特許第6453568号(P6453568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6453568ガンマカメラ調整装置、ガンマカメラシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453568
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】ガンマカメラ調整装置、ガンマカメラシステム
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
   G01T7/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-136485(P2014-136485)
(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-14579(P2016-14579A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年6月16日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 先端計測分析技術・機器開発プログラムに係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】古川 泰生
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−115185(JP,U)
【文献】 特開2014−081372(JP,A)
【文献】 特開2000−193615(JP,A)
【文献】 実開昭62−115190(JP,U)
【文献】 特開平09−038075(JP,A)
【文献】 特開2007−178364(JP,A)
【文献】 特開2013−250108(JP,A)
【文献】 特開2007−271406(JP,A)
【文献】 特開2006−055393(JP,A)
【文献】 特開平3−13883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境放射線を測定するためのものであって、被写体から放出される放射線量の分布状態を二次元画像で表示するガンマカメラを調整するためのガンマカメラ調整装置であって、
放射線源を移動可能に保持する保持機構を具備し、
前記保持機構が、前記放射線源を一定又は可変速度で移動させ
可搬型であることを特徴とするガンマカメラ調整装置。
【請求項2】
前記保持機構が、前記放射線源を移動させる移動範囲を複数の領域に分けて、前記領域毎に異なる速度で、前記放射線源を移動させることを特徴とする請求項1記載のガンマカメラ調整装置。
【請求項3】
前記保持機構が、互いに垂直に交わる2つの座標軸上の任意の位置に前記放射線源を移動可能なものであることを特徴とする請求項1又は2記載のガンマカメラ調整装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載されたガンマカメラ調整装置と、環境放射線を測定するためのものであって、被写体から放出される放射線量の分布状態を二次元画像で表示するガンマカメラとを備え、
前記ガンマカメラが、前記被写体を撮像する撮像領域を基準領域と少なくとも1以上のその他の領域に分けるとともに、前記基準領域の感度を基準として前記その他の領域の感度を補正する補正係数を算出することを特徴とするガンマカメラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマカメラを調整するガンマカメラ調整装置及びガンマカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、除染対象地域における環境放射線の分布の可視化や汚染状況を把握する際に、ガンマカメラが用いられている。ここでガンマカメラとは、例えば特許文献1に記載されているように、被写体から放出されるガンマ線の分布状態を二次元画像として表示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−33009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したようなガンマカメラでは、放射線を放出する物質が封印された基準放射線源(以下、放射線源ともいう)を用いてカメラの調整を行っているが、上記放射線源は500円玉位の非常に小さいものであり、点線源となってしまうので、ガンマカメラの二次元画像の調整を行うことができない。
【0005】
そこで、従来では放射線源を多数用意してこれらを多点においた2次元線源を作成して二次元画像を調整したり、実際に放射線源が放出されている現場で二次元画像を調整したりしている。
【0006】
しかしながら、放射線物質である放射線源の取り扱いには様々な制約が課せられる。そのため、これを複数所持するとなると、ユーザに負担を強いることとなる。また、放射線源が放出される現場でガンマカメラを調整するとなると調整時間が余分にかかり、現場での滞在時間が延びることによって人体に悪影響が表れる可能性もある。
【0007】
さらに、上述したガンマカメラが撮像する撮像対象は、環境放射線等、例えば除染対象地域、計画的非難区域や居住制限区域等の広範囲に及ぶので、ガンマカメラは広範囲を撮像するために視野角を広くする必要があり(例えば視野角100度)、視野角を広げることによってガンマカメラのセンサの感度にバラツキが生じてしまう。
【0008】
そのため、感度のバラツキを少しでも抑えるためにガンマカメラの調整を頻繁に行う必要があるが、現状の調整方法ではガンマカメラの調整を頻繁に行うことが難しい。
【0009】
本発明は上記問題に鑑み、ユーザに負担を強いることなく、安全にガンマカメラの二次元画像の調整を行うことができるガンマカメラ調整装置を提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のガンマカメラ調整装置は、被写体を撮像した画像に被写体から放出される放射線量の分布状態を重ね合わせた二次元画像を表示するガンマカメラを調整するためのガンマカメラ調整装置であって、放射線源を移動可能に保持する保持機構を具備し、前記保持機構が、前記放射線源を一定又は可変速度で移動させることを特徴とする。
【0011】
上述の構成によれば、保持機構によって移動させた放射線源が描く軌跡が擬似二次元線源となるので、少なくとも1つの放射線源があれば二次元線源を構成することができ、多数の放射線源を用いずにガンマカメラの二次元画像の調整を行うことができ、ユーザにかかる負担を減らすことができる。
また、放射線源が放出されている現場に赴かずとも、上記擬似二次元線源を用いてガンマカメラの二次元画像を調整することができるので、安全にガンマカメラの調整を行うことができる。
さらに、本発明のガンマカメラが撮像する撮像対象の放射線量が、計画的非難区域や居住制限区域や労働者の被爆線量等、数μSv/h程度の比較的低い放射線量である場合、用いる線源も1GBq未満の管理区域での保管を必要としないものを使用できる(例えば、1MBq程度)。そのため、本発明では、ガンマカメラ調整装置を使用する場所が限定されることなく、任意の場所で自在にガンマカメラ調整装置を使用することができ、加えて、ガンマカメラ調整装置及びガンマカメラを可搬型に構成すれば、ガンマカメラ調整装置及びガンマカメラをユーザの所望する場所に運んで調整を行うことができる。
また、頻繁にガンマカメラを調整する必要が生じた場合でも、本発明のガンマカメラ調整装置を用いて簡便にガンマカメラを調整することができる。
【0012】
ここで、ガンマカメラ調整装置の保持機構が一定速度で放射線源を移動させた場合、この放射線源が描く軌跡は線量が一定の擬似二次元線源となり、保持機構が可変速度で放射線源を移動させた場合、この放射線源が描く軌跡は線量を変化させた擬似二次元線源となる。そのため、保持機構が放射線源を移動させる速度を適宜変更することで、擬似二次元線源の線量のバリエーションを増やすことができ、ガンマカメラが撮像する被写体に合わせて擬似二次元線源の線量を変化させて、ガンマカメラを精度よく調整することができる。
【0013】
この線量のバリエーションを増やした擬似二次元線源の具体的な一態様としては、前記保持機構が、前記放射線源を移動させる移動範囲を複数の領域に分けて、前記領域毎に異なる速度で、前記放射線源を移動させるものを挙げることができる。
【0014】
このように構成すれば、擬似二次元線源の線量を領域毎に変えることができるので、1つの擬似二次元線源の中に線量の異なる複数の領域が形成される。そのため、1つの擬似二次元線源の中に、線量のバリエーションを設けてガンマカメラをより細かく調整することができる。
【0015】
本発明にかかるガンマカメラ調整装置の別の具体的な一態様としては、前記保持機構が、互いに垂直に交わる2つの座標軸上の任意の位置に前記放射線源を移動可能なものを挙げることができる。
【0016】
このように構成すれば、放射線源が移動する軌跡のバリエーションを増やして擬似二次元線源の形態のバリエーションを増やすことができるので、ガンマカメラが撮像する被写体の形態に合わせた擬似二次元線源を用いて調整を行うことができる。
【0017】
また、上述したように構成したガンマカメラ調整装置と、被写体から放出される放射線量の分布状態を二次元画像で表示するガンマカメラとを備えるガンマカメラシステムも本発明の1つである。
具体的に本発明のガンマカメラシステムは、上述したように構成したガンマカメラ調整装置と、被写体から放出される放射線量の分布状態を二次元画像で表示するガンマカメラとを備え、前記ガンマカメラが、前記被写体を撮像する撮像領域を基準領域とそれ以外の少なくとも1以上のその他の領域に分けるとともに、前記基準領域の感度を基準として前記その他の領域の感度を検出し、前記その他の領域の感度が前記基準領域の感度となるように補正する補正係数を算出することを特徴とする。
【0018】
上述したようにガンマカメラが、計画的非難区域や居住制限区域等の広域な地域を撮像する場合、ガンマカメラの視野角を比較的大きく広げる(例えば視野角100度等)必要が生じるが、視野角を広げると、撮像領域に配置された各々の被写体とガンマカメラとの距離がまちまちになるので、検出感度のバラツキが生じてしまう。
しかしながら、本発明のガンマカメラシステムは、基準領域の感度を基準としてその他の領域の感度を検出し、その他の領域の感度が基準領域の感度となるように補正する補正係数を算出するので、広域を撮像するために視野角を広げたような場合であっても、この補正係数に基づいて感度のバラツキを抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ユーザに負担を強いることなく、安全にガンマカメラの二次元画像の調整を行うことができるガンマカメラ調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態におけるガンマカメラシステムを示す概略図。
図2】第1実施形態におけるガンマカメラ調整装置を示す平面図。
図3】第2実施形態におけるガンマカメラ調整装置を示す平面図。
図4】(a)(b)第2実施形態におけるガンマカメラ調整装置において放射線源が描く軌跡を示す平面図。
図5】本実施形態におけるガンマカメラシステムの一例を示す模式図。
図6】本実施形態におけるガンマカメラシステムにおけるガンマカメラの視野角、撮像画像、カウント数を示す表。
図7】本実施形態におけるガンマカメラシステムの視野角に対する感度比を示すグラフ。
図8】本実施形態におけるガンマカメラシステムにおけるガンマカメラの撮像領域を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のガンマカメラシステムは、環境放射線等、例えば原発事故等において設定される計画的避難区域や居住制限区域や、労働者の被爆線量、汚染状況重点調査地域等において被写体から放出される放射線量を測定するためのものであって、被写体から放出される放射線量の分布状態を二次元画像で表示するガンマカメラXと、ガンマカメラXを調整するガンマカメラ調整装置1とを具備する。なお、ここで調整とは、ガンマカメラXの補正や校正を行うことを指す。
【0022】
ガンマカメラXについて説明する。
本実施形態におけるガンマカメラXは、被写体から放出される放射線量の分布状態を二次元画像に表示するものであって、本実施形態では、コンプトン散乱の原理を用いたETCC(電子飛跡検出型コンプトンガンマ線カメラ)を用いたものである。これは、入射ガンマ線がコンプトン散乱を起こした際に発生する反跳電子と散乱ガンマ線を電子飛跡検出器とシンチレーション検出器でそれぞれ検出することにより、入射ガンマ線の飛来方向を特定することができる。また、本実施形態においてガンマカメラXは可搬型のものを用いることができる。
【0023】
しかして、本実施形態のガンマカメラ調整装置1は、図1に示すように、ガンマカメラXと対向するように配置されてガンマカメラXを調整する可搬型のものである。このガンマカメラ調整装置1について、以下2つの実施形態を用いて説明する。
<第1実施形態>
【0024】
第1実施形態におけるガンマカメラ調整装置1aは、図2に示すように、放射線を放出する物質が封印された放射線源6を移動させて、放射線源6の軌跡をガンマカメラXで撮像するものであって、放射線源6を移動可能に保持する保持機構2と、保持機構2を制御する制御部3とを具備する。なお、本実施形態における放射線源6は密封されたものを用いている。
【0025】
保持機構2は、放射線源6を保持する保持部4と、保持部4を回転駆動させる駆動部5とを具備する。
【0026】
保持部4は、放射線源6を保持する保持部本体4aと、保持部本体4aを回転駆動させたときの回転中心となる支軸4bとを具備する。
保持部本体4aは、中空の円筒部材41と、円筒部材41の略中央部で交わる複数の枠骨42とを具備し、この枠骨42の少なくとも1つに放射線源6を保持させるものである。
支軸4bは、複数の枠骨42が互いに交差する交差部43に設けられた孔部に挿入されるものである。
【0027】
駆動部5は、コンデンサやモータ等を具備したものであって、支軸4bに接続され、支軸4bを回転させることによって保持部本体4aを回転させる駆動部本体5aと、駆動部本体5aに動力を供給する筐体形状の動力供給部5bと、駆動部本体5aと動力供給部5bとの間を接続し、動力供給部5bから駆動部本体5aへ動力を供給する図示しないコードが内包された筒形状の接続部5cとを具備する。
【0028】
制御部3は、構造的には、CPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信ポートなどからなるコンピュータ本体と、このコンピュータ本体に接続されたキーボード、マウスなどの入力手段及びディスプレイとからなるものである。そして、入力手段から入力された情報に基づいて、内部メモリの所定領域に格納した制御プログラムに従って動作し、CPU及び周辺機器が協働動作するものである。
【0029】
第1実施形態のガンマカメラ調整装置1aの動作について以下説明する。
【0030】
オペレータが制御部3の入力手段に設けられたガンマカメラXの調整を開始する図示しないスタートボタンを押すと、制御部3は該スタート情報を受け付けて保持機構2を作動させる。
【0031】
保持機構2では、動力供給部5bから接続部5cを介して駆動部本体5aへ動力を供給し、駆動部本体5aは支軸4bを回転させることによって、保持部本体4aを所定方向に回転させる。すると、保持部本体4aに保持された放射線源6が回転する。そのため、放射線源6は円形状の軌跡を描く。
【0032】
このように放射線源6を回転させている状態のガンマカメラ調整装置1aを、ガンマカメラXで撮像する。
このとき、ガンマカメラXのシャッタを開けた状態で所定時間放置すると、ガンマカメラXは、放射線源6が描く軌跡を撮像することとなる。つまり、放射線源6が描く軌跡が擬似二次元線源となるので、この擬似二次元線源を用いてガンマカメラXを調整することができる。本実施形態では、放射線源6が円形状の軌跡を描くので、円形状の擬似二次元線源を用いて、ガンマカメラXを調整することができる。
【0033】
上述したように構成したガンマカメラ調整装置1aは、以下のような格別な効果を有する。
【0034】
つまり、保持機構2によって移動させた放射線源6が描く軌跡が、擬似二次元線源となるので、少なくとも1つの放射線源6があれば二次元線源を構成することができ、多数の放射線源を用いずにガンマカメラXの二次元画像の調整を行うことができ、ユーザにかかる負担を減らすことができる。
また、放射線源6が放出されている現場に赴かずとも、上記擬似二次元線源を用いてガンマカメラXの二次元画像を調整することができるので、安全にガンマカメラXの調整を行うことができる。なお、上記放射線源6が密封されたものであるので、より安全性を高めることができる。
さらに、ガンマカメラXが撮像する撮像対象の放射線量が、計画的非難区域や居住制限区域や労働者の被爆線量等、数μSv/h程度の比較的低い放射線量であるので、用いる線源も1GBq未満の管理区域での保管を必要としないものを使用できる(例えば、1MBq程度)。そのため、ガンマカメラ調整装置1aを使用する場所が限定されることなく、任意の場所で自在にガンマカメラ調整装置1aを使用することができ、加えて、ガンマカメラ調整装置1a及びガンマカメラXを可搬型に構成すれば、ガンマカメラ調整装置1a及びガンマカメラXをユーザの所望する場所に運んで調整を行うことができる。
また、頻繁にガンマカメラXを調整する場合でも、ガンマカメラ調整装置1aを用いて簡便にガンマカメラXを調整することができる。
<第2実施形態>
【0035】
第2実施形態におけるガンマカメラ調整装置1bは、第1実施形態におけるガンマカメラ調整装置1aと放射線源6を保持する保持機構の構成が異なる。なお、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0036】
第2実施形態におけるガンマカメラ調整装置1bは、図3に示すように、ロボットアームで構成され、放射線源6を移動可能に保持する保持機構10と、保持機構10を制御する制御部3とを具備する。
【0037】
保持機構10は、互いに垂直に交わる2軸上の任意の位置に放射線源6を移動可能に保持するものであって、複数のアーム部12(12a、12b、12c)と、可動域を有するようにアーム部12同士を連結する複数の節部13(13a、13b)と、モータ等の動力供給源を内包した筐体形状のベース部15とを具備する。
【0038】
ここで、本実施形態において、互いに垂直に交わる2軸とは、ガンマカメラXと放射線源6との相対距離を変えることなく、一方が水平方向、他方が鉛直方向を向く方向を指すものである。
【0039】
本実施形態において、アーム部12aは、節部13aを介してアーム部12bと接続されている。また、アーム部12bは、節部13bを介してアーム部12cと接続されている。アーム部12cは、アーム部12cに可動域を設ける接続部材14を介してベース部15に接続されている。
【0040】
しかして、一番端に配置されたアーム部12aの先端には、放射線源6が保持されている。
そして、各節部13a、13b、13c及び接続部材14には、図示しないギアが設けられており、このギアには、図示しないコードを介してベース部15の動力供給源から動力が供給される。この動力によってギアを回転させることにより、アーム部12(12a、12b、12c)を節部13(13a、13b)又は接続部材14を回転軸として回転移動させるものである。
【0041】
第2実施形態のガンマカメラ調整装置1bの動作について以下説明する。
【0042】
オペレータが制御部3の入力手段に設けられたガンマカメラXの調整を開始する図示しないスタートボタンを押すと、制御部3は該スタート情報を受け付けて保持機構10を作動させるとともに、オペレータが予め入力したプログラムに基づいて制御信号を生成し、この制御信号を保持機構10へ送信する。保持機構10は、該制御信号を受け付けて放射線源6を移動させる。具体的には、動力供給源から節部13や接続部材14に設けられたギアに供給する動力を制御し、アーム部12(12a、12b、12c)を移動させて放射線源6を互いに垂直に交わる2つの座標軸上の所望の位置に移動させる。
【0043】
この放射線源6の移動経路としては、直線移動させてもよいし、特定の方向に向かって往復移動させてもよい。この場合、例えば、放射線源6を図4に示すように、ガンマカメラXに対して水平方向(以下説明のため、A方向という)に直線移動させて、A方向とは垂直な方向(以下説明のため、B方向という)に直線移動させた後、A方向とは反対方向(以下説明のため、C方向という)に直線移動させ、また、B方向に直線移動させて、今度はA方向に直線移動させるという動作を繰り返すように、制御部3は制御信号を送信する。
【0044】
または、一点に向かって収斂するように移動させることもできる。この場合、例えば図4(a)に示すように、放射線源6をガンマカメラXに対して水平方向(以下説明のため、D方向という)に直線移動させて、D方向とは垂直な方向(以下説明のため、E方向という)に直線移動させた後、D方向とは反対方向(以下説明のため、F方向という)に直線移動させ、今度は、E方向とは反対方向(以下説明のため、G方向という)に直線移動させて、また、D方向に直線移動させるという動作を繰り返させるとともに、その移動させる距離が徐々に短くなるように、制御部3は制御信号を送信する。
【0045】
さらに上述した動作において、移動速度に緩急を設けることもできる。
【0046】
そして、放射線源6を移動させている状態のガンマカメラ調整装置1bを、ガンマカメラXで撮像する。
このとき、第1実施形態と同様に、ガンマカメラXのシャッタを開けた状態で所定時間放置すると、ガンマカメラXは、放射線源6が描く軌跡を撮像することとなる。つまり、放射線源6が描く軌跡が擬似二次元線源となるので、この擬似二次元線源を用いてガンマカメラXを調整することができる。本実施形態では、放射線源6が直線移動する場合、矩形状の軌跡を描くので、ガンマカメラXは矩形形状の擬似二次元線源を撮像することができる。また、放射線源6が所定の方向に向かって往復移動する場合や一点に向かって収斂する場合、放射線源6は略正方形状の軌跡を描くので、ガンマカメラXは略正方形状の擬似二次元線源を撮像することができる。
【0047】
また、放射線源6の移動速度を一定にすると、擬似二次元画像の線量を一定にすることができ、放射線源6の移動速度に緩急を設けると、移動速度が早くなれば擬似二次元画像の線量を薄くすることができるとともに、移動速度が遅くなれば擬似二次元画像の線量を濃くすることができる。
【0048】
そのため、例えば図4(b)に示すように、放射線源6を所定方向に向かって往復移動させる場合にその移動させる範囲を複数の領域(A領域、B領域、C領域)に分けて、それぞれの領域(A領域、B領域、C領域)毎に異なる速度(a速度、b速度、c速度)で、放射線源6を等速移動させることで、1つの擬似二次元線源の中に線量のバリエーションを設けることができる。
【0049】
上述したように構成したガンマカメラ調整装置1bは、以下のような格別な効果を有する。
【0050】
つまり、第2実施形態の保持機構10では、放射線源6を互いに垂直に交わる2つの座標軸上の任意の位置に移動させることができるので、放射線源6を移動させる軌跡のバリエーションを増やすことができる。そのため、擬似二次元線源の形態のバリエーションを増やすことができるので、ガンマカメラXが撮像する被写体の形態に合わせた擬似二次元線源を用いて調整を行うことができる。
【0051】
また、保持機構10が一定速度で放射線源6を移動させた場合、この放射線源6が描く軌跡は線量が一定の擬似二次元線源となり、保持機構10が可変速度で放射線源6を移動させた場合、この放射線源6が描く軌跡は線量を変化させた擬似二次元線源となるので、保持機構10が放射線源6を移動させる速度を適宜変更して、擬似二次元線源の線量のバリエーションを増やすことができる。そのため、ガンマカメラXが撮像する被写体に合わせて擬似二次元線源の線量を変化させて、ガンマカメラXを精度よく調整することができる。
【0052】
加えて、放射線源6を所定方向に向かって往復移動させる場合、その移動させる範囲を複数の領域(A領域、B領域、C領域)に分けて、それぞれの領域(A領域、B領域、C領域)で放射線源6を移動させる移動速度(a速度、b速度、c速度)を変えるので、擬似二次元線源の線量を領域毎に変えて、1つの擬似二次元線源の中に線量の異なる領域を複数設けることができる。そのため、線量のバリエーションを設けた1つの擬似二次元線源でガンマカメラXをより細かく調整することができる。
【0053】
<ガンマカメラシステム>
次に上述したガンマカメラ調整装置を用いた本実施形態のガンマカメラシステムについて説明する。
【0054】
ガンマカメラ調整装置が放射線源を移動させた軌跡が擬似二次元線源となることは上述した通りであるが、ここで、擬似二次元線源の線量がガンマカメラと線源との位置関係に依存して変化することが分かっている。
【0055】
例えば、ガンマカメラ調整装置が放射線源を水平方向に等速直線運動させると、放射線源が描く軌跡からなる略矩形形状の擬似二次元線源の線量は、いずれの位置においても同じとなるのが理想であるが、実際には、擬似二次元線源の線量は異なる。
【0056】
図6は、ガンマカメラ調整装置が放射線源を水平方向に等速直線運動させた場合に、ガンマカメラが撮像した擬似二次元線源の放射線量の分布を示すものである。
【0057】
ここで視野角とは、図5に示すように、ガンマカメラXの正面の略中央の一点から水平に伸びる線を基準線とし、この基準線と、該一点とガンマカメラ調整装置が保持する放射線源とを結んだ線との間の角度のことである。また、カウント数とは、3000secの間にガンマカメラがカウントした電子のことである。
【0058】
図6に示すように、視野角0度、つまりガンマカメラXの正面における放射線量の分布は、中心部分の放射線量が高く、カウント数も365.36であるのに対し、視野角が12.5度又は−12.5度における放射線量分布は、視野角0度のときと比べると中心部分の放射線量が小さくなるとともに、カウント数も小さくなり、視野角が25度又は−25度における放射線量分布は、視野角0度及び12.5度、−12.5度のときと比べると中心部分の放射線量が減少するとともにカウント数も小さくなっていることが分かる。
【0059】
また、図7は視野角0度のときのカウント数を基準として、それぞれのカウント数における感度比をそれぞれ視野角12.5度、−12.5度、25度、−25度のときに求めたグラフである。この感度比は、視野角0度としたときのカウント数の感度を1とした場合に、それぞれの視野角での感度をカウント数から求めたものであって、視野角12.5度のときの感度は0.89、視野角−12.5度のときの感度は0.92、視野角25度のときの感度は0.7、視野角−25度のときの感度は0.72となる。つまり、このグラフに示すように、視野角0度のときの感度が最大となり、視野角が広がるにつれて感度が小さくなっていくことが分かる。
【0060】
そのため、ガンマカメラの視野角が広がるにつれて検出感度が下がるので、これを補正する必要が生じる。
【0061】
そこで、本実施形態のガンマカメラシステムは、ガンマカメラが撮像する撮像領域を基準領域と少なくとも1以上のその他の領域に分けるとともに、基準領域の感度を基準としてその他の領域の感度を補正する補正係数を算出する。
【0062】
具体的には、図8に示すように、視野角0度において撮像する撮像領域を基準領域、視野角0度〜10度までの領域を第1領域、視野角10度〜20度までの領域を第2領域、視野角20度〜30度までの領域を第3領域、視野角30度〜40度までの領域を第4領域、視野角40度〜50度までの領域を第5領域というように視野角の範囲によって、ガンマカメラが撮像する撮像領域を基準領域とその他の複数の領域に分ける。
【0063】
そして、基準領域のカウント数を基準として、その他の領域(第1領域、第2領域、第3領域、第4領域、第5領域)のカウント数から補正係数を算出する。
例えば基準領域の3000secの間のカウント数が360であり、第1領域の3000secの間のカウント数が330であったとすると、第1領域の補正係数は、360/330から1.09となる。
【0064】
そして、この補正係数を用いてそれぞれ撮像領域のカウント数を補正することで、より精度よくガンマカメラで撮像を行うことができる。
【0065】
以上のように構成した本発明のガンマカメラシステムでは、計画的非難区域や居住制限区域等の広域な地域を撮像する場合、所定の領域における分布の可視化には広い視野角が必要となるが、ガンマカメラの視野角を大きく広げた場合であっても、基準領域の感度を基準としてその他の領域の感度を検出し、その他の領域の感度が基準領域の感度となるように補正する補正係数を算出するので、この補正係数に基づいて感度のバラツキを抑えて精度よく撮像を行うことができる。
【0066】
本発明は、上記実施形態に限られたものではない。
【0067】
本実施形態のガンマカメラ調整装置に用いられるガンマカメラは、上述したETCCに限られたものではなく、例えばピンホール型のものを用いることも可能である。
【0068】
保持機構が保持する放射線源は1つに限られず、複数の放射線源を保持するものであっても構わない。
【0069】
また、保持機構は、上述した第1実施形態や第2実施形態に限られたものではなく、例えば放射線源を一定又は可変速度で移動させることができるものであれば、様々な構成を用いることができる。
【0070】
保持機構が放射線源の移動速度を変える構成は、第2実施形態に限られたものではなく、例えば第1実施形態における保持機構において、放射線源の回転速度を変えることもできる。
【0071】
さらに、放射線源を移動させる範囲を複数の領域に分ける構成は、第2実施形態に限られたものではない。例えば一点に向かって収斂するように放射線源を移動させる場合、収斂させる一点からの距離に応じて放射線源を移動させる範囲を複数の領域に分けて、一点に近い領域ほど移動速度が速くなるように構成すれば、一点に近づくほど放射線量の濃い擬似二次元線源を作成することができる。
【0072】
また、ガンマカメラを補正する補正係数を算出する場合、上記実施形態では、視野角0度を基準領域とするものであったが視野角が0度以外の角度の位置を基準領域として補正係数を算出してもよい。
【0073】
本発明は、その趣旨に反しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1・・・ガンマカメラ調整装置
2、10・・・保持機構
6・・・放射線源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8