(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記組成物が、更に(C)エチレン性不飽和結合を1つ以上有する重合性モノマーを含み、硬化物中に(C)成分が5〜60質量%含まれる請求項1に記載のゲート絶縁膜。
少なくとも1つのゲート電極と、少なくとも1つのソース電極と、少なくとも1つのドレイン電極と、少なくとも1つの有機半導体層と、請求項1又は2に記載のゲート絶縁膜とを含むことを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
少なくとも1つのゲート電極と、少なくとも1つのソース電極と、少なくとも1つのドレイン電極と、少なくとも1つの有機半導体層と、ゲート絶縁膜とを含む有機薄膜トランジスタの製造方法であって、
ゲート電極上に請求項1又は2に記載の組成物を塗布し、100〜150℃の温度で硬化させることにより、0.05〜1.0μmの膜厚でゲート絶縁膜を形成することを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0019】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の実施形態1に係る有機薄膜トランジスタの一例を示した断面構成図である。
図1において、実施形態1に係る有機薄膜トランジスタは、絶縁基板10と、ゲート電極20と、ゲート絶縁膜30と、ソース電極40と、ドレイン電極41と、有機半導体層50とを有する。
【0020】
図1において、絶縁基板10上にゲート電極20が形成され、ゲート電極20上にゲート絶縁膜30が形成された積層構造を有している。また、ソース電極40及びドレイン電極41は、ゲート絶縁膜30の表面上の、上面視的にゲート電極20の両端を覆うような位置に形成されている。また、ソース電極40とドレイン電極41との間のゲート絶縁膜30上には、有機半導体層50が形成されており、有機半導体層50は、ソース電極40とドレイン電極41の内側端部を覆っている。
図1に示す構造は、ボトムゲート・ボトムコンタクト構造と呼ばれる構造である。
【0021】
絶縁基板10は、絶縁材料からなる種々の基板で構成されてよいが、例えば、石英ガラス、シリカガラスなどのガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン、ポリカーボネート等のプラスチックフィルム等を用いることが出来る。また、表面が絶縁性処理されていれば、金属フォイル等も絶縁基板10として用いることができる。
【0022】
ゲート電極20は、電流を効率よく流せることができれば材料の限定はされない。例えば、アルミニウムで構成されてよい。ゲート電極20の表面上には、ゲート絶縁膜30が形成されるが、ゲート電極20の表面は、ゲート絶縁膜30を積層形成するために、できるだけ表面平滑性が高いものが好ましい。
【0023】
ゲート絶縁膜30は、ゲート電極20の周囲を覆ってゲート電極20を絶縁する膜である。本実施形態に係る有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜30は、(A)ビスフェノール型エポキシ化合物とエチレン性不飽和結合基含有モノカルボン酸とを反応させた化合物、及び(B)光重合開始剤または熱重合開始剤を必須成分とする組成物を硬化させてなるゲート絶縁膜である。
【0024】
有機薄膜トランジスタにおいては、ゲート電極20に電圧が印加されたときに、有機半導体層50にチャネルが形成され、発生したキャリアがソース電極40とドレイン電極41の間を移動して導通し、トランジスタ動作を行う。ゲート電極20に電圧が印加されたときに発生するキャリアは、ゲート絶縁膜30と有機半導体層50の界面を移動する。故に、ゲート絶縁膜30に凹凸があると移動速度が遅くなり、キャリア移動度が低下する。そのため、ゲート絶縁膜30は平坦性が要求される。
【0025】
本発明のゲート絶縁膜30は、ゲート絶縁膜用組成物の塗膜を形成後、露光、有機溶剤現像により光加工するか((B)として光重合開始剤を使用した時に限る)、または、ゲート絶縁膜組成物の塗膜上にフォトレジストを積層して、露光、現像、反応性イオンエッチング等によりフォトレジストを除去した部分の絶縁膜組成物の除去、さらにレジスト剥離することにより光加工することができる。本発明のゲート絶縁膜は、これらの光加工の工程を経ても、表面の凹凸が少なく平坦性が非常に高い膜とすることが出来る。また、本発明のゲート絶縁膜30はその表面にソース電極40とドレイン電極41を形成した後でも平坦性の変化が少ない。そのため、キャリア移動度が良好な有機半導体層を形成することが可能になる。すなわち、本発明によれば、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度の向上を可能にし、安定したトランジスタ特性を発現することができる。ここで、キャリア移動度が向上する理由としては、所定のゲート絶縁膜用組成物を用いることで高平坦なゲート絶縁膜を得ることができ、また、絶縁膜中にキャリアをトラップするおそれがあるカルボキシル基の様な官能基の量が少ないこと要因のひとつと推察される。
【0026】
ゲート絶縁膜30の絶縁耐圧が、実際の回路に要求される耐圧よりも低いと、有機薄膜トランジスタを実際の回路中のデバイスとして動作させることができない。例えば、ディスプレイの駆動回路では、20Vで駆動させる必要があるため、動作可能なゲート絶縁膜30の薄膜化及び絶縁耐圧が要求される。本発明のゲート絶縁膜は、1μm以下の薄膜を形成することができ、且つ20Vの電圧に耐えられるため、20V以下の電圧で駆動することが可能である。一方、ゲート絶縁膜の最小膜厚は、ゲート電極が数10nmで形成されることが一般的であり、ゲート電極形成による凹凸を平坦化する必要があるため、0.05μm以上は必要である。
【0027】
このように、本実施形態に係る有機薄膜トランジスタにおいては、本発明のゲート絶縁膜30を適用することにより、所望の平坦性と絶縁耐圧を得ることができる。
【0028】
本発明の有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜用組成物における(A)は、ビスフェノール類から誘導される2個のグルシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物(以下、「ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート化合物」と記載する)である。
【0029】
ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)の原料となるビスフェノール類としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、3,3’−ビフェノール等およびこれらの誘導体が挙げられる。これらの中では、9,9−フルオレニル基を有するものが特に好適に利用される。
【0030】
次に、上記ビスフェノール類とエピクロルヒドリンを反応させて2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物を得る。この反応の際には、一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、下記一般式(I)のエポキシ化合物を得ることになる。
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を表し、Aは、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、9,9−フルオレニル基又は直結合を表す。lは0〜10の数である。)
【0031】
好ましいR
1、R
2、R
3、R
4は水素原子であり、好ましいAは9,9−フルオレニル基である。また、lは通常複数の値が混在するため平均値0〜10(整数とは限らない)となるが、好ましいlの平均値は0〜3である。lの値が上限値を超えると、当該エポキシ化合物を使用して合成したビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート化合物を用いたゲート絶縁膜用組成物としたとき、組成物の粘度が大きくなりすぎて塗工がうまく行かなくなったりする。
【0032】
次に、一般式(I)の化合物に、不飽和基含有モノカルボン酸としてアクリル酸若しくはメタクリル酸又はこれらの両方を反応させて、下記一般式(II)で表されるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート化合物を得る。
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を表し、R
5は、水素原子又はメチル基を表し、Aは、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、9,9−フルオレニル基又は直結合を表し、lは1〜10の数を表す。)
【0033】
このビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート化合物(II)は、エチレン性不飽和二重結合を有する樹脂であるため、本発明のゲート絶縁膜用組成物の(A)として、優れた光または熱硬化性、耐電圧等の所望の物性を有する硬化膜とするために必要なものである。なお、(B)として光重合開始剤を用いた組成物においては、有機溶剤現像によるパターニング特性も具備することができる。
【0034】
本発明で利用される一般式(II)のビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート化合物は、上述の工程により、既知の方法、例えば特開平8-278629号公報や特開2008-9401号公報等に記載の方法により製造することができる。すなわち一般式(I)のエポキシ化合物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させる方法としては、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基と当モルの不飽和基含有モノカルボン酸を溶剤中に添加し、触媒(トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、2,6-ジイソブチルフェノール等)の存在下、空気を吹き込みながら90〜120℃に加熱・攪拌して反応させるという方法がある。
【0035】
本発明のゲート絶縁膜用組成物においては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート化合物以外の光又は熱硬化する成分として、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマー(C)を1種類以上併用することができる。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類を挙げることができる。ただし、併用する少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマーは遊離のカルボキシ基を有しない。
【0036】
本発明のゲート絶縁膜用組成物からなる硬化物において、(A)成分が40〜90質量%、好ましくは50〜80質量%含まれるようにする。また、重合性モノマー(C)は、硬化物中に60質量%以下の範囲で使用するのがよく、好ましくは5〜60質量%添加するのが良い。
【0037】
本発明のゲート絶縁膜用組成物における(B)光重合開始剤又は熱重合開始剤のうち、光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'-ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2,4,5-トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類、2-トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルジアゾール化合物類、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル−4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物類、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-o-アセタート等のo-アシルオキシム系化合物類、ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2-イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが挙げられる。この中でも、高感度のゲート絶縁膜用感光性組成物を得られやすい観点から、o-アシルオキシム系化合物類を用いることが好ましい。また、これら光重合開始剤を2種類以上使用することもできる。なお、本発明でいう光重合開始剤とは、増感剤を含む意味で使用される。
【0038】
また、(B)における熱重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン-1-カルボニトリル、アゾジベンゾイル、2,2-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性触媒及び過酸化物あるいは過硫酸塩と還元剤の組み合わせによるレドックス触媒等、通常のラジカル重合に使用できるものはいずれも使用することができる。本発明のゲート絶縁膜用組成物の保存安定性や硬化物の形成条件を考慮して選定できる。熱重合開始剤は1種または2種以上用いてもよいし、光重合開始剤と、増感剤と併用することができる。
【0039】
本発明のゲート絶縁膜用組成物における(B)光重合開始剤又は熱重合開始剤は、得られる硬化物中、(B)成分が0.1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%となるようにする。(B)成分が0.1質量%未満では、光重合又は熱重合の速度が遅くなり、光重合においては感度が低下する傾向にあるため好ましくなく、30質量%を超えると、光重合においては感度が強すぎてパターン線幅がパターンマスクに対して太くなった状態になり、マスクに対して忠実な線幅が再現しにくくなる傾向にあり好ましくない。また、光又は熱重合開始剤の量が多すぎると後工程での加熱時に発ガスの原因となりやすい。
【0040】
本発明のゲート絶縁膜用組成物においては、上記(A)〜(B)の他に(場合によって(A)〜(C)の他に)溶剤を使用して粘度を調整することが好ましい。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられ、これらを用いて溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0041】
本発明のゲート絶縁膜を与える組成物は、エチレン性不飽和結合基を有するビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)を必須成分として含むが、光硬化特性や熱硬化特性を始め所望の特性に設計するため、その他の樹脂成分を含ませることができる。例えば、アルカリ可溶性を付与するために、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A)にさらに酸二無水物および酸一無水物を反応させて得られる、エチレン性不飽和結合基含有アルカリ可溶性樹脂(D)を共存させてもよい。(D)成分を共存させることができる(A)成分との比率(A)/(D)は70/30から40/60の範囲であり、70/30より(D)成分が少ないと組成物にアルカリ可溶性を付与するのが困難になる。また、40/60より(D)成分が多くなると組成物を用いてゲート絶縁膜としたときに、残存カルボキシル基によるトランジスタ特性への悪影響が懸念される。この残存カルボキシル基の量を低減するため、(E)エポキシ樹脂をさらに共存させることも可能であるが、(A)/(D)=40/60より(D)成分が多くなると150℃以下の温度でポストベークした場合には十分に残存カルボキシル基を低減することが困難である。
【0042】
(A)成分から(D)成分に誘導する場合に用いる酸二無水物の例としては、ペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸などの酸二無水物を挙げることができ、酸一無水物の例としては、アジピン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、フタル酸、トリメリット酸などの酸一無水物を挙げることができる。
(D)エチレン性不飽和結合基含有アルカリ可溶性樹脂の分子量範囲としては、重量平均分子量(Mw)が2000〜10000の間であることが好ましく、3000〜7000の間であることが特に好ましい。また、(D)は、その酸価が30〜200KOHmg/gの範囲にあることが望ましい。
(E)エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等を挙げることができ、エポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂またはエポキシ化合物を用いることができる。
【0043】
ソース電極40及びドレイン電極41は、種々の材料から構成することができる。ソース電極40及びドレイン電極41の材料としては、例えば、金、銀、ニッケルなどの金属コロイド粒子を分散させた溶液若しくは銀などの金属粒子を導電材料として用いたペーストが挙げられる。また、例えば、金属や合金、透明導電膜材料を、全面にスパッタ法や蒸着法等によって成膜後、レジスト材料を用い、フォトリソグラフィー法やスクリーン印刷法で所望のレジストパターンを形成した後、酸等のエッチング液でエッチングすることにより所望のパターンを形成することができる。また、金属や合金、透明導電膜材料を、マスクを用いてスパッタ法や蒸着法で直接所望のパターンを形成することもできる。これらスパッタ法や蒸着法に使用できる金属材料としては、アルミニウム、モリブデン、クロム、チタン、タンタル、ニッケル、銅、銀、金、白金、パラジウム等が、透明導電膜材料としてはITO等が挙げられる。
【0044】
有機半導体層50は、トランジスタ動作時にチャネルを形成するアクティブ半導体領域であり、有機半導体膜から構成される。有機半導体層50は、種々の材料から構成されてよいが、例えば、ペンタセンやアントラセン、ルブレン等の多環芳香族炭化水素、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等の低分子化合物、ポリアセチレンやポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)等のポリマー等を用いてもよい。
【0045】
なお、
図1においては示していないが、本実施形態に係る有機薄膜トランジスタは、必要に応じて、封止層、遮光層等を設けるようにしてもよい。
【0046】
次に、
図2を用いて、本発明の実施形態1に係る有機薄膜トランジスタの製造方法について説明する。
図2は、実施形態1に係る有機薄膜トランジスタの製造方法を説明するための図である。なお、
図2においては、上述したゲート絶縁膜を用いた例を挙げて説明する。
【0047】
図2(i)は、ゲート電極形成工程の一例を示した図である。ゲート電極形成工程においては、絶縁基板10上にゲート電極20を成膜する。
【0048】
図2(ii)は、ゲート絶縁膜形成工程の一例を示した図である。ゲート絶縁膜形成工程においては、ゲート電極20上にゲート絶縁膜用組成物を塗布し、その塗膜の上にさらにフォトレジストを塗布し、露光、現像により所望のパターンに形成した後、反応性イオンエッチングによりフォトレジストを除去した部分のゲート絶縁膜を除去し、さらにフォトレジストを剥離した後、熱硬化させることで成膜する。(ゲート絶縁膜組成物の(B)成分に光重合開始剤を用いて、露光、有機溶剤現像することによっても、ゲート絶縁膜のパターン形成は可能である。)これにより、ゲート絶縁膜30が完成する。
【0049】
図2(iii)は、ソース・ドレイン電極形成工程の一例を示した図である。ソース・ドレイン電極形成工程においては、ゲート絶縁膜30上に、ソース電極40及びドレイン電極41が形成される。ソース電極40及びドレイン電極41は、ゲート電極20の中央領域は開口部となるように、ゲート電極20の両端部の上方に形成され、ゲート電極20の両端部と一部重なるような位置に形成される。なお、ソース電極40とドレイン電極41は、同じ材料から構成されているので、ソース電極40とドレイン電極41が入れ替わって形成されてもよい。ソース電極40及びドレイン電極41の形成方法は問わない。例えば、フォトリソグラフィー法やディスペンサ法の他、スクリーン印刷法、インクジェット法、フレキソ印刷法、反転オフセット印刷法等の印刷法により形成されてもよい。上述のように、スパッタ法や蒸着法を用いて成膜し、その後にフォトリソグラフィーやスクリーン印刷により所定のパターンを形成してもよいし、マスクを用いてスパッタ法や蒸着法により所定のパターンに成膜して構成してもよい。用いる材料は、
図1において説明した通り、種々の材料を用いることができる。なお、ソース電極40及びドレイン電極41形成後のゲート絶縁膜30の表面の平滑性が維持されていることが必要である。
【0050】
図2(iv)は、有機半導体層形成工程の一例を示した図である。有機半導体層形成工程においては、ソース電極40及びドレイン電極41の開口部にあり、ゲート絶縁膜30が露出した部分に、有機半導体膜が形成される。有機半導体層50の形成方法は問わず、種々の方法により形成されてよい。有機半導体層50は、ゲート絶縁膜30上に形成されるとともに、ソース電極40とドレイン電極41の各々の開口部側端部を覆うように形成される。有機半導体層50も、
図1において説明した通り、種々の材料から構成されてよい。
【0051】
〔実施形態2〕
図3は、本発明の実施形態2に係る有機薄膜トランジスタの一例を示した断面構成図である。実施形態2に係る有機薄膜トランジスタは、絶縁基板10と、ゲート電極20と、ゲート絶縁膜30とを備え、これらが下から順に積層されて構成されている点は、実施形態1に係る有機薄膜トランジスタと同様である。よって、これらの構成要素には、実施形態1と同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
実施形態2に係る有機薄膜トランジスタは、ゲート絶縁膜30上の全面に有機半導体層51が形成され、有機半導体層51の上にソース電極42及びドレイン電極43が形成されている点で、実施形態1に係る有機薄膜トランジスタと異なっている。
【0053】
実施形態2に係る有機薄膜トランジスタは、ボトムゲート・トップコンタクト構造と呼ばれている構造を有している。このように、本発明に係る有機薄膜トランジスタは、ゲート電極20上にゲート絶縁膜30が形成されている構成を有していれば、トップコンタクト構造に構成されてもよい。
【0054】
なお、ソース電極42とドレイン電極43は、厚さ方向の形成位置は有機半導体層50の上であり、実施形態1と異なるが、上面視的な位置は、ゲート電極20の両端部を覆うような位置である点で、実施形態1に係る有機薄膜トランジスタと同様である。
【0055】
実施形態2に係る有機薄膜トランジスタの製造方法については、
図2(iii)で説明したソース・ドレイン電極形成工程と、
図2(iv)で説明した有機半導体層形成工程の順序を入れ替え、有機半導体層形成工程において、ゲート絶縁膜30の全面に有機半導体層51を形成すればよく、他の工程は、実施形態1に係る有機薄膜トランジスタの製造方法と同様であるので、その説明を省略する。
【0056】
このように、実施形態1乃至2で説明したように、本発明に係る有機薄膜トランジスタは、ゲート電極20上にゲート絶縁膜30が形成されたボトムゲート構造を有すれば、種々の構造の有機薄膜トランジスタに適用することができる。
【実施例】
【0057】
次に、本発明の実施例に係る有機薄膜トランジスタについて説明する。本実施例に係る有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体層50に低分子半導体であるペンタセンを用いて、
図1に示した実施形態1に係るボトムコンタクト構造の有機薄膜トランジスタを作製し、比較例に係る有機薄膜トランジスタと特性比較を行った。なお、以下の各実施例において、実施形態1に係る有機薄膜トランジスタと同様の構成要素については、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
〔実施例1〕
本発明の実施例1に係る有機薄膜トランジスタは、以下のようにして作製した。まず、絶縁基板10としてガラス基板(20mm□)を用い、この絶縁基板10上にゲート電極20となるAlを、真空蒸着法で50nmの膜厚になるよう成膜した。膜厚の測定は、触針式表面形状測定器(Dektak3030、アルバック社製)を用いて、成膜部と非成膜部の段差を測定した。以下の各工程で成膜する膜厚の測定は同様な方法で行った。
【0059】
次に、ゲート絶縁膜用組成物1(組成は表1に記載)をスピンコート法により塗布した後、ホットプレート上で90℃で90秒間プレベークした。その後、塗膜全面に4.5mW/cm
2の超高圧水銀ランプで波長365nmの紫外線を800mJ/cm
2照射し光硬化反応を行った。そして、ホットプレートを用いて150℃、60分間加熱硬化処理を行って、膜厚480nmのゲート絶縁膜30を形成した。
【0060】
次いで、ゲート絶縁膜30上にAuを50nmの膜厚になるように真空蒸着法により全面成膜し、次に、ポジ型フォトレジスト(OFPR800、東京応化工業株式会社製)をスピンコート法により塗布し90℃で90秒プリベークした後、パターン形成用のフォトマスクを通して4.5mW/cm
2の超高圧水銀ランプで波長365nmの紫外線を75mJ/cm
2照射した。その後、2.38wt%テトラメチルアンモニウムハイドロオキシド(TMAH)水溶液を用いてディップ現像にて25秒間の現像を行い、引き続き60秒間ディップ水洗を行い、フォトレジストの露光部を除去した。次にこの試料をAuのエッチング液(AURUM−302 関東化学株式会社)に60秒間浸漬させ、パターニングを行った。その後、60秒間超純水による水洗し、N
2ブローにより乾燥させソース電極40及びドレイン電極41を形成した。
【0061】
次いで、ソース電極40及びドレイン電極41の開口部のゲート絶縁膜30上に、真空蒸着装置を使用してペンタセンを50nm成膜し、有機半導体層50を形成した。
【0062】
以上により、有機トランジスタ1を形成した。この有機トランジスタ1について、トランジスタ特性を測定した。
【0063】
〔実施例2〕
絶縁基板10として、厚さ125μmのPENフィルム(製品名:テオネックス(登録商標)Q65FA、帝人デュポンフィルム株式会社製)に平坦化膜としてフルオロポリマー(製品名:EPRIMA(登録商標)AL-X6、旭硝子株式会社製)が600nmの厚さで積層されたものを用いた以外は、実施例1と同様にして各層を形成し、有機トランジスタ2を形成した。この有機トランジスタ2について、トランジスタ特性を測定した。
【0064】
〔実施例3〕
ゲート絶縁膜30の形成以外は実施例1と同様にして各層を形成し、有機トランジスタ3を形成した。
ゲート絶縁膜30は次の通り形成した。ゲート絶縁膜組成物2(組成は表1に記載)をスピンコート法により塗布した後、ホットプレート上で90℃で90秒間プレベークした。その後、パターン形成用のフォトマスクを通して4.5mW/cm
2の超高圧水銀ランプで波長365nmの紫外線を800mJ/cm
2照射し露光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗板を2.38wt%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いディップ現像にて20秒間の現像を行い、引き続き60秒間ディップ水洗を行い、塗膜の未露光部を除去した。その後、ポストベークとしてホットプレートを用いて150℃、60分間加熱硬化処理してゲート絶縁膜30を形成した。
以上により形成した有機トランジスタ3について、トランジスタ特性を測定した。
【0065】
〔実施例4〕
絶縁基板10として、実施例2で用いたフルオロポリマーを600nm積層した厚さ125μmのPENフィルムを用いた以外は、実施例3と同様にして各層を形成し、有機トランジスタ4を形成した。この有機トランジスタ4について、トランジスタ特性を測定した。
【0066】
〔比較例1〕
ゲート絶縁膜形成工程を以下に示すように実施した以外は、実施例1と同様にして各層を形成し、有機トランジスタ3を形成した。ゲート絶縁膜形成工程は、ポリイミドワニス(CT4112、京セラケミカル社製)をスピンコート法により塗布し、窒素雰囲気下100℃で10分間加熱乾燥し、さらに180℃で1時間加熱した。これにより、膜厚680nmのゲート絶縁膜を形成した。この有機トランジスタ5について、トランジスタ特性を測定した。
【0067】
〔比較例2及び3〕
ゲート絶縁膜組成物3(組成は表1に記載)をゲート絶縁膜組成物2の代わりに用いた以外は、実施例3及び4と同様にして各層を形成し、有機トランジスタ6(比較例2)及び7(比較例3)を形成した。なお、ゲート絶縁膜30の膜厚は400nmであった。この有機トランジスタ5および6について、トランジスタ特性を測定した。
【0068】
【表1】
* 表中の数字はすべて質量部である。
*1 一般式(II)においてAが9,9−フルオレニル基であるビスフェノール型エポキシアクリレ−トのPGMEA溶液(ASF-400(新日鉄住金化学社製、樹脂固形分濃度50質量%)
*2 アロニックスM−360(東亜合成(株)製)
*3 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物(日本化薬(株)製)
*4 フルオレン骨格を有するエポキシアクリレ−ト酸付加物のプロピレングリコ−ルモノメチルエ−テルアセテ−ト溶液(樹脂固形分濃度56.5%、新日鉄住金化学(株)製)
*5 jER YX4000HK(三菱化学(株)製)
【0069】
〔実施例5〕
実施例1と同様の方法で有機トランジスタを形成し、ソース電極40及びドレイン電極41の形成前後のゲート絶縁膜の表面粗さを測定した。表面粗さは原子間力顕微鏡システム(ブルカー・エイエックスエス株式会社、Nano Scope Dimension Icon)を用いて5μm角エリアで算出した。
【0070】
〔比較例4〕
比較例1と同様の方法で有機トランジスタを形成し、ソース電極40及びドレイン電極41の形成前後のゲート絶縁膜の表面粗さを実施例5と同様の方法で測定した。
【0071】
図4は、実施例1、2及び比較例1に係る有機薄膜トランジスタのトランジスタ特性の1つを示した図であり、有機薄膜トランジスタのゲート電圧に対するドレイン電流の変化特性を示した図である。
図4において、実施例1、2及び比較例1に係る有機薄膜トランジスタの特性曲線がそれぞれ示されている。いずれも典型的なp型特性が得られており、実施例1、2は電流ヒステリシスがまったく無く、キャリア移動度は0.1cm
2以上、電流オンオフ比は10
6以上、閾値電圧は0V近傍における良好なスイッチング性能を示した。一方、比較例1は若干の電流ヒステリシスが確認された。また、トランジスタ特性曲線より実施例1、2より一桁低いオンオフ比となり、キャリア移動度は1桁低下し、閾値電圧はプラス側へ大幅なシフトがみられた。
【0072】
図5は、実施例5及び比較例4に係る有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜における平坦性の測定結果を示した図である。
実施例5において、ゲート絶縁膜の表面粗さは、Au電極形成後にも0.6nm以下であり、比較例4において、Au電極形成後の表面粗さは0.9nmに増加しているのに対して、良好な表面平坦性を維持していることがわかった。
【0073】
以上の評価結果を表2にまとめて示す。
なお、実施例3、4および比較例2、3のトランジスタ特性は、実施例1,2および比較例1について
図4に示したような特性図から読み取った各特性値を表2に記載し、特性図自体は省略した。また、実施例2、3、4および比較例2、3に係る有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜における平坦性の測定も、実施例5、比較例4と同様に行ったが、これらについても、図は省略し、Au電極形成後の表面粗さの測定値のみを表2に記載した。
【0074】
【表2】
【0075】
このように、本発明に係るゲート絶縁膜30は、薄膜形成後、及び、フォトリソグラフィーによる電極等の形成後(有機半導体層形成時)において高平坦性が得られている。また、それを用いた有機薄膜トランジスタのキャリア移動度は高く、閾値電圧のシフトや電流ヒステリシスがないことからトランジスタの駆動安定性や応答性を高めることができる。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。