(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、加熱が必要とされる部位を十分に加熱することができるドライ真空ポンプを提供することを目的とする。また、本発明は、そのようなドライ真空ポンプの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、気体を移送するポンプロータと、前記ポンプロータが内部に配置されたポンプケーシングと、前記ポンプケーシング
の内面上に形成された溶射発熱体とを備えたことを特徴とするドライ真空ポンプである。
【0008】
本発明の好ましい態様は、前記溶射発熱体は、前記ポンプケーシング
の内面上に溶射された絶縁材料からなる絶縁層と、前記絶縁層の上に溶射された導電材料からなる導電層とを有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記溶射発熱体は、前記ポンプケーシングの第1の部位上に形成された第1溶射発熱体と、前記ポンプケーシングの第2の部位上に形成された第2溶射発熱体とを備え、前記ドライ真空ポンプは、前記第1の部位の温度を測定する第1温度センサと、前記第2の部位の温度を測定する第2温度センサと、前記第1の部位の温度の測定値および前記第2の部位の温度の測定値に基づいて、前記第1溶射発熱体および第2溶射発熱体が発生する熱量を別々に制御する温度制御部とをさらに備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記溶射発熱体を覆う断熱材をさらに備えたことを特徴とする
。
本発明の好ましい態様は、前記ドライ真空ポンプは、前記ポンプケーシングに接続された気体入口ポートおよび気体出口ポートをさらに備えており、前記気体入口ポートおよび前記気体出口ポートの少なくとも一方に、溶射発熱体が形成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記溶射発熱体の露出面上に形成されたシール層をさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様は、ポンプケーシング
の内面上に溶射によって溶射発熱体を形成し、ポンプロータを前記ポンプケーシング内に配置することを特徴とするドライ真空ポンプの製造方法である。
本発明の好ましい態様は、前記ポンプケーシング
の内面上に溶射によって溶射発熱体を形成する工程は、絶縁材料を前記ポンプケーシング
の内面上に溶射することによって絶縁層を形成し、導電材料を前記絶縁層上に溶射することによって導電層を形成する工程を含むことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記溶射発熱体の露出面上にシール層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶射発熱体によりポンプケーシングが加熱される。本明細書において、溶射発熱体とは、材料を被加熱部材上に溶射することによって形成された電気ヒータをいう。溶射技術によって形成された溶射発熱体は、ポンプケーシング上に強固に密着する。しかも、所望の箇所に所望の大きさおよび所望の形状で溶射発熱体を形成することができる。したがって、溶射発熱体は、ポンプケーシングの所望の箇所を十分に加熱することができ、プロセスガスの固化を防止することができる。さらに、複数の溶射発熱体の熱量を制御することにより、ポンプケーシングの熱変形を修正することで、ポンプ性能の安定化、或いは異常変形によるポンプケーシング、ポンプロータ間の接触故障などを防止することが可能となる。結果として、ポンプ性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るドライ真空ポンプを示す側面断面図であり、
図2は
図1に示すドライ真空ポンプの上面断面図である。
図1および
図2に示すように、ドライ真空ポンプは、気体を移送する2つのポンプロータ10と、これらポンプロータ10が内部に配置されたポンプケーシング1と、2つのポンプロータ10を回転させる2つのモータ14とを備えている。
【0014】
ポンプロータ10は2本の回転軸15にそれぞれ固定されており、これら回転軸15は軸受17,18によって回転可能に支持されている。2つのモータ14は、それぞれの回転軸15の一端に連結されている。モータ14は、2つのポンプロータ10を互いに反対方向に同期して回転させるように構成されている。回転軸15の他端には、2つのタイミングギヤ20が固定されている。このタイミングギヤ20は、2つのモータ14の同期回転が失われた場合に、2つのポンプロータ10の同期回転を確保するために設けられている。
【0015】
ポンプケーシング1は、ポンプロータ10を囲む周壁2と、ポンプロータ10の両側に配置された2つの側壁3,4とを備えている。ポンプロータ10は、周壁2と2つの側壁3,4とによって形成される空間内に配置されている。ポンプケーシング1には、気体をポンプケーシング1内に導入するための気体入口ポート5と、気体をポンプケーシング1から排出するための気体出口ポート6が接続されている。吸込側の軸受17は、側壁3に固定された軸受ケーシング22内に配置されており、モータ14は、軸受ケーシング22に固定されたモータケーシング19内に配置されており、タイミングギヤ20および吐出側の軸受18は、側壁4に固定されたギヤケーシング21内に配置されている。
【0016】
本実施形態では、ポンプロータ10としてスクリュー型ポンプロータが使用されている。しかしながら、本発明はスクリュー型ポンプロータに限定されず、他のタイプのポンプロータを使用してもよい。例えば、
図3および
図4に示すように、ポンプロータ10としてルーツ型ポンプロータを使用してもよい。
図3および
図4に示すドライ真空ポンプにおいて、同一の構成には同一の符号を付して、その重複する説明を省略する。
図3および
図4に示すルーツ型ポンプロータは、多段ポンプロータであるが、単段ポンプロータであってもよい。
【0017】
ドライ真空ポンプは次のようにして運転される。モータ14が2つのポンプロータ10を反対方向に回転させると、気体が気体入口ポート5を通じてポンプケーシング1内に導入される。気体は、ポンプロータ10の回転によって下流側に移送されながら、圧縮される。圧縮された気体は、気体出口ポート6を通じてポンプケーシング1の外部に排出される。
【0018】
ドライ真空ポンプは気体の流路に潤滑油を使用しないので、清浄な環境が必要とされる半導体デバイスの製造工程に広く使用される。例えば、ドライ真空ポンプの気体入口ポート5は、CVD装置のプロセスチャンバーに接続され、プロセスチャンバーからプロセスガスを吸引する。半導体デバイスの製造に使用されるプロセスガスには、温度が低下すると固化するものがある。ポンプケーシング1内でプロセスガスが固化して析出物を形成すると、この析出物がポンプロータ10の回転を阻害してしまう。
【0019】
そこで、ドライ真空ポンプは、ポンプケーシング1を加熱するための溶射発熱体23,24,25を備えている。溶射発熱体は、材料を被加熱部材(本実施形態ではポンプケーシング1)上に溶射することによって形成された電気ヒータである。
図5は、溶射発熱体23を模式的に示す平面図であり、
図6は、
図5のA−A線断面図である。溶射発熱体23は、ポンプケーシング1上に形成された絶縁層27と、絶縁層27上に形成された導電層28と、導電層28に接続された電極29とを備えている。
【0020】
溶射発熱体23は次のようにしてポンプケーシング1上に形成される。まず、絶縁材料をポンプケーシング1の表面上に溶射し、ポンプケーシング1上に絶縁層27を形成する。次に、導電材料を絶縁層27の上に溶射し、該絶縁層27上に導電層28を形成する。最後に、電極29を導電層28に接続する。他の溶射発熱体24,25も同じ工程によって形成され、同じ構成を有している。溶射発熱体をポンプケーシング1上に形成する工程は、ポンプロータ10をポンプケーシング1内に配置する前に行われてもよく、またはポンプロータ10をポンプケーシング1内に配置した後に行ってもよい。
【0021】
一例では、絶縁層27を構成する絶縁材料として酸化アルミニウム(アルミナ)が使用され、導電層28を構成する導電材料として銅などの金属が使用される。電極29を通じて導電層28に電流を流すと、導電層28が発熱する。溶射発熱体は、ポンプケーシング1の表面に密着しているので、熱伝達率が高いという利点がある。また、溶射発熱体は薄く形成することが可能である。例えば、厚さ100μm程度の厚さを有する溶射発熱体を形成することも可能である。
【0022】
溶射発熱体23の導電層28は大気中に露出しているため、大気との接触により、酸化などの導電層28の状態が変化し、導電抵抗値の変化や、導電路の亀裂等が発生する可能性がある。また、後述するように、溶射発熱体23をポンプケーシング1内に形成する場合、ポンプケーシング1内を通過するプロセスガスにより、酸化などの反応腐食が発生し、導電層28の性能が劣化する可能性がある。
【0023】
そこで、
図7および
図8に示すように、溶射発熱体23の露出面全体を覆うシール層30を設けてもよい。シール層30は溶射発熱体23の露出面上に形成されており、導電層28、絶縁層27、および電極29のそれぞれの露出面に密着している。このシール層30の構成および形成工程は、導電層28を周囲雰囲気から保護する目的を達成できれば、特に限定されない。例えば、絶縁層27と同一材料を溶射発熱体23に溶射することでシール層30を形成してもよいし、樹脂剤を溶射発熱体23に塗布することでシール層30を形成してもよい。他の溶射発熱体24,25も同様にシール層で覆ってもよい。
【0024】
図9は、一般なドライ真空ポンプに使用されているリボンヒータ33を示す模式図であり、
図10は本実施形態の溶射発熱体23を示す模式図である。
図9に示すように、ポンプケーシング1の外周面には、ドライ真空ポンプの組み立て上の理由から、フランジなどの凸部31が形成されていることがある。このような凸部31を有するポンプケーシング1の外周面にリボンヒータ33が巻き付けられると、リボンヒータ33の一部がポンプケーシング1から離れ、結果として熱伝達率が低くなってしまう。
【0025】
これに対し、溶射発熱体23は、ポンプケーシング1の外周面に溶射によって形成されるので、
図10に示すように、凸部31を有するポンプケーシング1の外周面上の所望の場所に所望の大きさで配置することが可能である。凸部31上に溶射発熱体を形成することも可能である。
【0026】
図1乃至
図4に示すように、本実施形態では、3つの溶射発熱体23,24,25がポンプケーシング1上に形成されている。具体的には、溶射発熱体23は周壁2の外面上に形成されており、溶射発熱体24は、吸込側の側壁3の外面上に形成されており、溶射発熱体25は、吐出側の側壁4の外面上に形成されている。
【0027】
図11は、
図1に示すドライ真空ポンプの外観図であり、
図12は、
図2に示すドライ真空ポンプの外観図であり、
図13は
図1のB−B線断面図であり、
図14は
図1のC−C線断面図である。溶射発熱体24の電極29には電線35が接続されている。同様に、溶射発熱体25の電極29には電線35が接続されている。電流はこれらの電線35を通じて溶射発熱体24,25に流れ、溶射発熱体24,25が発熱する。図示しないが、溶射発熱体23の電極29(
図5参照)にも電線が接続されており、電流は電線を通じて溶射発熱体23に流れる。溶射発熱体23はポンプケーシング1の外周面(すなわち周壁2の外面)の全体を覆っている。
【0028】
図1に示すように、溶射発熱体23,24,25は上記電線(点線で示す)を介して温度制御部40に接続されており、溶射発熱体23,24,25から発せられる熱量は温度制御部40によって制御される。ポンプケーシング1には、ポンプケーシング1の異なる部位の温度を測定する温度センサ43,44,45が取り付けられている。具体的には、温度センサ43はポンプケーシング1の周壁2に固定されており、温度センサ44はポンプケーシング1の吸込側の側壁3に固定されており、温度センサ45はポンプケーシング1の吐出側の側壁4に固定されている。
【0029】
ポンプケーシング1の周壁2および側壁3,4の温度は、これら温度センサ43,44,45によって測定され、温度の測定値は温度制御部40に送られる。温度制御部40は、ポンプケーシング1の周壁2および側壁3,4の温度の測定値に基づいて、溶射発熱体23,24,25が発生する熱量を別々に制御する。より具体的には、温度制御部40は、ポンプケーシング1の周壁2および側壁3,4の温度の測定値に基づいて、溶射発熱体23,24,25に流れる電流を制御するように構成されている。
【0030】
一般に、ポンプケーシング1の吸気側の温度は、ポンプケーシング1の吐出側の温度よりも低い。これは、ポンプロータ10の回転によって気体が圧縮されるに従って気体の温度が上昇するからである。プロセスガスの中には、温度が低い条件下で固化しやすい物質がある。したがって、このように比較的温度が低い条件で固化するプロセスガスはポンプケーシング1の吸気側で固化しやすい。
【0031】
本実施形態によれば、ポンプケーシング1の外面が加熱されるのみならず、吸気側の側壁3と、吐出側の側壁4が別々に加熱される。例えば、プロセスガスが固化しやすい吸気側の側壁3を加熱することで、ポンプケーシング1の吸気側でのプロセスガスの固化を防止することができる。さらに、温度制御部40は、温度センサ43,44,45から送られる温度の測定値に基づいて、ポンプケーシング1の周壁2および側壁3,4の温度が同じ値に保たれるように、溶射発熱体23,24,25が発生する熱量を制御することもできる。
【0032】
ドライ真空ポンプは、ポンプロータ10とポンプケーシング1との間に微小な隙間が形成されている。この隙間がポンプケーシング1の熱変形によって不均一となると、ポンプ性能が低下する。温度制御部40は、溶射発熱体23,24,25から発せられる熱量を個別に制御できるので、ポンプケーシング1の熱変形を修正しポンプ性能を安定化させることが可能である。更にポンプケーシング1の異常な変形によってポンプケーシング1とポンプロータ10との接触を防ぐことが可能になる。
【0033】
図15乃至
図17は、溶射発熱体23によって加熱されるポンプケーシング1の周壁2の温度を測定するための温度センサ43の設置例を示す図である。
図15に示す例では、温度センサ43は、周壁2の外面と溶射発熱体23との間に挟まれている。
図16に示す例では、温度センサ43は、周壁2内に埋設されている。
図17に示す例では、温度センサ43は、溶射発熱体23に隣接して周壁2上に配置されている。いずれに例においても、温度センサ43は、溶射発熱体23によって加熱されるポンプケーシング1の周壁2の温度を測定することが可能である。ポンプケーシング1の側壁3,4の温度を測定するための温度センサ44,45も、
図15乃至
図17に示すように設置される。
【0034】
上記実施形態では、3つの溶射発熱体23,24,25がポンプケーシング1に固定されているが、4つ以上の溶射発熱体をポンプケーシング1に設けてもよい。例えば、ポンプケーシング1の周壁2に複数の溶射発熱体を設けてもよい。温度センサは、溶射発熱体ごとに設けることが好ましい。
【0035】
図18は、他の実施形態に係るドライ真空ポンプの外観図であり、
図19は、
図18に示すドライ真空ポンプの断面図である。この実施形態では、2つの溶射発熱体23A,23Bがポンプケーシング1の外面上に形成されている。より具体的には、第1溶射発熱体23Aは、ポンプケーシング1の周壁2の吸気側部位に形成され、第2溶射発熱体23Bは、ポンプケーシング1の周壁2の吐出側部位に形成されている。ポンプケーシング1の側壁3,4には、上述の実施形態と同様に、溶射発熱体24,25が形成されている。
【0036】
ポンプケーシング1には、第1溶射発熱体23Aによって加熱された吸気側部位の温度を測定する第1温度センサ43Aが固定されている。さらに、第2溶射発熱体23Bによって加熱された吐出側部位の温度を測定する第2温度センサ43Bがポンプケーシング1に固定されている。ポンプケーシング1の吸気側部位および吐出側部位の温度は、これら温度センサ43A,43Bによって測定され、温度の測定値は温度制御部40に送られる。温度制御部40は、ポンプケーシング1の吸気側部位および吐出側部位の温度の測定値に基づいて、溶射発熱体23A,23Bが発生する熱量を別々に制御する。より具体的には、温度制御部40は、ポンプケーシング1の吸気側部位および吐出側部位の温度の測定値に基づいて、溶射発熱体23A,23Bに流れる電流を制御するように構成されている。
【0037】
本実施形態によれば、ポンプケーシング1の吸気側部位および吐出側部位が別々に加熱される。例えば、プロセスガスが固化しやすい吸気側部位を加熱することで、ポンプケーシング1の吸気側でのプロセスガスの固化を防止することができる。さらに、温度制御部40は、温度センサ43A,43Bから送られる温度の測定値に基づいて、ポンプケーシング1の吸気側部位および吐出側部位の温度が同じ温度に保たれるように、溶射発熱体23A,23Bが発生する熱量を制御することもできる。
【0038】
さらに、本実施形態では、気体入口ポート5にも溶射発熱体47が設けられている。この溶射発熱体47は気体入口ポート5の外周面上に形成されている。気体入口ポート5には温度センサ48が固定されており、溶射発熱体47によって加熱された気体入口ポート5の温度はこの温度センサ48によって測定される。温度の測定値は温度制御部40に送られ、温度制御部40は、気体入口ポート5の温度の測定値に基づいて、溶射発熱体47が発生する熱量を制御する。
【0039】
圧縮される前のプロセスガスは気体入口ポート5を通過するので、気体入口ポート5は低温となる傾向にある。このため、プロセスガスは気体入口ポート5内で固化しやすい。本実施形態によれば、溶射発熱体47によって気体入口ポート5が加熱されるので、気体入口ポート5内でのプロセスガスの固化を防止することができる。図示しないが、気体出口ポート6を加熱するための溶射発熱体、および気体出口ポート6の温度を測定する温度センサを設けてもよい。
【0040】
図20は、さらに他の実施形態に係るドライ真空ポンプの側面断面図であり、
図21は
図20に示すドライ真空ポンプの上面断面図である。
図20および
図21に示すように、溶射発熱体23,24,25は、ポンプケーシング1の内面上に形成されている。より具体的には、溶射発熱体23は、ポンプケーシング1の周壁2の内面上に形成され、溶射発熱体24はポンプケーシング1の吸込側の側壁3の内面上に形成され、溶射発熱体25はポンプケーシング1の吐出側の側壁4の内面上に形成されている。上述した実施形態と同様に、周壁2の温度、吸込側の側壁3の温度、および吐出側の側壁4の温度を測定するための温度センサ43,44,45がポンプケーシング1に固定されている。
【0041】
プロセスガスの固化は、ポンプケーシング1の内部で起こる。本実施形態によれば、ポンプケーシング1の内部が優先的に加熱されるので、プロセスガスの固化を効果的に防止することができる。特に、ポンプケーシング1内を流れるプロセスガスは、ポンプケーシング1の内面上に形成された溶射発熱体23,24,25に接触し、これら溶射発熱体23,24,25によって直接加熱される。したがって、ポンプケーシング1の内面上に形成された溶射発熱体23,24,25は、プロセスガスの固化を効果的に防止することが可能である。
【0042】
溶射発熱体23,24,25は非常に薄く形成することができるので、
図20および
図21に示すように、溶射発熱体をポンプケーシング1の内部に配置することが可能である。
図18および
図19に示す実施形態のように、吸気側の第1溶射発熱体23Aと吐出側の第2溶射発熱体23Bを、ポンプケーシング1の周壁2の内面上に形成してもよい。この場合も、温度制御部40は、第1溶射発熱体23Aと第2溶射発熱体23Bとを別々に制御することが好ましい。
【0043】
ポンプケーシング1の外面と内面の両方に溶射発熱体を形成してもよい。例えば、
図1および
図2に示す実施形態を
図20および
図21に示す実施形態に組み合わせてもよい。または、
図22に示すように、溶射発熱体23をポンプケーシング1の周壁2の外面上に形成し、溶射発熱体24,25をポンプケーシング1の側壁2,3の内面上に形成してもよい。
【0044】
図23は、さらに他の実施形態に係るドライ真空ポンプの側面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図1および
図2に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図23に示すように、ポンプケーシング1の周壁2上に形成された溶射発熱体23は、断熱材51で覆われている。断熱材51は、溶射発熱体23から発生した熱の放射を防ぐことができる。したがって、溶射発熱体23は、より少ない電力でポンプケーシング1を効率よく加熱することができる。
【0045】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。