特許第6456918号(P6456918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456918
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】注射デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20190110BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   A61M5/315 550P
   A61M5/31 520
   A61M5/315 550C
【請求項の数】14
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-506874(P2016-506874)
(86)(22)【出願日】2014年4月8日
(65)【公表番号】特表2016-518182(P2016-518182A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(86)【国際出願番号】EP2014056968
(87)【国際公開番号】WO2014166890
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2017年3月23日
(31)【優先権主張番号】13163066.7
(32)【優先日】2013年4月10日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ポール・モリス
【審査官】 杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−528144(JP,A)
【文献】 特表2013−506447(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0054412(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/31− 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ートリッジ(20)を収容するハウジング(10;340)と、
投薬すべき所望の用量を設定するように第1の方向に動作可能な用量設定手段(60、70;350)と、
カートリッジ(20)から設定用量を注射するようにピストンと協働するように適用されたピストンロッド(30)と、
ハウジング(10;340)に回転方向に拘束される第1のクリッカ構成要素(100;320)、および用量投薬中にハウジング(10;340)に対して回転可能な第2のクリッカ構成要素(80;300)とを含み、該クリッカ構成要素(80、100;320、300)は、設定用量の投薬の終了付近でのみ互いに接触し、それによって可聴および/または触覚の第1のフィードバックを使用者に提供するように適用される、注射デバイスであって、
第1のクリッカ構成要素(100;320)は、近位用量設定位置と遠位用量投薬位置との間でハウジング(10;340)に対して変位可能であり、ここで、第1のフィードバックは、デバイスがその用量投薬モードにあり、第1のクリッカ構成要素がその遠位用量投薬位置にある場合にのみ生成され、そしてデバイスがその用量設定モードにあり、第1のクリッカ構成要素がその近位用量設定位置にある場合、2つのクリッカ構成要素は互いに係合せず、したがって信号またはフィードバックが生成されるのを防止し、
用量設定手段(60、70;350)は、第1および第2のクリッカ構成要素(80、100;320、300)が互いに接触しない状態で、設定用量を取り消すように第1の方向とは反対の第2の方向にさらに動作可能であることを特徴とする、前記注射デバイス。
【請求項2】
用量設定中および/または用量投薬中に、第1のフィードバックとは別個の可聴および/または触覚のフィードバックを生じさせる少なくとも1つのクリッカ(100、73;18、46)をさらに含む、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項3】
第2のクリッカ構成要素は、ハウジング(10)とねじ係合して用量設定手段(60)にスプライン連結された数字スリーブ(80)である、請求項1または2に記載の注射デ
バイス。
【請求項4】
ピストンロッド(30)は第1の長手方向軸(I)を画成し、用量設定手段(60、70)は、第1の長手方向軸(I)に対して平行でありかつ、該第1の長手方向軸から隔置された第2の長手方向軸(II)を画成する、請求項1〜のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項5】
ピストンロッド(30)に連結されたドライバ(40)と、用量設定中にドライバ(40)の回転を防止し、用量投薬中にドライバ(40)の回転を可能にする解放クラッチ(15、45)とをさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項6】
ドライバ(40)は、ピストンロッド(30)に直接連結された第1の長手方向軸(I)周りで回転可能な駆動管(43)と、パワーリザーバ(90)に連結された第2の長手方向軸(II)周りで回転可能な駆動スリーブ(41、42)とを含む、請求項またはに記載の注射デバイス。
【請求項7】
用量設定手段(60、70)および/またはドライバ(40)の少なくとも1つの構成要素部材は、用量設定手段(60、70)がハウジング(10)およびドライバ(40)に対して回転可能な用量設定位置と、ドライバ(40)がハウジング(10)に対して回転可能な用量投薬位置との間を、第2の長手方向軸(II)に沿って軸方向に変位可能である、請求項のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項8】
第1の長手方向軸(I)上に位置する第1のスプール(91)に取り付けられる第1の端部と、第2の長手方向軸(II)上に位置する第2のスプール(92)に取り付けられる第2の端部とを有するパワーリザーバとして、逆巻きのゼンマイばね(90)をさらに含み、スプールの一方(92)は、ドライバ(40)に連結される、請求項のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項9】
用量設定手段は、第2の長手方向軸(II)周りで回転可能なダイヤルアセンブリ(70)およびダイヤルスリーブ(60)を含み、該ダイヤルアセンブリ(70)は、用量設定中にドライバ(40)からデカップリングされ、用量投薬中にドライバ(40)に連結される、請求項のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項10】
ピストンロッド(30)はねじ付の親ねじであり、ハウジング(10)は、ピストンロッド(30)のねじ付外面(31)と協働するねじ付部分(17)を有し、したがって、ピストンロッド(30)の回転の結果、ピストンロッド(30)の軸方向運動が生じる、請求項1〜のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項11】
最大設定可能用量および最小設定可能用量を画成するリミッタ機構(10、80)、ならびに/またはカートリッジ(20)内に残っている液体の量を超過する用量の設定を防止する最終用量保護機構(40、50、60)を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項12】
用量設定前後のデバイスの長さが同じである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項13】
用量設定手段(60、70)は、長手方向軸(II)に沿って軸方向に変位可能な解放ボタン(71)を含み、デバイスは、解放ボタン(71)の位置に応じてドライバ(40)を遅くする摩擦手段(120)をさらに含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項14】
薬剤を収容するカートリッジ(20)をさらに含み、該カートリッジ(20)内に可動栓(21)が設けられ、ここで、ピストンロッド(30)は、栓(21)に面する端部に支承部(33)を含み、デバイスの未使用の送達状態で、該支承部(33)は該栓(21)に当接する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、手持ち式の注射デバイス、すなわち薬剤の複数の使用者変更可能な用量を選択および投薬する薬物送達デバイスを対象とする。
【背景技術】
【0002】
ペン型の薬物送達デバイスには、正式な医療訓練を受けていない人による定期的な注射が行われる適用分野がある。これは、糖尿病を患う患者の間でますます一般的になる可能性があり、そのような患者は、自己治療によって疾病の効果的な管理を行うことが有効になる。実際には、そのような薬物送達デバイスにより、使用者は、薬剤の複数の使用者変更可能な用量を個々に選択および投薬することが可能になる。本発明は、所定の用量の投薬だけを可能にし、設定用量を増大または減少させる可能性のない、いわゆる固定用量デバイスを対象とするものではない。
【0003】
基本的に、2つのタイプの薬物送達デバイス:すなわち、リセット可能(すなわち、再使用可能)なデバイスと、リセット不可(すなわち、使い捨て)のデバイスがある。たとえば、使い捨てのペン送達デバイスは、自己完結型のデバイスとして供給される。そのような自己完結型のデバイスは、着脱式の事前充填されたカートリッジをもたない。逆に、事前充填されたカートリッジは、デバイス自体を破壊しなければ、これらのデバイスから取り外して交換することができない。したがって、そのような使い捨てのデバイスは、リセット可能な用量設定機構を有する必要がない。本発明は、概して、両方のタイプのデバイス、すなわち使い捨てのデバイスならびに再使用可能なデバイスに適用することができる。
【0004】
薬物送達デバイスのタイプのさらなる区別は、駆動機構に関する:たとえば、使用者が注射ボタンに力を加えることによって手動で駆動されるデバイス、ばねなどによって駆動されるデバイス、およびこれらの2つの概念を組み合わせたデバイス、すなわちばね支援型であるが使用者が注射の力を及ぼすことをやはり必要とするデバイスがある。ばね型のデバイスは、予圧がかけられたばねと、用量選択中に使用者によって負荷がかけられるばねとを含む。いくつかの蓄積エネルギーデバイスは、ばねの予圧と、たとえば用量設定中に使用者によって提供される追加のエネルギーとの組合せを使用する。概して、本発明は、これらのタイプのデバイスのすべてに適用することができ、すなわち駆動ばねの有無にかかわらずすべてのデバイスに適用することができる。
【0005】
これらのタイプのペン送達デバイス(万年筆を拡大した形に似ていることが多いため、このように呼ばれる)は、概して、3つの1次要素:すなわち、ハウジングまたはホルダ内に収容されることが多いカートリッジを含むカートリッジ区間と;カートリッジ区間の一方の端部に連結されたニードルアセンブリと;カートリッジ区間の他方の端部に連結された容量投与区間(dosing section)とから構成される。カートリッジ(アンプルと呼ばれることが多い)は、典型的には、医薬品(たとえば、インスリン)で充填されたリザーバと、カートリッジリザーバの一方の端部に位置する可動のゴム栓またはストッパと、他方の狭くなっていることの多い端部に位置する穿孔可能なゴム封止を有する頂部とを含む。典型的には、ゴム封止を定位置で保持するために、圧着された環状金属バンドが使用される。カートリッジハウジングは、典型的には、プラスチックから作ることができ、カートリッジリザーバは、従来、ガラスから作られている。
【0006】
ニードルアセンブリは、典型的には、交換可能な両頭針アセンブリである。交換可能な両頭針アセンブリは、注射の前にカートリッジアセンブリの一方の端部に取り付けられ、用量が設定され、次いで設定された用量が投与される。そのような着脱式のニードルアセンブリは、カートリッジアセンブリの穿孔可能な封止端部上へねじ込みまたは押し込む(すなわち、カチッと留める)ことができる。
【0007】
容量投与区間または用量設定機構は、典型的には、ペンデバイスのうち用量を設定(選択)するために使用される部分である。注射中、用量設定機構内に収容されたスピンドルまたはピストンロッドが、カートリッジの栓またはストッパを押し込む。この力により、カートリッジ内に収容された医薬品が、取り付けられたニードルアセンブリを通って注射される。注射後、大部分の薬物送達デバイスおよび/またはニードルアセンブリの製造業者および供給業者によって概して推奨されるように、ニードルアセンブリは取り外されて廃棄される。
【0008】
本発明による薬剤の複数の使用者変更可能な用量を選択および投薬する使い捨ての薬物送達デバイスは、典型的には、ハウジングと、カートリッジを受けるカートリッジホルダと、親ねじまたはピストンロッドと、用量投薬中にピストンロッドを駆動する手段とを含む。そのような使い捨ての薬物送達デバイスは、特許文献1から知られており、カートリッジホルダは、デバイスハウジングに堅く取り付けられる。カートリッジ栓に作用するピストンロッドは、用量投薬中にドライバによって前進させられる。この周知のデバイスは、手動で駆動されるデバイスであり、構成要素部材は、概して、共通の長手方向軸周りで同心円状に配置される。用量設定中、いくつかの構成要素部材はハウジングから出るが、用量投薬中にハウジング内へ押し戻される。
【0009】
特許文献2は、請求項1のプリアンブルに記載の注射デバイスを開示する。この注射デバイスは、ハウジングと、注射すべき所望の用量を設定するように動作可能な用量設定部材と、設定用量をアンプルから注射するようにピストンと協働するように適用されたピストンロッドと、設定用量が注射されるようにピストンロッドを動作するように適用された用量送達機構とを含む。用量送達機構は、設定用量の注射の終了時に設定用量が少なくとも実質上注射されたときにのみ、視覚以外のフィードバック信号を使用者に提供するようにさらに適用される。特許文献2の一実施形態によれば、用量投薬中に回転運動と軸方向運動の組合せを実行するスケールドラムが、固定のばねアームに係合する傾斜状の特徴を有する軸方向の端面を備え、この係合によって視覚以外のフィードバック信号が生成される。そのような機構の欠点は、設定用量を取り消すとき、すなわち薬剤を投薬しないで用量設定部材をゼロ単位にダイヤル選択するときにも、フィードバック信号が生成される可能性があることである。これにより使用者を混乱させることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2004/078241A1
【特許文献2】WO2006/079481A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、用量投薬中にのみフィードバック信号を生成する改善された薬物送達デバイスを提供することである。さらなる目的は、使いやすさおよび取扱いを改善し、好ましくは用量設定中に構成要素がハウジングの外へ並進運動することなく、薬物送達デバイスを小型化することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1に記載のデバイスによって解決される。
【0013】
本発明の第1の実施形態によれば、手持ち式の注射デバイスは、カートリッジを収容することができるハウジングと、投薬すべき所望の用量を設定するように第1の方向に動作可能、たとえば回転可能な用量設定手段と、ピストンまたは栓と協働して設定用量をカートリッジから注射させるように適用されたピストンロッドと、第1および第2のクリッカ構成要素とを含む。第1のクリッカ構成要素は、ハウジングに回転方向に拘束することができ、第2のクリッカ構成要素は、用量投薬中にハウジングに対して回転可能とすることができる。設定用量の投薬の終了に近い使用者にのみ、視覚以外の、すなわち可聴および/または触覚の第1のフィードバックを提供するために、クリッカ構成要素は、互いに接触するように適用される。第1のクリッカ構成要素が近位用量設定位置と遠位用量投薬位置との間でハウジングに対して軸方向に(または別の方向、たとえば半径方向に)変位可能である場合、第1のフィードバックは、デバイスがその用量投薬モードにあり、第1のクリッカ構成要素がその遠位用量投薬位置にある場合にのみ生成される。しかし、デバイスがその用量設定モードにあり、第1のクリッカ構成要素がその近位用量設定位置にある場合、2つのクリッカ構成要素は互いに係合せず、したがって信号またはフィードバックが生成されるのを防止する。したがって、ゼロの最小用量からダイヤル選択する場合、クリッカ構成要素間で接触が生じないため、クリッカ配置のいかなるリセット工程も必要としない。
【0014】
第1のクリッカ構成要素が近位用量設定位置と遠位用量投薬位置との間でハウジングに対して軸方向に変位可能であるさらなる利点は、設定用量を取り消すには用量設定手段を第1の方向とは反対の第2の方向に動作可能、たとえば回転可能であり、第1および第2のクリッカ構成要素は互いに接触せず、したがってフィードバックを生み出さないことである。これにより、使用者の混乱が回避される(また、投薬中にフィードバックがより明確になるようにクリッカ特徴(clicker feature)を「より鋭くする」ことが可能である)。
【0015】
「クリッカ構成要素」という用語は、構成要素部材または特徴もしくはその一部のみを含むことができる。したがって、クリッカ特徴を含む構成要素部材は可動ではないが、クリックを提供する特徴は可動であることが可能になる。言い換えれば、可動のクリッカ構成要素への言及は、構成要素部材全体が可動であること、またはアーム、突起、傾斜などのようなその特徴のみが可動であることと理解されたい。
【0016】
好ましくは、注射デバイスは、用量設定中および/もしくは用量訂正(投薬しないで設定用量を取り消す)中、ならびに/または用量投薬中に、可聴および/または触覚のフィードバックを生じさせる少なくとも1つのクリッカをさらに含む。これらのフィードバック信号を区別するために、設定用量の投薬の終了時にのみ生成される第1のフィードバック(用量投薬終了フィードバック)は、さらなるフィードバック(複数可)とは別個である。たとえば、異なる音を生成することができる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、第2のクリッカ構成要素は、数字スリーブ、たとえば、デバイスの外側からたとえばハウジング内の窓または開口部を通って見ることができる数字、記号などをその外面上に有する管状要素である。数字スリーブは、好ましくは、ハウジングとねじ係合され、用量設定手段にスプライン連結される。たとえば、第2のクリッカ構成要素は、数字スリーブ上に設けられた柔軟なアーム、傾斜、突起、または凹部とすることができる。
【0018】
たとえばねじ付部分のピッチを変化させることによって、または非回転部分と回転部分とを係合させ、それによって非回転部分が回転し始めるようにすることによって、少なくとも1つの部材の回転速度の変化のような、視覚以外の、すなわち可聴および/または触覚のフィードバック信号(複数可)を生成する様々な適当な方法がある。フィードバックは、別法として、張力を蓄積および解放することによって生成することができる。好ましくは、第1のクリッカ構成要素は、径方向に内向きの突起、たとえば傾斜を有し、第2のクリッカ構成要素は、第2のクリッカ構成要素から径方向に外方へ延びるばねアームまたはフィンガのような可撓性要素を有する。第2のクリッカ構成要素が軸方向に可動であるため、第2のクリッカ構成要素は、用量投薬中に第1のクリッカ構成要素の突起が第2のクリッカ構成要素の可撓性要素に接触するように位置することができる。たとえば、傾斜は、ばねアームを曲げることができ、ばねアームは、傾斜との係合解除後、応力を受けない位置に戻ってカチッと留まり、フィードバック信号を生成する。
【0019】
さらなる実施形態によれば、注射デバイスは、ハウジングと、ピストンロッドと、ドライバと、用量設定手段と、パワーリザーバと、および場合によって解放クラッチ(release clutch)とを含む。ピストンロッドは、第1の長手方向軸を画成し、ハウジング内に位置する。ドライバは、ピストンロッドに連結される。用量設定手段は、少なくとも用量設定中に第2の長手方向軸周りで回転可能である。パワーリザーバは、用量投薬中にドライバを駆動するために提供される。好ましくは、解放クラッチは、用量設定中にはドライバの回転を防止し、用量投薬中にはドライバの回転を可能にするように配置される。第1の長手方向軸は、第2の長手方向軸と平行にかつ、第2の長手方向軸から隔置され、すなわち2つの軸間にはずれが位置し、このずれ上にデバイスの構成要素部材が配置される。構成要素部材のいくつかが、従来の同心円状の配置ではなく、互いに隣接しているため、デバイスの横断面は、通常の円形のペン形状ではなく細長くなる。これにより、少なくとも一部の使用者にとってデバイスの取扱いが改善される。さらに、デバイスは、それほど短いものでなくなり、この場合も、取扱いおよび利便性が改善される。ドライバを駆動するパワーリザーバを提供することで、用量投薬中に使用者に必要とされる力が低減させる。これは、器用さを損なった使用者にとって特に役立つ。
【0020】
パワーリザーバは、ばねを含むことができ、このばねは、予圧がかけられた(事前チャージされた)ばね、または用量設定中に使用者によって負荷がかけられるべきばねである。好ましくは、ばねは、デバイスの予想寿命に対して完全に事前チャージされ、すなわち使用者は、いかなるときもばねを再チャージしたり歪ませたりする必要がない。適したばねタイプには、圧縮ばねおよびねじりばねが含まれる。本発明の好ましい実施形態によれば、ばねは、逆巻きのゼンマイばねであり、これは、チャージ状態で、応力を受けない巻き方向とは反対に巻き上げられる、巻き上げられた帯状のばねである。好ましくは、ばねの第1の端部は、第1の長手方向軸上に位置することができる第1のスプールに取り付けられ、ばねの第2の端部は、第2の長手方向軸上に位置することができる第2のスプールに取り付けられる。ドライバを駆動するために、スプールの一方は、たとえば直接スプライン連結によって、ドライバに連結することができる。代替手段として、解放可能な連結、たとえば1対の歯付リング(teeth ring)を使用することもできる。
【0021】
ドライバは、ピストンロッドに連結された管状要素を含むことができる。好ましくは、この管状要素は、ピストンロッドを少なくとも部分的に取り囲む。連結は、解放可能な連結とすることができるが、ドライバは、たとえばスプラインインターフェースまたはねじインターフェースを介して、ピストンロッドに恒久的に連結されることが好ましい。ドライバの構成要素部材である駆動管は、好ましくは、第1の長手方向軸周りで回転可能に配置され、ピストンロッドに直接連結される。
【0022】
ドライバは、少なくとも1つのさらなる構成要素部材、たとえば第2の長手方向軸周りで回転可能な駆動スリーブをさらに含むことができる。したがって、ドライバの2つの構成要素部材は、ずれを有するように平行な軸上に配置することができる。好ましくは、ドライバの構成要素部材は、互いに恒久的に連結され、したがって一方の構成要素の回転が、他方の構成要素の回転を引き起こす。たとえば、2つのドライバ構成要素のそれぞれに、噛合ピニオンを設けることができる。駆動スリーブは、パワーリザーバに連結することができ、したがってパワーリザーバは、たとえばスプラインインターフェースを介して、ドライバ構成要素を駆動する。製造または組立て上の理由のため、駆動スリーブは、2つまたはそれ以上の構成要素部材を含むことができ、これらの構成要素部材は、デバイス内で1つの構成要素として作用するように、組立て中に互いに堅く連結される。
【0023】
さらに好ましい実施形態によれば、用量設定手段は、第2の長手方向軸周りで回転可能なダイヤルアセンブリおよびダイヤルスリーブを含む。好ましくは、ダイヤルアセンブリは、用量設定中にドライバからデカップリングされ、用量投薬中にドライバに連結される。ダイヤルアセンブリは、ハウジングから少なくとも部分的に延びるダイヤルグリップを含むことができ、ダイヤルグリップは、使用者がダイヤルグリップを回転させることによって用量を選択または選択解除することを可能にする。ダイヤルグリップは、用量投薬を開始するためのトリガまたは解放ボタンとしてさらに使用することができる。ダイヤルアセンブリは、さらなる構成要素と相互作用するスリーブ状部材をさらに含むことができる。製造または組立て上の理由のため、ダイヤルグリップおよびスリーブ状部材は、2つまたはそれ以上の構成要素部材を含むことができ、これらの構成要素部材は、デバイス内で1つの構成要素として作用するように、組立て中に互いに堅く連結される。好ましくは、ダイヤルスリーブは、ダイヤルアセンブリと回転方向に連結およびデカップリングすることができる。たとえば、用量設定および/または用量訂正中には、ダイヤルグリップの回転がダイヤルスリーブに伝達され、用量投薬中には、ダイヤルスリーブの回転がダイヤルグリップを同伴しないことが好ましい。
【0024】
注射デバイスは通常、現在の設定用量を示すディスプレイを有する。これは、機械ディスプレイおよび電子ディスプレイを含むことができる。好ましくは、デバイスは、一連の数字および/または記号をその外側に有する数字スリーブをさらに含む。典型的には、ハウジング内の窓により、現在の設定用量に対応する数字または記号のみをデバイスの外側から見ることが可能になる。数字スリーブがハウジングとねじ係合し、用量設定手段にスプライン連結される場合、数字スリーブは、用量設定中(および用量訂正)および用量投薬中にダイヤルスリーブとともに回転することができる。ハウジングとのねじインターフェースのため、数字スリーブは、数字スリーブの回転時にハウジング内で軸方向に進む。好ましくは、数字スリーブは、第2の長手方向軸周りで回転可能である。
【0025】
ピストンロッドがねじ付の親ねじであり、ハウジングがピストンロッドのねじ付外面と協働するねじ付部分を有する場合、用量投薬中のピストンロッドの回転の結果、ピストンロッドの軸方向運動が生じる。代替手段として、ピストンロッドは、ドライバとねじ係合し、ハウジングにスプライン連結することができる。
【0026】
好ましい実施形態によれば、薬物送達デバイスは、最大設定可能用量および最小設定可能用量を画成するリミッタ機構を含む。典型的には、最小設定可能用量はゼロ(インスリン製剤の0IU)であり、したがってリミッタは、用量投薬の終了時にデバイスを止める。最大設定可能用量、たとえばインスリン製剤の60、80、または120IUは、過量投与を回避するために制限することができる。好ましくは、最小用量および最大用量に対する制限は、強制止め具機能(hard stop feature)によって提供される。
【0027】
リミッタ機構は、最小用量(ゼロ)位置で当接する数字スリーブ上の第1の回転止め具(rotational stop)およびハウジング上の第1の逆止め具(counter stop)と、最大用量位置で当接する数字スリーブ上の第2の回転止め具およびハウジング上の第2の逆止め具とを含むことができる。数字スリーブが用量設定中および用量投薬中にハウジングに対して回転するため、これらの2つの構成要素は、信頼性が高い頑丈なリミッタ機構を形成するのに適している。
【0028】
投与不足または動作不良を防止するために、薬物送達デバイスは、カートリッジ内に残っている液体の量を超過する用量の設定を防止する最終用量保護機構(last dose protection mechanism)を含むことができる。たとえば、最終用量保護機構は、ドライバと、ダイヤルスリーブまたは用量設定および用量投薬中に回転する任意の他の構成要素との間に介在するように位置するナット部材を含む。好ましい実施形態では、ダイヤルスリーブは、用量設定中および用量投薬中に回転し、ドライバは、用量投薬中にのみダイヤルスリーブとともに回転する。したがって、この実施形態では、ナット部材は、用量設定中にのみ動き、用量投薬中にはこれらの構成要素に対して静止したままである。好ましくは、ナット部材は、ダイヤルスリーブにねじ連結され、ドライバにスプライン連結される。代替手段として、ナット部材は、ドライバにねじ連結することができ、ダイヤルスリーブにスプライン連結することができる。ナット部材は、完全なナットまたはナットの一部、たとえば半割りナットとすることができる。
【0029】
通常、用量投薬を開始するには、使用者がボタンまたはトリガを押す必要がある。好ましくは、用量設定手段および/またはドライバの少なくとも1つの構成要素部材は、用量設定手段がハウジングおよびドライバに対して回転可能な用量設定位置と、ドライバがハウジングに対して回転可能な用量投薬位置との間で軸方向に変位可能である。軸方向に変位可能な用量設定手段は、用量設定に使用されるダイヤルグリップとすることができる。好ましくは、軸方向に変位可能な構成要素は、その用量設定位置と用量投薬位置との間を第2の長手方向軸に沿って進む。
【0030】
通常、この一続きの用量設定および用量投薬には、用量設定中および/または用量投薬中に構成要素のいくつかの相対的な動きが必要である。この結果を実現する様々な異なる実施形態が可能であり、そのいくつかは、上記の従来技術に記載されている。本発明の好ましい例によれば、注射デバイスは、駆動部材と数字スリーブとの間に配置されたクラッチをさらに含むことができ、クラッチは、用量設定中には駆動部材および数字スリーブの相対的な回転を可能にし、用量投薬中には駆動部材および数字スリーブを回転方向に拘束する。この実施形態は、用量設定中に相対的な軸方向運動を含むことができる。
【0031】
デバイスの取扱いを改善するために、用量設定前後のデバイスの長さは、好ましくは同じである。言い換えれば、用量設定中に構成要素がハウジングから出るため、ダイヤル延長はない。好ましくは、用量設定手段およびドライバは、用量設定中および用量投薬中に長手方向軸の1つに沿って軸方向に変位しないように、ハウジング内に配置される。しかし、デバイスの用量設定位置と用量投薬位置との間を切り替えるために、用量設定と用量投薬との間の構成要素の少なくともいくつかの軸方向運動を可能とすることができる。
【0032】
好ましい実施形態によれば、用量設定手段は、第2の長手方向軸に沿って軸方向に変位可能な解放ボタンを含み、デバイスは、解放ボタンの位置に応じてドライバを減速させる摩擦手段をさらに含む。言い換えれば、速度制御が提供され、使用者は、デバイスの投薬速度を変更することが可能になる。摩擦手段は、デバイスの1つまたはそれ以上のクラッチ板または他の構成要素部材を含むことができ、これらの板または構成要素は、たとえばばねによって互いに押し当てられる。これらの板または構成要素の1つは、用量投薬中に回転し、これらの板または構成要素のもう1つは、用量投薬中に静止したまま保持される。したがって、これらの構成要素の相対的な動きによって摩擦が引き起こされ、デバイスを減速させる。解放ボタンを押すことで、たとえばばね力を下げることによって摩擦が減少し、したがって投薬速度の増大を招く。好ましくは、解放ボタンは、用量設定手段のダイヤルグリップである。
【0033】
薬物送達デバイスは、薬剤を収容するカートリッジを含むことができる。さらに、カートリッジ内に可動栓を設けることができる。
【0034】
通常、注射デバイスは、カートリッジ栓とピストンロッドとの間に生じ得る間隙を閉じてデバイス内の公差に打ち勝つために、最初の使用前にいわゆるプライミングを必要とする。このプライミング工程のため、使用者は、小さい用量を設定して、この用量を投薬しながら、たとえば流体がデバイスを離れるかどうかを監視しなければならない。この行動は、たとえば流体が実際にデバイスを離れるまで繰り返さなければならない。好ましい実施形態によれば、ピストンロッドは、その端部に栓に面する支承部または先端部を含み、デバイスの未使用の送達状態で、支承部は栓に当接する。言い換えれば、プライミングは必要でなくなる。このプライミングの排除は、ピストンロッドがカートリッジ栓に当接する(場合によって、はわずかな力を加える)位置へ動かされるまで組立てプロセス中にドライバを回転させることによってドライバがピストンロッドに連結されるデバイス内で実現することができる。この位置は、ドライバを回転させるのに必要とされる力またはトルクの増大によって決定することができる。代替手段として、ハウジングまたはドライバに対するピストンロッドの軸方向位置を感知することもできる。
【0035】
本明細書で使用する用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、アンチハウジングもしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0036】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0037】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0038】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0039】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0040】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0041】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0042】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0043】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各アンチハウジングの基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0044】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0045】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類によりアンチハウジングのアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0046】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C)と可変領域(V)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0047】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各アンチハウジングは、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各アンチハウジングにつき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0048】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与のアンチハウジングの固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(VH)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0049】
「アンチハウジングフラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全アンチハウジングと本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0050】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0051】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0052】
本発明は、カートリッジから針を介して薬剤の複数の使用者変更可能な用量を送達するように動作させることができる医療デバイスで使用するための機構を提供する。デバイスは使い捨てであり、すぐに使用できる完全に組み立てられた状態で使用者へ届けられる。
【0053】
この機構は、エネルギーを蓄積するモータばねを使用する。これは、事前チャージ状態で使用者へ供給され、デバイスの寿命全体にわたって後の再チャージは必要でない。使用者は、機構内に組み込まれている入力ダイヤルおよび設定用量ディスプレイを使用して、必要な用量を選択する。ばねエネルギーは、デバイスが投薬のためにトリガされるまで蓄積され、トリガされた時点で、ある割合の蓄積されたエネルギーを使用して、薬剤をカートリッジから使用者へ送達する。
【0054】
ゼロと事前に画成された最大値との間で、1単位刻みで、任意の用量寸法を選択することができる。この機構では、用量を選択するときとは反対の方向に用量選択ダイヤル(ダイヤルグリップ)を回転させることによって、いかなる薬剤も投薬されることなく、用量を取り消すことが可能である。
【0055】
トリガは、デバイスの近位端の方に位置し、起動時に、選択された用量がゼロより大きい場合、薬剤を投薬する。
【0056】
このデバイスでは、ばねが事前チャージされているため、用量を設定するためのトルク要件が低く、また薬剤の投薬をトリガするための力要件が低い。このデバイスは部材数が比較的少なく、コストに敏感なデバイス適用分野にとって特に魅力的である。
【0057】
この機構は、いくつかの主要な構成要素が歯車配置によって駆動されるように平行に配置されるという追加の利点を有する。これにより、デバイスの全体的な長さが低減される。
【0058】
本発明の非限定的で例示的な実施形態について、添付の図面を参照しながら次に説明する:
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明の第1の実施形態による注射デバイスの構成要素の分解図である。
図2図1のデバイスの部分断面図である。
図3】用量設定状態にある図1のデバイスの断面図である。
図4】用量投薬状態にある図1のデバイスの断面図である。
図5図1のデバイスの細部の拡大図である。
図6図1のデバイスの細部の拡大図である。
図7図1のデバイスの細部の拡大図である。
図8a】用量投薬状態にある図1のデバイスの細部の拡大図である。
図8b】用量投薬状態にある図1のデバイスの細部の拡大図である。
図8c】用量設定状態にある図1のデバイスの細部の拡大図である。
図9】本発明の第2の実施形態による注射デバイスの構成要素の分解図である。
図10a】用量設定状態にある図9のデバイスの詳細図である。
図10b】用量投薬状態にある図9のデバイスの詳細図である。
図11】部分的に組み立てられた状態にある図9のデバイスの部分断面図である;
図12】本発明の第3の実施形態による注射デバイスの構成要素の分解図である;
図13図12のデバイスの図である;
図14】用量設定状態にある図12のデバイスの断面図である;
図15】a〜eは、用量設定および投薬の様々な段階における用量終了クリッカ機構の第4の実施形態の部分切欠図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1および図2は、注射ペンの形の薬物送達デバイスを示す。このデバイスは、遠位端(図2で左の端部)と、近位端(図2で右の端部)とを有する。薬物送達デバイスの構成要素部材が、図1に示されている。薬物送達デバイスは、ハウジング10と、カートリッジ20と、親ねじ(ピストンロッド)30と、ドライバ40と、ナット50と、ダイヤルスリーブ60と、ダイヤルアセンブリ70と、数字スリーブ80と、パワーリザーバ(モータばね)90と、クリッカ100と、ばね110とを含む。ニードルハブおよびニードルカバーを有するニードル配置(needle arrangement)(図示せず)を、上記のように交換することができる追加の構成要素として設けることができる。
【0061】
ハウジング10または本体は、主ハウジング11と、近位ハウジング12と、遠位ハウジングまたはカートリッジホルダ13とを含む。主ハウジング11は、長円形の横断面を有する略管状の要素であり、図1では上側と比較すると下側が広くなっている。主ハウジング11内には、窓14または開口部が設けられる。主ハウジング11、近位ハウジング12、およびカートリッジホルダ13は、組立て中にともに挿し込まれ、またはカチッと留められて、主ハウジング11の両方の開端部を閉じることができる。さらに、ハウジング構成要素は、ともに接着または溶接して、剛性の恒久的に取り付けられたハウジングユニットを形成することができる。カートリッジホルダ13は、図2でその上部領域内に遠位開口部を有し、遠位開口部は、ニードル配置の取付けのための外側のねじ山などを有することができる。近位ハウジング12は、図2でその下部領域内に近位開口部を有する。さらに、近位ハウジング12は、その内側で近位開口部付近に、ドライバ40とのクラッチの一部を形成する歯15のリング(図9の実施形態でより詳細に示す)を有する。カートリッジホルダ13は、クリッカ100およびばね110を案内するスプラインピン16をその下側に有する。ハウジング10は、主ハウジング11の上部部分(図1)およびカートリッジホルダ13内に保持される薬液カートリッジ20に対する場所を提供する。
【0062】
主ハウジングは、ピストンロッド30に係合するねじ付区間17を有する内壁を有する。さらに、クリッカアーム18が主ハウジング11の近位端付近に位置し、用量投薬中にドライバ40と相互作用する。
【0063】
カートリッジ20は、ガラスのアンプルであり、可動のゴム栓21がその近位開口部に位置する。
【0064】
親ねじ30は細長い部材であり、外側のねじ山31は、スプラインインターフェースを介してドライバ40に回転方向に拘束される。インターフェースは、少なくとも1つの長手方向の溝またはトラック32と、ドライバ40の対応する突起またはスプライン44とを含む。親ねじ30は、回転させられると、ハウジング10とのそのねじインターフェース17によって、ドライバ40に対して軸方向に強制的に動かされる。ピストンロッド30の遠位端は、支承部33を備え、支承部33は、カートリッジ栓21に当接することができる。
【0065】
ドライバ40は、製造上の理由のために駆動スリーブ下部部分41および駆動スリーブ上部部分42を有する駆動スリーブと、駆動管43とを含む。駆動スリーブ下部部分41および駆動スリーブ上部部分42は、堅く連結されて、使用時にユニットを形成する。駆動管43は、第1の長手方向軸I上に配置され、駆動スリーブは、第1の軸Iに対して平行でありかつ第1の軸Iから隔置された第2の長手方向軸II上に配置される。
【0066】
駆動管43の内側には、ピストンロッド30の対応する溝32に係合するスプライン44が設けられる。駆動管43は、駆動管43に対して軸方向に変位可能なピストンロッド30を取り囲む。図1〜4に示すように、駆動スリーブ上部部分42と駆動管43はそれぞれ、その近位端にピニオン45、46を有し、ピニオン45、46は、駆動スリーブ41、42の回転が駆動管43へ伝送されるように噛合する。駆動スリーブ41、42は、ピニオン45がハウジング10の歯15にさらに係合する近位位置(用量設定および訂正中、図3参照)と、ピニオン45が歯15から係合解除される遠位位置(用量投薬位置、図4参照)との間を、第2の軸IIに沿って軸方向に可動である。しかし、どちらの軸方向位置でも、ピニオン45、46は、少なくとも部分的に係合したままである。
【0067】
駆動スリーブ41、42は、その外面上に、駆動スリーブをパワーリザーバ90に回転方向に拘束するスプライン47a、47bを有する。さらに、駆動スリーブ41、42の内面上に、駆動スリーブ41、42をナット50に回転方向に拘束するスプライン48が設けられる。
【0068】
ナット50は、最終用量リミッタ機構の一部である。最終用量ナット50は、ダイヤルスリーブ60と駆動スリーブ41、42との間に位置する。最終用量ナット50は、ダイヤル選択中、すなわち用量設定または用量訂正中にダイヤルスリーブ60と駆動スリーブとの間に相対的な回転が生じたとき、ねじインターフェース61を介してダイヤルスリーブ60に対して螺旋経路に沿って動く。図1〜11の実施形態では、ナット50は半割りナットであり、すなわちデバイスの第2の軸II周りで約180°延びる構成要素である。
【0069】
ダイヤルスリーブ60は、第2の軸II上に回転可能に配置された管状要素である。ダイヤルスリーブ60の近位区間は、ナット50を案内するねじ山61を備える。隣接する遠位区間は、数字スリーブ80との係合のための外側スプライン62を備える。さらに、ダイヤルスリーブ60は、中間の階段状部分に、ダイヤルスリーブ60をダイヤルアセンブリ70に解放可能に回転方向に連結する内側の歯63のリングを有する。近位端には、用量投薬中にドライバ40の対応する内側スプラインに係合する外側スプライン64が設けられる。
【0070】
ダイヤルアセンブリ70は、ダイヤルグリップ71と、ダイヤルグリップ71に堅く取り付けられた管状要素72とを含む。ダイヤルグリップ71および管状要素72は、本実施形態では、製造上の理由のために別個の構成要素であるが、同様に単一の構成要素とすることもできる。ダイヤルアセンブリ70は、第2の軸II上に配置され、近位開口部を通って近位ハウジング部材12内を延びる。ダイヤルアセンブリは、その遠位端では、その遠位面上に、クリッカ100と相互作用する制止歯(detent teeth)73のリングを備える。さらに、管状要素72の遠位端付近に、用量設定位置でスプライン63に係合するスプライン74が設けられる。ダイヤルアセンブリ70は、近位位置(用量設定および訂正中、図3参照)と、遠位位置(用量投薬位置、図4参照)との間で、第2の軸IIに沿って軸方向に可動である。ダイヤルグリップ71は、駆動スリーブ41、42に当接し、したがってダイヤルグリップ71の遠位方向の軸方向運動が駆動スリーブ41、42を同伴し、駆動スリーブ41、42の近位方向の軸方向運動がダイヤルグリップ71を同伴する。
【0071】
数字スリーブ80は、第2の軸II上に配置された管状要素である。数字スリーブ80の外面は、螺旋経路上に配置された一続きの数字を備える。さらに、数字スリーブは、その外面上に、主ハウジング11の対応するねじ山に係合するねじ山81を有する。数字スリーブ80は、その遠位端では、クリッカ100と相互作用する内向きの突起82を備える。さらに、数字スリーブ80上の回転強制止め具(rotational hard stop)、および主ハウジング11上の対応する要素が、ねじインターフェースによって画成されたその螺旋経路上で、ハウジングに対する数字スリーブの回転運動を制限する。
【0072】
パワーリザーバは、逆巻きのゼンマイばね90を含み、ばね90は、応力を受けない状態で渦巻きの形を有し、ばねに張力をかけるには、応力を受けない渦巻き方向とは反対に巻かれる帯状のばねである。ばね90の第1の端部は、第1の長手方向軸I上に位置して駆動管43を取り囲む第1のスプール91に取り付けられる。ばね90の第2の端部は、第2の長手方向軸II上に位置する第2のスプール92に取り付けられ、第2のスプール92は、スプライン47a、47bおよび第2のスプール92内側の対応する溝93によって、駆動スリーブ41、42に回転方向に拘束される。ばね90は、デバイスの組立て中に、スプール92上にばねを巻くことによって完全にチャージされる(張力がかけられる)が、このばねは、スプール91上に再びに巻き付く傾向がある。パワーリザーバは、ばね90がピストンロッド30を、図2〜4に示すその後退位置から、カートリッジ栓がその最も遠位の方向に押された位置へ、駆動することが可能になるように寸法設定される。言い換えれば、カートリッジ20を空にするためにばね90を再チャージする必要はない。
【0073】
クリッカ100は、軸方向に変位可能に位置するがカートリッジホルダ13のスプラインピン16上に回転方向に拘束される管状要素である。図8a〜8cに見ることができるように、クリッカ100は、その内面上に、スプラインピン16と係合する溝101を有する。さらに、クリッカ100の近位端上の制止歯102が、ダイヤルアセンブリ70の歯73と嵌合する。制止歯102付近には、数字スリーブの突起82と相互作用するフィンガ103が設けられる。
【0074】
ばね110は、スプラインピン16上でクリッカ100の内側に位置する圧縮ばねであり、クリッカ100を近位方向に付勢する。クリッカ100とダイヤルアセンブリ70との間の接触およびダイヤルアセンブリ70と駆動スリーブ41、42との間の接触のため、ばね110は、図3に示すように、これらの構成要素を近位方向に押すが、使用者は、ばね110の力に打ち勝って、これらの構成要素を図4に示す遠位位置に押し込むことができる。
【0075】
以下、使い捨ての薬物送達デバイスおよびその構成要素の機能について、より詳細に説明する。
【0076】
ダイヤルグリップ71の回転により、数字スリーブ80は、ハウジング10内で0Uの止め具と120Uの止め具との間を進む。クリッカ100とダイヤルアセンブリ70の管状要素との間の軸方向制止歯インターフェース(ばね110によってともに押し付けられる)が、制止用量位置および使用者フィードバックを生成する。駆動スリーブ41、42は、ダイヤル選択中、スプラインインターフェースを介して、ハウジング10に回転方向に抑制される。
【0077】
ダイヤル選択中の主要なインターフェースは:ダイヤルスリーブ60がダイヤルグリップ71にスプライン連結され、数字スリーブ80がダイヤルスリーブ60にスプライン連結され、数字スリーブ80がハウジング10にねじ連結され、クリッカ100がカートリッジホルダ13にスプライン連結され、駆動スリーブ41、42がスプラインピン16にスプライン連結され、ナット50がダイヤルスリーブ60にねじ連結され、ナット50が駆動スリーブ41、42にスプライン連結されることである。
【0078】
ゼロの止め具および最大用量の止め具は、数字スリーブ80とハウジング10との間の当接部によって生成される。当接部が係合されたとき、ダイヤルグリップ71に印加される使用者入力トルクは、ダイヤルスリーブ60および数字スリーブ80を介して再びハウジング10へ作用させられる。
【0079】
ナット50は、ダイヤルスリーブ60と駆動スリーブ41、42との間の相対的な回転がある状態で、ダイヤルスリーブ60の近位端での回転当接部の方へ前進する。当接部に到達したとき、ダイヤルトルクは、ダイヤルグリップ71、ダイヤルスリーブ60、ナット50、および駆動スリーブ41、42を通って、ハウジング10とのスプラインインターフェースに作用させられる。
【0080】
用量を投薬するには、ダイヤルグリップ71が使用者によって押される。次いで、ダイヤルグリップ71は、ダイヤルスリーブ60から係合解除され、クリッカ100の制止歯係合(ダイヤルアセンブリ70の管状要素72とクリッカ100との間)によって回転方向に拘束される。使用者によって印加される軸方向の力は、ばね110およびダイヤルグリップ71とハウジング10との間の直接当接部によって作用させられる。ダイヤルグリップ71が投薬中に機構から回転方向にデカップリングされると、使用者は、投薬機構へ誤用トルクを入力したり用量を調整したりすることができなくなる。
【0081】
駆動スリーブ41、42は軸方向に動かされ、したがってまず、スプライン機能64をダイヤルスリーブ60と係合させ、次いで、ハウジング10とのそのスプラインインターフェース45、15を係合解除する。次いで、ばね90は、駆動スリーブ41、42を回転させる。駆動スリーブ41、42と駆動管43との間の歯車インターフェースを介して、駆動管43は回転させられ、次いでハウジング10を通って栓21内へピストンロッド30を駆動する。駆動スリーブ41、42は、ダイヤルスリーブ60を介して数字スリーブ80を再び0U位置の方へ回転させる。
【0082】
投薬中の主要なインターフェースは:駆動スリーブ41、42がダイヤルグリップ71に軸方向に拘束されてデバイスの遠位端の方へ変位され、ダイヤルグリップ71がダイヤルスリーブ60から係合解除され、駆動スリーブ41、42がダイヤルスリーブ60上のスプラインと係合し、駆動スリーブ41、42がハウジング10から係合解除されることである。
【0083】
用量の投薬は、数字スリーブ80がハウジング10との0U当接部に到達するまで、または使用者がダイヤルグリップ71を解放するまで継続する。0U当接部が係合したとき、ばね90からのトルクは、ダイヤルスリーブ60および数字スリーブ80を介してハウジング10内へ作用させられる。使用者がダイヤルグリップを解放した場合、ばね110の作用は、駆動スリーブ41、42とハウジング10との間のスプラインインターフェース15、45を再係合させるように作用する。
【0084】
用量設定中のフィードバックは、ダイヤルアセンブリ70の管状要素とクリッカ100との間の相互作用によって提供される。クリッカ100は、カートリッジホルダ13のスプラインピン16にスプライン連結され、ばね110は、クリッカ100を押してダイヤルアセンブリ70の管状要素と軸方向に係合させる。制止歯73、102は、構成要素間の軸方向制止歯インターフェースを提供し、クリッカ100は、ダイヤルグリップ71が回転されると軸方向に往復して、ダイヤルグリップに対する制止位置を提供する。これは、図5により詳細に示されており、管状要素72のスプライン74は、ダイヤルスリーブ60のスプライン63の内側リングから係合解除された状態で示されており、すなわちデバイスは用量投薬位置にある。さらに、歯73および歯102が示されている。
【0085】
用量投薬中、駆動管43およびハウジング10の相互作用によって、触覚および可聴フィードバックが生み出される。図6に示すように、駆動管43上の歯車46の回転によって変位される柔軟なクリッカアーム18が、主ハウジング11内へ組み込まれる。クリッカアーム18は、歯車46がクリッカアーム18上を通ると、近位ハウジング12の表面に接触し、投薬された各用量単位に対するフィードバックを生成する。
【0086】
用量の送達が完了すると、数字スリーブ80がその0U位置に戻るため、数字スリーブ80およびクリッカ100の相互作用によって、追加の可聴フィードバックが生み出される。図8a〜8cに示すように、この相互作用は、クリッカ100の軸方向位置に依存し、投薬中に、クリッカ100が遠位位置にあり、ダイヤルグリップ71が使用者によって押し下げられたときにのみ生じる。ダイヤルグリップの軸方向位置を利用してこの相互作用を生み出すことによって、用量終了機能は、用量のダイヤル選択(図8c参照)中に使用者によって緩められる必要がなくなる。
【0087】
この実施形態では、径方向フィンガ103がクリッカ100から延び、傾斜したボス82の形の突起が数字スリーブ80の内面に追加されており、したがって、数字スリーブ80が1U位置(図8aに示す)から0U位置(図8bに示す)へ再び回転すると、数字スリーブ80上のボスは径方向フィンガ103を撓ませる。数字スリーブ80が0U位置へ戻ると、径方向フィンガ103は解放されて休止状態にはね返り、使用者に対する可聴フィードバックを生み出す。クリッカ100がダイヤルアセンブリに直接接触すると、ダイヤルグリップが使用者によって押し下げられた状態で保持されているため、触覚フィードバックも提供される。
【0088】
ダイヤルグリップ71に入力する行程範囲によって使用者が投薬速度を制御することを可能にする機構を組み込むことが可能である。図9〜10bに示す第2の実施形態では、多板クラッチシステム120がデバイス内に組み込まれて、ハウジング10と駆動スリーブ41、42との間で作用する。このシステムは、上部駆動スリーブ42にスプライン連結される第1のクラッチ板121と、ケージ123にスプライン連結される第2のクラッチ板122とを含む。ケージ123は、近位ハウジング12内で対応する溝と係合してケージ123を回転方向に拘束する外側スプライン124を有する。近位ハウジング12とケージ123内のクラッチ板121、122との間に、クラッチばね125が介在する。
【0089】
複数のクラッチ板は、所与のクラッチばね力に対するクラッチのトルク容量を増大させる。図9に示す実施形態の場合、ダイヤルグリップ71が押し下げられると、上部駆動スリーブ42がダイヤルグリップ71によってケージ123とともに遠位方向に近位ハウジング12から離れる方へ押されるため(図10b)、クラッチばね125からクラッチパック121、122に印加される力(図10a)は低減する。
【0090】
この実施形態では、全体的なダイヤルグリップ71の行程は、たとえば5mm、機構を係合解除して投薬を開始する場合は2.5mm、使用者変更可能な速度制御の場合は2.5mmに増大する。ダイヤルグリップ71が押し下げられると、クラッチばね125によって印加される力が低減するため、クラッチパック121、122によって駆動スリーブ41、42に印加される摩擦トルクも低減する。摩擦トルクの値は、ダイヤルグリップ71の軸方向位置に依存する。ばね90から利用可能なトルクは、クラッチパックの摩擦トルクに打ち勝たなければならず、それによって、用量を投薬するために機構に印加されるトルクが低減する。したがって、使用者が係合解除位置と完全に進んだ位置との間でダイヤルグリップ71を引き続き押し下げると、投薬速度は増大する。ダイヤルグリップ71を押し下げるのに必要とされる力は、ばね110の作用とクラッチばね125の作用が組み合わさるため、その行程とともに増大し、弱い方のばね125の抵抗が低減するにもかかわらず、ばね110は抵抗を増大させる。
【0091】
最初の使用時に使用者がデバイスをプライミングする必要性をなくすための設備も提供される。これは、組み立てられたときに支承部33が栓21に接触し、または栓21に軽負荷を加えるように、製造中のカートリッジ栓21と支承部33との間の可変距離(構成要素およびカートリッジの公差に依存)を除去することを伴う。
【0092】
この「プライミングの排除」は、次の方法を使用して実現される:プライミングの排除のために、駆動スリーブ41、42に関係なく、駆動管43の回転によってピストンロッド30を前進させる。したがって、近位ハウジング12が嵌合される前に、駆動管43はデバイスの近位端の方へ変位させられ、したがって、駆動スリーブ41、42の歯車45(図11参照)に係合しなくなる。次いで、駆動管43を回転させて、ピストンロッド30、したがってその支承部33を、カートリッジ栓21の方へ前進させる。栓21との接触は、駆動管を回転させるのに必要とされるトルクの測定を使用して感知することができ、またはハウジング10内のねじ山17に対するピストンロッド30の軸方向位置の測定によって感知することができる。ピストンロッド30がハウジング10とのねじ係合の反対の側へ動く点は、栓21との接触を示す。
【0093】
第3の代替実施形態が図12〜14に示されている。適当な場合、類似の構成要素には第1の実施形態と同じ参照番号が与えられる。このデバイスの設計および機能は、概して、第1の実施形態のものに非常に類似している。さらに、このデバイスは、第2の実施形態の速度制御に適しており、上記のプライミングの排除を可能にする。
【0094】
第1の実施形態に対する主な変更は、駆動スリーブ41、42、ダイヤルスリーブ60、および最終用量機構のナット50に関する。この場合も、駆動スリーブは、製造上の理由のため、ともにカチッと留められて単一の構成要素として挙動する2つの構成要素部材41、42を含む。しかし、駆動スリーブ41、42は、ねじ付区間49を有する長い遠位部材41を有する。他方では、ダイヤルスリーブ60はより短く、第1の実施形態のねじ付区間61をもたない。ナット50は、この実施形態では完全なナットであり、このねじ付区間49上をその内側のねじ山とともに進む。さらに、ナット50は、ダイヤルスリーブ60の内面上の溝の中を軸方向に変位可能に案内されるスプライン付外面を有する。
【0095】
この場合も、使用者が用量を設定すると、ダイヤルスリーブ60は、ダイヤルアセンブリ70とともに回転し、駆動スリーブ41、42は、歯15、45を介してハウジング10に連結される。したがって、ナット50はねじ付区間49上を進む。用量投薬中、駆動スリーブ41、42は、ハウジングからデカップリングされ、ダイヤルスリーブ60とともに回転し、したがってナット50は、駆動スリーブ上のその相対的な位置を維持する。
【0096】
第4の実施形態が図15a〜15eに示されており、デバイスのすべての構成要素は、機構の共通の主軸の周りに同心円状に位置する。図15a〜15eは、デバイスの数字スリーブ300、ゲージ窓310、ロックアーム320、ボタン330、本体340、およびダイヤルグリップ350のみを(少なくとも部分的に)示す。
【0097】
数字スリーブ300は、回転運動を可能にするが軸方向の並進運動を可能にしないように、その遠位端部に位置する特徴を介してデバイスの本体340またはハウジングに拘束される。数字スリーブ300は、傾斜特徴を有し、これを本明細書ではクリッカ301と呼ぶ。本体340とロックアーム320との間ではトリガばね(図示せず)が作用し、ロックアーム320を近位方向に付勢する傾向がある。
【0098】
ロックアーム320は、回転を防止するように本体内に拘束される。ロックアーム320は、ボタン330との軸方向当接部を有する。さらに、ロックアーム320は、駆動スリーブ(図示せず)とのスプライン係合を有し、この係合は、投薬中に、ボタン330とのその当接を介して遠位方向にロックアーム320が動かされたときに解放される。ロックアーム320はまた、トリガばねとの軸方向当接部を有し、トリガばねを近位方向に付勢する傾向がある。ロックアーム320はロッカアーム321を有し、ロッカアーム321の一方の端部は傾斜特徴であり、これを本明細書ではクリッカ322と呼ぶ。
【0099】
ゲージ窓310は、回転を防止するが、スプラインインターフェースを介して本体340に対する並進運動を可能にするように拘束される。ゲージ窓310は、数字スリーブ300内の螺旋状のねじ切りに係合する螺旋特徴をその内面上に有し、したがって数字スリーブ300の回転が、ゲージ窓310の軸方向の並進運動を引き起こす。ゲージ窓310は、構成要素が特有の相対的な軸方位置にあるときにロックアーム320のロッカアーム321と相互作用する傾斜311を特徴とする。
【0100】
本体340は、薬液カートリッジおよびカートリッジホルダ(図示せず)、ゲージ窓310の回転を防止するインターフェース、数字スリーブ300上の用量数を見ることができるスロット、ならびにダイヤルグリップ350を軸方向に保持するその外面上の特徴に対する場所を提供する。
【0101】
用量終了時、3つの構成要素、すなわち数字スリーブ300、ゲージ窓310、およびロックアーム320の相互作用を介して、デバイスがゼロ位置へ戻ったことを使用者に通知する追加の可聴フィードバックが、投薬中に提供される「クリック」とは別個の「クリック」の形で提供される。この実施形態により、用量投薬の終了時にのみフィードバックが生み出され、デバイスがゼロ位置へ戻る方へまたはゼロ位置から離れる方へダイヤル選択された場合には生み出されないことが可能になる。図15aは、デバイスが用量設定状態にあるときの特徴の位置を示す。クリッカ322を有するロッカアーム321は、数字スリーブ300のクリッカ301の軸方向位置とは別個の軸方向位置にあることが理解されよう。したがって、ダイヤル選択中、これらの特徴間の接触、したがって可聴フィードバック信号を生み出すことは可能でない。また、図示のゲージ窓310の位置では、クリッカ322が、クリッカ301の位置より径方向に外側の位置にあることに留意されたい。
【0102】
用量投薬中、ロックアーム320は、(使用者がボタン330を押すことを介して)軸方向に並進運動させられ、したがってクリッカ322を有するロッカアーム321は、数字スリーブ300のクリッカ301と軸方向に心合わせする。これは、図15bに示されている。しかし、この段階では、クリッカ322はまだ数字スリーブ300上のクリッカ301より径方向に外側にあり、したがって接触は可能でない。
【0103】
ゲージ窓310が数字スリーブ300の最後の回転に対応する軸方向位置へ戻ったとき、傾斜311は、ロッカアーム321の一方の側の下を通り、ロッカアーム321を径方向に外方へ持ち上げる。これにより、ロッカアーム321は、構成要素320の残り部分との連結部の周りを回転(または揺動)する。これにより、ロッカアーム321の他方の端部上のクリッカ322は、数字スリーブ300上のクリッカ301との接触が可能な位置まで径方向に内方へ動かされる。この動作シーケンスの終了は、図15cに示されている。
【0104】
この状態で、数字スリーブ300が0U止め具近傍の位置へ回転すると、クリッカ301は、可撓性ロッカアーム321の一部であるクリッカ322の特徴に接触し、これらの相互作用によって、用量終了「クリック」を生み出す。図15dは、この「クリック」が生じた直後の構成要素を示す。
【0105】
投薬の終了時(「クリック」が生み出された後)にボタン330が解放されると、図15eに示すように、ロックアーム320はその近位位置へ戻り(トリガばねによる)、クリッカは互いに接触しなくなる。
【0106】
この機構は、頑丈さを増大させる可撓性要素の数の低減の利点を提供する。さらに、特徴301および322は機構の遠位端部に位置せず、したがってこの領域を簡略にし、より大きい特徴寸法を可能にする。加えて、可撓性クリッカ要素301、322の形はまた、投薬クリッカと比較すると確実に別個になるようにクリックを調節するためのより多くの機会を提供することができる。
【0107】
概して、ダイヤル選択中は係合しない特徴によって生み出される用量終了フィードバック信号には、次の利点がある:フィードバック信号を生み出す「クリッカ」特徴は、一方の方向にのみ互いに対して動き、したがって一方の面で傾斜させることのみを必要とする。他方の面は、「鋭くする」ことができ、それによって所与の量のエネルギー入力に対する可聴フィードバックの体積の増大を可能にする。さらに、使用者は、ゼロに戻るダイヤル選択中、通常は用量投薬動作を完了したことを示す信号によって混乱されない。加えて、特性の相互作用によって、ダイヤル選択トルクは増大されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14
図15a
図15b
図15c
図15d
図15e