特許第6455644号(P6455644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6455644
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】合成皮革
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/14 20060101AFI20190110BHJP
   B32B 27/40 20060101ALN20190110BHJP
   C08G 18/44 20060101ALN20190110BHJP
   C08G 18/75 20060101ALN20190110BHJP
   C08G 18/73 20060101ALN20190110BHJP
   C08G 18/66 20060101ALN20190110BHJP
【FI】
   D06N3/14 101
   !B32B27/40
   !C08G18/44
   !C08G18/75
   !C08G18/73
   !C08G18/66 048
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-540882(P2018-540882)
(86)(22)【出願日】2017年10月26日
(86)【国際出願番号】JP2017038608
(87)【国際公開番号】WO2018105261
(87)【国際公開日】20180614
【審査請求日】2018年8月3日
(31)【優先権主張番号】特願2016-235831(P2016-235831)
(32)【優先日】2016年12月5日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-245448(P2016-245448)
(32)【優先日】2016年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】千々和 宏之
(72)【発明者】
【氏名】片上 保之
(72)【発明者】
【氏名】上口 美和
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/006583(WO,A1)
【文献】 特開平05−005280(JP,A)
【文献】 特開昭60−134075(JP,A)
【文献】 特開2016−191000(JP,A)
【文献】 特開2016−027111(JP,A)
【文献】 特表2008−530308(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0239846(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N1/00−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布(i)、接着層(ii)、中間層(iii)、及び、表皮層(iv)が順次積層された合成皮革であって、
前記中間層(iii)が、ポリカーボネートポリオール(x−1)を70質量%以上含有するポリオール(X)、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(Y)、及び、鎖伸長剤(Z)の反応物であるポリウレタン樹脂(W)を含むポリウレタン樹脂組成物により形成されたものであり、
前記接着層(ii)が、ポリカーボネートポリオール(a−1)を70質量%以上含有するポリオール(A)、イソホロンジイソシアネート、及び/又は、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(B)、及び、イソホロンジアミン、及び/又は、ジシクロヘキシルメタンジアミン(C)の反応物である、重量平均分子量が、2,000〜30,000の範囲である水酸基を有するポリウレタン樹脂(D−1)と架橋剤(D−2)とを含むポリウレタン樹脂組成物により形成されたものであることを特徴とする合成皮革。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート(Y)が、イソホロンジイソシアネート、及び/又は、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートである請求項1記載の合成皮革。
【請求項3】
前記鎖伸長剤(Z)が、アミノ基を有する鎖伸長剤である請求項1又は2記載の合成皮革。
【請求項4】
前記アミノ基を有する鎖伸長剤が、イソホロンジアミン、及び/又は、ジシクロヘキシルメタンジアミンである請求項記載の合成皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼け止めクリームが付着しても、変形等を起こさない合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、優れた機械的強度を有するため、フィルム、接着剤、自動車内装材、研磨剤等様々な分野で広く利用されている。中でも、近年では、ポリウレタン樹脂が有する柔軟性ゆえ優れた風合いが得られるため、合成皮革用途に多くの研究がなされている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
前記合成皮革(人工皮革含む。)の製造に用いられるポリウレタン樹脂は、近年、特に、自動車内装材向けに高い耐久性が求められている。中でも、車輌内装材では、従来の耐久性(耐熱性、耐光性、耐加水分解性等)に加え、日焼け止めクリームに対する優れた耐薬品性が求められている。しかしながら、日焼け止めクリームに対する耐薬品性に優れる材料は未だ見出されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−100289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、日焼け止めクリームが付着しても、変形等を起こさない合成皮革を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基布(i)、接着層(ii)、中間層(iii)、及び、表皮層(iv)が順次積層された合成皮革であって、前記中間層(iii)が、ポリカーボネートポリオール(x−1)を70質量%以上含有するポリオール(X)、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(Y)、及び、鎖伸長剤(Z)の反応物であるポリウレタン樹脂(W)を含むポリウレタン樹脂組成物により形成されたものであることを特徴とする合成皮革を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の合成皮革は、日焼け止めクリームが付着しても、変形等を起こさない(以下、「耐薬品性」と略記する。)ものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の合成皮革は、基布(i)、接着層(ii)、中間層(iii)、及び、表皮層(iv)が順次積層された合成皮革であって、前記中間層(iii)が、ポリカーボネートポリオール(x−1)を70質量%以上含有するポリオール(X)、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(Y)、及び、鎖伸長剤(Z)の反応物であるポリウレタン樹脂(W)を含むポリウレタン樹脂組成物により形成されたものである。
【0009】
前記表皮層(iv)は、公知の材料により公知の方法で形成することができ、例えば、溶剤系ウレタン樹脂、水系ウレタン樹脂、無溶剤系ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。
【0010】
前記中間層(iii)は、ポリカーボネートポリオール(x−1)を70質量%以上含有するポリオール(X)、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(Y)、及び、鎖伸長剤(Z)の反応物であるポリウレタン樹脂(W)を含むポリウレタン樹脂組成物により形成されたものである。前記中間層(iii)が、この特定のポリウレタン樹脂組成物により形成されることにより、接着層(ii)や表皮層(iv)の種類を問わず、優れた耐薬品性を発現することができる。
【0011】
前記中間層(iii)に使用する前記ポリウレタン樹脂組成物は、1)耐薬品性の優れるポリカーボネートポリオール(x−1)を特定量以上使用すること、2)芳香族ポリイソシアネートよりも凝集力の低い脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(Y)を用いるため、日焼け止めクリームが付着した際に、ポリウレタン樹脂のポリマー間で緩和することができ、膨潤等の変形がなく、合成皮革の形状保持をすることができたと考えられる。また、この特定のポリウレタン樹脂組成物を、表皮層(iv)に近い中間層(iii)に導入することにより、その効果がより向上したものと考えられる。
【0012】
また、本発明の合成皮革は、中間層(iii)を特定のポリウレタン樹脂により形成することによって、様々な日焼け止めクリームに対し、優れた耐薬品性を有するものである。例えば、日焼け止めクリームとして知られるニュートロジーナ(登録商標)は、それに含有される2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、サリチル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル等の水酸基を有する紫外線吸収剤が、合成皮革を構成するポリウレタン樹脂中のウレタン結合との親和性により、耐薬品性の不良化につながるため、これを用いた耐薬品性試験は非常に厳しい試験となる。しかしながら、本発明の合成皮革は、前記ニュートロジーナを用いた場合でも優れた耐薬品性を示すものである。
【0013】
前記ポリカーボネートポリオール(x−1)としては、例えば、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、水酸基を2個以上有する化合物との反応物を用いることができる。
【0014】
前記炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記水酸基を2個以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記ポリカーボネートポリオール(x−1)の数平均分子量としては、より一層優れた耐薬品性が得られる点から、500〜8,000の範囲であることが好ましく、700〜5,000の範囲であることがより好ましく、800〜3,000の範囲であることが更に好ましい。なお、前記ポリカーボネートポリオール(x−1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0017】
前記ポリオール(X)は、優れた耐薬品性を得るうえで、前記ポリカーボネートポリオール(x−1)を70質量%以上含有するものである。前記ポリカーボネートポリオール(x−1)以外に用いることができるその他のポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;ポリアクリルポリオールなどを用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記その他のポリオールの数平均分子量としては、500〜10,000の範囲であることが好ましく、700〜5,000の範囲がより好ましい。なお、前記その他のポリオールの数平均分子量は、前記ポリカーボネートポリオール(x−1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0019】
前記脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(Y)としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた耐薬品性が得られる点から、イソホロンジイソシアネート、及び/又は、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0020】
前記脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(Y)には、合成皮革の風合いを向上することを目的として、本発明の効果を損なわない範囲で、芳香族ポリイソシアネートを併用してもよい。
【0021】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,6−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,5−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−3,5−フェニレンジイソシアネート、1−エチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−イソプロピル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−ジメチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−ジメチル−4,6−フェニレンジイソシアネート、1,4−ジメチル−2,5−フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1−メチル−3,5−ジエチルベンゼンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ジエチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1,3,5−トリエチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、1−メチル−ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート、ナフタレン−2,7−ジイソシアネート、1,1−ジナフチル−2,2’−ジイソシアネート、ビフェニル−2,4’−ジイソシアネート、ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3−3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4−ジイソシアネート等を用いることができる。これらの芳香族ポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記鎖伸長剤(Z)としては、例えば、アミノ基を有する鎖伸長剤、水酸基を有する鎖伸長剤等を用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた耐薬品性が得られる点から、アミノ基を有する鎖伸長剤(c−1)を用いることが好ましい。
【0023】
前記アミノ基を有する鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等を用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた耐薬品性が得られる点から、イソホロンジアミン、及び/又は、ジシクロヘキシルメタンジアミンを用いることが好ましい。
【0024】
前記水酸基を有する鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオール化合物;水などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記ポリウレタン樹脂(W)の製造方法としては、例えば、前記ポリオール(X)、及び好ましくは有機溶剤を仕込んで撹拌した後に、前記ポリイソシアネート(Y)、更に鎖伸長剤(Z)を入れ、例えば50〜100℃で3〜10時間反応させる方法等が挙げられる。ポリウレタン樹脂製造後には、残存するイソシアネート基を失活させる目的で、エタノール、メタノール、ブタノール等のアルコールを添加してもよい。
【0026】
前記有機溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソブチル、酢酸第2ブチル等のエステル溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等アルコール溶剤などを用いることができる。これらの有機溶剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記有機溶剤を用いる場合の使用量としては、例えば、製造安定性、塗工性、及び、成膜性の点から、ポリウレタン樹脂組成物中30〜90質量%の範囲であることが好ましく、40〜80質量%の範囲がより好ましい。
【0027】
以上の方法により得られるポリウレタン樹脂(W)の重量平均分子量としては、より一層優れた耐薬品性、及び、成膜性が得られる点から、5,000〜500,000の範囲であることが好ましく、10,000〜300,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリウレタン樹脂(W)の重量平均分子量は、前記ポリカーボネートポリオール(x−1)の数平均分子量と同様に測定した値を示す。
【0028】
前記ポリウレタン樹脂(W)中における脂環構造の含有量としては、より一層優れた耐薬品性が得られる点から、4,500〜7,000mol/kgの範囲であることが好ましく、5,000〜6,000mol/kgの範囲がより好ましい。なお、前記脂環構造の含有量は、原料に用いる前記ポリオール(X)、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(Y)及び前記鎖伸長剤(Z)の合計質量に対する脂環構造の含有量を示す。
【0029】
前記ポリウレタン樹脂(W)中におけるウレタン結合の含有量としては、より一層優れた耐薬品性が得られる点から、500〜900mol/kgの範囲であることが好ましく、700〜800mol/kgの範囲がより好ましい。なお、前記ウレタン結合の含有量は、原料に用いる前記ポリオール(X)、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(Y)及び前記鎖伸長剤(Z)の合計質量に対するウレタン結合の含有量を示す。
【0030】
本発明で用いるポリウレタン樹脂組成物は、前記ポリウレタン樹脂(W)を必須成分として含有するが、必要に応じて、その他の添加剤を含有しもよい。
【0031】
前記その他の添加剤としては、例えば、界面活性剤、顔料、触媒、難燃剤、可塑剤、軟化剤、安定剤、ワックス、消泡剤、分散剤、浸透剤、フィラー、防黴剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、蛍光増白剤、老化防止剤、増粘剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記接着層(ii)は、公知の材料により公知の方法で形成することができ、例えば、溶剤系ウレタン樹脂、水系ウレタン樹脂、無溶剤系ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。
【0033】
前記接着層(ii)としては、前記したものの中でも、より一層優れた耐薬品性が得られる点から、ポリカーボネートポリオール(a−1)を70質量%以上含有するポリオール(A)、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(B)、及び、鎖伸長剤(C)の反応物である水酸基を有するポリウレタン樹脂(D−1)と架橋剤(D−2)とを含むポリウレタン樹脂組成物により形成されたものを用いることが好ましい。
【0034】
前記ポリウレタン樹脂(D−1)の原料として用いる前記ポリオール(A)、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(B)、及び、鎖伸長剤(C)は、前記中間層(iii)の形成に用いる前記ポリウレタン樹脂(W)の原料と同様のものを用いることができる。
【0035】
前記ポリウレタン樹脂(D−1)の製造方法としては、例えば、前記ポリオール(A)、及び好ましくは有機溶剤を仕込んで撹拌した後に、前記ポリイソシアネート(B)、更に鎖伸長剤(C)を入れ、例えば50〜100℃で3〜10時間反応させる方法等が挙げられる。また、このウレタン化反応を行う際の、前記ポリオール(A)、及び前記鎖伸長剤(C)が有する水酸基及びアミノ基との合計と、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基とのモル比(NCO/OH+NH)としては、後述する架橋剤(X−2)と良好な架橋を示し、より一層優れた接着性、及び耐薬品性が得られる点から、0.4〜0.9の範囲であることが好ましく、0.5〜0.8の範囲がより好ましい。
【0036】
以上の方法により得られるポリウレタン樹脂(D−1)の重量平均分子量としては、より一層優れた耐薬品性、成膜性、及び、接着性が得られる点から、2,000〜300,000の範囲であることが好ましく、5,000〜30,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリウレタン樹脂(D−1)の重量平均分子量は、前記ポリカーボネートポリオール(x−1)の数平均分子量と同様に測定した値を示す。
【0037】
前記ポリウレタン樹脂(D−1)中におけるウレタン結合の含有量としては、より一層優れた耐薬品性が得られる点から、500〜900μmol/gの範囲であることが好ましく、750〜850μmol/gの範囲がより好ましい。なお、前記ウレタン結合の含有量は、原料に用いる前記ポリオール(A)、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(B)及び前記鎖伸長剤(C)の合計質量に対するウレタン結合の含有量を示す。
【0038】
前記架橋剤(D−2)としては、例えば、ポリイソシアネート架橋剤、メラミン架橋剤等を用いることができる。これらの架橋剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ポリウレタン樹脂(D−1)と良好な架橋を示し、より一層優れた接着性、及び耐薬品性が得られる点から、ポリイソシアネート架橋剤を用いることが好ましい。
【0039】
前記ポリイソシアネート架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、クロロフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等のポリイソシアネート;これらのトリメチロールプロパン付加物;これらのイソシアヌレート体;これらのビュレット体;これらのアダクト体;ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどを用いることができる。これらの架橋剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記架橋剤(D−2)の含有量としては、前記ポリウレタン樹脂(D−1)と良好な架橋を形成し、より一層優れた接着性、及び耐薬品性が得られる点から、前記ポリウレタン樹脂(D−1)の固形分100質量部に対して0.1〜40質量部の範囲であることが好ましく、0.2〜20質量部の範囲がより好ましい。
【0041】
前記ポリウレタン樹脂組成物は、前記ポリウレタン樹脂(D−1)と架橋剤(D−2)とを含有するが、必要に応じて、前記中間層(iii)に用いることができるその他の添加剤を含有してもよい。
【0042】
前記基布(i)としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、グラスファイバー、炭素繊維、それらの混紡繊維等による不織布、織布、編み物などを用いることができる。
【0043】
本発明の合成皮革の製造方法としては、例えば、離型処理された基材上に、公知の方法により、表皮層(iv)を形成した後に、前記表皮層(iv)上に、前記ポリウレタン樹脂組成物を塗工し、乾燥させたのちに、中間層(iii)を得、次いで、公知の方法により、前記中間層(iii)上に接着層(ii)を形成し、該接着層(ii)と基布(i)とを貼り合わせる方法が挙げられる。
【0044】
前記層(ii)〜(iv)を形成する際の樹脂組成物の塗工方法としては、例えば、グラビアコーター、ナイフコーター、パイプコーター、コンマコーター、ロールコーター、アプリケーター等を使用する方法が挙げられる。
【0045】
前記樹脂組成物を塗工後の乾燥としては、例えば、80〜120℃に調整した乾燥機等を使用して、例えば、1〜60分行うことが挙げられる。
【0046】
前記層(ii)〜(iv)の乾燥後の膜厚としては、それぞれ使用される用途に応じて適宜決定されるが、例えば、0.001〜10mmの範囲である。
【0047】
前記表皮層(iv)上には、必要に応じて、表面処理層(v)を設けてもよい。
【0048】
以上、本発明の合成皮革は、日焼け止めクリーム(特に、ニュートロジーナ)が付着しても、変形等を起こさない優れた耐薬品性を有するものである。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0050】
[合成例1]中間層用ポリウレタン樹脂(W−1)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、1,6−ヘキサンジオールを原料としたポリカーボネートジオール(数平均分子量;2,000、「PC−1」と略記する。)324質量部を加え、0.095MPaに減圧して120〜130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略記する。)を278質量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、「H12MDI」と略記する。)93質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを773質量部加え、35℃まで冷却し、イソホロンジアミン(以下、「IPDA」と略記する。)を30質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N−ジブチルアミン1.5質量部を加え、混合することによって、中間層用ポリウレタン樹脂(W−1)組成物を得た。
【0051】
[合成例2]中間層用ポリウレタン樹脂(W−2)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール(モル比:70/30)を原料としたポリカーボネートポリオール(数平均分子量;2,000、「PC−2」と略記する。)275質量部、1,6−ヘキサンジオール及びアジピン酸を原料としたポリエステルポリオール(数平均分子量:2,000、以下「PEs−1」と略記する。)49質量部を加え、0.095MPaに減圧して120〜130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを278質量部、H12MDIを93質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを773質量部加え、35℃まで冷却し、IPDAを30質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N−ジブチルアミン1.5質量部を加え、混合することによって、中間層用ポリウレタン樹脂(W−2)組成物を得た。
【0052】
[合成例3]中間層用ポリウレタン樹脂(W−3)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、1,6−ヘキサンジオールを原料としたポリカーボネートポリオール(数平均分子量;1,000、「PC−3」と略記する。)235質量部、1,4−ブタンジオール及びアジピン酸を原料としたポリエステルポリオール(数平均分子量:1,000、以下「PEs−2」と略記する。)78質量部を加え、0.095MPaに減圧して120〜130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを278質量部、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略記する。)を104質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを773質量部加え、35℃まで冷却し、4,4’−ジシクロヘキシルジアミン(以下、「H12MDA」と略記する。)を30質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N−ジブチルアミン1.5質量部を加え、混合することによって、中間層用ポリウレタン樹脂(W−3)組成物を得た。
【0053】
[合成例4]中間層用ポリウレタン樹脂(W−4)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、PC−2 339質量部を加え、0.095MPaに減圧して120〜130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを277質量部、IPDIを75質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを774質量部加え、35℃まで冷却し、H12MDAを32質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N−ジブチルアミン1.5質量部を加え、混合することによって、中間層用ポリウレタン樹脂(W−4)組成物を得た。
【0054】
[合成例5]中間層用ポリウレタン樹脂(W−5)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、PC−1を245質量部、ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量:1,000、以下「PEt−1」と略記する。)を105質量部加え、0.095MPaに減圧して120〜130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを284質量部、IPDIを76質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを767質量部加え、35℃まで冷却し、H12MDAを22質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N−ジブチルアミン1.5質量部を加え、混合することによって、中間層用ポリウレタン樹脂(W−5)組成物を得た。
【0055】
[合成例6]中間層用ポリウレタン樹脂(W−6)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール(モル比:90/10)を原料としたポリカーボネートポリオール(数平均分子量;2,000、「PC−4」と略記する。)363質量部を加え、0.095MPaに減圧して120〜130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを290質量部、H12MDIを71質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを761質量部加え、35℃まで冷却し、IPDAを14質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N−ジブチルアミン1.5質量部を加え、混合することによって、中間層用ポリウレタン樹脂(W−6)組成物を得た。
【0056】
[合成例7]中間層用ポリウレタン樹脂(W−7)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、PC−4を243質量部、PEs−1を81質量部加え、0.095MPaに減圧して120〜130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを278質量部、H12MDIを93質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを773質量部加え、35℃まで冷却し、IPDAを30質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N−ジブチルアミン1.5質量部を加え、混合することによって、中間層用ポリウレタン樹脂(W−7)組成物を得た。
【0057】
[合成例8]中間層用ポリウレタン樹脂(W−8)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール(モル比:50/50)を原料としたポリカーボネートポリオール(数平均分子量;2,000、「PC−5」と略記する。)339質量部を加え、0.095MPaに減圧して120〜130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを277質量部、IPDIを75質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを774質量部加え、35℃まで冷却し、H12MDAを32質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N−ジブチルアミン1.5質量部を加え、混合することによって、中間層用ポリウレタン樹脂(W−8)組成物を得た。
【0058】
[比較合成例1]中間層用ポリウレタン樹脂(W’−1)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、PC−1を198質量部、PEs−1を132質量部加え、0.095MPaに減圧して120〜130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを273質量部、H12MDIを86質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを774質量部加え、35℃まで冷却し、H12MDAを31質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N−ジブチルアミン1.5質量部を加え、混合することによって、中間層用ポリウレタン樹脂(W’−1)組成物を得た。
【0059】
[比較合成例2]中間層用ポリウレタン樹脂(W’−2)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、PC−1を197質量部、ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量:2,000、以下「PEt−2」と略記する)を131質量部加え、0.095MPaに減圧して120〜130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを273質量部、IPDIを80質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを778質量部加え、35℃まで冷却し、H12MDAを37質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N−ジブチルアミン1.5質量部を加え、混合することによって、中間層用ポリウレタン樹脂(W’−2)組成物を得た。
【0060】
[調製例1]表皮層用配合液の調製
溶剤系ウレタン樹脂(DIC株式会社製「クリスボン NY−331」)100質量部、黒色顔料(DIC株式会社製「DILAC L−1770S)20質量部をメカニカルミキサーにて2,000rpm、2分間撹拌し、次いで真空脱泡機を使用して脱泡させて表皮層用配合液を得た。
【0061】
[調整例2]接着層用配合液の調製
ポリカーボネート系ウレタン樹脂(PC−1、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する。)、1,4−ブタンジオール(以下、「BG」と略記する。)を反応させたもの。)100質量部、架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体、以下「HDIアダクト」と略記する。)10質量部、触媒(DIC株式会社製「クリスボン アクセル T−81E」)1質量部、をホモミキサーで混合し、接着層用配合液を得た。
【0062】
[実施例1]
離型紙(リンテック株式会社製「EK−100D」)上に、調製例1で得られた表皮層用配合液をナイフコーターにて塗布した後(塗布厚さ150μm)、熱風乾燥機を使用して70℃で2分間、次いで120℃で2分間乾燥させることにより表皮層を得た。更にこの表皮層上に、合成例1で得られた中間層用ポリウレタン樹脂(W−1)組成物を、ナイフコーターを使用して塗布した後(塗布厚さ150μm)、熱風乾燥機を使用して70℃で2分間、次いで120℃で2分間乾燥させた。次いで、調製例2で得られた接着層用配合液をナイフコーターにて塗布した後(塗布厚さ150μm)、熱風乾燥機を使用して70℃で2分間、次いで120℃で2分間乾燥させることにより接着層を得た。最後に、不織布基材(目付300g/m)を前記接着層上に重ね、熱ロールプレス(ロール温度130℃、プレス線圧8MPa/m、送り速度1m/min)にて熱圧着させ、合成皮革を得た。
【0063】
[実施例2〜8、比較例1〜2]
中間層(iii)に用いる中間層用ポリウレタン樹脂組成物を表1〜2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして合成皮革を得た。
【0064】
[合成例9]接着層用ポリウレタン樹脂(D−1−1)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、1,6−ヘキサンジオールを原料としたポリカーボネートジオール(数平均分子量;2,000、「PC−1」と略記する。)437質量部を加え、0.095MPaに減圧して120〜130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略記する。)を340質量部、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略記する。)73質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを636質量部加え、40℃まで冷却し、イソホロンジアミン(以下、「IPDA」と略記する。)を10質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、モノエタノールアミン6.0質量部を加え、混合することによって、ポリウレタン樹脂(X−1−1)組成物を得た。このポリウレタン樹脂(D−1−1)組成物に対し、接着剤層を形成するため塗工する直前に、HDIアダクトを10質量%配合し、ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0065】
[合成例10]接着層用ポリウレタン樹脂(D−1−2)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、PC−2を426質量部加え、0.095MPaに減圧して120〜130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略記する。)を340質量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、「H12MDI」と略記する。)84質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを636質量部加え、40℃まで冷却し、イソホロンジアミン(以下、「IPDA」と略記する。)を9質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、モノエタノールアミン6.0質量部を加え、混合することによって、ポリウレタン樹脂(D−1−2)組成物を得た。このポリウレタン樹脂(D−1−2)組成物に対し、接着剤層を形成するため塗工する直前に、HDIアダクトを10質量%配合し、ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0066】
[合成例11]接着層用ポリウレタン樹脂(D−1−3)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、PC−1を326質量部、PEs−1を109質量部加え、0.095MPaに減圧して120〜130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略記する。)を338質量部、IPDI73質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを638質量部加え、40℃まで冷却し、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン(以下、「H12MDA」と略記する。)を12質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、モノエタノールアミン6.0質量部を加え、混合することによって、ポリウレタン樹脂(D−1−3)組成物を得た。このポリウレタン樹脂(D−1−3)組成物に対し、接着剤層を形成するため塗工する直前に、HDIアダクトを10質量%配合し、ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0067】
[合成例12]接着層用ポリウレタン樹脂(D−1−4)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、PC−2を320質量部、PEs−2を107質量部加え、0.095MPaに減圧して120〜130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略記する。)を340質量部、H12MDI84質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを636質量部加え、40℃まで冷却し、IPDAを10質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、モノエタノールアミン6.0質量部を加え、混合することによって、ポリウレタン樹脂(D−1−4)組成物を得た。このポリウレタン樹脂(D−1−4)組成物に対し、接着剤層を形成するため塗工する直前に、HDIアダクトを10質量%配合し、ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0068】
[実施例9]
離型紙(リンテック株式会社製「EK−100D」)上に、調製例1で得られた表皮層用配合液をナイフコーターにて塗布した後(塗布厚さ150μm)、熱風乾燥機を使用して70℃で2分間、次いで120℃で2分間乾燥させることにより表皮層を得た。更にこの表皮層上に、合成例1で得られた中間層用ポリウレタン樹脂(W−1)組成物を、ナイフコーターを使用して塗布した後(塗布厚さ150μm)、熱風乾燥機を使用して70℃で2分間、次いで120℃で2分間乾燥させた。次いで、合成例9で得られた接着層用接着層用配合液をナイフコーターにて塗布した後(塗布厚さ150μm)、熱風乾燥機を使用して70℃で2分間、次いで120℃で2分間乾燥させることにより接着層を得た。最後に、不織布基材(目付300g/m)を前記接着層上に重ね、熱ロールプレス(ロール温度130℃、プレス線圧8MPa/m、送り速度1m/min)にて熱圧着させ、合成皮革を得た。
【0069】
[実施例10〜12]
中間層(iii)及び接着層(ii)に用いるポリウレタン樹脂組成物を表3に示す通りに変更した以外は、実施例9と同様にして合成皮革を得た。
【0070】
[数平均分子量の測定方法]
合成例等で用いたポリオール等の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0071】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0072】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0073】
[耐薬品性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた合成皮革の表皮層に対して、日焼け止めクリーム(ニュートロジーナ社製「Ultra Sheer DRY−TOUCH SUNBLOCK SPF45」)を10cm×10cmの枠中に1.5gの量を均一に塗布し、100℃×24時間放置した後、合成皮革を目視観察し、耐薬品性を以下のように評価した。
「5」:合成皮革の皮膜の膨張や表面形状に変化が見られない。
「4」:合成皮革の皮膜の膨張や表面形状に変化がごく僅かに見られる。
「3」:皮膜が一部膨張や一部の表面形状に変化が見られる。
「2」:随所に皮膜が膨張し、又は表面形状に変化が見られる。
「1」:著しく皮膜が膨張し、表面形状に変化が見られる。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
表1〜3中の「(x−1)の含有量(質量%)」、「ポリカーボネートポリオールの含有量(質量%)」、及び、「(a−1)の含有量(質量%)」は、小数点第一位を四捨五入した値を示す。
【0078】
本発明の合成皮革は、優れた耐薬品性を有することが分かった。
【0079】
一方、比較例1及び2は、中間層(iii)に用いるポリウレタン樹脂(X)のポリカーネートポリオールの使用量が本発明で規定する範囲を下回る態様であるが、耐薬品性が不良であった。