特許第6454148号(P6454148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6454148試験測定装置及び電気光学電圧アクセサリを用いる可変入力信号測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454148
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】試験測定装置及び電気光学電圧アクセサリを用いる可変入力信号測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/20 20060101AFI20190107BHJP
   G01R 13/40 20060101ALI20190107BHJP
   G01R 31/302 20060101ALI20190107BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   G01R13/20 F
   G01R13/40
   G01R31/28 L
   G01R35/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-255988(P2014-255988)
(22)【出願日】2014年12月18日
(65)【公開番号】特開2015-118096(P2015-118096A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2017年12月7日
(31)【優先権主張番号】14/133404
(32)【優先日】2013年12月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・ジェイ・メンデ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・エイ・ブーマン
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第99/040449(WO,A1)
【文献】 特開平02−071160(JP,A)
【文献】 米国特許第05002353(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 13/20
G01R 13/40
G01R 31/302
G01R 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学センサを有し、変調出力信号を出力するよう構成される電気光学電圧アクセサリと、
該電気光学電圧アクセサリに接続され、上記光学センサの線形入力レンジを超える可変入力信号を供給する被試験デバイスと、
上記電気光学電圧アクセサリからの上記変調出力信号を修正して、上記電気光学電圧アクセサリの上記光学センサの上記線形入力レンジを超える上記可変入力信号を再構築するプロセッサと
を具える試験測定システム。
【請求項2】
上記プロセッサが、
アークサイン関数の入力レンジと合うように上記変調出力信号のスケールを調整する処理と、
スケール調整した上記変調出力信号(スケール調整変調出力信号)に上記アークサイン関数を適用して上記スケール調整変調出力信号を線形化し、上記変調出力信号中の複数の変曲点を示す線形化スケール調整変調出力信号を生成する処理と、
複数の上記変曲点のそれぞれにおいて上記線形化スケール調整変調出力信号の傾きの符号を補正し、正しい傾きを形成する処理と、
補正された傾きを上記変調出力信号に組み入れて、上記電気光学電圧アクセサリの上記可変入力信号を再構築する処理と
を実行する請求項1記載の試験測定システム。
【請求項3】
上記電気光学電圧アクセサリが、複数の異なるバイアス電圧レベルにおいて、複数の上記変調出力信号を出力するよう構成され、
上記プロセッサが、複数の上記変調出力信号の複数の異なる上記バイアス電圧レベルを打ち消す処理を行うことによって、上記電気光学電圧アクセサリの可変入力信号を再構築する請求項1記載の試験測定システム。
【請求項4】
修正された上記変調出力信号を表示する表示装置を更に具え、
上記プロセッサが、上記変調出力信号が上記表示装置の中央になるように上記表示装置上で上記変調出力信号を調整すると共に、上記変調出力信号の各ポイントにおいて上記光学センサのバイアス電圧レベルを順次調整して表示画面の中央となるよう調整することによって、上記電気光学電圧アクセサリの上記光学センサの上記線形入力レンジを超える上記可変入力信号を再構築する請求項1記載の試験測定システム。
【請求項5】
電気光学電圧アクセサリ中の光学センサの線形入力レンジを超える被試験デバイスからの可変入力信号を、試験測定装置に接続された上記電気光学電圧アクセサリを用いて測定する方法であって、
上記電気光学電圧アクセサリで上記被試験デバイスの上記可変入力信号を受ける処理と、
上記可変入力信号に基いて上記電気光学電圧アクセサリから変調出力信号を出力する処理と、
上記電気光学電圧アクセサリから上記変調出力信号をプロセッサで受ける処理と、
上記電気光学電圧アクセサリの上記光学センサの上記線形入力レンジを超える上記可変入力信号を再構築するために、上記電気光学電圧アクセサリからの上記変調出力信号を修正する処理と
を具える電気光学電圧アクセサリを用いる可変入力信号測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大まかに言えば、試験測定システム及び信号取込みアクセサリに関し、特に、光学センサを有する電圧アクセサリを用いて、被試験デバイスの入力波形を正確に表示する試験測定装置と、電気光学電圧アクセサリを用いる可変入力信号測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マッハツェンダ干渉計のような電気光学センサが、過去に電圧センサとして提案されている。例えば、オシロスコープ、スペクトラム・アナライザなどのような試験測定装置に接続され、被測定デバイス(DUT)からの電気信号を取り出すプローブのようなアクセサリの中に、こうした電気光学センサを用いることができる。電気光学センサは、DUTからの電気信号の変化に応じて変化する光出力信号を生成する。この光出力信号を電気信号に光電変換し、この電気信号を試験測定装置で測定することで、DUTの電気信号を測定することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−49473号公報
【特許文献2】特開2006−3619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、こうしたデバイスの線形電圧ダイナミック・レンジは、電気光学センサのπ(パイ)電圧(位相がπ(半波長)ずれる電圧、半波長電圧とも呼ぶ)の数分の1に限定されている。もし被試験デバイス(DUT)が、この線形電圧ダイナミック・レンジ内で動作しているなら、利用可能な電圧ダイナミック・レンジは、電気光学センサの光受信部における信号対ノイズ比によって定まることになる。
【0005】
そこで、電気光学センサで線形に測定可能な電圧レンジを拡大し、電気光学センサを用いて測定可能な対象を広げることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による実施形態の1つは、試験測定システムに関し、これは、光学センサを有し、変調出力信号を出力するよう構成される電気光学電圧アクセサリと、電気光学電圧アクセサリに接続された被試験デバイスと、プロセッサとを有している。このとき、被試験デバイスは、光学センサの線形入力レンジを超える可変入力信号を電気光学電圧アクセサリに供給する。プロセッサは、電気光学電圧アクセサリからの変調出力信号を修正して、電気光学電圧アクセサリの光学センサのパイ電圧を超える可変入力信号を再構築する。
【0007】
本発明による別の実施形態は、電気光学電圧アクセサリ中の光学センサの線形入力レンジを超える被試験デバイスからの可変入力信号を、試験測定装置に接続された電気光学電圧アクセサリを用いて測定する方法である。この方法は、電気光学電圧アクセサリで被試験デバイスの可変入力信号を受ける処理と、この可変入力信号に基いて電気光学電圧アクセサリから変調出力信号を出力する処理と、電気光学電圧アクセサリから変調出力信号をプロセッサで受ける処理と、電気光学電圧アクセサリからの変調出力信号を修正し、電気光学電圧アクセサリの光学センサの線形入力レンジを超える可変入力信号を再構築する処理とを含んでいる。
【0008】
本発明をいくつかの観点から述べれば、本発明の概念1は、試験測定システムであって、
光学センサを有し、変調出力信号を出力するよう構成される電気光学電圧アクセサリと、
該電気光学電圧アクセサリに接続され、上記光学センサの線形入力レンジを超える可変入力信号を供給する被試験デバイスと、
上記電気光学電圧アクセサリからの上記変調出力信号を修正して、上記電気光学電圧アクセサリの上記光学センサの上記線形入力レンジを超える上記可変入力信号を再構築するプロセッサと
を具えている。
【0009】
本発明の概念2は、上記概念1の試験測定システムであって、
アークサイン関数(上記変調出力信号の逆関数)の入力レンジと合うように上記変調出力信号のスケールを調整する処理と、
スケール調整した上記変調出力信号(スケール調整変調出力信号)に上記アークサイン関数を適用して上記スケール調整変調出力信号を線形化し、上記変調出力信号中の複数の変曲点を示す線形化スケール調整変調出力信号を生成する処理と、
複数の上記変曲点のそれぞれにおいて上記線形化スケール調整変調出力信号の傾きの符号を補正し、正しい傾きを形成する処理と、
補正された傾きを上記変調出力信号に組み入れて、上記電気光学電圧アクセサリの上記可変入力信号を再構築する処理と
を上記プロセッサが実行することを特徴としている。
【0010】
本発明の概念3は、上記概念1の試験測定システムであって、
上記電気光学電圧アクセサリが、複数の異なるバイアス電圧レベルにおいて、複数の上記変調出力信号を出力するよう構成され、
上記プロセッサが、上記複数の異なるバイアス電圧レベルを演算で加えることによって、上記電気光学電圧アクセサリの可変入力信号を再構築するよう構成されている。
【0011】
本発明の概念4は、上記概念1の試験測定システムであって、修正された上記変調出力信号(修正変調出力信号)を表示する表示装置を有する試験測定装置を更に具えている。
【0012】
本発明の概念5は、上記概念4の試験測定システムであって、上記プロセッサが、上記変調出力信号が上記表示装置の中央になるように上記表示装置上で上記変調出力信号を調整すると共に、上記変調出力信号の各ポイントにおいて上記光学センサのバイアス電圧レベルを順次調整して表示画面の中央となるよう調整し、上記電気光学電圧アクセサリの上記光学センサの上記線形入力レンジを超える上記可変入力信号を再構築することを特徴としている。
【0013】
本発明の概念6は、上記概念1の試験測定システムであって、上記光学センサがマッハツェンダ光学センサである。
【0014】
本発明の概念7は、上記概念1の試験測定システムであって、上記プロセッサが試験測定装置内か、又は、外部装置内に配置されている。
【0015】
本発明の概念8は、電気光学電圧アクセサリ中の光学センサの線形入力レンジを超える被試験デバイスからの可変入力信号を、試験測定装置に接続された上記電気光学電圧アクセサリを用いて測定する方法であって、
上記電気光学電圧アクセサリで上記被試験デバイスの上記可変入力信号を受ける処理と、
上記可変入力信号に基いて上記電気光学電圧アクセサリから変調出力信号を出力する処理と、
上記電気光学電圧アクセサリから上記変調出力信号をプロセッサで受ける処理と、
上記電気光学電圧アクセサリの上記光学センサの上記線形入力レンジを超える上記可変入力信号を再構築するために、上記電気光学電圧アクセサリからの上記変調出力信号を修正する処理と
を具えている。
【0016】
本発明の概念9は、上記概念8の方法であって、
アークサイン関数(上記変調出力信号の逆関数)の入力レンジと合うように上記変調出力信号のスケールを調整する処理と、
スケール調整した上記変調出力信号(スケール調整変調出力信号)に上記アークサイン関数を適用して上記スケール調整変調出力信号を線形化し、上記変調出力信号中の複数の変曲点を示す線形化スケール調整変調出力信号を生成する処理と、
複数の上記変曲点のそれぞれにおいて上記線形化スケール調整変調出力信号の傾きの符号を補正し、正しい傾きを形成する処理と、
補正された傾きを上記変調出力信号に組み入れて、上記電気光学電圧アクセサリの上記可変入力信号を再構築する処理と
を更に具えている。
【0017】
本発明の概念10は、上記概念8の方法であって、
複数の異なるバイアス電圧レベルにおいて、複数の変調出力信号を出力する処理と、
上記複数の異なるバイアス電圧レベルを加えることによって、上記電気光学電圧アクセサリの可変入力信号を再構築する処理と
を更に具えている。
【0018】
本発明の概念11は、上記概念10の方法であって、複数の上記変調出力信号のそれぞれにアークサイン関数(逆関数)を適用する処理を更に具えている。
【0019】
本発明の概念12は、上記概念10の方法であって、
複数の上記変調出力信号それぞれの変化領域の始め部分を調べると共に、変化の傾きが予期した方向か確認することによって、複数の上記変調出力信号(変調出力波形)から第1波形を1つ選択する処理と、
選択された上記第1波形が線形なレンジの限界に近づくまで、選択された上記第1波形のデータを用いる処理と、
次に高い上記バイアス電圧レベルを用いて、複数の上記変調出力波形から別の第2波形を1つ選択し、選択された上記第2波形の傾きが上記第1波形の傾きと連続するか確認する処理と、
選択された上記第2波形のデータを、選択された上記第1波形に加えて、上記可変入力信号の波形を再構築する処理と
を更に具えている。
【0020】
本発明の概念13は、上記概念8の方法であって、
上記変調出力信号が試験測定装置の表示装置の中央になるように上記変調出力信号を調整する処理と、
上記変調出力信号の各ポイントにおいて、上記光学センサのバイアス電圧レベルを順次調整して表示画面の中央となるよう調整し、上記電気光学電圧アクセサリの上記光学センサの上記線形入力レンジを超える上記可変入力信号を再構築する処理と
を更に具えている。
【0021】
本発明の概念14は、上記概念8の方法であって、上記光学センサは、マッハツェンダ光学センサである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明による試験測定システムの実施形態のブロック図である。
図2図2は、線形入力波形200と、光学センサの変調出力波形202を示すグラフである。
図3図3は、入力信号のレンジが+/−2ボルトの場合における線形入力波形200と、光学センサの変調出力波形202を示すグラフである。
図4図4は、被試験デバイスからの入力波形と、光学センサからの出力波形のグラフの例である。
図5図5は、被試験デバイスからの入力波形と、光学センサからの出力波形の別条件におけるグラフの例である。
図6図6は、被試験デバイスからの入力波形と、光学センサからの出力波形の更に別条件におけるグラフの例である。
図7図7は、被試験デバイスからの入力波形を再構築するための本発明による方法の例のフローチャートである。
図8図8は、図7に示す本発明による処理の過程における波形の例を示す。
図9図9は、図7に示す本発明による処理の過程における波形の例を示す。
図10図10は、図7に示す本発明による処理の過程における波形の例を示す。
図11図11は、図7に示す本発明による処理の過程における波形の例を示す。
図12図12は、図7に示す本発明による処理の過程における波形の例を示す。
図13図13は、被試験デバイスからの繰り返し入力波形を再構築する本発明による方法のフローチャートを示す。
図14図14は、図13に示す方法における入力波形とオリジナル出力波形を示す。
図15図15は、図13に示す本発明による処理の過程における波形の例を示す。
図16図16は、図13に示す本発明による処理の過程における波形の例を示す。
図17図17は、被試験デバイスからの入力波形を再構築するための本発明による方法の別の例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に示す複数の図面において、類似又は対応する要素には、同じ符号を付して説明する。なお、これら図面において、各要素の縮尺は、説明の都合上、必ずしも同一ではない。
【0024】
図1に示す電気光学センサ100のような電気光学センサは、一般に、2つの光学接続部(入力部及び出力部)を有し、これらは、光入力パス102を介して光送信部104からの非変調光線の入力を受けると共に、電極対108及び電極対120に印加された電気信号によって変調された光出力信号を、光出力パス106を介して光受信部114へと出力する。光送信部104は、例えば、レーザ発振器を有し、非変調光線として、コヒーレントなレーザ光線を電気光学センサ100に送信する。少なくとも2つの入力電極108が、被試験デバイス(DUT)110に接続される。バイアス制御部122は、残りの2つのバイアス電極120に接続され、バイアス電圧を供給して電気光学センサのバイアスを制御する。非変調光線が光導波路112を通過するときに、非変調光線は、被試験デバイス110からの入力信号によって入力電極対108で生じた電界によって光導波路112の上側の第1分岐光導波路の屈折率が変化するために、その位相が変調される。同様に、光導波路112の下側の第2分岐光導波路を通過する光は、バイアス電極対120で生じる電界によって位相が変調される。そして、第1及び第2分岐光導波路からの光線は合波されて出力される。このとき、これら2つの分岐光導波路からの光線間の位相差に応じて、強め合う干渉又は弱め合う干渉が生じる。即ち、両光線の位相が一致していれば、最も強い合波が形成され、位相がπずれていれば、最も弱い合波が形成される。
【0025】
合波された変調光線は、光受信部114へ送信され、光電(O/E)変換部116で電気信号に変換される。続いて、光電変換部116は、電気信号を試験測定装置118内のプロセッサ(図示せず)へ送信し、更に処理して測定データを求めたり、試験測定装置118の表示装置(図示せず)上に測定データを表示したり、被測定デバイス110からの信号を波形として表示したり、測定データを試験測定装置118の記憶装置(図示せず)に記憶したりする。試験測定装置118では、周知のように、受けたアナログ電気信号をデジタル・データ(デジタル波形データ)にアナログ・デジタル変換し、このデジタル・データに対して、プロセッサが後述するデジタル演算処理を行う。
【0026】
上述の如く、電気光学センサ100では、入力電極対108に印加された電圧によって、光導波路112の2つの分岐光導波路を伝わる2つの光線間の相対的な位相差が変化する。また、図示せずも、図1に示す各ブロックは、試験測定装置118内のプロセッサからの制御信号を受けて、本願で説明する処理を実行できるようにしても良い。
【0027】
図2は、被試験デバイスからの線形入力信号200の波形を示し、この線形入力信号は−15ボルトから+15ボルトまで線形に変化する。光導波路112の2つの分岐光導波路それぞれ内の光線間の相対的な位相差が変化するので、入力電圧が線形に変化するのにつれて、電気光学センサからの変調出力波形202は、正弦曲線状に変化する。正弦曲線状の変調出力波形202のピークと谷の間(図2では「d」で示す)における入力電圧の電圧差は、パイ(π)電圧と呼ばれる。図2に示すプロットでは、電気光学センサのパイ電圧は5ボルトである。
【0028】
伝統的に、応答が線形な電圧アクセサリとして電気光学センサを使用するには、電気光学センサへの入力信号のレンジが、電気光学センサのパイ電圧のわずかな範囲に限定されていた。そのため、図3に示すように、変調出力信号のレスポンスがほぼ線形なポイント付近で被試験デバイスを動作させている。図3では、入力信号レンジは、+/−2ボルトに制限されている。しかし、変調出力波形202は、+/−2ボルトの制限電圧内であっても、その波形の両端付近に行くに従って、その線形性から徐々に乖離が現れる。
【0029】
例えば、図4に示すように、もし入力波形が、ほぼステップ信号の場合、入力波形400及び出力波形402は、図4に示すようになるであろう。しかし、入力信号振幅及びバイアス点を変更すると、図5及び6に示すように、出力波形402A及び402Bが、よくわからない波形となってしまう。図4〜6では、出力波形402は、入力波形400と正確な意味では似ていない。従って、試験測定装置のユーザは、電圧入力波形400を正確に表すものを、出力波形402から得ることができない。
【0030】
しかし、本発明によれば、電気光学センサの線形入力レンジ(=パイ電圧)を超える電圧に渡って、電気光学センサで被試験デバイスからの入力電圧を正確に測定できるので、被試験デバイスからの入力波形400を再構築できる。例えば、図8は、パイ電圧が5ボルトの電気光学変調装置において、入力信号(入力波形とも呼ぶ)が−2.7ボルトから+12.7ボルトの範囲で動く例を示している。図8からわかるように、変調出力波形802は、入力波形800と似ていないが、本発明によれば、後述の如く、入力波形800を再構築できる。
【0031】
最初に、図7のステップS700では、変調出力信号(出力波形とも呼ぶ)802が、図9に示すように、変調出力波形802のアークサインの入力レンジに合うようにスケール調整される。出力波形802Aは、スケール調整された変調出力波形を表す。この例では、上述のアークサインの入力レンジは、+/−1ボルトである。次に、ステップS702では、アークサイン(つまり、逆関数)を変調出力波形802Bに適用し、変調出力波形を線形にし、図10に示すような線形化変調出力波形802Cを得る。
【0032】
アークサインを適用することで線形化変調出力波形802Cが得られるが、その波形には、図10に示すように、複数の急激な変曲点1000があり、これらは、電気光学センサのパイ電圧を超えた部分である。急激な変曲点1000は、図10からわかるように、ステップS700及びS702で得られる出力波形の曲線の傾き(スロープ:接線の傾き)が不連続であることを明確に示している。これらの変曲点1000のそれぞれが生じる度に、その変曲点は、入力信号が電気光学センサのパイ電圧を超えたことを示し、出力波形の曲線の傾きの正と負(sign:符号)が切り換わる。
【0033】
しかし、ステップS704では、線形化変調出力波形802Cが示す変曲点1000の情報を利用して、変調出力波形802の傾きの符号を修正することによって、変調出力波形802を修正し、図11に示すような修正出力波形802Dを得る。ステップS706では、傾きが連続的であるか確認する。続いて、ステップS708では、修正された傾きデータを組み入れることによって、図12に示すような結果802Eを得る。続いて、ステップS710では、再構築された入力波形802Eが、試験測定装置の表示装置上で表示されたり、試験測定装置の記憶装置に記憶されたりする。こうして、図8に示すオリジナルの変調出力波形802を処理した後に得られる再構築変調出力波形802Eは、図12に示すように、入力波形800と同一になる。
【0034】
もし入力波形が繰り返し波形(ほぼ同じ形状の波形が繰り返し現れる)であるなら、入力波形を別の方法でも再構築できる。図13は、繰り返し入力波形を再構築する本発明による方法のフローチャートを示す。図14は、この例における入力波形1400とオリジナル出力波形1402を示す。ステップS1300では、図15に示すように、異なるバイアス電圧レベルを用いて複数の出力波形1500A〜Eを試験測定装置118がデジタル波形として取得する。異なるバイアス電圧レベルは、例えば、図1に示すバイス電極対120に接続されたバイアス制御部122から印加する電気信号を、入力波形の繰り返しサイクル毎に変更することで得ても良い。
【0035】
図13に示す方法では、ステップS1302において、試験測定装置118のプロセッサが、複数の出力波形のそれぞれに、ステップS1300で光学センサに加えたバイアス電圧レベルを打ち消すオフセットをデジタル演算処理により加え、複数の出力波形(出力波形データ)のそれぞれに対応する複数の入力波形(入力波形データ)をデジタル的に再生する。このとき、ステップS1300のバイアス電圧レベルと、ステップS1302のオフセットは、数式で表せば、単純に逆方向の処理である。よって、ステップS1302のオフセットは、ステップS1300のバイアス電圧レベルを逆にしたものであるから、処理方向を逆にしてバイアス電圧レベルを加える処理とも呼べる。ただし、ステップS1300のバイアス電圧レベルが電気光学センサ100のバイアス電極対120に実際に物理的に加える電圧であるのに対し、ステップS1302で加えるオフセットは、試験測定装置118のプロセッサが行うデジタル演算処理である点で異なる。
【0036】
オプションのステップS1304では、複数の出力波形のそれぞれに、そのアークサイン関数を再度適用する。もしアークサイン関数を適用しなくても、最終的な出力波形は、限られたレンジではおおよそ線形であろう。アークサイン関数を適用することによって、このレンジを拡大でき、波形を再構築するのに必要なステップの数が減少する。
【0037】
次のステップS1306では、得られた複数の再生入力波形の1つを選択し、最終的な再構築入力波形の組み立てを開始する。この波形は、波形の変化(変曲)領域(transition region)の始め部分を調査し、その変化領域の傾きが予期した方向か確認することによって、選択できる。この波形からのデータは、この最初の波形(第1波形とも呼ぶ)の線形なレンジの限界に近づくまで、再構築波形に利用される。ステップS1308では、次に高いバイアス電圧を有する波形を調査することによって、次の波形(第2波形とも呼ぶ)が選択される。ステップS1310では、この次の波形のデータの値と傾きが、最初の波形の値と傾きと連続しているか確認する。もしこの条件に合う場合には、ステップS1312において、この次の波形の線形なレンジの限界に達するまで、この次の波形のデータを再構築波形に追加する。もしこの条件に合わない場合、これは、複数波形を得るときに使ったバイアス電圧の各ステップ(隣接するバイアス電圧レベル間の差分)が大きすぎたか、又は、変化(transition)が予期した極性でない場合であることを示しており、処理は、異なるバイアス電圧レベル(このとき、隣接するバイアス電圧レベル間の差分に、もっと小さなものを用いる)で複数の波形を得るステップS1300から再度開始する。ステップS1312で、再構築波形に第2波形からのデータを追加した後、ステップS1314では、入力波形が再構築されたかどうか判断する。もし再構築されたと判断された場合は、ステップS1316において、再構築入力波形を試験測定装置において表示又は記憶する。もし再構築されていないと判断された場合には、ステップS1308〜S1314を繰り返す。
【0038】
図13に示す方法を大雑把に言えば、入力信号の繰り返しサイクル毎に、電気光学センサのバイアス電圧を変更して、複数の異なるバイアス電圧レベルにおける複数の出力波形データを取得し、デジタル演算でバイアス電圧レベルを打ち消すオフセットを加えて複数の出力波形データにそれぞれ対応する複数の入力波形データ(再生入力波形データ)を再生する。そして、これら複数の再生入力波形データの線形性を満たす部分を寄せ集めて、本来の入力信号を表す入力波形データを再構築する。このとき、複数の異なるバイアス電圧レベルを加えることで、電気光学センサから試験測定装置が得た出力波形データの内、電気光学センサの線形入力レンジ内にあった部分(区画)は線形性を満たすし、他の部分は線形性を満たさないことになる。よって、出力波形データに演算でオフセットを加えた再生入力波形データにも、線形性を満たす部分と満たさない部分が生じるので、複数の再生入力波形データを用意して、これら線形性を満たす部分のみを寄せ集めるのである。また、加えるバイアス電圧レベルが、複数で異なることから、得られる複数出力波形データにおいて、線形性を満たす部分が、複数の出力波形データ間で相対的に異なる位置に生じる。逆に言えば、加える複数の異なるバイアス電圧レベルを、得られる複数波形間で相対的に異なる位置に線形性を満たす部分が生じるように調整すると共に、複数の再生入力波形データを用意して、これら線形性を満たす部分から入力波形データを再構築するときに、これら部分が連続するように調整する。なお、より高い線形性を得たければ、図2に示すように、更に狭い線形入力レンジに対応する部分のみを使用するようにしても良い。
【0039】
図17は、被試験デバイスからの入力波形を再構築するための本発明による方法の別の例のフローチャートである。ステップS1700では、出力波形が試験測定装置の表示装置上で中央に表示されるように電気光学センサ100のバイアス電圧レベルを調整する。すると、ステップS1702で、掃引を開始できる。ステップS1704では、掃引の間、試験測定装置は、表示装置上の中央にくるように(即ち、線形性を満たすように)、出力波形の各ポイントにおいて、バイアス電圧レベルを順次調整することで、電気光学電圧アクセサリの光学センサの線形入力レンジを超える入力波形を再構築する。ステップS1706において、得られる波形は、時系列で順番に並んだ各データ・ポイントについて、その時点において調整したバイアス電圧の値から構築できる。この処理は、パイ電圧の何倍にも渡って続けられる。センサの出力信号は、バイアス電圧のサイン関数なので、もし必要なバイアス電圧が、バイアス電圧を加える回路のレンジを超える場合でも、そのバイアス電圧を、必要な電圧からパイ電圧を引いたものに設定できる。この状況が生じる度に、バイアス電圧の再設定を行っていける限り、パイ電圧の何倍にも渡ってこの処理を繰り返すことができる。
【0040】
図7、13及び17の方法は、試験測定システムか、又は、試験測定システムの外部の装置でプロセッサのどちらかで実行できる。もし、実行する装置が試験測定装置の外部にあるなら、試験測定装置で受けた出力波形が、その外部装置に転送される。すると、その外部装置は、図7、13又は17の処理を実行し、被試験デバイスの入力波形を再構築する。入力波形が再構築されたら、その入力波形は試験測定装置に送り戻され、試験測定装置のメモリ中に記憶されたり、その表示装置上で表示されたりする。
【0041】
試験測定装置は、アクセサリ・デバイスを受けるアクセサリ・デバイス・インタフェースを有するオシロスコープ、ロジック・アナライザ、スペクトラム・アナライザなどとしても良い。
【0042】
本発明で用いている用語「コントローラ」及び「プロセッサ」は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC、専用ハードウェア・コントローラなどを意図している。本発明は、別の観点から見れば、1つ以上のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)などで実行される1つ以上のプログラム・モジュールのようなコンピョータで利用可能なデータやコンピョータで実行可能な命令の形で実現されてもよい。一般に、プログラム・モジュールには、複数のルーチン、複数のプログラム、複数のオブジェクト、複数のコンポーンネント、複数のデータ構造などが含まれ、これらは、コンピュータなどの装置中のプロセッサで実行されたときに、特定のタスクを実行したり、抽象データ型(abstract data type)を実現する。コンピョータで実行可能な命令は、ハード・ディスク、光ディスク、リムーバブル記録媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのような非一時的なコンピョータ読み出し可能なメディアに記録しても良い。当業者にとっては当然ながら、複数のプログラム・モジュールの機能は、必要に応じて、種々の実施形態において、組み合わせたり、個別に分けたりしても良い。加えて、これら機能は、その全体又はその一部が、集積回路やFPGA(field programmable gate arrays)のなどによるファームウェアやハードウェアの形の等価なもので実現されても良い。特性のデータ構造は、本発明のいくつかの観点を実現するのに効率良く利用でき、こうしたデータ構造は、本願で言うコンピョータで利用可能なデータやコンピョータで実行可能な命令の範囲に含まれると考えられる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の原理を説明し、図示してきたが、本発明は、こうした原理から離れることなく、構成や詳細を変更できることは明かであろう。
【符号の説明】
【0044】
100 電気光学センサ
102 光入力パス
104 光送信部
106 光出力パス
108 入力電極
110 被試験デバイス
112 光導波路
114 光受信部
116 光電変換部
118 試験測定装置
120 バイアス電極
122 バイアス制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17