特許第6456841号(P6456841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6456841誘電体材料蒸発のためのプラズマ強化堆積設備、堆積装置及びその操作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456841
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】誘電体材料蒸発のためのプラズマ強化堆積設備、堆積装置及びその操作方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/448 20060101AFI20190110BHJP
   C23C 16/30 20060101ALI20190110BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20190110BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20190110BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20190110BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20190110BHJP
【FI】
   C23C16/448
   C23C16/30
   C23C16/50
   H01M10/0562
   H01M10/0585
   H01M4/525
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-548616(P2015-548616)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公表番号】特表2016-507645(P2016-507645A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】EP2013077575
(87)【国際公開番号】WO2014096303
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年12月20日
(31)【優先権主張番号】12198692.1
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ケラー, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】バンゲルト, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】クワック ビョン−ソン, レオ
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/124564(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/023744(WO,A1)
【文献】 特開2001−200361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 − 16/56
H01M 4/525
H01M 10/0562
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体材料の蒸発のための堆積設備であって、
蒸気分配シャワーヘッドと、
前記誘電体材料を前記蒸気分配シャワーヘッドに提供するためのホルダであって、前記誘電体材料を前記蒸気分配シャワーヘッド内に供給するための供給ユニットを有するホルダと、
前記誘電体材料の蒸気は前記蒸気分配シャワーヘッド内で生成されるように前記誘電体材料を前記蒸気分配シャワーヘッドで融解及び蒸発させる、若しくは前記誘電体材料を前記蒸気分配シャワーヘッドで昇華させるように構成されるエネルギー源であって、前記蒸気分配シャワーヘッドは、気化した前記誘電体材料を基板に向けるための一つ又は複数の排気口を有する、エネルギー源と、
前記蒸気分配シャワーヘッドと前記基板との間にプラズマを提供するように構成されるプラズマ源と
を備え、
前記供給ユニットが前記誘電体材料を前記蒸気分配シャワーヘッド内に供給する第1の方向と、前記複数の排気口の配置の方向が断面方向から見て平行であり、かつ、前記第1の方向は、前記誘電体材料の蒸気を基板に送る第2の方向と垂直に交差する、堆積設備。
【請求項2】
前記蒸気分配シャワーヘッドは、前記シャワーヘッド内の圧力が前記シャワーヘッドの外側よりも少なくとも1桁以上高くなるように、エンクロージャーと、前記エンクロージャーにおける前記一つまたは複数の排気口とを備える請求項1に記載の設備。
【請求項3】
前記蒸気分配シャワーヘッドは、直線的蒸気分配シャワーヘッドである、請求項1または2に記載の設備。
【請求項4】
前記蒸気分配シャワーヘッドは、細長い管又は直方体である、請求項1からのいずれか一項に記載の設備。
【請求項5】
前記ホルダは、るつぼであり、当該るつぼは、当該るつぼを冷却するための冷却要素を有する、請求項1からの何れか一項に記載の設備。
【請求項6】
前記プラズマ源は、前記蒸気分配シャワーヘッド及び対向電極にバイアスをかけることにより提供される、請求項1からの何れか一項に記載の設備。
【請求項7】
前記プラズマ源は、前記蒸気分配シャワーヘッドと前記基板との間に設けられる処理領域に提供される、請求項1からの何れか一項に記載の設備。
【請求項8】
前記プラズマ源は、遠隔プラズマ源である、請求項1からの何れか一項に記載の設備。
【請求項9】
前記誘電体材料は、LiPO又はLCOである、請求項1からの何れか一項に記載の設備。
【請求項10】
誘電体材料の蒸発のための及び誘電体材料の基板上への堆積のための堆積装置であって、
前記誘電体材料を前記基板上に堆積させるための真空チャンバと、
前記チャンバに提供される基板支持体と、
請求項1からの何れか一項に記載の堆積設備と
を備える、堆積装置。
【請求項11】
前記真空チャンバに設けられる基板支持体システムであって、前記基板又は前記真空チャンバの前記基板を運ぶキャリアの垂直支持のために構成される、基板支持体システム
を更に備える、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
誘電体材料を蒸発させる方法であって、
前記誘電体材料を蒸気分配シャワーヘッド内に供給することと、
前記誘電体材料の蒸気は前記蒸気分配シャワーヘッド内で生成されるように前記誘電体材料を前記蒸気分配シャワーヘッドで蒸発させる、または前記誘電体材料を前記蒸気分配シャワーヘッドで昇華させることと、
前記誘電体材料の蒸気を基板に向けることと
を含み、
前記誘電体材料を前記蒸気分配シャワーヘッド内に供給する第1の方向は、前記誘電体材料の蒸気を基板に送る第2の方向と垂直に交差する、方法。
【請求項13】
前記蒸気分配シャワーヘッドは、1100℃から1500℃までの温度に加熱される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記誘電体材料は、LiPO又はLCOである、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記蒸気分配シャワーヘッドと前記基板との間にプラズマを提供すること
を更に含む、請求項12から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記誘電体材料を前記蒸気分配シャワーヘッドで蒸発させる、または前記誘電体材料を前記蒸気分配シャワーヘッドで昇華させることは、電子の前記誘電体材料上への衝突を含み、前記電子の衝突は、電子銃により提供される、請求項12から15の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明の実施形態は、窒化リン酸リチウム(LiPON)堆積のための、コバルト酸リチウム(LiCoO、LCO)、又はオルトリン酸リチウム(LiPO)のような多元素の誘電体材料の蒸発及び堆積に関する。本発明の実施形態は、特に、蒸発設備、堆積装置、及びその操作方法に関する。具体的には、本発明の実施形態は、多元素誘電体材料を含む材料の蒸発及び基板上への材料堆積のための堆積設備、多元素誘電体を含む材料の蒸発及び基板上への材料堆積のための堆積装置、並びに多元素誘電体材料、特に、LCO、LiPO又はLiPONを含む材料の蒸発方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 最新式薄膜リチウムバッテリは、概して、真空チャンバで生産され、この場合、基板には、例えば、リチウム含有誘電体を含む、いくつかの層が提供される。リチウム含有誘電体層は、例えば、基板上へのそれぞれの材料の蒸気の堆積を通して、形成される。リチウムは反応性が高く、リチウムを含む化合物もまた反応性でありうるので、そのような堆積システムを操作し維持するために、多くの措置を講じる必要がある。例えば、空気環境の酸化蒸気、特にHOに曝すこと、及び真空チャンバ開放後の人員との接触は、最小限にすべきである。
【0003】
[0003] さらに、高い堆積速度及び拡大した均一性を伴う気化が望ましい。多くの種類の薄膜堆積システムが、これまでに配備されてきた。しかしながら、薄膜堆積システムの従来の設備により、誘電体材料を含むアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む材料が、本明細書で説明される方法で堆積されたことはない。これは、多元素誘電体材料が、蒸発にかなり高い温度を必要とし、リチウムのような基本材料は、反応性が高く、ガラス及び水と化合物を形成するからである。誘電体を含むリチウムは、室温での反応性が低いとしても、蒸発中に分解する可能性があり、反応性副生成物が再び生成される可能性がある。このため、堆積システムの内部構成要素がこれらの反応性核種に対して安定する設備を提供することが望ましい。
【0004】
[0004] LCOは、エネルギー密度の高い薄膜バッテリの電極材料として関心の対象となり得、LiPONは、その高いイオン伝導性のために電解質として関心の対象となり得る。したがって、リチウム含有材料は、バッテリ及びアキュムレータをゆっくりと充電する製品に適しているので、特に関心の対象となる。
【0005】
[0005] 誘電体、誘電体を含むリチウム、及び他のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の誘電体のための一般的な堆積システムはそれぞれ、スパッタリング源又は従来の点源に基づく蒸発源、及びその操作方法を利用する。リチウムを含む材料の蒸発方法は、Li含有誘電体の高い温度及び/又はLiの反応性を考慮すると、特にコスト及び製造可能性に関して、困難である。しかしながら、焼結ターゲットのスパッタリングは、ターゲットシステムの熱安定性により制限されるだろう。熱安定性の制限は、安定したスパッタリング作業に対する電力密度の上限に、更には、制限される堆積速度につながる可能性がある。
【0006】
[0006] 多元素誘電体、例えば、リチウム含有誘電体などのための従来の蒸発方法は、蒸気相に提供されるときに、そのような材料が非常に高い温度を要求するという不都合を被る。更に、通常、点源を利用するであろうシステムは、大量生産まで拡大するための均一性及び製造可能性を達成することは複雑ため、困難となる。蒸発源への材料供給管理の必要性が課題となる。しかし、蒸発源への材料供給管理が、大量生産及び高稼働時間生産に望ましい
【発明の概要】
【0007】
[0007] 上記を考慮して、請求項、特に独立請求項による蒸発の堆積設備、堆積装置及び方法が提供される。本発明の更なる態様、利点及び特徴は、従属請求項、説明及び添付の図面から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008] 一つの実施形態によれば、誘電体材料の蒸発のための堆積設備が提供される。堆積設備は、蒸気分配シャワーヘッドと、誘電体材料を蒸気分配シャワーヘッドに提供するためのホルダであって、誘電体材料を蒸気分配シャワーヘッド内に供給するための供給ユニットを有するホルダと、誘電体材料を蒸気分配シャワーヘッドで融解及び蒸発させる、若しくは誘電体材料を蒸気分配シャワーヘッドで昇華させるように構成されるエネルギー源であって、蒸気分配シャワーヘッドは、気化した誘電体材料を基板に向けるための一つ又は複数の排気口を有し、特にエネルギー源は、電子又は光子を放出し、電子又は光子は、誘電体材料を融解及び蒸発させる、若しくは誘電体材料を昇華させる、エネルギー源とを含む。設備は、蒸気分配シャワーヘッドと基板との間にプラズマを提供するように構成されるプラズマ源を更に含む。
【0009】
[0009] 別の実施形態によれば、誘電体材料の蒸発のための及び誘電体材料の基板上への堆積のための堆積装置が提供される。装置は、材料を基板上に堆積させるための真空チャンバと、チャンバに提供される基板支持体と、堆積設備とを含む。堆積設備は、蒸気分配シャワーヘッドと、誘電体材料を蒸気分配シャワーヘッドに提供するためのホルダであって、誘電体材料を蒸気分配シャワーヘッド内に供給するための供給ユニットを有するホルダと、誘電体材料を蒸気分配シャワーヘッドで融解及び蒸発させる、若しくは誘電体材料を蒸気分配シャワーヘッドで昇華させるように構成されるエネルギー源であって、蒸気分配シャワーヘッドは、気化した誘電体材料を基板に向けるための一つ又は複数の排気口を有し、特にエネルギー源は、電子又は光子を放出し、電子又は光子は、誘電体材料を融解及び蒸発させる、若しくは誘電体材料を昇華させる、エネルギー源とを含む。設備は、蒸気分配シャワーヘッドと基板との間にプラズマを提供するように構成されるプラズマ源を更に含む。
【0010】
[0010] 更なる実施形態によれば、誘電体材料、特にリチウム含有誘電体材料を蒸発させる方法が提供される。方法は、誘電体材料を蒸気分配シャワーヘッド内に供給することと、誘電体材料を蒸気分配シャワーヘッドで液化及び蒸発させる、若しくは材料を蒸気分配シャワーヘッドで昇華させることであって、特に電子又は光子の誘電体材料上への衝突を含む、液化及び蒸発させること若しくは昇華させることとを含む。方法は、誘電体材料の蒸気を基板に向けることとを更に含む。
【0011】
[0011]
本発明の上記の特徴を詳細に理解することができるように、実施形態を参照することによって、上で簡単に概説した本発明のより具体的な説明を得ることができる。添付の図面は本発明の実施形態に関連し、以下の記述において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
[0012]
図1】本発明の実施形態を図示する処理チャンバの概略断面図を示す。 [0013]
図2】本発明の別の実施形態を図示する別の処理チャンバの概略断面図を示す。 [0014]
図3】本発明の更なる実施形態を図示するために使用される更に別の処理チャンバの概略断面図を示す。 [0015]
図4】本発明の更なる実施形態を図示する更なる処理チャンバの概略断面図を示す。 [0016]
図5】本発明の一つの実施形態による処理チャンバの二つの直線的シャワーヘッドの外面の概略図を示す。 [0017]
図6】本発明の一つの実施形態による処理チャンバの二つの直線的シャワーヘッドの外面の概略図を示す。 [0018]
図7】本発明の更なる実施形態を図示するために使用される更に別の処理チャンバの概略断面図を示す。 [0019]
図8】本発明の更なる実施形態を図示するために使用される更に別の処理チャンバの概略断面図を示す。 [0020]
図9】本発明の一つの実施形態による基板を処理するための操作順序の概略図である。
【0013】
[0021] これより本発明の様々な実施形態が詳細に参照されることになり、そのうちの一つ又は複数の例が図示される。図面に関する以下の説明の中で、同じ参照番号は同じ構成要素を指している。一般的に、個々の実施形態に関する違いのみが説明される。本発明の説明として各例が与えられるが、本発明を限定するつもりはない。さらに、一つの実施形態の一部として図示及び説明される特徴は、更なる実施形態をもたらすために、他の実施形態において用いることができるか、又は他の実施形態と併用することができる。説明はそのような変更及び変形を含むことを意図している。
【0014】
[0022] 以下の図1から図9の考察は、誘電体材料及び/又はセラミック、例えば、リチウム含有誘電体材料などの蒸発の様々な処理チャンバ及び方法を示す。特に、誘電体材料及び/又はセラミック、例えば、リチウム含有誘電体などに関するチャンバ及び処理方法は、電気化学デバイス、例えば、エレクトロクロミックウインドウ/デバイス及び固体薄膜バッテリなどの層堆積を実行するために有益である。特に、大面積コーター、より具体的には連続的供給を伴う大面積コーターを、本明細書中で説明される実施形態により提供することができる。
【0015】
[0023] 本明細書中で説明される実施形態によれば、装置及び方法は、誘電体材料及び/又はセラミックの蒸発のために特に有益であり得、この場合、以下でより詳細に説明されるように、誘電体材料及び/又はセラミックは、シャワーヘッドに直接提供され、シャワーヘッドで融解及び蒸発する。誘電体材料及び/又はセラミックの通常高い蒸発温度に対して生じる問題を解決することができる。その上、装置内に供給され、シャワーヘッドで蒸発する原材料は、更に、様々な種類の材料層を提供するために反応性プロセスで処理ガスと反応することも可能である。原材料は、初期の誘電体材料及び/又はセラミックとすることができる。さらにまた、初期材料は、元素又は非誘電体化合物でもあり得る。装置及び方法は、以下でより詳しく説明されるように、下流の導管の数が減るときに、蒸発温度が高い元素及び化合物に特に役立つ。本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができる、本明細書中で説明される実施形態によれば、誘電体材料は、本明細書中で説明されるように蒸発又は昇華し、誘電体材料は、基板に堆積される。堆積される誘電体材料は、蒸発又は昇華する誘電体材料と同一の誘電体材料とすることができる。代替的には、蒸発又は昇華する電体材料は、別の誘電体材料が堆積されるように、例えば、プラズマにおいて、反応性プロセスに曝すことができる。しかしながら、所望の材料がプラズマにおいてそれぞれの反応性プロセスを伴い又は伴わずに堆積されるように、光子又は電子の衝突による蒸気分配シャワーヘッド内部での更なる蒸発及び昇華を、非誘電体材料又は元素に提供することもできる。これらの代替手段は、本明細書中で説明される設備、装置及び方法の実施形態と組み合わせることができる。
【0016】
[0024] 図1及び図2は、実施形態による処理チャンバの概略断面図を示す。図1では、例えば、固体薄膜バッテリ及びエレクトロクロミックウインドウデバイスのような電気化学デバイスのための連続的インライン生産プロセスで基板104を処理するための、処理チャンバ本体100のような装置が図示される。処理チャンバは、チャンバ壁102を含む。処理領域105は、チャンバ内の、基板104と図1に示される直線的シャワーヘッド106のような分配シャワーヘッド106との間に提供される。
【0017】
[0025] 基板位置決め装置107は、基板を、処理領域105内及び処理領域105を通って移動させ又は位置決めすることを可能にする。本発明の一つの実施形態では、処理チャンバは、基板を垂直に処理し、即ち、直線的分配シャワーヘッド106は、チャンバ内部に垂直に配置され、基板位置決め装置107は、基板104を、図1に示されるように、垂直処理位置で保持する。図1に示された配置は、処理中に生成される任意の粒子が、チャンバの底に向かって落下し、基板104を汚染しないであろうから、有益だと考えることができる。典型的な実施形態によれば、基板位置決め装置は、基板又は基板処理システムの一つ又は複数のチャンバを通してキャリア内に設けられる一つ又は複数の基板を有するキャリアを輸送するための磁気レールシステムとすることができる。したがって、いくつかの実施形態によれば、基板が処理ユニット、例えば、本明細書中で説明される実施形態による蒸発設備などを通過する、インライン処理システム及びインライン処理方法が提供される。
【0018】
[0026] いくつかの実施形態によれば、図1に示されるように、処理チャンバ本体100に設けられる直線的分配シャワーヘッド106は、電源108に電気的に結合される。蒸発する材料は、領域121により示されるように、シャワーヘッド内に供給され、シャワーヘッドで蒸発する。本明細書中で説明される実施形態によれば、蒸発する材料は、蒸気分配シャワーヘッドで融解及び蒸発し(若しくは昇華し)、一つ又は複数のそれぞれの蒸気ノズルを通って基板に供給される。直線的蒸気分配シャワーヘッドのようなシャワーヘッドは、処理領域105の蒸発した蒸気流動を調節するための通路をさらに備え得、それらの例が図5及び図6に示される。そのような通路は、様々な直径寸法及び分配とすることができる。
【0019】
[0027] 電源108は、直流(DC)、交流(AC)、パルス直流(p−DC)、高周波(RF)、電子サイクロトロン共鳴(ECR)、又はマイクロ波、若しくはそれらの電源の組み合わせであり得る。電磁力は、処理ガス、即ち、蒸気がシャワーヘッド106で生成され、処理領域105内を通過し、基板104に向かうと、直線的シャワーヘッド106に提供される。これは、矢印109により示される。どのような種類の電源が選ばれようとも、チャンバは、電源が、プラズマ130が生成されるであろう方法で、エネルギーをプラズマ源に結合するように適合される必要がある。例えば、シャワーヘッド106及び基板(又は別の対向電極)を電源108に接続することができ、チャンバ本体100を接地することができる。本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、基板支持体は対向電極として提供されてよい。本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、電源108をプラズマ源へ接続することに加え、基板又はそれぞれのキャリアに、バイアスをかけることができる。基板のバイアスは、プラズマ強化堆積特徴の更なる強化に利用することができる。例えば、プラズマ強化堆積特徴の更なる強化は、図2に示されるプラズマ源218が堆積装置に提供される場合に、更に提供することができる。
【0020】
[0028] プラズマ130生成のための代替的な又は更なる実施態様が、図2に示される。ここでは、プラズマ銃のようなプラズマ源218が、チャンバ本体100に提供される。通常、プラズマ銃は、処理領域105に隣接して及び/又は処理領域105周囲に提供することができ、これによりプラズマ130が処理領域で生成される。本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができる典型的な実施形態によれば、プラズマ源は、DC結合プラズマ、誘導性結合プラズマ、容量性結合プラズマ、又はそれらの組み合わせとすることができる。プラズマは、例えば、直流放電、パルス直流放電、RF放電として、即ち、MHzの範囲で、又はマイクロ波放電として、即ち、GHzの範囲で、生成することができる。
【0021】
[0029] 本明細書中で説明される実施形態によれば、堆積源並びに高い堆積速度及び削減された製造コストでLi含有多元素誘電体材料の均一薄膜を生成するためのシステムが提供される。本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができる典型的な実施形態によれば、本明細書中で説明される実施形態による堆積源、本明細書中で説明される実施形態によるシステム、及び本明細書中で説明される実施形態による方法は、Li含有の多元素誘電体材料の均一な堆積を必要とする任意の分野で適用することができる。例えば、そのような材料は、コバルト酸リチウム(LCO)、又は窒化リン酸リチウム(LiPON)とすることができる。したがって、対応する用途は、例えば、エレクトロクロミックウインドウ/デバイス及び固体薄膜バッテリのような、電気化学デバイスとすることができる。両方の場合において、技術の広範な適合を誘導するために、製造コストをかなり削減する必要がある。
【0022】
[0030] 例えば、図1から図4及び図7から図8に示されるように、原材料をシャワーヘッドに直接供給することを考慮すると、本明細書中で説明される実施形態により、シャワーヘッド又は分配ノズルでの原材料の使用が可能になる。高価なターゲット製造プロセス(例えば、スパッタリング用の)を提供することに比べ、デバイス製作コスト全体のうちの材料コストが、重要な要因により削減されるだろう。コスト節約の一部は、ターゲットと比べると、改善された材料利用率からもたらされ、この場合、材料利用率が20%から75%までの範囲であるのに対して、蒸発のための材料利用率は、融解及び蒸発のみに起因し100%だろう。更なるコスト節約は、蒸発器用の高い堆積速度、及び蒸発方法から生じる。したがって、本明細書中で説明される実施形態による親技術を含む所与のシステムのスループット及び容量は、より効率の高い設備投資、及び削減された全体コスト(所有コスト:CoO)につながるだろう。安定したスパッタリング作業と比べて、電力密度の上限がないので、蒸発は、より高い堆積速度をもたらす。
【0023】
[0031] 本明細書中で説明されるように、シャワーヘッドに基づく堆積システム及びプラズマ強化のための一つ又は複数の設備が提供される。プラズマ形成は、基板上に堆積される材料の正しい相形成を誘導するために使用することができる。さらに、プラズマ及び/又は基板のバイアスは、特にLCO及びLiPONについては、高密度化、滑らかな形態及び結晶化度(LCOに対する)のための原子の表面移動度を誘導するために必要なエネルギー供給をもたらすことができ、これは、所望の性能及び歩留りの電気化学層及びデバイスの製造にとって有益である。さらに、本明細書中で説明される実施形態によれば、蒸気源が提供され、これは、例えば、1100℃、1300℃又はそれ以上の高温にとって有益であり、高いスループット製造を提供することができる。例えば、いくつかの実施形態によれば、蒸気分配シャワーヘッドは1100℃から1500℃までの温度、特に約1300℃に加熱される。
【0024】
[0032] 図3に示されるように、堆積装置300が提供される。装置は、例えば、図示されるように、固体薄膜バッテリ及びエレクトロクロミックウインドウデバイスのような電気化学デバイスのための連続的インライン生産プロセスで基板104を処理するための処理チャンバ本体100を有する。処理チャンバは、チャンバ壁102を含む。処理領域は、チャンバ内の、基板104と図3に示される直線的シャワーヘッド106のような分配シャワーヘッド106との間に提供される。
【0025】
[0033] 堆積システムは、蒸発設備306を含む。蒸発設備306は、シャワーヘッド106を含む。シャワーヘッドは、蒸気分配シャワーヘッドがより簡単にかつ均一に加熱できるように、例えば、熱絶縁体337内部に提供することができる。シャワーヘッドは、例えば、輻射ヒータのようなヒータ336により加熱される。原材料120は、矢印122により示されるように、シャワーヘッド内に提供される。原材料は、以下でより詳しく説明されるように、固体材料としてシャワーヘッド内に供給される。原材料は、るつぼ350のようなホルダに提供される。るつぼは、るつぼを冷却するための冷却要素352を有する。
【0026】
[0034] 本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、ホルダは、冷却された中空の円筒のような冷却されたるつぼとすることができる。中空の円筒がホルダとして提供される場合には、原材料は、供給ユニットで中空の円筒を通して供給、押圧、及び/又はスリット形成することができる。原材料の連続的又は準連続的供給が提供できる。
【0027】
[0035] 本明細書中で説明される実施形態に提供される材料供給ユニットが、矢印122により示される。材料供給ユニットは、アクチュエータ、圧力シリンダ、又は材料を蒸気分配シャワーヘッドに押したりスライドさせたりするように構成される別の要素とすることができる。
【0028】
[0036] 本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができる更なる実施形態によれば、るつぼの冷却は、流体が流れることのできるホルダのチャネルを冷却することにより提供することができる。流体は、気体又は液体、例えば、水とすることができる。更に、冷却ユニットはまた、本技術で知られているような他の冷却方法によっても提供することができる。
【0029】
[0037] 図3に示される実施形態では、原材料は、e−ビームに基づく加熱により融解及び蒸発する。以後まず融解及び蒸発する代わりに昇華する材料のための設備、装置及び方法もまた、本明細書中で説明される実施形態に含まれると理解されるべきである。電子銃340は、電子ビーム341をるつぼ350の材料上に向ける。材料は、るつぼの融解領域を表す参照番号121により示されるように融解し、蒸気領域又は蒸発領域を表す参照番号121bにより示されるように蒸発する。蒸気は、蒸気分配器内部に分配し、ノズル360を通って基板に向けられる。いくつかの実施形態によれば、堆積される材料の蒸気は、基板104上に堆積される前に、処理領域のプラズマ130を通過する。
【0030】
[0038] したがって、本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、e−ビームに基づく加熱を提供することができる。これにより、より高速かつより高温の能力及び制御が誘導される。更に、蒸発リザーバからチャンバのシャワーヘッドまでの「下流」の導管が排除される。
【0031】
[0039] 図4に示されるように、熱加熱要素440を加熱するための代替的又は追加の要素及び方法、若しくは熱加熱方法を提供することができる。加熱要素は、抵抗熱又は輻射熱とすることができる。加熱要素440は、熱エネルギーをるつぼ350の材料に供給するために、電源442に接続される。典型的な実施形態によれば、輻射加熱が提供され、この場合、光子は、融解及び蒸発する(又は昇華する)材料に衝突する。したがって、加熱素子又は熱源と堆積する材料のためのリザーバとを分離することができる。熱源とリザーバとを分離することにより、源管理及び保守がより簡単になり得る。源管理及び保守がより簡単になり得るのは、リザーバの交換又は加熱ユニットの交換が、一体化したリザーバと加熱ユニットとの交換と比べて、小規模な交換だからである。図4に示される他の要素は、図1から図3及び図5から図8に関して本明細書中で説明される他の実施形態に対応するので、ここでは繰返しを避けるために省略される。
【0032】
[0040] 図3に示されるように、本明細書中で説明されるいくつかの実施形態によれば、電子銃340を有するe−ビーム蒸発源は、蒸発領域121b及びシャワーヘッド106が同一のエンクロージャの一部である、又は同一のエンクロージャ内部にあるように、蒸発領域121bを提供する。したがって、蒸発物又は蒸気を加熱した下流の導管でシャワーヘッドに「供給する」いかなる必要性もが排除される。遠隔で蒸気を生成するために、導管の加熱が、堆積ゾーンへの通路に沿った蒸発物又は蒸気の凝縮を避けるために提供されるだろう。図4に示されるように、輻射熱方法により前駆体を加熱する輻射ヒータ又は方法はまた、例えば、直線的蒸発源などのより単純な蒸発源を提供する。再び、蒸発領域121b及びシャワーヘッド106は、同一のエンクロージャの一部である、又は同一のエンクロージャの内部にある。また、加熱された下流の導管排除できる
【0033】
[0041] 本明細書中で説明される実施形態によれば、図3及び図4に関して説明される加熱ユニットを提供することができる。加熱ユニットは、材料を蒸発させるために加熱する輻射ヒータ、材料を蒸発させるために加熱する電子ビーム銃、及び蒸気分配シャワーヘッドを加熱するヒータから成るグループの少なくとも一つの要素を備えることができる。材料を蒸発させるために加熱する、即ち、原材料を融解及び蒸発させる加熱ユニットは、例えば、輻射ヒータの場合には光子を、例えば、電子銃の場合には電子を放出する。光子及び電子は、光子又は電子が衝突すると、材料を加熱する。更なる実施形態によれば、シャワーヘッドでの融解及び蒸発(又は昇華)のための熱生成はまた、電気ヒータ又は別の加熱要素により提供することもできる。例えば、るつぼは、るつぼを流れる電流により、又はるつぼにおいて又はるつぼ内に提供される電気ヒータ巻線を流れる電流により、加熱することができる。
【0034】
[0042] 挿入される蒸発エネルギーの制限が(例えば、スパッタ堆積と比べて)ほとんどない又は全くないという事実を考慮すると、本明細書中で説明される実施形態は、より高い堆積速度を可能にする。源供給システムは、蒸発ゾーンの構成要素の高度に制御されたハードウェア構成に対する原材料の連続的又は準連続的供給を可能にするとも考えられるべきである。加熱機構の好ましい制御、及び蒸発ゾーン、即ち、原材料の源の最上層又は源の最上層の真上にある領域の好ましい制御を提供することができる。
【0035】
[0043] また更に、本明細書中で説明される実施形態によれば、加熱及び蒸発するとより単純な化合物に解離する可能性のあるいくつかの多元素誘電体材料及び/又はセラミックの改善された堆積を可能にするために、プラズマ強化が提供される。また、成長動態及び表面形態の調節、即ち、表面形態、膜密度などの制御を、必要に応じて提供することができる。プラズマ強化の使用は、例えば、より滑らかでピンホールのない堆積を提供するために、堆積現象の強化を提供し、これは、本明細書中で説明される材料及びデバイスの品質の高い層にとって重大な態様であり得る。
【0036】
[0044] プラズマ強化堆積によるより滑らかでピンホールのない堆積のために成長動態調節を改善することにより、コスト削減及びより優れたデバイスがもたらされる。コスト削減は、より滑らかな及び/又はピンホールのない誘電体材料に起因するより高い歩留りにより提供され得る。例えば、滑らかなLCOにより、電気化学デバイスの内部短絡のリスク低下のために、より共形のLiPONがもたらされるだろう。更に、より滑らかなLiPONの堆積及びピンホールのほとんどないLiPONの堆積だけで、内部短絡のリスクが低下するだろう。別の態様によれば、コスト削減は、ピンホールのほとんどないLiPONから提供することができ、この場合、そのような層は、ピンホールの量が減らされる又はピンホールが除去される場合に、より薄く堆積させることができる。層が薄くなれば、結果として、その層のコストも削減される。また更に、性能強化が、より薄いLiPON層によって提供でき、高い電力及び充電能力に対するより低い内部抵抗につながる。また更に、追加的に又は代替的に、ターゲット製造コストを排除することにより、スパッタリングと比べて、コスト削減を提供することができる。LiPONのPE−EBEAM堆積が優れた相形成をもたらすことが実証されている。
【0037】
[0045] 本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、本明細書中で説明される蒸発源及び装置は、大面積基板、例えば、ディスプレイなどの上での蒸発に、又はエレクトロクロミックウインドウ又はリチウムバッテリ製造に利用することができる。いくつかの実施形態によれば、大面積基板若しくは一又は複数の基板を有するそれぞれのキャリアは、少なくとも0.67mのサイズを有し得る。典型的には、サイズは、約0.67m(0.73×0.92m−Gen4.5)から約8mまでとすることができ、より典型的には約2mから約9mまで、又は12mにまで及ぶことさえある。典型的には、本明細書中で説明される実施形態により、構造、カソードアセンブリなどの装置及び方法が提供される基板又はキャリアは、本明細書中で説明される大面積基板である。例えば、大面積基板又はキャリアは、約0.67mの基板(0.73×0.92m)に対応するGEN4.5、約1.4mの基板(1.1m×1.3m)に対応するGEN5、約4.29mの基板(1.95m×2.2m)に対応するGEN7.5、約5.7mの基板(2.2m×2.5m)に対応するGEN8.5、又は約8.7mの基板(2.85m×3.05m)に対応するGEN10とさえすることができる。GEN11及びGEN12などのよりいっそう大きな世代、並びに対応する基板面積を、同様に実現することができる。
【0038】
[0046] 図5及び図6は、本発明の様々な実施形態による処理チャンバの二つの直線的シャワーヘッドの外面の概略図を示す。図5は、例えば、図1から図4に示されるような直線的シャワーヘッド506及び516を囲むチャンバ壁102を示す。この実施形態では、例えば、図7に対して説明される遠隔プラズマ生成用の、直線的蒸気分配シャワーヘッド506及び直線的プラズマ分配シャワーヘッド516各々が、通路507及び517をそれぞれ有しており、それらの直径は同一である。図6に示される実施形態では、直線的ガス分配シャワーヘッド606は、直線的蒸気分配シャワーヘッド606から処理領域内へプロセス蒸気流動を調節するための変動直径通路617及び618を有する。通路の他の非円形断面形状が使用されてもよく、その場合、断面の周径又は周長は、サイズにより変化する。例えば、同一の直線的ガス分配シャワーヘッド上の他の正方形ガス通路と比べて小さな断面周長を有する正方形の断面通路が使用されてもよい。周長は、概して、非円形形状と併せて使用されるが、円形形状及びしたがって、それらの対応する周径をも包含し得る。ガス通路の他の様々な形状及びサイズが本発明の実施形態の範囲内であり、当業者には、すぐに特定することができる。図5及び図6は、図7に関するような二つのシャワーヘッド構成を示すが、直線的ガス分配シャワーヘッド106の何れかが、本明細書中で説明される実施形態による処理チャンバ本体100で使用されてもよい。
【0039】
[0047] 図7は、堆積装置700の別の実施形態を示す。図1から図6を参照して先ほど説明された実施形態のいくつかの態様、特徴及び詳細を、図7に関して説明される態様、特徴及び詳細と組み合わせることができる。図1から図6の態様、特徴及び詳細は、繰返しを避けるために省略される。図7は、処理チャンバ本体100の別の概略断面図を示す。本明細書中で説明される他の実施形態に関して示されるプラズマ生成構成要素の代替として、又はそのプラズマ生成構成要素に追加的ないくつかの実施形態によれば、図7は、遠隔プラズマ源718を示す。本明細書中の他の図面に関して既に説明されたように、装置は、チャンバ壁102を有する処理チャンバ本体100を含む。処理領域105は、チャンバ壁102、基板104、直線的蒸気分配シャワーヘッド106、及び直線的遠隔プラズマ分配シャワーヘッド716により画定される。
【0040】
[0048] 基板位置決め装置107は、基板104に処理領域405を通過させ、又は基板104を処理領域405に位置決めするのに役立つ。本発明の一つの実施形態では、処理チャンバは、基板を垂直に処理し、即ち、直線的蒸気分配シャワーヘッド106及び直線的遠隔プラズマ分配シャワーヘッド716は、チャンバ内部に垂直に配置され、基板位置決め装置107は、基板104を、図7に示されるように、垂直処理位置で保持する。遠隔プラズマ源718は、直線的遠隔プラズマ分配シャワーヘッド716に結合され、かつ電源108に電気的に結合される。
【0041】
[0049] 先ほどのように、電源108は、直流(DC)、交流(AC)、パルス直流(p−DC)、高周波(RF)、電子サイクロトロン共鳴(ECR)、又はマイクロ波、若しくはそれらの電源の組み合わせであり得る。処理ガスが遠隔プラズマ源718、直線的遠隔プラズマ分配シャワーヘッド716を通過して処理領域105内へ、更に矢印109により示されるように基板104に向かうと、電磁力が遠隔プラズマ源718に提供される。更に、何れかの実施形態において、基板には、チャンバ構成、チャンバに結合される電源の種類、並びに基板上に堆積される源材料及び所望の膜次第で、電気的にバイアスをかけることができる。
【0042】
[0050] 蒸気分配シャワーヘッドの排気口が、いくつかの実施態様に従って提供できるが、これらは、互いに独立して、又は相互排他的でない場合には結合していても部分的に、提供できる。堆積される材料は、蒸気分配シャワーヘッド106から一又は複数のそれぞれの上記ノズルを通して方向付けられる。本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、蒸発器設備は、蒸気を基板に案内するためのノズルを含むことができる。図に示されるように、設備は、蒸気分配シャワーヘッド106、例えば、複数のノズル360を有する直線的蒸気分配シャワーヘッド106を含むことができる。直線的蒸気分配シャワーヘッド112を提供することにより、基板104上での堆積の均一性は増加し得る。しかしながら、複数のノズルが、新たな材料をシステム内に供給する必要性のみならず、蒸気分配シャワーヘッドへの材料の連続的かつ制御された流れの高まる需要をも引き起こすことが考慮されなければならない。したがって、原材料をるつぼを介して直接シャワーヘッド内に供給する材料供給システム、及び矢印122により示されるように材料を連続的に供給するオプションは、特に有益だと考えることができる。新たな材料を供給するそのような能力に起因して、蒸発設備の、本明細書中で説明される実施形態によるそのような蒸発設備を有する蒸発のための装置の、又は本明細書中で説明される実施形態によるそのような蒸発設備を有する蒸発のためのシステムの、連続的又は準連続的操作を提供することができる。
【0043】
[0051] 図1に示されるシャワーヘッドは直線的シャワーヘッドであるが、他の形状のシャワーヘッドもまた、本明細書に記載の実施態様の範囲内にある。シャワーヘッドがどのような形状を有するかは、チャンバの種類と基板の形状との両方により決まるだろう。例えば、点源、即ち、単一のノズル、又は円形のシャワーヘッドが、半導体ウエハを処理するときなどに、円形基板を処理するチャンバに選ばれ得る。長方形のシャワーヘッドが大きな長方形基板の処理に選ばれ得るのに対して、バッチプロセスもまたこれらの種類のシャワーヘッド形状をより好ましくし得る。大面積の長方形又は正方形基板の連続的インライン処理には、基板がシャワーヘッドのそばを通る際に、基板上で処理ガスの分配をより好ましく制御するために、直線的シャワーヘッドが選択され得る。したがって、有益な直線的蒸気分配シャワーヘッドが、特にインライン又は動的処理装置に使用できる。円形、長方形、又は二つ以上の直線的蒸気分配シャワーヘッドが、様々な形状及びサイズの基板の静的堆積に使用できる。
【0044】
[0052] 本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、材料が、例えば、ロッド、粉末などの固体形状で、又は別の固体形状で、シャワーヘッドに提供される。エネルギー源は、光子又は電子を材料上に向け、この結果、融解又は蒸発により若しくは昇華により、材料の蒸気がシャワーヘッドで生成される。本明細書中で理解されるシャワーヘッドは、シャワーヘッドの圧力がシャワーヘッドの外側よりも高くなるように、例えば、少なくとも一桁分は高くなるように、材料をその内部に供給することができ、その内部に穴を有するエンクロージャを有する。本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができる典型的な実施形態によれば、蒸気分配シャワーヘッドは、円形の管などの細長い管、又は例えば正方形のシャワーヘッドの場合には、細長い直方体とすることができる。管又は直方体は、中空の体積周囲にエンクロージャを形成する。円形のシャワーヘッドに対して、中空の体積を有するディスク形状の円筒本体がまた提供されてもよい。加熱要素を、先述の中空の体積それぞれに提供できる。エンクロージャは、蒸気を基板に向けるための一つ又は複数の排気口を提供する。一つ又は複数の排気口は、エンクロージャにおいて提供されるノズル又は穴とすることができる。
【0045】
[0053] 蒸気分配シャワーヘッドに提供される排気口、例えば、ノズル360は、例えば、リチウム含有誘電体などの誘電体材料の蒸気を基板104に案内又は方向付ける。典型的な実施形態によれば、排気口又はノズルはまた、蒸気分配シャワーヘッドの穴として提供することもできる。更に、直線的蒸気分配シャワーヘッドについて、穴又はノズルの配置は、例えば、穴又はノズルの一又は複数のラインであり得る。長方形の蒸気分配シャワーヘッドについては、穴又はノズルを、長方形の形状に沿って又は長方形の形状内部に分配させることができる。円形の蒸気分配シャワーヘッドについては、穴又はノズルを、円形の形状に沿って又は円形の形状内部に分配させることができる。通常、穴又はノズルを、蒸気の基板104への堆積が均一であるように、分配させることができる。穴又はノズルを、先ほど説明した形状のうちの一つに沿って、少なくとも部分的に均一に分配させることができる。しかしながら、形状の周長におけるエッジ効果を補償するために、図5及び図6に関して説明された例については、穴又はノズルの密度を蒸気分配シャワーヘッドのいくつかの領域で変化させることができる。
【0046】
[0054] 図8に関して説明されるように、また更なる堆積装置800の実施形態を提供することができる。装置は、例えば、図示されるように、連続的インラインエレクトロクロミックデバイス生産プロセスで基板104を処理するための、処理チャンバ本体100を有する。例えば、電気化学デバイスは、固体薄膜バッテリ又はエレクトロクロミックウインドウデバイスとすることができる。処理チャンバは、チャンバ壁102を含む。処理領域は、チャンバ内の、基板104と図3に示される直線的シャワーヘッド106のような分配シャワーヘッド106との間に提供される。本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、内部に設けられたウエハ832を有する基板支持体830を提供することができる。例えば、蒸気を所定の領域の基板上に堆積するためのスリット開孔のような開孔を更に提供することができる。
【0047】
[0055] また更なる実施形態によれば、処理領域105の高さは、400mmから2000mmの範囲、例えば、440mmとすることができる。処理領域の高さは、蒸気分配シャワーヘッドの高さ及び/又はチャンバ本体100に提供される蒸気分配シャワーヘッド又はノズルの数によって決定することができる。
【0048】
[0056] また図8に示される実施形態では、原材料は、e−ビームに基づく加熱により融解及び蒸発する。電子銃340は、電子ビーム341をるつぼ350の材料上に向ける。材料は、るつぼの融解領域を表す参照番号121により示されるように融解し、蒸気領域又は蒸発領域を表す参照番号121bにより示されるように蒸発する。蒸気は、蒸気分配器内部に分配し、ノズル360を通って基板に向けられる。いくつかの実施形態によれば、堆積される材料の蒸気は、基板104上に堆積される前に、処理領域のプラズマ130を通過する。本明細書中で説明されるように、るつぼは、非常に高い温度に耐えることができるコンテナ又はホルダである。更に、るつぼは、冷却することができ、本明細書中で説明される実施形態によるるつぼは、るつぼに設けられる及びるつぼを通る材料のロッドを保持することができる。
【0049】
[0057]したがって、本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、e−ビームに基づく加熱を提供することができる。これにより、より高速かつより高温の能力及び制御が誘導される。更に、蒸発リザーバからチャンバのシャワーヘッドまでの「下流」の導管が排除される。また、図8を参照して説明される例についての加熱設備は、図3を参照して説明される態様と組み合わせることができる。
【0050】
[0058] 図8に示されるように、本明細書中で説明されるいくつかの実施形態によれば、電子銃340を有するe−ビーム蒸発源は、蒸発領域121b及びシャワーヘッド106が同一のエンクロージャの一部である、又は同一のエンクロージャ内部にあるように、蒸発領域121bを提供する。したがって、蒸発物又は蒸気を加熱した下流の導管で「供給する」いかなる必要性もが排除される。導管の遠隔蒸気生成加熱が、堆積ゾーンへの通路に沿った蒸発物又は蒸気の凝縮を回避するために提供されるだろう。
【0051】
[0059] 本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、原材料120は、矢印122により示されるように、シャワーヘッド内に提供される。原材料は、更なるチャンバ802から固体材料としてシャワーヘッド内に供給される。原材料は、るつぼ350に提供される。るつぼは、るつぼを冷却するための冷却要素352を有する。チャンバに供給され冷却されたるつぼを通る原材料は、第1のバルブユニット814を通ってチャンバ802に挿入することができる。バルブユニット814を閉じると、チャンバ802を排気することができる。したがって、チャンバは通常、真空フランジ804を有する。チャンバ802の圧力を十分に低下させると、チャンバ本体100と更なるチャンバ802とを結合するバルブユニット812を開くことができ、原材料の連続的供給を可能にするために、原材料をるつぼ内に供給することができる。典型的には、原材料は、それぞれの装置設計に対して所望通りに提供することができる、一つ又は複数のハンドリングシステム又は原材料輸送システムにより、矢印122に沿って又はチャンバ802内部に移動させることができる。代表的な供給ユニットが、矢印122の方向に材料を移動させることができる供給ユニット822により示される。供給ユニット822は、材料及び/又はるつぼ(図示されず)を移動させるローラとして、又はるつぼを矢印122の方向に前進させるためのるつぼのねじ山と機械的に接触するホイールとして、提供することができる。任意で、材料の比較的小さな移動をより好ましく提供するために、ギアを提供することができる。供給ユニットの別の例は、原材料の後続のロッドをチャンバ802で上に向け移動させ、材料120をチャンバ本体100で上に向けてスライドさせる又は押すアクチュエータとすることができる。
【0052】
[0060] Li含有誘電体蒸発のための堆積設備及び対応する堆積装置を操作する実施形態が、図9を参照してここで説明される。ブロック902では、蒸発する材料は、例えば、るつぼにより又はるつぼを通して、蒸気分配シャワーヘッドに案内される。蒸発する材料は、ブロック904において、蒸気分配シャワーヘッドで融解又は気化する。融解又は気化は、例えば、電子又は光子のような粒子の衝突により行われる。例えば、熱輻射加熱又は電子ビーム加熱での輻射加熱を、蒸気分配シャワーヘッドで材料を融解するために、提供することができる。ブロック906では、蒸気が、蒸気分配シャワーヘッドの一つ又は複数の排気口を通って基板に向けられる。ブロック908により示されるように、プラズマ領域が、蒸気分配シャワーヘッドの排気口と基板との間に提供できるように、プラズマが点火される。蒸気分配のプラズマ強化を提供することができる。任意で、基板への堆積前又は堆積中に蒸気の処理ガスとの反応を更に可能にするために、反応性処理ガスのような処理ガスをプラズマ領域内に提供することが更に可能である。処理ガスの提供は、任意のブロック910により示される。また、更に任意で、先ほど説明されたように、基板又はそれぞれのキャリアには、プラズマ生成に加え、バイアスをかけることができる。これにより、基板のバイアスを、プラズマ強化堆積特徴の更なる強化に利用することができる。
【0053】
[0061] 本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、リチウム含有誘電体膜は、LiP0を蒸発させることにより堆積させることができる。例えば、窒素含有プラズマなどの反応性処理ガス混合物の組成物は、次いで、シャワーヘッドを出る蒸気の処理ガスの窒素との反応に起因して、LiPONの形成をもたらすことができる。更に、本明細書中で説明される他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、シャワーヘッドで生成されシャワーヘッドから出る蒸気は、ケイ素のような元素とすることができる。ケイ素は、誘電体層を基板上の堆積に提供するために、酸素及び/又は窒素と反応することができる。
【0054】
[0062] したがって、プラズマ強化のため、本発明の実施形態はまた、ピンホールを最小化し、場合によってはピンホールを排除し、滑らかな表面を形成するために、堆積する膜層の表面形態の改善された制御を提供し得る。したがって、既存の層又は追加の共堆積核種との反応相形成の誘導を改善する。更に、上述した改善は、低い処理温度で実現することができる。例えば、LiCoO又はLiPOは、プラズマ強化により蒸発すると解離するであろうから、プラズマ強化は、正確な相形成に有益である。他の材料、例えば、SiO、Si、Alなどは、堆積層の結晶化度、形態、及び/又は密度のような他の方法において、プラズマ強化に関する利益を有することができる。しかし、そのような利益はまた、LiCoO及びLiPOにも当てはまる。
【0055】
[0063] 個々の実施形態の利用次第で部分的に又は完全に提供できる先述の利益に加え、扱いやすさから、製造可能性の改善がもたらされるだろう。例えば、粉末又は小さな材料片を、シャワーヘッドに提供することができる。粉末又は小さな材料片を提供することは、非常に大きなターゲットをスパッタリングに提供することと比較される。本明細書中で説明される実施形態による材料供給は、チャンバ通気口を含まない、又は予防整備要件が低減された連続的供給の可能性を更に提供する。
【0056】
[0064]
以上の説明は本発明の実施形態を対象としているが、本発明の基本的な範囲を逸脱することなく本発明の他の追加の実施形態を考案することができ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9