【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例と比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。実施例、比較例において配合に用いた各成分を下記に示す。尚、表中における実施例及び比較例における各成分の配合の数値は純分の質量%を表す。
【0030】
(A)成分
A−1:エタノール
【0031】
(B)成分
B−1:クエン酸
B−2:クエン酸ナトリウム
B−3:グルコン酸
B−4:グルコン酸ナトリウム
B−5:乳酸
B−6:乳酸ナトリウム
B−7:ソルビン酸
B−8:ソルビン酸ナトリウム
【0032】
(C)成分
C−1:グリセリン脂肪酸エステル(脂肪酸が、カプリル酸)
C−2:グリセリン脂肪酸エステル(脂肪酸が、カプリン酸)
C−3:グリセリン脂肪酸エステル(脂肪酸が、ラウリル酸)
【0033】
(D)成分
D−1:グレープフルーツ種子抽出物(アデプト社製:グレープフルーツ種子抽出物 Desfan−10をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにてグリセリンを分離したものを使用)
なお、実施例においてグリセリンの配合量を明確にするため、またグリセリンの効果を確認するために、グレープフルーツ種子抽出物に含まれるグリセリンを除いた。
【0034】
(E)成分
E−1:イオン交換水
【0035】
(F)成分
F−1:グリセリン
【0036】
実施例1から40、比較例1から6
表1から表5に示す配合に基づきアルコール製剤を調製した。アルコール製剤中のpH、細菌に対する除菌性、ウイルス不活化、抗菌持続性、抗ウイルス持続性、材質への腐食防止性、貯蔵安定性試験を行った。結果を表1から表5にあわせて示す。なお、貯蔵安定性が×の場合、他の試験をおこなわず、−とした。
また、実施例6〜8、23〜27は参考例である。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
pHの測定方法
<pHメーターの校正>
pHメーター(HORIBA製;pH/イオンメーター F−23)にpH測定用複合電極(HORIBA製;ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続し、電源を入れる。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33mol/L)を使用した。次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86標準液(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬した。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86、pH9.18、pH4.01の順に校正操作を行った。
<pH測定>
恒温槽内にて25℃の恒温に調整された本発明のアルコール製剤100mLにpH測定用電極を3分間浸し、pHを測定した。
【0043】
※1:除菌性試験(汚れ添加)
試験方法:
供試菌株をSCDブイヨン培地にて37℃で培養して、2.0×10
8〜9.0×10
8CFU/mL程度になるように菌数を調製して菌液とした。表1から表5に示す各アルコール製剤9mLに、酵母エキス液1mL(乾燥酵母エキスを滅菌イオン交換水で10質量%に調製し、pHを7.0±0.2に調整後、オートクレーブで滅菌)、供試菌液0.1mLを添加し、25℃にて5分間接触させた後、滅菌中和溶液(SCDLP培地)を加えよく攪拌した。
細菌としてStaphylococcus aureus NBRC12732(10
8CFU/mLレベル)、Escherichia coli NBRC3972(10
8CFU/mLレベル)を用いた。
この1mLをSCD寒天培地で混釈培養し生菌数を確認し、下記の基準で評価した。
評価基準:
1点:供試菌のlog reductionが5以上の菌数減少
2点:供試菌のlog reductionが4以上、5未満の菌数減少
3点:供試菌のlog reductionが3以上、4未満の菌数減少
4点:供試菌のlog reductionが3未満の菌数減少
として上記各菌種について、菌数減少の点数の平均値を求め、以下の基準で除菌性を評価した。
◎:平均値が1.0点以上、1.5点未満。
○:平均値が1.5点以上、2.5点未満。
△:平均値が2.5点以上、3.5点未満。
×:平均値が3.5点以上。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0044】
※1:除菌性試験(水添加)
試験方法:
供試菌株をSCDブイヨン培地にて37℃で培養して、2.0×10
8〜9.0×10
8CFU/mL程度になるように菌数を調製して菌液とした。表1から表5に示す各アルコール製剤2.5mLに、滅菌イオン交換水7.5mL、供試菌液0.1mLを添加し、25℃にて5分間接触させた後、滅菌中和溶液(SCDLP培地)を加えよく攪拌した。
細菌としてStaphylococcus aureus NBRC12732(10
8CFU/mLレベル)、Escherichia coli NBRC3972(10
8CFU/mLレベル)を用いた。
この1mLをSCD寒天培地で混釈培養し生菌数を確認し、下記の基準で評価した。
評価基準:
1点:供試菌のlog reductionが5以上の菌数減少
2点:供試菌のlog reductionが4以上、5未満の菌数減少
3点:供試菌のlog reductionが3以上、4未満の菌数減少
4点:供試菌のlog reductionが3未満の菌数減少
として上記各菌種について、菌数減少の点数の平均値を求め、以下の基準で除菌性を評価した。
◎:平均値が1.0点以上、1.5点未満。
○:平均値が1.5点以上、2.5点未満。
△:平均値が2.5点以上、3.5点未満。
×:平均値が3.5点以上。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0045】
※2:ウイルス不活化試験
試験方法:
試験管に0.9mLの表1から表5に示す各アルコール製剤と、10
8TCID
50/mLとなるように調整したネコカリシウイルス液(FCV F9株)0.1mLを加え、ミキサーで混合し、25℃で30秒間作用させた。作用後、2%牛胎児血清(FBS)を添加したDulbecco‘s modified Eagle’s Medium(DEME)で7倍希釈し、反応を停止した。停止液をDEME培地で7倍段階希釈し、各希釈液をネコ腎臓細胞(CRFK)に接種し、1%FBS加DEME培地において、37℃、CO
2インキュベーター内で4日間培養した。培養後、細胞変性効果を観察し、ウイルス感染価(TCID
50/mL)を求めた。対照の初期感染価と試験品作用後の感染価から、Log reduction(ウイルス感染価対数減少値)を算出し、以下の基準にて評価した。
【0046】
評価基準:
◎:ウイルス感染価のLog reductionが4以上の減少
○:ウイルス感染価のLog reductionが3以上、4未満の減少
△:ウイルス感染価のLog reductionが2以上、3未満の減少
×:ウイルス感染価のLog reductionが2未満の減少
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0047】
※3:抗菌持続性試験
除菌性試験で調整した菌液(細菌:Staphylococcus aureus NBRC12732(10
8CFU/mLレベル))を0.1mL接種して、SCD寒天培地(日水製薬(株)製)に塗布する。滅菌済みの抗生物質ペーパーディスク(直径8mm)に表1から表5に示す各アルコール製剤を50μL投与し、25℃で2日間乾燥後、培地表面に静置した。この寒天培地を恒温槽(温度37℃)内で24時間培養した。ペーパーディスク周辺に発生する発育阻止帯の大きさに基づき、以下の基準で各アルコール製剤の抗菌持続性効果を評価した。
【0048】
評価基準:
◎:ペーパーディスクの周辺に大きな発育阻止帯が認められる。
〇:ペーパーディスクの周辺に発育阻止帯が認められる。
△:ペーパーディスクの周辺にわずかに発育阻止帯が認められる。
×:ペーパーディスクの周辺に発育阻止帯が認められない。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0049】
※4:抗ウイルス持続性試験
表1から表5に示す各アルコール製剤を滅菌済みガーゼに含浸させ、室温で完全に乾燥させ、これを試験片とした。また、薬剤を含浸していない滅菌済みガーゼを対照試験片とした。この試験片を滅菌済み容器に入れ、ネコカリシウイルス液(FCV F9株)を0.2mL接種後、25℃で24時間静置した。その後、容器にSCDLPブイヨン培地を加えて、ウイルスを洗い出し、これを停止液とした。停止液をリン酸緩衝生理食塩水で10倍段階希釈した。CRFK細胞に各希釈液を接種し、37℃、CO
2インキュベーター内で培養した。培養後、ウイルスの増殖により形成されたプラーク数を計測して試験片あたりの感染価を算出した。
【0050】
評価基準:
◎:対照試験片と比較してウイルス感染価の常用対数値が4以上の減少
〇:対照試験片と比較してウイルス感染価の常用対数値が3以上、4未満の減少
△:対照試験片と比較してウイルス感染価の常用対数値が2以上、3未満の減少
×:対照試験片と比較してウイルス感染価の常用対数値が2未満の減少
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0051】
※5:材質への腐食防止性試験
試験方法:
表1から表5に示す各アルコール製剤に対して、3cm×5cmの大きさにカットされたゴムパッキン(NBR)1枚を浸漬し、25℃で48時間保管後、各ゴムパッキンをイオン交換水ですすぎ24時間室温で乾燥した後、腐食度合いを目視で評価した。
評価基準:
◎:変色・膨張などが全く見られない。
○:ほぼ変色・膨張などが見られない。
△:一部に変色・膨張などが見られるが、問題ないレベル。
×:全体に変色・膨張などが見られる。とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0052】
※6:貯蔵安定性試験
試験方法:
250mL透明ポリプロピレン製容器に表1から表5に示す各アルコール製剤を250mLとり、蓋をして−5℃、25℃、40℃の恒温槽中で静置保管した。1カ月後、各アルコール製剤の状態を以下の基準で評価した。
評価基準:
○:析出物・分離・濁りが見られず安定である。
△:析出物が若干見られるが、問題ないレベル。
×:析出物や分離が見られる。
とし、○、△を実用性のあるものとして判定した。
【0053】
※7:展延性試験
試験方法:
表3から表5に示す各アルコール製剤をBPB指示薬(ブロモフェノールブルー0.1gをエタノール50mLに溶かし、イオン交換水で100mLにする)で染色させ、サンプル溶液とした。ステンレスSUS304パネル(2cm×5cm)の面にサンプル溶液を150μL滴下させ、25℃で20分後の経時変化を観察した。パネル面の染色された面積の大きさに基づき、以下の基準で展延性の効果を評価した。
<評価基準>
○:パネル面が、液滴の2倍以上の染色(広がり)があった。
△:パネル面が、液滴より染色(広がり)があった。
×:パネル面が、液滴以上の染色(広がり)はなかった。
とし、○、△を実用性のあるものとして判定した。