(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A)100重量部に対する、前記樹脂組成物中における前記ラジカル発生剤(D)の含有量が0.3〜8重量部である請求項1に記載の積層体。
前記プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A)100重量部に対する、前記樹脂組成物中における前記酸化防止剤(E)の含有量が0.1〜20重量部である請求項1または2に記載の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の積層体は、ガラス転移温度が60〜160℃である基材フィルム上に、樹脂膜を形成してなる積層体であって、前記樹脂膜が、プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A)、架橋剤(B)、(メタ)アクリレート化合物(C)、ラジカル発生剤(D)および酸化防止剤(E)を含有する樹脂組成物を用いて形成され、前記プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A)100重量部に対する、前記樹脂組成物中における前記架橋剤(B)の含有量が5〜40重量部であり、前記樹脂組成物中における前記(メタ)アクリレート化合物(C)の含有量が0.5〜10重量部であることを特徴とする。
【0012】
(樹脂組成物)
まず、本発明の積層体を構成する樹脂膜を形成するための樹脂組成物について説明する。
本発明で用いる樹脂組成物は、プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A)、架橋剤(B)、(メタ)アクリレート化合物(C)、ラジカル発生剤(D)および酸化防止剤(E)を含有する。
【0013】
本発明で用いるプロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A)(以下、単に「環状オレフィン重合体(A)」とする。)としては、1または2以上の環状オレフィン単量体の重合体、または、1または2以上の環状オレフィン単量体と、これと共重合可能な単量体との共重合体が挙げられるが、本発明においては、環状オレフィン重合体(A)を形成するための単量体として、少なくともプロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)を用いることが好ましい。
【0014】
ここで、プロトン性極性基とは、周期律表第15族または第16族に属する原子に水素原子が直接結合している原子を含む基をいう。周期律表第15族または第16族に属する原子のなかでも、周期律表第15族または第16族の第1または第2周期に属する原子が好ましく、より好ましくは酸素原子、窒素原子または硫黄原子であり、特に好ましくは酸素原子である。
【0015】
このようなプロトン性極性基の具体例としては、水酸基、カルボキシ基(ヒドロキシカルボニル基)、スルホン酸基、リン酸基等の酸素原子を有する極性基;第一級アミノ基、第二級アミノ基、第一級アミド基、第二級アミド基(イミド基)等の窒素原子を有する極性基;チオール基等の硫黄原子を有する極性基;等が挙げられる。これらの中でも、酸素原子を有するものが好ましく、より好ましくはカルボキシ基である。 本発明において、プロトン性極性基を有する環状オレフィン樹脂に結合しているプロトン性極性基の数に特に限定はなく、また、相異なる種類のプロトン性極性基が含まれていてもよい。
【0016】
プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)(以下、適宜、「単量体(a)」という。)の具体例としては、2−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−カルボキシメチル−2−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−メトキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−エトキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−プロポキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−ブトキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−ペンチルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−ヘキシルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−シクロヘキシルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−フェノキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−ナフチルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−ビフェニルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−ベンジルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−ヒドロキシエトキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2,3−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−プロポキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ペンチルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ナフチルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ビフェニルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ベンジルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ヒドロキシエトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ヒドロキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、3−メチル−2−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、3−ヒドロキシメチル−2−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニルトリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ−3,8−ジエン、4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4,5−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−カルボキシメチル−4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、N−(ヒドロキシカルボニルメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ヒドロキシカルボニルエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ヒドロキシカルボニルペンチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ジヒドロキシカルボニルエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ジヒドロキシカルボニルプロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ヒドロキシカルボニルフェネチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(ヒドロキシカルボニル)エチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ヒドロキシカルボニルフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等のカルボキシ基含有環状オレフィン;2−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、4−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2,3−ジヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−(ヒドロキシエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−(ヒドロキシエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−(2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、3−ヒドロキシトリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ−4,8−ジエン、3−ヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ−4,8−ジエン、4−ヒドロキシテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−ヒドロキシメチルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4,5−ジヒドロキシメチルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−(ヒドロキシエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−(ヒドロキシエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、N−(ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、等の水酸基含有環状オレフィン等が挙げられる。これらのなかでも、得られる樹脂膜の密着性が高くなるという点より、カルボキシ基含有環状オレフィンが好ましく、4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エンが特に好ましい。これら単量体(a)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
環状オレフィン重合体(A)中における、単量体(a)の単位の含有割合は、全単量体単位に対して、好ましくは10〜90モル%である。単量体(a)の単位の含有割合が少なすぎると、耐熱性が不十分となるおそれがあり、多すぎると、環状オレフィン重合体(A)の極性溶剤への溶解性が不十分となるおそれがある。
【0018】
また、本発明で用いる環状オレフィン重合体(A)は、プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)と、これと共重合可能な単量体(b)とを共重合して得られる共重合体であってもよい。このような共重合可能な単量体としては、プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b1)、極性基を持たない環状オレフィン単量体(b2)、および環状オレフィン以外の単量体(b3)(以下、適宜、「単量体(b1)」、「単量体(b2)」、「単量体(b3)」という。)が挙げられる。
【0019】
プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b1)としては、たとえば、N−置換イミド基、エステル基、シアノ基、酸無水物基またはハロゲン原子を有する環状オレフィンが挙げられる。
【0020】
N−置換イミド基を有する環状オレフィンとしては、たとえば、下記式(1)で表される単量体、または下記式(2)で表される単量体が挙げられる。
【化1】
(上記式(1)中、R
1は水素原子もしくは炭素数1〜16のアルキル基またはアリール基を表す。nは1ないし2の整数を表す。)
【化2】
(上記式(2)中、R
2は炭素数1〜3の2価のアルキレン基、R
3は、炭素数1〜10の1価のアルキル基、または、炭素数1〜10の1価のハロゲン化アルキル基を表す。)
【0021】
上記式(1)中において、R
1は炭素数1〜16のアルキル基またはアリール基であり、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基等の直鎖アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、ボルニル基、イソボルニル基、デカヒドロナフチル基、トリシクロデカニル基、アダマンチル基等の環状アルキル基;2−プロピル基、2−ブチル基、2−メチル−1−プロピル基、2−メチル−2−プロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、4−メチルヘプチル基、1−メチルノニル基、1−メチルトリデシル基、1−メチルテトラデシル基などの分岐状アルキル基;などが挙げられる。また、アリール基の具体例としては、ベンジル基などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性および極性溶剤への溶解性により優れることから、炭素数6〜14のアルキル基およびアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアルキル基およびアリール基がより好ましい。炭素数が4以下であると極性溶剤への溶解性に劣り、炭素数が17以上であると耐熱性に劣り、さらに樹脂膜をパターン化した場合に、熱により溶融しパターンを消失してしまうという問題がある。
【0022】
上記式(1)で表される単量体の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−プロピルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−アダマンチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルブチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルブチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−エチルブチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルブチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−メチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−ブチルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ブチルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−メチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−エチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−エチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−プロピルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−プロピルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−メチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−エチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−エチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−エチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−プロピルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−プロピルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−プロピルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルノニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルノニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−メチルノニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルノニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(5−メチルノニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−エチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−エチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−エチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルドデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルウンデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルドデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルトリデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルテトラデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルペンタデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−フェニル−テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボキシイミド、N−(2,4−ジメトキシフェニル)−テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボキシイミド等が挙げられる。なお、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
一方、上記式(2)において、R
2は炭素数1〜3の2価のアルキレン基であり、炭素数1〜3の2価のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基およびイソプロピレン基が挙げられる。これらの中でも、重合活性が良好であるため、メチレン基およびエチレン基が好ましい。
【0024】
また、上記式(2)において、R
3は、炭素数1〜10の1価のアルキル基、または、炭素数1〜10の1価のハロゲン化アルキル基である。炭素数1〜10の1価のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基およびシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数1〜10の1価のハロゲン化アルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基およびパーフルオロペンチル基などが挙げられる。これら中でも、極性溶剤への溶解性に優れるため、R
3としては、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0025】
なお、上記式(1)、(2)で表される単量体は、たとえば、対応するアミンと、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物とのイミド化反応により得ることができる。また、得られた単量体は、イミド化反応の反応液を公知の方法で分離・精製することにより効率よく単離できる。
【0026】
エステル基を有する環状オレフィンとしては、例えば、2−アセトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−アセトキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−プロポキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−プロポキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メトキシカルボニルトリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ−8−エン、2−エトキシカルボニルトリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ−8−エン、2−プロポキシカルボニルトリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ−8−エン、4−アセトキシテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−エトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−プロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−ブトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−エトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−プロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−ブトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン等が挙げられる。
【0027】
シアノ基を有する環状オレフィンとしては、例えば、4−シアノテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−シアノテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4,5−ジシアノテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、2−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2,3−ジシアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン等が挙げられる。
【0028】
酸無水物基を有する環状オレフィンとしては、例えば、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−カルボキシメチル−2−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン無水物等が挙げられる。
【0029】
ハロゲン原子を有する環状オレフィンとしては、例えば、2−クロロビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−クロロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−(クロロフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、4−クロロテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−クロロテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン等が挙げられる。
【0030】
これら単量体(b1)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
極性基を持たない環状オレフィン単量体(b2)としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(「ノルボルネン」ともいう。)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ−3,8−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[10.2.1.0
2,11.0
4,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン(「テトラシクロドデセン」ともいう。)、9−メチル−テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−エチル−テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−メチリデン−テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデン−テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−ビニル−テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−プロペニル−テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、ペンタシクロ[9.2.1.1
3,9.0
2,10.0
4,8]ペンタデカ−5,12−ジエン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、インデン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、9−フェニル−テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、テトラシクロ[9.2.1.0
2,10.0
3,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、ペンタシクロ[9.2.1.1
3,9.0
2,10.0
4,8]ペンタデカ−12−エン等が挙げられる。これら単量体(b2)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
環状オレフィン以外の単量体(b3)の具体例としては、エチレン;プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20のα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン、およびこれらの誘導体;等が挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましい。これら単量体(b3)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
これら単量体(b1)〜(b3)のなかでも、本発明の効果がより一層顕著となるという観点より、プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b1)が好ましく、N−置換イミド基を有する環状オレフィンが特に好ましい。
【0034】
環状オレフィン重合体(A)中における、共重合可能な単量体(b)の単位の含有割合は、全単量体単位に対して、好ましくは10〜90モル%である。共重合可能な単量体(b)の単位の含有割合が少なすぎると、環状オレフィン重合体(A)の極性溶剤への溶解性が不十分となるおそれがあり、多すぎると、耐熱性が不十分になるおそれがある。
【0035】
なお、本発明においては、プロトン性極性基を有しない環状オレフィン系重合体に、公知の変性剤を利用してプロトン性極性基を導入することで、環状オレフィン重合体(A)としてもよい。プロトン性極性基を有しない重合体は、上述した単量体(b1)および(b2)のうち少なくとも一種と、必要に応じて単量体(b3)とを任意に組み合わせて重合することによって得ることができる。
【0036】
なお、本発明で用いる環状オレフィン重合体(A)は、上述した単量体を開環重合させた開環重合体であってもよいし、あるいは、上述した単量体を付加重合させた付加重合体であってもよいが、本発明の効果がより一層顕著になるという点より、開環重合体であることが好ましい。
【0037】
開環重合体は、プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)および必要に応じて用いられる共重合可能な単量体(b)を、メタセシス反応触媒の存在下に開環メタセシス重合することにより製造することができる。製造方法としては、たとえば、国際公開第2010/110323号の[0039]〜[0079]に記載されている方法等を用いることができる。 一方、付加重合体は、プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)および必要に応じて用いられる共重合可能な単量体(b)を、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウムまたはバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合させて得ることができる。
【0038】
また、本発明で用いる環状オレフィン重合体(A)が、開環重合体である場合には、さらに水素添加反応を行い、主鎖に含まれる炭素−炭素二重結合が水素添加された水素添加物とすることが好ましい。環状オレフィン重合体(A)が水素添加物である場合における、水素化された炭素−炭素二重結合の割合(水素添加率)は、通常50%以上であり、耐熱性の観点から、70%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましく、95%以上であるのがさらに好ましい。
【0039】
本発明で使用される環状オレフィン重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、通常、1,000〜1,000,000、好ましくは1,500〜100,000、より好ましくは2,000〜10,000の範囲である。
また、環状オレフィン重合体(A)の分子量分布は、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)比で、通常、4以下、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下である。
環状オレフィン重合体(A)の重量平均分子量(Mw)や分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフラン等の溶媒を溶離液としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として求められる値である。
【0040】
架橋剤(B)としては、加熱により架橋剤分子間に架橋構造を形成するものや、環状オレフィン重合体(A)と反応して重合体分子間に架橋構造を形成するものであり、具体的には、2以上の反応性基を有する化合物が挙げられる。このような反応性基としては、例えば、アミノ基、カルボキシ基、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基が挙げられ、より好ましくはアミノ基、エポキシ基およびイソシアネート基であり、アミノ基およびエポキシ基が特に好ましい。
【0041】
架橋剤(B)の分子量は、特に限定されないが、通常、100〜100,000、好ましくは300〜50,000、より好ましくは500〜10,000である。架橋剤(B)は、1種単独で、あるいは、2種以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
架橋剤(B)の具体例としては、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン類;4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族ポリアミン類;2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン、4,4’−ジアジドジフェニルスルフォン等のアジド類;ナイロン、ポリヘキサメチレンジアミンテレレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド等のポリアミド類;N,N,N’,N’,N’’,N’’−(ヘキサアルコキシアルキル)メラミン等のメチロール基やイミノ基等を有していてもよいメラミン類(製品名「サイメル303、サイメル325、サイメル370、サイメル232、サイメル235、サイメル272、サイメル212、マイコート506」{以上、サイテックインダストリーズ社製}等のサイメルシリーズ、マイコートシリーズ);N,N’,N’’,N’’’−(テトラアルコキシアルキル)グリコールウリル等のメチロール基やイミノ基等を有していてもよいグリコールウリル類(製品名「サイメル1170」{以上、サイテックインダストリーズ社製}等のサイメルシリーズ);エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアクリレート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート系ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;1,4−ジ−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ−(ヒドロキシメチル)ノルボルナン;1,3,4−トリヒドロキシシクロヘキサン;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ポリフェノール型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエーテル、エポキシアクリレート重合体等のエポキシ化合物;を挙げることができる。
【0043】
また、エポキシ化合物の具体例としては、ジシクロペンタジエンを骨格とする3官能性のエポキシ化合物(製品名「XD−1000」、日本化薬社製)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(シクロヘキサン骨格および末端エポキシ基を有する15官能性の脂環式エポキシ樹脂、製品名「EHPE3150」、ダイセル化学工業社製)、エポキシ化3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(脂肪族環状3官能性のエポキシ樹脂、製品名「エポリードGT301」、ダイセル化学工業社製)、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(脂肪族環状4官能性のエポキシ樹脂、製品名「エポリードGT401」、ダイセル化学工業社製)等の脂環構造を有するエポキシ化合物;
【0044】
芳香族アミン型多官能エポキシ化合物(製品名「H−434」、東都化成工業社製)、クレゾールノボラック型多官能エポキシ化合物(製品名「EOCN−1020」、日本化薬社製)、フェノールノボラック型多官能エポキシ化合物(エピコート152、154、ジャパンエポキシレジン社製)、ナフタレン骨格を有する多官能エポキシ化合物(製品名EXA−4700、DIC株式会社製)、鎖状アルキル多官能エポキシ化合物(製品名「SR−TMP」、阪本薬品工業株式会社製)、多官能エポキシポリブタジエン(製品名「エポリードPB3600」、ダイセル化学工業社製)、グリセリンのグリシジルポリエーテル化合物(製品名「SR−GLG」、阪本薬品工業株式会社製)、ジグリセリンポリグリシジルエーテル化合物(製品名「SR−DGE」、阪本薬品工業株式会社製、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル化合物(製品名「SR−4GL」、阪本薬品工業株式会社製)等の脂環構造を有さないエポキシ化合物;を挙げることができる。
【0045】
本発明で用いる樹脂組成物中における架橋剤(B)の含有量は、環状オレフィン重合体(A)100重量部に対して、5〜40重量部、好ましくは7〜35重量部、より好ましくは10〜30重量部、特に好ましくは10〜25重量部である。架橋剤(B)の含有量が少なすぎると、耐熱性が低下するおそれがある。一方、架橋剤(B)の含有量が多すぎると、得られる樹脂膜と、基材フィルムとの間の密着性が低下してしまう。
【0046】
(メタ)アクリレート化合物(C)としては、(メタ)アクリル酸〔アクリル酸および/またはメタクリル酸の意。以下、同様。〕のエステルであればよく、特に限定されないが、たとえば、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物、および、4官能以上の(メタ)アクリレート化合物等を好ましく用いることができる。(メタ)アクリレート化合物(C)は、架橋助剤として作用する化合物であり、架橋助剤として作用することで、得られる樹脂膜と基材フィルムとの密着性の向上に寄与する。
【0047】
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、2−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、4−アクリロキシブチルトリメトキシシラン、4−アクリロキシブチルトリエトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシメチルジエトキシシラン、4−メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、4−メタクリロキシブチルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは、2種以上組み合わせて用いることができる。
【0048】
エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート(たとえば、製品名「サイクロマーM100」、ダイセル社製)、4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルベンジルアクリレート、4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルベンジルメタアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは、2種以上組み合わせて用いることができる。
【0049】
4官能以上の(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(たとえば、製品名「DPHA」、ダイセル・サイテック社製、あるいは、製品名「ライトアクリレートDPE−6A」、共栄化学社製、製品名「A−DPH」、新中村化学工業社製)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート(たとえば、製品名「EBECRYL40」、ダイセル・サイテック社製)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(たとえば、製品名「AD−TMP」、新中村化学工業社製)、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(たとえば、製品名「ATM−35E」、新中村化学工業社製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(たとえば、製品名「A−TMMT」、新中村化学工業社製)、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(たとえば、製品名「A−9550」、新中村化学工業社製)、ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(たとえば、製品名「アロニックスM−303 トリ40−60%」、あるいは、製品名「アロニックスM−305 トリ55−63%」、製品名「アロニックスM−306 トリ65−70%」、いずれも東亞合成社製)、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(たとえば、製品名「アロニックスM−402 ペンタ30−40%」、あるいは、製品名「アロニックスM−406 ペンタ25−35%」、いずれも東亞合成社製)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(たとえば、製品名「アロニックスM−408」、東亞合成社製)、多塩基酸変性アクリルオリゴマー(たとえば、製品名「アロニックスM−510」、東亞合成社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは、2種以上組み合わせて用いることができる。
【0050】
本発明で用いる樹脂組成物中における(メタ)アクリレート化合物(C)の含有量は、環状オレフィン重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは0.7〜7重量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。(メタ)アクリレート化合物(C)が少なすぎると、耐薬品性に劣るものとなってしまう。一方、(メタ)アクリレート化合物(C)が多すぎると、得られる樹脂膜と、基材フィルムとの間の密着性が低下してしまう。
【0051】
ラジカル発生剤(D)としては、熱や光によりラジカルを発生する化合物であればよく、特に限定されない。ラジカル発生剤(D)の具体例としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ−アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、N,N−オクタメチレンビスアクリジン、2−(ジメチルアミノ) −2−[(4−メチルフェニル)メチル] −1−[4−(4−モルホルニル)フェニル] −1−ブタノン(製品名「Irgacure379EG」、BASF社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(製品名「IRGACURE184」、BASF社製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名「IRGACURE127」、BASF社製)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(製品名「IRGACURE907」、BASF社製)、1,7−ビス(9−アクリジル)−ヘプタン(ADEKA社製、N1717)、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)](BASF社製、OXE−01)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル) −9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(BASF社製、OXE−02)、四塩化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸やトリエタノールアミンのような還元剤との組み合わせ等が挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは、2種以上組み合わせて用いることができる。
【0052】
本発明で用いる樹脂組成物中におけるラジカル発生剤(D)の含有量は、環状オレフィン重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.3〜8重量部であり、より好ましくは0.5〜6重量部、さらに好ましくは0.7〜4重量部である。ラジカル発生剤(D)の含有量をこの範囲とすることにより、得られる樹脂膜と、基材フィルムとの間の密着性をより良好なものとすることができる。
【0053】
酸化防止剤(E)としては、通常の重合体に使用されている、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤等が使用でき、これらのなかでも、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0054】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレートなどのアクリレート系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン− ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t −ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、3,9−ビス〔2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、トコフェロールなどのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
【0055】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10 −(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン− ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス[フェニル−ジ−アルキル(C
12 〜C
15)ホスファイト]、4,4’−イソプロピリデン−ビス[ジフェニルモノアルキル(C
12 〜C
15)ホスファイト]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(イソデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジメチルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)などのジホスファイト系化合物;などが挙げられる。
【0056】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル 3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル 3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル 3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0057】
これらの酸化防止剤(E)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明で用いる樹脂組成物中における酸化防止剤(E)の含有量は、特に限定されないが、環状オレフィン重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。酸化防止剤(E)の含有量を上記範囲とすることにより、キュアリング後の透明性を向上させることができる。
【0058】
また、本発明で用いる樹脂組成物は、環状オレフィン重合体(A)、架橋剤(B)、(メタ)アクリレート化合物(C)、ラジカル発生剤(D)および酸化防止剤(E)に加えて、溶剤をさらに含有していてもよい。溶剤としては、特に限定されず、樹脂組成物の溶剤として公知のもの、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、4−オクタノンなどの直鎖のケトン類;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルコールエーテル類;ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類;セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブエステル類;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのプロピレングリコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどのジエチレングリコール類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトンなどの飽和γ−ラクトン類;トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミドなどの極性溶媒などが挙げられる。これらの溶剤は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、樹脂組成物に溶剤を含有させる場合には、溶剤は、通常、樹脂膜形成後に除去されることとなる。
【0059】
さらに、本発明で用いる樹脂組成物は、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、所望により、界面活性剤、酸性化合物、カップリング剤またはその誘導体、増感剤、潜在的酸発生剤、光安定剤、消泡剤、顔料、染料、フィラー等のその他の配合剤;等を含有していてもよい。
【0060】
界面活性剤は、ストリエーション(塗布筋あと)の防止、現像性の向上等の目的で使用される。界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシエチレンジアルキルエステル類等のノニオン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;メタクリル酸共重合体系界面活性剤;アクリル酸共重合体系界面活性剤;等が挙げられる。
【0061】
カップリング剤またはその誘導体は、樹脂組成物からなる樹脂膜と、基材フィルムとの密着性をより高める効果を有する。カップリング剤またはその誘導体としては、ケイ素原子、チタン原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子から選ばれる1つの原子を有し、該原子に結合したヒドロカルビルオキシ基またはヒドロキシ基を有する化合物等が使用できる。
【0062】
カップリング剤またはその誘導体としては、例えば、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類、
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−エチル(トリメトキシシリルプロポキシメチル)オキセタン、3−エチル(トリエトキシシリルプロポキシメチル)オキセタン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのトリアルコキシシラン類、
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−へプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのジアルコキシシラン類の他、
メチルトリアセチルオキシシラン、ジメチルジアセチルオキシシラン等のケイ素原子含有化合物;
【0063】
テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタンの他、プレンアクトシリーズ(味の素ファインテクノ株式会社製)等のチタン原子含有化合物;
アセトアルコキシアルミウムジイソプロピレート等のアルミニウム原子含有化合物;
テトラノルマルプロポキシジルコニウム、テトラノルマルブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムものブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシステアレート等のジルコニウム原子含有化合物;が挙げられる。
【0064】
増感剤の具体例としては、2H−ピリド−(3,2−b)−1,4−オキサジン−3(4H)−オン類、10H−ピリド−(3,2−b)−1,4−ベンゾチアジン類、ウラゾール類、ヒダントイン類、バルビツール酸類、グリシン無水物類、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール類、アロキサン類、マレイミド類等が挙げられる。
【0065】
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、金属錯塩系等の紫外線吸収剤、ヒンダ−ドアミン系(HALS)等、光により発生するラジカルを捕捉するもの等のいずれでもよい。これらのなかでも、HALSはピペリジン構造を有する化合物で、樹脂組成物に対し着色が少なく、安定性がよいため好ましい。具体的な化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等が挙げられる。
【0066】
本発明で用いる樹脂組成物の調製方法は、特に限定されず、樹脂組成物を構成する各成分を公知の方法により混合すればよい。
混合の方法は特に限定されないが、樹脂組成物を構成する各成分を溶剤に溶解または分散して得られる溶液または分散液を混合するのが好ましい。これにより、樹脂組成物は、溶液または分散液の形態で得られる。
【0067】
樹脂組成物を構成する各成分を溶剤に溶解または分散する方法は、常法に従えばよい。具体的には、攪拌子とマグネティックスターラーを使用した攪拌、高速ホモジナイザー、ディスパー、遊星攪拌機、二軸攪拌機、ボールミル、三本ロール等を使用して行なうことができる。また、各成分を溶剤に溶解または分散した後に、例えば、孔径が0.5μm程度のフィルター等を用いて濾過してもよい。
【0068】
(積層体)
次いで、本発明の積層体について説明する。本発明の積層体は、ガラス転移温度が60〜160℃である基材フィルム上に、樹脂膜を形成してなる積層体であって、前記樹脂膜が、上述した樹脂組成物を用いて形成されてなるものである。
【0069】
本発明で用いるガラス転移温度が60〜160℃である基材フィルム(以下、単に「基材フィルム」とする。)としては、特に限定されないが、たとえば、本発明の積層体を、フレキシブル有機ELディスプレイの保護基板用途に用いる場合には、可撓性および透明性を有するものであることが好ましい。
【0070】
本発明で用いる基材フィルムとしては、特に限定されないが、たとえば、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、透明性により優れるという点より、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましく、耐熱性に優れるという点でポリエチレンナフタレートがより好ましい。
【0071】
また、本発明で用いる基材フィルムは、波長400〜700nmの範囲について透過率の測定を行った際の400〜700nmの範囲における全透過率が、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0072】
本発明で用いる基材フィルムの厚みは、特に限定されないが、好ましくは10〜500μm、より好ましくは50〜400μm、さらに好ましくは100〜300μmであることが好ましい。基材フィルムが厚すぎる場合は、フレキシブル有機ELディスプレイの保護基板用途に適用する場合に、可撓性が低くなりすぎてしまう。また、薄すぎる場合には、積層体のガスバリア性が低下するおそれがある。
【0073】
そして、本発明の積層体は、このような基材フィルムの上に、上述した樹脂組成物を用いて樹脂膜を形成することにより製造することができるものである。
【0074】
基材フィルム上に、樹脂膜を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、塗布法やフィルム積層法等の方法を用いることができる。
【0075】
塗布法は、例えば、樹脂組成物を塗布した後、加熱乾燥して溶剤を除去する方法である。樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ドクターブレード法、回転塗布法、バー塗布法、スクリーン印刷法等の各種の方法を採用することができる。加熱乾燥条件は、各成分の種類や配合割合に応じて異なるが、通常、30〜150℃、好ましくは60〜120℃で、通常、0.5〜90分間、好ましくは1〜60分間、より好ましくは1〜30分間で行なえばよい。
【0076】
フィルム積層法は、樹脂組成物を、本発明の積層体を構成する基材フィルムとは別の樹脂フィルムや金属フィルム等のBステージフィルム形成用基材上に塗布した後に加熱乾燥により溶剤を除去してBステージフィルムを得、次いで、このBステージフィルムを、積層する方法である。加熱乾燥条件は、各成分の種類や配合割合に応じて適宜選択することができるが、加熱温度は、通常、30〜150℃であり、加熱時間は、通常、0.5〜90分間である。フィルム積層は、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータ等の圧着機を用いて行なうことができる。
【0077】
樹脂膜の厚さとしては、特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよいが、樹脂膜が、たとえば、フレキシブル有機ELディスプレイの保護基板の平坦化膜である場合には、樹脂膜の厚さは、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは0.5〜30μmである。
【0078】
次いで、基材フィルム上に、樹脂膜を形成した後、形成した樹脂膜について、架橋反応を行なわせる。このような架橋は、上述した樹脂組成物に含有させる架橋剤(B)の種類に応じて適宜方法を選択すればよいが、通常、加熱により行なう。加熱方法は、例えば、ホットプレート、オーブン等を用いて行なうことができる。加熱温度は、通常、180〜250℃であり、加熱時間は、樹脂膜の面積や厚さ、使用機器等により適宜選択され、例えばホットプレートを用いる場合は、通常、5〜60分間、オーブンを用いる場合は、通常、30〜90分間の範囲である。加熱は、必要に応じて不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、酸素を含まず、かつ、樹脂膜を酸化させないものであればよく、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトン等が挙げられる。これらの中でも窒素とアルゴンが好ましく、特に窒素が好ましい。特に、酸素含有量が0.1体積%以下、好ましくは0.01体積%以下の不活性ガス、特に窒素が好適である。これらの不活性ガスは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
なお、本発明の積層体を、フレキシブル有機ELディスプレイの保護基板とする場合には、上述した樹脂膜の内に内包されるような形態で、カラーフィルタ層を設け、カラーフィルタとしての機能を備えるものとしてもよい。
【0080】
カラーフィルタ層を形成する場合における、カラーフィルタ層および樹脂膜の形成方法は次の通りとすることができる。すなわち、まず、上記と同様の方法にて、基材フィルム上に、上述した樹脂組成物を用いて、塗布法やフィルム積層法等の方法により、第1の樹脂膜を形成する。そして、この第1の樹脂膜の上に、カラーフィルタ層を形成するための、各色に応じた色素含有樹脂材料からなる層を、印刷法などにより所定のパターンで形成し、次いで、この上に、上記と同様の方法にて、上述した樹脂組成物を用いて、塗布法やフィルム積層法等の方法により、第2の樹脂膜を形成する。そして、上記と同様にして、第1の樹脂膜および第2の樹脂膜を架橋反応させることで、カラーフィルタ層を内包する樹脂膜を形成することができる。
【0081】
また、本発明においては、このようにして得られる本発明の積層体の樹脂膜上に、さらに無機膜を形成してもよい。樹脂膜上に無機膜を形成することにより、得られる積層体のガスバリア性をさらに高めることができる。このような樹脂膜上に形成する無機膜としては、無機材料から構成される膜であればよく特に限定されないが、透明無機酸化膜、透明無機酸化窒化膜、透明無機窒化膜、または金属膜であることが好ましい。
【0082】
透明無機酸化膜としては、酸化ケイ素膜、酸化窒化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜、酸化マグネシウム膜、酸化チタン膜、酸化スズ膜、酸化インジウム合金膜などが挙げられる。また、透明無機窒化膜としては、窒化ケイ素膜、窒化アルミニウム膜、窒化チタン膜などが挙げられる。さらに、透明金属膜としては、アルミニウム膜、銀膜、錫膜、クロム膜、ニッケル膜、チタン膜などが挙げられる。これらのなかでも、得られる積層体により優れたガスバリア性を付与することができるという点から、透明無機窒化膜が好ましく、窒化ケイ素膜がより好ましい。
【0083】
樹脂膜上に、無機膜を形成する方法としては、特に限定されないが、蒸着法を用いることができる。蒸着法としては、たとえば、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物または金属等を加熱して基材上に蒸着させる真空蒸着法;無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、または金属を原料として用い、酸素ガスを導入することにより酸化させて、基材上に蒸着させる酸化反応蒸着法;無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、または金属をターゲット原料として用い、アルゴンガス、酸素ガスを導入して、スパッタリングすることにより基材に蒸着させるスパッタリング法;無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、または金属にプラズマガンで発生させたプラズマビームにより加熱させて、基材上に蒸着させるイオンプレーティング法;また酸化ケイ素の蒸着膜を成膜させる場合は、有機ケイ素化合物を原料とするプラズマCVD法;等が挙げられる。これらのなかでも、生成膜の緻密性という点より、プラズマCVD法が好ましく用いられる。
【0084】
無機膜の厚みは、特に限定されず、無機膜を構成する材料により適宜選択されるものであるが、好ましくは5nm〜5000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmである。無機膜の厚みが薄すぎると、ガスバリア性の向上効果が不十分となってしまう場合があり、一方、厚すぎると、加工する際等に、クラック等が入るおそれがあり、また、得られる積層体の透明性が低下するおそれもある。
【0085】
このようにして得られる本発明の積層体は、層間の密着性に優れ、平坦性および透明性に優れることから、これらの特性を活かして、フレキシブル有機ELディスプレイ用の保護基板として特に好適に用いることができる。特に、本発明の積層体は、焼成温度(キュアリング温度)180℃以上にて形成された樹脂膜について、JIS K5400−8.5に準拠して、クロスカット試験を行った場合に、分類0(剥がれが全くなく、樹脂膜の残存割合が100%)であり、層間の密着性に優れるものである。そのため、本発明の積層体は、フレキシブル有機ELディスプレイ用の保護基板として用いた場合には、層間の密着性および平坦性に優れることから、優れたガスバリア性を発揮することができ、これにより、フレキシブル有機ELディスプレイの信頼性を高めることができる。
【実施例】
【0086】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。各例中の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。
なお、各特性の定義および評価方法は、以下のとおりである。
【0087】
<樹脂膜とフィルムとの密着性(クロスカット試験)>
ガラス上にPENフィルム(ポリエチレンナフタレートフィルム)を接着させた基板を用いて、UV/O
3洗浄を2000mJ/cm
2にて行い、次いで5分間の超音波洗浄を2回行った。そして、基板のPENフィルム上に、樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて、100℃、2分の条件にてプリベークを行い、オーブンを用いて、大気雰囲気下、180℃、3時間の条件でキュアリングすることで、基板のPENフィルム上に厚み2μmの樹脂膜を形成した。
そして、このようにして形成した樹脂膜について、JIS K5400−8.5に準拠して、クロスカット試験を行った。具体的には、まず、カッターナイフを用いて、形成した樹脂膜に10×10=100個の碁盤目を形成した。そして、碁盤目部分にセロハンテープを強く圧着して、セロハンテープの端を45°の角度で一気に剥がし、樹脂膜の残存割合(基板上に残った樹脂膜の割合)を求め、以下の基準にて、密着性を評価した。
○:樹脂膜の残存割合が100%(分類0)
△:樹脂膜の残存割合が80%以上、100%未満
×:樹脂膜の残存割合が80%未満
なお、実施例2,4については、PENフィルムを形成した基板に加えて、PETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を形成した基板を用いた評価も行った。なお、PETフィルムを用いた評価においては、キュアリングの温度を180℃から130℃に変更した以外は、PENフィルムを用いた評価と同様に評価を行った。
【0088】
<平坦性>
無アルカリガラス基板上に、樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて、100℃、2分の条件にてプリベークを行い、オーブンを用いて、大気雰囲気下、180℃、3時間の条件でキュアリングすることで、厚み2μmの樹脂膜を形成した。そして、得られた樹脂膜の表面について、ナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製、「ナノスケールハイブリッド顕微鏡 VN−8000」)を用いて、算術表面粗さRaの測定を行い、以下の基準で平坦性の評価を行った。
○:算術表面粗さRaが10nm未満
×:算術表面粗さRaが10nm以上
【0089】
<透明性>
無アルカリガラス基板上に、樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて、100℃、2分の条件にてプリベークを行い、オーブンを用いて、大気雰囲気下、180℃、3時間の条件でキュアリングすることで、厚み2μmの樹脂膜を形成した。そして、得られた樹脂膜について、分光光度計(日本分光株式会社製、「紫外可視分光光度計V−560」を用いて、波長400〜700nmの範囲について1nm間隔で透過率の測定を行った。そして、得られた400〜700nmの範囲における全透過率の平均値を求め、以下の基準にしたがって、透明性を評価した。なお、樹脂膜の透明性が高いほど、得られる積層体の透明性も高いものと判断することができる。
○:全透過率が95%以上
×:全透過率が95%未満
【0090】
《合成例1》
<環状オレフィン重合体(A−1)の調製>
N−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(NBPI)40モル%、および4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン(TCDC)60モル%からなる単量体混合物100部、1,5−ヘキサジエン2.0部、(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド(Org.Lett.,第1巻,953頁,1999年 に記載された方法で合成した)0.02部、およびジエチレングリコールエチルメチルエーテル200部を、窒素置換したガラス製耐圧反応器に仕込み、攪拌しつつ80℃にて4時間反応させて重合反応液を得た。
【0091】
そして、得られた重合反応液をオートクレーブに入れて、150℃、水素圧4MPaで、5時間攪拌して水素化反応を行い、環状オレフィン重合体(A−1)を含む重合体溶液を得た。得られた環状オレフィン重合体(A−1)の重合転化率は99.7%、ポリスチレン換算重量平均分子量は7,150、数平均分子量は4,690、分子量分布は1.52、水素添加率は、99.7%であった。また、得られた環状オレフィン重合体(A−1)の重合体溶液の固形分濃度は34.4重量%であった。
【0092】
《合成例2》
<アクリル樹脂(A’−2)の調製>
スチレン20部、ブチルメタクリレート25部、2−エチルヘキシルアクリレート25部、メタクリル酸30部、2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.5部、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300部を窒素気流中で撹拌しながら80℃で5時間加熱した。得られた樹脂溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、固形分濃度35重量%のアクリル樹脂(A’−2)の重合体溶液を得た。
【0093】
《実施例1》
環状オレフィン重合体(A)として、合成例1で得られた環状オレフィン重合体(A−1)の重合体溶液291部(環状オレフィン重合体(A−1)として100部)、架橋剤(B)として、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(脂肪族環状4官能性のエポキシ樹脂、製品名「エポリードGT401」、ダイセル化学工業社製)10部、(メタ)アクリレート化合物(C)として、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(製品名「アロニックスM−406 ペンタ25−35%」、東亜合成社製、4官能以上の(メタ)アクリレート化合物)1部、(メタ)アクリレート化合物(C)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート(製品名「サイクロマーM100」、ダイセル社製、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物)2部、ラジカル発生剤(D)として、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名「Irgacure 127」、BASF社製)2部、酸化防止剤(E)として、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「Irganox 1010」、BASF社製)2部、および、溶剤として、エチレングリコールエチルメチルエーテル100部を混合し、溶解させた後、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して固形分濃度20%の樹脂組成物を調製した。
【0094】
そして、上記にて得られた樹脂組成物を用いて、上記方法にしたがって、樹脂膜とフィルムとの密着性、平坦性、および透明性の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
《実施例2》
樹脂組成物を調製する際に、(メタ)アクリレート化合物(C)として、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(製品名「KBM−5103」、信越化学工業社製、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート化合物)2部をさらに配合した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
《実施例3》
樹脂組成物を調製する際に、(メタ)アクリレート化合物(C)としての3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレートを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
《実施例4,5》
樹脂組成物を調製する際に、架橋剤(B)としてのエポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトンの配合量を10部から、20部(実施例4)、および30部(実施例5)に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
《実施例6》
樹脂組成物を調製する際に、(メタ)アクリレート化合物(C)としてのジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートの配合量を1部から6部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
《比較例1》
樹脂組成物を調製する際に、架橋剤(B)としてのエポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトンの配合量を10部から、50部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
《比較例2》
樹脂組成物を調製する際に、(メタ)アクリレート化合物(C)としてのジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートの配合量を1部から10部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
《比較例3》
樹脂組成物を調製する際に、環状オレフィン重合体(A−1)の重合体溶液の代わりに、アクリル樹脂(A’−2)の重合体溶液281部(アクリル樹脂(A’−2)として100部)を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
表1中、
「エポリードGT401」は、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン、
「アロニックスM−406」は、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート、
「サイクロマーM100」は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、
「KBM−5103」は、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
「Irgacure 127」は、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、
「Irganox 1010」は、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
である。
【0103】
表1に示すように、環状オレフィン重合体(A)、架橋剤(B)、(メタ)アクリレート化合物(C)、ラジカル発生剤(D)および酸化防止剤(E)を含有し、環状オレフィン重合体(A)100部に対する、架橋剤(B)の含有量を5〜40部、(メタ)アクリレート化合物(C)の含有量を0.5〜10部とした樹脂組成物を用いた場合には、樹脂膜と基材フィルムとの密着性に優れ、平坦性および透明性に優れる結果となり、この結果より、本発明の積層体は、層間の密着性に優れ、平坦性および透明性に優れるものであり、フレキシブル有機ELディスプレイ用の保護基板用途に好適であると判断することができる(実施例1〜6)。
一方、架橋剤(B)の配合量を40部超とした場合、および、(メタ)アクリレート化合物(C)の配合量を10部超とした場合には、樹脂膜と基材フィルムとの密着性に劣る結果となった(比較例1,2)。
また、環状オレフィン重合体(A)に代えて、アクリル樹脂を用いた場合には、平坦性が不十分となる結果となった(比較例3)。