【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ピストンリングは、シリンダ内面に対して摺動するため、摩耗する虞がある。そこで、潤滑油を用いれば摩耗の程度を軽減することができるが、−100℃以下の極低温のガスを圧縮する場合には、極低温で動作可能な潤滑油は存在しない。このため、ピストンリングは、潤滑油なしのドライ状態となり、摩耗が生じてシリンダ内面が損傷する虞が生じる。
【0006】
また、圧縮機の大型化の要望に対して、リニア圧縮機のピストン径を大きくすることで、圧縮機の大型化を図ることができる。しかしながら、ピストン径を大きくすると、可動体の重量が増大するので、可動体を往復動させるための大きな磁界を発生させる必要が生じる。この大きな磁界を永久磁石で発生させようとすると、製造上の限界が生じる。また、コイルとして銅製の常電導コイルを用いた場合には、コイルの巻数が増大してコイルが大型化するとともに、コイルの通電損失に起因する発熱量が増大する虞が生じる。
【0007】
今後、低炭素化社会への移行に伴い、液体水素や液体酸素の需要が大きく増大すると予想される。また、これらの蒸発ガス(ボイルオフガス)を圧縮する需要も高まる。ただし、これらの流体は超低温で高活性であり、圧縮時には外部への漏洩やオイル蒸気の混入などのように主流体と異なった物質によるコンタミが発生しないように、厳しく管理する必要がある。圧縮室でオイルを使用していない場合でも、ピストンを駆動している機構側からピストンリング等のシール材を経由してオイル蒸気が混入する虞がある。
【0008】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一つの実施形態は、圧縮機を大型化したときに、リニアモータの大型化やコイルの通電損失に起因する発熱量の増大を抑制可能であるとともに、潤滑油なしのドライ状態でもシリンダ内面の損傷を防止可能なリニア圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の少なくとも一つの実施形態に係わるリニア圧縮機は、
磁性材の外部ヨークにコイルを備える外部固定子と、該外部固定子に対し往復動し、磁性材の内部ヨークにピストンを備える可動体と、を有するリニアモータと、
前記外部固定子の内周面側に挿嵌される非磁性材のシリンダを有し、前記可動体が前記シリンダ内を軸方向に往復動するシリンダ部と、を備え、
前記シリンダ部には、該シリンダ部と前記ピストンとによって囲まれる圧縮空間が形成され、
前記外部ヨークは、その一端部が前記内部ヨークの一端側の側面に対向して前記シリンダの外壁面に近接配置され、他端側が前記内部ヨークの他端側の側面に対向して前記シリンダの外壁面に近接配置されて、前記シリンダの軸方向に往復動自在に支持され、
前記外部ヨークを前記シリンダの軸方向に往復動させる駆動装置が設けられ、
前記ピストンは、
前記シリンダの外周面に周方向に所定間隔を有して配設されて高圧ガスを前記シリンダの内部に供給可能な複数のポケットを有するガス軸受を介して前記シリンダに対して非接触状態で往復動自在に支持され、
前記外部ヨークの前記コイルは、超電導コイルを有して構成されて直流通電が行われるように構成される。
【0010】
上記リニア圧縮機によれば、外部ヨークは、その一端部が内部ヨークの一端側の側面に対向してシリンダの外壁面に近接配置され、他端側が内部ヨークの他端側の側面に対向してシリンダの外壁面に近接配置されて、シリンダの軸方向に往復動可能に支持され、外部ヨークをシリンダの軸方向に往復動させる駆動装置が設けられ、ピストンは、ガス軸受を介してシリンダに対して非接触状態で往復動自在に支持され、外部ヨークのコイルは、超電導コイルを有して構成されて直流通電が行われる。
【0011】
外部ヨークのコイルは超電導コイルを有して構成れているので、コイルの電気抵抗を殆どゼロに近い状態にすることができる。このため、コイルに通電する直流電流の大きさを増大することができ、大きな磁気力を発生させることがでる。また、コイルの電気抵抗が殆どないので、通電損失に起因する発熱量を小さくすることができる。さらに、ピストンは、ガス軸受を介してシリンダに対して非接触状態で往復動自在に支持されるので、ピストンやシリンダの摩耗を低減することができる。よって、圧縮機を大型化したときに、リニアモータの大型化やコイルの通電損失に起因する発熱量の増大を抑制可能であるとともに、潤滑油なしのドライ状態でもピストンリングの摩耗の増大を抑制可能なリニア圧縮機を実現できる。
【0012】
本発明の少なくとも一つの実施形態に係わるリニア圧縮機は、
磁性材の外部ヨークにコイルを備える外部固定子と、該外部固定子に対し往復動し、磁
性材の内部ヨークにピストンを備える可動体と、を有するリニアモータと、
前記外部固定子の内周面側に挿嵌される非磁性材のシリンダを有し、前記可動体が前記シリンダ内を軸方向に往復動するシリンダ部と、を備え、
前記シリンダ部には、該シリンダ部と前記ピストンとによって囲まれる圧縮空間が形成され、
前記外部ヨークは、前記シリンダ部の周方向に間隔を有して複数配設されて前記シリンダに対して固定され、
前記外部ヨークの夫々の一端部は、前記内部ヨークの一端側の側面に対向して前記シリンダの外壁面に近接配置され、前記外部ヨークの夫々の他端部は、前記内部ヨークの他端側の側面に対向して前記シリンダの外壁面に近接配置され、
複数の前記外部ヨークの夫々は、常電導コイルが巻回された電磁石として構成され、
前記ピストンは、ガス軸受を介して前記シリンダに対して非接触状態で往復動自在に支持され、
前記外部ヨークの前記コイルは、超電導コイルを有して構成されて直流通電が行われ、
複数の前記外部ヨークの夫々の前記常電導コイルは、前記外部ヨークと前記内部ヨークとの間に磁気的吸引力が作用して前記ピストンが前記シリンダ部に対して往復動するように、交流通電が行われるように構成される。
【0013】
上記リニア圧縮機によれば、外部ヨークは、シリンダ部の周方向に間隔を有して複数配設されてシリンダに対して固定され、外部ヨークの夫々の一端部は、内部ヨークの一端側の側面に対向して前記シリンダの外壁面に近接配置され、前記外部ヨークの夫々の他端部は、内部ヨークの他端側の側面に対向してシリンダの外壁面に近接配置され、複数の外部ヨークの夫々は、常電導コイルが巻回された電磁石として構成され、ピストンは、ガス軸受を介してシリンダに対して非接触状態で往復動自在に支持され、外部ヨークのコイルは、超電導コイルを有して構成されて直流通電が行われ、複数の外部ヨークの夫々の常電導コイルは、外部ヨークと内部ヨークとの間に磁気的吸引力が作用してピストンがシリンダ部に対して往復動するように、交流通電が行われる。
【0014】
外部ヨークのコイルは超電導コイルを有して構成れているので、コイルの電気抵抗を殆どゼロに近い状態にすることができる。このため、コイルに通電する交流電流の大きさを増大することができ、大きな磁気力を発生させることができる。また、超電導コイルは電気抵抗が殆どないので、通電損失に起因する発熱量を小さくすることができる。さらに、ピストンは、ガス軸受を介してシリンダに対して非接触状態で往復動自在に支持されるので、ピストンやシリンダの摩耗を低減することができる。よって、圧縮機を大型化したときに、リニアモータの大型化やコイルの通電損失に起因する発熱量の増大を抑制可能であるとともに、潤滑油なしのドライ状態でもピストンリングの摩耗の増大を抑制可能なリニア圧縮機を実現できる。
【0015】
また、幾つかの実施形態では、
復数の前記外部ヨークは、前記シリンダ部の軸心方向から見たときに、該シリンダ部の軸心を中央にして対称な位置に複数対に配置され、
前記複数対のうちのいずれかの対の外部ヨークと他の対の外部ヨークは、前記シリンダの軸方向にずれて配置され、
前記複数対のうちのいずれかの対の外部ヨークの常電導コイルと他の対の外部ヨークの常電導コイルは、一方の対の外部ヨークに磁気的吸引力を発生させると、他方の対の外部ヨークに磁気的吸引力を発生させないように、交流通電が行われるように構成される。
【0016】
この場合、複数対のうちのいずれかの対の外部ヨークと他の対の外部ヨークは、シリンダの軸方向にずれて配置されている。このため、複数対のうちのいずれかの対の外部ヨークと内部ヨークのシリンダ軸方向の位置をずらすことができる。よって、外部ヨークと内部ヨークの間に生じる磁気的吸引力を効果的に発揮させて、可動体をシリンダ軸方向に確実に移動させることができる。また、複数対のうちのいずれかの対の外部ヨークの常電導コイルと他の対の外部ヨークの常電導コイルは、一方の対の外部ヨークに磁気的吸引力を発生させると、他方の対の外部ヨークに磁気的吸引力を発生させないように、交流通電が行われる。このため、磁気的吸引力が内部ヨークに作用する場合、対となった外部ヨークの夫々から磁気的吸引力が内部ヨークに対して作用する。よって、1つの外部ヨークから磁気的吸引力が内部ヨークに対して作用する場合と比較して、より大きな磁気的吸引力を内部ヨークに作用させることができるとともに、内部ヨークを有する可動体の往復動を安定化することができる。
【0017】
また、幾つかの実施形態では、
前記圧縮空間は、該圧縮空間を前記シリンダ部の軸方向に対して直交する方向から見たときの断面積が前記可動体のピストンの断面積よりも小さくなるように形成されている。
【0018】
この場合、圧縮空間の断面積は可動体のピストンの断面積よりも小さいので、圧縮空間の断面積が可動体のピストンの断面積と同じ場合と比較して、圧縮空間内のガスをより高い圧力で圧縮することができる。
【0019】
また、幾つかの実施形態では、
前記シリンダ部は、断熱部材によって覆われているように構成される。
【0020】
この場合、シリンダ部は断熱部材によって覆われているので、外部からの熱がシリンダ部内に侵入するのを抑制することができる。このため、シリンダ部の圧縮空間内のガス(冷媒)が温度上昇する事態を防止することができる。よって、本願のリニア圧縮機を備えた冷却システムを構成した場合に、冷却システムの効率の低下を抑制することができる。