043】
<工程4>
次いで、得られたハイドロゲルを部材A及び部材B内に形成された状態で乾燥し、ガラス化させる。
ハイドロゲルを乾燥させることにより、ハイドロゲル内の自由水を完全に除去し、さらに結合水の部分除去を進行させることができる。
このガラス化工程(ハイドロゲル内の自由水を完全に除去した後に、結合水の部分除去を進行させる工程)の期間を長くするほど、再水和した際には透明度、強度に優れたビトリゲルを得ることができる。なお、必要に応じて短期間のガラス化後に再水和して得たビトリゲルをPBS等で洗浄し、再度ガラス化することもできる。
【0044】
乾燥方法としては、例えば、風乾、密閉容器内で乾燥(容器内の空気を循環させ、常に乾燥空気を供給する)、シリカゲルを置いた環境下で乾燥する等、種々の方法を用いることができる。例えば、風乾の方法としては、10℃、40%湿度で無菌に保たれたインキュベーターで2日間乾燥させる、若しくは、無菌状態のクリーンベンチ内で一昼夜、室温で乾燥する等の方法を例示することができる。
【0045】
<工程5>
次いで、得られたハイドロゲル乾燥体を部材A及び部材B内に形成された状態で水和させる。このとき、生理食塩水、PBS(Phosphate Buffered Saline)等を用いて、水和させることができる。
【0046】
<工程6>
次いで、得られたビトリゲルを部材A及び部材B内に形成された状態で乾燥し、再度ガラス化させる。
乾燥方法としては、上述の工程4で例示された方法と同様の方法が挙げられる。
【0047】
<工程7>
次いで、得られたビトリゲル乾燥体を、例えば筒状のブレード(薄い刃)等を用いて、ビトリゲル乾燥体のうち前記部材Aの天面上をわずかに覆う部分を切り離す。このとき、部材Bの内側面に沿って筒状のブレードを打ち込み、部材Aの天面上をわずかに覆っているビトリゲル乾燥体を切断する。これにより、横断面の大きさがほぼ均一なビトリゲル乾燥体が形成できる。
前記筒状のブレードの横断面は、部材Aの凹部の横断面より僅かに大きく、また部材Bの貫通孔の横断面より僅かに小さい大きさとすることができる。具体的には、筒状のブレードの横断面の面積は、部材Aの凹部の横断面の面積に対して好ましくは1倍以上1.15倍以下、より好ましくは1倍以上1.1倍以下、さらに好ましくは1倍以上1.07倍以下、特に好ましくは1倍以上1.05倍以下である。
【0048】
また、筒状のブレードの高さは、部材A及び部材Bに差し込むことができ、且つ、製造されたビトリゲル膜乾燥体を切り離すことが可能な高さとすることができ、特別な限定はない。
【0049】
また、筒状のブレードの横断面の形状は、部材Aの凹部の横断面と同一とすることができ、例えば、三角形、四角形(正方形、長方形、台形含む)、五角形、六角形、七角形、八角形等の多角形;円形、楕円形、略円形、楕円形、略楕円形、半円形、扇形等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、貫通孔の横断面の形状は、円形であることが好ましい。
【0050】
また、前記筒状のブレードの径は、筒状のブレードの横断面が円形である場合、その径は、部材Aの凹部の径とほぼ同一とすることができ、例えば2mm以上226mm以下とすることができ、例えば5mm以上72mm以下とすることができ、例えば10mm以上23mm以下とすることができる。
【0051】
また、例えば、2以上のビトリゲル膜乾燥体を同時に製造する場合において、部材Aの凹部の数に応じた数の前記筒状のブレードを備える部材Dであって、前記部材Aと前記部材Bと前記部材Dとを同心状に配置させたとき、部材Bの貫通孔を介して、部材Aの凹部と筒状のブレードとが重なるように筒状のブレードが配置された部材Dを用いて、部材Aの凹部内に製造された2以上のビトリゲル膜乾燥体を一度に切り離してもよい。
【0052】
<その他の工程>
また、得られたビトリゲル乾燥体は、工程6の後であって工程7の前に、部材A及び部材B内に形成された状態で、又は、工程7の後に、部材A及び部材Bから取り出された状態で、紫外線を照射して、ビトリゲル乾燥体に紫外線照射処理を施したビトリゲル材料としてもよい。
紫外線の照射には、公知の紫外線照射装置を使用することができる。
ビトリゲル乾燥体への紫外線の照射エネルギーは、単位面積あたりの総照射量が、0.1mJ/cm以上6000mJ/cm以下であることが好ましく、10mJ/cm以上4000mJ/cm以下であることがより好ましく、100mJ/cm以上3000mJ/cm以下であることがさらに好ましい。総照射量が上記の範囲であることにより、さらに再水和の工程で得られるビトリゲル材料の透明度及び強度を特に好ましいものとすることができる。
【0053】
また、ビトリゲル乾燥体への紫外線の照射は、複数回繰り返し行ってもよい。ビトリゲル乾燥体への紫外線の照射を繰り返す場合、1度目の紫外線の照射を行った後に、ビトリゲル乾燥体に紫外線照射処理を施したビトリゲル材料の再水和及び再ガラス化の工程を行い、その後2度目以降の再ガラス化後のビトリゲル材料の乾燥体への紫外線の照射を行うことが好ましい。
単位面積あたりの紫外線総照射量が同一であるとき、ビトリゲル乾燥体への紫外線の照射を、複数回に分割して繰り返して行うことで、さらに再水和して得られるビトリゲル材料の透明度及び強度をより高めることができる。また分割の回数は多いほど好ましい。例えば、ビトリゲル乾燥体への紫外線の照射の単位面積あたりの総照射量が、1000mJ/cm以上4000mJ/cm以下の範囲であるとき、該範囲内での照射回数が2回以上10回以下であることが好ましく、2回以上6回以下であることがより好ましい。
また、ビトリゲル乾燥体への紫外線の照射を繰り返す場合、紫外線の照射部位を、ビトリゲル乾燥体の一方の面と他方の面(上面と下面)とに分けて照射して、その総照射量を、ビトリゲル乾燥体への単位面積あたりの紫外線総照射量としてもよい。
【0054】
紫外線の照射を、ビトリゲル乾燥体に行うことで、さらに再水和して得られるビトリゲル材料の強度と透明度が高まることは、ビトリゲル材料内の高分子化合物同士が、紫外線によって架橋されるからであると考えられる。つまり、当該操作により、高い透明度及び強度をビトリゲル材料に維持させることができると考えられる。
【0055】
さらに、得られたビトリゲル乾燥体に紫外線照射処理を施したビトリゲル材料を水和することで、ビトリゲル材料としてもよい。このとき、生理食塩水、PBS(Phosphate Buffered Saline)等を用いて、水和させることができる。
【0056】
さらに、得られたビトリゲル材料を乾燥することで、再ガラス化させて、ビトリゲル材料の乾燥体としてもよい。
乾燥方法としては、上述の工程4で例示された方法と同様の方法が挙げられる。
【0057】
本実施形態のビトリゲル膜乾燥体の製造方法により得られるビトリゲル膜乾燥体は、例えば、ビトリゲル膜乾燥体を備えるチャンバー、細胞封入用デバイス、又は、前記ビトリゲル膜乾燥体を備えるフィルムを利用した貼付型人工皮膚製剤等に利用することができる。
【0058】
≪ビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法≫
・第1実施形態
本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法は、上記実施形態に係るビトリゲル膜乾燥体の製造方法により得られたビトリゲル膜乾燥体を用いてビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスを製造する方法である。
また、本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法は、上記部材A及び上記部材Bに加えて、さらに、部材Cを用いる方法である。部材Cは、凹部を1以上有する。この部材Cの凹部には、ビトリゲル膜乾燥体と接する側の面の周縁部に接着剤層を有する筒状部材が抜き差し可能にはめ込まれている。また、部材Cの凹部の横断面は、部材Aの凹部の横断面とほぼ同一の大きさである。
また、本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法は、以下の工程8及び工程9をこの順に備える方法である。
工程8では、ビトリゲル膜乾燥体が部材A及び部材B内に配置された状態で、部材Bを部材Aから離間させ、次いで、部材Cを、部材Aの凹部と部材Cの凹部とが重なるように同心状に配置させ、部材Cの上に部材Aを載置する。
工程9では、部材Aと部材Cとを離間させ、部材Aからビトリゲル膜乾燥体が接着された筒状部材を抜き出す。
【0059】
本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法によれば、前記ビトリゲル膜乾燥体の製造方法から連続的にビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスを製造することができる。
なお、本実施形態の製造方法より製造されるビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスとしては、例えば、ビトリゲル膜乾燥体を備えるチャンバー、細胞封入用デバイス等が挙げられ、これらに限定されない。
以下、本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法の各工程について、詳細を説明する。
【0060】
<工程8>
まず、上述の工程1〜工程7を経て得られたビトリゲル膜乾燥体を部材A及び部材B内に配置された状態で、部材Bを部材Aから離間させる。次いで、部材Cを部材Aの上に載置する。このとき、部材Aの凹部と部材Cの凹部とが重なるように同心状に配置させる。部材Aの凹部と部材Cの凹部とが重なることで、ずれることなく、接着剤層を介して、ビトリゲル膜乾燥体を筒状部材に接着させることができる。
ビトリゲル膜乾燥体及び筒状部材を接着させる時間及び環境は、接着剤層の組成に応じて、適宜選択することができる。
次いで、部材C及び筒状部材の構成及び材料について、以下に示す。
【0061】
[部材C]
(形状)
部材Cは、1以上の凹部を有する。また、部材Cの凹部には、筒状部材が抜き差し可能にはめ込まれている。
部材Cの凹部は、後述する筒状部材を抜き差し可能にはめ込める形状とすることができる。具体的には、部材Cの凹部の底面が平滑であってもよく、平滑でなくてもよい。また、部材Cの凹部において側面と底面とが互いに垂直になっていてもよく、垂直になっていなくてもよい。
【0062】
部材Cの凹部の横断面は、部材Aの凹部の横断面とほぼ同一の大きさである。具体的には、凹部の横断面の面積は、部材Aの凹部の横断面の面積に対して好ましくは1.0倍以下、より好ましくは0.9倍以下、さらに好ましくは0.8倍以下、特に好ましくは0.75倍である。
【0063】
部材Cの凹部の数は、部材Aの凹部の数と同じ数であることが好ましく、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、部材Cの凹部の数は、偶数であることが好ましく、2、4、6又は8であることがより好ましく、4、6又は8であることがさらに好ましい。
また、部材Cにおいて凹部を2以上有する場合、凹部は部材C上において、等間隔に配置されていることが好ましい。
また、部材Cにおいて凹部を2以上有する場合、凹部は部材C上において、部材A上の凹部と同じ間隔で配置されている。
また、部材Aと部材Cとを同心状に配置させたときに、部材Cの凹部は、部材Aの凹部と重なるように配置されている。
【0064】
また、部材Cにおいて、凹部の高さは、特別な限定はなく、はめ込まれる筒状部材の高さに応じて適宜調整することができる。
【0065】
また、部材Cにおいて、凹部の横断面の形状は、部材Aの凹部の横断面と同一とすることができ、例えば、三角形、四角形(正方形、長方形、台形含む)、五角形、六角形、七角形、八角形等の多角形;円形、楕円形、略円形、楕円形、略楕円形、半円形、扇形等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、部材Cの凹部の横断面の形状は、円形であることが好ましい。
【0066】
また、部材Cにおいて、凹部の横断面が円形である場合、その径は、部材Aの凹部の径とほぼ同一とすることができ、例えば2mm以上226mm以下とすることができ、例えば5mm以上72mm以下とすることができ、例えば10mm以上23mm以下とすることができる。
【0067】
(材料)
また、部材Cの材料としては、特別な限定はなく、取扱いやすさから、部材Aを構成する第2の材料と同じものであることが好ましい。部材Cの材料としては、上述の部材Aの第2の材料として例示されたものと同じものが挙げられる。
【0068】
[筒状部材]
(形状)
筒状部材の形状は、得られるデバイスの用途に応じて適宜選択することができる。形状としては、例えば、円柱、円錐、円錐台、角錐、角錐台、球、多面体(例えば、四面体、五面体、六面体(立方体含む)、八面体、十二面体、二十面体、二十四面体、ケプラー・ポアンソ立体等)等が挙げられ、これらに限定されない。
【0069】
筒状部材の横断面は、部材Aの凹部の横断面よりも小さくすることができる。具体的には、筒状部材の横断面の面積は、部材Aの凹部の横断面の面積に対して好ましくは0.5倍以上、より好ましくは0.6倍以上、さらに好ましくは0.7倍以上、特に好ましくは0.75倍である。
【0070】
筒状部材の外径は、部材Aの凹部の径よりも小さくすることができる。具体的には、筒状部材の外径は、部材Aの凹部の径に対して好ましくは0.7倍以上、より好ましくは0.8倍以上、さらに好ましくは0.85倍以上、特に好ましくは0.87倍である。
【0071】
筒状部材の高さは、得られるデバイスの用途に応じて適宜選択することができる。
例えば、細胞封入用デバイスを製造する場合には、筒状部材の高さは、5μm以上であって、50μm以上15mm以下であることが好ましく、100μm以上10mm以下であることがより好ましく、500μm以上2mm以下であることがさらに好ましい。
【0072】
(材料)
筒状部材の材料は、液密性を有するものとすることができる。また、筒状部材の材料は、通気性を有するものであってもよく、通気性を有さないものであってもよい。
筒状部材の材料が、通気性を有するものである場合、酸素透過係数が、例えば100cm/m・24hr・atm以上5000cm/m・24hr・atm以下とすることができ、例えば1000cm/m・24hr・atm以上3000cm/m・24hr・atm以下とすることができ、例えば1200cm/m・24hr・atm以上2500cm/m・24hr・atm以下とすることができる。さらに、二酸化炭素透過係数が、例えば1000cm/m・24hr・atm以上20000cm/m・24hr・atm以下とすることができ、例えば3000cm/m・24hr・atm以上15000cm/m・24hr・atm以下とすることができ、例えば5000cm/m・24hr・atm以上10000cm/m・24hr・atm以下とすることができる。
また、筒状部材の材料が通気性を有さないものである場合、酸素透過係数が例えば100cm/m・24hr・atm以下とすることができ、例えば50cm/m・24hr・atm以下とすることができる。さらに、二酸化炭素透過係数が、例えば1000cm/m・24hr・atm以下とすることができ、例えば500cm/m・24hr・atm以下とすることができる。
【0073】
また、筒状部材の材料としては、例えば、細胞を取り扱うためのデバイスを製造する場合には、細胞の培養に適した材料とすることができる。細胞の培養に適した材料として具体的には、例えば、ガラス材料、エラストマー材料、樹状ポリマー又はコポリマーを含むプラスチック等が挙げられ、これらに限定されない。ガラス材料としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、バイコール(登録商標)ガラス、石英ガラス等が挙げられる。エラストマー材料としては、例えば、ウレタンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム、シリコン樹脂(例えば、ポリジメチルシロキサン)、フッ素ゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ポリイソブチレンゴム等が挙げられる。樹状ポリマーとしては、例えば、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(酢酸ビニル−共−無水マレイン酸)、ポリ(ジメチルシロキサン)モノメタクリレート、環状オレフィンポリマー、フルオロカーボンポリマー、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。コポリマーとしては、例えば、ポリ(酢酸ビニル−共−無水マレイン酸)、ポリ(スチレン−共−無水マレイン酸)、ポリ(エチレン−共−アクリル酸)、及び、これらの誘導体等が挙げられる。
【0074】
また、筒状部材は、ビトリゲル膜乾燥体と接着する面に、接着剤層を有する。前記接着剤層を構成する接着剤としては、細胞毒性がないものを用いることができ、合成化合物の接着剤であってもよく、天然化合物の接着剤であってもよい。合成化合物の接着剤としては、例えば、ウレタン系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、リン酸カルシウム系接着剤、レジン系セメント等が挙げられる。天然化合物の接着剤としては、例えば、フィブリン糊、ゼラチン糊等が挙げられる。
また、接着剤層は、両面テープからなってもよい。前記両面テープとしては、細胞毒性がないものを用いることができ、医療用途にて用いられているもの等が好適に用いられる。具体的には、例えば、支持体の両面に粘着剤層が積層された構造を有し、前記粘着剤層がゴム系、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、ビニルエーテル系の公知の粘着剤からなるもの等が挙げられる。より具体的には、例えば、3Mジャパン社製の皮膚貼付用両面テープ(製品番号:1510、1504XL、1524等)、日東電工社製の皮膚用両面粘着テープ(製品番号:ST502、ST534等)、ニチバンメディカル社製の医療用両面テープ(製品番号:#1088、#1022、#1010、#809SP、#414125、#1010R、#1088R、#8810R、#2110R等)、DIC社製の薄型発泡体基材両面接着テープ(製品番号:#84010、#84015、#84020等)等が挙げられる。
【0075】
<工程9>
次いで、部材Aと部材Cとを離間させ、部材Aからビトリゲル膜乾燥体が接着された筒状部材を抜き出すことで、ビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスが得られる。
【0076】
・第2実施形態
本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法は、工程9の後に、さらに、以下の工程10〜工程12をこの順に備えてもよい。
工程10では、工程9で得られたビトリゲル膜乾燥体が接着された筒状部材を、ビトリゲル膜乾燥体が接着された面が底面と接するように第2の部材Cに抜き差し可能にはめ込む。次いで、筒状部材のビトリゲル膜乾燥体が接着されていない面の周縁部に接着剤層を形成する。
工程11では、まず、上記実施形態に係るビトリゲル膜乾燥体の製造方法により第2のビトリゲル膜乾燥体を得る。次いで、得られた第2のビトリゲル膜乾燥体が第2の部材A及び第2の部材B内に形成された状態で、第2の部材Bを第2の部材Aから離間させる。次いで、工程10で得られた第2の部材Cを、第2の部材Aの凹部と第2の部材Cの凹部とが重なるように同心状に配置させる。次いで、第2の部材Cのビトリゲル乾燥体が接着されていない面の接着剤層と第2の部材A内に形成された第2のビトリゲル乾燥体とが接するように、第2の部材Cの上に前記第2の部材Aを載置する。
工程12では、第2の部材Cと第2の部材Aとを離間させ、第2の部材Aからビトリゲル膜乾燥体が両面に接着された筒状部材を抜き出す。
工程8までは、上述の第1実施形態と同様である。続く工程10〜12について、以下に詳細を説明する。
【0077】
<工程10>
工程9で得られた、ビトリゲル膜乾燥体が筒状部材に接着されたデバイスを該ビトリゲル膜乾燥体が接着された面が底面と接するように第2の部材Cに抜き差し可能にはめ込む。なお、第2の部材Cは、上述の部材Cと同じものである。
次いで、筒状部材のビトリゲル膜乾燥体が接着されていない面の周縁部に接着剤層を形成する。
接着剤層の形成方法としては、例えば、接着剤を塗布する方法、又は、両面テープを貼付する方法等が挙げられ、これらに限定されない。前記接着剤及び前記両面テープとしては、上述の工程8で例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0078】
<工程11>
次いで、上記実施形態に係るビトリゲル膜乾燥体の製造方法を用いて、第2の部材A上に第2のビトリゲル膜乾燥体を製造する。次いで、得られた第2のビトリゲル膜乾燥体が第2の部材A及び第2の部材B内に形成された状態で、第2の部材Bを第2の部材Aから離間させる。なお、第2の部材A及び第2の部材Bは、上述の部材A及び上述の部材Bと同じものである。
次いで、第2の部材Cの上に第2の部材Aを載置する。このとき、第2の部材Cには、筒状部材が抜き差し可能にはめ込まれている。この筒状部材は、ビトリゲル膜乾燥体が接着されていない面の周縁部に接着剤層を有する。また、筒状部材の接着剤層を有する面と反対側の面にビトリゲル膜乾燥体を有する。また、第2の部材Aの凹部と第2の部材Cの凹部とが重なるように同心状に配置させる。第2の部材Cの凹部と第2の部材Aの凹部とが重なることで、ずれることなく、接着剤層を介して、ビトリゲル膜乾燥体を筒状部材に接着させることができる。ビトリゲル膜乾燥体及び筒状部材を接着させる時間及び環境は、接着剤層の組成に応じて、適宜選択することができる。
【0079】
<工程12>
次いで、第2の部材Cと第2の部材Aとを離間させ、第2の部材Aから両面にビトリゲル膜乾燥体が接着された筒状部材を抜き出すことで、両面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスが得られる。
【0080】
≪ビトリゲル膜乾燥体の製造装置≫
本実施形態のビトリゲル膜乾燥体の製造装置は、部材Aと部材Bとを備える。
部材Aは、1以上の凹部を有する。この凹部の底面において、中心部はハイドロゲルに対する吸着性が低い第1の材料で構成され、周縁部はハイドロゲルに対する吸着性が高い第2の材料で構成されている。
部材Bは貫通孔を1以上有する。この貫通孔の横断面は、部材Aの凹部の横断面とほぼ同一の大きさである。
また、部材Aと部材Bとを同心状に配置した場合に、凹部と貫通孔とが重なるように配置されている。
【0081】
本実施形態のビトリゲル膜乾燥体の製造装置によれば、簡便にしわのない平滑な面を有するビトリゲル膜乾燥体を製造することができる。
【0082】
図1Aは、本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置の一例を示す平面図である。また、図1Bは、本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置の一例を示す正面図である。また、図1Cは、本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置の一例を示す斜視図である。
図1A図1Cにおいて、ビトリゲル膜乾燥体の製造装置(10)は、部材A(1)及び部材B(2)を備える。
部材A(1)は、1以上の凹部(1c)を有する。また、凹部(1c)の底面において、中心部はハイドロゲルに対する吸着性が低い第1の材料(1a)で構成されている。また、凹部(1c)に底面において、周縁部はハイドロゲルに対する吸着性が高い第2の材料(1b)で構成されている。
なお、部材Aにおける凹部の形状、並びに、第1の材料及び第2の材料等の詳細については、上述のビトリゲル膜乾燥体の製造方法において説明したとおりである。
【0083】
また、第1の材料(1a)は、凹部(1c)の底面において、脱着可能であってもよい。このとき、第1の材料(1a)は物理的な引き剥がしによって、簡単に脱着可能な程度の弱い力で、部材A(1)の凹部(1c)の底面を構成する材料に接着されていることが好ましい。具体的には、例えば、後述の製造例に示すように、第1の材料(1a)は、PBS等の塩を介して、ピンセット等による物理的な引き剥がしによって簡単に脱着可能な程度の弱い力で、部材A(1)の凹部(1c)の底面を構成する材料に接着させることができる。又は、第1の材料(1a)は、シリコン等の剥離剤を含有する剥離剤層を介して、ピンセット等による物理的な引き剥がしによって簡単に脱着可能な程度の弱い力で、部材A(1)の凹部(1c)の底面を構成する材料に接着させることができる。
このとき、第1の材料(1a)の下に存在する部材A(1)の凹部(1c)の底面を構成する材料としては、上述の第2の材料と同様のものが挙げられる。
【0084】
また、部材A(1)は、部材A(1)の凹部(1c)と部材B(2)の貫通孔(2a)とが重なるように部材A(1)と部材B(2)とを同心状に配置させるための位置決めピン(4)を有していてもよい。位置決めピン(4)を有することで、簡便に凹部(1c)と貫通孔(2a)とが重なるように部材A(1)と部材B(2)とを同心状に配置させることができる。
【0085】
また、部材B(2)は、1以上の貫通孔(2a)を有する。貫通孔(2a)の横断面は、凹部(1c)の横断面とほぼ同一の大きさである。具体的には、貫通孔(2a)の横断面の面積は、部材A(1)の凹部(1c)の横断面の面積に対して好ましくは1倍以上1.5倍以下、より好ましくは1倍以上1.3倍以下、さらに好ましくは1倍以上1.25倍以下、特に好ましくは1.21倍である。
なお、部材Bにおける貫通孔の形状及び部材Bの材料等の詳細については、上述の「ビトリゲル膜乾燥体の製造方法」において説明したとおりである。
また、部材B(2)は、部材A(1)の凹部(1c)と部材B(2)の貫通孔(2a)とが重なるように部材A(1)と部材B(2)とを同心状に配置させるための位置決めピンの受け側穴(2b)を有していてもよい。位置決めピンの受け側穴(2b)を有することで、簡便に凹部(1c)と貫通孔(2a)とが重なるように部材A(1)と部材B(2)とを同心状に配置させることができる。
【0086】
本実施形態のビトリゲル膜乾燥体の製造装置は、図1A図1Cに示すものに限定されず、本実施形態のビトリゲル膜乾燥体の製造装置の効果を損なわない範囲内において、図1A図1Cに示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
例えば、図1A図1Cにおいて、部材Aの凹部の横断面、及び、部材Bの貫通孔の横断面が円形のものを例示したが、これに限定されず、他の形状であってもよい。横断面の形状としては、上述のビトリゲル膜乾燥体の製造方法において例示されたものと同じものが挙げられる。
また、例えば、図1A図1Cにおいて、部材Aの凹部の数及び部材Bの貫通孔の数が6であるものを例示したが、これに限定されず、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20等、他の数であってもよい。
また、例えば、図1A図1Cにおいて、部材A及び部材Bの形状が円柱状のものを例示したが、これに限定されず、円錐台、角錐台、多面体(例えば、四面体、五面体、六面体(立方体含む)、八面体、十二面体、二十面体、二十四面体等の他の形状であってもよい。
【0087】
<その他の構成>
また、本実施形態のビトリゲル膜乾燥体の製造装置は、さらに、1以上の筒状のブレードを備える部材Dを備えていてもよい。筒状のブレードの数としては、部材Aの凹部の数に応じた数とすることができる。
部材Dにおいて、部材Aと部材Dとを同心状に配置させたとき、部材Aの凹部と筒状のブレードとが重なるように筒状のブレードが配置されている。この部材Dを用いることで、部材Aの凹部内に製造されたビトリゲル膜乾燥体を容易に切り離すことができる。
【0088】
≪ビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置≫
・第1実施形態
本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置は、上記実施形態に係るビトリゲル膜乾燥体の製造装置と、部材Cと、を備える。
部材Cは、凹部を1以上有する。この凹部の横断面は、部材Aの凹部の横断面とほぼ同一の大きさである。また、部材Cの凹部は、ビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの本体となる筒状部材を抜き差し可能にはめ込むためのものである。また、本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置において、部材Aと部材Cとを同心状に配置した場合に、部材Aの凹部と部材Cの凹部とが重なるように配置されている。
【0089】
本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置によれば、前記ビトリゲル膜乾燥体の製造装置から連続的にビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスを製造することができる。
【0090】
図1Aは、本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置の一例を示す平面図である。また、図1Bは、本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置の一例を示す正面図である。また、図1Cは、本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置の一例を示す斜視図である。
図1A図1Cにおいて、ビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置(100)は、ビトリゲル膜乾燥体の製造装置(10)及び部材C(3)を備える。ビトリゲル膜乾燥体の製造装置(10)は上述の「ビトリゲル膜乾燥体の製造装置」において説明したとおりである。
【0091】
部材C(3)は、1以上の凹部(3a)を有する。凹部(3a)の横断面は、部材A(1)の凹部(1c)の横断面とほぼ同一の大きさである。具体的には、凹部(3a)の横断面の面積は、凹部(1c)の横断面の面積に対して好ましくは1.0倍以下、より好ましくは0.9倍以下、さらに好ましくは0.8倍以下、特に好ましくは0.75倍である。
【0092】
なお、部材Cにおける凹部の形状及び部材Cの材料等の詳細については、上述のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法において説明したとおりである。
また、部材C(3)は、部材A(1)の凹部(1c)と部材C(3)の凹部(3a)とが重なるように部材A(1)と部材C(3)とを同心状に配置させるための位置決めピンの受け側穴(3b)を有していてもよい。位置決めピンの受け側穴(3b)を有することで、簡便に凹部(1c)と凹部(3a)とが重なるように部材A(1)と部材C(3)とを同心状に配置させることができる。
【0093】
また、部材C(3)の凹部(3a)は、ビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの本体となる筒状部材(5)を抜き差し可能にはめ込むことができる。これにより、製造されたビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスを簡便に取り出すことができる。
なお、筒状部材の形状及び材料等の詳細については、上述の「ビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法」において説明したとおりである。
【0094】
・第2実施形態
本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置は、2以上の上記実施形態に係るビトリゲル膜乾燥体の製造装置を備えてもよい。
【0095】
本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置は、2以上の前記ビトリゲル膜乾燥体の製造装置を備える以外は、上述の第1実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置と同様の構成である。
ビトリゲル膜乾燥体の製造装置を2以上備えることで、両面にビトリゲル乾燥体が接着されたデバイスを簡便に製造することができる。
ビトリゲル膜乾燥体の製造装置の数としては、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20等が挙げられ、これに限定されない。中でも、ビトリゲル膜乾燥体の製造装置の数としては、2つの面のビトリゲル膜乾燥体の同時に製造できることができことから、偶数であることが好ましい。
【実施例】
【0096】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0097】
[製造例1]ネイティブコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の製造1
(1)製造装置の準備
ビトリゲル膜乾燥体を製造するために、図1A図1Cに示す製造装置(岸本工業社製、アクリル樹脂製)を用いた。具体的には、厚さ10mmの部材A(凹部:深さ1.0mm、直径15.0mmの円形底面)、厚さ5mmの部材B(貫通孔:直径16.5mmの円形)及び厚さ5mmの部材C(凹部:深さ0.75mm、直径13.03mmの円形底面)を用いた。また、コラーゲンビトリゲルに対する吸着性が低い材料として、ポリ塩化ビニルフィルム(ユニパック社製、AS ONE 6−633−25、厚さ0.08mm)を用いた。まず、打ち抜き機を用いて、ポリ塩化ビニルフィルムをφ13mmの円形に打ち抜いた。次いで、得られた円形状のポリ塩化ビニルフィルムを70%エタノール溶液が入ったφ60mmのペトリディッシュに入れ、10分間浸漬して殺菌した。10分後、70%エタノール溶液を取り除き、PBSを添加して洗浄した。洗浄を3回繰り返した。
【0098】
次いで、70%エタノール溶液をアクリル樹脂製の部材Aと部材Bとに吹き付けて殺菌し、クリーンベンチ内で乾燥させた。次いで、ポリ塩化ビニルフィルムの片側の面に両面テープ(スコッチ社製、厚さ0.065mm)を貼付し、両面テープが貼付された面と、部材Aの凹部の底面とを接着させた。部材Aの6つのウェル全てに同様にしてポリ塩化ビニルフィルムを接着させた。
【0099】
次いで、部材Aと部材Bとを位置決めピンを用いて重ね合せた。次いで、部材Aと部材Bとを押さえながら、周囲にパラフィルム(登録商標)を巻き付けて、2個の重石(岸本工業社製、50t×25×25、約260g)を部材Bの上にのせた。
【0100】
(2)コラーゲンゾルの調製
氷上でウシ血清含有培養液2mLを50mLコニカルチューブに分注した。次いで、ウシ由来ネイティブコラーゲン溶液(高研社製、I−AC、コラーゲン濃度0.5質量%)2mLを添加し、3回ピペッティングを行い、均一なコラーゲンゾルを調製した。用いたウシ血清含有培養液は、以下に示す組成であった。
ウシ血清含有培養液:ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium;DMEM)(GIBCO社製、Cat.No.11885−084)
+非働化ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum;FBS)(SIGMA社製、F2442)
+20mM HEPES(GIBCO社製、Cat.No.15630−080)
+100units/mLペニシリン+100μg/mLストレプトマイシン(GIBCO社製、Cat.No.15140−148)
【0101】
(3)コラーゲンゾルの注入
次いで、部材Bの貫通孔から部材Aの底面に接着されたポリ塩化ビニルフィルム上にコラーゲンゾル800μLを注入し、ウェル全体にコラーゲンゾルを行き渡らせた後、440μLを抜いて、ウェル内に360μLのコラーゲンゾルが残るようにした。次いで、重石を動かしながら、6ウェル全てについて6回同じ操作を繰り返し行った。
【0102】
(4)コラーゲンのゲル化
次いで、(3)でコラーゲンゾルが注入された部材を37℃に設定した5%二酸化炭素濃度のインキュベーター内にて2時間保管し、ゲル化させた。ゲル化後、重石を外した。
【0103】
(5)コラーゲンゲルのガラス化(コラーゲンゲル乾燥体の製造)
次いで、ゲル化後、10℃、40%湿度に設定した恒温恒湿機庫内にて風を吹きかけて乾燥させて、ガラス化させて、コラーゲンゲル乾燥体を得た。
【0104】
(6)コラーゲンゲル乾燥体の再水和(ビトリゲルの製造)
次いで、ガラス化後、恒温恒湿機庫から取り出し、再び重石を部材Bの上にのせた。次いで、部材Bの貫通孔からPBSを1mL添加し、10分間静置し、再水和させた(PBS添加1回目)。10分後、PBSを除去し、部材Bの貫通孔から再びPBSを1mL添加し、10分間静置した(PBS添加2回目)。再度同じ操作を行い(PBS添加3回目)、PBSを除去し、再水和を完了させた。
【0105】
(7)ビトリゲルの再ガラス化(ビトリゲル乾燥体の製造)
再水和後、10℃、40%湿度に設定した恒温恒湿機庫内にて風を吹きかけて乾燥させて、再ガラス化させて、ビトリゲル乾燥体を得た。
【0106】
(8)ビトリゲル乾燥体の打ち抜き
次いで、再ガラス化後、恒温恒湿機庫から取り出し、打ち抜き刃(森下製版社製、φ15.4mm)を用いて、ビトリゲル乾燥体のうち部材Aの天面上に覆われた部分を切断した。次いで、打ち抜き刃により切断されていることを確認し、部材Aから部材Bを外して、部材A上にビトリゲル膜乾燥体を製造した。
【0107】
[製造例2]ネイティブコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を備えた細胞封入用デバイスの製造1
(1)ビトリゲル膜乾燥体の製造1
製造例1の(1)〜(8)と同様の方法を用いて、部材A上にビトリゲル膜乾燥体を製造した。
【0108】
(2)筒状部材の準備
滅菌水40mLを50mLコニカルチューブに加えた。次いで、細胞封入用デバイスの本体となる筒状部材として、ポリスチレン製リング(岸本工業社製、内径φ7.98mm、外径φ13mm、厚さ2.0mm)を加えて、振盪機(NISSIN社製、RECIPRO SHAKER)の上で、10分間振盪させて洗浄した。洗浄後、滅菌水を除去し、新しい滅菌水を40mL加えて、同様の操作を3回繰り返した。次いで、70%エタノール溶液40mLを50mLコニカルチューブに加え、そこに滅菌水で洗浄したリングを投入し、振盪機(NISSIN社製、RECIPRO SHAKER)の上で、3分間振盪させて殺菌した。
【0109】
(3)筒状部材への接着剤の塗布及び部材Cへの装着1
まず、70%エタノール溶液をアクリル樹脂製の部材Cに吹き付けて殺菌し、クリーンベンチ内で乾燥させた。次いで、200μLロングチップを用いて接着剤を適量とり、リングの周縁部にポリウレタン系接着剤(セメダイン社製、UM700)を塗り広げた。次いで、リングの接着剤が塗布されていない面と部材Cの底面とが接するように、リングを部材Cに抜き差し可能な状態で装着した。
【0110】
(4)筒状部材とビトリゲル膜乾燥体との接着1
次いで、リングが装着された部材Cの上に、(1)で得られたビトリゲル膜乾燥体が製造された状態の部材Aを、リングの接着剤が塗布された面とビトリゲル膜乾燥体とが接するように、位置決めピンを用いて重ね合せた。次いで、重石を部材Aの上に乗せて、1日クリーンベンチ内に静置して接着剤を乾燥させた。
【0111】
(5)部材Cの取り外し1
乾燥開始から1日後、乾いていることを確認し、部材Cが上にくるように反転させて、部材Cを取り外した。次いで、ピンセットを用いて、横から押しずらすようにして、ビトリゲル膜乾燥体が接着されたリングを部材Aのウェルの底面からゆっくり取り外した。次いで、片面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたリングをφ60mmのペトリディッシュに入れた。次いで、ペトリディッシュにパラフィルム(登録商標)を巻いてアルミホイルで遮光して、室温保存した。
【0112】
(6)ビトリゲル膜乾燥体の製造2
製造例1の(1)〜(8)と同様の方法を用いて、さらに1セットの部材A上にビトリゲル膜乾燥体を製造した。
【0113】
(7)筒状部材への接着剤の塗布及び部材Cへの装着2
(5)で保存した片面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたリングをペトリディッシュから取り出し、ビトリゲル膜乾燥体が接着されている面と反対側の面の周縁部に、接着剤を塗り広げた。次いで、リングのビトリゲル膜乾燥体が接着された面と部材Cの底面とが接するように、片面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたリングを部材Cに抜き差し可能な状態で装着した。
【0114】
(8)筒状部材とビトリゲル膜乾燥体との接着2
次いで、リングが装着された部材Cの上に、(6)で得られたビトリゲル膜乾燥体が製造された状態の部材Aを、リングの接着剤が塗布された面とビトリゲル膜乾燥体とが接するように、位置決めピンを用いて重ね合せた。次いで、重石を部材Aの上に乗せて、1日クリーンベンチ内に静置して接着剤を乾燥させた。
【0115】
(9)部材Cの取り外し2
乾燥開始から1日後、乾いていることを確認し、部材Cが上にくるように反転させて、部材Cを取り外した。次いで、ピンセットを用いて、横から押しずらすようにして、ビトリゲル膜乾燥体が接着されたリングを部材Aのウェルの底面からゆっくり取り外し、両面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたリング(すなわち、細胞封入用デバイス)を得た。次いで、得られた両面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたリング(細胞封入用デバイス)はφ35mmのペトリディッシュに入れて、ペトリディッシュにパラフィルム(登録商標)を巻いてアルミホイルで遮光して、室温保存した。
【0116】
[製造例3]ネイティブコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の製造2
(1)製造装置の準備
コラーゲンビトリゲルに対する吸着性が低い材料として、シリコン処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(藤森工業社製、厚さ75μm)を用いた、まず、打ち抜き機を用いて、シリコン処理されたPETフィルムをφ13mmの円形に打ち抜いた。次いで、得られた円形状のシリコン処理されたPETフィルムにメンディングテープ(スコッチ社製、厚さ0.058mm)を貼付してシリコン処理面を確認した。次いで、得られた円形状のシリコン処理されたPETフィルムを70%エタノール溶液が入ったφ60mmのペトリディッシュに入れ、10分間浸漬して殺菌した。10分後、70%エタノール溶液を取り除き、面に注意しながらPBSを添加して洗浄した。洗浄を3回繰り返した。
【0117】
次いで、深さ5.0mm、直径15.0mmの円形底面から成るウェルを有する24ウェルプレート(岸本工業社製、アクリル樹脂製)に70%エタノール溶液を吹き付けて、殺菌した。次いで、クリーンベンチ内で乾燥させた。次いで、洗浄したシリコン処理されたPETフィルムを1枚ずつ24ウェルプレートの底面にシリコン処理面が上面となるように置いた。次いで、PBSを1mLずつ加え、除去し、約3時間クリーンベンチ内で乾燥させて、シリコン処理されたPETフィルムをPBSの塩を介して、24ウェルプレートの底面に弱く接着させた。
【0118】
(2)コラーゲンゾルの調製
製造例1の(2)と同様の方法を用いて、均一なコラーゲンゾルを調製した。
【0119】
(3)コラーゲンゾルの注入
次いで、24ウェルプレート内のシリコン処理されたPETフィルム上にコラーゲンゾルを600μLずつ注入し、ウェル全体にコラーゲンゾルを行き渡らせた後、240μLを抜いて、ウェル内に360μLのコラーゲンゾルが残るようにした。次いで、24ウェル全てについて24回同じ操作を繰り返し行った。
【0120】
(4)コラーゲンのゲル化
次いで、(3)でコラーゲンゾルが注入された24ウェルプレートを37℃に設定した5%二酸化炭素濃度のインキュベーター内にて2時間保管し、ゲル化させた。
【0121】
(5)コラーゲンゲルのガラス化(コラーゲンゲル乾燥体の製造)
次いで、ゲル化後、10℃、40%湿度に設定した恒温恒湿機庫内にて風を吹きかけて乾燥させて、ガラス化させて、コラーゲンゲル乾燥体を得た。
【0122】
(6)コラーゲンゲル乾燥体の再水和(ビトリゲルの製造)
次いで、ガラス化後、恒温恒湿機庫から取り出し、ウェルにPBSを600μL添加し、10分間静置し、再水和させた(PBS添加1回目)。10分後、PBSを除去し、ウェルに再度PBSを600μL添加し、10分間静置した(PBS添加2回目)。再度同じ操作を行い(PBS添加3回目)、PBSを除去し、再水和を完了させた。
【0123】
(7)ビトリゲルの再ガラス化(ビトリゲル乾燥体の製造)
再水和後、10℃、40%湿度に設定した恒温恒湿機庫内にて風を吹きかけて乾燥させて、再ガラス化させて、シリコン処理されたPETフィルム上に貼付されたビトリゲル乾燥体を得た。
【0124】
(8)フィルムに吸着したビトリゲル乾燥体の24ウェルプレートからの脱着
24ウェルプレートのウェル内壁面とPETフィルムとの間隙にピンセットを入れて、PETフィルムを横から弱く押しずらすようにして、ウェル底面から脱着した。
その結果、シリコン処理されたPETフィルムが弱く貼付された、しわのない平滑な面を有するネイティブコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を得た。
シリコン処理されたPETフィルムが弱く貼付していることは、以下のようにして確認した。
まず、ネイティブコラーゲンビトリゲル膜乾燥体が貼付されていない側のPETフィルムの表面にメンディングテープを貼付した。その後、反対側であって、PETフィルムが貼付されていない側のネイティブコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の表面にもメンディングテープを貼付した。次いで、両側のメンディングテープについて互いを遠ざけるように弱く引っ張ることで、至って簡単にPETフィルムとネイティブコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を脱着できたことから確認できた。
【0125】
[実施例1]
製造例2で得られた両面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたリング(細胞封入用デバイス)の内部にPBSを満たした。結果を図2Aに示す。
図2Aから、PBSを注入した状態の細胞封入用デバイスにおけるビトリゲル膜は、均一でしわがなく、平滑な面であった。
【0126】
[比較例1]
従来の製造方法である、2枚の環状磁石を用いた方法(参考文献:特許第4817847号公報)により、ビトリゲル膜乾燥体を製造した。次いで、リングにポリウレタン系接着剤を用いて、得られたビトリゲル膜乾燥体を接着させて、両面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたリング(細胞封入用デバイス)を製造した。次いで、細胞封入用デバイスの内部にPBSを満たした。結果を図2Bに示す。
図2Bから、PBSを注入した状態の細胞封入用デバイスにおけるビトリゲル膜は、周縁部に僅かな皺が生じていた。
【0127】
実施例1及び比較例1の結果から、本実施形態のビトリゲル膜乾燥体の製造方法及び製造装置を用いることで、簡便にしわのない平滑な面を有するビトリゲル膜乾燥体を製造できることが示された。
【0128】
[製造例4]アテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の製造1
(1)製造装置の準備
製造例1の(1)と同様の方法を用いて、製造装置を準備した。
【0129】
(2)コラーゲンゾルの調製
次いで、氷上で無血清培養液4mLを50mLコニカルチューブに分注した。次いで、ブタ由来アテロコラーゲン溶液(関東化学社製、コラーゲン濃度1.0質量%)4mLを添加し、3回ピペッティングを行い、均一なコラーゲンゾルを調製した。なお、使用した無血清培養液は、以下に示す組成であった。
無血清培養液:ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium;DMEM)(GIBCO社製、Cat.No.11885−084)
+20mM HEPES(GIBCO社製、Cat.No.15630−080)
+100units/mLペニシリン+100μg/mLストレプトマイシン(GIBCO社製、Cat.No.15140−148)
【0130】
(3)コラーゲンゾルの注入
次いで、部材Bの貫通孔から部材Aの底面に接着されたポリ塩化ビニルフィルム上にコラーゲンゾル900μLを注入し、ウェル全体にコラーゲンゾルを行き渡らせた。次いで、重石を動かしながら、6ウェル全てについて6回同じ操作を繰り返し行った。
【0131】
(4)コラーゲンのゲル化
製造例1の(4)と同様の方法を用いて、コラーゲンをゲル化した。
【0132】
(5)コラーゲンゲルのガラス化(コラーゲンゲル乾燥体の製造)
製造例1の(5)と同様の方法を用いて、コラーゲンゲルをガラス化した。
【0133】
(6)コラーゲンゲル乾燥体の再水和(ビトリゲルの製造)
製造例1の(6)と同様の方法を用いて、コラーゲンゲル乾燥体を再水和した。
【0134】
(7)ビトリゲルの再ガラス化(ビトリゲル乾燥体の製造)
製造例1の(7)と同様の方法を用いて、ビトリゲルを再ガラス化した。
【0135】
(8)ビトリゲル乾燥体の打ち抜き
製造例1の(8)と同様の方法を用いて、部材A上にビトリゲル膜乾燥体を製造した。
【0136】
[製造例5]アテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を備えたチャンバーの製造
(1)ビトリゲル膜乾燥体の製造
製造例4の(1)〜(8)と同様の方法を用いて、部材A上にビトリゲル膜乾燥体を製造した。
【0137】
(2)筒状部材の準備
チャンバーの本体となる筒状部材として、アクリル製パイプ(内径φ11mm、外径φ15mm、長さ15mm)を用いた。アクリル製パイプの周縁部のうち、片面の外径が約14mmとなるようにヤスリでテーパー加工した。次いで、テーパー加工してない側のパイプの周縁部に2本のアクリル製ハンガーを接着した。接着後、滅菌水40mLを予め注入した50mLコニカルチューブ内に入れた。次いで、振盪機(NISSIN社製、RECIPRO SHAKER)の上で、10分間振盪させて洗浄した。洗浄後、滅菌水を除去し、新しい滅菌水を40mL加えて、同様の操作を3回繰り返した。次いで、70%エタノール溶液40mLを50mLコニカルチューブに加え、そこに滅菌水で洗浄したパイプを投入し、振盪機(NISSIN社製、RECIPRO SHAKER)の上で、3分間振盪させて殺菌した。
【0138】
(3)筒状部材への両面テープの接着
薄型発泡体基材両面接着テープ(DIC社製、#84010WHITE、厚さ100μm)を環状形状(内径φ11mm、外径φ14mm)に切り抜いた。次いで、テーパー加工した側のパイプの周縁部に、切り抜いた両面テープの片側を接着し、パイプの周縁部に接着剤層を形成させた。
【0139】
(4)筒状部材とビトリゲル膜乾燥体との接着
次いで、片側の周縁部に両面テープが接着されたパイプを、(1)で得られた部材A上のビトリゲル膜乾燥体の上に、パイプの周縁部の両面テープが接着された面とビトリゲル膜乾燥体とが接するように、重ね合せて接着した。次いで、パイプを部材Aの底面からゆっくり取り外すことで、ビトリゲル膜乾燥体を備えたチャンバーを製造した。
【0140】
[実施例2]
製造例4で得られた片面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたパイプ(チャンバー)の内部にPBSを注入した。結果を図3に示す。
図3から、PBSを注入した状態のチャンバーにおけるビトリゲル膜からPBSは漏れないことが確認できた。
【0141】
[製造例6]アテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の製造2
(1)製造装置の準備
コラーゲンビトリゲルに対する吸着性が低い材料として、シリコン処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(藤森工業社製、厚さ75μm)を用いた。まず、打ち抜き機を用いて、シリコン処理されたPETフィルムをφ13mmの円形に打ち抜いた。次いで、得られた円形状のシリコン処理されたPETフィルムにメンディングテープ(スコッチ社製、厚さ0.058mm)を貼付してシリコン処理面を確認した。次いで、得られた円形状のシリコン処理されたPETフィルムを70%エタノール溶液が入ったφ60mmのペトリディッシュに入れ、10分間浸漬して殺菌した。10分後、70%エタノール溶液を取り除き、面に注意しながらPBSを添加して洗浄した。洗浄を3回繰り返した。
【0142】
ビトリゲル膜乾燥体を製造するために、図1A図1Cに示す製造装置(岸本工業社製、アクリル樹脂製)を用いた。具体的には、厚さ10mmの部材A(凹部:深さ1.0mm、直径15.0mmの円形底面)、及び厚さ5mmの部材B(貫通孔:直径16.5mmの円形)を用いた。次いで、70%エタノール溶液をアクリル樹脂製の部材Aと部材Bに吹き付けて殺菌し、クリーンベンチ内で乾燥させた。
次いで、洗浄したシリコン処理されたPETフィルムを1枚ずつ、部材Aの6つのウェル全ての底面上に、シリコン処理面が上面となるように置いた。次いで、PBSを約0.5mLずつ加え、除去し、約3時間クリーンベンチ内で乾燥させて、シリコン処理されたPETフィルムをPBSの塩を介して、部材Aのウェルの底面上に弱く接着させた。次いで、部材Aと部材Bとを位置決めピンを用いて重ね合せた。次いで、部材Aと部材Bとを押さえながら、周囲にパラフィルム(登録商標)を巻き付けて、2個の重石(岸本工業社製、50t×25×25、約260g)を部材Bの上にのせた。
【0143】
(2)コラーゲンゾルの調製
製造例4の(2)と同様の方法を用いて、均一なコラーゲンゾルを調製した。
【0144】
(3)コラーゲンゾルの注入
次いで、部材Bの貫通孔から部材Aの底面に接着されたシリコン処理PETフィルム上にコラーゲンゾル900μLを注入し、ウェル全体にコラーゲンゾルを行き渡らせた。次いで、重石を動かしながら、6ウェル全てについて6回同じ操作を繰り返し行った。
【0145】
(4)コラーゲンのゲル化
製造例1の(4)と同様の方法を用いて、コラーゲンをゲル化した。
【0146】
(5)コラーゲンゲルのガラス化(コラーゲンゲル乾燥体の製造)
製造例1の(5)と同様の方法を用いて、コラーゲンゲルをガラス化した。
【0147】
(6)コラーゲンゲル乾燥体の再水和(ビトリゲルの製造)
製造例1の(6)と同様の方法を用いて、コラーゲンゲル乾燥体を再水和した。
【0148】
(7)ビトリゲルの再ガラス化(ビトリゲル乾燥体の製造)
製造例1の(7)と同様の方法を用いて、ビトリゲルを再ガラス化した。
【0149】
(8)フィルムに吸着したビトリゲル乾燥体の部材Aからの脱着
製造例1の(8)と同様の方法を用いて、部材A上にビトリゲル膜乾燥体を製造した。次いで、部材Aのウェル内壁面とPETフィルムとの間隙にピンセットを入れて、PETフィルムを横から弱く押しずらすようにして、ウェル底面から脱着した。
その結果、シリコン処理されたPETフィルムが弱く貼付された、しわのない平滑な面を有するアテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を得た。
【0150】
なお、シリコン処理されたPETフィルムが弱く貼付していることは、以下のようにして確認した。
まず、アテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体が貼付されていない側のPETフィルムの表面にメンディングテープを貼付した。次いで、反対側であって、PETフィルムが貼付されていない側のアテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の表面にもメンディングテープを貼付した。次いで、両側のメンディングテープについて互いを遠ざけるように弱く引っ張ることで、簡単にPETフィルムとアテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体とを脱着できることが確認できた(図4参照)。
【0151】
[製造例7]ネイティブコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を備えた細胞封入用デバイスの製造2
(1)ビトリゲル膜乾燥体の製造
製造例1の(1)〜(8)と同様の方法を用いて、部材A上にビトリゲル膜乾燥体を製造した。
【0152】
(2)筒状部材の準備
製造例2の(2)と同様の方法を用いて、ポリスチレン製リング(岸本工業社製、内径φ7.98mm、外径φ13mm、厚さ2.0mm)を準備した。
【0153】
(3)筒状部材の部材Cへの装着及び筒状部材への両面テープの接着1
まず、薄手発泡体基材防水両面テープ(Nitto Denko Corporation製、No.57210B、厚さ:0.1mm)を打ち抜き刃(φ12mm及びφ8.5mm)を使用し、打ち抜き機で、リング状に打ち抜いた。これを2枚準備した。次いで、70%エタノール溶液をアクリル樹脂製の部材Cに吹き付けて殺菌し、クリーンベンチ内で乾燥させた。次いで、部材Cにリングを設置した。次いで、部材Cに設置したリングに、リング状に打ち抜いた両面テープのうちの1枚をリングからはみ出さないように貼りつけた。
【0154】
(4)筒状部材とビトリゲル膜乾燥体との接着1
次いで、両面テープのリングと接していない側の面の剥離紙をはがして粘着剤層を露出させた。次いで、リングが設置された部材Cと、(1)で得られたビトリゲル膜乾燥体が製造された状態の部材Aとを、リングの粘着剤層が露出された面とビトリゲル膜乾燥体とが接するように、位置決めピンを用いて重ね合せて、リングとビトリゲル膜乾燥体とを接着させた。
【0155】
(5)部材Cの取り外し1
次いで、部材Cが上にくるように反転させて、部材Cを取り外した。次いで、ピンセットを用いて、横から押しずらすようにして、ビトリゲル膜乾燥体が接着されたリングを部材Aのウェルの底面からゆっくり取り外した。
【0156】
(6)ビトリゲル膜乾燥体の製造2
製造例1の(1)〜(8)と同様の方法を用いて、さらに1セットの部材A上にビトリゲル膜乾燥体を製造した。
【0157】
(7)筒状部材の部材Cへの装着及び筒状部材への両面テープの接着2
次いで、部材Cに(5)で作製した片面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたリングを設置した。次いで、リングのビトリゲル膜乾燥体が接着されている面と反対側の面に、(3)でリング状に打ち抜いた両面テープをリングからはみ出さないように貼りつけた。
【0158】
(8)筒状部材とビトリゲル膜乾燥体との接着2
次いで、両面テープのリングと接していない側の面の剥離紙をはがして粘着剤層を露出させた。次いで、片面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたリングが設置された部材Cと、(6)で得られたビトリゲル膜乾燥体が製造された状態の部材Aとを、リングの粘着剤層が露出された面とビトリゲル膜乾燥体とが接するように、位置決めピンを用いて重ね合せて、リングとビトリゲル膜乾燥体とを接着させた。
【0159】
(9)部材Cの取り外し2
次いで、部材Cが上にくるように反転させて、部材Cを取り外した。次いで、ピンセットを用いて、横から押しずらすようにして、ビトリゲル膜乾燥体が接着されたリングを部材Aのウェルの底面からゆっくり取り外し、両面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたリング(すなわち、細胞封入用デバイス)を得た。次いで、得られた両面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたリング(細胞封入用デバイス)はφ35mmのペトリディッシュに入れて、ペトリディッシュにパラフィルム(登録商標)を巻いてアルミホイルで遮光して、室温保存した。
【0160】
[製造例8]ネイティブコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を備えた細胞封入用デバイスの製造3
(1)ビトリゲル膜乾燥体の製造
製造例1の(1)〜(8)と同様の方法を用いて、部材A上にビトリゲル膜乾燥体を製造した。
【0161】
(2)筒状部材の準備
シリコンゴムシート(厚さ:2mm、品番:2−9318−01、アズワン社製)をφ13mm及びφ8mmの打ち抜き刃で打ち抜き、シリコンリングを作製した。次いで、作製したシリコンリングを70%エタノールに10分浸漬し、さらにPBSで3回洗浄することで殺菌した。
【0162】
(3)筒状部材の部材Cへの装着及び筒状部材への両面テープの接着1
まず、シリコーンゴム接着用両面テープ(Nitto Denko Corporation製、No.5302A、厚さ:0.085mm)を打ち抜き刃(φ12mm及びφ8.5mm)を使用し、打ち抜き機で、リング状に打ち抜いた。これを2枚準備した。次いで、70%エタノール溶液をアクリル樹脂製の部材Cに吹き付けて殺菌し、クリーンベンチ内で乾燥させた。次いで、部材Cにシリコンリングを設置した。次いで、シリコンリングに、リング状に打ち抜いた両面テープのうちの1枚をリングからはみ出さないように貼りつけた。このとき、両面テープのシリコンゴム接着用粘着剤層の面(剥離紙:透明側)をシリコンリングに貼付した。
【0163】
(4)筒状部材とビトリゲル膜乾燥体との接着1
次いで、両面テープのシリコンリングと接していない側の面の剥離紙をはがして粘着剤層を露出させた。次いで、シリコンリングが設置された部材Cと、(1)で得られたビトリゲル膜乾燥体が製造された状態の部材Aとを、リングの粘着剤層が露出された面とビトリゲル膜乾燥体とが接するように、位置決めピンを用いて重ね合せて、シリコンリングとビトリゲル膜乾燥体とを接着させた。
【0164】
(5)部材Cの取り外し1
次いで、部材Cが上にくるように反転させて、部材Cを取り外した。次いで、ピンセットを用いて、横から押しずらすようにして、ビトリゲル膜乾燥体が接着されたシリコンリングを部材Aのウェルの底面からゆっくり取り外した。
【0165】
(6)ビトリゲル膜乾燥体の製造2
製造例1の(1)〜(8)と同様の方法を用いて、さらに1セットの部材A上にビトリゲル膜乾燥体を製造した。
【0166】
(7)筒状部材の部材Cへの装着及び筒状部材への両面テープの接着2
次いで、部材Cに(5)で作製した片面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたシリコンリングを設置した。次いで、シリコンリングのビトリゲル膜乾燥体が接着されている面と反対側の面に、(3)でリング状に打ち抜いたシリコーンゴム接着用両面テープをリングからはみ出さないように貼りつけた。このとき、両面テープのシリコンゴム接着用粘着剤層の面(剥離紙:透明側)をシリコンリングに貼付した。
【0167】
(8)筒状部材とビトリゲル膜乾燥体との接着2
次いで、両面テープのシリコンリングと接していない側の面の剥離紙をはがして粘着剤層を露出させた。次いで、シリコンリングが設置された部材Cと、(6)で得られたビトリゲル膜乾燥体が製造された状態の部材Aとを、シリコンリングの粘着剤層が露出された面とビトリゲル膜乾燥体とが接するように、位置決めピンを用いて重ね合せて、シリコンリングとビトリゲル膜乾燥体とを接着させた。
【0168】
(9)部材Cの取り外し2
次いで、部材Cが上にくるように反転させて、部材Cを取り外した。次いで、ピンセットを用いて、横から押しずらすようにして、ビトリゲル膜乾燥体が接着されたシリコンリングを部材Aのウェルの底面からゆっくり取り外し、両面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたシリコンリング(すなわち、細胞封入用デバイス)を得た。次いで、得られた両面にビトリゲル膜乾燥体が接着されたシリコンリング(細胞封入用デバイス)はφ35mmのペトリディッシュに入れて、ペトリディッシュにパラフィルム(登録商標)を巻いてアルミホイルで遮光して、室温保存した。
【0169】
[製造例9]アテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体からなる細胞封入用デバイスの製造
(1)製造装置の準備
ビトリゲル膜乾燥体を製造するために、図1A図1Cに示す製造装置(岸本工業社製、アクリル樹脂製)を用いた。具体的には、厚さ10mmの部材A(凹部:深さ1.0mm、直径15.0mmの円形底面)、及び厚さ5mmの部材B(貫通孔:直径16.5mmの円形)を用いた。次いで、70%エタノール溶液をアクリル樹脂製の部材Aと部材Bに吹き付けて殺菌し、クリーンベンチ内で乾燥させた。
次いで、シリコンオイル(KF−96、信越化学工業社製)を浸み込ませたキムワイプを用いて、部材Aの凹部内の壁面を拭った。次いで、部材Aと部材Bとを位置決めピンを用いて重ね合せた。次いで、部材Aと部材Bとを押さえながら、周囲にパラフィルム(登録商標)を巻き付けた。
【0170】
(2)コラーゲンゾルの調製
製造例4の(2)と同様の方法を用いて、均一なコラーゲンゾルを調製した。
【0171】
(3)ビトリゲル膜乾燥体の製造
(1)で準備した製造装置を用いた以外は、製造例4の(3)〜(7)と同様の方法を用いて、部材Bの貫通孔から部材Aの底面上にコラーゲンゾル1.8mLを注入し、部材A上にアテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を製造した。
【0172】
(4)筒状部材の準備
公知の方法(参考文献1:国際公開第2018/003858号)を用いて、アテロコラーゲンからなる筒状部材を準備した。具体的には、以下に示す手順で作製した。
【0173】
(4−1)アテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の作製
まず、内径60mmの壁面鋳型内に28mLの0.5%アテロコラーゲンゾルを注ぎ、8枚のアテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体(コラーゲン量:5.0mg/cm)を公知の方法(参考文献2:国際公開第2012/026531号)に準じて作製した。なお、0.5%アテロコラーゲンゾルは、氷上で無血清培養液16mLを50mLコニカルチューブに分注した後、ブタ由来アテロコラーゲン溶液(関東化学社製、コラーゲン濃度1.0質量%)16mLを添加し、3回ピペッティングを行うことで調製した。
【0174】
(4−2)アテロコラーゲンビトリゲル膜二重層接着乾燥体の作製
次いで、このアテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体2枚をPBSで再水和して、2枚のアテロコラーゲンビトリゲル膜を調製した。ビニールシート上に1枚のアテロコラーゲンビトリゲル膜を伸展した。次いで、その上に600μLの0.5%アテロコラーゲンゾルを添加して、膜からはみ出ないように広げた後、もう1枚のアテロコラーゲンビトリゲル膜を覆い被せた。なお、0.5%アテロコラーゲンゾルは、公知の方法(参考文献3:特開2015−203018号公報)に準じて、接着剤として使用した。次いで、10℃、湿度40%のインキュベーター内で、クリーン風乾機を用いて、乾燥(ガラス化)した。次いで、UV照射(単位面積あたりのUV総照射量:400mJ/cm)した。さらに、UV照射後の二重層接着乾燥体を裏返して、UV照射(単位面積あたりのUV総照射量:400mJ/cm)して、アテロコラーゲンビトリゲル膜二重層接着乾燥体を得た。
【0175】
(4−3)アテロコラーゲンビトリゲル膜四重層接着乾燥体の作製
次いで、(4−2)で得られたアテロコラーゲンビトリゲル膜二重層接着乾燥体をPBSで再水和した。次いで、ビニールシート上に1つの二重層接着体を伸展した。次いで、その上に600μLの0.5%アテロコラーゲンゾルを添加して、二重層接着体からはみ出ないように広げた後、もう1つの二重層接着体を覆い被せることで、四重層接着体を作製した。次いで、10℃、湿度40%のインキュベーター内で、クリーン風乾機を用いて、乾燥(ガラス化)した。次いで、UV照射(単位面積あたりのUV総照射量:400mJ/cm)した。さらに、UV照射後の四重層接着乾燥体を裏返して、UV照射(単位面積あたりのUV総照射量:400mJ/cm)して、アテロコラーゲンビトリゲル膜四重層接着乾燥体を得た。
【0176】
(4−4)筒状部材の成形
次いで、(4−3)で得られたアテロコラーゲンビトリゲル膜四重層接着乾燥体をφ13mm及びφ8mmの打ち抜き刃で2箇所打ち抜き、リング状のアテロコラーゲンビトリゲル膜四重層接着乾燥体(内径8mm、外径13mm)を2つ作製した。
【0177】
(5)筒状部材とビトリゲル乾燥体との接着
まず、(3)で作製した部材A上のアテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体をPBSで再水和して、アテロコラーゲンビトリゲル膜を調製した。一方、(4)で作製したリング状のアテロコラーゲンビトリゲル膜四重層接着乾燥体も同様にPBSで再水和して、リング状のアテロコラーゲンビトリゲル膜四重層接着体を調製した。次いで、ビニールシート上にリング状のアテロコラーゲンビトリゲル膜四重層接着体を伸展した。次いで、四重層接着体上に20μLの0.5%アテロコラーゲンゾルを添加して、リングからはみ出ないように広げた。次いで、このリング状のアテロコラーゲンビトリゲル膜四重層接着体のアテロコラーゲンゾルを塗布した面が、部材A上のアテロコラーゲンビトリゲル膜に接するように、リング状のアテロコラーゲンビトリゲル膜四重層接着体とアテロコラーゲンビトリゲル膜とを接着させた。次いで、10℃、湿度40%のインキュベーター内で、クリーン風乾機を用いて、乾燥(ガラス化)して、片面にアテロコラーゲンビトリゲル膜を備えるリング状のアテロコラーゲンビトリゲル膜四重層接着体(以下、単に「片面膜付きリング状四重層接着体」と称する場合がある)を得た。この片面膜付きリング状四重層接着体を2つ作製した。次いで、片面膜付きリング状四重層接着乾燥体2つを、それぞれ部材Aから取り外した。次いで、片面膜付きリング状四重層接着乾燥体の部材Aと接していた側の面に、UV照射(単位面積あたりのUV総照射量:400mJ/cm)した。さらに、UV照射後の片面膜付きリング状四重層接着乾燥体を裏返して、リング状のアテロコラーゲンビトリゲル膜四重層接着乾燥体が接着している側の面にも、UV照射(単位面積あたりのUV総照射量:400mJ/cm)した。
【0178】
(6)片面膜付きリング状四重層接着体同士の接着
次いで、(5)で得られた片面膜付きリング状四重層接着乾燥体2つをPBSで再水和して片面膜付きリング状四重層接着体とした。次いで、ビニールシート上に、片面膜付きリング状四重層接着体2つを、それぞれリング状のアテロコラーゲンビトリゲル膜四重層接着体が接着している側の面が上になるように伸展した。次いで、片面膜付きリング状四重層接着体のうち1つに、20μLの0.5%アテロコラーゲンゾルを添加して、リングからはみ出ないように広げた。次いで、アテロコラーゲンゾルを塗布した片面膜付きリング状四重層接着体と、もう1つのアテロコラーゲンゾルが塗布していない片面膜付きリング状四重層接着体とを、四重層接着体が接着している側の面同士が接するように接着させた。次いで、10℃、湿度40%のインキュベーター内で、クリーン風乾機を用いて、乾燥(ガラス化)した。次いで、UV照射(単位面積あたりのUV総照射量:400mJ/cm)した。さらに、裏返して、UV照射(単位面積あたりのUV総照射量:400mJ/cm)して、アテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体からなる細胞封入用デバイスを得た。次いで、得られたアテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体からなる細胞封入用デバイスはφ35mmのペトリディッシュに入れて、ペトリディッシュにパラフィルム(登録商標)を巻いてアルミホイルで遮光して、室温保存した。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本実施形態のビトリゲル膜乾燥体の製造方法及び製造装置によれば、簡便にしわのない平滑な面を有するビトリゲル膜乾燥体を製造することができる。また、本実施形態のビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造方法及び製造装置によれば、前記ビトリゲル膜乾燥体の製造方法及び製造装置から連続的にビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスを製造することができる。
【符号の説明】
【0180】
1…部材A、1a…第1の材料、1b…第2の材料、1c…部材Aの凹部、2…部材B、2a…貫通孔、2b…部材Bにおける位置決めピンの受け側穴、3…部材C、3a…部材Cの凹部、3b…部材Cにおける位置決めピンの受け側穴、4…位置決めピン、5…筒状部材、10…ビトリゲル膜乾燥体の製造装置、100…ビトリゲル膜乾燥体が接着されたデバイスの製造装置。
【要約】
簡便に、しわのない平滑な面を有するビトリゲル膜乾燥体を得られるビトリゲル膜乾燥体の製造方法を提供する。ビトリゲル膜乾燥体の製造方法は、1以上の凹部を有する部材Aと、貫通孔を1以上有する部材Bと、を前記凹部と前記貫通孔とが重なるように同心状に配置させ、載置する工程1と、前記部材Bの前記貫通孔からゾルを注入する工程2と、前記ゾルをゲル化させる工程3と、前記工程3で得られたハイドロゲルを前記部材A及び前記部材B内に形成された状態で乾燥しガラス化させる工程4と、前記工程4で得られたハイドロゲル乾燥体を水和させる工程5と、前記工程5で得られたビトリゲルを乾燥し再度ガラス化させる工程6と、前記工程6で得られたビトリゲル乾燥体のうち前記部材Aの天面上をわずかに覆う部分を切り離す工程7と、をこの順に備える方法である。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4