特許第6452988号(P6452988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6452988
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】駆動回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20190107BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20190107BHJP
   H02M 3/07 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   H02M1/08 A
   H03K17/687 A
   H02M3/07
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-165959(P2014-165959)
(22)【出願日】2014年8月18日
(65)【公開番号】特開2016-42764(P2016-42764A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083194
【弁理士】
【氏名又は名称】長尾 常明
(72)【発明者】
【氏名】渡利 宏行
【審査官】 白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−074972(JP,A)
【文献】 特開2012−244215(JP,A)
【文献】 特開2000−330085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00〜 3/44
H03K17/00〜17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御端子の電圧に応じて第1の閾値電圧をもつ第1のNMOSトランジスタを駆動する駆動バッファ回路と、該駆動バッファ回路の出力電圧が第2の閾値電圧に低下したか否かを検出する電圧検出回路と、該電圧検出回路の出力電圧と前記制御端子の電圧の論理の組み合わせに応じた電圧を出力する制御回路と、該制御回路の出力電圧に応じて前記第1のNMOSトランジスタのゲートを制御する第2のNMOSトランジスタとを備える駆動回路であって、
前記第1の閾値電圧は前記第2の閾値電圧より小さく設定され、
前記電圧検出回路と前記制御回路との間に遅延回路が接続され、
該遅延回路の遅延時間は前記第1のNMOSトランジスタがOFFする際に前記第2のNMOSトランジスタがONする値に設定され、
前記制御端子の電圧で前記第1のNMOSトランジスタがONからOFFに制御されるとき、前記駆動バッファ回路の出力電圧が前記第2の閾値電圧に低下したことを前記電圧検出回路が検出してから前記遅延時間が経過した後に、前記第2のNMOSトランジスタが前記駆動バッファ回路の駆動能力を補助することを特徴とする駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング用のトランジスタのON抵抗の変化速度の切り替えを可能にした駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器では、内部回路のメインチップの消費電力低減のために、使用する電源電圧が著しく低下している。しかし、デジタルとアナログが混在する回路においては、アナログ信号を扱う場合には広いダイナミックレンジや高いS/N比の確保のために、デジタル回路の電源電圧以上の電源電圧、もしくは極性反転した電源電圧が要求される場合がある。
【0003】
このようなとき、チャージポンプ回路を使用してこれらの課題を解決していた。図4に負の電圧VSSを生成するチャージポンプ回路の一例を示す。IN1〜IN4は制御端子、A1〜A4は駆動バッファ回路、M1はPMOSトランジスタ、M2〜M4はNMOSトランジスタ、C1,C2はキャパシタである。このチャージポンプ回路は、以下のタイミング(1)〜(8)の繰り返しで制御が行われる。
【0004】
タイミング(1):制御端子IN3の電圧が“H”レベルになる。これにより、駆動バッファ回路A3が電圧V3を“H”レベルにしようと、トランジスタM3の入力容量の充電を開始する。電圧V3が上昇してトランジスタM3の閾値電圧に達すると、そのトランジスタM3がONする。この後は電圧V3の上昇に従ってトランジスタM3のON抵抗が減少する。
【0005】
タイミング(2):制御端子IN1の電圧が“L”レベルになる。これにより、駆動バッファ回路A1が電圧V1を“L”レベルにしようと、トランジスタM1の入力容量の放電を開始する。電圧V1が下降してトランジスタM1の閾値電圧に達すると、そのトランジスタM1がONする。このため、電源VDDからトランジスタM1、キャパシタC1、トランジスタM3、GNDへと充電電流が流れ始め、キャパシタC1に電荷がチャージされる。
【0006】
タイミング(3):制御端子IN3の電圧が“L”レベルになる。これにより、駆動バッファ回路A3が電圧V3を“L”レベルにしようと、トランジスタM3の入力容量の放電を開始する。そして、電圧V3が下降してトランジスタM3のON抵抗が増大し、キャパシタC1への充電電流が減少する。電圧V3がトランジスタM3の閾値電圧より低下すると、そのトランジスタM3がOFFし、キャパシタC1への充電電流が遮断される。
【0007】
タイミング(4):制御端子IN1の電圧が“H”レベルになる。これにより、駆動バッファ回路A1が電圧V1を“H”レベルにしようと、トランジスタM1の入力容量の充電を開始する。電圧V1が上昇するとトランジスタM1のON抵抗が増大する。そして、電圧V1がトランジスタM1の閾値電圧を超えると、そのトランジスタM1がOFFし、キャパシタC1の両端はオープン状態となる。これにより、キャパシタC1には電圧VDDが充電される。
【0008】
タイミング(5):制御端子IN2の電圧が“H”レベルになる。これにより、駆動バッファ回路A2が電圧V2を“H”レベルにしようと、トランジスタM2の入力容量への充電を開始する。電圧V2が上昇してトランジスタM2の閾値電圧に達すると、そのトランジスタM2がONする。
【0009】
タイミング(6):制御端子IN4の電圧が“H”レベルになる。これにより、駆動バッファ回路A4が電圧V4を“H”レベルにしようと、トランジスタM4の入力容量への充電を開始する。電圧V4が上昇して閾値電圧に達するとトランジスタM4がONし、トランジスタM2とM4とを介してキャパシタC1とC2が並列に接続される。このため、キャパシタC1が放電を開始し、キャパシタC2への充電とGND−VSS間に接続された負荷回路への電流供給が行われる。
【0010】
タイミング(7):制御端子IN2の電圧が“L”レベルになる。これにより、駆動バッファ回路A2が電圧V2を“L”レベルにしようと、トランジスタM2の入力容量の放電を開始する。電圧V2が下降するとトランジスタM2のON抵抗が増大し、キャパシタC1の放電電流が減少する。そして、電圧V2がトランジスタM2の閾値電圧に達すると、そのトランジスタM2がOFFし、キャパシタC1の放電電流が遮断される。
【0011】
タイミング(8):駆動端子IN4の電圧が“L”レベルになる。これにより、駆動バッファ回路A4が電圧V4を“L”レベルにしようと、トランジスタM4の入力容量の放電を開始する。電圧V4が下降するとトランジスタM4のON抵抗が増大する。そして、電圧V4がトランジスタM4の閾値電圧に達するとトランジスタM4がOFFし、キャパシタC1の両端はオープン状態となる。
【0012】
このように、タイミング(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)→(7)→(8)→(1)→(2)→・・・・・・の動作が繰り返される。これによって、キャパシタC1に充電された電荷(電圧VDD)がキャパシタC2に転送される。出力電圧VSSの値は、キャパシタC2への充電が繰り返し行われることにより、最終的にはほぼ−VDDとなる。
【0013】
このチャージポンプ回路では、タイミング(1)と(2)、タイミング(3)と(4)、タイミング(5)と(6)、タイミング(7)と(8)を、それぞれ同時に実施することもできるが、充電および放電時の電流の変化を出力段トランジスタ1つのON抵抗の変化で制御するため、上記のようにそれぞれのタイミングをずらしている。
【0014】
しかしながら、このようにしても、キャパシタC1への充電回路が最終形成されるタイミング(2)とその充電回路が遮断されるタイミング(3)、およびキャパシタC1からC2への放電回路が最終形成されるタイミング(6)とその放電回路が遮断されるタイミング(7)において、それぞれ流れる電流が急変してスイッチングノイズが発生する。
【0015】
スイッチングノイズは、電圧VSSから供給する負荷電流が大きいほど、キャパシタC1,C2への充放電電流が大きくなることで大きくなる。ここで言うスイッチングノイズは、負電圧VSSを生成するためのキャパシタC1,C2への充放電電流がGNDラインのインピーダンスを流れることによって、抵抗成分による電圧降下と寄生誘導成分による逆起電力が発生して、GNDレベルの電圧が揺らされることによるノイズであり、負電圧VSSの負荷となる回路へ及ぼす悪影響を示す。
【0016】
一般的にチャージポンプ回路としては、大きな負荷を駆動でき、かつスイッチングノイズの影響が小さなものが要求される。スイッチングノイズの低減の1つの方法として、図4におけるチャージポンプ回路の例えばトランジスタM1については、そのON抵抗の減少の変化を、駆動バッファ回路A1の出力インピーダンスを大きくしてその駆動能力を低く設定することで、緩やかな変化にする手法が挙げられる。これにより、トランジスタM1のON時の電流の単位時間当たりの変化量が抑制されるので、GNDラインの電位の揺れを軽減することができる。よって、スイッチングノイズ自体を小さくでき、生成電圧VSSへの影響を低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしこの方法を用いると、トランジスタをONさせる場合では、駆動信号が入力してから当該のトランジスタのONが完了するまでの時間が長くなってしまう。また、トランジスタをOFFさせる場合では、駆動信号が入力してから当該のトランジスタのOFFが完了するまでの期間時間が長くなってしまう。
【0018】
図5に、(a)に示すように、制御端子IN1の電圧が“H”レベルから“L”レベルに低下してからのトランジスタM1の入力電圧V1の変化を、スイッチングノイズ低減のために、(b)に示す急激な変化から(c)に示す緩やかな変化に変更した波形を示す。電圧V1の変化が緩やかになると、その電圧V1がトランジスタM1の閾値電圧Vth1分だけ低下するまでの時間(OFF期間)が長くなっている。
【0019】
電圧V1の変化は、スイッチングノイズ低減のためには負荷電流が大きいほど緩やかにする必要があるが、それだけトランジスタM1がOFFしている時間が長くなる。このOFFしている時間はデッドタイムそのものであり、電圧変換効率の低下を招く。このように従来では、このデッドタイムの増大により、負荷電流を大きくしながら電圧変換効率を保つことと、スイッチングノイズの低減の両立が困難であった。
【0020】
本発明の目的は、スイッチングノイズの低減と高速化を図りさらにチップ面積を小さくできるようにした駆動回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明の駆動回路は、制御端子の電圧に応じて第1の閾値電圧をもつ第1のNMOSトランジスタを駆動する駆動バッファ回路と、該駆動バッファ回路の出力電圧が第2の閾値電圧に低下したか否かを検出する電圧検出回路と、該電圧検出回路の出力電圧と前記制御端子の電圧の論理の組み合わせに応じた電圧を出力する制御回路と、該制御回路の出力電圧に応じて前記第1のNMOSトランジスタのゲートを制御する第2のNMOSトランジスタとを備える駆動回路であって、前記第1の閾値電圧は前記第2の閾値電圧より小さく設定され、前記電圧検出回路と前記制御回路との間に遅延回路が接続され、該遅延回路の遅延時間は前記第1のNMOSトランジスタがOFFする際に前記第2のNMOSトランジスタがONする値に設定され、前記制御端子の電圧で前記第1のNMOSトランジスタがONからOFFに制御されるとき、前記駆動バッファ回路の出力電圧が前記第2の閾値電圧に低下したことを前記電圧検出回路が検出してから前記遅延時間が経過した後に、前記第2のNMOSトランジスタが前記駆動バッファ回路の駆動能力を補助することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の駆動回路によれば、スイッチングノイズの低減と高速化を図りながら、電圧検出回路に第1のNMOSトランジスタの閾値電圧よりも高い閾値電圧の素子を使用することができるのでチップ面積を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施例のチャージポンプ回路の回路図である。
図2A図1のチャージポンプ回路のトランジスタM1,M2を制御する電圧の波形図である。
図2B図1のチャージポンプ回路のトランジスタM3,M4を制御する電圧の波形図である。
図3】本発明の第2の実施例のチャージポンプ回路の回路図である。
図4】従来のチャージポンプ回路の回路図である。
図5図4のチャージポンプ回路のトランジスタM1を制御する電圧の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1の実施例>
図1に本発明のチャージポンプ回路を示す。図4で説明したものと同じものには同じ符号をつけた。DET1〜DET4は電圧検出回路であり、それぞれ駆動バッファ回路A1〜A4の出力電圧V1〜V4の電圧レベルを検出する。CTRL1〜CTRL4は制御回路であり、制御端子IN1〜IN4の電圧と電圧検出回路DET1〜DET4の出力電圧の論理の組み合わせによって、それぞれNMOSトランジスタM5〜M7、PMOSトランジスタM8のON/OFFを制御する。
【0030】
トランジスタM5〜M8は、それぞれトランジスタM1〜M4のONの開始動作又はOFFの終了動作の高速化(駆動バッファ回路A1〜A4の駆動能力の増大化)を補助するためのものであり、駆動バッファ回路A1〜A4の電流能力よりも高い電流能力を有している。つまり、トランジスタM5〜M8のON抵抗をRaとし、駆動バッファ回路A1〜A4の出力抵抗をRbとするとき、Ra<<Rbの関係にある。例えば、Ra=100Ω、Rb=10kΩである。制御端子IN1,IN2には“H”レベルとして電圧VDD(例えば、3V)が入力し、“L”レベルとしてGNDが入力する。制御端子IN3,IN4にも当初は“H”レベルとして電圧VDDが入力し、“L”レベルとしてGNDが入力するが、VSS(例えば、−3V)の電圧が生成された後は、“L”レベルとしてその電圧VSSが入力する。
【0031】
電圧検出回路DET1は閾値電圧がVth11(例えば、−0.7V)の反転バッファ回路で構成される。この閾値電圧Vth11の大きさはトランジスタM1の閾値電圧Vth1(例えば、0.7V)と同じ絶対値である。制御回路CTRL1はNOR回路で構成され、制御端子IN1が“L”レベルの電圧で電圧検出回路DET1の出力が“L”レベルの電圧のとき、“H”レベルの電圧を出力してトランジスタM5をONさせる。それ以外では、制御回路CTRL1の出力電圧は“L”レベルとなり、トランジスタM5をOFFさせる。
【0032】
電圧検出回路DET2は閾値電圧がVth21(例えば、0.7V)の正転バッファ回路で構成される。この閾値電圧Vth21の大きさはトランジスタM2の閾値電圧Vth2と同じである。制御回路CTRL2はNOR回路で構成され、制御端子IN2が“L”レベルの電圧で電圧検出回路DET2の出力が“L”レベルの電圧のとき、“H”レベルの電圧を出力してトランジスタM6をONさせる。それ以外では、制御回路CTRL2の出力電圧は“L”レベルとなり、トランジスタ6をOFFさせる。
【0033】
電圧検出回路DET3は閾値電圧がVth31(例えば、0.7V)の正転バッファ回路で構成される。この閾値電圧Vth31の大きさはトランジスタM3の閾値電圧Vth3と同じである。制御回路CTRL3はNOR回路で構成され、制御端子IN3が“L”レベルの電圧で電圧検出回路DET3の出力が“L”レベルの電圧のとき、“H”レベルの電圧を出力してトランジスタM7をONさせる。それ以外では、制御回路CTRL3の出力電圧は“L”レベルとなり、トランジスタ7をOFFさせる。
【0034】
電圧検出回路DET4は閾値電圧がVth41(例えば、−0.7V)の反転バッファ回路で構成される。この閾値電圧Vth41の大きさはトランジスタM4の閾値電圧Vth4(例えば、0.7V)と同じ絶対値である。制御回路CTRL4はNAND回路で構成され、制御端子IN4が“H”レベルの電圧で電圧検出回路DETの出力が“H”レベルの電圧のとき、“L”レベルの電圧を出力してトランジスタM8をONさせる。それ以外では、制御回路CTRL4の出力電圧は“H”レベルとなり、トランジスタ8をOFFさせる。
【0035】
次に動作を説明する。まず、タイミング(1)でトランジスタM3がONし、次にタイミング(2)でトランジスタM1がONすることで、キャパシタC1に電圧VDDが充電される。
【0036】
トランジスタM3がONするタイミング(1)における波形を図2Bの(c)の右側に示す。このときは、制御端子IN3が“L”レベルの電圧から“H”レベルの電圧となり、駆動バッファ回路A3がトランジスタM3のゲート電圧V3を“H”レベルの電圧にしようと動作する。制御回路CTRL3の出力電圧は、制御端子IN3が“H”レベルの電圧になったことで、電圧検出回路DET3の出力の論理に関係なく、“L”レベルの電圧となる。つまり、トランジスタM7はOFFのままである。このときは、トランジスタM3は駆動バッファ回路A3のみによって駆動され、電圧V3は緩やか上昇する。
【0037】
トランジスタM1がONするタイミング(2)における波形を図2Aの(a)の左側に示す。このときは、制御端子IN1が“H”レベルの電圧から“L”レベルの電圧となり、駆動バッファ回路A1がトランジスタM1のゲート電圧V1を“L”レベルの電圧にしようと動作する。具体的には、駆動バッファ回路A1はトランジスタM1の入力容量の電荷を抜くために電流を放電する。
【0038】
トランジスタM1の入力容量が放電されることで、電圧V1が下降し始める。このとき、電圧検出回路DET1の出力が“L”レベルの電圧であるので、制御回路CTRL1は“H”レベルの電圧を出力し、トランジスタM5をONさせる。このトランジスタM5は、前記のように駆動バッファ回路A1よりも高い電流能力を有するよう設定されているので、トランジスタM5がONすることでトランジスタM1の入力容量を放電させる電流が増大し、電圧V1が下降するスピードが速くなる。
【0039】
電圧V1が下降して出回路DET1の閾値電圧Vth11に達すると、電圧検出回路DET1の出力が“L”レベルの電圧から“H”レベルの電圧へと切り替わる。これにより、制御回路CTRL1の出力が“L”レベルの電圧となり、トランジスタM5がOFFする。このため、トランジスタM5によるトランジスタM1の入力容量の放電電流が無くなる。
【0040】
トランジスタM1の閾値電圧Vth1は、電圧検出回路DET1の閾値電圧Vth11と同じ値に設定されていることから、この後はトランジスタM1がONして、その入力容量の電荷が駆動バッファ回路A1のみでの放電されることになる。また、このトランジスタM1のONと既にONになっていたトランジスタM3とにより、キャパシタC1への充電回路がGNDラインを介して形成されて、キャパシタC1の充電が開始する。
【0041】
このとき、GNDラインの配線抵抗と寄生誘導成分による共通インピーダンスに流れるキャパシタC1の充電電流により、GND電位が揺れてしまう。特に寄生誘導成分は周波数依存性を持ち、単位時間当たりの電流の変化量が大きいほどこの寄生誘導成分の両端に発生する電圧は大きくなる。よって、共通インピーダンスの両端に発生する電圧がGND電位を変動させ、スイッチングノイズが発生する。
【0042】
しかし、本実施例では、上述の通り、駆動バッファ回路A1が電流を放電する能力が低く設定されているために、充電電流の変化量が少なくなり、スイッチングノイズを抑制することができる。
【0043】
また、駆動端子IN1の電圧が“L”レベルの電圧となって電圧V1が下降し始めてから、その電圧V1がトランジスタM1の閾値電圧Vth1に達するまでの期間は、トランジスタM5がONしていることによりトランジスタM1の入力容量から電荷を放電するスピードが上がる。このため、制御端子IN1の電圧が“H”レベルの電圧から“L”レベルの電圧に変化してからトランジスタM1のONするまでの時間を短くすることができる。つまり、高速動作が実現でき電圧変換効率を高くすることができる。
【0044】
以上のように、制御端子IN1が“L”レベル電圧になってからトランジスタM1がONするまでの時間はトランジスタM5の電流能力によって高速化され、また、トランジスタM1がONしてからのON抵抗の減少変化は駆動バッファ回路A1の電流能力によって緩慢に行われる。したがって、電圧変換効率の高効率化とスイッチングノイズ抑制の両者を同時に実現することができる。
【0045】
次に、タイミング(3)でトランジスタM3がOFFし、続けてタイミング(4)でトランジスタM1がOFFすることで、キャパシタC1への充電が停止される。
【0046】
トランジスタM3がOFFするタイミング(3)における波形を図2Bの()の側に示す。このときは、制御端子IN3が“H”レベルの電圧から“L”レベルの電圧となり、駆動バッファ回路A3がトランジスタM3のゲート電圧V3を“L”レベルの電圧にしようと動作する。具体的には、駆動バッファ回路A3はトランジスタM3の入力容量の電荷を抜くために電流を放電する。
【0047】
トランジスタM3の入力容量が放電されることで、電圧V3が下降し始める。このとき、電圧検出回路DET3の出力が“H”レベルの電圧であるので、制御回路CTRL3は“L”レベルの電圧を出力し、トランジスタM7をOFFさせる。このため、電圧V3は駆動バッファ回路A3によって緩慢に下降し、トランジスタM3のON抵抗が緩慢に増大し、これによりスイッチングノイズの発生が抑制される。
【0048】
電圧V3が下降して検出回路DET3の閾値電圧Vth31に達すると、電圧検出回路DET3の出力が“H”レベルの電圧から“L”レベルの電圧へと切り替わる。これにより、制御回路CTRL3の出力が“H”レベルの電圧となり、トランジスタM7がONする。このため、トランジスタM7によるトランジスタM3の入力容量の放電スピードが速くなる。
【0049】
トランジスタM1がOFFするタイミング(4)における波形を図2Aの(a)の右側に示す。このときは、制御端子IN1が“L”レベルの電圧から“H”レベルの電圧となり、駆動バッファ回路A1がトランジスタM1のゲート電圧V1を“H”レベルの電圧にしようと動作する。制御回路CTRL1の出力電圧は、制御端子IN3が“H”レベルの電圧になると、電圧検出回路DET1の出力の論理に関係なく、“L”レベルの電圧となる。つまり、トランジスタMはOFFのままである。このとき、トランジスタM1は駆動バッファ回路A1のみによって駆動され、電圧V1は緩やか下降するが、キャパシタC1に対する回路は既にトランジスタM3によって遮断されているので、回路に影響を与えることはない。
【0050】
次に、タイミング(5)でトランジスタM2がONし、続けてタイミング(6)でトランジスタM4がOFFすることで、キャパシタC1からキャパシタC2えの電荷の移動が行われる。
【0051】
トランジスタM2がONするタイミング(5)における波形を図2Aの(b)の右側に示す。このときの動作は、トランジスタM1がONするときのタイミング(1)の動作と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0052】
トランジスタM4がONするタイミング(6)における波形を図2Bの(d)の右側に示す。このときは、制御端子IN4が“L”レベルの電圧から“H”レベルの電圧となり、駆動バッファ回路A4がトランジスタM4のゲート電圧V4を“H”レベルの電圧にしようと動作する。具体的には、駆動バッファ回路A4はトランジスタM4の入力容量に電荷を充電する。
【0053】
トランジスタM4の入力容量が充電されることで、電圧V4が上昇を始める。このとき、電圧検出回路DET4の出力が“H”レベルの電圧であるので、制御回路CTRL4は“L”レベルの電圧を出力し、トランジスタM8をONさせる。このトランジスタM8は、前記のように駆動バッファ回路A4よりも高い電流能力を有するよう設定されているので、トランジスタM8がONすることでトランジスタM4の入力容量を充電させる電流が増大し、電圧V4が上昇するスピードが速くなる。
【0054】
電圧V4が上昇して電圧検出回路DET4の閾値電圧Vth41に達すると、電圧検出回路DET4の出力が“H”レベルの電圧から“L”レベルの電圧へと切り替わる。これにより、制御回路CTRL4の出力が“H”レベルの電圧となり、トランジスタM8がOFFする。このため、トランジスタM8によるトランジスタM4の入力容量の充電電流が無くなる。
【0055】
トランジスタM4の閾値電圧Vth4は、電圧検出回路DET4の閾値電圧Vth41と同じ値に設定されていることから、この後はトランジスタM4がONして、その入力容量の電荷が駆動バッファ回路A4のみで充電されることになる。また、このトランジスタM4のONと既にONになっていたトランジスタM2とにより、キャパシタC1,C2が並列接続され、キャパシタC1の電荷がキャパシタC2に移動される。
【0056】
このとき、駆動端子IN4の電圧が“H”レベルの電圧となって電圧V4が上昇し始めてから、その電圧V4がトランジスタM4の閾値電圧Vth4に達するまでの期間は、トランジスタM8がONしていることによりトランジスタM4の入力容量に電荷を充電するスピードが上がる。このため、制御端子IN4の電圧が“L”レベルの電圧から“H”レベルの電圧に変化してからトランジスタM4のONするまでの時間を短くすることができる。つまり、高速動作が実現でき電圧変換効率を高くすることができる。
【0057】
次に、タイミング(7)でトランジスタM2がOFFし、続けてタイミング(8)でトランジスタM4がOFFすることで、キャパシタC1からキャパシタC2への電荷の移動が停止される。
【0058】
トランジスタM2がOFFするタイミング(7)における波形を図2Aの(b)の左側に示す。このときの動作は、前記したトランジスタM3がOFFするときのタイミング(3)の動作と同じであるので、詳しい説明は省略する。
【0059】
トランジスタM4がOFFするタイミング(8)における波形を図2Bの(d)の左側に示す。このときは、制御端子IN4が“H”レベルの電圧から“L”レベルの電圧となり、駆動バッファ回路A4がトランジスタM4のゲート電圧V4を“L”レベルの電圧にしようと動作する。制御回路CTRL4の出力電圧は、制御端子IN4が“L”レベルの電圧になったことで、電圧検出回路DET4の出力の論理に関係なく、“H”レベルの電圧となる。つまり、トランジスタM8はOFFのままである。このとき、トランジスタM4は駆動バッファ回路A4のみによって駆動され、電圧V4は緩やか下降するが、キャパシタC1、C2を接続する回路は既にトランジスタM2によって遮断されているので、回路に影響を与えることはない。
【0060】
<第2の実施例>
図1で説明した実施例では、電圧検出回路DET1とトランジスタM1、電圧検出回路DET2とトランジスタM2、電圧検出回路DET3とトランジスタM3、電圧検出回路DET4とトランジスタM4の閾値電圧の絶対値がそれぞれ同じ場合で説明した。
【0061】
しかし、トランジスタM1〜M4は比較的大きな電流が流れるので大きな面積の素子となり、その閾値電圧は低い。一方、電圧比較回路DET1〜DET4を構成するトランジスタは小さな面積の素子を使用するので、その閾値電圧はトランジスタM1〜M4の閾値電圧より高くなってします。
【0062】
そこで本実施例では、トランジスタM1〜M4に小さな閾値電圧の素子を使用するとき、電圧検出回路DET2,DET3のトランジスタについては、大きな閾値電圧の素子を使用する。そして、図3に示すように、電圧検出回路DET2の出力側にその電圧検出回路DET2の出力電圧を遅延する遅延回路DL2を挿入し、電圧検出回路DETの出力側に電圧検出回路DET3の出力電圧を遅延する遅延回路DL3を挿入する。遅延回路DL2の遅延時間はトランジスタM2がOFFする際にトランジスタM6がONする値に設定し、遅延時間DL3の遅延時間はトランジスタM3がOFFする際にトランジスタM7がONする値に設定する。
【0063】
これによって、電圧検出回路DET2,DET3に閾値電圧が大きな素子、つまりサイズの小さな素子を使用することができるので、チップ面積縮小が可能となる。
【符号の説明】
【0064】
M1,M8:PMOSトランジスタ
M2〜M7:NMOSトランジスタ
C1,C2:キャパシタ
A1〜A4:駆動バッファ回路
DET1〜DET4:電圧検出回路
CTRL1〜CTRL4:制御回路
IN1〜IN4:制御端子
DEL2,DEL3:遅延回路
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5