特許第6455294号(P6455294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6455294
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】ワイヤソー装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20190110BHJP
   B28D 5/04 20060101ALI20190110BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   B24B27/06 D
   B28D5/04 C
   H01L21/304 611W
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-87293(P2015-87293)
(22)【出願日】2015年4月22日
(65)【公開番号】特開2016-203303(P2016-203303A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】北川 幸司
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−106288(JP,A)
【文献】 特開2004−042241(JP,A)
【文献】 特開平05−147023(JP,A)
【文献】 特開平09−066521(JP,A)
【文献】 特開2011−093034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
B28D 5/04
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワイヤガイドに巻掛けされ、軸方向に往復走行するワイヤによって形成されたワイヤ列と、前記ワイヤにクーラント又はスラリを供給するノズルと、保持したワークを前記ワイヤ列に押圧するワーク送り機構を具備し、前記ノズルから前記ワイヤに前記クーラント又は前記スラリを供給しつつ、前記ワーク送り機構により保持された前記ワークを前記ワイヤ列に押圧して切り込み送りすることで、前記ワークをウェーハ状に切断するワイヤソー装置であって、
前記ワークと前記ワイヤガイドとの間に端材防止板が配置され、該端材防止板は前記ワイヤが通過する溝状の切り欠き部を有し、前記端材防止板の上端が前記ワイヤ列よりも上方に位置するように前記端材防止板が配置されたものであり、
前記ワークの切断面方向から見た左右に少なくとも2本ずつの前記ノズルを具備し、
該ノズルのうち、前記ワークの切断面方向から見た左右の少なくとも1本ずつが、前記ワークと前記端材防止板との間にそれぞれ配置され、少なくとも1本ずつが、前記端材防止板と前記ワイヤガイドの頂点部との間にそれぞれ配置されたものであり、
前記溝状の切り欠き部は端材を掻き落すものであることを特徴とするワイヤソー装置。
【請求項2】
前記ワークから離脱した端材を回収することができる端材受けが、前記端材防止板の下部に配置されたものであることを特徴とする請求項1に記載のワイヤソー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークをウェーハ状に切断するワイヤーソー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体インゴットからウェーハを切り出す手段として、ワイヤソーが知られている。ワイヤソー装置は、複数のワイヤガイドの周囲に切断用ワイヤが多数巻回されることによりワイヤ列が形成されており、その切断用ワイヤが軸方向に高速駆動され、かつ、炭化ケイ素などの遊離砥粒を含むスラリが適宜供給されながら前記ワイヤ列に対してワークが切り込み送りされることにより、このワークが各ワイヤ位置まで同時に切断されるようにしたものである。
【0003】
より詳しくは、ワークの周方向の一部にその軸方向略全域に渡るスライスベースが固着され、このスライスベースがワークホルダに保持された状態でワーク全体が切り込み送りされ、スライスベースと反対の側から切断用ワイヤにより切り込まれる。この際、ワイヤ列にワークを押圧する方向は、該ワークをワイヤ列に上方から押圧する方法と、下方から押圧する方法が知られているが、半導体シリコンインゴットの切断においては、ワークをワイヤ列に上方から押圧する方法が主流である。
【0004】
また最近は、遊離砥粒を含むスラリを供給する代わりに、ワイヤ表面にダイヤモンド砥粒が固定されたワイヤを用いて、クーラントのみを供給しながら切断する方法も用いられている。以降、遊離砥粒を含むスラリを供給する方法を遊離砥粒方式、ワイヤ表面にダイヤモンド砥粒が固定されたワイヤを用いる方法を固定砥粒方式と呼ぶ。
【0005】
ここで、図6に、一般的なワイヤソー装置の一例の概要を示す。
ワイヤソー装置101は、ワーク102を切断するためのワイヤ103、ワイヤ103を巻掛けた複数のワイヤガイド104、ワイヤ103に張力を付与するためのワイヤ張力付与機構105、105a、切断されるワーク102を保持し、下方へと送り出すワーク送り機構106、切断時にクーラント又はスラリを供給するノズル107を具備している。
【0006】
加工液供給機構108は、ノズル107、タンク109、チラー110等から構成されている。ノズル107は、ワイヤ列103aの上方に配置されている。ノズル107はタンク109に接続されており、クーラント又はスラリはタンク109で攪拌され、チラー110により温度調節された後、ノズル107からワイヤ103に供給できるようになっている。このとき、加工液は、ワイヤ列103aの各ワイヤ103に均一に供給される。そして、クーラント又はスラリはワイヤ列103aに乗り、ワーク102の切断部に送られる。その後、供給されたクーラント又はスラリはタンク109に戻り、循環利用される。
【0007】
ワイヤ103は、一方のワイヤリール111から繰り出され、トラバーサ112を介してトルクモータ113等からなるワイヤ張力付与機構105を経て、ワイヤガイド104に入っている。ワイヤ103はこのワイヤガイド104に300〜400回程度巻掛けして軸方向に走行させ、ワイヤ列103aを形成した後、トルクモータ113aとトラバーサ112aとを備えるもう一方のワイヤ張力付与機構105aを経てワイヤリール111aに巻き取られている。
【0008】
このようなワイヤソー装置101においてワーク102を切断した際に、ワークが割れ、欠け等した端材が発生する。このような端材がワイヤ103に引きずられてワイヤガイド104の溝に侵入することがある。端材がワイヤガイド104の溝に侵入すると、ワイヤガイド104を損傷したり、ワイヤ103が溝から脱線してしまったりするだけでなく、最悪の場合にはワイヤ103が断線し、ワーク102の切断を継続できなくなることがある。
【0009】
このような問題に対し、例えば特許文献1に開示されているように、ワークとワイヤガイドの間に端材防止板を、端材防止板の上端とワイヤとの間に隙間を介して設置して、端材がワイヤガイドに巻き込まれるのを防いでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−61799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に示されているような端材防止板を用いた場合であっても、ワークから発生した端材がワイヤガイドに巻き込まれるのを防ぐ効果が十分ではなかった。そのため、ワークの端材がワイヤガイドの溝部に侵入して、ワイヤガイドが損傷したり、ワイヤが溝から脱線してしまったり、さらにはワイヤの断線が発生することがあった。
【0012】
ここで、ワークを切断する際のワイヤ走行速度は、遊離砥粒方式の場合には最大900m/min程度である。これに対して、固定砥粒方式の場合には最大1500m/minあるいはそれよりも高速とする場合がある。このように、固定砥粒方式では遊離砥粒方式の場合に比べてワイヤの走行速度が速い。そのため、固定砥粒方式では、端材がワイヤに引きずられてワイヤガイドに巻き込まれる頻度が遊離砥粒方式よりも高くなる。
【0013】
遊離砥粒方式の場合には、ワイヤガイド溝に侵入した端材は、ワイヤとワイヤガイド溝の間にある遊離砥粒を含むスラリによって摩滅させられる。一方、固定砥粒方式の場合には、ワイヤ上の一部にしか砥粒がないため、ワイヤガイド溝に侵入した端材が長い時間に渡ってワイヤガイド溝内に存在することとなる。そのため、固定砥粒方式の場合には、砥粒がない部分のワイヤが摩耗してしまうため、ワイヤ断線が発生する頻度が特に高く、問題であった。
【0014】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、ワークの切断部で発生した端材がワイヤガイドに巻き込まれることを防止することができるワイヤソー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明によれば、複数のワイヤガイドに巻掛けされ、軸方向に往復走行するワイヤによって形成されたワイヤ列と、前記ワイヤにクーラント又はスラリを供給するノズルと、保持したワークを前記ワイヤ列に押圧するワーク送り機構を具備し、前記ノズルから前記ワイヤに前記クーラント又は前記スラリを供給しつつ、前記ワーク送り機構により保持された前記ワークを前記ワイヤ列に押圧して切り込み送りすることで、前記ワークをウェーハ状に切断するワイヤソー装置であって、
前記ワークと前記ワイヤガイドとの間に端材防止板が配置され、該端材防止板は前記ワイヤが通過する溝状の切り欠き部を有し、前記端材防止板の上端が前記ワイヤ列よりも上方に位置するように前記端材防止板が配置されたものであることを特徴とするワイヤソー装置を提供する。
【0016】
このようなものであれば、ワイヤが端材防止板の切り欠き部を通過する際に、ワークの切断部で発生し、ワイヤに付着して端材防止板の位置まで引きずられてきた端材を掻き落とすことができる。そのため、端材がワイヤガイドに巻き込まれることを防止することができる。これにより、ワイヤガイドが損傷したり、ワイヤが脱線すること、さらにワイヤが断線することを防止することができる。一方、ワイヤの表面に付着したクーラント又はスラリは、端材防止板の切り欠き部によって掻き落とされることはない。そのため、クーラント又はスラリの付着していないワイヤがワークを切断することを原因とするワイヤの断線を防止することができる。
【0017】
このとき、前記ワークの切断面方向から見た左右に少なくとも1本ずつの前記ノズルを具備し、
該ノズルのうち、前記ワークの切断面方向から見た左右の少なくとも1本ずつが、前記ワークと前記端材防止板との間にそれぞれ配置されたものであることが好ましい。
【0018】
このようなものであれば、端材防止板の切り欠き部を通過した後のワイヤにクーラント又はスラリを供給することができるので、ワークの切断部にクーラント又はスラリを十分に供給することができる。そのため、クーラント又はスラリの付着していないワイヤがワークを切断することを原因とするワイヤの断線をより確実に防止することができる。
【0019】
またこのとき、前記ワークから離脱した端材を回収することができる端材受けが、前記端材防止板の下部に配置されたものであることが好ましい。
【0020】
このようなものであれば、ワークから離脱した端材や、端材防止板によって掻き落とされた端材が下方に落下し、下面を走行するワイヤ列に接触することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のワイヤソー装置であれば、ワイヤが端材防止板の切り欠き部を通過する際に、ワークの切断部で発生し、ワイヤに付着して端材防止板の位置まで引きずられてきた端材を掻き落とすことができる。そのため、端材がワイヤガイドに巻き込まれることを防止することができる。これにより、ワイヤガイドが損傷したり、ワイヤが脱線すること、さらにワイヤが断線することを防止することができる。一方、ワイヤの表面に付着したクーラント又はスラリは、端材防止板の切り欠き部によって掻き落とされることはない。そのため、クーラント又はスラリの付着していないワイヤがワークを切断することを原因とするワイヤの断線等の不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のワイヤソー装置の一例を示した概略図である。
図2】本発明のワイヤソー装置に配置される端材防止板の切り欠き部の一例を示した概略図である。
図3】本発明のワイヤソー装置において、ノズルの配置位置の一例を示した概略図である。
図4】本発明のワイヤソー装置に配置される端材防止板の他の一例を示した概略図である。
図5】比較例において用いる端材防止板を示した概略図である。
図6】一般的なワイヤソー装置を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上述したように、ワークの切断部で発生した端材がワイヤガイドの溝に侵入して、ワイヤガイドが損傷したり、ワイヤが溝から脱線してしまったりするだけでなく、最悪の場合にはワイヤが断線し、ワークの切断を継続できなくなるという問題があった。
【0024】
そこで、本発明者はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、ワークとワイヤガイドとの間に配置され、ワイヤが通過する溝状の切り欠き部を有した端材防止板の上端が、ワイヤ列よりも上方に位置するようなものであれば、ワークから離脱した端材がワイヤガイドに巻きこまれることを防止することができるということを見出した。そして、これらを実施するための最良の形態について精査し、本発明を完成させた。
【0025】
図1に示すように、本発明のワイヤソー装置1は、ワーク2を切断するためのワイヤ3、ワイヤ3を巻掛けた複数のワイヤガイド4、ワイヤ3に張力を付与するためのワイヤ張力付与機構5、5a、切断するワーク2を保持し、該保持したワーク2をワイヤ列3aに押圧して切込み送りすることで、ワーク2をウェーハ状に切断することができるワーク送り機構6、ワーク2の切断時にクーラント又はスラリを供給するノズル7を具備している。
【0026】
加工液供給機構8は、ノズル7、タンク9、チラー10等から構成されている。ノズル7は、ワイヤ列3aの上方に配置されている。ノズル7はタンク9に接続されており、クーラント又はスラリはタンク9で攪拌され、チラー10により温度調節された後、ノズル7からワイヤ3に供給できるようになっている。このとき、加工液は、ワイヤ列3aの各ワイヤ3に均一に供給される。そして、クーラント又はスラリはワイヤ列3aに乗り、ワーク2の切断部に送られる。その後、供給されたクーラント又はスラリはタンク9に戻り、循環利用される。
【0027】
ワイヤ3は、一方のワイヤリール11から繰り出され、トラバーサ12を介してトルクモータ13やダンサローラ(デッドウェイト)(不図示)等からなるワイヤ張力付与機構5を経て、ワイヤガイド4に入っている。ワイヤ3はこのワイヤガイド4に300〜400回程度巻掛けして軸方向に走行させ、ワイヤー列3aを形成した後、トルクモータ13aとトラバーサ12aとを備えるもう一方のワイヤ張力付与機構5aを経てワイヤリール11aに巻き取られている。
【0028】
なお、本発明は、上述した遊離砥粒方式又は、固定砥粒方式のどちらの方法に対しても好適に適用することができる。上述したように、従来において固定砥粒方式では、端材がワイヤに引きずられてワイヤガイドに巻き込まれる頻度が遊離砥粒方式よりも高かったので、本発明を適用することが特に好適である。
【0029】
そして、ワイヤソー装置1には、ワーク2とワイヤガイド4との間に、端材防止板14が配置されている。図2に示すように、端材防止板14はワイヤ3が通過する溝状の切り欠き部15を有している。そして図3に示すように、端材防止板14の上端がワイヤ列3aよりも上方に位置するように端材防止板14が配置されている。
【0030】
このようなものであれば、ワイヤ3が端材防止板14の切り欠き部15を通過する際に、ワーク2の切断部で発生し、ワイヤ3に付着して端材防止板14の位置まで引きずられてきた端材を掻き落とすことができる。そのため、端材がワイヤガイド4の溝に侵入することを防止することができる。これにより、ワイヤガイドが損傷したり、ワイヤが脱線すること、さらにワイヤが断線することを防止することができる。一方、ワイヤ3の表面に付着したクーラント又はスラリは、端材防止板14の切り欠き部15によって掻き落とされることはない。そのため、クーラント又はスラリの付着していないワイヤ3がワーク2を切断することを原因とするワイヤ3の断線を防止することができる。
【0031】
切り欠き部15の形状はワイヤ3が通過することができる溝状であればよく、例えば図2に示すように、切欠き部15をU字型のものとすることができる。
【0032】
このとき、図3に示すように、ワーク2の切断面方向から見た左右に少なくとも1本ずつのノズル7を具備し、ノズル7のうち、ワーク2の切断面方向から見た左右の少なくとも1本ずつが、ワーク2と端材防止板14との間にそれぞれ配置されたものであることが好ましい。
【0033】
このようなものであれば、端材防止板14の切り欠き部15を通過した後のワイヤ3にクーラント又はスラリを供給することができるので、ワーク2の切断部にクーラント又はスラリを十分に供給することができる。そのため、クーラント又はスラリの付着していないワイヤ3がワーク2を切断することを原因とするワイヤ3の断線をより確実に防止することができる。
【0034】
具体的には例えば、図3に示すように、ワーク2の切断面方向から見た左右にそれぞれ2本ずつのノズル7を具備し、該ノズル7のうち、ワーク2の切断面方向から見た左右の1本ずつが、ワーク2と端材防止板14との間にそれぞれ配置されたものとすることができる。
【0035】
またこのとき、ワーク2から離脱した端材を回収することができる端材受け16が、端材防止板14の下部に配置されたものであることが好ましい。
【0036】
このようなものであれば、ワーク2から離脱した端材や、端材防止板14によって掻き落とされた端材が下方に落下し、下面を走行するワイヤ列3aに接触することを防ぐことができる。
【0037】
図1において、端材防止板14の下部に端材受け16を配置して、上向きのコの字型の形状となっている。このような形状であれば、開口となっている部分からクーラント又はスラリが下方へと流れるので、その回収が容易となる。また、例えば端材受け16にクーラント又はスラリを回収するための孔を設けても良い。
【0038】
またこれに限定されず、例えば、図4に示すようにして、上面が開口した箱形状となるように、端材防止板14の下部に端材受け16を配置したものとすることもできる。このとき、例えば端材受け16にクーラント又はスラリを回収するための孔を設けても良い。
【0039】
上記のように端材受け16は、例えば、端材防止板14と一体となっているものとすることができる。なお、本発明はこれに限定されず、端材受け16の部分と端材防止板14の部分に分割可能な構造としても良い。
【0040】
切り欠き部15は、ワイヤソー装置1において使用するワイヤ列3aのワイヤピッチ、ワイヤ径にあわせて端材防止板14に形成することが好ましい。例えば、用いるワイヤソー装置により形成することができる。ワイヤソー装置で形成する場合には、例えば、以下の手順で作製することができる。
【0041】
まず、切り欠き部を形成する部材を用意する。この切り欠き部を形成する部材はステンレス鋼製が好ましく、その下部に配置された端材受けと分割可能な構造のものとするのが好ましい。
そして、切り欠き部を形成する部材をワーク送り機構のワーク保持部に固定し、ワークを切断するのと同様にワイヤ列に押圧すれば、切り欠き部を形成することができる。この際、実際にワークを切断する際に使用するものよりも直径の大きいワイヤを使用して切り欠き部を形成すれば、その後のワーク切断において、端材防止板の切り欠き部がワイヤと接触することを防止することができるので好ましい。
このような方法であれば、簡単に端材防止板を製造することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
(実施例)
図1に示すような本発明のワイヤソー装置1を用いて、直径300mmのシリコンインゴットであるワーク2の切断を複数回行った。
【0044】
ワイヤソー装置1には、図3に示すように、ワーク2とワイヤガイド4との間に、ワイヤ3が通過する溝状の切り欠き部15(図2参照)を有する端材防止板14が配置されている。端材防止板14は、その下部に端材受け16が配置されたものを用いた。端材防止板14と端材受け16は、ステンレス鋼製のものを用いた。そして、端材防止板14の上端がワイヤ列3aよりも20mm上方に位置するように端材防止板14を配置した。切断に使用したワイヤ3の直径は140μmで、ワーク切断中の下方へのワイヤ3のたわみ量は最大10mm程度であるので、端材防止板14とワイヤ3が接触しないようにするために、切り欠き部15の寸法は幅240μmで深さ40mmとした。
【0045】
また、ワーク2の切断面方向から見た左右に2本ずつのノズル7を具備し、ノズル7のうち、ワーク2の切断面方向から見た左右の1本ずつが、ワーク2と端材防止板14との間にそれぞれ配置されたものとした。
【0046】
ワイヤ3は、表面にダイヤモンド砥粒が固定されたものを用いた。そして、ノズル7からクーラントのみを供給しながらワーク2の切断を行った。
【0047】
そして、ワーク2を切断する際に、ワイヤ3の断線が発生した回数を測定し、切断したワーク2の総本数で割った値をワイヤ断線率とした。
その結果、実施例におけるワイヤ断線率は、比較例に比べて1/5以下と低いものであった。
【0048】
(比較例)
図6に示すような従来のワイヤソー装置101において、図5に示すように、端材防止板114を、ワーク102とワイヤガイド104の間に設け、端材防止板114の上端は、ワイヤ103に対して隙間を介して配置した。端材防止板114は、その下部に端材受け116が配置されたものを用いた。そして、ワーク102の切断面方向から見た左右方向の、端材防止板114とワイヤガイド104の間にそれぞれノズル107を2本ずつ配置した。このようなワイヤソー装置を用いたこと以外は、実施例と同様にして複数本の直径300mmのシリコンインゴットであるワーク102の切断を行った。
【0049】
そして、実施例と同様にして、ワイヤ断線率を求めた。
【0050】
その結果、比較例におけるワイヤ断線率は、実施例と比べて高かった。ワイヤの断線が発生すると、ワークの切断を継続することができなくなる。そのため、生産効率が大きく悪化するなどの大きなデメリットがある。そのため、ワイヤ断線率は悪化させないことが好ましく、小さい方が望ましい。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
1…ワイヤソー装置、 2…ワーク、 3…ワイヤ、 3a…ワイヤ列、
4…ワイヤガイド、 5、5a…ワイヤ張力付与機構、 6…ワーク送り機構、
7…ノズル、 8…加工液供給機構、 9…タンク、 10…チラー、
11、11a…ワイヤリール、 12、12a…トラバーサ、
13、13a…トルクモータ、 14…端材防止板、 15…切り欠き部、
16…端材受け。
図1
図2
図3
図4
図5
図6